IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ライフライン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-デリバリー装置 図1
  • 特開-デリバリー装置 図2
  • 特開-デリバリー装置 図3
  • 特開-デリバリー装置 図4
  • 特開-デリバリー装置 図5
  • 特開-デリバリー装置 図6
  • 特開-デリバリー装置 図7
  • 特開-デリバリー装置 図8
  • 特開-デリバリー装置 図9
  • 特開-デリバリー装置 図10
  • 特開-デリバリー装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134880
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】デリバリー装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/07 20130101AFI20240927BHJP
   A61F 2/966 20130101ALI20240927BHJP
【FI】
A61F2/07
A61F2/966
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045311
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】豊田 悠暉
(72)【発明者】
【氏名】中野 英一
【テーマコード(参考)】
4C097
4C267
【Fターム(参考)】
4C097AA15
4C097BB01
4C097CC01
4C097DD09
4C267AA04
4C267AA44
4C267AA45
4C267AA47
4C267AA50
4C267AA53
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB10
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB19
4C267BB26
4C267BB40
4C267CC08
4C267CC10
4C267CC20
4C267DD01
4C267DD08
4C267EE03
4C267GG22
4C267GG23
(57)【要約】
【課題】ステント体に被覆されるカバーの位置ずれを抑制することのできるデリバリー装置を提供する。
【解決手段】自己拡張可能なステント体14を有する留置具と、留置具を分離可能に支持するデリバリーカテーテルと、を備え、デリバリーカテーテルは、ステント体14の少なくとも一部の軸方向範囲に被覆されるカバー34と、ステント体14を構成するステント線材14cが引っ掛けられることによって、ステント体14の拡張を拘束する複数の拘束線材52を有する拡張拘束機構50と、を備え、複数の拘束線材52は、軸方向に移動することによって、ステント体14の拡張を解除可能である。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己拡張可能なステント体を有する留置具と、
前記留置具を分離可能に支持するデリバリーカテーテルと、を備え、
前記デリバリーカテーテルは、
前記ステント体の少なくとも一部の軸方向範囲に被覆されるカバーと、
前記ステント体を構成するステント線材が引っ掛けられることによって、前記ステント体の拡張を拘束する複数の拘束線材を有する拡張拘束機構と、を備え、
前記複数の拘束線材は、軸方向に移動することによって、前記ステント体の拘束を解除可能であるデリバリー装置。
【請求項2】
前記拡張拘束機構は、前記拘束線材に対する前記ステント線材の引っ掛け箇所よりも基端側において、前記拡張拘束機構の構成部材が前記留置具の内側を移動することで、前記ステント体の拘束を解除可能である請求項1に記載のデリバリー装置。
【請求項3】
前記複数の拘束線材は、前記カバーから露出する前記ステント体の露出箇所の拡張を拘束する請求項1に記載のデリバリー装置。
【請求項4】
前記拡張拘束機構は、前記複数の拘束線材それぞれの径方向外側への変位を規制する変位規制部材を備える請求項1に記載のデリバリー装置。
【請求項5】
前記デリバリーカテーテルは、前記カバーを軸方向に引っ張る引張機構を備え、
前記拡張拘束機構は、前記引張機構に連動して前記ステント体の拘束を解除可能である請求項1に記載のデリバリー装置。
【請求項6】
前記引張機構は、前記カバーを軸方向に引っ張ることで前記カバーによる前記ステント体の被覆箇所を露出させる露出動作を行い、
前記拡張拘束機構は、前記引張機構による前記露出動作を開始する前又は直後に前記ステント体の拘束を解除する請求項5に記載のデリバリー装置。
【請求項7】
前記引張機構は、前記カバーを軸方向に引っ張ることで前記カバーによる前記ステント体の被覆箇所を露出させる露出動作を行い、
前記拡張拘束機構は、前記引張機構による前記露出動作を完了する直前又は後に前記ステント体の拘束を解除する請求項5に記載のデリバリー装置。
【請求項8】
前記拡張拘束機構は、前記複数の拘束線材のそれぞれに対する前記ステント線材の引っ掛けをまとめて解除可能な操作部材を備える請求項1に記載のデリバリー装置。
【請求項9】
前記留置具は、前記ステント体に対して基端側に配置され前記ステント体に接続される筒状体を備え、
前記筒状体の先端部の外径は、前記カバーの最大外径よりも大きくなり、
前記複数の拘束線材は、前記ステント体の基端部の拡張を拘束する請求項1に記載のデリバリー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、体内の目標部位まで留置具をデリバリーするためのデリバリー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、自己拡張可能なステント体と、ステント体を分離可能に支持するデリバリーカテーテルとを備えるデリバリー装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-501043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステント体の拡張を拘束するために、ステント体にカバーを被覆する場合がある。ステント体にカバーを被覆した場合、ステント体の拡張力によりカバーの軸方向端部が軸方向内側に向けて位置ずれしてしまい、意図せずステント体の一部が露出したうえで拡張してしまう場合がある。ステント体の一部が意図せず拡張してしまうと、留置具を体内にデリバリーする際に妨げとなってしまう。
【0005】
そこで、本開示の目的の1つは、ステント体に被覆されるカバーの位置ずれを抑制できるデリバリー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のデリバリー装置は、自己拡張可能なステント体を有する留置具と、前記留置具を分離可能に支持するデリバリーカテーテルと、を備え、前記デリバリーカテーテルは、前記ステント体の少なくとも一部の軸方向範囲に被覆されるカバーと、前記ステント体を構成するステント線材が引っ掛けられることによって、前記ステント体の拡張を拘束する複数の拘束線材を有する拡張拘束機構と、を備え、前記複数の拘束線材は、軸方向に移動することによって、前記ステント体の拘束を解除可能であるデリバリー装置。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ステント体に被覆されるカバーの位置ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態のデリバリー装置の側面図である。
図2】第1実施形態の留置具の側面図である。
図3】第1実施形態の留置具の使用例を模式的に示す図である。
図4】第1実施形態のステント体の一部を示す展開図である。
図5】第1実施形態のデリバリーカテーテルを模式的に示す側面図である。
図6】第1実施形態のシャフト及びカバーを示す側面断面図である。
図7】第1実施形態の引張機構の動作を説明する模式図であり、図7(A)は、ステント体の露出動作の開始前の状態を示し、図7(B)は、ステント体の露出動作途中の状態を示し、図7(C)は、ステント体の露出動作の完了後の状態を示す。
図8図8(A)は、拘束線材にステント線材が引っ掛けられた状態を示す模式図であり、図8(B)は、ステント線材の引っ掛けが解除された状態を示す模式図である。
図9図5のA-A断面図である。
図10】第2実施形態のデリバリー装置の動作を説明する模式図であり、図10(A)は、デリバリーカテーテルの動作前の状態を示し、図10(B)は、ステント線材の引っ掛けが解除された状態を示す。
図11】第3実施形態のデリバリー装置の動作を説明する模式図であり、図11(A)は、デリバリーカテーテルの動作前の状態を示し、図11(B)は、ステント体の露出動作を開始した直後の状態を示し、図11(C)は、ステント体の露出動作を完了した後の状態を示し、図11(D)は、ステント線材の引っ掛けが解除された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)以下、本開示のデリバリー装置を実施するための実施形態を説明する。同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、適宜、構成要素を省略、拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。
【0010】
図1を参照する。デリバリー装置10は、体内の目標部位まで留置具12をデリバリーするために用いられる。デリバリー装置10は、自己拡張可能なステント体14を有する留置具12と、留置具12を分離可能に支持するデリバリーカテーテル16と、を備える。本明細書では、デリバリーカテーテル16のシャフト30の軸心に沿った方向を単に軸方向といい、その軸心を円中心とする半径方向及び円周方向を単に径方向及び周方向という。また、シャフト30の軸方向においてデリバリーカテーテル16のハンドル32から遠ざかる側を先端側といい、それとは軸方向反対側を基端側という。
【0011】
図2図3を参照する。留置具12は、体内の目標部位に治療のために留置される。ここでは胸部大動脈18の動脈解離の治療に留置具12が用いられる例を説明する。この場合、留置具12のステント体14により動脈解離部分の内膜を外膜に押し付けることで動脈解離の治療がなされる。留置具12の用途はこれに限定されず、動脈瘤、消化管閉塞等の各種治療に用いられてもよい。治療対象となる生体器官の具体例も特に限定されず、胸部大動脈18の他、腹部大動脈、腸骨動脈、大腿動脈等の各種動脈の他、消化管等に用いられてもよい。
【0012】
本実施形態のデリバリー装置10を用いる術式は、生体の開胸を伴うOSG(open stent grafting:オープンステントグラフト内挿術)法を例に説明する。このOSG法は、生体の胸部を開胸後、デリバリー装置10を用いて、胸部大動脈内に切開箇所から留置具12を挿入する術式である。デリバリー装置10を用いる術式は特に限定されず、生体の開胸、開腹を伴わないEVAR(EndoVascular Aneurysm Repair)法、TEVAR(Thoracic EndoVascular Aortic Repair)法等の各種術式に採用してもよい。
【0013】
ステント体14は、自己拡張可能な少なくとも一つのステント20を含む。ここでの「自己拡張」とは、ステント20の弾性変形に伴う復元力により径方向外側に向けて拡張することをいう。ステント体14は、ステント20の自己拡張力により、生体器官の内腔面に張り付いた状態を保持可能である。本実施形態のステント20は、素線20aを用いて網状かつ筒状に編み込んだ編組ステントにより構成される。素線20aの素材は、例えば、形状記憶合金、ステンレス等の金属の他、樹脂等を採用できる。本実施形態のステント体14は、編組ステントを用いたベアステントにより構成される。ここでのベアステントとは、グラフトに接続されておらずむき出しになったステントをいう。ステント体14は、ベアステントに替えて、少なくとも一つのステント20と、ステント20が接続されるグラフトとを備えたステントグラフトにより構成されてもよい。ステント体14がステントグラフトにより構成される場合、ステント20の具体例は編組ステントに限定されず、Zステント等により構成されてもよい。
【0014】
留置具12は、任意の構成として、ステント体14に対して基端側に配置されステント体14に接続される筒状体24を備える。筒状体24は、筒状体24の先端部に設けられるカフ26と、カフ26よりも基端側に設けられるグラフト28とを備える。カフ26は、胸部大動脈18(生体器官)の切開箇所に設けられた開口周縁部の内側に配置され、その開口周縁部にグラフト28を吻合するときの縫い代となる。グラフト28は可撓性を持つ筒状部材であり、血液等の体液通流流路を内側に形成する。本実施形態のグラフト28は、胸部大動脈18の一部の切除箇所(病変箇所)に置換される人工血管として用いられる。ステント体14の基端部14dの一部は、筒状体24(カフ26)の内側に差し込まれたうえで縫合等により接続される。
【0015】
図4を参照する。図4は、ステント体14を構成する編組ステントの一部を軸方向に沿って切り開いたうえで平面に展開した形状の一部を示す展開図である。編組ステントは、素線20aからなる単位パターン20bを軸方向に列状に並べて構成される。単位パターン20bは、周方向に向かって波状に進行する素線20aにより構成される。本実施形態の単位パターン20bは、周方向に二周する素線20aにより構成され、各周の素線20aのなす波の位相は周方向に向かって半ピッチ分ずれている。編組ステントを構成する素線20aは周方向に向かって軸方向に折り返す屈曲部20cを備える。隣り合う単位パターン20bを構成する素線20aのなす屈曲部20cは互いに引っ掛け合うことで連結される。ここでの素線20aを用いた編み込みパターンは一例であり、その具体例は特に限定されない。ここでは単数の素線20aを用いた編み込みパターンを示すが、複数の素線20aを用いた編み込みパターンでもよい。
【0016】
図1図5を参照する。デリバリーカテーテル16は、少なくとも先端側部分において体内に挿入されるシャフト30と、シャフト30の基端側部分に取り付けられ術者により把持されるハンドル32と、ステント体14の一部の軸方向範囲に被覆されるカバー34と、カバー34を軸方向に引っ張る引張機構36と、を備える。
【0017】
図5図6を参照する。シャフト30は、曲げ変形可能な可撓性を備える。シャフト30の少なくとも一部は、留置具12のステント体14内に挿通されている。シャフト30の内部には軸方向に貫通する中空部30aが形成され、シャフト30の先端部には中空部30aの一部となる先端開口部30bが開口する。
【0018】
カバー34は、軟質素材により構成される筒状体である。カバー34は、ステント体14の少なくとも一部の軸方向範囲に被覆されることで、その軸方向範囲を収縮した状態に維持する。本実施形態のカバー34は、ステント体14の一部の軸方向範囲にのみ被覆されるが、ステント体14の軸方向全範囲に被覆されていてもよい。本実施形態のカバー34は、ステント体14に被覆させられた状態にあるとき、筒状部材の一部を内側に折り返した二重構造をなしている。このカバー34は、ステント体14を径方向外側から被覆する筒状の外周部34aの他に、ステント体14の内側に挿通される内側部34bと、外周部34aと内側部34bを繋ぐ折り返し部34cとを備える。折り返し部34cは、シャフト30よりも先端側において軸方向に折り返している。本実施形態のカバー34の外周部34aの外径は先端側に向かうにつれて徐々に小さくなる(図1参照)。留置具12に用いられる筒状体24の先端部の外径R24は、カバー34の外周部34aの最大外径R34よりも大きくなる。ここでの最大外径R34とは、カバー34の外周部34aの軸方向全範囲のなかで最も大きくなる外径をいう。
【0019】
引張機構36は、カバー34を軸方向に引っ張ることで、カバー34によるステント体14の被覆箇所を露出させる露出動作を行う。引張機構36は、ステント体14の露出動作のための術者による露出操作Daを受ける第1操作部材38と、第1操作部材38に対する露出操作Daに連動してカバー34を基端側に牽引する第1牽引部材40と、を備える。第1操作部材38は、ハンドル32に操作可能に取り付けられる。第1操作部材38は、ここではグリップを例に説明するが、スライドノブ、ボタン等により構成されてもよい。また、露出操作Daは、第1操作部材38の軸方向基端側への移動操作によりなされる例を説明するが、その具体例は特に限定されず、押し操作、回転操作等でもよい。第1牽引部材40は、棒材、ワイヤー等により構成される。第1牽引部材40の先端部は、カバー34の一部に接続され、その基端部は第1操作部材38に接続される。
【0020】
図7(A)~図7(C)を参照する。図7(A)、図7(B)に示すように、第1操作部材38に対する露出操作Daによって、第1操作部材38に連動する第1牽引部材40によりカバー34の一部(ここでは図6のカバー34の内側部34b)が基端側に牽引される。これにより、カバー34の外周部34aの軸方向先端側への移動を伴い、シャフト30の先端開口部30bからシャフト30内にカバー34の外周部34aが引き込まれる。この結果、カバー34の外周部34aが軸方向に引っ張られることで、カバー34の外周部34aによるステント体14の被覆箇所が徐々に露出し、その露出した箇所にあるステント体14が自己拡張力により拡張する。図7(C)に示すように、カバー34により被覆されていたステント体14の被覆箇所全体が露出し、かつ、ステント体14の径方向外側に重なる位置にカバー34が存在しなくなった時点で、引張機構36によるステント体14の露出動作が完了する。
【0021】
図5図8(A)を参照する。デリバリーカテーテル16は、ステント体14の部分的な軸方向範囲の拡張を拘束可能であるとともに、その拘束を解除可能な拡張拘束機構50を備える。拡張拘束機構50は、ステント体14を構成するステント線材14cが引っ掛けられる複数の拘束線材52と、複数の拘束線材52によるステント体14の拘束を解除するための術者による解除操作Dbを受ける第2操作部材54とを備える。この他に、拡張拘束機構50は、複数の拘束線材52が固定されるとともに第2操作部材54に対する解除操作Dbに連動して各拘束線材52を基端側に牽引する線材固定部材56と、複数の拘束線材52それぞれの径方向外側への変位を規制する変位規制部材58と、を備える。
【0022】
第2操作部材54は、ハンドル32に操作可能に取り付けられる。第2操作部材54は、グリップ、スライドノブ、ボタン等により構成されてもよい。ここでは、第2操作部材54の操作態様として、軸方向に移動操作可能である例を説明するが、その具体例は特に限定されず、押し操作、回転操作等でもよい。第2操作部材54に対する解除操作Dbは、第2操作部材54の軸方向基端側への移動操作によりなされる。
【0023】
本実施形態の線材固定部材56は第2操作部材54を兼ねている。線材固定部材56は、第2操作部材54に対する解除操作Dbに連動して各拘束線材52を基端側に牽引できればよく、そのための具体的構成は特に限定されない。例えば、第2操作部材54と線材固定部材56を棒材、ワイヤー等の第2牽引部材により連結し、第2操作部材54に対する解除操作Dbに連動して第2牽引部材により線材固定部材56を基端側に牽引することで、各拘束線材52を基端側に牽引してもよい。
【0024】
変位規制部材58は、拘束線材52に対するステント線材14cの引っ掛け箇所60よりも先端側に設けられる先端側変位規制部58aと、その引っ掛け箇所60よりも基端側に設けられる基端側変位規制部58bとを備える。先端側変位規制部58aは、複数の拘束線材52のそれぞれに対応して個別に設けられる。基端側変位規制部58bも、複数の拘束線材52のそれぞれに対応して個別に設けられる。本実施形態において先端側変位規制部58a及び基端側変位規制部58bのそれぞれは変位規制部材58を軸方向に延びる孔により構成される。拘束線材52は、各変位規制部58a、58bを構成する孔に挿通される。各変位規制部58a、58bは、拘束線材52に対して径方向外側から接触することで、拘束線材52の径方向外側への変位を規制可能である。この他にも、本実施形態の各変位規制部58a、58bは、拘束線材52に対して径方向内側から接触することで、拘束線材52の径方向内側への変位も規制可能でもある。変位規制部材58は、拘束線材52に対するステント線材14cの引っ掛け箇所60に対応する位置に設けられる凹部58cを備える。ステント線材14cの引っ掛け箇所60は変位規制部材58の凹部58c内に配置される。
【0025】
図5図8(A)、図9を参照する。複数の拘束線材52のそれぞれは軸方向に延びている。拘束線材52は、例えば、金属、樹脂等を素材とする線材である。拘束線材52には、ステント線材14cが拘束線材52の径方向内側から引っ掛けられる。ここでのステント線材14cとは、本実施形態では、ステント20の素線20aそのものをいうが、この他にも、ステント体14にステント20とは別に設けられる線材であってもよい。図9では、計8個の拘束線材52がある例を示すが、図8(A)等では、そのうちの二個の拘束線材52のみを図示する。複数の拘束線材52のそれぞれには、周方向に間隔を空けた複数の周方向位置において径方向内側からステント線材14cが引っ掛けられる。複数の拘束線材52に径方向内側からステント線材14cが引っ掛けられることで、ステント体14の部分的な軸方向範囲での径方向外側への拡張が拘束される。本実施形態の複数の拘束線材52は、ステント体14の基端部14dにおいて、カバー34から露出するステント体14の露出箇所14aの拡張を拘束する。
【0026】
図4でも拘束線材52に対するステント線材14cの引っ掛け箇所を示す。図4は、径方向外側からステント20を見た図であり、図4の紙面奥側が径方向内側となる。本実施形態において、拘束線材52にはステント線材14cを構成する素線20aの屈曲部20cが引っ掛けられる。これにより、複数の素線20a同士の交差箇所を引っ掛けるよりも、素線20aを引っ掛けやすくなる。
【0027】
以上のデリバリーカテーテル16は、留置具12を分離可能に支持する。これを実現するうえで、デリバリーカテーテル16は、カバー34により収縮した状態に維持されたステント体14をシャフト30により支持している。また、デリバリーカテーテル16は、引張機構36によるステント体14の露出動作とともに、拡張拘束機構50によるステント体14の拘束を解除することで、留置具12を分離可能である。これに加えて、デリバリーカテーテル16は、紐等を用いて、留置具12の一部をデリバリーカテーテル16の一部に着脱可能に取り付けてもよい。この場合、引張機構36によるステント体14の露出動作と、拡張拘束機構50による拘束の解除とに加えて、この紐等の切断等により留置具12を分離可能となる。
【0028】
以上の拡張拘束機構50の動作を説明する。図5図8(A)を参照する。以上の拘束線材52は、ステント線材14cを受ける箇所が軸方向基端側に移動することによって、ステント線材14cが引っ掛けられる引掛位置Paから、その引っ掛けを解除する引掛解除位置Pbに位置することができる。複数の拘束線材52が引掛位置Paにあるとき、ステント線材14cが複数の拘束線材52のそれぞれに引っ掛けられ、ステント体14の部分的な軸方向範囲での拡張が拘束される。
【0029】
第2操作部材54に対する解除操作Dbによって、第2操作部材54に連動する線材固定部材56により複数の拘束線材52が基端側に牽引される。これにより、図8(B)に示すように、複数の拘束線材52が引掛位置Paから引掛解除位置Pbに移動する。この結果、複数の拘束線材52に対するステント線材14cの引っ掛けがまとめて解除され、複数の拘束線材52によるステント体14の拘束が解除される。これに伴い、複数の拘束線材52により拘束されていた箇所においてステント体14が拡張し、その箇所においてステント体14が生体器官の内腔面に張り付けられる。このように、本実施形態の第2操作部材54は、術者による解除操作Dbによって、複数の拘束線材52それぞれに対するステント体14の引っ掛けをまとめて解除可能である。
【0030】
拡張拘束機構50は、拘束線材52に対するステント線材14cの引っ掛け箇所60よりも基端側において、拡張拘束機構50の構成部材が留置具12の内側を基端側に移動することで、複数の拘束線材52によるステント体14の拘束を解除可能である。ここでの拡張拘束機構50の構成部材とは、本実施形態では、複数の拘束線材52をいう。この構成部材は、この他にも、第2操作部材54と線材固定部材56を連結する前述の牽引部材の他、線材固定部材56等であってもよい。拡張拘束機構50の構成部材は、ここでの「留置具12の内側」として、引っ掛け箇所60よりも基端側においてステント体14により囲まれた箇所の内側を移動する。拡張拘束機構50の構成部材は、本実施形態のように留置具12が筒状体24を備える場合、その筒状体24の内側も移動する。この構成部材は、ステント体14の拘束を解除するとき、引っ掛け箇所60よりも基端側において留置具12に外周側から接触しつつ基端側に移動しないことになる。
【0031】
以上のデリバリー装置10の動作の一例を説明する。ここでは,前述の通り、OSG法を用いたデリバリー装置10の動作を説明する。このOSG法では、生体の胸部を開胸後、胸部大動脈18の一部を切開する。この後、デリバリー装置10を用いて、胸部大動脈18の切開部から胸部大動脈18の目標部位まで留置具12をデリバリーする。このとき、デリバリーカテーテル16のハンドル32を把持した状態で留置具12をデリバリーする。この後、拡張拘束機構50の第2操作部材54に対する解除操作Dbによって、拡張拘束機構50によるステント体14の拘束を解除する。これにより、ステント体14の自己拡張力によって、拡張拘束機構50によりステント体14の拡張が拘束されていた箇所を拡張させることで、その箇所を胸部大動脈18の目標部位に張り付かせる。これと前後して、引張機構36の第1操作部材38に対する露出操作Daによって、ステント体14を露出させる露出動作を行う。これにより、カバー34により被覆されていたステント体14の被覆箇所を露出させ、その露出箇所を自己拡張力によって拡張させることで胸部大動脈18の目標部位に張り付かせる。ステント体14の拡張が完了すると、デリバリー装置10のデリバリーカテーテル16を留置具12から基端側に引き抜くことで体内から抜去する。この後、必要な他の後処置をして施術を完了する。ここでの後処置とは、例えば、ここでは、留置具12のカフ26と血管とを吻合する作業、留置具12のグラフト28の基端側部分と血管とを吻合する作業が含まれる。
【0032】
以上のデリバリー装置10の効果を説明する。デリバリー装置10は、ステント体14の拡張を拘束する複数の拘束線材52をカバー34とは別に備えている。よって、カバー34に作用する拡張力を各拘束線材52によって分散できる。このため、ステント体14の拡張力によるカバー34の位置ずれを抑制でき、その位置ずれに起因して意図せずステント体14の一部が露出したうえで拡張してしまう事態を抑制できる。ひいては、留置具12を体内にデリバリーする際に、ステント体14において意図せず拡張した箇所が妨げとなる事態を回避できる。
【0033】
仮に、ステント体14の一部の拡張が拘束されていない状態のまま、留置具12を体内に押し込む場合を考える。この場合、ステント体14の拡張した箇所が生体器官の内腔面に当たることで押し込み抵抗が大きくなってしまう。この点、本実施形態によれば、ステント体14の意図しない拡張を拘束できるため、留置具12を体内に押し込むときの押し込み抵抗を小さくすることができる。また、ステント体14の一部が拡張した状態のまま押し込むことによる、ステント20の型崩れを防止することができる。
【0034】
複数の拘束線材52は、軸方向に移動することによって、ステント体14の拘束を解除可能である。よって、複数の拘束線材52を軸方向に移動させることによって、拘束線材52に対するステント線材14cの引っ掛けを確実に解除でき、その引っ掛け箇所60を安定して拡張させることが可能となる。また、複数の拘束線材52によるステント体14の拘束を解除するにあたり、複数の拘束線材52の周囲に別部材を配置する必要がないため、その分、拘束線材52周りでの外径の増大を抑制することができる。
【0035】
特に、カバー34の最大外径R34よりも外径の大きい筒状体24がステント体14よりも基端側に接続されている場合を考える。この場合、筒状体24よりも先端側においてステント体14の基端部14dが意図せず拡張してしまうと、その基端部14dが筒状体24側に向かって徐々に外径が大きくなり易く、押し込み抵抗が大きくなり易いという問題がある。本実施形態の複数の拘束線材52は、このようなステント体14の基端部14dの拡張を拘束している。よって、このような問題のある箇所での押し込み抵抗を小さくできる点で有利である。
【0036】
この観点から、複数の拘束線材52によりステント体14の拡張を拘束する箇所は、筒状体24よりも先端側において、ステント体14の基端部14dで筒状体24に近いほど望ましい。この観点から、編組ステントを用いたステント20をステント体14が備える場合、複数の拘束線材52は、最も基端側の単位パターン20bから二番目までの単位パターン20bを構成する部分において、ステント体14の基端部14dの拡張を拘束してもよい。本実施形態では、最も基端側の単位パターン20bを構成する部分において、複数の周方向位置においてステント線材14cを複数の拘束線材52に引っ掛けている。この他にも、最も基端側から二番目の単位パターン20bを構成する部分において、複数の周方向位置においてステント線材14cを複数の拘束線材52に引っ掛けてもよい。また、軸方向に分離した複数のステント20(Zステント等)をステント体14が備える場合、複数の拘束線材52は、最も基端側のステント20において、ステント体14の基端部14dの拡張を拘束してもよい。
【0037】
仮に、ステント体14の拡張を拘束する拘束部材として、ステント体14の外周側に巻き付けられるリング部材等の巻付部材を用いた場合を考える。この場合、ステント体14の拡張を拘束しようとする箇所で巻付部材の分だけ外径が増大してしまい、依然として押し込み抵抗が大きいままとなってしまう。この点、本実施形態によれば、拘束部材として複数の拘束線材52を用いている。よって、ステント体14の拡張を拘束しようとする箇所で拘束部材を巻き付けずに済み、その巻き付けに起因する外径の増大を回避できる。ひいては、拘束部材として巻付部材を用いる場合と比べ、ステント体14の拡張を拘束しようとする箇所の外径を小さくし易くなり、その分、押し込み抵抗を小さくすることができる。
【0038】
拘束部材として巻付部材を用いた場合、留置具12に外周側から接触しつつ拡張拘束機構50の構成部材(巻付部材等)を移動させることで、巻付部材によるステント体14の拘束を解除する必要がある。このため、巻付部材によるステント体14の拘束を解除するにあたって、拡張拘束機構50の構成部材が留置具12と大きく干渉してしまう。
【0039】
この点、本実施形態の拡張拘束機構50は、引っ掛け箇所60よりも基端側において、拡張拘束機構50の構成部材(ここでは拘束線材52)が留置具12の内側を移動することで、ステント体の拘束を解除可能である。よって、ステント体14の拘束を解除するにあたって、拡張拘束機構50の構成部材が留置具12と大きく干渉せず、その解除動作の容易化を図ることができる。特に、デリバリー装置10を使用している場合、留置具12の状態は不可視となる状況下にあることが多い。このような不可視状況下での留置具12との大きな干渉を回避できる点で有利である。
【0040】
複数の拘束線材52は、カバー34から露出するステント体14の露出箇所14aの拡張を拘束する。よって、拘束線材52に対するステント線材14cの引っ掛け箇所60においてカバー34を被覆せずに済み、その分、その引っ掛け箇所60周りでの外径の増大を抑制できる。
【0041】
ステント線材14cを複数の周方向位置で複数の拘束線材52に引っ掛けた場合、拘束線材52においてステント線材14cを受ける箇所に径方向外側に向かう拡張力が作用し、複数の拘束線材52それぞれが径方向外側に変位しようとする。本実施形態によれば、複数の拘束線材52それぞれの径方向外側への変位を規制する変位規制部材58を備えている。よって、複数の拘束線材52の拡張力に起因する複数の拘束線材52それぞれの径方向外側への変位を規制し、ステント線材14cの引っ掛け箇所60でステント体14を小さく収縮した状態に安定して維持することができる。
【0042】
拡張拘束機構50は、複数の拘束線材52のそれぞれに対するステント線材14cの引っ掛けをまとめて解除可能である。よって、複数の拘束線材52毎にステント線材14cの引っ掛けを個別に解除する場合と比べて、ステント線材14cの引っ掛けを解除するための操作を簡便にすることができる。
【0043】
(第2実施形態)図10(A)、図10(B)を参照する。以降の実施形態において、第1実施形態で説明した構成要素のうち、以下において説明していない構成要素は、第1実施形態と同じ内容が適用されてもよい。また、以降の実施形態におけるデリバリー装置10も、第1実施形態で説明した効果と同様の効果を発揮することができる。
【0044】
第1実施形態の拡張拘束機構50は、引張機構36と連動しない場合を説明した。本実施形態の拡張拘束機構50は、引張機構36と連動してステント体14の拘束を解除可能である。
【0045】
拡張拘束機構50は、線材固定部材56に固定され第1操作部材38の受け部38aに分離可能に取り付けられる取付部材70と、ハンドル32に固定され線材固定部材56の軸方向基端側への移動を規制可能な規制部材72とを備える。本実施形態において、拡張拘束機構50の第2操作部材54は、第1操作部材38が兼ねている。第2操作部材54に対する解除操作Dbは、第1操作部材38に対する露出操作Daを兼ねていることになる。また、本実施形態において、拡張拘束機構50の線材固定部材56は、第2操作部材54(第1操作部材38)とは別に設けられる。
【0046】
本実施形態の取付部材70は、第1操作部材38の受け部38aに引っ掛けられる弾性爪であり、自身の弾性変形を伴い受け部38aに対する引っかけを解除することで、第1操作部材38から分離可能である。この場合、受け部38aは、第1操作部材38に設けられる爪受け部により構成される。取付部材70と受け部38aの具体例は特に限定されず、磁石の組み合わせ等でもよい。取付部材70は、規制部材72によって線材固定部材56の軸方向基端側への移動が規制された状態で、第1操作部材38に対する露出操作Daを継続したときに、第1操作部材38から分離可能である。規制部材72は、線材固定部材56又は線材固定部材56と一体に移動可能な部材(例えば、取付部材70)に接触することで、線材固定部材56の軸方向基端側への移動を規制可能である。
【0047】
以上の拡張拘束機構50及び引張機構36の動作を説明する。第1操作部材38による露出操作Da(第2操作部材54による解除操作Db)を開始すると、第1操作部材38に取り付けられる取付部材70とともに線材固定部材56が軸方向基端側に移動する。これにより、図10(B)に示すように、複数の拘束線材52が引掛位置Paから引掛解除位置Pbに移動することで、複数の拘束線材52に対するステント線材14c(不図示)の引っ掛けが解除され、拡張拘束機構50によるステント体14の拘束が解除される。規制部材72は、複数の拘束線材52が引掛解除位置Pbに移動するまでは線材固定部材56の移動を規制しない位置に設けられる。この後、第1操作部材38に対する露出操作Daを継続すると、線材固定部材56の軸方向基端側への移動が規制部材72により規制される。この状態で、第1操作部材38に対する露出操作Daを継続すると、第1操作部材38から取付部材70が分離する。これより以降、第1操作部材38による露出操作Daを継続すると、線材固定部材56から第1操作部材38が分離した状態のまま第1操作部材38のみが軸方向基端側に移動し、ステント体14の被覆箇所を露出させる露出動作が開始される。
【0048】
以上の線材固定部材56は、第2操作部材54に対する解除操作Dbに連動するうえで、取付部材70を介して第1操作部材38(第2操作部材54)に分離可能に取り付けられることになる。また、線材固定部材56は、拡張拘束機構50によるステント体14の拘束が解除された以降において第1操作部材38から分離することで、それより以降は第1操作部材38による露出操作Daを継続しても軸方向基端側に移動不能になることになる。
【0049】
このように、拡張拘束機構50は、引張機構36に連動してステント体14の拘束を解除可能である。第2操作部材54が兼ねる第1操作部材38に対する術者の一つの操作(解除操作Dbを兼ねる露出操作Da)によって、引張機構36によりステント体14の被覆箇所が露出されるとともに、拡張拘束機構50によるステント体14の拘束を解除可能となることになる。これにより、引張機構36に対する操作と拡張拘束機構50に対する操作を個別にする場合と比べ、術者による操作回数を削減できる。
【0050】
特に、本実施形態の拡張拘束機構50は、カバー34により被覆されていたステント体14の被覆箇所を露出させる露出動作を開始する前にステント体14の拘束を解除可能である。ここでの「露出動作を開始する前」とは、第1操作部材38による露出操作Daを開始してからカバー34によるステント体14の被覆箇所の露出を開始する前をいう。これにより、引張機構36に連動するうえで、拡張拘束機構50による拘束を早期に解除できるようになる。ひいては、ステント体14において拡張拘束機構50により拘束されていた箇所を早期に生体器官の内腔面に張り付かせることで、生体器官に対する留置具12の軸方向位置を早期に位置決めできるようになる。
【0051】
このような効果との関係では、拡張拘束機構50は、ステント体14の露出動作を開始した直後にステント体14の拘束を解除可能であってもよい。ここでの露出動作を開始した直後とは、カバー34によるステント体14の被覆箇所の露出を開始してから、カバー34によるステント体14の被覆箇所14b(図6参照)の全軸方向長さに対して1/10の軸方向長さ分だけステント体14が露出し始めるまでの期間をいう。
【0052】
(第3実施形態)図11(A)~図11(D)を参照する。図11(A)~図11(D)は、第3実施形態のデリバリー装置10の動作を説明するための説明図である。本実施形態の拡張拘束機構50は、第2実施形態と異なり、引張機構36によるステント体14の露出動作の完了に連動してステント体14の拘束を解除可能である。拡張拘束機構50は、第1牽引部材40に固定されるストッパ80と、第1牽引部材40とともにストッパ80が軸方向基端側に移動するときにストッパ80を受けることが可能なストッパ受け82と、線材固定部材56に固定されるととともにストッパ受け82に固定される固定部材84とを備える。本実施形態のストッパ受け82には第1牽引部材40がスライド自在に挿通される。ストッパ受け82は、ストッパ80を受けた状態で第1牽引部材40が軸方向基端側に移動することで、ストッパ80とともに軸方向基端側に移動可能である。本実施形態の拡張拘束機構50の第2操作部材54は、第2実施形態と同様、第1操作部材38が兼ねている。また、本実施形態においても、拡張拘束機構50の線材固定部材56は、第2実施形態と同様、第2操作部材54(第1操作部材38)とは別に設けられる。
【0053】
以上の拡張拘束機構50及び引張機構36の動作を説明する。図11(B)に示すように、第1操作部材38による露出操作Da(第2操作部材54による解除操作Db)を開始する。これにより、前述のように、第1牽引部材40によりカバー34の一部が基端側に牽引されることで、カバー34が軸方向に引っ張られることでカバー34によるステント体14の被覆箇所が露出し始める。この後、図11(C)に示すように、カバー34により被覆されていたステント体14の被覆箇所全体が露出した以降も、第1操作部材38による露出操作Daを継続すると、第1牽引部材40に固定されたストッパ80がストッパ受け82に接触する。この状態のまま第1操作部材38の露出操作Da(第2操作部材54の解除操作Db)を継続すると、ストッパ受け82により固定部材84とともに線材固定部材56が軸方向基端側に移動する。これにより、図11(D)に示すように、複数の拘束線材52が引掛位置Paから引掛解除位置Pbに移動することで、複数の拘束線材52に対するステント線材14c(図示せず)の引っ掛けが解除され、拡張拘束機構50によるステント体14の拘束が解除される。
【0054】
以上の線材固定部材56は、ステント体14の露出動作が完了するまでは第1操作部材38に対する露出操作Daに連動せずに、軸方向基端側に移動しないことになる。また、線材固定部材56は、ステント体14の露出動作が完了した後に、第1操作部材38に対する露出操作Daに連動して軸方向基端側に移動可能となることになる。ここでの「露出動作を完了」とは、前述したように、カバー34により被覆されていたステント体14の被覆箇所全体が露出し、かつ、ステント体14の径方向外側に重なる位置にカバー34が存在しない状態になることをいう。以上の拡張拘束機構50も、第2実施形態と同様、引張機構36に連動してステント体14の拘束を解除可能であるため、術者による操作回数を削減できる。
【0055】
また、本実施形態の拡張拘束機構50は、引張機構36によるステント体14の露出動作を完了した後に、引張機構36に連動してステント体14の拘束を解除可能である。これを実現するうえで、拡張拘束機構50は、第1操作部材38による露出操作Daをすることでステント体14の露出動作を完了した後も、その露出操作Da(解除操作Db)を継続することで、ステント体14の拘束を解除可能となる。
【0056】
これにより、ステント体14の露出動作が完了するまで、ステント線材14cを拘束線材52に引っ掛けておくことで、デリバリーカテーテル16に対する留置具12の軸方向での位置ずれを抑制できる。このような留置具12の位置ずれは、ステント体14の露出動作の過程でカバー34からステント体14に摩擦力が付与されることで生じる。このような、ステント体14の露出動作中の留置具12の位置ずれを抑制することで、目標位置に留置具12を配置するうえで正確性の向上を図ることができる。また、留置具12の位置ずれを防止するためにステント体14とデリバリーカテーテル16を接続する他部材(糸等)を不要にできる利点もある。
【0057】
このような効果との関係で、拡張拘束機構50は、ステント体14の露出動作を完了する直前にステント体14の拘束を解除可能であってもよい。ここでのステント体14の露出動作を完了する直前とは、カバー34によるステント体14の被覆箇所14b(図6参照)の全軸方向長さに対して9/10の軸方向長さ分だけステント体14が露出し始めてから、ステント体14の露出動作が完了するまでの期間をいう。
【0058】
以上の構成要素の変形形態を説明する。
【0059】
留置具12は、筒状体24を備えずともよい。筒状体24の先端部の外径R24は、カバー34の最大外径R34以下であってもよい。筒状体24の具体例は特に限定されない。筒状体24は、例えば、グラフト28及びカフ26の一方のみを備えていてもよいし、それ以外の構成を備えていてもよい。
【0060】
引張機構36は、カバー34の外周部34aの軸方向先端側への移動を伴い、カバー34を軸方向に引っ張る例を説明した。これに替えて、引張機構36は、カバー34の外周部34aの軸方向基端側への移動を伴い、カバー34を軸方向に引っ張ってもよい。この場合、カバー34は、二重構造をなさずに、外周部34aのみを備えていてもよい。
【0061】
拡張拘束機構50を実現するための具体的構造は特に限定されない。例えば、第2操作部材54と線材固定部材56を連動させるうえで、両者は前述した第2牽引部材等の他部材を介して連結されていてもよい。拡張拘束機構50の構成部材は、拘束線材52に対するステント線材14cの引っ掛け箇所60よりも基端側において留置具12の外側を移動することで、ステント体14の拘束を解除可能であってもよい。
【0062】
複数の拘束線材52は、ステント体14の基端部14dの拡張を拘束する例を説明したが、その拡張を拘束する箇所は特に限定されず、ステント体14の先端部又は中間部のいずれかの拡張を拘束してもよい。また、複数の拘束線材52は、カバー34から露出するステント体14の露出箇所14a以外にも、カバー34により被覆されるステント体14の被覆箇所14bの拡張を拘束していてもよい。複数の拘束線材52は、ステント体14の拘束を解除するにあたり、ステント線材14cを受ける箇所での軸方向での移動方向は特に限定されず、基端側及び先端側のいずれであってもよい。
【0063】
引張機構36に拡張拘束機構50が連動するうえで、引張機構36による露出動作のタイミングと、拡張拘束機構50によるステント体14の拘束の解除タイミングとの先後関係は特に限定されない。例えば、引張機構36による露出動作途中の任意のタイミングで、拡張拘束機構50によるステント体14の拘束を解除してもよい。
【0064】
引張機構36に連動して拡張拘束機構50によるステント体14の拘束を解除するための具体例は特に限定されない。例えば、第2実施形態のように、線材固定部材56に固定された取付部材70を第1操作部材38に取り付けるうえで、取付部材70を第1操作部材38に分離不能に取り付けてもよい。また、第3実施形態のように、第1牽引部材40に固定されるストッパ80によりストッパ受け82を軸方向基端側に移動させるうえで、ストッパ受け82は線材固定部材56が兼ねていてもよい。また、第2実施形態のように引張機構36による露出動作を開始する前又は直後にステント体14の拘束を解除するうえで、第3実施形態のように、第1牽引部材40に固定されるストッパ80とストッパ80を受けるストッパ受け82を用いてもよい。また、拡張拘束機構50の取付部材70を第1操作部材38に分離可能に取り付けるための具体例も特に限定されない。これを実現するうえで、第2実施形態では規制部材72を用いる例を説明したが、これは必須ではない。
【0065】
拡張拘束機構50は、変位規制部材58を備えていなくともよい。変位規制部材58は、複数の拘束線材52の径方向外側への変位を規制できればよく、径方向内側への変位を規制することは必須とはならないし、そのための具体的構造は特に限定されない。例えば、変位規制部材58は、先端側変位規制部58a及び基端側変位規制部58bの一方のみを備えていてもよい。また、変位規制部材58の各変位規制部58a、58bは孔に替えて、拘束線材52を引っ掛け可能なリング形状、筒状形状等により構成してもよい。拡張拘束機構50は、個々の拘束線材52毎にステント体14の引っ掛けを個別に解除するための個別の第2操作部材54を備えていてもよい。
【0066】
以上の実施形態及び変形形態は例示である。これらを抽象化した技術的思想は、実施形態及び変形形態の内容に限定的に解釈されるべきではない。実施形態及び変形形態の内容は、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。実施形態及び変形形態において言及している構造、数値には、製造誤差を考慮すると同一とみなすことができるものも当然に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
10…デリバリー装置、12…留置具、12a…基端側筒状部、14…ステント体、14a…露出箇所、14c…ステント線材、16…デリバリーカテーテル、20…ステント、24…筒状体、34…カバー、36…引張機構、50…拡張拘束機構、52…拘束線材、58…変位規制部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11