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特開2024-134871異常診断装置、異常診断方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134871
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】異常診断装置、異常診断方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G05B23/02 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045296
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】村上 賢哉
(72)【発明者】
【氏名】アダモ サンタナ
(72)【発明者】
【氏名】長田 悠人
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223AA11
3C223BA01
3C223CC01
3C223EB01
3C223FF22
3C223FF24
3C223FF35
3C223GG01
3C223HH02
(57)【要約】
【課題】精度の良い異常診断を実現する技術を提供すること。
【解決手段】本開示の一態様による異常診断装置は、与えられた訓練用データを構成する複数の変数の相関に基づいて、前記複数の変数を1つ以上の第1の変数グループにグループ化する第1のグループ化部と、前記複数の変数のうち、前記1つ以上の第1の変数グループのいずれにもグループ化されなかった1つ以上の変数を第2の変数グループとしてグループ化する第2のグループ化部と、前記第1の変数グループ毎に、前記第1の変数グループとしてグループ化された変数を入力とする第1の異常診断モデルを作成する第1のモデル作成部と、前記第2の変数グループとしてグループ化された変数を入力とする第2の異常診断モデルを作成する第2のモデル作成部と、診断対象から取得された診断用データと、前記第1の異常診断モデルと、前記第2の異常診断モデルとを用いて、前記診断対象の異常診断を行う異常診断部と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
与えられた訓練用データを構成する複数の変数の相関に基づいて、前記複数の変数を1つ以上の第1の変数グループにグループ化する第1のグループ化部と、
前記複数の変数のうち、前記1つ以上の第1の変数グループのいずれにもグループ化されなかった1つ以上の変数を第2の変数グループとしてグループ化する第2のグループ化部と、
前記第1の変数グループ毎に、前記第1の変数グループとしてグループ化された変数を入力とする第1の異常診断モデルを作成する第1のモデル作成部と、
前記第2の変数グループとしてグループ化された変数を入力とする第2の異常診断モデルを作成する第2のモデル作成部と、
診断対象から取得された診断用データと、前記第1の異常診断モデルと、前記第2の異常診断モデルとを用いて、前記診断対象の異常診断を行う異常診断部と、
を有する異常診断装置。
【請求項2】
前記第1のグループ化部は、
前記複数の変数の線形相関に基づいて、前記複数の変数を前記1つ以上の第1の変数グループにグループ化する、請求項1に記載の異常診断装置。
【請求項3】
前記第1のグループ化部は、
前記複数の変数の線形相関に基づいて、前記複数の変数を前記1つ以上の第1の変数グループにグループ化し、
更に、前記複数の変数の非線形相関に基づいて、前記複数の変数を1つ以上の第3の変数グループにグループ化し、
前記第2のグループ化部は、
前記複数の変数のうち、前記1つ以上の第1の変数グループ及び前記1つ以上の第3の変数グループのいずれにもグループ化されなかった1つ以上の変数を前記第2の変数グループとしてグループ化し、
前記第1のモデル作成部は、
前記第3の変数グループ毎に、前記第3の変数グループとしてグループ化された変数を入力とする第3の異常診断モデルを作成し、
前記異常診断部は、
前記診断用データと、前記第1の異常診断モデルと、前記第2の異常診断モデルと、前記第3の異常診断モデルとを用いて、前記診断対象の異常診断を行う、請求項2に記載の異常診断装置。
【請求項4】
前記第1のモデル作成部は、
前記第1の異常診断モデルとして線形な異常診断モデル、前記第3の異常診断モデルとして非線形な異常診断モデルをそれぞれ作成し、
前記第2のモデル作成部は、
前記第2の異常診断モデルとして非線形な異常診断モデルを作成する、請求項3に記載の異常診断装置。
【請求項5】
前記異常診断部は、
前記第1の異常診断モデルによる異常診断結果と、前記第2の異常診断モデルによる異常診断結果と、前記第3の異常診断モデルによる異常診断結果とを統合した結果を、最終的な異常診断結果とする、請求項3又は4に記載の異常診断装置。
【請求項6】
前記異常診断部は、
前記第1の異常診断モデルによる異常診断結果と、前記第2の異常診断モデルによる異常診断結果と、前記第3の異常診断モデルによる異常診断結果との平均値、最大値又は最小値を、前記最終的な異常診断結果とする、請求項5に記載の異常診断装置。
【請求項7】
前記異常診断部は、
前記第1の異常診断モデルによる異常診断結果と、前記第2の異常診断モデルによる異常診断結果と、前記第3の異常診断モデルによる異常診断結果との論理和又は論理積を、前記最終的な異常診断結果とする、請求項5に記載の異常診断装置。
【請求項8】
与えられた訓練用データを構成する複数の変数の相関に基づいて、前記複数の変数を1つ以上の第1の変数グループにグループ化する第1のグループ化手順と、
前記複数の変数のうち、前記1つ以上の第1の変数グループのいずれにもグループ化されなかった1つ以上の変数を第2の変数グループとしてグループ化する第2のグループ化手順と、
前記第1の変数グループ毎に、前記第1の変数グループとしてグループ化された変数を入力とする第1の異常診断モデルを作成する第1のモデル作成手順と、
前記第2の変数グループとしてグループ化された変数を入力とする第2の異常診断モデルを作成する第2のモデル作成手順と、
診断対象から取得された診断用データと、前記第1の異常診断モデルと、前記第2の異常診断モデルとを用いて、前記診断対象の異常診断を行う異常診断手順と、
をコンピュータが実行する異常診断方法。
【請求項9】
与えられた訓練用データを構成する複数の変数の相関に基づいて、前記複数の変数を1つ以上の第1の変数グループにグループ化する第1のグループ化手順と、
前記複数の変数のうち、前記1つ以上の第1の変数グループのいずれにもグループ化されなかった1つ以上の変数を第2の変数グループとしてグループ化する第2のグループ化手順と、
前記第1の変数グループ毎に、前記第1の変数グループとしてグループ化された変数を入力とする第1の異常診断モデルを作成する第1のモデル作成手順と、
前記第2の変数グループとしてグループ化された変数を入力とする第2の異常診断モデルを作成する第2のモデル作成手順と、
診断対象から取得された診断用データと、前記第1の異常診断モデルと、前記第2の異常診断モデルとを用いて、前記診断対象の異常診断を行う異常診断手順と、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、異常診断装置、異常診断方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
多変量解析を利用した異常診断技術が従来から知られている。例えば、非特許文献1には、相関関係に基づいて操業条件(変数)を複数のグループに分割した上で、グループ毎に、多変量統計的プロセス管理(MSPC:Multivariate Statistical Process Control)の手法によって正常状態をモデル化する手法が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】茂森 弘靖,「データサイエンスによる鉄鋼製品の品質管理の革新」,データサイエンスアワード2015 応募資料
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、他の変数との間で相関がないためにグループ化されなかった変数が存在する場合、従来手法では、異常診断の精度が低下することがある。
【0005】
本開示は、上記の点に鑑みてなされたもので、精度の良い異常診断を実現する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による異常診断装置は、与えられた訓練用データを構成する複数の変数の相関に基づいて、前記複数の変数を1つ以上の第1の変数グループにグループ化する第1のグループ化部と、前記複数の変数のうち、前記1つ以上の第1の変数グループのいずれにもグループ化されなかった1つ以上の変数を第2の変数グループとしてグループ化する第2のグループ化部と、前記第1の変数グループ毎に、前記第1の変数グループとしてグループ化された変数を入力とする第1の異常診断モデルを作成する第1のモデル作成部と、前記第2の変数グループとしてグループ化された変数を入力とする第2の異常診断モデルを作成する第2のモデル作成部と、診断対象から取得された診断用データと、前記第1の異常診断モデルと、前記第2の異常診断モデルとを用いて、前記診断対象の異常診断を行う異常診断部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
精度の良い異常診断を実現する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一の実施形態に係る異常診断装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2】第一の実施形態に係る異常診断装置の機能構成の一例を示す図である。
図3】第一の実施形態に係るモデル作成処理の一例を示すフローチャートである。
図4】第一の実施形態に係る異常診断処理の一例を示すフローチャートである。
図5】第二の実施形態に係る異常診断装置の機能構成の一例を示す図である。
図6】第二の実施形態に係るモデル作成処理の一例を示すフローチャートである。
図7】第二の実施形態に係る異常診断処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の第一及び第二の実施形態について説明する。以下の各実施形態では、各種プラント(例えば、石油化学プラント、発電プラント、鉄鋼プラント、食品プラント等)や各種設備、機器、装置等を対象として、その対象の異常診断を実現する異常診断装置10について説明する。なお、以下では、異常診断の対象となる各種プラントや各種設備、機器、装置等のことを「診断対象」とも呼ぶ。
【0010】
ここで、以下の各実施形態に係る異常診断装置10は、正常状態における診断対象の運転データの集合(以下、訓練用データセットともいう。)から複数の異常診断モデルを作成する「モデル作成処理」と、診断対象の現在の運転データ(以下、診断用データともいう。)と各異常診断モデルから診断対象の異常診断を行う「異常診断処理」とを実行する。一般に、モデル作成処理はオフライン、異常診断処理はオンラインで実行されるが、これに限られるものではなく、例えば、モデル作成処理は、オンライン中に異常診断処理のバックグラウンドで実行されてもよい。
【0011】
なお、診断対象には各種センサが設置されており、これらのセンサによって当該診断対象の状態を表す物理量が計測され、運転データはそれらの物理量の計測値で構成される。運転データを構成する各計測値が表す物理量又はその物理量の計測値が格納される変数は「プロセス変数」又は「状態変数」とも呼ばれる。以下では、運転データを構成する計測値が表す物理量又はその物理量の計測値が格納される変数を「状態変数」と呼ぶことにする。状態変数としては様々なものが挙げられるが、例えば、温度、圧力、流量等が挙げられる。
【0012】
以下、運転データを構成する変数の数をNとして各変数をx(1≦n≦N)と表し、運転データを縦ベクトルで表現してx=(x,・・・,xΤと表す。運転データxが得られた時刻tを明示する場合は、x(t)=(x(t),・・・,x(t))Τと表す。ここで、Τは転置を表す記号である。
【0013】
また、以下、訓練用データセットをD={x(i)|i=1,・・・,|D|}と表し、各運転データx(i)を訓練用データとも呼ぶ。ここで、x(i)はi番目の訓練用データを表す。
【0014】
[第一の実施形態]
以下、第一の実施形態について説明する。第一の実施形態では、訓練用データx(i)を構成する変数x,・・・,xを線形相関に基づいてグループ化した上で、グループ化されなかった変数も1つのグループとしてグループ化し、グループ毎に異常診断モデルを作成する場合について説明する。
【0015】
<異常診断装置10のハードウェア構成例>
第一の実施形態に係る異常診断装置10のハードウェア構成例を図1に示す。図1に示すように、第一の実施形態に係る異常診断装置10は、入力装置101と、表示装置102と、外部I/F103と、通信I/F104と、RAM(Random Access Memory)105と、ROM(Read Only Memory)106と、補助記憶装置107と、プロセッサ108とを有する。これらの各ハードウェアは、それぞれがバス109を介して通信可能に接続される。
【0016】
入力装置101は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、物理ボタン等である。表示装置102は、例えば、ディスプレイ、表示パネル等である。なお、異常診断装置10は、例えば、入力装置101及び表示装置102のうちの少なくとも一方を有していなくてもよい。
【0017】
外部I/F103は、記録媒体103a等の外部装置とのインタフェースである。記録媒体103aとしては、例えば、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disk)、SDメモリカード(Secure Digital memory card)、USB(Universal Serial Bus)メモリカード等が挙げられる。
【0018】
通信I/F104は、異常診断装置10を通信ネットワークに接続するためのインタフェースである。RAM105は、プログラムやデータを一時保持する揮発性の半導体メモリ(記憶装置)である。ROM106は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の半導体メモリ(記憶装置)である。補助記憶装置107は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の不揮発性の記憶装置であり、プログラムやデータが格納される。プロセッサ108は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の各種演算装置である。
【0019】
なお、図1に示すハードウェア構成は一例であって、異常診断装置10のハードウェア構成はこれに限られるものではない。例えば、異常診断装置10は、複数の補助記憶装置107や複数のプロセッサ108を有していてもよいし、図示したハードウェアの一部を有していなくてもよいし、図示したハードウェア以外の種々のハードウェアを有していてもよい。
【0020】
<異常診断装置10の機能構成例>
第一の実施形態に係る異常診断装置10の機能構成例を図2に示す。図2に示すように、第一の実施形態に係る異常診断装置10は、データ取得部201と、変数グループ作成部202と、モデル作成部203と、異常診断部204と、統合部205とを有する。これら各部は、例えば、異常診断装置10にインストールされた1以上のプログラムが、プロセッサ108等に実行させる処理により実現される。また、第一の実施形態に係る異常診断装置10は、モデル記憶部206を有する。モデル記憶部206は、例えば、補助記憶装置107等により実現される。
【0021】
データ取得部201は、モデル作成処理の実行時に与えられた訓練用データセットDを取得する。また、データ取得部201は、異常診断処理の実行時に与えられた診断用データxを取得する。
【0022】
変数グループ作成部202は、訓練用データセットDに含まれる各訓練用データx(i)を構成する変数x,・・・,xを線形相関に基づいてグループ化し、1以上の変数グループを作成する。すなわち、変数グループ作成部202は、変数x,・・・,xのうち、線形相関を持つ変数同士を1つのグループとしてグループ化し、1以上の変数グループを作成する。以下、これら1以上の変数グループをg ,・・・,g とする。ここで、Mは線形相関に基づいて変数x,・・・,xをグループ化したときのグループ数である。なお、1つの変数xが異なる2以上の変数グループに属していてもよい。
【0023】
線形相関を持つ変数同士を1つのグループとしてグループ化する手法は特定の手法に限定されないが、例えば、相関係数を用いることができる。相関係数を用いる場合、任意の2つの変数同士の相関係数を求めた上で、相関係数が或る所定の閾値以上の変数同士を同一のグループとしてグループ化すればよい。ただし、相関係数を用いることは一例であって、これに限られるものではなく、2以上の変数間の線形相関を求めることができる手法であれば任意の手法を用いることができる。
【0024】
また、変数グループ作成部202は、線形相関に基づいてグループ化されなかった変数を1つのグループとしてグループ化した変数グループを作成する。すなわち、変数グループ作成部202は、変数x,・・・,xのうち、変数グループg ,・・・,g のいずれにも属しない1以上の変数を1つの変数グループとしてグループ化する。以下、この変数グループをgとする。
【0025】
モデル作成部203は、変数グループg ,・・・,g 毎に、当該変数グループを構成する複数の変数を入力として取る線形な異常診断モデルを作成する。すなわち、モデル作成部203は、変数グループg ,・・・,g 毎に、訓練用データセットDに含まれる各訓練用データx(i)を構成する変数x,・・・,xの値のうち、当該変数グループを構成する複数の変数の値を用いて、線形な異常診断モデルを作成する。以下、これらM個の異常診断モデルをML ,・・・,ML とする。
【0026】
線形な異常診断モデルML ,・・・,ML を作成する手法は特定の手法に限定されないが、例えば、多変量統計的プロセス管理(MSPC)の手法によって異常診断モデルを作成することができる(参考文献1)。ただし、多変量統計的プロセス管理の手法によって異常診断モデルを作成することは一例であって、これに限られるものではなく、教師なし手法によって線形な異常診断モデルを作成することができる手法であれば任意の手法を用いることができる。
【0027】
また、モデル作成部203は、変数グループgを構成する1以上の変数を入力として取る非線形な異常診断モデルを作成する。すなわち、モデル作成部203は、訓練用データセットDに含まれる各訓練用データx(i)を構成する変数x,・・・,xの値のうち、変数グループgを構成する1以上の変数の値を用いて、非線形な異常診断モデルを作成する。以下、この異常診断モデルをMLとする。
【0028】
非線形な異常診断モデルMLを作成する手法は特定の手法に限定されないが、例えば、局所外れ値因子法(LOF:Local Outlier Factor)によって異常診断モデルを作成することができる。ただし、局所外れ値因子法によって異常診断モデルを作成することは一例であって、これに限られるものではなく、教師なし手法によって非線形な異常診断モデルを作成することができる手法であれば任意の手法を用いることができる。例えば、One Class SVM、分離フォレスト(isolation Forest)、INNE(isolation using Nearest Neighbour Ensemble)、マハラノビス距離に基づく異常検知手法等といった手法を用いることも可能である。
【0029】
モデル作成部203によって作成された異常診断モデルML ,・・・,ML ,MLは、それぞれ変数グループg ,・・・,g ,gと対応付けてモデル記憶部206に保存される。
【0030】
異常診断部204は、診断用データxと、モデル記憶部206に記憶されている各異常診断モデルML ,・・・,ML ,MLの各々とを用いて、診断対象の異常診断を行う。すなわち、異常診断部204は、診断用データxを構成する変数x,・・・,xの値のうち、変数グループg を構成する複数の変数の値と、当該変数グループg に対応する異常診断モデルML とを用いて、異常診断結果R を得る。同様に、異常診断部204は、診断用データxを構成する変数x,・・・,xの値のうち、変数グループgを構成する1以上の変数の値と、当該変数グループgに対応する異常診断モデルMLとを用いて、異常診断結果Rを得る。
【0031】
なお、異常診断結果R ,・・・,R ,Rは、異常度合い(又は、異常でない度合い)を表す連続値を取る異常指標値であってもよいし、異常有無を表す二値(例えば、0又は1)を取る異常ラベルであってもよい。
【0032】
統合部205は、異常診断結果R ,・・・,R ,Rを統合した最終的な異常診断結果Rを算出する。異常診断結果R ,・・・,R ,Rの統合方法としては様々なものが考えられるが、例えば、異常診断結果R ,・・・,R ,Rが異常指標値であるか、異常ラベルであるかに応じて、以下の(1)又は(2)のいずれかの統合方法が考えられる。以下では、簡単のため、異常ラベルは0又は1のいずれかを取り、0のときは正常、1のときは異常を表すものとする。なお、各異常診断モデルML ,・・・,ML ,MLに対して閾値が設定されている場合、異常診断結果R ,・・・,R ,Rとして異常ラベルが得られる。
【0033】
(1)異常診断結果R ,・・・,R ,Rが異常指標値である場合
まず、統合部205は、必要に応じて各異常診断結果R ,・・・,R ,Rをその値が大きいほど異常度が高くなるように変換した後、0以上1以下の値となるように正規化する。そして、統合部205は、正規化後の異常診断結果R ,・・・,R ,Rの平均値又は最大値を最終的な異常診断結果Rとする。この場合、異常診断結果Rが予め決められた閾値を超えているときは異常、そうでないときは正常と診断される。
【0034】
なお、例えば、各異常診断結果R ,・・・,R ,Rをその値が小さいほど異常度が高くなるように変換することも可能であり、この場合、正規化後の異常診断結果R ,・・・,R ,Rの平均値又は最小値を最終的な異常診断結果Rとする。また、この場合、異常診断結果Rが予め決められた閾値を超えていないときは異常、そうでないときは正常と診断される。
【0035】
(2)異常診断結果R ,・・・,R ,Rが異常ラベルである場合
統合部205は、異常診断結果R ,・・・,R ,Rの論理和(OR)、論理積(AND)、又は多数決により最終的な異常診断結果Rを算出する。なお、多数決とは、例えば、異常診断結果R ,・・・,R ,Rのうち、異常ラベルが1である異常診断結果の方が多ければR=1、そうでなければR=0とすることである。
【0036】
ただし、上記の(1)又は(2)の統合方法は一例であって、これに限られるものではなく、異常診断結果R ,・・・,R ,Rから最終的な異常診断結果Rを算出する方法であれば任意の方法を用いることができる。
【0037】
モデル記憶部206は、モデル作成部203によって作成された異常診断モデルML ,・・・,ML ,MLを記憶する。
【0038】
<処理の詳細>
以下、図2に示す異常診断装置10の各部が実行する処理の詳細として、モデル作成処理の詳細と異常診断処理の詳細について説明する。
【0039】
≪モデル作成処理の詳細≫
以下、第一の実施形態に係るモデル作成処理の詳細について、図3を参照しながら説明する。なお、以下では、訓練用データセットDが異常診断装置10に与えられたものとする。
【0040】
まず、データ取得部201は、与えられた訓練用データセットDを取得する(ステップS101)。
【0041】
次に、変数グループ作成部202は、訓練用データセットDに含まれる各訓練用データx(i)を構成する変数x,・・・,xを線形相関に基づいてグループ化し、変数グループg ,・・・,g を作成する(ステップS102)。
【0042】
次に、変数グループ作成部202は、上記のステップS102でグループ化されなかった変数を1つのグループとしてグループ化した変数グループgを作成する(ステップS103)。すなわち、変数グループ作成部202は、変数x,・・・,xのうち、いずれの変数グループg ,・・・,g にも属しない変数を1つの変数グループgとしてグループ化する。
【0043】
なお、上記のステップS102ですべての変数x,・・・,xがグループ化された場合、上記のステップS103は実行されない。以下では、上記のステップS103が実行され、変数グループgが作成された場合について説明する。
【0044】
次に、モデル作成部203は、訓練用データセットDを用いて、変数グループg ,・・・,g 毎に、当該変数グループを構成する複数の変数を入力として取る線形な異常診断モデルML ,・・・,ML を作成する(ステップS104)。すなわち、モデル作成部203は、m=1,・・・,Mの各々に対して、訓練用データセットDに含まれる各訓練用データx(i)を構成する変数x,・・・,xの値のうち、変数グループg を構成する複数の変数の値を用いて、線形な異常診断モデルML を作成する。
【0045】
次に、モデル作成部203は、訓練用データセットDを用いて、変数グループgに対応する非線形な異常診断モデルMLを作成する(ステップS105)。すなわち、モデル作成部203は、訓練用データセットDに含まれる各訓練用データx(i)を構成する変数x,・・・,xの値のうち、変数グループgを構成する1以上の変数の値を用いて、非線形な異常診断モデルMLを作成する。
【0046】
そして、モデル作成部203は、上記のステップS104~ステップS105で作成した異常診断モデルML ,・・・,ML ,MLをそれぞれ変数グループg ,・・・,g ,gと対応付けてモデル記憶部206に保存する(ステップS106)。すなわち、モデル作成部203は、m=1,・・・,Mの各々に対して異常診断モデルML を変数グループg と対応付けてモデル記憶部206に保存すると共に、異常診断モデルMLを変数グループgと対応付けてモデル記憶部206に保存する。
【0047】
≪異常診断処理≫
以下、第一の実施形態に係る異常診断処理の詳細について、図4を参照しながら説明する。なお、以下では、診断用データxが異常診断装置10に与えられたものとする。
【0048】
まず、データ取得部201は、与えられた診断用データxを取得する(ステップS201)。
【0049】
次に、異常診断部204は、上記のステップS201で取得された診断用データxと、モデル記憶部206に記憶されている各異常診断モデルML ,・・・,ML ,MLの各々とを用いて、診断対象の異常診断を行って異常診断結果R ,・・・,R ,Rを得る(ステップS202)。すなわち、異常診断部204は、m=1,・・・,Mの各々に対して、診断用データxを構成する変数x,・・・,xの値のうち、変数グループg を構成する複数の変数の値と、当該変数グループg に対応付けてモデル記憶部206に保存されている異常診断モデルML とを用いて、異常診断結果R を得る。同様に、異常診断部204は、診断用データxを構成する変数x,・・・,xの値のうち、変数グループgを構成する1以上の変数の値と、当該変数グループgに対応付けてモデル記憶部206に保存されている異常診断モデルMLとを用いて、異常診断結果Rを得る。
【0050】
なお、異常診断モデルML (m=1,・・・,M)が多変量統計的プロセス管理の手法によって作成されたものであり、異常診断結果R として異常指標値を得る場合、異常診断結果R としては、例えば、Q統計量を算出すればよい。ただし、例えば、Q統計量の代わりにT統計量を算出してもよい。一方で、異常診断結果R として異常ラベルを得る場合、Q統計量が予め決められた閾値を超えているときは1、そうでないときは0を異常ラベルとして算出すればよい。ただし、例えば、T統計量が予め決められた閾値を超えているか否かにより異常ラベルを算出してもよいし、Q統計量とT統計量の両方がいずれも予め決められた閾値を超えているか否かにより異常ラベルを算出してもよい。
【0051】
次に、統合部205は、上記のステップS202で得られた異常診断結果R ,・・・,R ,Rを統合した最終的な異常診断結果Rを算出する(ステップS203)。
【0052】
そして、統合部205は、上記のステップS202で得られた最終的な異常診断結果Rを予め決められた所定の出力先に出力する(ステップS204)。ここで、当該出力先としては、例えば、ディスプレイ等の表示装置102でもよいし、補助記憶装置107でもよいし、異常診断装置10と通信ネットワークを介して接続された他の機器や装置等でもよい。なお、異常診断結果Rが異常指標値である場合、統合部205は、この異常診断結果Rと予め決められた閾値とを比較し、その比較結果を表す異常ラベルを当該出力先に出力してもよい。
【0053】
[第二の実施形態]
以下、第二の実施形態について説明する。第二の実施形態では、訓練用データx(i)を構成する変数x,・・・,xを線形相関及び非線形相関の各々に基づいてグループ化した上で、グループ化されなかった変数も1つのグループとしてグループ化し、グループ毎に異常診断モデルを作成する場合について説明する。
【0054】
なお、第二の実施形態では、主に、第一の実施形態との相違点について説明し、第一の実施形態と同様の構成要素についてはその説明を省略する。
【0055】
<異常診断装置10の機能構成例>
第二の実施形態に係る異常診断装置10の機能構成例を図5に示す。図5に示すように、第二の実施形態に係る異常診断装置10は、データ取得部201と、変数グループ作成部202Aと、モデル作成部203Aと、異常診断部204Aと、統合部205Aとを有する。これら各部は、例えば、異常診断装置10にインストールされた1以上のプログラムが、プロセッサ108等に実行させる処理により実現される。また、第二の実施形態に係る異常診断装置10は、モデル記憶部206を有する。モデル記憶部206は、例えば、補助記憶装置107等により実現される。
【0056】
変数グループ作成部202Aは、第一の実施形態と同様に、変数グループg ,・・・,g を作成する。
【0057】
また、変数グループ作成部202Aは、訓練用データセットDに含まれる各訓練用データx(i)を構成する変数x,・・・,xを非線形相関に基づいてグループ化し、1以上の変数グループg NL,・・・,g NLを作成する。ここで、Kは非線形相関に基づいて変数x,・・・,xをグループ化したときのグループ数である。なお、1つの変数xが異なる2以上の変数グループに属していてもよい。
【0058】
非線形相関を持つ変数同士を1つのグループとしてグループ化する手法は特定の手法に限定されないが、例えば、MIC(Maximal information coefficient)を用いることができる。MICを用いる場合、任意の2つの変数同士のMICを求めた上で、MICが或る所定の閾値以上の変数同士を同一のグループとしてグループ化すればよい。ただし、MICを用いることは一例であって、これに限られるものではなく、2以上の変数間の非線形相関を求めることができる手法であれば任意の手法を用いることができる。
【0059】
更に、変数グループ作成部202Aは、線形相関及び非線形相関のいずれに基づいてもグループ化されなかった変数を1つのグループとしてグループ化した変数グループを作成する。すなわち、変数グループ作成部202Aは、変数x,・・・,xのうち、変数グループg ,・・・,g ,g NL,・・・,g NLのいずれにも属しない1以上の変数を1つの変数グループgとしてグループ化する。
【0060】
モデル作成部203Aは、第一の実施形態と同様に、変数グループg ,・・・,g 毎に、線形な異常診断モデルML ,・・・,ML を作成する。
【0061】
また、モデル作成部203Aは、変数グループg NL,・・・,g NL毎に、訓練用データセットDに含まれる各訓練用データx(i)を構成する変数x,・・・,xの値のうち、当該変数グループを構成する複数の変数の値を用いて、非線形なK個の異常診断モデルML NL,・・・,ML NLを作成する。なお、非線形な異常診断モデルML NL,・・・,ML NLを作成する手法は特定の手法に限定されず、教師なし手法によって非線形な異常診断モデルを作成することができる手法であれば任意の手法を用いることができる。例えば、局所外れ値因子法、One Class SVM、分離フォレスト、INNE、マハラノビス距離に基づく異常検知手法等といった手法を用いることが可能である。また、例えば、或る異常診断モデルML NLと別の或る異常診断モデルMLk' NLが異なる手法によって作成されてもよい。
【0062】
更に、モデル作成部203Aは、第一の実施形態と同様に、変数グループgに対応する非線形な異常診断モデルMLを作成する。
【0063】
モデル作成部203Aによって作成された異常診断モデルML ,・・・,ML ,ML NL,・・・,ML NL,MLは、それぞれ変数グループg ,・・・,g ,g NL,・・・,g NL,gと対応付けてモデル記憶部206に保存される。
【0064】
異常診断部204Aは、診断用データxと、モデル記憶部206に記憶されている各異常診断モデルML ,・・・,ML ,ML NL,・・・,ML NL,MLの各々とを用いて、診断対象の異常診断を行う。すなわち、異常診断部204Aは、第一の実施形態と同様に、異常診断結果R 及びRを得る。また、異常診断部204Aは、診断用データxを構成する変数x,・・・,xの値のうち、変数グループg NLを構成する複数の変数の値と、当該変数グループg NLに対応する異常診断モデルML NLとを用いて、異常診断結果R NLを得る。
【0065】
統合部205Aは、異常診断結果R ,・・・,R ,R NL,・・・,R NL,Rを統合した最終的な異常診断結果Rを算出する。異常診断結果R ,・・・,R ,R NL,・・・,R NL,Rの統合方法としては様々なものが考えられるが、例えば、第一の実施形態で説明した(1)及び(2)をそれぞれ拡張した以下の(1')又は(2')のいずれかの統合方法が考えられる。
【0066】
(1')異常診断結果R ,・・・,R ,R NL,・・・,R NL,Rが異常指標値である場合
まず、統合部205Aは、必要に応じて各異常診断結果R ,・・・,R ,R NL,・・・,R NL,Rをその値が大きいほど異常度が高くなるように変換した後、0以上1以下の値となるように正規化する。そして、統合部205Aは、正規化後の異常診断結果R ,・・・,R ,R NL,・・・,R NL,Rの平均値又は最大値を最終的な異常診断結果Rとする。なお、第一の実施形態と同様に、例えば、各異常診断結果R ,・・・,R ,R NL,・・・,R NL,Rをその値が小さいほど異常度が高くなるように変換することも可能である。
【0067】
(2')異常診断結果R ,・・・,R ,R NL,・・・,R NL,Rが異常ラベルである場合
統合部205Aは、異常診断結果R ,・・・,R ,R NL,・・・,R NL,Rの論理和(OR)、論理積(AND)、又は多数決により最終的な異常診断結果Rを算出する。
【0068】
ただし、上記の(1')又は(2')の統合方法は一例であって、これに限られるものではなく、異常診断結果R ,・・・,R ,R NL,・・・,R NL,Rから最終的な異常診断結果Rを算出する方法であれば任意の方法を用いることができる。
【0069】
<処理の詳細>
以下、図5に示す異常診断装置10の各部が実行する処理の詳細として、モデル作成処理の詳細と異常診断処理の詳細について説明する。
【0070】
≪モデル作成処理≫
以下、第二の実施形態に係るモデル作成処理の詳細について、図6を参照しながら説明する。なお、以下では、訓練用データセットDが異常診断装置10に与えられたものとする。
【0071】
まず、データ取得部201は、与えられた訓練用データセットDを取得する(ステップS301)。
【0072】
次に、変数グループ作成部202Aは、図3のステップS102と同様に、変数グループg ,・・・,g を作成する(ステップS302)。
【0073】
次に、変数グループ作成部202Aは、訓練用データセットDに含まれる各訓練用データx(i)を構成する変数x,・・・,xを非線形相関に基づいてグループ化し、変数グループg NL,・・・,g NLを作成する(ステップS303)。
【0074】
次に、変数グループ作成部202Aは、上記のステップS302~ステップS303でグループ化されなかった変数を1つのグループとしてグループ化した変数グループgを作成する(ステップS304)。すなわち、変数グループ作成部202Aは、変数x,・・・,xのうち、いずれの変数グループg ,・・・,g ,g NL,・・・,g NLにも属しない変数を1つの変数グループgとしてグループ化する。
【0075】
なお、上記のステップS302~ステップS303ですべての変数x,・・・,xがグループ化された場合、上記のステップS304は実行されない。以下では、上記のステップS304が実行され、変数グループgが作成された場合について説明する。
【0076】
次に、モデル作成部203Aは、図3のステップS104と同様に、線形な異常診断モデルML ,・・・,ML を作成する(ステップS305)。
【0077】
次に、モデル作成部203Aは、訓練用データセットDを用いて、変数グループg NL,・・・,g NL毎に、当該変数グループを構成する複数の変数を入力として取る非線形な異常診断モデルML NL,・・・,ML NLを作成する(ステップS306)。すなわち、モデル作成部203Aは、k=1,・・・,Kの各々に対して、訓練用データセットDに含まれる各訓練用データx(i)を構成する変数x,・・・,xの値のうち、変数グループg NLを構成する複数の変数の値を用いて、非線形な異常診断モデルML NLを作成する。
【0078】
次に、モデル作成部203Aは、図3のステップS105と同様に、非線形な異常診断モデルMLを作成する(ステップS307)。
【0079】
そして、モデル作成部203Aは、上記のステップS305~ステップS307で作成した異常診断モデルML ,・・・,ML ,ML NL,・・・,ML NL,MLをそれぞれ変数グループg ,・・・,g ,g NL,・・・,g NL,gと対応付けてモデル記憶部206に保存する(ステップS308)。すなわち、モデル作成部203Aは、m=1,・・・,Mの各々に対して異常診断モデルML を変数グループg と対応付けてモデル記憶部206に保存すると共に、k=1,・・・,Kの各々に対して異常診断モデルML NLを変数グループg NLと対応付けてモデル記憶部206に保存し、更に異常診断モデルMLを変数グループgと対応付けてモデル記憶部206に保存する。
【0080】
≪異常診断処理≫
以下、第二の実施形態に係る異常診断処理の詳細について、図7を参照しながら説明する。なお、以下では、診断用データxが異常診断装置10に与えられたものとする。
【0081】
まず、データ取得部201は、与えられた診断用データxを取得する(ステップS401)。
【0082】
次に、異常診断部204Aは、上記のステップS401で取得された診断用データxと、モデル記憶部206に記憶されている各異常診断モデルML ,・・・,ML ,ML NL,・・・,ML NL,MLの各々とを用いて、診断対象の異常診断を行って異常診断結果R ,・・・,R ,R NL,・・・,R NL,Rを得る(ステップS402)。すなわち、異常診断部204Aは、図4のステップS202と同様に異常診断結果R 及びRを得ると共に、k=1,・・・,Kの各々に対して、診断用データxを構成する変数x,・・・,xの値のうち、変数グループg NLを構成する複数の変数の値と、当該変数グループg NLに対応付けてモデル記憶部206に保存されている異常診断モデルML NLとを用いて、異常診断結果R NLを得る。
【0083】
次に、統合部205Aは、上記のステップS402で得られた異常診断結果R ,・・・,R ,R NL,・・・,R NL,Rを統合した最終的な異常診断結果Rを算出する(ステップS403)。
【0084】
そして、統合部205Aは、図4のステップS204と同様に、上記のステップS403で得られた最終的な異常診断結果Rを予め決められた所定の出力先に出力する(ステップS404)。
【0085】
<変形例>
・変形例1
上記の各実施形態では、異常診断モデルMLを非線形な異常診断モデルとしたが、例えば、異常診断モデルMLは、多変量統計的プロセス管理の手法によって作成した線形な異常診断モデルであってもよい。ただし、この場合、異常診断部204(又は、異常診断部204A)が異常診断モデルMLを用いて異常診断を行う際には、T統計量(又はQ統計量とT統計量の両方)を用いる。これは、Q統計量は線形相関からのずれを表しているのに対して、T統計量は線形相関の大きさを表しているためである。
【0086】
同様に、上記の第二の実施形態における異常診断モデルML NL,・・・,ML NLの全部又は一部についても、例えば、多変量統計的プロセス管理の手法によって作成した線形な異常診断モデルであってもよい。ただし、この場合も、異常診断部204Aが異常診断モデルML NLを用いて異常診断を行う際には、T統計量(又はQ統計量とT統計量の両方)を用いる。
【0087】
・変形例2
上記の第一の実施形態では、変数x,・・・,xを線形相関に基づいてグループ化したが、例えば、線形相関・非線形相関に限られない任意の相関に基づいて、変数x,・・・,xをグループ化してもよい。
【0088】
<評価>
以下、第一の実施形態に係る異常診断装置10の評価について説明する。以下の表1に示す10個のデータセット(D01~D10)を用いて、第一の実施形態に係る異常診断装置10と、既存手法とを比較した。
【0089】
【表1】
ここで、上記の表1のDimensionsはデータセット(D01~D10)のデータ数を行、変数を列とした場合の次元数を表している。例えば、D01のデータセットの訓練用データセット(Train set OK data)は213696個の訓練用データで構成されており、各訓練用データは29個の変数(x,・・・,x29)で構成されている。同様に、例えば、D01のデータセットのテストデータセットは、91584個の正常データ(Test set OK data)と、132423個の異常データ(Test set NG data)とで構成されている。他のデータセットについても同様である。
【0090】
このとき、訓練用データセットで異常診断モデルを作成し、テストデータセットを用いて異常診断結果を評価した。また、評価指標としてはF1スコアを用いた。以下の表2にその評価結果を示す。
【0091】
【表2】
ここで、上記の表2のProposed approachが第一の実施形態に係る異常診断装置10を評価した結果である。一方、MSPC、LOF、OCSVM、IF、INNEはそれぞれ既存手法を評価した結果である。なお、OCSVMはOne Class SVM、IFは分離フォレストを表す。
【0092】
上記の表2中で最もF1スコアが高かった結果には網掛けを付与している。また、F1スコアの平均をランキングした結果も最下段に記載している。このように、第一の実施形態に係る異常診断装置10は、既存手法と比較して、精度の良い異常診断を実現できていることがわかる。
【0093】
<まとめ>
以上のように、第一の実施形態に係る異常診断装置10では、与えられた訓練用データx(i)(i=1,・・・,|D|)を構成する変数x,・・・,xを線形相関に基づいてグループ化すると共に、グループ化されなかった変数も1つのグループとしてグループ化し、グループ毎に異常診断モデルを作成する。また、第二の実施形態に係る異常診断装置10では、線形相関に基づくグループ化だけでなく、非線形相関に基づくグループ化も行って、グループ化されなかった変数も1つのグループとしてグループ化する。
【0094】
これにより、第一及び第二の実施形態に係る異常診断装置10では、グループ化されなかった変数に起因する異常診断精度の低下を防止することが可能となり、精度の良い異常診断を実現することが可能となる。
【0095】
本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から逸脱することなく、種々の変形や変更、既知の技術との組み合わせ等が可能である。
【0096】
[参考文献]
参考文献1:加納 学,「多変量統計的プロセス管理」,インタネット<URL:http://manabukano.brilliant-future.net/research/report/Report2005_MSPC.pdf>
【符号の説明】
【0097】
10 異常診断装置
101 入力装置
102 表示装置
103 外部I/F
103a 記録媒体
104 通信I/F
105 RAM
106 ROM
107 補助記憶装置
108 プロセッサ
109 バス
201 データ取得部
202 変数グループ作成部
202A 変数グループ作成部
203 モデル作成部
203A モデル作成部
204 異常診断部
204A 異常診断部
205 統合部
205A 統合部
206 モデル記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7