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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134874
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車両用電動アクスル装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/00 20060101AFI20240927BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240927BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20240927BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20240927BHJP
   B60L 15/00 20060101ALI20240927BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240927BHJP
   B60G 9/04 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
B60K1/00
H02M7/48 Z
F16F15/02 C
H02K11/33
B60L15/00 H
B60L15/20 Z
B60G9/04
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045299
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】519196405
【氏名又は名称】株式会社IJTT
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】濱中 好久
(72)【発明者】
【氏名】加藤 壮
(72)【発明者】
【氏名】石川 知宏
(72)【発明者】
【氏名】小川 浩司
【テーマコード(参考)】
3D235
3D301
3J048
5H125
5H611
5H770
【Fターム(参考)】
3D235AA06
3D235BB23
3D235CC12
3D235CC13
3D235DD13
3D235DD19
3D235FF32
3D235HH44
3D301AA79
3D301BA01
3D301BA02
3D301CA22
3D301DA02
3D301DB21
3D301DB55
3J048AA06
3J048AD06
3J048BF02
3J048EA08
5H125AA01
5H125FF01
5H125FF03
5H611AA03
5H611BB04
5H611TT01
5H611UA04
5H770AA07
5H770QA27
5H770QA36
(57)【要約】
【課題】インバータを振動から保護する。
【解決手段】車両用電動アクスル装置100は、ディファレンシャル装置を収容するためのアクスルハウジング1と、アクスルハウジングに取り付けられた減速機2と、減速機に取り付けられた電動機3と、減速機および電動機の少なくとも一方に取り付けられたインバータ4と、インバータに取り付けられたダイナミックダンパー50とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディファレンシャル装置を収容するためのアクスルハウジングと、
前記アクスルハウジングに取り付けられた減速機と、
前記減速機に取り付けられた電動機と、
前記減速機および前記電動機の少なくとも一方に取り付けられたインバータと、
前記インバータに取り付けられたダイナミックダンパーと、
を備えたことを特徴とする車両用電動アクスル装置。
【請求項2】
前記インバータは、前記減速機および前記電動機の少なくとも一方のハウジングの上に取り付けられ、
前記ダイナミックダンパーは、前記インバータの上面部に取り付けられる
請求項1に記載の車両用電動アクスル装置。
【請求項3】
前記インバータは、下部と、前記下部の上に設けられ平面視で前記下部より小さい上部とを有し、
前記ダイナミックダンパーは、前記上部が設けられていない前記下部の上面部に取り付けられる
請求項1に記載の車両用電動アクスル装置。
【請求項4】
前記ダイナミックダンパーは、弾性部材と、前記弾性部材に埋設された質量体とを備える
請求項1に記載の車両用電動アクスル装置。
【請求項5】
前記弾性部材および前記質量体における長さは幅よりも大きくされる
請求項4に記載の車両用電動アクスル装置。
【請求項6】
前記ダイナミックダンパーは、前記インバータに取り付けられ折り返し形状の断面形状を有するブラケットを備え、
前記弾性部材は、前記ブラケットの内表面部に固定され、前記弾性部材の幅方向両端側の側面部は前記ブラケットに固定され、長さ方向両端側の端面部は前記ブラケットに固定されない
請求項4に記載の車両用電動アクスル装置。
【請求項7】
前記ダイナミックダンパーの取付状態において、前記弾性部材の長さ方向は前記車両の左右方向または前後方向と平行とされる
請求項5に記載の車両用電動アクスル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は車両用電動アクスル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック等の車両で採用されているリジッドアクスルサスペンションシステムでは、ディファレンシャル装置を収容したアクスルハウジングを車体に対しリーフスプリング等のバネを介して連結している。そして近年、このアクスルハウジングに減速機と電動機を一体的に取り付け、車両用電動アクスル装置として構成する例が見られる。この車両用電動アクスル装置を用いれば、既存の車両を比較的容易に電動化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-150658号公報
【特許文献2】特開2021-24327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動機にはその回転を制御するためのインバータが電気的に接続される。インバータは電気部品であるため、振動から保護する必要がある。
【0005】
そこで本開示は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、インバータを振動から保護することができる車両用電動アクスル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の態様によれば、
ディファレンシャル装置を収容するためのアクスルハウジングと、
前記アクスルハウジングに取り付けられた減速機と、
前記減速機に取り付けられた電動機と、
前記減速機および前記電動機の少なくとも一方に取り付けられたインバータと、
前記インバータに取り付けられたダイナミックダンパーと、
を備えたことを特徴とする車両用電動アクスル装置が提供される。
【0007】
好ましくは、前記インバータは、前記減速機および前記電動機の少なくとも一方のハウジングの上に取り付けられ、
前記ダイナミックダンパーは、前記インバータの上面部に取り付けられる。
【0008】
好ましくは、前記インバータは、下部と、前記下部の上に設けられ平面視で前記下部より小さい上部とを有し、
前記ダイナミックダンパーは、前記上部が設けられていない前記下部の上面部に取り付けられる。
【0009】
好ましくは、前記ダイナミックダンパーは、弾性部材と、前記弾性部材に埋設された質量体とを備える。
【0010】
好ましくは、前記弾性部材および前記質量体における長さは幅よりも大きくされる。
【0011】
好ましくは、前記ダイナミックダンパーは、前記インバータに取り付けられ折り返し形状の断面形状を有するブラケットを備え、
前記弾性部材は、前記ブラケットの内表面部に固定され、前記弾性部材の幅方向両端側の側面部は前記ブラケットに固定され、長さ方向両端側の端面部は前記ブラケットに固定されない。
【0012】
好ましくは、前記ダイナミックダンパーの取付状態において、前記弾性部材の長さ方向は前記車両の左右方向または前後方向と平行とされる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、インバータを振動から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の基本実施形態に係る電動アクスル装置を示す概略斜視図である。
図2】電動アクスル装置の動力伝達系を示すスケルトン図である。
図3】インバータの取付部の構成を示す分解斜視図である。
図4】インバータを取り付ける前の電動アクスル装置を示す平面図である。
図5】インバータを取り付けた後の電動アクスル装置を示す平面図である。
図6】ダイナミックダンパーを示す斜視図である。
図7図6のVII-VII断面図である。
図8】ダイナミックダンパーの取付方法を示す分解斜視図である。
図9】第1変形例の電動アクスル装置を示す概略斜視図である。
図10】第1変形例におけるダイナミックダンパーの取付状態を示す斜視図である。
図11】第2変形例の電動アクスル装置を示す概略斜視図である。
図12】第2変形例の電動アクスル装置を示す平面図である。
図13】第3変形例のダイナミックダンパーを示す斜視図である。
図14図13のXIV-XIV断面図である。
図15】第4変形例におけるインバータの取付部の構成を示す縦断面図である。
図16】第4変形例の変形例におけるインバータの取付部の構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を説明する。なお本開示は以下の実施形態に限定されない点に留意されたい。
【0016】
[基本実施形態]
図1は、本開示の基本実施形態に係る電動アクスル装置を示す概略斜視図である。電動アクスル装置100は車両に適用され、本実施形態ではトラックに適用されるよう構成されている。但し車両の種類は任意である。電動アクスル装置100は、左右の後輪(図示せず)を駆動すべく構成され、後輪用リジッドアクスル(もしくは車軸懸架式)サスペンションシステムの一部を構成する。
【0017】
便宜上、前後左右上下の各方向を図示の通り定める。これら各方向は車両の各方向と一致する。
【0018】
電動アクスル装置100は、ディファレンシャル装置を収容するためのアクスルハウジング1と、アクスルハウジング1に取り付けられた減速機2と、減速機2に取り付けられた電動機3と、減速機2および電動機3の少なくとも一方に取り付けられたインバータ4と、インバータ4に取り付けられたダイナミックダンパー(動吸振器)50とを備える。本実施形態の電動アクスル装置100はディファレンシャル装置を含まないが、これを含んでもよい。
【0019】
図2は、ディファレンシャル装置5を含む電動アクスル装置100の動力伝達系を示すスケルトン図である。減速機2は、ギヤ機構6と、ギヤ機構6を収容するハウジングすなわち減速機ハウジング7とを含む。電動機3は、ステータおよびロータ等の電気部品(図示せず)と、この電気部品を収容するハウジングすなわち電動機ハウジング8とを含む。減速機ハウジング7はアクスルハウジング1にボルト等によって着脱可能に取り付けられる。電動機ハウジング8は減速機ハウジング7にボルト等によって着脱可能に取り付けられる。
【0020】
ギヤ機構6は、電動機3の出力軸9に同軸に連結される駆動軸10と、駆動軸10に平行に設けられた減速軸11と、駆動軸10および減速軸11にそれぞれ取り付けられ互いに噛合される駆動ギヤ12および減速ギヤ13と、減速軸11に取り付けられたドライブギヤ14と、減速機ハウジング7に固定され駆動軸10および減速軸11を回転可能に支持する複数の軸受15とを備える。減速ギヤ13の歯数は駆動ギヤ12の歯数より多くされる。減速軸11は駆動軸10より後方に位置される。
【0021】
ディファレンシャル装置5は、周知のように、ディファレンシャルケース16と、アクスルハウジング1に固定されディファレンシャルケース16を回転可能に支持する複数の軸受17と、ディファレンシャルケース16に固定されドライブギヤ14に噛合されるドリブンギヤ18とを備える。またディファレンシャル装置5は、ディファレンシャルケース16内に回転可能に支持された複数のディファレンシャルピニオンギヤ19と、ディファレンシャルケース16内に回転可能に支持され複数のディファレンシャルピニオンギヤ19に噛合される左右のサイドギヤ20とを備える。左右のサイドギヤ20にはそれぞれ左右のアクスルシャフト21が連結される。これら左右のサイドギヤ20と、左右のアクスルシャフト21とは、同軸に配置される。
【0022】
ドライブギヤ14およびドリブンギヤ18は平行軸式のギヤ(スパーギヤ、ヘリカルギヤ等)とされる。これにより、交差軸式のギヤ(かさ歯車等)とした場合と比べて、製作が容易となり、振動騒音性能の向上が図れる。なお、駆動ギヤ12および減速ギヤ13も平行軸式のギヤとされる。
【0023】
代替的に、駆動ギヤ12および減速ギヤ13と、ドライブギヤ14およびドリブンギヤ18とを交差軸式のギヤとしてもよい。
【0024】
電動機3の出力軸9の中心を電動機中心C1という。また減速機2の駆動軸10の中心を減速機中心C2という。またアクスルシャフト21の中心をアクスルシャフト中心C3という。電動機中心C1と減速機中心C2は平行、特に同軸であり、電動機中心C1とアクスルシャフト中心C3は平行である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態のアクスルハウジング1はバンジョウ型であり、ディファレンシャルケース16を収容するディファレンシャルケース収容部22と、左右のアクスルシャフト21をそれぞれ収容する左右のアクスルシャフト収容部23とを一体的に有する。各アクスルシャフト収容部23の先端部にはアクスルハブ(図示せず)等を連結するためのフランジ24が一体に設けられている。また各アクスルシャフト収容部23の先端上部にはリーフスプリング等のバネを着座させるためのバネ座25が一体に設けられている。
【0026】
ディファレンシャルケース収容部22の前面部に減速機2ないし減速機ハウジング7が取り付けられている。また減速機2ないし減速機ハウジング7の左側面部に電動機3ないし電動機ハウジング8が取り付けられている。減速機ハウジング7および電動機ハウジング8の取付部にはそれぞれフランジ26,27が設けられている。これらフランジ26,27がボルト等(図示せず)により互いに着脱可能に取り付けられる。
【0027】
減速機ハウジング7は概ね四角箱状に形成され、電動機ハウジング8は概ね円筒状に形成されている。減速機ハウジング7において、左右の幅寸法は、上下の高さ寸法および前後の奥行き寸法より小さくされ、高さ寸法および奥行き寸法はほぼ同等とされている。電動機ハウジング8は、電動機中心C1と同軸の円筒状とされると共に、その電動機中心方向の右端(一端)がフランジ27に一体的に結合され、左端(他端)が閉止されている。
【0028】
インバータ4は周知のように、電動機3の回転を制御するための電気部品である。本実施形態において、インバータ4は電動機3に取り付けられる。
【0029】
インバータ4は概ね、上下2段の四角箱状に形成されており、左右の幅寸法W、上下の高さ寸法Hおよび前後の奥行き寸法Lを有する。高さ寸法Hは幅寸法Wおよび奥行き寸法Lより小さくされ、幅寸法Wは奥行き寸法Lより若干大きくされる。またインバータ4は、下部4Aと、下部4Aの上に設けられ平面視で下部4Aより小さい上部4Bとを有する。本実施形態のインバータ4は、平面視で大きい直方体の下部4Aの上に、小さい直方体の上部4Bを組み合わせたような形状とされる。下部4Aは前述の幅寸法Wと奥行き寸法Lを有する。上部4Bは、下部4Aの幅寸法Wと略等しい幅寸法WBと、下部4Aの奥行き寸法Lより小さい奥行き寸法LBとを有し、上部4Bの後端縁に沿って配置されている。下部4Aの高さ寸法と上部4Bの高さ寸法との合計がHである。上部4Bの前面右端部からは複数(2本)の放熱部材28が突出されている。
【0030】
本実施形態において、インバータ4は、電動機ハウジング8の上に取り付けられる。電動機ハウジング8に、上方に向かって起立するボス29が設けられ、インバータ4はボス29に取り付けられる。特に、インバータ4の底面部33には側方に向かって突出するフランジ30が設けられ、フランジ30がボス29に取り付けられる。
【0031】
図3および図4にも示すように、ボス29は、電動機ハウジング8から上方に向かって起立する円柱状ボスであり、その上端面にはボルト31が螺合される雌ネジ穴であるボス穴32が設けられている。ボス29は電動機ハウジング8に溶接または一体成形等の方法で設けられるが、他の方法で設けられてもよい。インバータ4は概ね、平面視における四角形の四隅の箇所において取り付けられることから、これに対応してボス29も計4つ設けられる。ボス29上にインバータ4が取り付けられたときにインバータ4が電動機ハウジング8から上方に離間され、電動機ハウジング8に干渉せず、電動機ハウジング8から浮いた状態となるよう、ボス29の位置および長さが設定されている。
【0032】
インバータ4の下部4Aに底面部33が形成される。この底面部33は平面視で幅寸法が奥行き寸法より長い長方形に形成される。底面部33から、前後の側面部34(図3では前側のみ示す)と、左右の側面部35(図3では左側のみ示す)とが垂直に立ち上がっている。前後の側面部34間の奥行きは底面部33の奥行きより若干小さく、左右の側面部35間の幅も底面部33の幅より若干小さい。よって底面部33は、前後の側面部34および左右の側面部35から水平方向外側に突出される格好となる。ここで外側とは、平面視における底面部33の幾何学的中心から離れる方向をいう。底面部33は、その最も外側に位置される前後左右の底面部端面36と、端面36と側面部34,35との間に延びる底面部上面37とを有する。
【0033】
図5にも示すように、フランジ30は概ね、平面視における底面部33の四隅の箇所に設けられる。詳しくは、フランジ30は、底面部33の前後の端縁部における左右の端部に、溶接、鋳込み等の方法で一体的に設けられている。なおフランジ30はネジ止め等の他の方法で設けられてもよい。前後左右の計4つのフランジ30が前後対称かつ左右対称に配置される。よってここでは図3に示す左前のフランジ30についてのみ詳しく述べる。
【0034】
フランジ30は、平面視において先端部が丸められたU字状に形成され、ボルト31が挿通される貫通穴としてのフランジ穴38を有する。フランジ30の高さ方向の厚さt1は底面部33の厚さt2より厚くされる。インバータ4の前側の側面部34と底面部上面37と底面部端面36とにより形成される段差形状に合わせて、フランジ30の基端部も段差形状とされる。すなわち、フランジ30の基端部には、段差形状を形成する上側端面39、中間段差面40および下側端面41が形成される。上側端面39が側面部34に固定もしくは一体的に固着され、中間段差面40が底面部上面37に固定もしくは一体的に固着され、下側端面41が底面部端面36に固定もしくは一体的に固着される。この構成により、フランジ30を底面部33に強固に固定もしくは一体的に固着することができる。
【0035】
フランジ30の底面は、インバータ4の底面部33の底面と面一とされる。平面視におけるフランジ30の先端部の曲率半径は、ボス29の半径と同等か、それより若干小さくされる。
【0036】
図1および図3に示すように、インバータ4を電動機3ないし電動機ハウジング8に取り付けるときには、インバータ4の四隅のフランジ30を4つのボス29の上にそれぞれ載置、着座させ、フランジ穴38がボス穴32に同軸になるよう位置合わせする。そしてフランジ30およびボス29の各組において、ボルト31をフランジ穴38に上方から挿入し、ボス穴32に締め付ける。これによりインバータ4の取り付けが完了し、インバータ4は、電動機ハウジング8から若干上方に離間された(浮いた)状態で、電動機ハウジング8に取り付けられる。これにより、インバータ4が電動機3ないし電動機ハウジング8から直接的に振動を受けずに済み、インバータ4の耐久性を向上することができる。
【0037】
図4は、インバータ4を取り付ける前の電動アクスル装置100(アクスルハウジング1、減速機2および電動機3)を示す。これに対し、図5は、インバータ4を取り付けた後の電動アクスル装置100を示す。図5に示すように、インバータ4は、電動機ハウジング8のフランジ27から僅かに左側に離間して取り付けられる。これによりインバータ4とフランジ27の干渉を防止し、インバータ4がフランジ27から直接的に振動を受けることを回避して、インバータ4の耐久性を向上することができる。
【0038】
一般に、インバータは車体側に取り付けられ、電動機とインバータはケーブルにより接続される。しかし、電動機からインバータまでの距離が長い場合、比較的長いケーブルを所定のルートに沿って配索しなければならず、組立性の点で難がある。
【0039】
また、車両走行時にアクスルハウジングが昇降し、これに追従して電動機も昇降する。一方、インバータは車体側に固定されている。そのため、インバータに対する電動機の昇降に追従してケーブルが繰り返し変形しなければならず、ケーブルが損傷または断線する虞がある。また、ケーブルをインバータおよび電動機に接続するコネクタにも無用の負荷が掛かり、コネクタ接続部が損傷する虞がある。これらはいずれも信頼性の低下に繋がる。
【0040】
しかし、本実施形態では、インバータ4が電動機3に取り付けられる。そしてインバータ4と電動機3が、これらの外部に位置された図示しないケーブルにより電気的に接続される。インバータ4と電動機3の距離が短いので、ケーブルの配索および接続は非常に容易である。よって、組立性を大幅に向上することができる。
【0041】
また、車両走行時にアクスルハウジング1および電動機3が昇降したとき、インバータ4も電動機3に追従して一体となって昇降する。このため、インバータ4と電動機3の間に相対移動は生じず、昇降時におけるケーブルの変形を防止できる。よって両者の相対移動に起因してケーブルが損傷または断線することを防止できる。また、ケーブルをインバータ4および電動機3に接続するコネクタにも無用の負荷を掛けずに済み、コネクタ接続部の損傷も防止できる。こうして信頼性を大幅に向上することができる。
【0042】
ところで、車両走行時にアクスルハウジング1がアクスルシャフト中心C3回りに捩れる(ワインドアップする)ことがあるが、この捩れに起因して電動機3がアクスルシャフト中心C3回りに振動することがある。このときにも、インバータ4が電動機3に取り付けられているので、両者の相対移動は生じず、ケーブルおよびコネクタ接続部の損傷を防止できる。
【0043】
本実施形態では、インバータ4を電動機ハウジング8の上で下方から複数箇所(4箇所)で支持するので、インバータ4を安定的に支持することができる。
【0044】
次に、ダイナミックダンパー50について説明する。ダイナミックダンパー50は、車両走行時に発生するインバータ4の振動を抑制し、インバータ4を振動から保護するためのものである。
【0045】
図6図8に示すように、ダイナミックダンパー50は、インバータ4に取り付けられ折り返し形状の断面形状を有するブラケット51と、ブラケット51の内表面部に固定された弾性部材52と、弾性部材52に埋設された質量体53とを備える。ダイナミックダンパー50は、長さLdと幅Wdと高さHdとを有し、長さLdが幅Wdよりも大きくされる。ここでは、ダイナミックダンパー50の長さLd、幅Wdおよび高さHdに沿った方向を長さ方向、幅方向および高さ方向という。またダイナミックダンパー50の各要素に関して、長さ方向、幅方向および高さ方向の寸法をそれぞれ長さ、幅および高さという。
【0046】
ブラケット51は、金属(例えば鉄)製の板材を折り曲げて形成される。ブラケット51は、長さ方向に沿った仮想的な折り曲げ線に沿って折り曲げられ、概ね、高さ方向の下方が開放されたコ字状、もしくは角張ったU字状の断面形状を有する。またブラケット51の長さ方向両端側は開放されている。ブラケット51の幅方向両端側における下端には、それぞれ幅方向外側に突出するフランジ54が形成され、このフランジ54がボルト55によってインバータ4に取り付けられる。幅方向両端側のフランジ54には、貫通穴であるフランジ穴56がそれぞれ複数(2つ)ずつ設けられ、各フランジ穴56にボルト55が上方から挿通され、インバータ4の雌ネジ穴である取付穴57に締め付けられる。
【0047】
弾性部材52は、ゴム等の弾性材料により形成され、接着、鋳込み等の方法でブラケット51に一体的に固着される。弾性部材52は、扁平な直方体形状に形成されると共に、ブラケット51の内表面部に嵌合され一体的に固着される。弾性部材52は、ブラケット51の上面部51Aと、幅方向両端側の側面部51Bとの内表面部ないし裏側面に固着される。弾性部材52の高さは、ブラケット51の内表面部の高さより小さい。よってダイナミックダンパー50が取り付けられたとき、弾性部材52の下面部はインバータ4に接触せず、インバータ4から離間されている。よって弾性部材52の高さ方向の自由振動が許容され、弾性部材52の機能を十分発揮できる。弾性部材52の長さはブラケット51の長さより僅かに短く、弾性部材52がブラケット51から長さ方向にはみ出さないようになっている。
【0048】
質量体53は、金属(例えば鉄)製の板材もしくはブロック材により、弾性部材52より一回り小さい扁平な直方体形状に形成されると共に、弾性部材52の内部かつ中心部に完全に埋設されている。なお、質量体53の一部が弾性部材52に埋設されず露出されてもよい。質量体53は弾性部材52より小さい長さと幅と高さとを有する。
【0049】
図から分かるように、弾性部材52および質量体53における長さは幅よりも大きくされる。また、弾性部材52の幅方向両端側の側面部はブラケット51の両側面部51Bに固定されているが、長さ方向両端側の端面部はブラケット51に固定されていない。つまり、弾性部材52はブラケット51により幅方向に拘束されているが、長さ方向には実質的に拘束されていない。よって弾性部材52および質量体53のユニット(質量体ユニットという)は、幅方向には振動し難いが、長さ方向には振動し易いという特性を有する。よってダイナミックダンパー50は、幅方向より長さ方向の方が制振性能に優れるという指向性を有する。
【0050】
ダイナミックダンパー50は、インバータ4の上面部に取り付けられる。詳しくはダイナミックダンパー50は、インバータ4のうち、上部4Bが設けられていない下部4Aの上面部4Auに取り付けられる。従って計4つの取付穴57は下部4Aの上面部4Auに設けられる。
【0051】
本実施形態の場合、上部4Bの奥行き寸法LBが下部4Aの奥行き寸法Lより小さくされ、上部4Bが下部4Aの後端縁部に沿って配置される。そのため、上部4Bの前方かつ下部4Aの上方は空きスペースとなっており、この空きスペースを有効利用してダイナミックダンパー50が設置される。これにより、インバータ4にダイナミックダンパー50を設置した場合でも全体の大きさを徒に拡大せずに済み、コンパクト化を図れる。
【0052】
本実施形態では、ダイナミックダンパー50がインバータ4に横向きに取り付けられる。ここでインバータ4の向きとは、インバータ4の長さLd方向の向きをいい、横向きとは、ダイナミックダンパー50の長さLd方向が車両の左右方向に平行になるような向きをいう。従ってダイナミックダンパー50の取付状態において、弾性部材52および質量体53の長さ方向は車両の左右方向と平行とされる。
【0053】
ダイナミックダンパー50は任意の向きに取り付けることができるが、前述の指向性のため、最も制振効果の高い向きが存在する。本実施形態ではこうした向きを試験等を通じて把握し、その結果を踏まえて横向きとしている。但し、車両の種類および使用状況、インバータ4の設置方法等に応じて制振効果の高い向きは異なると考えられるため、こうした向きの変化に対応して設置の向きを最適に設定するのが好ましい。
【0054】
ダイナミックダンパー50の取り付けに際しては、下部4Aの上面部4Au上にフランジ54が着座され、フランジ穴56の位置が取付穴57の位置に合わせられる。そして各フランジ穴56にボルト55が上方から挿通され、インバータ4の取付穴57に締め付けられる。これによりダイナミックダンパー50の取り付けが完了する。
【0055】
ダイナミックダンパー50が下部4Aの上面部4Auからはみ出さないよう、ダイナミックダンパー50の幅Wdは、上部4Bの前方に位置する下部4Aの上面部4Auの長さ(L方向)寸法と等しいかそれより短くされる。またダイナミックダンパー50の長さLdは、その上面部4Auの幅(W方向)寸法より著しく小さくされる。ダイナミックダンパー50は、放熱部材28の左側の空きスペースの幅方向(W方向)中央部に設置される。ダイナミックダンパー50の高さHdが上部4Bの高さ(H方向)寸法より小さいので、上部4Bより上方へのダイナミックダンパー50の突出が防止される。
【0056】
さて、本実施形態のようにインバータ4を電動機3に取り付けると、車両走行時に発生する電動機3の振動がインバータ4に伝達され、インバータ4が損傷する虞がある。
【0057】
しかし本実施形態では、インバータ4にダイナミックダンパー50を取り付けたので、ダイナミックダンパー50によりインバータ4の振動を抑制し、インバータ4を振動から保護することができる。そしてインバータ4の耐久性を向上することができる。
【0058】
特に、電動機3からインバータ4には比較的高い周波数を主とする振動が入力され、この振動の振動数がインバータ4の固有振動数に近いと、インバータ4が共振して損傷する可能性が高くなる。しかし、ダイナミックダンパー50はこの共振を抑制するようにチューニングされているので、結果としてインバータ4の共振による損傷を抑制し、インバータ4の耐久性を向上することができる。
【0059】
インバータ4の共振には方向性があると考えられるため、この方向性の向きにダイナミックダンパー50の指向性の向きが合うよう、ダイナミックダンパー50の向きを設定することで、最大の制振効果を得ることができる。本実施形態では、インバータ4の共振の向きが主に車両左右方向であるため、ダイナミックダンパー50の指向性も、車両左右方向に一致するよう合わせられている。
【0060】
また本実施形態では、ダイナミックダンパー50をインバータ4の上面部に取り付けたので、ダイナミックダンパー50の取り付けが容易であると共に、ダイナミックダンパー50を下方から安定的に支持することができる。
【0061】
次に、本開示の変形例を説明する。なお前記基本実施形態と同様の部分には図中同一符号を付して説明を割愛し、以下、基本実施形態との相違点を主に説明する。
【0062】
[第1変形例]
図9および図10に第1変形例を示す。図示するように、本変形例では、ダイナミックダンパー50がインバータ4に縦向きに取り付けられる。ここで縦向きとは、ダイナミックダンパー50の長さLd方向が車両の前後方向に平行になるような向きをいう。従ってダイナミックダンパー50の取付状態において、弾性部材52および質量体53の長さ方向は車両の前後方向と平行とされる。
【0063】
ダイナミックダンパー50の向きの変更に伴い、インバータ4の取付穴57の位置が変更される。ダイナミックダンパー50が下部4Aの上面部4Auからはみ出さないよう、ダイナミックダンパー50の長さLdは、上部4Bの前方に位置する下部4Aの上面部4Auの長さ(L方向)寸法と等しいかそれより短くされる。またダイナミックダンパー50の幅Wdは、その上面部4Auの幅(W方向)寸法より著しく小さくされる。ダイナミックダンパー50は、放熱部材28の左側の空きスペースの幅方向(W方向)中央部に設置される。ダイナミックダンパー50の高さHdが上部4Bの高さ(H方向)寸法より小さいので、上部4Bより上方へのダイナミックダンパー50の突出が防止される。
【0064】
本実施形態では、インバータ4の共振の向きが主に車両前後方向であるため、ダイナミックダンパー50の指向性の向きも車両前後方向に一致するよう合わせられている。
【0065】
[第2変形例]
図11および図12に第2変形例を示す。図示するように、本変形例では、インバータ4が減速機2に取り付けられている。一方、ダイナミックダンパー50は基本実施形態と同様にインバータ4に横向きに取り付けられている。
【0066】
詳しくは、インバータ4は、減速機ハウジング7の上に取り付けられる。減速機ハウジング7に、上方に向かって起立するボス29が設けられ、インバータ4はボス29に取り付けられる。特に、インバータ4の底面部33に設けられたフランジ30がボス29に取り付けられる。
【0067】
フランジ30は、底面部33の前端縁部に1箇所、後端縁部に2箇所の計3箇所に設けられる。これに対応して、ボス29も減速機ハウジング7に計3つ設けられる。3つのボス29は、ほぼ水平な平坦面である減速機ハウジング7の上面部に起立して設けられる。3つのフランジ30は、図7から分かるように、底面部33の左側に偏って配置されている。減速機ハウジング7の上面部の左右幅が電動機ハウジング8の左右幅より短いからである。インバータ4が減速機ハウジング7から上方に離間(浮いた)状態で取り付けられる点は前記同様である。またインバータ4は、減速機ハウジング7のフランジ26から僅かに右側に離間して取り付けられる。これによりインバータ4がフランジ26から直接的に振動を受けることを回避して、インバータ4の耐久性を向上することができる。
【0068】
本変形例の利点は基本実施形態と同様である。すなわち、インバータ4を減速機ハウジング7に取り付けた場合でも、車体側に取り付けた場合に比べ、電動機3との距離は遙かに短い。よってケーブルの配索および接続は非常に容易であり、組立性を大幅に向上することができる。
【0069】
また、車両走行時にアクスルハウジング1、減速機2、電動機3およびインバータ4は一体となって昇降する。このため、インバータ4と電動機3の間に相対移動は生じず、昇降時におけるケーブルの変形を防止できる。よって両者の相対移動に起因してケーブルが損傷または断線することを防止できる。また、ケーブルをインバータ4および電動機3に接続するコネクタにも無用の負荷を掛けずに済み、コネクタ接続部の損傷も防止できる。こうして信頼性を大幅に向上することができる。
【0070】
車両走行時にアクスルハウジング1が捩れたとき、減速機2、電動機3およびインバータ4は一体となってアクスルシャフト中心C3回りに振動する。よって、インバータ4と電動機3の間で相対移動は生じず、ケーブルおよびコネクタ接続部の損傷を防止できる。
【0071】
本変形例でも、インバータ4にダイナミックダンパー50を取り付けたので、インバータ4を振動から保護し、インバータ4の耐久性を向上することができる。特に、減速機2からインバータ4には比較的高い周波数を主とする振動が入力され、この振動の振動数がインバータ4の固有振動数に近いと、インバータ4が共振して損傷する可能性が高くなる。しかし、ダイナミックダンパー50はこの共振を抑制するようにチューニングされているので、結果としてインバータ4の共振による損傷を抑制し、インバータ4の耐久性を向上することができる。
【0072】
本変形例においても、第1変形例と同様、ダイナミックダンパー50をインバータ4に縦向きに取り付けることができるし、他の任意の向きに取り付けることができる。
【0073】
[第3変形例]
図13および図14に第3変形例を示す。図示するように、本変形例では、ダイナミックダンパー50の構成が変更される。
【0074】
前記同様、ダイナミックダンパー50は、折り返し形状の断面形状を有するブラケット51と、ブラケット51の内表面部に固定された弾性部材52と、弾性部材52に埋設された質量体53とを備える。ダイナミックダンパー50は、長さLdと幅Wdと高さHdとを有し、長さLdが幅Wdよりも大きくされる。
【0075】
ブラケット51は、金属(例えば鉄)製の板材を湾曲させて形成される。ブラケット51は、長さ方向に沿った仮想的な曲げ中心線を中心として断面円弧状に曲げられ、概ね、高さ方向の下方が開放されたU字状の断面形状を有する。またブラケット51の長さ方向両端側は開放されている。ブラケット51の幅方向両端側における下端には、それぞれ幅方向外側に突出するフランジ54が形成され、このフランジ54がボルト55によってインバータ4に取り付けられる。幅方向両端側のフランジ54には、貫通穴であるフランジ穴56(図8参照)がそれぞれ複数(2つ)ずつ設けられ、各フランジ穴56にボルト55が上方から挿通され、インバータ4の雌ネジ穴である取付穴57(図8参照)に締め付けられる。
【0076】
弾性部材52は、ゴム等の弾性材料により形成され、接着、鋳込み等の方法でブラケット51に一体的に固着される。弾性部材52は、長さ方向に延びる円柱状に形成されると共に、ブラケット51の内表面部に嵌合され一体的に固着される。弾性部材52は、半円筒状であるブラケット51の上面部51Aの内表面部ないし裏側面に固着される。弾性部材52の高さは、ブラケット51の内表面部の高さより小さい。よってダイナミックダンパー50が取り付けられたとき、弾性部材52の下面部はインバータ4に接触せず、インバータ4から離間されている。よって弾性部材52の高さ方向の自由振動が許容され、弾性部材52の機能を十分発揮できる。なお弾性部材52の長さはブラケット51の長さより僅かに短く、弾性部材52がブラケット51から長さ方向にはみ出さないようになっている。
【0077】
質量体53は、金属(例えば鉄)製の棒材により、弾性部材52より一回り小さい円柱状に形成されると共に、弾性部材52の内部かつ中心部に同軸で完全に埋設されている。なお、質量体53の一部が弾性部材52に埋設されず露出されてもよい。質量体53は弾性部材52より小さい長さと幅と高さと外径とを有する。
【0078】
弾性部材52および質量体53における長さは幅よりも大きくされる。また、弾性部材52の幅方向両端側の側面部はブラケット51に固定されているが、長さ方向両端側の端面部はブラケット51に固定されていない。つまり、弾性部材52はブラケット51により幅方向に拘束されているが、長さ方向には実質的に拘束されていない。よって弾性部材52および質量体53のユニット(質量体ユニット)は、幅方向には振動し難いが、長さ方向には振動し易いという特性を有する。よってダイナミックダンパー50は、幅方向より長さ方向の方が制振性能に優れるという指向性を有する。
【0079】
こうした本変形例のダイナミックダンパー50によっても上述と同様の作用効果を発揮できる。
【0080】
[第4変形例]
図15に第4変形例を示す。この第4変形例では、インバータ4が防振支持されており、フランジ30とボス29が弾性体42を介して取り付けられている。この第4変形例は、基本実施形態と第1~第3変形例とに適用可能であるが、ここでは基本実施形態に適用した例を述べる。
【0081】
弾性体42は、中実または中空のゴム等の弾性材料により形成され、具体的にはゴムブッシュにより形成されている。弾性体42は、その基本形状が高さ方向に延びる外径一定の円筒状に形成されると共に、高さ方向中間部の外周部には、フランジ30のフランジ穴38に嵌め入れられる、縮径された溝部43を有する。溝部43の上下面がフランジ30の上下面を挟んで支持する。溝部43は一般的な平行溝の形態を有する。
【0082】
弾性体42の中心穴44には金属(例えば鉄)製または樹脂製ブッシュ45が嵌め入れられる。ブッシュ45は、中心穴44に上方から嵌入される円管部46と、円管部46の上端に設けられた円形フランジ47とを一体的に有する。ボルト31は取り付け時に、円管部46に上方から挿入され、ボス穴32への締め付け後、円形フランジ47に密着される。こうした支持方法は、フランジ30とボス29の全ての取付部に適用される。
【0083】
本変形例によれば、フランジ30がボス29に直接取り付けられず、弾性体42を介して取り付けられる。よって、電動機3の振動を弾性体42で大幅に吸収した後に、インバータ4に伝達することができ、インバータ4に伝達される振動を大幅に抑制できる。これにより信頼性を大幅に向上することができる。
【0084】
ブッシュ45を挟んでボルト31をボス29に締め付けるとき、ブッシュ45によってボルト31の締め付け量が制限され、弾性体42の過度の圧縮および潰れが防止される。これにより、弾性体42の機能を損なうことなく十分に発揮できる。
【0085】
その他の利点については基本実施形態と同様である。本変形例を第1~第3変形例に適用した場合の利点も明らかであろう。
【0086】
図16は、第4変形例の変形例を示す。この変形例では弾性体42すなわちゴムブッシュの形状が異なり、溝部43の底面上下の角部に逃げ溝48が設けられている。この構造は特許文献2に記載されているものと同様である。これら逃げ溝48により、フランジ穴38の内周面上下の角部が弾性体42に接触することが防止され、弾性体42の損傷を防止することができる。
【0087】
弾性体42の外形状も異なり、溝部43より上側(軸方向一端側)および下側(軸方向他端側)の部分は、上方および下方に向かうにつれ縮径されるテーパ状とされる。
【0088】
以上、本開示の実施形態を詳細に述べたが、本開示の実施形態および変形例は他にも様々考えられる。
【0089】
例えば、インバータは、減速機および電動機の両方に取り付けられてもよい。すなわちインバータは、減速機および電動機の両方に跨がって取り付けられてもよい。この場合、基本実施形態および第2変形例のように、減速機および電動機の両方のハウジングの上にインバータを取り付けることができる。そして、減速機および電動機の両方に、上方に向かって起立するボスを設け、これらボスにインバータを取り付けることができる。そしてインバータの底面部に各ボスに対応するフランジを設け、各フランジを各ボスに取り付けることができる。
【0090】
インバータの取付部および取付箇所の数、位置、構成等は任意である。インバータは1箇所で取り付けることもできるが、支持剛性の観点からは、前記実施形態のように複数箇所で取り付けるのが好ましい。またインバータは、できるだけ均等に分散された取付箇所で取り付けられるのが好ましい。1箇所当たりの支持荷重を軽減できるからである。
【0091】
同様に、ダイナミックダンパーの取付部および取付箇所の数、位置、構成等も任意である。ダイナミックダンパーは1箇所で取り付けることもできるが、支持剛性の観点からは、前記実施形態のように複数箇所で取り付けるのが好ましい。またダイナミックダンパーは、できるだけ均等に分散された取付箇所で取り付けられるのが好ましい。1箇所当たりの荷重負担を軽減できるからである。
【0092】
基本実施形態および第1~第4変形例においてインバータは横向きに取り付けられたが、インバータは縦向きまたは斜めの向きに取り付けられることもできる。
【0093】
インバータの形状、寸法、構造等は任意である。フランジおよびボスの数、位置、形状、構造等も任意である。例えばボスの基本形状を角柱等とすることもできる。ダイナミックダンパーの形状、寸法、構造等も任意である。
【0094】
フランジおよびボスを省略することも可能で、インバータを直接的に、減速機および電動機の少なくとも一方のハウジングに取り付けてもよい。このときにも取り付けは弾性体を介して行うのが好ましい。
【0095】
前述の各実施形態および各変形例の構成は、特に矛盾が無い限り、部分的にまたは全体的に組み合わせることが可能である。本開示の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本開示の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本開示に含まれる。従って本開示は、限定的に解釈されるべきではなく、本開示の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 アクスルハウジング
2 減速機
3 電動機
4 インバータ
4A 下部
4Au 上面部
4B 上部
5 ディファレンシャル装置
7 減速機ハウジング
8 電動機ハウジング
50 ダイナミックダンパー
51 ブラケット
52 弾性部材
53 質量体
100 電動アクスル装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16