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特開2024-134905木材用接着剤組成物、木材用接着剤キット、木質材料の製造方法及び木質材料
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  • 特開-木材用接着剤組成物、木材用接着剤キット、木質材料の製造方法及び木質材料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134905
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】木材用接着剤組成物、木材用接着剤キット、木質材料の製造方法及び木質材料
(51)【国際特許分類】
   C09J 161/10 20060101AFI20240927BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240927BHJP
   B27K 3/52 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C09J161/10
C09J11/06
B27K3/52 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045345
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000165000
【氏名又は名称】群栄化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】石井 慧
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大介
【テーマコード(参考)】
2B230
4J040
【Fターム(参考)】
2B230EA04
2B230EA08
4J040EB051
4J040HB30
4J040HB36
4J040HC01
4J040JB02
4J040MA08
(57)【要約】
【課題】木質材料を短時間もしくは低温での熱圧又は冷圧で製造した場合でも、ホルムアルデヒド放散量の少ない木質材料が得られる木材用接着剤組成物及び木質材料の製造方法の提供。
【解決手段】レゾール型フェノール樹脂と、窒素原子に結合した水素原子を有するアミン化合物と、有機酸エステルとを含む木材用接着剤組成物。レゾール型フェノール樹脂と、窒素原子に結合した水素原子を有するアミン化合物と、有機酸エステルとを含む原料を混合して木材用接着剤組成物を調製する工程と、複数の木材を、前記木材用接着剤組成物を介して重ねて積層体を得る工程と、前記積層体中の前記木材用接着剤組成物を硬化させる工程と、を有する木質材料の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レゾール型フェノール樹脂と、窒素原子に結合した水素原子を有するアミン化合物と、有機酸エステルとを含む木材用接着剤組成物。
【請求項2】
前記アミン化合物が、1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する請求項1に記載の木材用接着剤組成物。
【請求項3】
前記アミン化合物の含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂の固形分100質量部に対して0.1~10.0質量部である請求項1又は2に記載の木材用接着剤組成物。
【請求項4】
前記レゾール型フェノール樹脂のpHが7~14である請求項1又は2に記載の木材用接着剤組成物。
【請求項5】
前記有機酸エステルの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂及び前記アミン化合物の合計100質量部に対して1.0~40.0質量部である請求項1又は2に記載の木材用接着剤組成物。
【請求項6】
レゾルシノールをさらに含む請求項1又は2に記載の木材用接着剤組成物。
【請求項7】
前記レゾルシノールの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂及び前記アミン化合物の合計100質量部に対して0.5~20.0質量部である請求項6に記載の木材用接着剤組成物。
【請求項8】
レゾール型フェノール樹脂と、窒素原子に結合した水素原子を有するアミン化合物とを含む第1剤が収容された第1の容器と、
有機酸エステルを含む第2剤が収容された第2の容器と、
を備える木材用接着剤キット。
【請求項9】
前記アミン化合物が、1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する請求項8に記載の木材用接着剤キット。
【請求項10】
前記アミン化合物の含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂の固形分100質量部に対して0.1~10.0質量部である請求項8又は9に記載の木材用接着剤キット。
【請求項11】
前記第1剤のpHが7~14である請求項8又は9に記載の木材用接着剤キット。
【請求項12】
前記有機酸エステルの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂及び前記アミン化合物の合計100質量部に対して1.0~40.0質量部である請求項8又は9に記載の木材用接着剤キット。
【請求項13】
前記第2剤がレゾルシノールをさらに含む請求項8又は9に記載の木材用接着剤キット。
【請求項14】
前記レゾルシノールの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂及び前記アミン化合物の合計100質量部に対して0.5~20.0質量部である請求項13に記載の木材用接着剤キット。
【請求項15】
レゾール型フェノール樹脂と、窒素原子に結合した水素原子を有するアミン化合物と、有機酸エステルとを含む原料を混合して木材用接着剤組成物を調製する工程と、
複数の木材を、前記木材用接着剤組成物を介して重ねて積層体を得る工程と、
前記積層体中の前記木材用接着剤組成物を硬化させる工程と、
を有する木質材料の製造方法。
【請求項16】
前記アミン化合物が、1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する請求項15に記載の木質材料の製造方法。
【請求項17】
前記アミン化合物の含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂の固形分100質量部に対して0.1~10.0質量部である請求項15又は16に記載の木質材料の製造方法。
【請求項18】
前記レゾール型フェノール樹脂のpHが7~14である請求項15又は16に記載の木質材料の製造方法。
【請求項19】
前記有機酸エステルの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂及び前記アミン化合物の合計100質量部に対して1.0~40.0質量部である請求項15又は16に記載の木質材料の製造方法。
【請求項20】
前記原料がレゾルシノールをさらに含む請求項15又は16に記載の木質材料の製造方法。
【請求項21】
前記レゾルシノールの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂及び前記アミン化合物の合計100質量部に対して0.5~20.0質量部である請求項20に記載の木質材料の製造方法。
【請求項22】
複数の木材が、請求項1又は2に記載の木材用接着剤組成物の硬化物を介して接着された木質材料。
【請求項23】
合板である請求項22に記載の木質材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材用接着剤組成物、木材用接着剤キット、木質材料の製造方法及び木質材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木材同士を接着して木質材料を製造するための接着剤として、レゾール型フェノール樹脂(アルカリフェノール樹脂)を含む接着剤が知られている。
レゾール型フェノール樹脂の硬化性を高めるために、レゾール型フェノール樹脂を含む接着剤に硬化促進剤を配合することがある。硬化促進剤としては、例えば有機酸エステルが知られている(特許文献1)。
【0003】
一方、レゾール型フェノール樹脂を含む熱硬化性組成物を用いてセルロース製品を製造する過程で、レゾール型フェノール樹脂中の遊離アルデヒド類が揮散して有害な臭気が発生することを抑制するために、熱硬化性組成物にアミンを配合することが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7076049号公報
【特許文献2】特開2022-153295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のようなレゾール型フェノール樹脂と有機酸エステルとを含む接着剤は、硬化性に優れており、従来よりも短時間もしくは低温での熱圧によって、又は冷圧によって、充分な接着強度が得られるとされている。しかし、かかる接着剤を用い、従来よりも短時間もしくは低温での熱圧又は冷圧で木質材料を製造すると、得られる木質材料から放散されるホルムアルデヒドの量(ホルムアルデヒド放散量)が増加する。
特許文献2では、ホルムアルデヒド放散量の低減については検討されていない。
【0006】
本発明は、木質材料を短時間もしくは低温での熱圧又は冷圧で製造した場合でも、ホルムアルデヒド放散量の少ない木質材料が得られる木材用接着剤組成物、木材用接着キット及び木質材料の製造方法、並びに短時間もしくは低温での熱圧又は冷圧で製造した場合でも、ホルムアルデヒド放散量の少ない木質材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討の結果、レゾール型フェノール樹脂と有機酸エステルと特定のアミン化合物とを組み合わせることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]レゾール型フェノール樹脂と、窒素原子に結合した水素原子を有するアミン化合物と、有機酸エステルとを含む木材用接着剤組成物。
[2]前記アミン化合物が、1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する[1]に記載の木材用接着剤組成物。
[3]前記アミン化合物の含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂の固形分100質量部に対して0.1~10.0質量部である[1]又は[2]に記載の木材用接着剤組成物。
[4]前記レゾール型フェノール樹脂のpHが7~14である[1]~[3]のいずれかに記載の木材用接着剤組成物。
[5]前記有機酸エステルの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂及び前記アミン化合物の合計100質量部に対して1.0~40.0質量部である[1]~[4]のいずれかに記載の木材用接着剤組成物。
[6]レゾルシノールをさらに含む[1]~[5]のいずれかに記載の木材用接着剤組成物。
[7]前記レゾルシノールの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂及び前記アミン化合物の合計100質量部に対して0.5~20.0質量部である[6]に記載の木材用接着剤組成物。
[8]レゾール型フェノール樹脂と、窒素原子に結合した水素原子を有するアミン化合物とを含む第1剤が収容された第1の容器と、
有機酸エステルを含む第2剤が収容された第2の容器と、
を備える木材用接着剤キット。
[9]前記アミン化合物が、1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する[8]に記載の木材用接着剤キット。
[10]前記アミン化合物の含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂の固形分100質量部に対して0.1~10.0質量部である[8]又は[9]に記載の木材用接着剤キット。
[11]前記第1剤のpHが7~14である[8]~[10]のいずれかに記載の木材用接着剤キット。
[12]前記有機酸エステルの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂及び前記アミン化合物の合計100質量部に対して1.0~40.0質量部である[8]~[11]のいずれかに記載の木材用接着剤キット。
[13]前記第2剤がレゾルシノールをさらに含む[8]~[12]のいずれかに記載の木材用接着剤キット。
[14]前記レゾルシノールの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂及び前記アミン化合物の合計100質量部に対して0.5~20.0質量部である[13]に記載の木材用接着剤キット。
[15]レゾール型フェノール樹脂と、窒素原子に結合した水素原子を有するアミン化合物と、有機酸エステルとを含む原料を混合して木材用接着剤組成物を調製する工程と、
複数の木材を、前記木材用接着剤組成物を介して重ねて積層体を得る工程と、
前記積層体中の前記木材用接着剤組成物を硬化させる工程と、
を有する木質材料の製造方法。
[16]前記アミン化合物が、1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する[15]に記載の木質材料の製造方法。
[17]前記アミン化合物の含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂の固形分100質量部に対して0.1~10.0質量部である[15]又は[16]に記載の木質材料の製造方法。
[18]前記レゾール型フェノール樹脂のpHが7~14である[15]~[17]のいずれかに記載の木質材料の製造方法。
[19]前記有機酸エステルの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂及び前記アミン化合物の合計100質量部に対して1.0~40.0質量部である[15]~[18]のいずれかに記載の木質材料の製造方法。
[20]前記原料がレゾルシノールをさらに含む[15]~[19]のいずれかに記載の木質材料の製造方法。
[21]前記レゾルシノールの含有量が、前記レゾール型フェノール樹脂及び前記アミン化合物の合計100質量部に対して0.5~20.0質量部である[20]に記載の木質材料の製造方法。
[22]複数の木材が、[1]~[7]のいずれかに記載の木材用接着剤組成物の硬化物を介して接着された木質材料。
[23]合板である[22]に記載の木質材料。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、木質材料を短時間もしくは低温での熱圧又は冷圧で製造した場合でも、ホルムアルデヒド放散量の少ない木質材料が得られる木材用接着剤組成物、木材用接着キット及び木質材料の製造方法、並びに短時間もしくは低温での熱圧又は冷圧で製造した場合でも、ホルムアルデヒド放散量の少ない木質材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】試験例1の結果を示すグラフ(横軸:MEA添加量、縦軸:ホルムアルデヒド放散量)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、pHは、特に記載がなければ、25℃における値である。
粘度は、25℃においてE型粘度計により測定される値である。
フェノール樹脂(レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂)の重量平均分子量(以下、「Mw」とも記す。)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」とも記す。)により測定される、ポリスチレン換算値である。
固形分は不揮発分のことである。不揮発分は、試料1.5gを135℃で1時間加熱した時の残分である。
試料の固形分濃度(不揮発分濃度)の具体的な測定方法を以下に示す。
アルミ箔製皿(内径50mm、高さ15mm)の質量C(g)を量り、そこに試料を1.5±0.1gとなるように精秤し、当該試料の具体的な質量を乾燥前の試料質量S(g)とする。このアルミ箔製皿を、予め135±1℃に保った恒温器に入れ、60±2分間の乾燥処理を行った後、デシケーター中にて放冷し、その質量C(g)を量る。その結果から、次式(1)により乾燥後の試料質量D(乾燥処理後にアルミ箔製皿上に残った試料の質量)(g)を算出し、次式(2)により固形分濃度を算出する。
D=C-C ・・・(1)
固形分濃度(質量%)=D/S×100 ・・・(2)
【0012】
〔木材用接着剤組成物〕
本発明の一態様に係る木材用接着剤組成物(以下、「本組成物」ともいう。)は、レゾール型フェノール樹脂と、窒素原子に結合した水素原子を有するアミン化合物と、有機酸エステルとを含む。
本組成物は、レゾルシノールをさらに含むことができる。
本組成物は、必要に応じて、レゾール型フェノール樹脂、アミン化合物、有機酸エステル及びレゾルシノール以外の他の成分をさらに含むことができる。
【0013】
<レゾール型フェノール樹脂>
レゾール型フェノール樹脂は、アルカリフェノール樹脂とも称され、典型的には、フェノール類のアルデヒド類による付加縮合体(フェノール縮合体)、アルカリ性物質及び水を含む。アルカリ性物質の少なくとも一部は通常、レゾール型フェノール樹脂の製造に用いられたアルカリ触媒である。アルカリ触媒が中和されていてもよい。
【0014】
レゾール型フェノール樹脂のpHは、7~14が好ましく、8~14がより好ましく、10~14がさらに好ましい。pHが上記下限値以上であれば、有機酸エステルと混合した時に有機酸エステルが加水分解しやすく、有機酸エステルによる硬化促進効果が得られやすい。pHが上記上限値以下であれば、有機酸エステルの加水分解により生じた有機酸による硬化促進効果が得られやすい。
【0015】
レゾール型フェノール樹脂の粘度は、10~20,000mPa・sが好ましく、100~15,000mPa・sがより好ましく、1,000~10,000mPa・sがさらに好ましい。レゾール型フェノール樹脂の粘度が上記下限値以上であれば、木材への塗布時ならびに木材接着時に接着面からの液だれがしにくく、上記上限値以下であれば、木材間の接着において塗工性により優れる。
【0016】
レゾール型フェノール樹脂の固形分濃度は、30~70質量%が好ましく、40~60質量%がより好ましく、45~55質量%がさらに好ましい。レゾール型フェノール樹脂の固形分濃度が上記範囲内であれば、レゾール型フェノール樹脂の粘度を前記した好ましい範囲内としやすい。
【0017】
フェノール類は、芳香環及び芳香環に結合した水酸基を有する化合物である。フェノール類は、フェノール樹脂のモノマーとして公知の化合物であってよく、例えば、フェノール、アルキルフェノール類(o,m,pの各クレゾール、o,m,pの各エチルフェノール、キシレノールの各異性体等)、多芳香環フェノール類(α,βの各ナフトール等)、多価フェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ピロガロール、レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン等)等が挙げられる。これらのフェノール類は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
フェノール類としては、レゾール型フェノール樹脂の保存安定性の点では、レゾルシノール以外のものが好ましい。レゾルシノール以外のフェノール類として実用的な物質は、フェノール、o,m,pの各クレゾール、キシレノールの各異性体である。
【0018】
アルデヒド類は、ホルミル基を有する化合物及びその多量体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、グリオキザール等が挙げられる。これらのアルデヒド類は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、実用的な物質は、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドである。
【0019】
アルカリ触媒としては、付加縮合反応を進行させ得るものであれば特に制限はなく、種々のアルカリ性物質を用いることができる。具体例としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物、炭酸ナトリウム、アンモニア等の無機アルカリ性物質;トリエチルアミン、トリメチルアミン等の第3級アミン、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)、DBN(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン)等の環式アミン等の有機アルカリ性物質;等が挙げられる。これらのアルカリ触媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
レゾール型フェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂がレゾール化されたもの(以下、「フェノール樹脂(1)」とも記す。)が挙げられる。
フェノール樹脂(1)は、具体的には、ノボラック型フェノール樹脂とアルデヒド類とのアルカリ触媒存在下での反応(二次反応、レゾール型反応)生成物であり、二次反応レゾール型フェノール樹脂とも称される。
フェノール樹脂(1)は、フェノール類とアルデヒド類とをアルカリ触媒存在下のみで反応させて得られるレゾール型フェノール樹脂に比べ、有機酸エステルの存在下での硬化性に優れており、冷圧や比較的低温での熱圧でも充分に硬化できるため、木材用途において好適に用いられる。
【0021】
ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類との酸触媒存在下での反応(一次反応、ノボラック型反応)生成物である。
ノボラック型フェノール樹脂には、2以上のフェノール類の芳香環同士がアルデヒド類由来のメチレン基を介して結合したフェノール縮合体が含まれる。二次反応では、前記フェノール縮合体の芳香環にアルデヒド類が付加してメチロール基が生成し、生成したメチロール基の一部が他のフェノール縮合体と反応し、高分子量化する。そのため、フェノール樹脂(1)は、メチロール基を有し、ノボラック型フェノール樹脂に含まれるフェノール縮合体よりも高分子量のフェノール縮合体が含まれる。
【0022】
一次反応に用いられる酸触媒としては、一次反応が進行するものであれば特に制限はなく、例えば塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸類、蓚酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸類、酢酸亜鉛、ホウ酸亜鉛等の有機酸塩類が挙げられる。これらの酸触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
酸触媒の使用量は、フェノール類100質量部に対して0.05~2.0質量部が好ましく、0.1~1.0質量部がより好ましい。酸触媒の使用量が上記下限値以上であれば、充分な反応速度が得られ、上記上限値以下であれば、反応をコントロールしやすい。
なお、本明細書において、好ましい上限値及び下限値は適宜組み合わせることができる。例えば酸触媒の使用量は、フェノール類100質量部に対して0.05~1.0質量部であってもよく、0.1~1.0質量部であってもよい。
【0024】
ノボラック型フェノール樹脂におけるアルデヒド類/フェノール類のモル比(以下、「F/Pモル比」とも記す。)は、0.6~0.9が好ましく、0.7~0.8がより好ましい。ノボラック型フェノール樹脂におけるF/Pモル比が上記下限値以上であれば、レゾール化反応時(二次反応時)のアルデヒド類の量を減らすことができ反応時の発熱を抑えることができ、上記上限値以下であれば、ノボラック反応時(一次反応時)のゲル化を抑制することができる。
【0025】
ノボラック型フェノール樹脂のMwは、1,000~8,000が好ましく、1,500~6,000がより好ましい。ノボラック型フェノール樹脂のMwが上記範囲内であれば、フェノール樹脂(1)のMwが後述する好ましい範囲内となりやすい。
【0026】
二次反応に用いられるアルカリ触媒としては、前記と同様のものが挙げられる。
アルカリ触媒の好ましい使用量は、アルカリ触媒/フェノール類のモル比(以下、「アルカリ/Pモル比」とも記す。)によって規定される。
アルカリ/Pモル比は0.1~1.0が好ましく、0.2~0.9がより好ましく0.5~0.8がさらに好ましい。アルカリ/Pモル比が上記下限値以上であれば、速やかにフェノール樹脂(1)を得ることができ、上記上限値以下であれば、二次反応をコントロールしやすい。
【0027】
フェノール樹脂(1)におけるF/Pモル比は、2.0~2.8が好ましく、2.0~2.6がより好ましく、2.0~2.4がさらに好ましい。
ここで、フェノール樹脂(1)におけるF/Pモル比は、一次反応で用いられたフェノール類に対する、一次反応及び二次反応で用いられたアルデヒド類の総量のモル比である。以下、このモル比を「最終的なF/Pモル比」ともいう。
最終的なF/Pモル比が上記下限値以上であれば、フェノール樹脂(1)中に充分な量のメチロール基が存在するため、木材間の接着強度がより優れる。最終的なF/Pモル比が上記上限値以下であれば、木質材料の製造時に揮散する遊離アルデヒド類の量や、木質材料からのホルムアルデヒド放散量が少なくなる。遊離アルデヒド類は、未反応のアルデヒド類である。
【0028】
フェノール樹脂(1)の重量平均分子量(Mw)は、2,000~10,000が好ましく、3,000~10,000がより好ましく、3,000~8,000がさらに好ましく、3,500~8,000が特に好ましく、3,500~7,000が最も好ましい。フェノール樹脂(1)の重量平均分子量が上記下限値以上であれば、木材間の接着強度がより優れる傾向があり、上記上限値以下であれば、本組成物の粘度が低くなり、塗工性が向上する傾向がある。
【0029】
フェノール樹脂(1)に含まれるアルカリ性物質の少なくとも一部は通常、二次反応に用いられたアルカリ触媒である。アルカリ性物質の一部は、二次反応後に添加されたものであってもよい。
【0030】
フェノール樹脂(1)におけるアルカリ性物質/フェノール類のモル比は、0.1~1.0が好ましく、0.2~0.9がより好ましく、0.5~0.8がさらに好ましい。
ここで、フェノール樹脂(1)におけるアルカリ性物質/フェノール類のモル比は、一次反応で用いられたフェノール類の総量に対する、二次反応で用いられたアルカリ触媒及び二次反応後に添加されたアルカリ性物質の総量のモル比である。以下、このモル比を「最終的なアルカリ性物質/フェノール類モル比」ともいう。二次反応後にアルカリ性物質が添加されていない場合、二次反応で用いられたアルカリ触媒及び二次反応後に添加されたアルカリ性物質の総量は、二次反応で用いられたアルカリ触媒の量である。
最終的なアルカリ性物質/フェノール類のモル比が上記下限値以上であれば、大幅に分子量を成長させることなく(粘度上昇することなく)、フェノール樹脂(1)中の遊離アルデヒド類の量を低減でき、上記上限値以下であれば、充分な反応速度を得ることができコントロールしやすい。
【0031】
フェノール樹脂(1)の製造は、例えば、特開2018-53131号公報に記載の方法によって実施できる。
【0032】
レゾール型フェノール樹脂として、フェノール類とアルデヒド類とのアルカリ触媒存在下での反応生成物(以下、「フェノール樹脂(2)」とも記す。)を用いてもよい。
フェノール樹脂(2)は、フェノール類とアルデヒド類とをアルカリ触媒存在下のみで反応させて得られる。フェノール類、アルデヒド類、アルカリ触媒はそれぞれ前記と同様である。この反応生成物の製造は、公知の方法により実施できる。
【0033】
フェノール類とアルデヒド類とをアルカリ触媒存在下で反応させる際のアルカリ触媒の好ましい使用量は、アルカリ触媒/フェノール類のモル比(以下、「アルカリ/Pモル比」とも記す。)によって規定される。
アルカリ/Pモル比は0.1~1.0が好ましく、0.2~0.9がより好ましく0.5~0.8がさらに好ましい。アルカリ/Pモル比が上記下限値以上であれば、速やかにフェノール樹脂(2)を得ることができ、上記上限値以下であれば、レゾール反応をコントロールしやすい。
【0034】
フェノール樹脂(2)におけるF/Pモル比は、1.5~3.5が好ましく、2.0~3.0がより好ましく、2.0~2.4がさらに好ましい。F/Pモル比が上記下限値以上であれば、フェノール樹脂(2)中に充分な量のメチロール基が存在するため、木材間の接着強度がより優れる。モル比が上記上限値以下であれば、木質材料の製造時に揮散する遊離アルデヒド類の量や、木質材料からのホルムアルデヒド放散量が少なくなる。
【0035】
フェノール樹脂(2)の重量平均分子量(Mw)は、1,000~10,000が好ましく、1,500~10,000がより好ましく、2,000~8,000がさらに好ましく、2,000~7,500が特に好ましく、2,000~7,000が最も好ましい。フェノール樹脂(2)の重量平均分子量が上記下限値以上であれば、木材間の接着強度がより優れる傾向があり、上記上限値以下であれば、本組成物の粘度が低くなり、塗工性が向上する傾向がある。
【0036】
<アミン化合物>
本発明において「アミン化合物」とは、窒素原子及び窒素原子に結合した炭化水素基を有する化合物を意味する。
本態様においてアミン化合物は、窒素原子に結合した水素原子を有する。かかるアミン化合物は、木質材料からのホルムアルデヒド放散量を低減する効果に優れる。その理由としては、水素原子と結合した窒素原子がホルムアルデヒドと反応することが考えられる。
窒素原子に結合した水素原子を有するアミン化合物としては、例えば、1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有するアミン化合物が挙げられる。
【0037】
アミン化合物は、鎖状であってもよく、環状であってもよい。
アミン化合物は、窒素原子を1つ有するモノアミン化合物であってもよく、窒素原子を2つ以上有するポリアミン化合物であってもよい。ポリアミン化合物が有する窒素原子の数は、特に限定されないが、例えば2~6である。
窒素原子に結合する炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよく、不飽和炭化水素基であってもよく、また、鎖状であってもよく、環状であってもよい。
【0038】
アミン化合物の分子量は、木質材料からのホルムアルデヒド放散量の低減効果が得られ易い点から、1000以下が好ましく、500以下がより好ましく、100以下がさらに好ましい。アミン化合物の分子量の下限は、特に限定されないが、例えば31.1(モノメチルアミン)である。
アミン化合物の分子量を、水素原子が結合した窒素原子の数で割った値(分子量/水素原子が結合した窒素原子の数)は、ホルムアルデヒド放散量の低減効果が得られ易い点から、1000以下が好ましく、500以下がより好ましく、100以下がさらに好ましい。この値の下限は、特に限定されないが、例えば31.1(モノメチルアミン)である。
【0039】
アミン化合物としては、例えば脂肪族アミン化合物、脂環式アミン化合物、芳香族アミン化合物、アミン誘導体、等が挙げられる。
脂肪族アミン化合物としては、例えば(モノ又はジ)アルカノールアミン、(モノ又はジ)アルキルアミン等が挙げられる。(モノ又はジ)アルカノールアミンはモノアルカノールアミン又はジアルカノールアミンを示す。(モノ又はジ)アルキルアミン等も同様である。(モノ又はジ)アルカノールアミンとしては、例えば(モノ又はジ)エタノールアミン、(モノ又はジ)イソプロパノールアミン等が挙げられる。(モノ又はジ)アルキルアミンとしては、例えば(モノ又はジ)メチルアミン、(モノ又はジ)エチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。
脂環式アミン化合物としては、例えばピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール等が挙げられる。
芳香族アミン化合物としては、例えばアニリン、アミノフェノール、トルイジン等が挙げられる。
アミン誘導体としては、例えばエーテルアミン、アミノ酸等が挙げられる。アミノ酸としては、例えば、グリシン、グルタミン、グルタミン酸等が挙げられる。
【0040】
アミン化合物としては、木質材料からのホルムアルデヒド放散量の低減効果が得られ易い点から、1級アミノ基又は2級アミノ基を有するモノアミン化合物が好ましく、1級アミノ基又は2級アミノ基を有する脂肪族モノアミン化合物がより好ましく、(モノ又はジ)アルカノールアミンがさらに好ましく、モノエタノールアミンが特に好ましい。
アミン化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
<有機酸エステル>
有機酸エステルは、硬化促進剤として機能する。冷圧又は熱圧をかける際、有機酸エステルが加水分解して有機酸が生成し、本組成物のpHが低下することで、硬化反応が促進されると考えられる。
【0042】
有機酸エステルとしては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル等の炭酸エステル;γ-ブチロラクトン、α-アセトラクトン、β-プロピオラクトン等のラクトン;トリアセチン、エチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、酢酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、ギ酸エチル、サリチル酸メチル、アセト酢酸エチル等のモノカルボン酸エステル;コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、マロン酸ジエチル等のジカルボン酸モノエステル又はジカルボン酸ジエステルが挙げられる。これらの有機酸エステルは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0043】
有機酸エステルとしては、上記の中でも、低温硬化性がより優れる点、及び沸点が比較的高い点で、炭酸エステル、ラクトン及びポリオールのカルボン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、γ-ブチロラクトン、α-アセトラクトン、β-プロピオラクトン、トリアセチン及びエチレングリコールジアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。これらの中でも、より少ない量で硬化促進効果が得られる点で、炭酸プロピレン、γ-ブチロラクトン、トリアセチン及びエチレングリコールジアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。必要に応じて、これら以外の有機酸エステルを併用してもよい。
【0044】
<その他の成分>
他の成分としては、例えば糖質、その他の各種の添加剤等が挙げられる。
【0045】
本組成物が糖質、特に還元糖を含むと、木質材料の製造時に揮散する遊離アルデヒド類の量を低減したり、木質材料からのホルムアルデヒド放散量を低減したり、硬化物の色調を淡色化したりすることができる。
還元糖としては、特に限定されず、例えば単糖、オリゴ糖、デキストリン等であってよい。ここで、「オリゴ糖」は2以上10以下の単糖が結合したものとし、「デキストリン」は一般的なマルトデキストリンの概念も含み、DEが20以下の糖組成物をいう。
単糖としては、例えばグルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、リボース、キシロース等が挙げられる。
オリゴ糖としては、例えばマルトース、ラクトース、イソマルトース等の二糖;マルトトリオース等の三糖;四糖以上のオリゴ糖(例えばマルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、マンノオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等)等が挙げられる。
これらの還元糖はいずれか1種を単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0046】
添加剤としては、木材用接着剤組成物の構成成分として公知の成分を適宜用いることができる。添加剤の例としては、有機酸エステル以外の他の硬化促進剤、増粘剤、増量剤、粘度調整剤等が挙げられる。
他の硬化促進剤としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸塩が挙げられる。
増粘剤としては、例えば、小麦粉等の多糖類が挙げられる。
増量剤としては、例えば、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。
他の増量剤としては、例えば木粉、胡桃粉、リグニン、タンニン、血粉等の有機フィラーが挙げられる。
粘度調整剤としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、へキシレングリコール、フェノキシエタノール等の高沸点の水溶性の有機溶剤が挙げられる。
【0047】
<本組成物の組成>
本組成物において、アミン化合物の含有量は、レゾール型フェノール樹脂の固形分100質量部に対して0.1~10.0質量部が好ましく、0.1~8.0質量部がより好ましく、0.2~6.0質量部がさらに好ましく、0.3~4.0質量部が特に好ましく、0.5~4.0質量部が特に好ましい。アミン化合物の含有量が上記下限値以上であれば、木質材料のホルムアルデヒド放散量をより低減できる。アミン化合物の含有量が上記上限値以下であれば、本組成物の接着性能がより優れ、木質材料の木部破断率がより優れる傾向がある。
【0048】
有機酸エステルの含有量は、レゾール型フェノール樹脂及びアミン化合物の合計100質量部に対して1.0~40.0質量部が好ましく、1.0~30.0質量部がより好ましい。有機酸エステルの含有量が上記下限値以上であれば、本組成物の硬化性、木材間の接着強度がより優れる傾向がある。有機酸エステルの含有量が上記上限値以下であれば、木材間の接着強度がより優れる。
【0049】
レゾルシノールの含有量は、レゾール型フェノール樹脂及びアミン化合物の合計100質量部に対して0.5~20.0質量部が好ましく、1.0~15.0質量部がより好ましく、2.0~10.0質量部がさらに好ましく、3.0~9.0質量部がよりさらに好ましく、3.0~8.0質量部が特に好ましい。レゾルシノールの含有量が上記範囲内であれば、本組成物の硬化性、木材間の接着強度がより優れる傾向がある。
【0050】
本組成物の固形分100質量%に対するレゾール型フェノール樹脂の固形分とアミン化合物と有機酸エステルとの合計の割合は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。
本組成物がレゾルシノールを含む場合、本組成物の固形分100質量%に対するレゾール型フェノール樹脂の固形分とアミン化合物と有機酸エステルとレゾルシノールとの合計の割合は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。
【0051】
本組成物の製造直後(全成分の混合直後)のpHは、7~14が好ましく、8~14がより好ましい。pHが上記下限値以上であれば、木材への浸透性が良好で、接着強さがより優れ、上記上限値以下であれば、硬化時間が十分速く、やはり接着強さがより優れる。
【0052】
本組成物の粘度は、10~20,000mPa・sが好ましく、100~15,000mPa・sがより好ましい。本組成物の粘度が上記下限値以上であれば、木材を仮接着するときに接着強度を充分に維持でき、上記上限値以下であれば、本組成物の塗工性がより優れる。
【0053】
本組成物の固形分濃度は、20~100質量%が好ましく、30~90質量%がより好ましく、40~70質量%がさらに好ましい。本組成物の固形分濃度が上記範囲内であれば、本組成物の粘度を前記した好ましい範囲内としやすい。
【0054】
<本組成物の調製方法>
本組成物は、レゾール型フェノール樹脂とアミン化合物と有機酸エステルとを含む原料を混合することにより調製できる。原料は、レゾール型フェノール樹脂、アミン化合物及び有機酸エステル以外に、必要に応じて、追加の水やアルカリ性物質、レゾルシノール、他の成分をさらに含んでいてもよい。
各原料の混合順序は特に限定されないが、レゾール型フェノール樹脂と有機酸エステルとが混合されると、レゾール型フェノール樹脂のゲル化による増粘が進行しやすくなるため、レゾール型フェノール樹脂と有機酸エステルとは、木質材料の製造直前に混合することが好ましい。同様に、レゾール型フェノール樹脂とレゾルシノールとが混合されると、レゾール型フェノール樹脂のゲル化による増粘が進行しやすくなるため、レゾール型フェノール樹脂とレゾルシノールとは、木質材料の製造直前に混合することが好ましい。
本組成物がレゾルシノールを含む場合、有機酸エステル及びレゾルシノールは、個別にレゾール型フェノール樹脂と混合されてもよく、レゾール型フェノール樹脂との混合前に予め混合されてもよい。木質材料の製造工程がより簡便で済むという点では、予め有機酸エステルとレゾルシノールとが混合されていることが好ましい。
レゾール型フェノール樹脂と、有機酸エステル及びレゾルシノールの少なくとも一方とが混合されてから本組成物を木材に塗布するまでの時間は、1時間以下であることが好ましい。
本組成物の調製方法としては、後述する木材用接着剤キットの第1剤と第2剤とを混合する方法が好適である。
【0055】
本組成物は、木材用であり、木材同士を接着するために用いられる。木材については後で詳しく説明する。2以上の木材を本組成物により接着することで、木質材料が得られる。本組成物は、木質材料の製造用ともいえる。
【0056】
本組成物にあっては、レゾール型フェノール樹脂とアミン化合物と有機酸エステルとを含むため、木質材料を短時間もしくは低温での熱圧又は冷圧で製造した場合でも、ホルムアルデヒド放散量の少ない木質材料が得られる。
アミン化合物によりホルムアルデヒド放散量を低減できる理由としては、遊離のフェノール類やアルデヒド類とアミン化合物とがマンニッヒ反応により縮合物を形成し、このマンニッヒ縮合物中の水素原子と結合した窒素原子が放散ホルムアルデヒドを捕捉すると考えられる。
【0057】
〔木材用接着剤用キット〕
本発明の一態様に係る木材用接着剤キット(以下、「本キット」とも記す。)は、第1剤が収容された第1の容器と、第2剤が収容された第2の容器と、を備える。
【0058】
第1剤は、レゾール型フェノール樹脂と、アミン化合物とを含む。第1剤は、有機酸エステル及びレゾルシノールを含まないことが好ましい。第1剤は、他の成分をさらに含んでいてもよい。
レゾール型フェノール樹脂、アミン化合物、他の成分はそれぞれ前記のとおりであり、好ましい態様も同様である。
第1剤のpHは、7~14が好ましく、8~14がより好ましく、9~14がさらに好ましい。
第1剤の粘度は、10~20,000mPa・sが好ましく、100~15,000mPa・sがより好ましく、1000~10,000mPa・sがさらに好ましい。
第1剤の固形分濃度は、30~70質量%が好ましく、40~60質量%がより好ましく、45~55質量%がさらに好ましい。
【0059】
第2剤は、有機酸エステルを含む。第2剤は、レゾール型フェノール樹脂を含まないことが好ましい。第2剤は、レゾルシノール、他の成分のいずれか1以上をさらに含んでいてもよい。
有機酸エステルは前記のとおりであり、好ましい態様も同様である。
【0060】
本キット中のレゾール型フェノール樹脂100質量部に対するアミン化合物の好ましい含有量(質量部)は、本組成物におけるレゾール型フェノール樹脂100質量部に対するアミン化合物の好ましい含有量と同様である。
【0061】
本キット中のレゾール型フェノール樹脂及びアミン化合物の合計100質量部に対する有機酸エステルの好ましい含有量(質量部)は、本組成物におけるレゾール型フェノール樹脂及びアミン化合物の合計100質量部に対する有機酸エステルの好ましい含有量と同様である。
【0062】
本キット中のレゾール型フェノール樹脂及びアミン化合物の合計100質量部に対するレゾルシノールの好ましい含有量(質量部)は、本組成物におけるレゾール型フェノール樹脂及びアミン化合物の合計100質量部に対するレゾルシノールの好ましい含有量と同様である。
【0063】
第1剤の固形分と第2剤の固形分との合計100質量%に対するレゾール型フェノール樹脂の固形分とアミン化合物と有機酸エステルとの合計の好ましい割合(質量%)は、本組成物の固形分100質量%に対するレゾール型フェノール樹脂の固形分とアミン化合物と有機酸エステルとの合計の好ましい割合と同様である。
第2剤がレゾルシノールを含む場合、第1剤の固形分と第2剤の固形分との合計100質量%に対するレゾール型フェノール樹脂の固形分とアミン化合物と有機酸エステルとレゾルシノールとの合計の好ましい割合(質量%)は、本組成物の固形分100質量%に対するレゾール型フェノール樹脂の固形分とアミン化合物と有機酸エステルとレゾルシノールとの合計の好ましい割合と同様である。
【0064】
本キットは、第1剤と第2剤とが混合されて本組成物とされ、木材同士を接着するために用いられる。
【0065】
〔木質材料〕
本発明の一態様に係る木質材料は、2以上の木材が、本組成物の硬化物を介して接着されたものである。
【0066】
木材としては、無垢材、木質材料等が挙げられ、典型的には無垢材である。
無垢材としては、カバ材、桐材、杉材、桧材、松材、ヒバ材、サワラ材、パイン材等が挙げられる。無垢材の形態は、製材、ひき板、単板等であってよい。
木質材料としては、合板、集成材、CLT(直交集成材)、LVL(単板積層材)、ブロックボード、べニア、木質ボード等が挙げられる。木質ボードとしては、IB(インシュレーション・ボード)、MDF(中密度繊維板)、HB(ハード・ボード)、パーティクルボード、OSB(オリエンテッド・ストランド・ボード)等が挙げられる。
【0067】
本態様の木質材料としては、木材の例として挙げた木質材料と同様のものが挙げられる。本態様の木質材料としては、合板、集成材、CLT又はLVLが好ましく、合板、LVLがより好ましい。放散ホルムアルデヒド低減の重要性の高さから、合板が特に好ましい。
合板の場合、複数の木製単板が本組成物の硬化物を介して接着される。木質単板としては、特に限定されず、合板用の木質単板として公知のものを使用できる。例えば、スギ、カラマツ等が木質単板の材料として好適に用いられる。合板を構成する木製単板の数は、特に限定されず、例えば2~20枚とすることができる。
集成材の場合、複数のラミナが本組成物の硬化物を介して接着される。ラミナは一般に、ひき板が裁断されたものが使用される。集成材を構成するラミナの数は、特に限定されず、例えば2~30枚とすることができる。
【0068】
〔木質材料の製造方法〕
本態様の一態様に係る木質材料の製造方法は、
レゾール型フェノール樹脂とアミン化合物と有機酸エステルとを含む原料を混合して木材用接着剤組成物を調製する工程と、
複数の木材を、前記木材用接着剤組成物を介して重ねて積層体を得る工程と、
前記積層体中の前記木材用接着剤組成物を硬化させる工程と
を有する。
以下、木質材料として合板又は集成材を製造する場合を例に挙げて、本態様の製造方法を説明する。ただし、本態様の製造方法は以下の例に限定されるものではない。
【0069】
<合板の製造方法>
この例の合板の製造方法は、レゾール型フェノール樹脂とアミン化合物と有機酸エステルとを混合して本組成物を調製する工程(組成物調製工程)と、
複数の単板を、本組成物を介して重ねて積層体を得る工程(積層工程)と、
得られた積層体中の本組成物を硬化させる工程(接着工程)と、
を有する。
硬化工程の後、必要に応じて、作製された合板を積み重ね一定期間養生してもよい。
【0070】
組成物調製工程は、前記した本組成物の調製方法と同様である。
【0071】
積層工程では、合板において重なり合う単板の少なくとも一方の面に本組成物を塗布し、複数の単板同士を重ねる。本組成物を塗布する方法及び単板を重ねる方法はそれぞれ、公知の合板の製造において用いられる方法と同様であってよい。
本組成物の塗布量としては、例えば、単板の積層面の単位面積当たりの質量として、100~350g/mが挙げられる。
組成物調製工程においてレゾール型フェノール樹脂と有機酸エステル及びレゾルシノールの少なくとも一方とが混合されてから本組成物を単板に塗布するまでの時間は、前記したように、1時間以下であることが好ましい。
【0072】
接着工程において、積層体中の本組成物を硬化させる方法としては、例えば、積層体に冷圧のみ、熱圧のみ、又は冷圧及び熱圧をかける方法が挙げられる。冷圧及び熱圧をかける場合は、典型的には、冷圧をかけた後に熱圧をかける。
冷圧条件、熱圧条件はそれぞれ、本組成物を硬化できればよい。
冷圧条件としては、例えば、温度:室温(25℃)、圧力:0.1~2.0MPa、冷圧をかける時間:10~360分間の条件が挙げられる。
熱圧条件としては、エネルギーコストを考慮すると、温度は、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましく、生産性を考慮すると、50℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、100℃以上がさらに好ましい。圧力は、例えば0.1~2.0MPaである。熱圧をかける時間は、例えば、熱圧をかける方向における熱圧後の厚さ1mmあたり10~100秒間である。
接着工程にて冷圧をかけた後に熱圧をかける場合、積層工程にて本組成物を単板に塗布した後、接着工程にて冷圧をかけるまでの間の時間、いわゆる開放堆積時間(オープンアッセンブリータイム)は、40分間以内が好ましい。冷圧をかけた後、熱圧をかけるまでの間の時間、いわゆる閉鎖堆積時間(クローズドアッセンブリータイム)は、3時間以内が好ましい。
冷圧又は熱圧をかけた後、必要に応じて、荷重をかける等の処理を施してもよい。
【0073】
<集成材の製造方法>
この例の集成材の製造方法は、レゾール型フェノール樹脂とアミン化合物と有機酸エステルとを含む原料を混合して本組成物を調製する工程(組成物調製工程)と、
複数のラミナを、本組成物を介して重ねて積層体を得る工程(積層工程)と、
得られた積層体を圧締して本組成物を硬化させる工程(接着工程)と、
を有する。
必要に応じて、作製された集成材を積み重ね一定時間、一定温度で養生してもよい。
【0074】
組成物調製工程は、前記した本組成物の調製方法と同様である。
【0075】
積層工程では、例えば、複数のラミナのうち、隣り合う又は重なり合うラミナの少なくとも一方の積層面に本組成物を塗布し、複数の木材同士を重ねる。本組成物を塗布する方法及び木材を重ねる方法はそれぞれ、公知の集成材の製造において用いられる方法と同様であってよい。
本組成物の塗布量としては、例えば、ラミナの積層面の単位面積当たりの質量として、100~350g/mが挙げられる。
組成物調製工程においてレゾール型フェノール樹脂と有機酸エステル及びレゾルシノールの少なくとも一方が混合されてから本組成物をラミナに塗布するまでの時間は、前記したように、1時間以下であることが好ましい。
【0076】
接着工程において、積層体中の本組成物を硬化させる方法としては、例えば、積層体に冷圧のみ、熱圧のみ、又は冷圧及び熱圧をかける方法が挙げられる。冷圧及び熱圧をかける場合は、典型的には、冷圧をかけた後に熱圧をかける。
冷圧条件、熱圧条件はそれぞれ、本組成物を硬化できればよい。
冷圧条件としては、例えば、温度:室温(25℃)、圧力:0.1~2.0MPa、冷圧をかける時間:10~360分間の条件が挙げられる。
熱圧条件としては、エネルギーコストを考慮すると、温度は、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましく、生産性を考慮すると、50℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、100℃以上がさらに好ましい。圧力は、例えば0.1~2.0MPaである。
本組成物を塗布した後、冷圧又は熱圧をかけるまでの時間、いわゆる開放堆積時間(オープンアッセンブリータイム)は、40分間以内が好ましい。
【実施例0077】
以下に、本発明を実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。以下の各例において「部」、「%」は、それぞれ、特に限定のない場合は「質量部」、「質量%」を示す。
【0078】
<測定方法>
(GPC測定による重量平均分子量)
試料(フェノール樹脂)2gを2gの純水と10gのTHF(テトラヒドロフラン)で希釈し、pHを確認しながら、1N塩酸水溶液でpH4.0にした。THF層と水層に分離させ、THF層を5倍希釈してGPC測定用サンプルとした。
得られたGPC測定用サンプルについて、以下の測定条件でGPC測定を行い、その結果からポリスチレン換算の重量平均分子量を確認した。
カラム:TSKgel G3000HXL 7.8×300mm×1本(東ソー社製)、TSKgel G2000HXL 7.8×300mm×2本(東ソー社製)。
カラム温度:40℃。
検出器:RI(示差屈折率検出器)。
溶媒:THF(テトラヒドロフラン)。
流量:0.8mL/min。
【0079】
(粘度)
粘度は、25℃においてE型粘度計により測定した。
【0080】
(固形分濃度)
アルミ箔製皿(内径50mm、高さ15mm)の質量C(g)を量り、そこに試料を1.5±0.1gとなるように精秤し、当該試料の具体的な質量を乾燥前の試料質量S(g)とした。このアルミ箔製皿を、予め135±1℃に保った恒温器に入れ、60±2分間の乾燥処理を行った後、デシケーター中にて放冷し、その質量C(g)を量った。その結果から、次式(1)により乾燥後の試料質量D(乾燥処理後にアルミ箔製皿上に残った試料の質量)(g)を算出し、次式(2)により固形分濃度を算出した。
D=C-C ・・・(1)
固形分濃度(質量%)=D/S×100 ・・・(2)
【0081】
<製造例1:レゾール型フェノール樹脂の製造>
コンデンサー、温度計、撹拌装置を備えた反応装置にフェノール376.0部、50%ホルマリン192.0部(F/Pモル比:0.80)、30%硫酸1.25部、水26.2部を仕込み、還流条件下で3時間反応させた。その後、80℃以下まで冷却し、48%水酸化ナトリウム水溶液116.7部、50%ホルマリン360.0部(最終的なF/Pモル比:2.30)、水49.09部を添加し、65℃で、粘度が7,500mPa・sとなるまで反応させた後、ただちに50℃以下まで冷却した。反応液が50℃以下になったときに48%水酸化ナトリウム水溶液116.7部を添加して、固形分50%のレゾール型フェノール樹脂を得た。このレゾール型フェノール樹脂のpHは12.1、重量平均分子量は2850、粘度は1700mPa・sであった。
【0082】
<試験例1>
本試験は、アミン化合物の添加がホルムアルデヒド放散量に与える影響を評価する目的で実施した。
【0083】
(第1剤の調製)
製造例1で得たレゾール型フェノール樹脂をそのまま比較例1の第1剤とした。
製造例1で得たレゾール型フェノール樹脂100部に対し、表1に示す量(部)のモノエタノールアミン(MEA)を添加し、混合して実施例1~5の第1剤を得た。
【0084】
(特類スチーミング繰り返し試験)
各例の第1剤(レゾール型フェノール樹脂とMEAとの合計)100部に対し、トリアセチン14部、レゾルシノール4部、炭酸カルシウム35部、水5部を添加し、1分間攪拌して比較例1、実施例1~5の木材用接着剤組成物を得た。
上記木材用接着剤組成物の調製後ただちに(概ね1分間以内)、30cm角、厚さ2.5mmのスギ材の両面それぞれに、上記木材用接着剤組成物220g/mを塗布し、30cm角、厚さ1.0mmのヒノキ材を上記スギ材の繊維方向と直行するように重ね合わせ、25℃、0.9MPaで60分間プレス成型し、3Ply、厚さ4.5mmの合板を得た。
得られた合板1枚から2.5cm×8cmのテストピースを12枚裁断し、順逆各6枚として日本農林規格(JAS)の特類スチーミング繰り返し試験を行い、せん断強さ(MPa)及び平均木部破断率(%)を求めた。また、その結果から、JAS規格に合格するか否かを判定した。結果を表1に示す。
JAS規格については、せん断強さ0.7MPa以上、またはせん断強さ0.6MPa以上かつ平均木部破断率50%以上、またはせん断強さ0.5MPa以上かつ平均木部破断率65%以上、またはせん断強さ0.4MPa以上かつ平均木部破断率80%以上である場合を合格とした。
なお、せん断強さ及び木部破断率はともに、木質材料の強度、ひいては接着剤組成物の接着性能の指標であるが、通常、木部破断率の方が重要視される。
【0085】
(ホルムアルデヒド放散量)
上記と同様にして3Ply、厚さ4.5mmの合板を作製し、得られた合板から5cm×15cmのテストピースを4枚裁断した。得られたテストピースについて、スケールを1/5にした以外はJASのホルムアルデヒド放散量試験方法に準拠した試験を行った。具体的には、ガラスデシケーター(JIS R 3503)の容積の1/5サイズとなる2Lポリ容器内に、60mLの純水を入れたポリカップと、裁断した合板2枚を入れ密閉した。20℃で24時間放置後、純水中のホルムアルデヒド量をアセチルアセトン法にて測定した。この値が、テストピースからのホルムアルデヒド放散量に相当する。ポリカップはJASで規定された結晶皿を1/5にサイズダウンさせて調整した。各条件n=2で実施し(合板サンプル2枚×2)、平均値を求めた。結果を表1及び図1に示す。表1に、JAS規格のホルムアルデヒド放散量の表示記号(F☆☆☆、F☆☆☆☆等)を併記した。
【0086】
【表1】
【0087】
表1及び図1に示すように、MEAを添加した実施例1~5の合板は、MEAを添加しなかった比較例1の合板に比べ、ホルムアルデヒド放散量が少なかった。また、せん断強さ、平均木部破断率も、JAS規格を合格するものであった。
実施例1~5を対比すると、MEA添加量が増えるにつれて、ホルムアルデヒド放散量が低下し、一方で、平均木部破断率が低下する傾向があった。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明によれば、木質材料を短時間もしくは低温での熱圧又は冷圧で製造した場合でも、ホルムアルデヒド放散量の少ない木質材料が得られる木材用接着剤組成物、木材用接着キット及び木質材料の製造方法、並びに短時間もしくは低温での熱圧又は冷圧で製造した場合でも、ホルムアルデヒド放散量の少ない木質材料を提供できる。
図1