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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134904
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20240927BHJP
   B60N 2/20 20060101ALI20240927BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/20
B60N2/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045344
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 一志
(72)【発明者】
【氏名】砂田 健吾
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD01
3B087BD03
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】ストラップをシート前方斜め上方側への一定方向に沿って引くことによってリクライニング機構のロックを解除することができる車両用シートを得る。
【解決手段】解除レバー34は、シート前方側かつシート上方側へ回動されることによってリクライニング機構30のロックを解除する。解除レバー34の先端部34Aには、シート側面視で解除レバー34がシート前方側かつシート上方側へ回動される場合の回動方向側へ凹状に湾曲した湾曲部36Aが形成されている。また、ストラップ40は、湾曲部36Aの一部に巻き掛けられた巻掛部40Bと、巻掛部40Bからシート前方斜め上方側へ延在するように設けられて把持用端部40Cを備える操作力伝達部40Tと、を有し、把持用端部40Cにシート前方斜め上方側へ引く操作力Fが付与された場合に巻掛部40Bが湾曲部36Aに対して位置をずらしながら操作力Fを伝達する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションに対するシートバックの傾倒角度を調整可能なリクライニング機構と、
前記シートバックの側部の下端部においてシート幅方向の軸線回りに回動可能に設けられ、先端部が前記シートクッションの後部の側部側に配置されると共にシート前方側かつシート上方側へ回動されることによって前記リクライニング機構のロックを解除する解除レバーと、
前記解除レバーの先端部に形成され、シート側面視で前記解除レバーがシート前方側かつシート上方側へ回動される場合の回動方向側へ凹状に湾曲した湾曲部と、
前記解除レバーの操作用として帯状に形成され、前記湾曲部の一部に巻き掛けられた巻掛部と、前記巻掛部からシート前方斜め上方側へ延在するように設けられて乗員が把持可能な把持用端部を備える操作力伝達部と、を有し、前記把持用端部にシート前方斜め上方側へ引く操作力が付与された場合に前記巻掛部が前記湾曲部に対して位置をずらしながら前記操作力を伝達するストラップと、
を備える車両用シート。
【請求項2】
前記シートクッションの側部に設けられ、前記解除レバーと、前記ストラップのうち前記把持用端部側の一部を除く部分と、を含む範囲をシート幅方向外側から覆い、前記操作力伝達部が挿通される挿通部が貫通形成されたサイドフィニッシャと、
前記シートクッションの側部において前記サイドフィニッシャの内側に設けられ、前記操作力伝達部の長手方向中間部がシート上下方向及びシート幅方向へ変位するのを当接することによって規制する変位規制部と、
を備える請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記ストラップは、一方の端部が前記把持用端部とされると共に他方の端部が取付端部とされ、
前記取付端部は、シート側面視で前記操作力伝達部と重なる範囲内でかつ前記解除レバーの回動範囲から外れた位置において前記シートクッションの側部に取り付けられている、請求項1に記載の車両用シート。
【請求項4】
運転席の側方に隣接して配置された助手席に適用され、
前記解除レバー及び前記ストラップが前記助手席における前記運転席側の側部に設けられている、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、リクライニング機構を備えた車両用シートに関する技術が開示されている。簡単に説明すると、この先行技術では、リクライニング機構をアンロック状態にするための解除レバーが回動可能に設けられると共に、解除レバーの先端部側の係合用切欠部に操作用ストラップの一端側が係合されている。このような構成によれは、操作用ストラップの他端側を引っ張ることで解除レバーが回動してリクライニング機構をアンロック状態にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-18764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術では、解除レバーの係合用切欠部は、シート側面視で操作用ストラップの幅に合わせたサイズに形成され、係合用切欠部において操作用ストラップを受ける部分はシート側面視で直線状の縁部となっているので、解除レバーの回動に応じてストラップを引く方向を変えなければならない(特許文献1の図4参照)。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、ストラップをシート前方斜め上方側への一定方向に沿って引くことによってリクライニング機構のロックを解除することができる車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明の車両用シートは、シートクッションに対するシートバックの傾倒角度を調整可能なリクライニング機構と、前記シートバックの側部の下端部においてシート幅方向の軸線回りに回動可能に設けられ、先端部が前記シートクッションの後部の側部側に配置されると共にシート前方側かつシート上方側へ回動されることによって前記リクライニング機構のロックを解除する解除レバーと、前記解除レバーの先端部に形成され、シート側面視で前記解除レバーがシート前方側かつシート上方側へ回動される場合の回動方向側へ凹状に湾曲した湾曲部と、前記解除レバーの操作用として帯状に形成され、前記湾曲部の一部に巻き掛けられた巻掛部と、前記巻掛部からシート前方斜め上方側へ延在するように設けられて乗員が把持可能な把持用端部を備える操作力伝達部と、を有し、前記把持用端部にシート前方斜め上方側へ引く操作力が付与された場合に前記巻掛部が前記湾曲部に対して位置をずらしながら前記操作力を伝達するストラップと、を備える。
【0007】
上記構成によれば、リクライニング機構によってシートクッションに対するシートバックの傾倒角度が調整可能になっている。解除レバーは、シートバックの側部の下端部においてシート幅方向の軸線回りに回動可能に設けられ、先端部がシートクッションの後部の側部側に配置されると共にシート前方側かつシート上方側へ回動されることによってリクライニング機構のロックを解除する。
【0008】
ここで、解除レバーの先端部には湾曲部が形成され、この湾曲部は、シート側面視で解除レバーがシート前方側かつシート上方側へ回動される場合の回動方向側へ凹状に湾曲している。また、解除レバーの操作用として帯状に形成されたストラップは、湾曲部の一部に巻き掛けられた巻掛部と、巻掛部からシート前方斜め上方側へ延在するように設けられて乗員が把持可能な把持用端部を備える操作力伝達部と、を有し、把持用端部にシート前方斜め上方側へ引く操作力が付与された場合に巻掛部が湾曲部に対して位置をずらしながら前記操作力を伝達する。これにより、乗員がストラップの把持用端部をシート前方斜め上方側への一定方向に沿って引くことによって、解除レバーを回動させてリクライニング機構のロックを解除することができる。
【0009】
請求項2に記載する本発明の車両用シートは、請求項1に記載の構成において、前記シートクッションの側部に設けられ、前記解除レバーと、前記ストラップのうち前記把持用端部側の一部を除く部分と、を含む範囲をシート幅方向外側から覆い、前記操作力伝達部が挿通される挿通部が貫通形成されたサイドフィニッシャと、前記シートクッションの側部において前記サイドフィニッシャの内側に設けられ、前記操作力伝達部の長手方向中間部がシート上下方向及びシート幅方向へ変位するのを当接することによって規制する変位規制部と、を備える。
【0010】
上記構成によれば、ストラップの操作力伝達部の長手方向中間部は、サイドフィニッシャの内側に設けられた変位規制部に当接することによってシート上下方向及びシート幅方向への変位が規制される。このため、ストラップの巻掛部から操作力伝達部の長手方向中間部にかけての部分をその長尺方向に沿って安定的に直線状に移動させることが可能になると共に、ストラップの操作時に操作力伝達部からサイドフィニッシャの挿通部の縁部に作用する力を低減することが可能になる。
【0011】
請求項3に記載する本発明の車両用シートは、請求項1に記載の構成において、前記ストラップは、一方の端部が前記把持用端部とされると共に他方の端部が取付端部とされ、前記取付端部は、シート側面視で前記操作力伝達部と重なる範囲内でかつ前記解除レバーの回動範囲から外れた位置において前記シートクッションの側部に取り付けられている。
【0012】
上記構成によれば、乗員がストラップの把持用端部を引く場合、例えばストラップの巻掛部側がループ状になっていて湾曲部に巻き掛けられている場合と比べて小さい操作力で解除レバーを回動させることが可能となり、かつ巻掛部から湾曲部に安定的に操作力を伝達させることができる。
【0013】
請求項4に記載する本発明の車両用シートは、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の構成において、運転席の側方に隣接して配置された助手席に適用され、前記解除レバー及び前記ストラップが前記助手席における前記運転席側の側部に設けられている。
【0014】
上記構成によれば、運転席と助手席との間が狭くても、その間のスペースを有効利用して当該スペースからストラップを出すことで、運転席側の着座乗員が助手席側のストラップを引いて助手席のリクライニング機構のロックを解除させることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の車両用シートによれば、ストラップをシート前方斜め上方側への一定方向に沿って引くことによってリクライニング機構のロックを解除することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートが配置される車室内の一部を簡略化して示す平面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る車両用シートの側面図である。
図3図2の車両用シートにおけるリクライニング機構の一部及びその周囲部を示す斜視図である。
図4図2の車両用シートにおけるリクライニング機構の一部及びその周囲部を示す側面図である。
図5図4の状態からストラップを引いた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る車両用シートについて図1図5を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両用シートの前方側を示しており、矢印UPは車両用シートの上方側を示しており、矢印Wは車両用シートの幅方向を示している。また、各図においては、図面を見易くする関係から一部の符号を省略している場合がある。
【0018】
(実施形態の構成)
図1には、本実施形態に係る車両用シート20が配置された車室12内の一部が簡略化された平面図で示されている。車両用シート20が搭載される車両10は、一例として軽自動車とされる。車両用シート20は、運転席14の側方に隣接して配置された助手席とされる。
【0019】
図2には、本実施形態に係る車両用シート20の側面図が示されている。車両用シート20は、乗員が着座する着座部を構成して着座乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション22と、着座乗員の背部を支持するシートバック24と、を備えている。シートクッション22及びシートバック24は、それぞれ骨格を構成するフレームにパッドが被せられると共に前記パッドの表面が表皮で被覆されている。シートバック24の上部にはヘッドレスト部が一体に設けられている。なお、本実施形態の変形例としてシートバックとヘッドレストとが別体として形成されて互いに連結される構成が採られてもよい。
【0020】
シートバック24のフレームの下端部は、リクライニング機構30(図2では便宜上ブロック化して点線で図示)を介して、シートクッション22のフレームにシート幅方向の軸線回りに回動可能に連結されている。リクライニング機構30は、シートクッション22に対するシートバック24の傾倒角度を調整可能に構成されている。すなわち、リクライニング機構30は、シートクッション22に対してシートバック24を傾倒可能に支持し、シートバック24の傾倒角度を維持するようにシートバック24を保持するロック状態と、ロック状態が解除されたアンロック状態と、に切り替え可能に構成されている。なお、リクライニング機構30には公知のリクライニング機構を適用することができる。リクライニング機構30の側部は、シートクッション22の側部に設けられたサイドフィニッシャ28によって、シート幅方向外側から覆われている。
【0021】
リクライニング機構30は、車両用シート20の左側面(図2に示される側面とは反対側の側面)にシート幅方向の軸線回りに回動可能な操作レバー32(図1参照)を備えている。リクライニング機構30は、操作レバー32(図1参照)が初期位置から操作されると、リクライニング機構30のロックが解除されるようになっている。なお、図1に示される操作レバー32は、図示しない付勢部材によって初期位置側へ付勢されている。
【0022】
図3には、車両用シート20(図2参照)の右側の側部におけるリクライニング機構30の一部及びその周囲部が斜視図で示されている。図3に示されるように、リクライニング機構30は、リクライニング軸38に取り付けられた金属製の解除レバー34を備えている。なお、解除レバー34は、解除プレートと称されることもある。解除レバー34は、図1に示される助手席である車両用シート20における運転席14側の側部においてサイドフィニッシャ28の内側に配置されている。
【0023】
図3に示される解除レバー34は、シートバック24の側部の下端部においてシート幅方向の軸線回りに回動可能に設けられている(図4及び図5参照)。解除レバー34は、その先端部34Aがシートクッション22の後部の側部側に配置され、図3に示される初期位置においてシート側面視でシート前方側へ凸状に湾曲している。この解除レバー34は、シート前方側かつシート上方側へ回動されることによってリクライニング機構30のロックを解除する。解除レバー34は、リクライニング軸38を介して前述した操作レバー32(図1参照)と一体的に回動するようになっており、初期位置側へ付勢されている。
【0024】
図4には、リクライニング機構30の一部及びその周囲部が側面図で示されている。なお、図4では、サイドフィニッシャ28についてはシート前後方向の前端側を除く部分の外形を二点鎖線で示す(図5も同様)。図4に示されるように、解除レバー34の先端部34Aには切欠部36が形成されている。切欠部36は、解除レバー34の先端部34Aにおいてシート幅方向に貫通形成され、シート側面視で略D字状に貫通すると共に、図4に示す解除レバー34の初期位置で上下方向中間部がシート後方側に開放されている。切欠部36の縁部の一部は、シート側面視で解除レバー34がシート前方側かつシート上方側へ回動される場合の回動方向側へ凹状に湾曲した湾曲部36A(部分拡大図参照)となっている。
【0025】
図3に示されるように、解除レバー34の切欠部36には、解除レバー34の操作用として帯状に形成されたストラップ40が挿通されている。ストラップ40は、解除レバー34の湾曲部36Aの一部に巻き掛けられた(言い換えると折り返されて引っ掛けられた)巻掛部40Bと、巻掛部40Bからシート前方斜め上方側へ延在するように設けられてその先端部に乗員が把持可能な把持用端部40Cを備える操作力伝達部40Tと、を有する。本実施形態では、ストラップ40は、一方の端部が前述した把持用端部40Cとされると共に他方の端部が取付端部40Aとされ、取付端部40Aは、シートクッション22の側部に設けられたブラケット42に取り付けられている。すなわち、ストラップ40を用いた操作機構は、倍力機構となっている。
【0026】
解除レバー34と、ストラップ40のうち把持用端部40C側の一部を除く部分と、を含む範囲は、前述した図2に示されるサイドフィニッシャ28によって、シート幅方向外側から覆われている。サイドフィニッシャ28は、シート幅方向内側が開放された浅いケース状に形成されており、このサイドフィニッシャ28のシート前後方向前側でかつシート上下方向上側の部分には、図3に示される操作力伝達部40Tが挿通される挿通部28A(図中では二点鎖線で図示)が貫通形成されている。
【0027】
図4に示されるように、ストラップ40の取付端部40Aが取り付けられるブラケット42は、サイドフィニッシャ28の内側に設けられている。ブラケット42は、シート側面視で解除レバー34のシート前方側で解除レバー34の回動範囲から外れた位置に配置され、被固定部42Bがシートクッション22のサイドフレーム22Aにリベット44で固定されている。ブラケット42の後部42Dは、被固定部42Bよりもシート幅方向外側に位置しており、被固定部42Bの後端に傾斜状の段差部42C(図3参照)を介して接続されている。ブラケット42の後部42Dには、ストラップ40の取付端部40Aが重ねられた状態で締結具46によって取り付けられている。
【0028】
また、図3に示されるように、ブラケット42の前部42Aは、被固定部42Bの前端からシート幅方向外側へ延出されており、シート側面視でシート上方側へ向けてシート後方側へ傾斜している。ブラケット42の前部42Aの突出先端側の部分には、その板厚方向に貫通形成された変位規制部42Eが設けられている。変位規制部42Eには、ストラップ40の操作力伝達部40Tが挿通される。変位規制部42Eは、ストラップ40の操作力伝達部40Tの長手方向中間部がシート上下方向及びシート幅方向へ変位するのを当接することによって規制する。ブラケット42の前部42Aの突出先端における上下方向中間部には、一例として変位規制部42Eに通じる開放部42Fが形成されている。また、操作力伝達部40Tの先端部をなす把持用端部40Cは、折り返されると共にループ状となるように縫製されており、乗員が指を入れられるようになっている。
【0029】
一方、図4に示されるように、前述したストラップ40の取付端部40Aは、シート側面視でストラップ40の操作力伝達部40Tと重なる範囲内でかつ解除レバー34の回動範囲から外れた位置においてシートクッション22の側部に取り付けられている。そして、本実施形態では、ストラップ40の巻掛部40Bから取付端部40Aまでの部分は、その殆どの部分がシート側面視でストラップ40の操作力伝達部40Tと重なっている。
【0030】
以上により、ストラップ40は、把持用端部40Cにシート前方斜め上方側へ引く操作力Fが付与された場合に図5に示されるように巻掛部40Bが解除レバー34の湾曲部36Aに対して位置をずらしながら操作力Fを伝達するように構成されている。また、図1に示されるように、ストラップ40は、助手席である車両用シート20における運転席14側の側部に設けられており、ストラップ40の把持用端部40Cは、不使用時には一例としてシートクッション22の上に配置される。
【0031】
次に、図3図5に示される解除レバー34の湾曲部36Aの形状の一例について、図4及び図5の部分拡大図を参照しながら補足説明する。
【0032】
湾曲部36Aの上部の形状は、シート側面視で湾曲部36Aの上部の所定の点(例えば図4に示される解除レバー34の初期位置の状態で巻掛部40Bの幅方向中央部に対応する点)においてストラップ40の操作方向と直交する接線L1が引けるような円弧形状の中から好適なものが選択されている。また、湾曲部36Aの下部の形状は、シート側面視で湾曲部36Aの下部の所定の点(例えば図5に示される解除レバー34のフルストローク状態で巻掛部40Bの幅方向中央部に対応する点)においてストラップ40の操作方向と直交する接線L2が引けるような円弧形状の中から好適なものが選択されている。湾曲部36Aの上部及び下部の曲率は、湾曲部36Aの上下方向中間部において、湾曲部36Aの上部と下部とをなだらかに繋ぐことができる曲率に設定され、湾曲部36Aの上下方向中間部の形状は、湾曲部36Aの上部の形状と湾曲部36Aの下部の形状とをなだらかに繋ぐように設定されている。
【0033】
(実施形態の作用・効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0034】
本実施形態の車両用シート20では、図2に示されるリクライニング機構30によってシートクッション22に対するシートバック24の傾倒角度が調整可能になっている。図3に示される解除レバー34は、シートバック24の側部の下端部においてシート幅方向の軸線回りに回動可能に設けられており、先端部34Aがシートクッション22の後部の側部側に配置されると共にシート前方側かつシート上方側へ回動されることによってリクライニング機構30のロックを解除する。
【0035】
ここで、図4に示されるように、解除レバー34の先端部34Aには湾曲部36Aが形成され、この湾曲部36Aは、シート側面視で解除レバー34がシート前方側かつシート上方側へ回動される場合の回動方向側へ凹状に湾曲している。また、解除レバー34の操作用として帯状に形成されたストラップ40は、湾曲部36Aの一部に巻き掛けられた巻掛部40Bと、巻掛部40Bからシート前方斜め上方側へ延在するように設けられて乗員が把持可能な把持用端部40Cを備える操作力伝達部40Tと、を有し、把持用端部40Cにシート前方斜め上方側へ引く操作力Fが付与された場合に図5に示されるように巻掛部40Bが湾曲部36Aに対して位置をずらしながら操作力Fを伝達する。これにより、乗員がストラップ40の把持用端部40Cをシート前方斜め上方側への一定方向に沿って引くことによって、解除レバー34を回動させてリクライニング機構30のロックを解除することができる。また、ストラップ40を略一定の力で引いて操作することが可能になる。
【0036】
また、ストラップ40の操作後、ストラップ40に対する操作力Fを解除すると、図5に示される解除レバー34は、図示しない付勢部材の付勢力によって、図5に示されるフルストローク位置から図4に示される初期位置に戻る。このとき、ストラップ40の巻掛部40Bも、図5に示される湾曲部36Aの下部に巻き掛けられた位置から図4に示される湾曲部36Aの上部に巻き掛けられた位置に戻る。このため、再度、ストラップ40を引く場合にも、上述した作用及び効果を得ることができる。
【0037】
また、本実施形態では、図3に示されるように、ストラップ40の操作力伝達部40Tの長手方向中間部は、サイドフィニッシャ28(図2参照)の内側に設けられた変位規制部42Eに当接することによってシート上下方向及びシート幅方向への変位が規制される。このため、例えば把持用端部40Cに操作力が付与された場合及びストラップ40に対する操作力が解除された場合に、ストラップ40の巻掛部40Bから操作力伝達部40Tの長手方向中間部にかけての部分をその長尺方向に沿って安定的に直線状に移動させることが可能になると共に、ストラップ40の操作時に操作力伝達部40Tからサイドフィニッシャ28の挿通部28Aの縁部に作用する力を低減することが可能になる。
【0038】
また、本実施形態では、図4に示されるように、ストラップ40は、一方の端部が把持用端部40Cとされると共に他方の端部が取付端部40Aとされ、取付端部40Aは、シート側面視で操作力伝達部40Tと重なる範囲内でかつ解除レバー34の回動範囲から外れた位置においてシートクッション22の側部に取り付けられている。これにより、乗員がストラップ40の把持用端部40Cを引く場合、例えばストラップの巻掛部側がループ状になっていて湾曲部に巻き掛けられている場合と比べて小さい操作力で解除レバー34を回動させることが可能となり、かつ巻掛部40Bから湾曲部36Aに安定的に操作力を伝達させることができる。
【0039】
また、図1に示されるように、本実施形態の車両用シート20は、運転席14の側方に隣接して配置された助手席に適用され、運転席14側の側部に解除レバー34(図3参照)及びストラップ40が設けられている。このような構成では、運転席14と助手席の車両用シート20との間が狭くても、その間のスペースを有効利用して当該スペースからストラップ40を出すことで、運転席14側の着座乗員がストラップ40を引いて助手席の車両用シート20のリクライニング機構30(図2参照)のロックを解除させることができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の車両用シート20によれば、図2等に示されるストラップ40をシート前方斜め上方側への一定方向に沿って引くことによってリクライニング機構30のロックを解除することができる。これにより、操作力のロス及び操作性の悪化を抑制することができる。
【0041】
(実施形態の補足説明)
なお、上記実施形態では、シートクッション22の側部にはサイドフィニッシャ28の内側に図3に示される変位規制部42Eが設けられており、このような構成が好ましいが、変位規制部42Eが設けられない構成も採り得る。
【0042】
また、上記実施形態では、ストラップ40は、一方の端部が把持用端部40Cとされると共に他方の端部が取付端部40Aとされ、取付端部40Aは、シートクッション22の側部に取り付けられており、このような構成が好ましいが、ストラップは、例えば一方の端部が把持用端部(40C)とされると共に他方の端部がその対向側の操作力伝達部(40T)に縫い付けられてループ部を形成し、当該ループ部の一部が巻掛部として湾曲部(36A)に巻き掛けられている、という構成も採り得る。
【0043】
また、上記実施形態では、図1等に示される車両用シート20が軽自動車に搭載される車両用シートとされているが、本発明の車両用シートは、軽自動車以外の車両に搭載される車両用シートに適用されてもよい。また、上記実施形態では、車両用シート20が運転席14の側方に隣接して配置された助手席に適用されているが、本発明の車両用シートは、前記助手席以外の車両用シートに適用されてもよい。
【0044】
なお、上記実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0045】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
14 運転席
20 車両用シート
22 シートクッション
24 シートバック
28 サイドフィニッシャ
28A 挿通部
30 リクライニング機構
34 解除レバー
34A 解除レバーの先端部
36A 湾曲部
40 ストラップ
40A 取付端部
40B 巻掛部
40C 把持用端部
40T 操作力伝達部
42E 変位規制部
図1
図2
図3
図4
図5