(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134872
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】モータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60K 6/36 20071001AFI20240927BHJP
B60K 6/38 20071001ALI20240927BHJP
B60K 6/405 20071001ALI20240927BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20240927BHJP
B60K 25/06 20060101ALI20240927BHJP
B60K 17/356 20060101ALI20240927BHJP
B60K 17/28 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B60K6/36 ZHV
B60K6/38
B60K6/405
B60K6/48
B60K25/06
B60K17/356 B
B60K17/28 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045297
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】519196405
【氏名又は名称】株式会社IJTT
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】濱中 好久
(72)【発明者】
【氏名】加藤 壮
(72)【発明者】
【氏名】石川 知宏
【テーマコード(参考)】
3D037
3D043
3D202
【Fターム(参考)】
3D037CA01
3D037CB06
3D037CB07
3D037CB19
3D037CB36
3D043AA05
3D043AB01
3D043BA00
3D043BC09
3D043BC12
3D043BD06
3D202AA08
3D202EE12
3D202EE16
3D202EE21
3D202EE23
(57)【要約】
【課題】PTO軸にモータを接続して車両をハイブリッド化した場合にあっても、架装物の駆動を可能にする。
【解決手段】ハイブリッド車のためのモータ駆動力を出力するためのモータ駆動装置100は、モータ21と、ハイブリッド車のエンジン駆動力を取り出すためのPTO軸に接続されるように構成された第1出力軸22と、モータと第1出力軸を連結する動力伝達機構23と、ハイブリッド車に搭載された架装物の駆動源11に接続されるように構成された第2出力軸24と、第1出力軸を第2出力軸に選択的に接続するように構成された切替機構25とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド車のためのモータ駆動力を出力するためのモータ駆動装置であって、
モータと、
前記ハイブリッド車のエンジン駆動力を取り出すためのPTO軸に接続されるように構成された第1出力軸と、
前記モータと前記第1出力軸を連結する動力伝達機構と、
前記ハイブリッド車に搭載された架装物の駆動源に接続されるように構成された第2出力軸と、
前記第1出力軸を前記第2出力軸に選択的に接続するように構成された切替機構と、
を備えたことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
前記第1出力軸と前記第2出力軸は同軸に配置され、
前記切替機構は、
前記第1出力軸の外周部に設けられた第1スプラインと、
前記第2出力軸の外周部に設けられた第2スプラインと、
前記第2スプラインのみに噛合する第2位置と、前記第1スプラインおよび前記第2スプラインの両方に噛合する第1位置との間で移動可能なスリーブと、
前記スリーブを駆動するスリーブ駆動部材と、
を備える
請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記切替機構は、前記スリーブ駆動部材を駆動するアクチュエータを備える
請求項2に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記第2出力軸は、前記駆動源の入力軸に同軸に接続されるように構成されている
請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記第2出力軸は、前記駆動源の入力軸に直接的に接続されるように構成されている
請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項6】
前記第2出力軸は、前記駆動源の入力軸にオフセット状態で接続されるように構成されている
請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項7】
前記モータ、前記第1出力軸、前記動力伝達機構、前記第2出力軸および前記切替機構を収容するハウジングを備える
請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項8】
前記ハウジングは、前記駆動源を直接的に取り付けるための座面を備える
請求項7に記載のモータ駆動装置。
【請求項9】
前記駆動源は、油圧ポンプである
請求項1に記載のモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハイブリッド車のためのモータ駆動力を出力するためのモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばトラック等の車両において、エンジン駆動力を取り出すためのPTO(Power Take Off:動力取り出し)軸に電気モータを接続し、車両をハイブリッド化することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしこうすると、車両に搭載された架装物をPTO軸によって駆動できなくなってしまう。すなわち、PTO軸がモータ駆動力の伝達のために使われてしまうため、本来の目的である架装物の駆動のためにPTO軸を使用できなくなってしまう。
【0005】
そこで本開示は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、PTO軸にモータを接続して車両をハイブリッド化した場合にあっても、架装物の駆動を可能にするモータ駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の態様によれば、
ハイブリッド車のためのモータ駆動力を出力するためのモータ駆動装置であって、
モータと、
前記ハイブリッド車のエンジン駆動力を取り出すためのPTO軸に接続されるように構成された第1出力軸と、
前記モータと前記第1出力軸を連結する動力伝達機構と、
前記ハイブリッド車に搭載された架装物の駆動源に接続されるように構成された第2出力軸と、
前記第1出力軸を前記第2出力軸に選択的に接続するように構成された切替機構と、
を備えたことを特徴とするモータ駆動装置が提供される。
【0007】
好ましくは、前記第1出力軸と前記第2出力軸は同軸に配置され、
前記切替機構は、
前記第1出力軸の外周部に設けられた第1スプラインと、
前記第2出力軸の外周部に設けられた第2スプラインと、
前記第2スプラインのみに噛合する第2位置と、前記第1スプラインおよび前記第2スプラインの両方に噛合する第1位置との間で移動可能なスリーブと、
前記スリーブを駆動するスリーブ駆動部材と、
を備える。
【0008】
好ましくは、前記切替機構は、前記スリーブ駆動部材を駆動するアクチュエータを備える。
【0009】
好ましくは、前記第2出力軸は、前記駆動源の入力軸に同軸に接続されるように構成されている。
【0010】
好ましくは、前記第2出力軸は、前記駆動源の入力軸に直接的に接続されるように構成されている。
【0011】
好ましくは、前記第2出力軸は、前記駆動源の入力軸にオフセット状態で接続されるように構成されている。
【0012】
好ましくは、前記モータ駆動装置は、前記モータ、前記第1出力軸、前記動力伝達機構、前記第2出力軸および前記切替機構を収容するハウジングを備える。
【0013】
好ましくは、前記ハウジングは、前記駆動源を直接的に取り付けるための座面を備える。
【0014】
好ましくは、前記駆動源は、油圧ポンプである。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、PTO軸にモータを接続して車両をハイブリッド化した場合にあっても、架装物の駆動を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】モータ駆動装置が適用された車両を示す概略平面図である。
【
図4】モータ駆動装置の座面付近を示す後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を説明する。なお本開示は以下の実施形態に限定されない点に留意されたい。
【0018】
図1は、本実施形態に係るモータ駆動装置100が適用された車両Vを示す。車両Vは、エンジン(内燃機関)1の駆動力と電気モータの駆動力との一方または両方で走行可能なパラレル式ハイブリッド車(HEV)であり、本実施形態では商用車、具体的にはトラックである。但し車両の種類は任意である。図中に車両Vの前後左右上下の各方向を示す。
【0019】
車両Vは、エンジン1と、エンジン1のクランクシャフトに接続されたクラッチアセンブリ2と、クラッチアセンブリ2の出力軸に接続された自動変速機3と、自動変速機3の出力軸に接続されたプロペラシャフト4と、プロペラシャフト4の出力部に接続された終減速装置5と、終減速装置5の左右の出力軸に車軸6を介して連結された左右の後輪7とを備える。実線矢印aで示すように、エンジン1の駆動力はクラッチアセンブリ2、自動変速機3、プロペラシャフト4、終減速装置5、車軸6、後輪7へと順に伝達される。エンジン1から後輪7までのエンジン駆動力の伝達系統をエンジン駆動系という。
【0020】
クラッチアセンブリ2は、トルクコンバータとロックアップクラッチを備える。自動変速機3は、マニュアルトランスミッションをアクチュエータで自動変速するタイプのものである。これらクラッチアセンブリ2と自動変速機3を組み合わせてAMT(Automated Manual Transmission)が構成される。終減速装置5は、駆動力を左右の車軸6に分配するディファレンシャルギア等を含む。
【0021】
自動変速機3にはエンジン駆動力を取り出すためのPTO装置8が設けられている。このPTO装置8の出力軸がPTO軸9である。PTO軸9は後方に向けられている。このPTO軸9に、プロペラシャフト10を介して、モータ駆動装置100の出力軸が接続されている。車両駆動用モータはこのモータ駆動装置100に備えられている。破線矢印bで示すように、モータ駆動力は、モータ駆動装置100の出力軸からプロペラシャフト10、PTO軸9、PTO装置8、自動変速機3へと順に伝達され、その後は前記同様の経路で後輪7に伝達される。
【0022】
一方、車両Vには図示しない架装物が取り付けられている。架装物は例えばクレーン、給水ポンプ、ごみ収集機であるが、これらに限定されない。この架装物の駆動源である油圧ポンプ11がモータ駆動装置100に取り付けられている。そして本実施形態では、車両駆動用モータを利用して油圧ポンプ11を駆動し、架装物を作動させられるようになっている。
【0023】
本実施形態では、プロペラシャフト10がモータ駆動装置100の前方に位置され、油圧ポンプ11がモータ駆動装置100の後方に位置される。しかしながらこれらのレイアウトは任意であり、他の配置方法も可能である。
【0024】
車両Vは、モータの電源となるバッテリ12と、バッテリ12およびモータ間の電流を制御するモータ制御装置(図示せず)とを備える。モータはモータジェネレータである。モータ制御装置は、モータによる車両駆動時にはバッテリ12からモータに流れる電流を制御し、回生制動時にはモータからバッテリ12に流れる電流を制御する。
【0025】
次に、
図2および
図3を参照してモータ駆動装置100を説明する。
図2はモータ駆動装置100の全体を示す左側面断面図、
図3は
図2の要部拡大図である。便宜上、前後左右上下の各方向を車両Vの各方向と同一に定める。
【0026】
モータ駆動装置100は、前述のモータ21と、PTO軸9に接続されるように構成された第1出力軸22と、モータ21と第1出力軸22を連結する動力伝達機構23と、油圧ポンプ11に接続されるように構成された第2出力軸24と、第1出力軸22を第2出力軸24に選択的に接続するように構成された切替機構25とを備える。
【0027】
図示例の場合、第1出力軸22は、プロペラシャフト10を介してPTO軸9に実際に接続されている。また第2出力軸24は、油圧ポンプ11の入力軸13に実際に接続されている。
【0028】
本実施形態において、第2出力軸24は、油圧ポンプ11の入力軸13に同軸に接続されるように構成されている。また第2出力軸24は、油圧ポンプ11の入力軸13に直接的に接続されるように構成されている。
【0029】
モータ駆動装置100はハウジング26を備える。ハウジング26は、モータ21、第1出力軸22、動力伝達機構23、第2出力軸24および切替機構25を収容する。これによりモータ駆動装置100は一体化もしくはユニット化される。
【0030】
ハウジング26内において、モータ21は第1出力軸22および第2出力軸24の上方に配置され、第1出力軸22および第2出力軸24は同軸に配置されている。符号C1はモータ21の中心軸を示し、符号C2は第1出力軸22および第2出力軸24の共通の中心軸を示す。軸C1は軸C2と平行であり、軸C2の上方に位置される。軸C1と軸C2は前後方向に延びる。
【0031】
ハウジング26は、ハウジング本体27と、ハウジング本体27に取り付けられその前端開放部を閉止するハウジング蓋体28とを備える。
【0032】
モータ21は、ハウジング本体27に固定された永久磁石からなるステータ29と、ハウジング本体27に一対の軸受30を介して回転可能に取り付けられたロータ31とを備える。ロータ31は、モータ出力軸32と、その外周に取り付けられた電磁石33とを備える。
【0033】
動力伝達機構23は、本実施形態ではチェーン・スプロケット機構により構成されている。但しこれに限らず、ギヤ機構等により構成されていてもよい。
【0034】
モータ出力軸32の先端部ないし前端部に駆動スプロケット34が取り付けられ、第1出力軸22の中間部に被駆動スプロケット35が取り付けられている。これらスプロケット34,35にチェーン36が巻き掛けられている。被駆動スプロケット35の歯数は駆動スプロケット34の歯数より多く、モータ21の回転を減速して第1出力軸22に伝達するようになっている。駆動スプロケット34はモータ出力軸32にスプライン嵌合され、ナット37によって固定される。
【0035】
第1出力軸22は、ハウジング本体27とハウジング蓋体28にそれぞれ取り付けられた一対の軸受38によって回転可能に支持される。被駆動スプロケット35の前側に隣接して、第1出力軸22には筒状のフランジ部材39が取り付けられている。被駆動スプロケット35とフランジ部材39は第1出力軸22にスプライン嵌合され、ナット40によって固定される。第1シール部材41がフランジ部材39とハウジング蓋体28の隙間をシールする。
【0036】
フランジ部材39はハウジング蓋体28から前方に突出され、フランジ部材39にプロペラシャフト10のフランジ42が複数(一つのみ図示)のボルト43によって固定される。
【0037】
一対の軸受38の間に被駆動スプロケット35が配置される。他方、第1出力軸22の基端部ないし後端部は後側の軸受38より後方に突出されている。この突出された後端部において、第1出力軸22が切替機構25により第2出力軸24と接続可能である。
【0038】
第1出力軸22の基端部ないし後端部は後端が開放された略円筒状に形成される。その後端部において、外周部には第1スプライン44が設けられ、第1スプライン44の後方には縮径管部45が設けられている。
【0039】
第2出力軸24も略円筒状に形成され、その内部が隔壁46によって前後に仕切られる。隔壁46より前側の前側管部47は、縮径管部45の外側に隙間を隔てて嵌合され、複数のニードル軸受48を介して縮径管部45に回転可能に支持される。
【0040】
前側管部47の外周部には、第1スプライン44と同様の第2スプライン49が第1スプライン44の後方に隣接して同軸に設けられる。
【0041】
隔壁46より後側の後側管部50は、軸受51を介してハウジング本体27に回転可能に支持される。
【0042】
ハウジング本体27には、第1出力軸22と第2出力軸24を支持すべくハウジング内に突出した管状部52が形成されている。この管状部52に軸受38,51が取り付けられる。管状部52内の右端は開放され、管状部52の内周面と第2出力軸24との隙間がシール部材53によってシールされる。
【0043】
油圧ポンプ11は、その入力軸13を前側に向けた状態で、複数のスタッドボルト54およびナット55により、ハウジング本体27の後端面に直接取り付けられている。
【0044】
図4に示すように、ハウジング本体27の後端面には、油圧ポンプ11の前端面を着座もしくは面接触させるための座面56が形成されている。本実施形態の座面56は略紡錘形に形成されており、この座面56に略同形状の油圧ポンプ11のフランジ57が着座される。フランジ57は、対角状に配置された二組のスタッドボルト54およびナット55により、ハウジング本体27の座面56に密着した状態で固定される。
【0045】
油圧ポンプ11の入力軸13は、管状部52内に挿入され、第2出力軸24の後側管部50の内側に同軸に嵌合される。油圧ポンプ11の入力軸13と第2出力軸24の後側管部50とには、それぞれキー溝58,59が形成されている。これらキー溝58,59にキー60が差し込まれ、入力軸13と後側管部50が軸C2方向移動可能、かつ回転方向移動不能に連結される。
【0046】
切替機構25は、前述の第1スプライン44および第2スプライン49と、スリーブ61と、スリーブ61を駆動するスリーブ駆動部材62とを備える。スリーブ61は、第2スプライン49のみに噛合する第2位置P2(実線で示す)と、第1スプライン44および第2スプライン49の両方に噛合する第1位置P1(仮想線で示す)との間で移動可能である。
【0047】
また切替機構25は、スリーブ駆動部材62を駆動するアクチュエータ63を備える。
【0048】
本実施形態では、車両のマニュアルトランスミッションに類似の切替機構25が採用されている。スリーブ61はリング状であると共に、その内周部にスプラインが形成され、通常は第2スプライン49の外側に軸C2方向移動可能かつ回転方向移動不能に嵌合されている。スリーブ61の外周部にフォーク溝61Aが形成されている。
【0049】
スリーブ駆動部材62は、フォーク溝61Aに先端部が係合されたシフトフォーク64と、シフトフォーク64の基端部が固定されたフォークロッド65と、シフトフォーク64およびフォークロッド65を第2位置P2に向けて付勢する付勢部材としてのコイルスプリング66とを備える。
【0050】
シフトフォーク64は上下方向に延び、その基端部は先端部より上方に位置される。ハウジング本体27の管状部52に、シフトフォーク64を挿通させるための挿通孔67が設けられている。フォークロッド65は、ハウジング本体27とハウジング蓋体28にそれぞれ設けられたガイド穴68,69に、軸C3方向にスライド可能に挿通されている。軸C3は軸C2と平行である。
【0051】
コイルスプリング66は、フォークロッド65の外側に嵌合されると共に、ハウジング蓋体28とシフトフォーク64の間に圧縮状態で挟まれ、シフトフォーク64を第2位置P2に向けて付勢すると共にハウジング本体27のストッパ面70に押し付ける。
【0052】
本実施形態のアクチュエータ63は、フォークロッド65を軸C3方向に駆動する電磁ソレノイドによって構成されている。アクチュエータ63は、ハウジング蓋体28の前端面部に取り付けられ、フォークロッド65の前端部が挿入されている。図中実線はアクチュエータ63がオフ(停止)のときの状態を示す。アクチュエータ63がオン(作動)されると、アクチュエータ63がフォークロッド65を軸C3方向前方に吸引して引っ張り、フォークロッド65およびスリーブ61を仮想線で示すように第1位置P1に移動させる。
【0053】
次に、モータ駆動装置100の作動を説明する。
【0054】
車両Vの通常走行時、アクチュエータ63はオフとされ、スリーブ61は第2位置P2に位置され、第2スプライン49のみに噛合される。これにより第1出力軸22および第2出力軸24は互いに分離され相対回転可能となる。
【0055】
PTO装置8はPTOクラッチを備えており、その断接によってPTO軸9を自動変速機3に対し断接する。車両Vの通常走行時、PTOクラッチは接とされる。これによりPTO軸9が自動変速機3に対し動力伝達可能に接続される。なおアクチュエータ63のオンオフと、PTOクラッチの断接状態とは、例えば運転室内のスイッチを操作することにより容易に切り替えることができる。
【0056】
この状態でモータ21が駆動されると、モータ21の回転駆動力はモータ出力軸32、駆動スプロケット34、チェーン36、被駆動スプロケット35、第1出力軸22という経路で第1出力軸22に伝達される。そして第1出力軸22からプロペラシャフト10、PTO軸9、PTO装置8、自動変速機3という経路で自動変速機3に伝達され、その後最終的に後輪7に伝達される。
【0057】
なお、通常のパラレル式ハイブリッド車と同様に、エンジン1の駆動力とモータ21の駆動力とを併用して後輪7を駆動することもできる。あるいは車両Vの減速時にモータ21を後輪7により駆動し、モータ21により発電した電力をバッテリ12に回収する回生制動を行うこともできる。その他、パラレル式ハイブリッド車において通常行われる種々の制御モードでエンジン1とモータ21を制御することが可能である。
【0058】
車両Vの通常走行時には第2出力軸24が第1出力軸22から分離されるので、第2出力軸24は回転されず、油圧ポンプ11も作動されない。それ故、架装物も停止される。
【0059】
一方、架装物の作動時には、車両Vが停止され、アクチュエータ63はオンとされ、スリーブ61は第1位置P1に位置され、第1スプライン44と第2スプライン49の両方に噛合される。これにより第1出力軸22および第2出力軸24は互いに接続され相対回転不能となる。
【0060】
またPTOクラッチは断とされる。これによりPTO軸9が自動変速機3に対し動力伝達不能となり、モータ21の回転駆動力は自動変速機3に伝達されなくなる。
【0061】
この状態でモータ21が駆動されると、モータ21の回転駆動力はモータ出力軸32、駆動スプロケット34、チェーン36、被駆動スプロケット35、第1出力軸22、スリーブ61、第2出力軸24、入力軸13という経路で油圧ポンプ11の入力軸13に伝達される。これにより油圧ポンプ11が作動され、架装物が作動される。
【0062】
このように本実施形態によれば、PTO軸9にモータ21を接続して車両Vをハイブリッド化した場合にあっても、架装物の駆動を可能にすることができる。
【0063】
また、電気的トラブル等でモータ21が作動しなくなった場合、スリーブ61を第1位置P1に位置させることで、第1出力軸22および第2出力軸24を直結し、通常のPTOの如く、エンジン1によって油圧ポンプ11を駆動することもできる。この場合、エンジン1の駆動力は自動変速機3、PTO装置8、PTO軸9、プロペラシャフト10、第1出力軸22、スリーブ61、第2出力軸24、入力軸13という経路で油圧ポンプ11の入力軸13に伝達される。
【0064】
このようにモータ21が作動しなくなる異常が発生した場合においても、エンジン1によって油圧ポンプ11および架装物を作動させることができ、フェールセーフ機能を達成することができる。
【0065】
また、モータ21の正常時に意図的にエンジン1によって油圧ポンプ11および架装物を作動させることもできる。このときモータ21が回転駆動されるので、モータ21を発電機として機能させバッテリ12に充電することができる。
【0066】
ちなみに、PTO軸に車両駆動用モータを接続して車両をハイブリッド化した場合、架装物専用の別のモータを追加で設置することも考えられる。しかしこうするとモータの数が増え、製造コストが増加すると共に、車載スペースの圧迫により商品性を低下させてしまう。
【0067】
本実施形態によれば、車両駆動用モータ21を架装物駆動用に兼用して用いるため、こうした問題を回避することができる。
【0068】
また本実施形態では、ハウジング26に、油圧ポンプ11を直接的に取り付けるための座面56が設けられている。これにより油圧ポンプ11をハウジング26に直接的に取り付けることが可能となり、油圧ポンプ11をハウジング26に間接的に取り付けるための中間部材(アダプタ、カップリング等)が不要となり、製造コストを低減できる。
【0069】
以上、本開示の実施形態を詳細に述べたが、本開示の実施形態および変形例は他にも様々考えられる。
【0070】
(1)例えば前記実施形態では、第2出力軸24が、油圧ポンプ11の入力軸13に同軸に接続されるように構成されている。しかしながらこれに限らず、第2出力軸24は、油圧ポンプ11の入力軸13にオフセット状態で接続されるように構成されていてもよい。
【0071】
図5はこの場合の変形例を簡略的に示す。第2出力軸24の中心軸C4と入力軸13の中心軸C5はオフセットされ、第2出力軸24と入力軸13の外周部にはギヤ71,72が設けられている。これらギヤ71,72が噛合され、第2出力軸24が回転されることで、入力軸13が回転される。図示例では第2出力軸24の下方に入力軸13が配置されるが、これらのレイアウトは任意に変更可能である。ギヤ71,72の間にアイドルギヤ(図示せず)を設け、オフセット量を増やしてもよい。ギヤ機構以外の動力伝達機構(チェーン機構、ベルト機構等)を採用してもよい。
【0072】
例えば車載レイアウト等の都合により第2出力軸24と入力軸13を同軸に配置できない場合、こうしたオフセット配置が有効である。
【0073】
(2)前記実施形態では、アクチュエータ63に電磁ソレノイドを用いたが、他のアクチュエータ(電気モータ等)を用いることも可能である。またスリーブ駆動部材62は、アクチュエータ63によって自動的に作動させるほか、手動で作動させることも可能である。
【0074】
本開示の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本開示の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本開示に含まれる。従って本開示は、限定的に解釈されるべきではなく、本開示の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0075】
V 車両
100 モータ駆動装置
11 油圧ポンプ
13 入力軸
21 モータ
22 第1出力軸
23 動力伝達機構
24 第2出力軸
25 切替機構
26 ハウジング
44 第1スプライン
49 第2スプライン
56 座面
61 スリーブ
62 スリーブ駆動部材
63 アクチュエータ