(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134903
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】排水装置及び排水システム
(51)【国際特許分類】
A01K 63/00 20170101AFI20240927BHJP
A01K 63/04 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A01K63/00 B
A01K63/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045343
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】393022746
【氏名又は名称】ジェックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕行
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA08
2B104CA03
2B104EA01
2B104EB19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】封水切れのリスクを低減し安定した排水を行うことが可能な排水装置を提供する。
【解決手段】一端側に第1開口部を有し、他端側が溢水管3に接続される第1接続部を有するサイフォン管20と、サイフォン管20よりも大きな内径を有し、その第1開口部が挿入され、下部が開放された第2開口部を有する円筒部30とを有し、第2開口部は、第1開口部よりも低い位置に設定され、円筒部30の上面に、円筒部内部とエアポンプあるいは大気とを選択的に接続するための第2接続部30bが設けられている排水装置において、サイフォン管20は、一端側が第1開口部に接続される第1U字管部201と、第1U字管部201の他端側に、一端側が接続される逆U字管部203と、逆U字管部203の他端側に、一端側が接続され、他端側が第1接続部に接続される第2U字管部205と、を備えている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽内部に設けられ、サイフォン管と円筒部により構成されるサイフォン機構を有する排水装置であって、
一端側に上部が開放された第1開口部を有すると共に、他端側が溢水管に接続される第1接続部を有するサイフォン管と、
前記サイフォン管よりも大きな内径を有し、サイフォン管の前記第1開口部が挿入され、下部が開放された第2開口部を有する前記円筒部と、を有し、前記第2開口部は、前記第1開口部よりも低い位置に設定され、
前記円筒部の上面に、円筒部内部と空気供給部あるいは大気とを選択的に接続するための第2接続部が設けられている排水装置において、
前記サイフォン管は、
一端側が前記第1開口部に接続される第1U字管部と、
前記第1U字管部の他端側に、一端側が接続される逆U字管部と、
前記逆U字管部の他端側に、一端側が接続され、他端側が前記第1接続部に接続される第2U字管部と、を備えていることを特徴とする排水装置。
【請求項2】
前記第1U字管部、前記第2U字管部、前記逆U字管部は、前記溢水管の周囲を取り囲むように配置されることを特徴とする請求項1に記載の排水装置。
【請求項3】
前記第1開口部から前記第1U字管部の底面までの長さは、前記第1U字管部の底面から前記逆U字管部の頂面までの長さよりも長く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の排水装置。
【請求項4】
前記逆U字管部の上部に、逆U字管部内部と空気供給部あるいは大気とを選択的に接続するための第3接続部が設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の排水装置。
【請求項5】
前記逆U字管部の上部に、逆U字管部内部の空気を大気に放出可能な逆流防止弁を接続するための第3接続部が設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の排水装置。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の排水装置と、
前記空気供給部と、
前記空気供給部を第1弁体を介して前記第2接続部に接続する第1流路と、
大気を第2弁体を介して前記第2接続部に接続する第2流路と、
前記第1弁体、第2弁体を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする排水システム。
【請求項7】
前記逆U字管部の上部に、逆U字管部内部と前記空気供給部あるいは大気とを選択的に接続するための第3接続部が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の排水システム。
【請求項8】
前記第3接続部は、圧力調整部を介して前記空気供給部と接続されることを特徴とする請求項7に記載の排水システム。
【請求項9】
前記空気供給部を前記第1弁体を介して前記第3接続部に接続する第3流路と、
大気を前記第2弁体を介して前記第3接続部に接続する第4流路と、を備えたことを特徴とする請求項7に記載の排水システム。
【請求項10】
前記逆U字管部の上部に、逆U字管部内部の空気を大気に放出可能な逆流防止弁を接続するための第3接続部が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の排水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水槽内部に設けられ、サイフォン管と円筒部により構成されるサイフォン機構を有する排水装置、及び、この排水装置を備えた排水システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
かかる排水装置及び排水システムは、下記特許文献1に開示されている。この排水装置の構成によると、サイフォン機構は、サイフォン管と円筒部により構成されている。円筒部の内径は、サイフォン管よりも大きくなっており、円筒部とサイフォン管の間に所定の大きさの隙間が形成される。排水を行うときは、水槽内の水は、サイフォン作用により、上記隙間を介して円筒部の中に入り込む。さらにサイフォン管の第1開口部から入り込んだ水は、第1接続部を介して溢水管へと流れ込み排水される。
【0003】
ここで、円筒部の上面には第2接続部が設けられており、空気供給部または大気と選択的に接続される。空気供給部により円筒部の内部に空気を送り込んでいる状態では、サイフォン作用は働かず、水は排出されない。大気と接続されるときは、円筒部内部の空気が大気に放出され、サイフォン作用による排水が行われる。従って、空気供給部を接続するか大気と接続するかの制御を行うことで、排水のタイミングを制御する。
【0004】
この排水装置においては、排水レベルを第1排水レベルと第2排水レベルの2段階で設定できるようになっている。例えば、第1排水レベルでは水槽の水の10%を排水させて換水することができ、第2排水レベルでは水槽の水の30%を排水させて換水することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、排水量を更に大きくする(例えば、第1排水レベルで30%)ためには、円筒部の位置を下げて、第1開口部および第2開口部の位置も下げる必要がある。そうすると、排水前の通常の使用状態において、円筒部の内部に送り込む空気の圧力を大きくする必要がある。サイフォン管を構成するU字管部には、排水後に封水(U字管部の底部に残っている水)が残っており、円筒部の内部は、大気とはつながっていない。
【0007】
ここで、封水の一方は溢水管を介して大気が作用しているが、封水の他方には大気圧よりも大きな空気圧が作用している。この空気圧の大きさは、排水レベルが大きくなるように設定すると、大きくなる。そうすると、排水レベルが小さい場合に比べて、サイフォン管内部の封水に対して大きな空気圧が作用し、封水切れを起こす危険性がある。この封水切れにより、円筒部の内部が大気圧とつながってしまい、不用意に排水が開始してしまうことがある。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、排水レベルを大きくしたとしても封水切れのリスクを低減し安定した排水を行うことが可能な排水装置、及び、この排水装置を備えた排水システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明に係る排水装置は、
水槽内部に設けられ、サイフォン管と円筒部により構成されるサイフォン機構を有する排水装置であって、
一端側に上部が開放された第1開口部を有すると共に、他端側が溢水管に接続される第1接続部を有するサイフォン管と、
前記サイフォン管よりも大きな内径を有し、サイフォン管の前記第1開口部が挿入され、下部が開放された第2開口部を有する前記円筒部と、を有し、前記第2開口部は、前記第1開口部よりも低い位置に設定され、
前記円筒部の上面に、円筒部内部と空気供給部あるいは大気とを選択的に接続するための第2接続部が設けられている排水装置において、
前記サイフォン管は、
一端側が前記第1開口部に接続される第1U字管部と、
前記第1U字管部の他端側に、一端側が接続される逆U字管部と、
前記逆U字管部の他端側に、一端側が接続され、他端側が前記第1接続部に接続される第2U字管部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0010】
かかる構成による排水装置の作用・効果を説明する。この構成によると、排水装置は、サイフォン管と円筒部により構成されるサイフォン機構を有し、サイフォン管は、第1開口部から順に、第1U字管部、逆U字管部、第2U字管部、第1接続部の順で接続され、第1接続部を介して溢水管に接続される。排水が終了した時点で、第1U字管部と第2U字管部の2カ所において封水が形成され、逆U字管部には空気層が形成される。従って、安定した状態で封水を維持することができ、安定した動作環境を提供することができる。
【0011】
本発明において、前記第1U字管部、前記第2U字管部、前記逆U字管部は、前記溢水管の周囲を取り囲むように配置されることが好ましい。
【0012】
この構成によると、効率よく溢水管の周囲にサイフォン管を配置構成することができる。
【0013】
本発明において、前記第1開口部から前記第1U字管部の底面までの長さは、前記第1U字管部の底面から前記逆U字管部の頂面までの長さよりも長く設定されていることが好ましい。
【0014】
これにより、適切に排水を行うことができる。
【0015】
本発明において、前記逆U字管部の上部に、逆U字管部内部と空気供給部あるいは大気とを選択的に接続するための第3接続部が設けられていることが好ましい。
【0016】
この構成によると、封水切れがより確実に起こらないようにすることができる。
【0017】
本発明において、前記逆U字管部の上部に、逆U字管部内部の空気を大気に放出可能な逆流防止弁を接続するための第4接続部が設けられていることが好ましい。
【0018】
これにより、排水時間が短くなるようにすることができる。
【0019】
上記課題を解決するため本発明に係る排水システムは、
本発明に係る排水装置と、
前記空気供給部と、
前記空気供給部を第1弁体を介して前記第2接続部に接続する第1流路と、
大気を第2弁体を介して前記第2接続部に接続する第2流路と、
前記第1弁体、第2弁体を制御する制御部と、を備えたことを特徴とするものである。
【0020】
かかる構成による排水システムの作用・効果は以下の通りである。排水装置を構成するサイフォン機構による排水動作を制御するために、空気供給部、第1弁体、第2弁体が設けられ、制御部により制御される。これらの要素を制御することで、サイフォン機構の円筒部の内部に空気を送り込んだり、円筒部内部の空気を排出したりすることができる。これにより、排水のタイミングを制御することが可能になる。
【0021】
本発明において、前記逆U字管部の上部に、逆U字管部内部と前記空気供給部あるいは大気とを選択的に接続するための第3接続部が設けられていることが好ましい。
【0022】
本発明に係る前記第3接続部は、圧力調整部を介して前記空気供給部と接続されることが好ましい。
【0023】
これにより、円筒部の内部の圧力を適切に設定することができる。
【0024】
本発明において、前記空気供給部を前記第1弁体を介して前記第3接続部に接続する第3流路と、
大気を前記第2弁体を介して前記第3接続部に接続する第4流路と、を備えたことが好ましい。
【0025】
この構成によると、封水切れがより確実に起こらないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2A】従来技術に係るサイフォン管の構成を示す模式図
【
図2B】従来技術に係るサイフォン管の内部構造を示す模式図
【
図3A】従来技術に係るサイフォン管の課題を説明する図
【
図3B】従来技術に係るサイフォン管の課題を説明する図
【
図4】本実施形態に係る排水装置の構成を示す模式図
【
図5A】本実施形態に係るサイフォン管の構成を示す側面図(
図5Eの矢視XA)
【
図5B】本実施形態に係るサイフォン管の構成を示す側面図(
図5Eの矢視XB)
【
図5C】本実施形態に係るサイフォン管の構成を示す側面図(
図5Eの矢視XC)
【
図5D】本実施形態に係るサイフォン管の構成を示す側面図(
図5Eの矢視XD)
【
図5E】本実施形態に係るサイフォン管の構成を示す平面図
【
図6】本実施形態に係る排水システム(什器)の構成を示す模式図
【
図7】
図6の什器に用いられる給水系の第1実施形態を示す模式図
【
図8】
図6の什器に用いられる給水系の第2実施形態を示す模式図
【
図9A】第1排水レベルにおけるサイフォン機構の作用を説明する図
【
図9B】第1排水レベルにおけるサイフォン機構の作用を説明する図
【
図9C】第1排水レベルにおけるサイフォン機構の作用を説明する図
【
図10A】第2排水レベルにおけるサイフォン機構の作用を説明する図
【
図10B】第2排水レベルにおけるサイフォン機構の作用を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る排水装置の好適な実施形態を説明する前に従来技術の構成及び課題について詳細に説明する。
【0028】
図1は、従来技術に係る排水装置の構成を示す模式図である。水槽1の内部に溢水管3と仕切板101(破線で示す)を備えている。溢水管3は上端に開口部3aが設けられており、上端を超えて水を入れようとしてもオーバーフローして溢水管3の内部に流れ込むようになっている。
【0029】
仕切板101は、平面視でL字形をしており、水槽1の角部を取り囲んで観賞魚が溢水管100の周囲に近づかないようにしている。これにより、排水時に観賞魚が巻き込まれないようにしている。また、仕切板101の上部と下部には複数のスリット101aが形成されており、水槽内の水が通過できるようにしている。
【0030】
<従来技術に係るサイフォン機構の構成>
図2Aは、従来技術に係るサイフォン管の構成を示す模式図である。排水装置は、サイフォン機構2を備えている。サイフォン機構2は、サイフォン管20と円筒部30により構成されている。サイフォン管20は、溢水管3に接続されている。
【0031】
サイフォン管20は、全体としてU字管の形状を呈している。サイフォン管20は、第1垂直管部21、U字管部22、第2垂直管部23、接続管部24により構成される。第1垂直管部21、U字管部22、第2垂直管部23、接続管部24は、ガラスや樹脂等の適宜の素材で形成される。各管部により形成される流路の断面は円形である。
【0032】
第1垂直管部21は上端が開放された第1開口部21aを有する。U字管部22は、開
放された2カ所の上端部が、第1垂直管部21の下端部と、第2垂直管部23の下端部に
連結される。第2垂直管部23は、下端部がU字管部22の上端部の1つに連結され、上端部が接続管部24の下端部に連結される。接続管部24は、逆L字形を呈しており、下端部は第2垂直管部23の上端部に連結され、水平方向向きの端部(第1接続部24a)は溢水管3の中央部近傍に接続される。
【0033】
溢水管3は、垂直に設置されており、上端には開放された開口部3aが形成され、下端にも開放された開口部3bが形成される。溢水管3の上端を超えて水を入れようとしてもオーバーフローして溢水管3の内部に流れ込むようになっている。溢水管3は、円筒形を呈している。また、生体入荷時に水温や水質合わせを行うため、所定時間水槽1に生体袋を浮かせることがある。その際、溢水管3を設けることで、水槽1より水が溢れることを防止している。生体入荷時は溢水管3から水が排水され、サイフォン作用が開始することはない。すなわち、生体入荷時に意図しないサイフォン管による排水が開始されることがない。
【0034】
円筒部30は、サイフォン管20の第1垂直管部21の第1開口部21aが挿入されるように、下端に第2開口部30aが形成される。円筒部30の内径は第1垂直管部21の外径よりも大きくなるように設定されている。これにより、円筒部30とサイフォン管20との間に隙間Sが形成される。また、第2開口部30aは、第1開口部21aよりも低い位置になるように設定される。
【0035】
円筒部30の上部は半球状に形成されて閉塞されているが、中央部に第2接続部30bが設けられている。詳細は後述するが、この第2接続部30bを介して空気の流入や排出が行われる。
【0036】
図2Bは、
図2Aに示すサイフォン機構の作用を説明する模式図である。
図2Aは、排水が終了し、水槽内の給水が完了した状態を示す。溢水管3の上端の開口部3aの位置にまで給水され、水面の位置をW0で示す。水面W0には大気圧P0が作用している。
【0037】
一方、円筒部30の内部には空気が送り込まれ圧力P1が作用する。そのため、円筒部30の内部においては、水面はL2になるまで押し下げられている。また、排水が完了した状態では、サイフォン管2のU字管部22には封水SWが残っている。
図2Bの状態で封水SWの右側には圧力P1が作用し、左側には大気圧P0が作用する。ここで、P1>P0の関係があるので、封水SWの右側の水面の方が左側の水面よりも下に下がっている。この封水SWが安定して存在している以上、円筒部30の内部が大気につながることはなく、不用意に排水が始まることはない。
【0038】
図2Bに示すサイフォン管2の場合、円筒部30内部への空気の流入及び排出を制御することで、L1で示す第1レベルの排水とL2で示す第2レベルの排水を行うことができる。第1レベルではLFの位置からL1の位置までの量の水(10%)を排水することができ、第2レベルではLFの位置からL2の位置までの量の水(30%)を排水することができる。
【0039】
ここで、より多くの水を排水して換水するためには、排水レベルの位置を下げる必要がある。そのためには、
図3Aに示すように、円筒部30を従来よりも下げることで、第1排水レベルL1と第2排水レベルL2を下げることができ、排水量を大きくすることができる。
【0040】
円筒部30を下げることにより、円筒部30の内部に送り込む空気の圧力P1を大きくする必要がある。そうすると、封水SWの右側に作用する圧力P1もより大きくなり、
図2Bの場合と比べて、封水SWの右側の水面位置はより低くなる。その結果、泡状の空気が第1接続部24aの方へ移動し、それに伴い封水SWが溢水管3の方へ押し出されて、意図しない排水が開始されてしまう恐れがある。
図3Aに示す状態よりも圧力が高くなった場合、封水SWに右側の水面は更に低くなり、封水切れの危険性は更に高まる。
【0041】
これを回避するためには、円筒部30内の圧力を下げることも考えられる。
図3Bは、圧力P1を
図3Aの状態よりも低くした状態を示す。そのため、円筒部30の内部の水面WAは、第2開口部30aよりも高い位置になる。また、封水SWの右側に作用する圧力P1も
図3Aよりも低くなるので、封水SWの右側の水面も高くなり、U字管部22の底面からの高さも高くなり、封水切れに対して余裕が生じる。
【0042】
一方、円筒部30の内部の水面WAが高くなるため、サイフォン管2の第1開口部21aとの距離が短くなり、水槽内の水が不用意に排水されてしまう危険性が高くなる。その結果、安定した動作環境を提供することが困難になる。
【0043】
【0044】
溢水管3は上下に開口部3a,3bを有する。円筒部30の構成は
図2で説明したのと同じであり、第2接続部30bも同じものを使用することができる。
【0045】
サイフォン管2は、第1垂直管部200、第1U字管部201,第2垂直管部202,逆U字管部203,第3垂直管部204,第2U字管部205,第4垂直管部206,接続管部207により構成される。
【0046】
円筒部30は、サイフォン管20の第1垂直管部200の第1開口部200aが挿入されるように、下端に第2開口部30aが形成される。円筒部30の内径は第1垂直管部200の外径よりも大きくなるように設定されている。これにより、円筒部30とサイフォン管20との間に隙間Sが形成される(
図9A参照)。また、第2開口部30aは、第1開口部200aよりも低い位置になるように設定される。
【0047】
第1垂直管部200の上端には第1開口部200aが形成される一方、下端は第1U字管部201の上端に緊密に挿入される。すなわち、水漏れがないような状態で取り付けられる。これは、他の管に関しても同様である。従って、第1U字管部201の内径は、第1垂直管部200の外径と同じか、ほぼ同じとなる。この寸法関係は他の管同士の結合の場合も同様である。
【0048】
第1U字管部201の他端は、第2垂直管部202の下端が挿入される。第2垂直管部202の上端は、逆U字管部203の一端に挿入される。逆U字管部203の他端には、第3垂直管部204の上端が挿入される。第3垂直管部204の下端は、第2U字管部205の一端に挿入される。第2U字管部205の他端には、第4垂直管部206の下端が挿入される。第4垂直管部206の上端は、接続管部207の下端に挿入される。接続管部207は、逆L字形を呈しており、その先端が溢水管3の中に挿入された状態で結合される。
【0049】
接続管部207の上部は水平方向を向いており、その先端は溢水管3の内部に臨んでいる。接続管部207と溢水管3の接続箇所は第1接続部207aに相当する。溢水管3の側面には、接続管部207の先端を挿入するための穴が形成されるが、穴の周囲は水漏れしないように適宜の方法で密封される。
【0050】
図5Eの平面図に示すように、溢水管3と円筒部30は隣接配置され、その外壁面どうしが接した状態で取り付けられる。両者が容易に分離しないように接着等の適宜の方法で結合される。円筒部30に隣接して、逆U字管部203が配置される。両者は、その外壁面が接するか、ほぼ接する状態で配置される。
【0051】
接続管部207は、逆U字管部203とその外壁面が接するか、ほぼ接する状態で配置される。第1U字管部201の設置方向と逆U字管部203の設置方向は、θ1=90゜~110゜になるようにする。この設置方向とは、第1U字管部201のU字の底部の方向、逆U字管部203のU字の底部の方向のことを指す。
【0052】
逆U字管部203の接地方向と、第2U字管部205の設置方向はθ2=160゜~180゜になるようにする。第2U字管部205のU字の底部の方向、逆U字管部203のU字の底部の方向は、同じであるか、ほぼ同じ状態になる。
【0053】
第1U字管部201と第2U字管部203の底面は同じ位置に設定される。ただし、異なる高さにしてもよい。逆U字管部203の頂面と、接続管部207の頂面は、同じ高さに設定してもよいし、異なる高さにしてもよい。なお、第1接続部207aの最も高い位置は、接続管部207の頂面207b(水平方向を向いている箇所の最も高い位置)の位置と同じである。
【0054】
第1開口部200aから第1U字管部201の底面までの長さH1(
図5A参照)は、第1U字管部201の底面から逆U字管部203の頂面までの長さH2(
図5B参照)よりも長く設定されている。
【0055】
以上のような構成にすることで、サイフォン管20は、溢水管3の周囲を取り囲むように配置される。また、第1U字管部201,逆U字管部203、第2U字管部205は、溢水管3の周囲を取り囲むように配置される。これにより、排水装置を無駄な配置空間を極力なくしてコンパクトに構成することができる。
【0056】
<排水システムの構成>
次に本発明に係る排水システムの構成を説明する。
図6は、生体什器に設けられる排水システムの概要を示す模式図である。説明の便宜上、排水システムに関係のない要素は省略している。
図7は、什器に用いられる給水系の第1実施形態の構成を示す模式図である。説明の便宜上、他の要素は省略している。
図8は、什器に用いられる給水系の第2実施形態の構成を示す模式図である。説明の便宜上、他の要素は省略している。本発明として、いずれの実施形態を採用してもよい。
【0057】
図6に示すように、店舗等に設置される什器は、不図示の陳列棚に多数の水槽1が配置されている。本実施形態では、各段に4つの水槽1が設置されており、合計3段(上段、中段、下段)の陳列棚に合計12個の水槽1が設置されているが、水槽1の配置態様は、これに限定されるものではなく、種々の配置態様を実施することができる。各水槽1には、
図4、
図5で説明した排水装置が設けられている。
【0058】
各段の水槽1の上部には、空気流入排出管40が水平状態に設けられており、垂直に配置された空気供給管45を介してエアポンプ5(空気供給部に相当)からの空気が送り込まれる。空気流入排出管40と空気供給管45は、継手46により連結されている。空気流入排出管40には、第1弁体41と第2弁体42が設けられている。排水装置に空気を送り込むときは、第1弁体41を開放することで、エアポンプ5からの空気が排水装置に流入する。第2弁体42の外側(図の左側)は大気に開放されており、第2弁体42を開放することで、排水装置内の空気を大気に開放することができる。
【0059】
空気流入排出管40と第2接続部30bとは、一方コック43と垂直管44を介して接続されている。エアポンプ5、第1弁体41、第2弁体42を制御することで、サイフォン機構2の第2接続部30bは、エアポンプ5または大気と選択的に接続することができる。例えば、第1弁体41を開放して、第2弁体42を閉塞することで、エアポンプ5から空気をサイフォン機構2の円筒部30内へ送り込むことができる。また、第1弁体41を閉塞して第2弁体42を開放することで、円筒部30内部の空気を大気へ逃がすことができる。垂直管44として、例えば、柔軟性を有するエアチューブを用いることができる。
【0060】
エアポンプ5から第1弁体41を通り第2接続部30bまでの流路が第1流路に相当し、大気に通じる第2弁体42から第2接続部30bまでの流路が第2流路に相当する。
【0061】
なお、各水槽1には空気(酸素)を常時供給する必要があるが、これも上記エアポンプ5により行われる。エアポンプ5からの配管を分岐させて、サイフォン機構への空気供給と水槽内への空気供給を行うことができる。あるいは、エアポンプ5は1つであるが、別々の独立した配管構成にしてもよいし、別々のエアポンプを用いてもよい。
【0062】
図6に示すように、溢水管3の中に流れ込んだ水は、溢水管3の下端にある開口部3bから落下する。矢印8で示すように、落下した水は、ちょうど真下にある溢水管3の開口部3aに入り込む。そのために、上段の溢水管3の開口部3bと中段の溢水管3の開口部3aをつなぐための流路として不図示のアタッチメントが設けられる。このアタッチメントは着脱可能である。なお、アタッチメントにより開口部3aからの水の流入が妨げられないように径の大きさが設定されている。
【0063】
中段の溢水管3から下段の溢水管3へと水が落下する場合も同様なアタッチメントが設けられる。下段の溢水管3から落下する水については、
図7及び
図8により説明する。なお、溢水管3から排出される水の流路構成については、上記に限定されるものではなく、他の実施形態を採用することができる。例えば、水平に配置された排水管に集水することができるように構成してもよい。
【0064】
<単独ろ過方式>
図7は、単独濾過方式の給水系の構成を示す。
図6で説明した排水システムが用いられているが説明の便宜上、図示は省略する。水槽1の水は汚染してくるので水をろ過する機構は必要であるが、単独濾過方式では個々の水槽1に濾過装置が用いられている。なお、ろ過装置は周知のものを使用でき、図示及び説明は省略する。
【0065】
什器の上部には貯水槽6が配置される。貯水槽6から各水槽1へ水(飼育水)が供給される。貯水槽6内にはフロート弁6aが設けられており、満水になると弁体66を閉鎖するように動作する。貯水槽6には、弁体66と手動バルブ67が設けられており、通常は弁体66を介して上流側から水道水が供給される。故障等で弁体66が使用できないときは、手動バルブ67を操作して水を供給できるようにする。
【0066】
什器の各段の上部には第1水平配管61(3カ所)と第2水平配管60(1カ所)が配置される。第1水平配管61及び第2水平配管60は、左右で垂直配管62(2カ所)と接続される。第1水平配管61の左右両側には弁体63と手動バルブ64が設けられている。各水槽1には給水バルブ65が設けられている。通常は、弁体63を開放することで、貯水槽6から各水槽1へ水が供給される。故障等で弁体63が使用できないときは、手動バルブ64を操作して水を供給できるようにする。弁体65,66は制御部により開放及び閉塞が制御される。
【0067】
下段にある水槽1の溢水管3から落下した水は、水平に配置された排水管80により集水されて回収管68により、不図示の排水経路に送られる。回収管68にはセンサーが設けられており、通過する水量の検出を行う。回収管68は斜めカット68aが形成されており、水量を検出しやすいようにしている。
【0068】
<集中ろ過方式>
図8は、集中ろ過方式の給水系の構成を示す。
図6で説明した排水システムが用いられているが説明の便宜上、図示は省略する。什器の上部に配置される貯水槽に関連した構成は
図6と同じである。什器の下部にろ過水槽7が配置されており、このろ過水槽7でろ過された水が各水槽1に供給される。従って、各水槽1にはろ過装置は設けられていない。
【0069】
ろ過水槽7にはフロート弁7aが設けられ、満水になると弁体76を閉塞する。貯水槽6とろ過水槽7は垂直配管70により接続される。弁体76が設けられ、弁体76を開放することで水がろ過水槽7に供給される。故障等で弁体76が使用できないときは、手動バルブ77を操作して水を供給できるようにする。
図8に示す各弁体は制御部により制御される。
【0070】
ろ過水槽7から各水槽1への給水は、水平配管73と垂直配管72により行われる。弁体75を開放することで、給水ポンプ71により各水槽1に水が供給される。各水槽1には給水バルブ74が設けられており、水が水槽内へ供給される。各水槽1において排水装置により排水された水は、各水槽1に設けられた溢水管3を介して、再びろ過水槽7へ送り込まれ、ろ過された状態で再び各水槽1へ供給される。このように水はろ過されながら循環して使用される。なお水が循環する場合は、排水装置の溢水管3からオーバーフローした水がろ過水槽7へ戻るようになっている。上段から中段、中段から下段への水の移動は、前述のように不図示のアタッチメントにより矢印8に沿って行われる。
【0071】
また、下段の水槽1の溢水管3から落下した水は、水平方向の配管80により集水され、垂直方向の配管81によりろ過水槽7へ戻される。ろ過水槽7に戻された水は、ろ過された後、再び、給水ポンプ71により各水槽1へ送られる。
【0072】
サイフォン機構2による水の排出を行うときは、垂直配管72の弁体75は閉塞される。この場合、弁体79を開放させて給水ポンプ71により送り出される水は、弁体79を介してろ過水槽7に戻されるようにしている。弁体79は、通常の使用状態では閉塞させている。
【0073】
ろ過水槽7には、排出口78が設けられている。各水槽1のサイフォン機構2により水の排出を行う場合、多くの排水がろ過水槽7に流れ込むことになるので、オーバーフローした水は排出口78から排出されるようにしている。
【0074】
<排水作用>
次に、
図4、
図5、
図6で説明した排水装置及び排水システムの作用について説明する。本実施形態では、水替えのため水槽1の水を排出する場合、その排水量を2段階に設定することができる。
【0075】
図9A~
図9Dは、第1排水レベルにおけるサイフォン機構の作用を説明する模式図である。模式図であるため、垂直管部とU字管部と逆U字管部の内径は同じ寸法で示している。また、説明の便宜上、サイフォン管20を構成する部材は平面展開して図示している。サイフォン機構を動作させない(水替えによる排水をさせない)状態では、
図6における第1弁体41を開放し、第2弁体42を閉塞する。そして、エアポンプ5により各水槽1のサイフォン機構2に空気が送り込まれる。
【0076】
図9Aは、排水および給水が完了した通常の状態を示す。
図9Aに示すように、円筒部30の開口部30aの位置まで空気が入り込んでいる。水面の位置をWAで示す。空気が入り込んでいる領域をAR1で示している。従って、サイフォン機構2によるサイフォン作用は行われない。この状態では水面W0は溢水管3の上端の開口部3aに位置している。エアポンプ5、第1弁体41、第2弁体42に対する制御は、コンピュータを中核とする制御部により行われる。
【0077】
円筒部30の内部は空気の圧力P1が一定にかかる状態にする必要がある。水面W0には大気圧が作用し、圧力P1>大気圧P0の関係にある。サイフォン管20は、2つのU字管部201,205を備えており、封水SW1,SW2が2カ所に形成される。ここで、右側の封水SW1の右側の水面には圧力P1が作用し、左側の水面には圧力P2が作用する。なお、本明細書において、右側、左側という表現は説明の便宜上用いるものであり、排水装置の設置方向とは関係がない。P1>P2の関係にあり、右側の水面は左側の水面より少し下がっている。
【0078】
なお、円筒部内に作用する圧力P1の大きさは、
図9Aに示す状態に限定されるものではなく、ある程度の許容範囲がある。図示の状態より圧力が小さくなると、水面WA及び封水SW1の右側の水面は、図示の位置よりも高くなる。一方、圧力が大きくなると、封水SW1の右側の水面は、図示の位置よりも低くなる。
【0079】
左側の封水SW2の右側には圧力P2が作用し、左側の水面には圧力(大気圧)P0が作用する。P2>P0の関係にあり、封水SW1と同じように、右側の水面は左側の水面より少し下がっている。また、逆U字管部203の内部には空気が入り込んでいる領域AR2がある。
【0080】
このように、第1U字管部201と第2U字管部205の2カ所で水を常時蓄えている状態になり、安定した状態で円筒部30の内部に空気圧を掛けておくことができる。円筒部30の内部が大気に連通し、容易に封水切れが生じないようにしている。
【0081】
なお、
図9Aでは、圧力P1は、筒部30の開口部30aの位置まで空気が入り込むような大きさになっている。圧力P1がこれよりも大きな圧力になると、封水SW1の右側の水面が更に下方に押されるようになる。そうすると、
図9Aに比べて封水SW1が押し出される方向に圧力P1が作用することになるが、封水SW1,SW2が2カ所に設けられていることと、2つの封水の間に空気層の領域AR2があることで、容易に封水切れを起こさないようにしている。
【0082】
サイフォン機構2を作動させるときは、第1弁体41を閉塞し、第2弁体42を開放する。これにより、円筒部30の第2接続部30bは大気に接続され、円筒部30内の空気が押し出されていく。これにより、水槽1の水は
図9Bの矢印で示すように、円筒部30と第1垂直管部200の間の隙間Sから円筒部30内に入り込み、サイフォン作用が開始する。隙間Sに入り込んだ水は、さらにサイフォン管20内に入り込み、溢水管3内へと移動する。これにより、水面W1は徐々に低下していき、排水作用が進行する。
【0083】
図9Cに示すように、水面W2がサイフォン管20の第1開口部200aの高さまで低下したときにサイフォン作用は終了し排水動作が完了する(第1排水レベルL1)。なお、第2接続部30bは大気に開放されたままであるので、隙間Sの領域において空気は第1開口部200aの位置まで存在する。
【0084】
排水が完了したときに、サイフォン管20の第1U字管部201と第2U字管部205には、U字形の封水SW1,SW2が形成される。各封水SW1,SW2の水面には同じ大気圧P0が作用するので、水面の高さはすべて同じである。また、水面の高さは、図示するように、第1接続部207aの一番低い位置になる。
【0085】
図10A,
図10Bは、第2排水レベルにおけるサイフォン機構2の作用を説明する図である。サイフォン機構2を動作させない状態は、前述の通りである。
【0086】
サイフォン機構2を作用させるときは、まず、第1弁体41を閉塞し、第2弁体42を開放する。ここまでは
図9で説明したのと同じである。円筒部30内の空気が大気に開放され、円筒部30内に隙間Sを介して水が入り込んでくる。これにより、
図10Aに示すように、水面W3は徐々に低下する。そして、円筒部30内に水が満たされた状態になると、第2弁体42を開放から閉塞へと切り替える。
【0087】
第2弁体42を開放から閉塞へと切り替えるタイミングは、例えば、タイマーにより制御することができる。
図10Bに示すように、水面W4が円筒部30の下端の第2開口部30aの位置にまで低下すると、第2開口部30aから円筒部30内に空気が入り込むため、サイフォン作用による排水作用は終了する。この時も2カ所に封水SW1,SW2が形成される点は、
図9Cに示すのと同じである。
【0088】
以上の通り、2段階のレベルで排水を行うことができる。いずれのレベルの水位で排水させるかについては、作業者が選択することができる。排水作業の開始については、水槽内の水の汚染度などを確認して、排水を開始することができる。排水の開始は、操作盤に物理的なスイッチを設けることで行うことができる。あるいは、タッチパネルによる操作やWi-Fi等の無線で接続された端末により操作を可能にしてもよい。
【0089】
また、排水を行う場合、すべての水槽1に対して同時に行う必要はなく、例えば、上段の水槽のみ、中段の水槽のみ、下段の水槽のみ、上段と中段というように、各段ごとに第1弁体41及び第2弁体42を制御できるようにしてもよい。
【0090】
また、水替えのための排水作業は、タイマー機能を用いて、定期的に自動的に行われるようにしてもよい。また、排水を開始する時間帯も予め設定しておき、その時間が来たら自動的に開始するようにしてもよい。各段ごとに設定を変えることもできる。どのような排水を行わせるかは、予め、コンピュータプログラムを作成して行うようにしてもよい。
【0091】
<給水作用>
次に、排水動作が終わった後の給水動作を説明する。給水動作の開始は、作業者による操作スイッチに基づいて行ってもよいし、排水動作が開始してから所定時間後に排水動作が完了したものとみなし、給水動作を自動的に開始するようにしてもよい。
【0092】
給水動作の終了は、例えば、
図7に示す回収管68に設けられたセンサーに基づいて終了を検出することができる。すなわち、水槽1への給水が継続すると、オーバーフローした水が溢水管3の開口部3aから入り込むため、その水量を検出することで給水終了を検出することができる。その他、給水開始からの時間により終了を検知する方法や、各水槽1にフロート弁を設けることでも給水を停止することができる。
【0093】
各水槽1への給水が終了すると、貯水槽6への水道水の給水が行われる。満水状態になると、フロート弁6aにより、弁体66を閉塞させる。
【0094】
<排水装置の別実施形態1>
図11は、別実施形態に係る排水装置の構成を示す図である。この実施形態において、逆U字管部203の頂部に第3接続部203aが設けられ、垂直管440および一方コック43を介して空気流入排出管40に接続されている。これにより、エアポンプ5からの空気を流入することができると共に、大気への開放も行うことができる。第3接続部203aは、第2接続部30bと同じ部材を用いて構成することができる。空気の流入及び排出に関する制御は、円筒部30の第2接続部30bの場合と同時に行われる。
【0095】
エアポンプ5から第1弁体41を通り第3接続部203aまでの流路が第3流路に相当し、大気に通じる第2弁体42から第3接続部203aまでの流路が第4流路に相当する。これらの流路は、第1流路や第2流路と一部流路が重なっている。流路が一部重なることにより、配管の数を減らすことができる。
【0096】
また、垂直管440の途中にバルブ441を設けており、円筒部30の内部に作用する圧力P1よりも少し弱めの圧力P3を作用させることができる。圧力の大きさの関係はP0<P3<P1となる。円筒部30を下方に下げることで、圧力P1と大気圧P0の差が更に大きくなる。逆U字管部203の内部の領域AR2の空気は、円筒部30からの圧力P1と第1接続部207aからの大気圧P0により互いに押されることになるが、この領域AR2内部の圧力P3を圧力P1よりも弱くすることで、封水SW1を安定して維持することができる。なお、バルブ441以外の手段で圧力を弱めるようにしてもよい。また、バルブを用いる場合は、手動バルブ、自動バルブのいずれを採用してもよい。なお、本発明として、バルブ441を設けない構成を採用してもよい。この場合は、右側の封水SW1の左右の水面には同じ圧力が作用する。
【0097】
排水時において、逆U字管部203の内部が大気に開放されるので、サイフォン管20の内部をスムーズに水が流れ、排水時間を短縮することができる。
【0098】
図11において、第2接続部30bと第3接続部203aは、共に同じエアポンプ5に接続されているが、それぞれが個別にエアポンプに接続される構成を採用してもよい。この場合、第3流路と第4流路は、第1流路と第2流路と重なる部分はなく独立した流路となる。
【0099】
<排水装置の別実施形態2>
図12は、更に別の実施形態に係る排水装置の構成を示す図である。この実施形態において、逆U字管部203の頂部に第3接続部203aが設けられ、垂直管440が第3接続部に接続されている。接続管440の途中に逆止弁442が取り付けられている。接続管440の端部は開放されており、大気につながっている。エアポンプ5とは接続されていない。第2接続部30bに関しては、他の実施形態と同じである。
【0100】
逆止弁442を設けることで、逆U字管部203の内部に空気が送り込まれることはないが、逆U字管部203の内部の圧力が所定以上になると、逆止弁442を介して空気が放出される。この構成を採用することで、排水時において、領域AR2の空気を逆止弁442を介して押し出すことができ、サイフォン管20の内部をスムーズに水が流れ、排水時間を短縮することができる。
【0101】
<その他の別実施形態>
予期しないトラブルによる停電等により、空気流入排出管40からエアポンプ5に空気が逆流しないように逆流防止弁をエアポンプ5の前や第1弁体41の前に設けておくことが好ましい。
【0102】
本実施形態では、段ごとに水槽1の排出動作が制御されるが、特定の水槽1の水替えができないようにすることも可能である。そのため水槽ごとに一方コック43を閉鎖できるようにすることで、円筒部30内の空気圧を保持したまま排水を停止させることができる。また、排水を行わない水槽1については給水バルブ65も閉鎖して給水がされないようにする。一方コック43を閉鎖は、手動で行うようにしてもよいし、制御部により自動制御できるようにしてもよい。
【0103】
また、上記とは逆に特定の水槽1のみ水替えを行うことも可能である。例えば、手作業により水替えを行う場合は、次のような手順で行う。まず、一方コック43を閉鎖する。溢水管3と一体結合されたサイフォン管20は、水槽1に対して着脱自在に構成されており、これを引き抜くことで排水を行うことができる。一方コック43を閉鎖しているので、他の水槽1が不用意に排水を開始することはない。排水作業の終了したのち、給水を行う必要があるが、その場合、水替えを行わない水槽1については給水バルブを閉鎖しておき、貯水槽にバイパスされた手動バルブを開放することで、バイパス経由で特定の水槽に給水を行うことができる。ただし、意図しない排水動作が開始することがありうる。そのため、エアポンプ5と第1弁体41に隣接して逆流防止弁を設けておくことが好ましい。
【0104】
<サイフォン管の別実施形態>
サイフォン管20の構成は、本実施形態の構成に限定されるものではない。本実施形態において、第1U字管部201は、第1垂直管部200を介して第1開口部200aに接続されているが、第1U字管部201と第1垂直管部200を一体化した部材で構成してもよい。この場合も「一端側が第1開口部に接続される第1U字管部」の概念に含まれる。すなわち、「接続される」というのは、流路が繋がっている態様であれば、特定の構成に限定されるものではない。別の部材を介して接続される場合や、第1U字管部そのものに第1開口部が形成される場合が本発明の内容に含まれる。
【0105】
本実施形態では、第1U字管部201と逆U字管部203は、第2垂直管部202を介して接続されているが、直接接続する構成を採用してもよい。あるいは、第1U字管部201と逆U字管部203が一体化された1つの部材で構成してもよい。
【0106】
本実施形態では、逆U字管部203と第2U字管部205は、第3垂直管部204を介して接続されているが、直接接続する構成を採用してもよい。あるいは、逆U字管部203と第2U字管部205が一体化された1つの部材で構成してもよい。
【0107】
本実施形態では、第2U字管部205と第1接続部207aは、第4垂直管部206及び接続管部207を介して接続されているが、この構成に限定されるものではない。例えば、第2U字管部205と第4垂直管部206が一体化された1つの部材で構成してもよい。また、第4垂直管部206と接続管部207が一体化された1つの部材で構成してもよい。あるいは、第2U字管部205と第4垂直管部206と接続管部207が一体化された1つの部材で構成してもよい。「接続される」の意味は前述の通りである。
【0108】
本実施形態におけるU字管部201,205と逆U字管部203は、左右対称の形状でなくてもよい。以上のように、サイフォン管20の構成は種々の変形例が考えられる。
【0109】
本実施形態において、第1U字管部201、第2U字管部205、逆U字管部203の内壁に、各垂直管部200,202,204,206が挿入される構成であるが、この関係は逆にしてもよい。すなわち、第1U字管部201、第2U字管部205、逆U字管部203の外壁に各垂直管部200,202,204,206が外嵌される構成を採用してもよい。各管の素材は合成樹脂、ガラスなどの適宜の素材により形成することができる。
【0110】
本実施形態において、溢水管3の内径や外径は、円筒部30やサイフォン管20を構成する各管の内径や外径よりも大きくなるように設定している。ただし、これは水槽の大きさや排水装置の大きさ、排水効率等を考慮して決めるものであり、上記の大小関係に限定されるものではない。
【0111】
第2接続部30bは円筒部30の頂面に設ける必要はなく、円筒部30の上部であれば、頂面からずれた位置でもよいし、側面等に設けてもよい。第3接続部203aは、逆U字管部203の頂面に設ける必要はなく、逆U字管部203の上面であれば、頂面からずれた位置でもよいし、側面等に設けてもよい。
【0112】
本実施形態では、排水量を大きくした場合について説明してきたが、排水量が小さい場合であっても、本発明は適用できるものである。従って、排水レベルの大小にかかわらず、本発明を採用することができる。
【0113】
本実施形態では、U字管部が2つで逆U字管部が1つで構成されるサイフォン管について説明したが、U字管部が3つで逆U字管部が2つで構成されるサイフォン管についても本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0114】
1 水槽
2 サイフォン機構
20 サイフォン管
200 第1垂直管部
200a 第1開口部
201 第1U字管部
202 第2垂直管部
203 逆U字管部
204 第3垂直管部
205 第2U字管部
206 第4垂直管部
207 接続管部
207a 第1接続部
3 溢水管
3a,3b 開口部
30 円筒部
30a 第2開口部
30b 第2接続部
40 空気流入排出管
41 第1弁体
42 第2弁体
43 一方コック
44,440 垂直管
441 バルブ
442 逆止弁
5 エアポンプ
6 貯水槽
7 ろ過水槽
S 隙間
SW1,SW2 封水