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2024-134906電池、電池の分離方法および電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134906
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電池、電池の分離方法および電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20240927BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240927BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20240927BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240927BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0562
H01M10/0585
H01M4/13
H01M10/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045346
(22)【出願日】2023-03-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「先進・革新蓄電池材料評価技術開発(第2期)」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】菅原 亮
(72)【発明者】
【氏名】麻田 裕矢
【テーマコード(参考)】
5H029
5H031
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ03
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM12
5H029BJ12
5H029CJ12
5H029HJ00
5H029HJ09
5H029HJ20
5H031HH00
5H031HH04
5H031RR01
5H050AA02
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA02
5H050GA12
5H050HA00
5H050HA09
5H050HA17
(57)【要約】
【課題】正負極を容易に分離できることに加えて、電池特性の高い電池等を提供する。
【解決手段】電池10は、正極集電体層14と正極層11と固体電解質層13と負極層12と負極集電体層15とがこの順で積層された構造を有する。正極層11と固体電解質層13との間の剥離強度は1.8N/cm以下である。SOC(State Of Charge)が50%時の25℃での電池10の1Hzの交流抵抗は100Ω・cm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体層と正極層と固体電解質層と負極層と負極集電体層とがこの順で積層された構造を有する電池であって、
前記正極層と前記固体電解質層との間の剥離強度は1.8N/cm以下であり、
SOC(State Of Charge)が50%時の25℃での前記電池の1Hzの交流抵抗は100Ω・cm以下である、
電池。
【請求項2】
前記固体電解質層の空隙率は7%以下である、
請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記正極層の空隙率は12%以下である、
請求項1に記載の電池。
【請求項4】
前記正極層の空隙率は9%以下である、
請求項1に記載の電池。
【請求項5】
前記固体電解質層は、固体電解質としてアルジロダイト型硫化物系固体電解質を含む、
請求項1に記載の電池。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の電池の分離方法であって、
前記正極層と前記固体電解質層との間で前記電池を分離させる、
電池の分離方法。
【請求項7】
正極集電体層と正極層と2層以上の固体電解質層と負極層と負極集電体層とがこの順で積層された構造を有する電池であって、
前記2層以上の固体電解質層のうちの互いに隣接する固体電解質層の間の剥離強度、および、前記正極層と前記2層以上の固体電解質層のうちの前記正極層に隣接する固体電解質層との間の剥離強度のうちの少なくとも一方は1.8N/cm以下であり、
SOCが50%時の25℃での前記電池の1Hzの交流抵抗は100Ω・cm以下である、
電池。
【請求項8】
前記2層以上の固体電解質層のうちの前記負極層に隣接する固体電解質層の空隙率は7%以下である、
請求項7に記載の電池。
【請求項9】
前記正極層の空隙率は12%以下である、
請求項7に記載の電池。
【請求項10】
前記正極層の空隙率は9%以下である、
請求項7に記載の電池。
【請求項11】
前記2層以上の固体電解質層のそれぞれは、固体電解質としてアルジロダイト型硫化物系固体電解質を含む、
請求項7に記載の電池。
【請求項12】
請求項7から11のいずれか1項に記載の電池の分離方法であって、
前記2層以上の固体電解質層のうちの互いに隣接する固体電解質層の間、または、前記正極層と前記2層以上の固体電解質層のうちの前記正極層に隣接する固体電解質層との間で前記電池を分離させる、
電池の分離方法。
【請求項13】
正極集電体層と正極層と固体電解質層と負極層と負極集電体層とがこの順で積層された構造を有する電池の製造方法であって、
前記正極層と前記固体電解質層との間の剥離強度が1.8N/cm以下となるように調整することと、
SOCが50%時の25℃での前記電池の1Hzでの交流抵抗が100Ω・cm以下となるように調整することと、を含む、
電池の製造方法。
【請求項14】
正極集電体層と正極層と2層以上の固体電解質層と負極層と負極集電体層とがこの順で積層された構造を有する電池の製造方法であって、
前記2層以上の固体電解質層のうちの互いに隣接する固体電解質層の間の剥離強度、および、前記正極層と前記2層以上の固体電解質層のうちの前記正極層に隣接する固体電解質層との間の剥離強度のうちの少なくとも一方が1.8N/cm以下となるように調整することと、
SOCが50%時の25℃での前記電池の1Hzでの交流抵抗が100Ω・cm以下となるように調整することと、を含む、
電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池、電池の分離方法および電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、負極層と、正極層と、負極層と正極層との間に挟まれた電解質とを有し、両電極層間にリチウムイオンを往復移動させることにより充電と放電とを可能とした蓄電池である。リチウムイオン二次電池には従来から、電解質として有機電解液が用いられてきた。しかし、有機電解液は液漏れを生じやすく、また、過充電により電池内部で短絡が生じるおそれもあり、信頼性および安全性の更なる向上が求められている。
【0003】
このような状況下、有機電解液に代えて、無機固体電解質を用いた全固体リチウムイオン二次電池の開発が進められている。以下では、全固体リチウムイオン二次電池等の、電解質として固体電解質を用いた電池を、「全固体電池」と呼ぶ。全固体電池は、負極層、電解質層および正極層の全てが固体からなり、有機電解液を用いた電池の課題とされる安全性および信頼性を大きく改善することができ、長寿命化も可能になるとされる。また固体電解質の難燃性が高いこと、冷却ユニットを必要としないことによりパックエネルギー密度が高くなること、および、ハイレート充電が可能であることなどの特性から、例えば、自動車用途への実用化が期待されている。
【0004】
全固体電池では、各層の接合強度を高めることで界面抵抗を低減して電池特性を向上させることができる。例えば、特許文献1には、固体電解質層と他層との剥離強度を高めることで、各層の反りを抑制し、密着させることが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、全固体電池を使い終わった後のリサイクル時を想定して、固体電解質層の表面上に、熱可塑性樹脂を配置することで、リサイクル時に熱可塑性樹脂の融点以上に加熱して正負極を分離させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2015/147122号
【特許文献2】特開2016-134254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電池において、自動車用途等では、急速充電のために優れた充電負荷特性等の電池特性が求められる。また、電池において、初期不良の電極層があった場合の電極交換および電池を使い終わった後のリサイクル等のため、正負極の分離ができることも重要である。
【0008】
そこで、本開示は、正負極を容易に分離できることに加えて、電池特性の高い電池等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る電池は、正極集電体層と正極層と固体電解質層と負極層と負極集電体層とがこの順で積層された構造を有する電池であって、前記正極層と前記固体電解質層との間の剥離強度は1.8N/cm以下であり、SOC(State Of Charge)が50%時の25℃での前記電池の1Hzの交流抵抗は100Ω・cm以下である。
【0010】
また、本開示の一態様に係る電池の分離方法は、上記電池の分離方法であって、前記正極層と前記固体電解質層との間で前記電池を分離させる。
【0011】
また、本開示の一態様に係る電池は、正極集電体層と正極層と2層以上の固体電解質層と負極層と負極集電体層とがこの順で積層された構造を有する電池であって、前記2層以上の固体電解質層のうちの互いに隣接する固体電解質層の間の剥離強度、および、前記正極層と前記2層以上の固体電解質層のうちの前記正極層に隣接する固体電解質層との間の剥離強度のうちの少なくとも一方は1.8N/cm以下であり、SOCが50%時の25℃での前記電池の1Hzの交流抵抗は100Ω・cm以下である。
【0012】
また、本開示の一態様に係る電池の分離方法は、上記電池の分離方法であって、前記2層以上の固体電解質層のうちの互いに隣接する固体電解質層の間、または、前記正極層と前記2層以上の固体電解質層のうちの前記正極層に隣接する固体電解質層との間で前記電池を分離させる。
【0013】
また、本開示の一態様に係る電池の製造方法は、正極集電体層と正極層と固体電解質層と負極層と負極集電体層とがこの順で積層された構造を有する電池の製造方法であって、前記正極層と前記固体電解質層との間の剥離強度が1.8N/cm以下となるように調整することと、SOCが50%時の25℃での前記電池の1Hzでの交流抵抗が100Ω・cm以下となるように調整することと、を含む。
【0014】
また、本開示の一態様に係る電池の製造方法は、正極集電体層と正極層と2層以上の固体電解質層と負極層と負極集電体層とがこの順で積層された構造を有する電池の製造方法であって、前記2層以上の固体電解質層のうちの互いに隣接する固体電解質層の間の剥離強度、および、前記正極層と前記2層以上の固体電解質層のうちの前記正極層に隣接する固体電解質層との間の剥離強度のうちの少なくとも一方が1.8N/cm以下となるように調整することと、SOCが50%時の25℃での前記電池の1Hzでの交流抵抗が100Ω・cm以下となるように調整することと、を含む。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、正負極を容易に分離できることに加えて、電池特性の高い電池等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施の形態1に係る電池の一例を示す概略断面図である。
図2図2は、実施の形態1に係る電池の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、実施の形態1に係る正極側積層体の一例を示す概略断面図である。
図4図4は、実施の形態1に係る負極側積層体の一例を示す概略断面図である。
図5図5は、実施の形態1に係る外装体および拘束部材が付与された電池の一例を示す概略断面図である。
図6図6は、実施の形態1に係る電池の分離方法を説明するための図である。
図7図7は、実施の形態2に係る電池の一例を示す概略断面図である。
図8図8は、実施の形態2に係る電池の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、実施の形態2に係る正極側積層体の一例を示す概略断面図である。
図10図10は、実施の形態2に係る負極側積層体の一例を示す概略断面図である。
図11図11は、実施の形態2に係る電池の分離方法を説明するための図である。
図12図12は、実施の形態2に係る電池の分離方法を説明するための別の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(本開示の一態様を得るに至った経緯)
全固体電池では、例えば、充電時に正極層を構成するリチウム遷移金属複合酸化物等からリチウムイオンが放出され、このリチウムイオンは固体電解質を通って負極層へと到達して負極活物質に吸蔵される。この際、負極活物質に吸蔵されたリチウムイオンの一部は電子を取り込み金属リチウムとして析出する現象が生じることがある。この金属リチウムの析出物が充放電の繰り返しによりデンドライト(樹枝状の結晶)に成長してしまうと、やがて正極層と接触し、内部短絡が生じて二次電池として機能しなくなる。特に、自動車用途等では急速充電が可能なことが求められるが、電池を急速充電する場合には電池内部においてデンドライトが成長しやすく、電池に内部短絡が生じやすい。さらに、正極層、固体電解質層および負極層の各層間の界面抵抗が高い場合は、電池としての内部抵抗が高くなり、急速充電が困難となる。従って、金属リチウム等からなるデンドライトの成長を抑制して内部短絡の発生を抑制するとともに、正極層、固体電解質層および負極層の各層間の界面抵抗を低減させることは、急速充電を可能とし、電池を長寿命化する上で重要である。
【0018】
上述のように、特許文献1には、固体電解質層と他層との剥離強度を高めることで、各層の反りを抑制し、密着させることが記載されている。しかしながら、全固体電池は全て固体から構成されており、各層を接合させる際、および、積層化電池を作製する際に、相対的に硬い正極層が固体電解質層にクラックを生じさせる。特に、正極層と、固体電解質層および負極層との面積が互いに異なる場合は、正極層と、固体電解質層および負極層との接合時に面積の小さい層の端部を起点にクラックが拡大して、生産時の歩留まりが低くなる問題が生じる。
【0019】
また、電池の各層を全て強く接合させると、正負極を容易に分離できないため、もし初期不良の電極層があった場合の電極交換が困難であり、生産時の歩留まりが低くなる。また、電池を使い終わった後のリサイクル時などに正負極を容易に分離できず、効率的な資源回収が難しい。
【0020】
このような課題に対して、特許文献2に記載の電池では、固体電解質層の表面上に熱可塑性樹脂が配置されているため、リサイクル時に熱可塑性樹脂の融点以上に加熱して正負極を分離させることができる。しかしながら、絶縁体である熱可塑性樹脂を固体電解質層の表面上に配置することは、電池特性の低下に直結する懸念がある。
【0021】
そこで、本開示では、上記課題を鑑み、正負極を容易に分離できることに加えて、電池特性の高い電池等を提供する。
【0022】
(本開示の概要)
以下に、本開示の概要として、本開示に係る電池、電池の分離方法および電池の製造方法の例について示す。
【0023】
本開示の第1態様に係る電池は、正極集電体層と正極層と固体電解質層と負極層と負極集電体層とがこの順で積層された構造を有する電池であって、前記正極層と前記固体電解質層との間の剥離強度は1.8N/cm以下であり、SOC(State Of Charge)が50%時の25℃での前記電池の1Hzの交流抵抗は100Ω・cm以下である。
【0024】
これにより、正極層と固体電解質層との間で電池が分離しやすくなりつつも、電池特性を向上できるため、正負極を容易に分離できることに加えて、電池特性の高い電池を実現できる。
【0025】
また、例えば、本開示の第2態様に係る電池は、第1態様に係る電池において、前記固体電解質層の空隙率は7%以下であってもよい。
【0026】
これにより、緻密な固体電解質層によってデンドライトの成長を抑制できる。
【0027】
また、例えば、本開示の第3態様に係る電池は、第1態様または第2態様に係る電池において、前記正極層の空隙率は12%以下であってもよい。
【0028】
これにより、電池の充電容量を高めることができる。
【0029】
また、例えば、本開示の第4態様に係る電池は、第1態様または第2態様に係る電池において、前記正極層の空隙率は9%以下であってもよい。
【0030】
これにより、電池の充電容量をさらに高めることができる。
【0031】
また、例えば、本開示の第5態様に係る電池は、第1態様から第4態様のいずれか1つに係る電池において、前記固体電解質層は、固体電解質としてアルジロダイト型硫化物系固体電解質を含んでいてもよい。
【0032】
これにより、アルジロダイト型硫化物系固体電解質はイオン伝導性が高く、広い温度範囲で安定であるため、電池の特性を高め、電池の使用温度領域を拡げることができる。
【0033】
また、本開示の第6態様に係る電池の分離方法は、第1態様から第5態様のいずれか1つに係る電池の分離方法であって、前記正極層と前記固体電解質層との間で前記電池を分離させる。
【0034】
これにより、上述した電池特性の高い電池の正負極を容易に分離できる。
【0035】
また、本開示の第7態様に係る電池は、正極集電体層と正極層と2層以上の固体電解質層と負極層と負極集電体層とがこの順で積層された構造を有する電池であって、前記2層以上の固体電解質層のうちの互いに隣接する固体電解質層の間の剥離強度、および、前記正極層と前記2層以上の固体電解質層のうちの前記正極層に隣接する固体電解質層との間の剥離強度のうちの少なくとも一方は1.8N/cm以下であり、SOCが50%時の25℃での前記電池の1Hzの交流抵抗は100Ω・cm以下である。
【0036】
これにより、正極層と正極層に隣接する固体電解質層との間、または、互いに隣接する固体電解質層の間で電池が分離しやすくなりつつも、電池特性を向上できるため、正負極を容易に分離できることに加えて、電池特性の高い電池を実現できる。
【0037】
また、例えば、本開示の第8態様に係る電池は、第7態様に係る電池において、前記2層以上の固体電解質層のうちの前記負極層に隣接する固体電解質層の空隙率は7%以下であってもよい。
【0038】
これにより、緻密な固体電解質層によってデンドライトの成長を抑制できる。
【0039】
また、例えば、本開示の第9態様に係る電池は、第7態様または第8態様に係る電池において、前記正極層の空隙率は12%以下であってもよい。
【0040】
これにより、電池の充電容量を高めることができる。
【0041】
また、例えば、本開示の第10態様に係る電池は、第7態様または第8態様に係る電池において、前記正極層の空隙率は9%以下であってもよい。
【0042】
これにより、電池の充電容量をさらに高めることができる。
【0043】
また、例えば、本開示の第11態様に係る電池は、第7態様から第10態様のいずれか1つに係る電池において、前記固体電解質層は、固体電解質としてアルジロダイト型硫化物系固体電解質を含んでいてもよい。
【0044】
これにより、アルジロダイト型硫化物系固体電解質はイオン伝導性が高いため、電池の特性を高めることができる。
【0045】
また、本開示の第12態様に係る電池の分離方法は、第7態様から第11態様のいずれか1つに係る電池の分離方法であって、前記正極層と前記2層以上の固体電解質層のうちの前記正極層に隣接する固体電解質層との間で前記電池を分離させる。
【0046】
これにより、上述した電池特性の高い電池の正負極を容易に分離できる。
【0047】
また、本開示の第13態様に係る電池の製造方法は、正極集電体層と正極層と固体電解質層と負極層と負極集電体層とがこの順で積層された構造を有する電池の製造方法であって、前記正極層と前記固体電解質層との間の剥離強度が1.8N/cm以下となるように調整することと、SOCが50%時の25℃での前記電池の1Hzでの交流抵抗が100Ω・cm以下となるように調整することと、を含む。
【0048】
これにより、正負極を容易に分離できることに加えて、電池特性の高い上述の電池を製造できる。
【0049】
また、本開示の第14態様に係る電池の製造方法は、正極集電体層と正極層と2層以上の固体電解質層と負極層と負極集電体層とがこの順で積層された構造を有する電池の製造方法であって、前記2層以上の固体電解質層のうちの互いに隣接する固体電解質層の間の剥離強度、および、前記正極層と前記2層以上の固体電解質層のうちの前記正極層に隣接する固体電解質層との間の剥離強度のうちの少なくとも一方が1.8N/cm以下となるように調整することと、SOCが50%時の25℃での前記電池の1Hzでの交流抵抗が100Ω・cm以下となるように調整することと、を含む。
【0050】
これにより、正負極を容易に分離できることに加えて、電池特性の高い上述の電池を製造できる。
【0051】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ならびに、工程などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0052】
また、本明細書において、平行、垂直などの要素間の関係性を示す用語、および、矩形などの要素の形状を示す用語、ならびに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲も含むことを意味する表現である。
【0053】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。従って、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する。
【0054】
また、本明細書において、断面図は、電池等の積層体の中心部を積層方向に沿って切断した場合の断面を示す図である。また、本明細書において、積層方向は、電池の各層の厚さ方向、および、電池の各層の主面に垂直な方向と一致する。
【0055】
(実施の形態1)
[1.構成]
まず、本実施の一形態に係る電池の構成について説明する。
【0056】
[1-1.電池]
はじめに、本実施の一形態に係る電池の概要について説明する。
【0057】
図1は、本実施の一形態に係る電池の一例を示す概略断面図である。
【0058】
図1に示すように、電池10は、正極活物質を含む正極層11と、正極層11に対向して配置され、負極活物質を含む負極層12と、正極層11と負極層12との間に配置される固体電解質層13と、正極層11の集電を行う正極集電体層14と、負極層12の集電を行う負極集電体層15と、を備える。電池10は、正極集電体層14と、正極層11と、固体電解質層13と、負極層12と、負極集電体層15とがこの順で積層された構造を有する。なお、正極層11と正極集電体層14とを併せて正極と呼ぶことがあり、負極層12と負極集電体層15とを併せて負極と呼ぶことがある。
【0059】
電池10は、例えば、正極層11、負極層12および固体電解質層13の全てが固体からなる全固体電池である。電池10は、正極層11、負極層12および固体電解質層13を備えるものであれば特に限定されるものではない。電池10の形状は、例えば、コイン型、パウチ型、円筒型または角型等である。なお、正極層11、負極層12、固体電解質層13、正極集電体層14および負極集電体層15は、互いに平面形状および面積が同じであってもよく、これらのうちの少なくとも1つの層は他の層と平面形状および面積が異なっていてもよい。
【0060】
本実施の一形態に係る電池10は種々の用途に適用することができる。電池10の適用態様には特に制限はないが、例えば、電池10を電子機器に搭載する場合、電子機器としては、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源などが挙げられる。電池10のその他の民生用の用途として、自動車、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。更に、電池10は、宇宙用として用いることができる。また、電池10と太陽電池と組み合わせることもできる。
【0061】
以下、電池10の各構成について説明する。
【0062】
[1-2.固体電解質層]
まず、固体電解質層13について説明する。本実施の一形態では、正極層11と負極層12の間に1層の固体電解質層13が配置される。固体電解質層13は、正極層11と負極層12とのそれぞれと接している。
【0063】
固体電解質層13は、主成分として固体電解質を含む。固体電解質としては、例えば、LiS-P(Li11)、Li10GeP12、LiPSClおよびLiPSIなどの硫化物系固体電解質、ならびに、Li1.4Al0.4Ti1.6(PO、LiLaZr12およびLi1.5Al0.5Ge1.5(POなどの酸化物系固体電解質などの無機固体電解質が挙げられる。固体電解質層13には、これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、イオン伝導性の観点からは、固体電解質層13は硫化物系固体電解質を含んでいてもよい。
【0064】
また、固体電解質層13は、固体電解質として、アルジロダイト(Argyrodite)型硫化物系固体電解質を含んでいてもよい。アルジロダイト型硫化物系固体電解質は、硫化物系固体電解質の一種であり、アルジロダイト型結晶構造を有する硫化物系固体電解質である。アルジロダイト型硫化物系固体電解質は、リチウムイオン伝導度が高く、広い温度範囲で安定であるため、アルジロダイト型硫化物系固体電解質を用いることで、電池10の特性を高め、かつ、電池10の使用温度領域を拡げることができる。また、アルジロダイト型硫化物系固体電解質は比較的硬いため、後述する剥離強度を調整しやすくなる。
【0065】
また固体電解質層13は、構成材料として結着材を含んでいてもよい。固体電解質層13が結着材を含むことにより、固体電解質層の強度が向上する。結着材としては、化学的、電気的に安定なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系結着材、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム系結着材、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系結着材およびカルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース系結着材などの有機系バインダが挙げられる。固体電解質層13は、固体電解質および結着材以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。固体電解質層13における各構成材料の含有量および種類は適宜設定され、限定されない。
【0066】
固体電解質層13の厚さは、適宜設定され、限定されない。固体電解質層13の厚さは、例えば、0.01μm以上1mm以下であり、0.1μm以上100μm以下であってもよく、1μm以上25μm以下であってもよい。
【0067】
ここで、負極層12に隣接して配置される固体電解質層13の空隙率を低くすることで、負極層12に含まれる負極活物質に吸蔵されたリチウムイオンの一部が電子を取り込み、金属リチウムとして析出しても、緻密な固体電解質層13によってデンドライトの成長を抑制しやすい。
【0068】
固体電解質層13の空隙率は、例えば、7%以下である。固体電解質層13の空隙率が7%以下であることで、負極層12に含まれる負極活物質に吸蔵されたリチウムイオンの一部が電子を取り込み、金属リチウムとして析出した場合に、固体電解質層13の空隙でデンドライトが成長しにくくなり、内部短絡の発生を抑制できる。そのため、例えば、急速充電が可能になる。各層の空隙率は、層の見かけ体積に対する層中で空隙が占める体積の割合である。層の面積および厚さから見かけ体積を算出し、層の質量と層の構成材料の真密度とから層の構成材料が占める体積を算出し、見かけ体積と構成材料が占める体積との差を空隙が占める体積として、空隙が占める体積を見かけ体積で除することで空隙率を算出する。
【0069】
[1-3.正極層]
次に、正極層11について説明する。正極層11は、正極集電体層14と固体電解質層13との間に配置される。正極層11は、主成分として、正極活物質および固体電解質を含む。
【0070】
正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiMnO、LiNiO、Ni、Co、Mnの3元系リチウム金属複合酸化物、Ni、Co、Alの3元系リチウム金属複合酸化物およびLiFePOなどが挙げられる。正極層11には、これらの2種以上が用いられてもよい。
【0071】
固体電解質としては、例えば、上記の[1-2.固体電解質層]で例示した固体電解質を用いることができる。例えば、正極層11は、固体電解質として、アルジロダイト型硫化物系固体電解質を含んでいてもよい。
【0072】
固体電解質として硫化物系固体電解質を用いる場合には、正極活物質の反応を抑制するため、正極活物質表面にLiNbOによるコーティングを行ってもよい。
【0073】
また、正極層11は、構成材料として結着材を含んでいてもよい。正極層11が結着材を含むことにより、正極層11の強度が向上する。結着材としては、例えば、上記の[1-2.固体電解質層]で例示した結着材を用いることができる。
【0074】
また、正極層11は、構成材料として導電材を含んでいてもよい。正極層11が導電材を含むことにより、正極層11の電子伝導度が向上する。導電材としては、例えば、カーボンナノファイバー、アセチレンブラックおよびケッチェンブラック(登録商標)等の炭素材料ならびにニッケル、アルミニウムおよびステンレス等の金属材料などが挙げられる。
【0075】
また、正極層11は、構成材料として正極活物質、固体電解質、結着材および導電材以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0076】
正極層11における各構成材料の含有量および正極層11の形状は特に限定されない。正極層11の厚さは、例えば、0.1μm以上30mm以下であり、1μm以上1mm以下であってもよく、2μm以上250μm以下であってもよい。
【0077】
正極層11における正極活物質の含有量は、例えば、50質量%以上99質量%以下であり、70質量
%以上98質量%以下であってもよく、90質量%以上97質量%以下であってもよい。
【0078】
また、エネルギー密度および電池特性を向上させる観点から、正極層11の空隙率は、例えば、12%以下であり、9%以下であってもよい。
【0079】
[1-4.負極層]
次に、負極層12について説明する。負極層12は、負極集電体層15と固体電解質層13との間に配置される。負極層12は、主成分として、負極活物質および固体電解質を含む。
【0080】
負極活物質としては、例えば、黒鉛、ハードカーボン、チタン酸リチウム、酸化チタン、シリコンおよび酸化シリコンなどが挙げられる。負極層12には、これらの2種以上が用いられてもよい。
【0081】
固体電解質としては、例えば、上記の[1-2.固体電解質層]で例示した固体電解質を用いることができる。
【0082】
また、負極層12は、構成材料として結着材を含んでいてもよい。負極層12が結着材を含むことにより、負極層12の強度が向上する。結着材としては、例えば、上記の[1-2.固体電解質層]で例示した結着材を用いることができる。
【0083】
また、負極層12は、構成材料として負極活物質、固体電解質および結着材以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0084】
負極層12における各構成材料の含有量および負極層12の形状は特に限定されない。負極層12の厚さは、例えば、0.1μm以上30mm以下であり、1μm以上1mm以下であってもよく、2μm以上250μm以下であってもよい。
【0085】
負極層12における負極活物質の含有量は、例えば、50質量%以上99質量%以下であり、70質量%以上98質量%以下であってもよく、90質量%以上97質量%以下であってもよい。
【0086】
[1-5.集電体層]
次に、正極集電体層14および負極集電体層15について説明する。正極集電体層14の一方の主面には正極層11が積層される。正極集電体層14と正極層11とは接している。負極集電体層15の一方の主面には負極層12が積層される。負極集電体層15と負極層12とは接している。
【0087】
正極集電体層14および負極集電体層15を構成する材料は、固体電解質との接触および作動電位内の充放電により反応しないこと、ならびに、電気抵抗率が低いことが好ましい。正極集電体層14および負極集電体層15は、例えば、金属箔で構成される。正極集電体層14および負極集電体層15に用いる材料としては、例えば、アルミニウム、ステンレス(SUS、オーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト・フェライト系(2相))、ニッケルおよび銅などが挙げられる。正極集電体層14および負極集電体層15は、これらの2種以上を含んでいてもよい。
【0088】
また、正極層11および負極層12が固体電解質として硫化物系固体電解質を含む場合、採用する集電体層の材料によっては、集電体層と硫化物系固体電解質とが反応して、電池10の内部抵抗が増加する可能性がある。このような場合においては、正極集電体層14および負極集電体層15の材料として、硫化物系固体電解質との反応性が低い材料を用いることが好ましい。例えば、負極集電体層15の材料として、ステンレスまたはニッケルなどを用いてもよい。また、例えば、正極集電体層14の材料として、アルミニウムを用いてもよい。
【0089】
[1-6.その他の構成]
電池10は、上記で説明した各層以外のその他の構成をさらに備えていてもよい。その他の構成としては、電池に用いられる通常の構成を特に制限されることなく適用することができる。
【0090】
電池10は、例えば、正極集電体層14に接続される正極端子および負極集電体層15に接続される負極端子を備えていてもよい。正極端子および負極端子を構成する材料としては、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス、ニッケルなどが挙げられる。正極端子および負極端子は、これらの2種以上を含んでいてもよい。また、正極端子および負極端子には、後述する外装体と接する箇所に、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を用いたシーラントフィルムを配置してもよい。これにより、熱圧着による封止を強固にすることができる。
【0091】
また、電池10は、例えば、電池10の各層を一括して覆う外装体を備えていてもよい。外装体には、例えば、金属樹脂複合フィルムなどが用いられる。電池10中の固体電解質が、大気雰囲気に含まれる水分と反応して劣化することを抑制するため、外装体は、例えば、ガスバリア性を有する。また、外装体は、例えば、真空封止により形成される。真空封止によって、各層の界面抵抗を低減することができる。また、電池10は、例えば、電池10を厚さ方向に挟み込む拘束部材を備えていてもよい。拘束部材の種類は特に限定されるものではなく、金属板で電池10を挟み込む部材等の一般的な拘束部材を用いることができる。
【0092】
[2.電池の剥離強度および交流抵抗]
次に、本実施の一形態に係る電池10の剥離強度および交流抵抗について説明する。
【0093】
電池10において、正極層11と固体電解質層13との間の剥離強度は1.8N/cm以下である。また、例えば、電池10において、各層の間の剥離強度のうち正極層11と固体電解質層13との間の剥離強度が最も低い。このような剥離強度であることにより、正極活物質を含む正極層11と負極活物質を含む負極層12とを容易に分離することが可能となり、正極活物質と負極活物質とが混ざらずに電池10を容易に分離することができる。また正極集電体層14と負極集電体層15とが異なる材料で構成されている場合に、正極集電体層14と負極集電体層15とが混ざらずに、別箇に取り出すことが可能になる。これにより、初期不良の電極層があった場合の電極交換が可能となり、生産時の歩留まりが向上する。また、将来的に電池10を使い終わった後のリサイクル時などに正負極を容易に分離できて、効率的な資源回収が可能となる。また、正負極をさらに分離しやすくする観点から、正極層11と固体電解質層13との間の剥離強度は1.0N/cm以下であってもよく、0.5N/cm以下であってもよく、0.1N/cm以下であってもよい。各層の間の剥離強度は、以下の方法により測定される。まず、電池10が拘束部材および外装体を備える場合には、電池10から拘束部材および外装体を取り除いて試験用のサンプルとする。電池10が拘束部材および外装体を備えない場合には、そのままの電池10を試験用のサンプルとする。次に、両面テープを介して、サンプルの正極集電体層14の最外面を試験機の試料台に貼りつける。次に、負極集電体層15の最外面に少なくとも正極層11と対向している領域を覆うように、所定の幅(具体的には2.0cm)のポリイミドテープを貼りつける。そして、ポリイミドテープの一端にセロハンフィルムを貼り、そのセロハンフィルムをフォースゲージのクリップに取りつける。最後に、サンプルに対して180°の角度で、かつ10cm/分の速度でフォースゲージを掃引する。つまり、いわゆる180°剥離試験を行う。この際の剥離荷重を剥離面幅で除することにより剥離強度を算出する。また、180°剥離試験によっていずれの層の間で剥離したかを目視で確認し、いずれの層の間の剥離強度であるかを決定する。
【0094】
また、SOCが50%時の25℃での電池10の1Hzの交流抵抗は100Ω・cm以下である。これにより、急速充電におけるクーロン効率等の電池特性が向上する。また、電池特性をさらに高める観点から、SOCが50%時の25℃での電池10の1Hzの交流抵抗は50Ω・cm以下であってもよい。電池10の交流抵抗は、交流抵抗測定計を用いて、正極集電体層14または正極集電体層14に接続される正極端子と負極集電体層15または負極集電体層15に接続される負極端子との間の交流抵抗を測定する。具体的には、まず、完全放電状態の電池10を25℃、0.1Cの電流でCCCV(Constant CurrentConstant Voltage)充電を行い、SOCが50%になるように調整する。その後、25℃での電池10の正極集電体層14または正極集電体層14に接続される正極端子と負極集電体層15または負極集電体層15に接続される負極端子との間の1Hzの交流抵抗を、交流抵抗測定計を用いて測定する。なお、1Cは1時間で電池10の全容量を充電する電流である。すなわち、0.1Cは10時間で全容量を充電する電流である。また、SOCは、25℃、0.1Cの電流でCCCV(Constant Current Constant Voltage)充電で電池10を完全放電状態から満充電状態まで充電した際の充電電気量を100%としたときの、電池10に充電されている電気量の割合である。
【0095】
なお、電池10が拘束部材を備える場合には、拘束部材による拘束圧を変更することなく、上記の方法で交流抵抗を測定する。つまり、電池10を使用する際の拘束圧が電池10に付与された状態で、上記の方法で交流抵抗を測定する。
【0096】
このように、電池10が上記のような剥離強度および交流抵抗であることにより、正負極を容易に分離できると共に、電池特性を向上できる。
【0097】
[3.電池の製造方法]
続いて、上述した本実施の一形態に係る電池10の製造方法について説明する。
【0098】
図2は、本実施の一形態に係る電池10の製造方法の一例を示すフローチャートである。なお、以下で説明する製造方法は一例であり、本実施の一形態に係る電池10の製造方法は、以下の例に限らない。
【0099】
電池10の製造方法では、図2に示すように、まず、正極層11を形成する(ステップS11)。例えば、正極集電体層14を構成する金属箔を準備し、正極集電体層14の表面上に、正極層11の構成材料を含むスラリー等の組成物を塗布し、乾燥することにより正極層11が形成される。また、これにより、正極集電体層14に正極層11が積層された正極側積層体が形成される。図3は、本実施の形態に係る正極側積層体の一例を示す概略断面図である。図3に示すように、正極側積層体30は、正極集電体層14の一方の主面上に正極層11が積層された構造を有する。
【0100】
正極層11の形成における塗布の方法としては、例えば、ドクターブレード法、ダイコーター、コンマコーター等、または、印刷層を形成するためにスクリーン印刷等の連続的な製造方法を用いることができる。また、正極層11の構成材料の塗布において、ロール トゥ ロール法を用いてもよい。
【0101】
また、高充填化のため、形成した正極層11に対して加圧してもよい。このような加圧の方法は、特に限定されないが、正極層11の加圧は、例えば、ロール トゥ ロール法を用いて加圧をする方法等のように、上記の塗布の後に連続して行う方法、または、平板プレス、ロールプレス、等方圧プレス(ISP)等の通常の方法により行うことができる。また、加圧においては、加温してもよい。加圧における加圧力、加圧温度および加圧時間などの各種の加圧条件も特に限定されないが、この加圧条件により、正極層11の空隙率を調整することができる。例えば、加圧力を大きくする、加圧温度を高くする、加圧時間を長くする、等によって空隙率は小さくなる。このように、電池10の製造方法では、正極層11の空隙率を調整することによって、空隙率が12%以下または9%以下である正極層11を形成してもよい。なお、加圧は、正極層11単独に対して行われてもよく、他の層が正極層11に積層された後に複数の層に対して一括で行われてもよい。
【0102】
次に、負極層12を形成する(ステップS12)。例えば、負極集電体層15を構成する金属箔を準備し、負極集電体層15の表面上に、負極層12の構成材料を含むスラリー等の組成物を塗布し、乾燥することにより負極層12が形成される。塗布の方法には、上記の正極層11の形成における塗布と同様の方法を用いることができる。
【0103】
また、高充填化のため、形成した負極層12に対して加圧してもよい。この加圧の方法には、上記の正極層11の形成における加圧と同様の方法を用いることができる。また、正極層11と同様に、この加圧における加圧条件により、負極層12の空隙率を調整することができる。なお、加圧は、負極層12単独に対して行われてもよく、他の層が負極層12に積層された後に複数の層に対して一括で行われてもよい。
【0104】
次に、固体電解質層13を形成する(ステップS13)。例えば、金属箔または樹脂フィルム等の基材を準備し、基材の表面上に固体電解質層13の構成材料を含むスラリー等の組成物を塗布し、乾燥することにより固体電解質層13が形成される。塗布の方法には、上記の正極層11の形成における塗布と同様の方法を用いることができる。
【0105】
次に、ステップS13で形成した固体電解質層13をステップS12で形成した負極層12上に積層することで負極側積層体を形成する(ステップS14)。図4は、本実施の形態に係る負極側積層体の一例を示す概略断面図である。図4に示すように、負極側積層体40は、負極集電体層15、負極層12および固体電解質層13がこの順で厚さ方向に沿って積層された構造を有する。例えば、固体電解質層13を負極層12上に加圧によって転写することで負極側積層体40が形成される。転写する際の加圧の方法には、上記の正極層11の形成における加圧と同様の方法を用いることができる。この加圧における加圧条件により、固体電解質層13の空隙率を調整することができる。例えば、加圧力を大きくする、加圧温度を高くする、加圧時間を長くする、等によって空隙率は小さくなる。なお、塗布における条件を変更することでも固体電解質層13の空隙率は調整され得る。また、固体電解質層13の転写前に、固体電解質層13を加圧することによって空隙率を調整してもよい。このように、電池10の製造方法では、固体電解質層13の空隙率を調整することによって、空隙率が7%以下である固体電解質層13を形成してもよい。
【0106】
なお、固体電解質層13は、負極層12上に直接形成されてもよい。この場合は、ステップS13とステップS14とが同時に行われることになる。例えば、負極層12上に固体電解質層13の構成材料を含むスラリー等の組成物を塗布して固体電解質層13を形成し、必要に応じて固体電解質層13を加圧して固体電解質層13の空隙率を調整する。このように、負極層12上に固体電解質層13を形成することでも、負極側積層体40を形成することが可能である。
【0107】
次に、正極側積層体30と負極側積層体40とを、正極層11と固体電解質層13とが対面するようにして積層する(ステップS15)。これにより、正極集電体層14と負極集電体層15とが正極層11、固体電解質層13および負極層12を挟んで対向すると共に、正極層11と固体電解質層13とが接触し、電池10が得られる。また、正極側積層体30と負極側積層体40との積層の際、必要に応じて加圧が行われてもよい。この加圧の方法には、上記の正極層11の形成における加圧と同様の方法を用いることができる。
【0108】
また、得られた電池10の正極集電体層14および負極集電体層15のそれぞれに対して端子が形成されてもよい。なお、端子は、電池10の製造途中の段階で形成されてもよい。
【0109】
また、必要に応じて、電池10に外装体が形成されてもよい。また、必要に応じて、電池10に対して拘束部材などで厚さ方向に拘束圧が付与されてもよい。図5は、外装体50および拘束部材60が付与された電池10の一例を示す概略断面図である。
【0110】
例えば、ステップS15で得られた電池10に外装体50を形成する(ステップS16)。例えば、外装体50として金属樹脂複合フィルムを準備し、得られた電池10を金属樹脂複合フィルムで真空封止する。これにより、外装体50によって、正極集電体層14、正極層11、固体電解質層13、負極層12および負極集電体層15が一括で覆われると共に、電池10に大気圧による加圧力が付与される。
【0111】
次に、電池10を拘束部材60により拘束することによって、電池10の厚さ方向に拘束圧を付与する(ステップS17)。また、この拘束部材60による拘束圧の付与を、上記の各層の加圧の代わりの工程としてもよい。例えば、拘束部材60として、SUS鋼板等の1対の金属板を準備し、この1対の金属板によって電池10を厚み方向に挟み込む。1対の金属板は、例えば、ネジ等(図5での図示は省略)によって互いに固定されると共に、固定の強度によって電池10への拘束圧が調整される。
【0112】
また、本実施の一形態に係る電池10の製造方法では、正極層11と固体電解質層13との間の剥離強度が1.8N/cm以下になるように調整する。上記の製造方法の場合、正極層11と固体電解質層13との間の剥離強度は、正極側積層体30と負極側積層体40との間の剥離強度であるとも言える。例えば、ステップS15において、正極側積層体30と負極側積層体40との積層の際に加圧をしない、または、正極側積層体30と負極側積層体40との積層の際の加圧における加圧条件を調整することで、正極層11と固体電解質層13との剥離強度を調整することができる。加圧条件の調整により剥離強度を調整する場合、例えば、上記の各ステップにおける加圧のうち、ステップS15における加圧を、最も剥離強度が低くなるような条件(例えば、最も加圧力が小さい条件)で行う。例えば、加圧力を小さくする、加圧温度を低くする、加圧時間を短くする、等によって剥離強度は低くなる。
【0113】
また、本実施の一形態に係る電池10の製造方法では、SOCが50%時の25℃での電池10の1Hzの交流抵抗が100Ω・cm以下となるように調整する。例えば、上記の各ステップにおける加圧の加圧条件を調整することで、上記交流抵抗を調整することができる。例えば、加圧力を大きくする、加圧温度を高くする、加圧時間を長くする、等によって上記交流抵抗は低くなる。また、例えば、ステップS17における拘束部材60による拘束圧を調整することで、上記交流抵抗を調整することができる。例えば、拘束圧を大きくする等によって上記交流抵抗は低くなる。また、上記交流抵抗を低くする他の方法としては、固体電解質層13の形成に用いる固体電解質のイオン伝導度を高くする、固体電解質層13の形成に用いる固体電解質を柔らかくする等が挙げられる。
【0114】
なお、図2で示した製造ステップの順序は一例であり、電池10を製造できれば、各ステップは入れ替えられてもよく、2以上のステップが並行して行われてもよい。例えば、ステップS11とステップS12からステップS14までとは、並行して行われてもよく、ステップS12からステップS14までの少なくとも一部がステップS11より先に行われてもよい。
【0115】
また、上記の製造方法は、塗布によって負極層12を負極集電体層15上に形成する工程を含んでいるが、電池10のうちの負極層12が形成されていない積層体を形成し、その後の充電により負極活物質としてのリチウム金属を負極集電体層15上に析出させて形成することで負極層12が形成されてもよい。また、負極層12は、リチウム金属の粉末を堆積もしくは成形してなる層、または、リチウム箔もしくはリチウム蒸着膜等のリチウム金属層であってもよい。
【0116】
また、形成した電池10を構成単位セルとしてさらに積層して、複数の構成単位セルを並列または直列に接続した積層電池を形成することもできる。本実施の形態に係る電池は、このような複数の構成単位セルが積層された積層電池であってもよい。積層電池の場合、外装体50および拘束部材60は、例えば、複数の構成単位セルを一括で封止および拘束してもよい。積層電池の場合でも、初期不良の電極層があった場合に電池全てを交換しなくとも、初期不良の電極層のみ電極交換できるため、生産時の歩留まりが向上する。また、正極側積層体30と負極側積層体40とを積み重ねていくことで、製造工程を単純化し、製造効率を上げることが可能となる。
【0117】
[4.電池の分離方法]
次に、上述した本実施の一形態に係る電池10の分離方法について説明する。
【0118】
図6は、電池10の分離方法を説明するための図である。図6に示すように、電池10を分離させる場合、正極層11と固体電解質層13との間で分離させる。その結果、電池10は、正極側積層体30と負極側積層体40とに分離する。これにより、初期不良の電極層があった場合の正負極の交換、および、使い終わった後のリサイクル時などに正負極を容易に分離できて、効率的な資源回収が可能となる。電池10を分離させる方法は特に限定されないが、正極側積層体30と負極側積層体40との両側から1.8N/cm以上の荷重を垂直方向または水平方向にかけて分離させる、最も弱い正極層11と固体電解質層13との界面に板状のくさびを差し入れて分離させる等の方法が挙げられる。このように、正極側積層体30と負極側積層体40との容易な分離が可能であるため、高電圧をかけること、焼成すること、熱溶融すること、および、液体に溶解することなどの環境高負荷な方法を採らずに分離することができる。
【0119】
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2について説明する。実施の形態1に係る電池10は、正極層11と負極層12との間に1層の固体電解質層13を備える構成であったが、実施の形態2では、正極層11と負極層12との間に2層の固体電解質層を備える構成について説明する。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0120】
[構成]
まず、本実施の一形態に係る電池の構成について説明する。図7は、本実施の一形態に係る電池の一例を示す概略断面図である。
【0121】
図7に示すように、本実施の一形態に係る電池20は、実施の形態1に係る電池10と比較して、固体電解質層16をさらに備える点、つまり、正極層11と負極層12との間に2層の固体電解質層13、16を備える点で相違する。
【0122】
電池20は、正極集電体層14と、正極層11と、2層の固体電解質層13、16と、負極層12と、負極集電体層15とがこの順で積層された構造を有する。電池20は、例えば、正極層11、負極層12および固体電解質層13、16の全てが固体からなる全固体電池である。
【0123】
2層の固体電解質層13、16のうち、固体電解質層13は負極層12に隣接する固体電解質層であり、固体電解質層16は正極層11に隣接する固体電解質層である。固体電解質層13は、固体電解質層16と負極層12との間に配置され、固体電解質層16と負極層12とのそれぞれと接している。固体電解質層16は、固体電解質層13と正極層11との間に配置され、固体電解質層13と正極層11とのそれぞれと接している。
【0124】
固体電解質層13、16は、主成分として固体電解質を含む。固体電解質としては、例えば、上記の[1-2.固体電解質層]で例示した固体電解質を用いることができる。例えば、2層の固体電解質層13、16のそれぞれは、固体電解質として、アルジロダイト型硫化物系固体電解質を含んでいてもよい。
【0125】
また、固体電解質層13、16は、構成材料として結着材を含んでいてもよい。結着材としては、例えば、上記の[1-2.固体電解質層]で例示した結着材を用いることができる。固体電解質層13、16のうちの少なくとも一方は、固体電解質および結着材以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0126】
固体電解質層13、16における各構成材料の含有量および種類は適宜設定され、限定されない。また、固体電解質層13と固体電解質層16とで、各構成材料の含有量および種類は、例えば、双方が同じであってもよく、各構成材料の含有量および種類の少なくとも一方が異なっていてもよく、各構成材料の含有量および種類の双方が異なっていてもよい。
【0127】
固体電解質層13、16の厚さは、適宜設定され、限定されない。固体電解質層13、16の厚さは、例えば、0.01μm以上1mm以下であり、0.1μm以上100μm以下であってもよく、1μm以上25μm以下であってもよい。固体電解質層13と固体電解質層16とで、厚さは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0128】
固体電解質層16の厚さに対する固体電解質層13の厚さの比率は、例えば、1/100以上100/1以下であり、1/50以上50/1以下であってもよく、1/30以上30/1以下であってもよく、1/10以上10/1以下であってもよい。
【0129】
実施の形態1で説明したように正極層11および固体電解質層13の空隙率を低くする場合であっても、このように固体電解質層16が固体電解質層13と正極層11との間に配置されることで、正極層11と固体電解質層16との界面抵抗を低減させることが可能になる。例えば、固体電解質層16の空隙率は、固体電解質層13の空隙率よりも高い場合、正極層11および固体電解質層13が低空隙率となっている状態でも、固体電解質層16と正極層11および固体電解質層13それぞれとを接触または接合させた場合、固体電解質層16の空隙率が高いため、固体電解質層16の表面が塑性変形して固体電解質層16と正極層11および固体電解質層13それぞれとの接触が良好となる。そのため、固体電解質層16と正極層11および固体電解質層13それぞれとの界面抵抗は低くなり、良好なリチウムイオン伝導パスが形成される結果、局所的な金属リチウムの析出および成長が抑制されるものと考えられる。
【0130】
また、さらに電池20の各層を接合させる際に、正極層11が高空隙率となっている状態で正極層11と固体電解質層16とを接触または接合させると、その後に正極層11を低空隙率とする加工の際に、相対的に硬い正極層11が固体電解質層16にクラックを生じさせる。特に、正極層11と固体電解質層13および負極層12との面積および形状が異なる場合は、面積の小さい層の端部を起点にクラックが拡大して、製造工程が煩雑になり、生産時の歩留まりが低くなる。このような課題に対しても、固体電解質層16の空隙率が高いことで、固体電解質層16が比較的柔らかく、クラックの発生が抑制されるため、生産時の歩留まり低下を抑制できる。
【0131】
固体電解質層16の空隙率は、例えば、16%以上40%以下である。固体電解質層16の空隙率が16%以上であることにより、固体電解質層16の表面が塑性変形しやすく、正極層11および固体電解質層13それぞれとの界面抵抗を低くすることができる。そのため、良好なリチウムイオン伝導パスが形成されて、局所的な金属リチウムの析出および成長を抑制できると考えられる。また、固体電解質層16の空隙率が40%以下であることにより、空隙が多すぎて固体電解質の脱落が起こる等、製造上の面での問題の発生を抑制できるとともに、固体電解質層16内部のイオン伝導性が高くなり、電池20の特性を向上できる。
【0132】
一方、上述のように、負極層12に隣接する固体電解質層13の空隙率を低くすることで、緻密な固体電解質層13によってデンドライトの成長を抑制できる。
【0133】
このように、電池20は、固体電解質層13と固体電解質層16とからなる役割の異なる2層の固体電解質層を備える。これにより、高空隙率の固体電解質層16と固体電解質層16に隣接する正極層11および固体電解質層13それぞれとの接触面積の増加によって反応ムラおよび界面抵抗が低減し、局所的な金属リチウムの析出および成長を抑制できる。また、緻密な固体電解質層13は、デンドライトの成長を抑制できる。よって、電池20における内部短絡の抑制および電池特性の向上が可能となる。
【0134】
なお、電池20は、固体電解質層13と固体電解質層16との2層の固体電解質層を備えたが、これに限らない。電池20は、正極層11と負極層12との間に、3層以上の固体電解質層を備えていてもよい。例えば、電池20は、固体電解質層13と固体電解質層16との間に別の固体電解質層を備えていてもよい。
【0135】
また、電池20は、電池10と同様に、端子、外装体および拘束部材等のその他の構成をさらに備えていてもよい。
【0136】
[電池の剥離強度および交流抵抗]
次に、本実施の一形態に係る電池20の剥離強度および交流抵抗について説明する。
【0137】
電池20において、互いに隣接する固体電解質層13と固体電解質層16との間の剥離強度、および、正極層11と固体電解質層16との間の剥離強度のうちの少なくとも一方は1.8N/cm以下である。また、例えば、電池20において、各層の間の剥離強度のうち互いに隣接する固体電解質層13と固体電解質層16との間の剥離強度、または、正極層11と固体電解質層16との間の剥離強度が最も低い。このような剥離強度であることにより、正極活物質を含む正極層11と負極活物質を含む負極層12とを容易に分離することが可能となり、正極活物質と負極活物質とが混ざらずに電池20を容易に分離することができる。また、電池20をさらに分離しやすくする観点から、互いに隣接する固体電解質層13と固体電解質層16との間の剥離強度、および、正極層11と固体電解質層16との間の剥離強度のうちの少なくとも一方は1.0N/cm以下であってもよく、0.5N/cm以下であってもよく、0.1N/cm以下であってもよい。
【0138】
また、SOCが50%時の25℃での電池20の1Hzの交流抵抗は100Ω・cm以下である。これにより、急速充電におけるクーロン効率等の電池特性が向上する。また、電池特性をさらに高める観点から、SOCが50%時の25℃での電池20の1Hzの交流抵抗は50Ω・cm以下であってもよい。
【0139】
このように、電池20が上記のような剥離強度および交流抵抗であることにより、正負極を容易に分離できると共に、電池特性を向上できる。
【0140】
[電池の製造方法]
続いて、上述した本実施の一形態に係る電池20の製造方法について説明する。
【0141】
図8は、本実施の一形態に係る電池20の製造方法の一例を示すフローチャートである。なお、以下で説明する製造方法は一例であり、本実施の一形態に係る電池20の製造方法は、以下の例に限らない。例えば、電池10の製造方法と同様に、図8で示した製造ステップの順序は一例であり、電池20を製造できれば、各ステップは入れ替えられてもよく、2以上のステップが並行して行われてもよい。
【0142】
電池20の製造方法では、図8に示すように、まず、正極層11を形成する(ステップS21)。ステップS21は、上述のステップS11と同様の方法で行われる。
【0143】
次に、負極層12を形成する(ステップS22)。ステップS22は、上述のステップS12と同様の方法で行われる。
【0144】
次に、2層の固体電解質層13、16を形成する(ステップS23)。例えば、ステップS13における固体電解質層13と同様の方法で、固体電解質層13と固体電解質層16とを別途形成する。
【0145】
次に、ステップS23で形成した固体電解質層16をステップS21で形成した正極層11上に積層することで正極側積層体を形成する(ステップS24)。図9は、本実施の形態に係る正極側積層体の一例を示す概略断面図である。図9に示すように、正極側積層体31は、正極集電体層14、正極層11および固体電解質層16がこの順で厚さ方向に沿って積層された構造を有する。例えば、固体電解質層16を正極層11上に加圧によって転写することで正極側積層体31が形成される。転写する際の加圧の方法には、上記の正極層11の形成における加圧と同様の方法を用いることができる。この加圧における加圧条件により、固体電解質層16の空隙率を調整することができる。例えば、加圧力を大きくする、加圧温度を高くする、加圧時間を長くする、等によって空隙率は小さくなる。なお、塗布における条件を変更することでも固体電解質層16の空隙率は調整され得る。また、固体電解質層16の転写前に、固体電解質層16を加圧することによって空隙率を調整してもよい。このように、電池20の製造方法では、固体電解質層16の空隙率を調整することによって、空隙率が16%以上40%以下である固体電解質層16を形成してもよい。
【0146】
なお、固体電解質層16は、正極層11上に直接形成されてもよい。この場合は、ステップS23の一部とステップS24とが同時に行われることになる。例えば、正極層11上に固体電解質層16の構成材料を含むスラリー等の組成物を塗布して固体電解質層16を形成し、必要に応じて固体電解質層16を加圧して固体電解質層16の空隙率を調整する。このように、正極層11上に直接固体電解質層16を形成することでも、正極側積層体31を形成することが可能である。
【0147】
次に、ステップS23で形成した固体電解質層13をステップS22で形成した負極層12上に積層することで負極側積層体40を形成する(ステップS25)。ステップS25は、上述のステップS14と同様の方法で行われる。これにより、図4で示した負極側積層体40が得られる。ステップS25において固体電解質層13を負極層12上に加圧によって転写する場合の加圧力は、例えば、ステップS24において固体電解質層16を正極層11上に加圧によって転写する場合の加圧力よりも大きい。
【0148】
次に、正極側積層体31と負極側積層体40とを、固体電解質層16と固体電解質層13とが対面するようにして積層する(ステップS26)。これにより、正極集電体層14と負極集電体層15とが正極層11、2層の固体電解質層13、16および負極層12を挟んで対向すると共に、固体電解質層16と固体電解質層13とが接触し、電池20が得られる。また、正極側積層体31と負極側積層体40との積層の際、必要に応じて加圧が行われてもよい。この加圧の方法には、上記の正極層11の形成における加圧と同様の方法を用いることができる。
【0149】
また、電池20の製造においても、電池10と同様に端子が形成されてもよい。
【0150】
また、電池20の製造においても、電池10と同様に外装体50の形成(ステップS27)および拘束部材60による拘束(ステップS28)が行われてもよい。
【0151】
また、電池20の製造においても、電池10と同様にリチウム金属を負極集電体層15上に析出させることによって負極層12が形成されてもよい。また、形成した電池20を構成単位セルとしてさらに積層して、複数の構成単位セルを並列または直列に接続した積層電池を形成することもできる。
【0152】
また、本実施の一形態に係る電池20の製造方法では、固体電解質層16と固体電解質層13との間の剥離強度、および、正極層11と固体電解質層16との間の剥離強度のうちの少なくとも一方が1.8N/cm以下になるように調整する。上記の製造方法の場合、固体電解質層16と固体電解質層13との間の剥離強度、および、正極層11と固体電解質層16との間の剥離強度のうちより低い方は、正極側積層体31と負極側積層体40との間の剥離強度であるとも言える。例えば、ステップS26において、正極側積層体31と負極側積層体40との積層の際に加圧をしない、または、正極側積層体31と負極側積層体40との積層の際の加圧における加圧条件を調整することで、固体電解質層16と固体電解質層13との剥離強度を調整することができる。加圧条件の調整により剥離強度を調整する場合、例えば、上記の各ステップにおける加圧のうち、ステップS26における加圧を、最も剥離強度が低くなるような条件で行う。
【0153】
また、本実施の一形態に係る電池20の製造方法では、SOCが50%時の25℃での電池20の1Hzの交流抵抗が100Ω・cm以下となるように調整する。上記交流抵抗の調整は、例えば、電池10における交流抵抗の調整と同じ方法で行うことができる。また、電池20においては、固体電解質層16の空隙率を調整することでも、上記交流抵抗を調整できる。例えば、固体電解質層16の空隙率を16%以上40%以下に調整することで、この範囲外の空隙率に調整する場合よりも上記交流抵抗を低くすることができる。
【0154】
なお、正極側積層体31および負極側積層体40における各層の積層構成は、上記の例に限らない。図10は、本実施の形態に係る負極側積層体の一例を示す概略断面図である。図10に示すように、負極側積層体41は、負極集電体層15、負極層12、固体電解質層13および固体電解質層16がこの順で厚さ方向に沿って積層された構造を有する。負極側積層体41は、ステップS25において、負極側積層体40を形成した後、負極側積層体40の固体電解質層13上に、さらに、ステップS23で形成した固体電解質層16を積層することで形成される。例えば、固体電解質層16を固体電解質層13上に加圧によって転写することで負極側積層体41が形成される。転写する際の加圧の方法には、上記の正極層11の形成における加圧と同様の方法を用いることができる。また、この加圧における加圧条件等により、固体電解質層16の空隙率を調整することができる点は、上記ステップS24と同様である。
【0155】
なお、2層の固体電解質層13、16は、負極層12上に直接、順次形成されてもよい。この場合は、ステップS23とステップS25とが同時に行われることになる。また、必要に応じて、2層の固体電解質層13、16の各層形成毎に固体電解質層を加圧してもよい。このように、負極層12上に直接2層の固体電解質層13、16を形成することでも、負極側積層体41を形成することが可能である。
【0156】
ステップS25において負極側積層体41が形成される場合、ステップS24は省略され、ステップS21で形成されることになる図3で示した正極側積層体30をステップS26で用いる。つまり、ステップS26では、正極側積層体30と負極側積層体41とを、正極層11と固体電解質層16とが対面するようにして積層する。これにより、正極集電体層14と負極集電体層15とが正極層11、2層の固体電解質層13、16および負極層12を挟んで対向すると共に、正極層11と固体電解質層16とが接触し、電池20が得られる。また、正極側積層体30と負極側積層体41との積層後、必要に応じて加圧が行われてもよい。
【0157】
正極側積層体30と負極側積層体41とが積層されて電池20が形成される場合、固体電解質層16と固体電解質層13との間の剥離強度、および、正極層11と固体電解質層16との間の剥離強度のうちの少なくとも一方が1.8N/cm以下になるように調整する。この場合の固体電解質層16と固体電解質層13との間の剥離強度、および、正極層11と固体電解質層16との間の剥離強度のうちより低い方は、正極側積層体30と負極側積層体41との剥離強度であるとも言える。剥離強度の調整方法は、正極側積層体31と負極側積層体40とを積層する場合と同じである。
【0158】
[電池の分離方法]
次に、上述した本実施の一形態に係る電池20の分離方法について説明する。図11は、電池20の分離方法を説明するための図である。図12は、電池20の分離方法を説明するための別の図である。
【0159】
例えば、図11に示すように、電池20を分離させる場合、互いに隣接する固体電解質層13と固体電解質層16との間で分離させる。その結果、電池20は、正極側積層体31と負極側積層体40とに分離する。この場合、例えば、上記のステップS26において、正極側積層体31と負極側積層体40とを積層することで製造された電池20を用いる。
【0160】
また、例えば、図12に示すように、電池20を分離させる場合、正極層11と固体電解質層13との間で分離させる。その結果、電池20は、正極側積層体30と負極側積層体41とに分離する。この場合、例えば、上記のステップS26において、正極側積層体30と負極側積層体41とを積層することで製造された電池20を用いる。
【0161】
このように電池20を分離させることで、初期不良の電極層があった場合の正負極の交換、および、使い終わった後のリサイクル時などに正負極を容易に分離できて、効率的な資源回収が可能となる。電池20を分離させる方法は特に限定されないが、上記電池10を分離させる場合と同様の方法を用いることができる。
【0162】
(実施例)
次に、実施例にて本開示に係る電池を評価した結果について説明する。本開示は実施例に限定されるものではない。具体的には、実施例および比較例における電池を作製し、作製した電池を評価した。
【0163】
[評価方法]
まず、各実施例および比較例における電池の評価方法について説明する。電池の評価としては、電池の特性評価、空隙率評価および剥離試験を行った。
【0164】
<電池の特性評価>
電池の特性評価として、電池の交流抵抗、6C充電容量および6Cクーロン効率を評価した。
【0165】
まず、各実施例および比較例における電池について、電池の両面を拘束部材で挟んで加圧した状態で、25℃、3.00Vから4.35Vの電圧範囲で、0.1Cの電流でCCCV充放電を行った。
【0166】
その後、0.1Cの電流でCCCV充電を行い、SOCが50%になるように調整し、上記した方法で25℃での電池の1Hzの交流抵抗を測定した。
【0167】
最後に、60℃、3.00Vから4.35Vの電圧範囲で、6Cの電流でCC充電を行い、0.1Cの電流でCCCV放電して充放電容量を測定し、この充電時の充電容量を6C充電容量とし、放電容量/6C充電容量×100(%)を6Cの電流で充電したときのクーロン効率(6Cクーロン効率)とした。6Cの電流での充電は、10分で電池の全容量を充電できる急速充電である。この6Cクーロン効率が99%以上の場合は、内部短絡の兆候が見られず、かつ、急速充電が可能であるとして「〇」と評価し、6Cクーロン効率が99%未満の場合は、内部短絡の兆候が見られているとして「×」と評価した。
【0168】
<空隙率評価>
電池の各層の空隙率評価としては、まず、上記の特性評価後の各実施例および比較例における電池について、断面SEM(Scanning Electron Microscope)画像を取得し、取得した断面SEMから各層の厚さを測定した。そして、測定した層の厚さ、層の面積、使用した層の構成材料の真密度、使用した層の構成材料の質量および使用した層の構成材料の含有量から、上記した方法で空隙率を計算した。
【0169】
<剥離試験>
電池の剥離試験では、まず、上記の特性評価後の各実施例および比較例における電池から拘束部材および外装体を取り除いて試験用のサンプルとして、上記した方法で180°剥離試験を行った。この際の剥離荷重を剥離面幅で除して剥離強度を算出するとともに、いずれの層の間の剥離強度であるかを決定した。また、正負極の分離可否の評価として、剥離試験において正極層と負極層とが分離した場合を「可」と評価し、正極層と負極層とが分離しなかった場合を「不可」と評価した。
【0170】
なお、剥離荷重がフォースゲージの検出下限荷重以下で剥離したサンプルの剥離強度は0N/cmとした。
【0171】
[電池の作製]
以下の方法で実施例および比較例における電池を作製した。
【0172】
<実施例1>
まず、正極集電体層としてアルミニウム箔、正極活物質としてLiNbOによりコートしたNi、Co、Mnの3元系リチウム金属複合酸化物(真密度:4.75g/cm)、固体電解質としてアルジロダイト型硫化物系固体電解質(真密度:1.89g/cm3)、導電材としてカーボンナノファイバー(真密度:2.1g/cm)および結着材として有機系バインダ(真密度:0.93g/cm)を準備した。次に、準備した正極活物質、固体電解質、導電材および結着材を混合した正極活物質スラリーを正極集電体層上に塗工して、正極層を形成し、正極層の空隙率が9%となるように調整した加圧条件で正極層を加圧した。これにより、正極層と正極集電体層とで構成される正極側積層体を形成した。
【0173】
次に、負極集電体層としてステンレス箔、負極活物質として黒鉛(真密度:2.3g/cm)、固体電解質として上記と同じアルジロダイト型硫化物系固体電解質および結着材として上記と同じ有機系バインダを準備した。次に、準備した負極活物質、固体電解質および結着材を混合した負極活物質スラリーを負極集電体層上に塗工して、負極層を形成した。
【0174】
次に、固体電解質として上記と同じアルジロダイト型硫化物系固体電解質および結着材として上記と同じ有機系バインダを混合した固体電解質スラリーをステンレス箔上に塗工して、固体電解質層を形成した。
【0175】
次に、形成した負極層上に、固体電解質層の空隙率が4%となるように調整した加圧条件で固体電解質層を加圧して転写し、負極層に固体電解質層を積層した。これにより、負極側積層体が形成された。固体電解質層の塗工に用いたステンレス箔は、転写時に剥離して除去した。
【0176】
次に、端子を正極集電体層および負極集電体層に接続した。さらに、正極側積層体と負極側積層体とを、正極層と固体電解質層とが対面するように積層し、外装体として金属樹脂複合フィルムを用いて真空封止した。なお、正極側積層体と負極側積層体との積層の際に加圧を行わなかった。最後に、外装体で封止後の電池をSUS鋼板製の拘束部材を用いて両面から挟むことにより拘束し、実施例1における電池を得た。拘束部材による拘束圧は、事前に拘束圧を変えて交流抵抗を測定することで拘束圧と交流抵抗との関係を確認した結果から、交流抵抗が38Ω・cmとなるように調整した。正極側積層体と負極側積層体との積層、真空封止および拘束部材による拘束では、各層の空隙率は変化しないように実施した。なお、電池の特性評価後においても各層の空隙率は変化しなかった。
【0177】
<実施例2>
拘束部材を用いた拘束の際に、交流抵抗が26Ω・cmとなるように拘束部材による拘束圧を調整したこと以外は実施例1と同様の方法で、実施例2における電池を作製した。なお、正極側積層体と負極側積層体との積層後、真空封止後、拘束後および電池の特性評価後の各層の空隙率は変化しなかった。
【0178】
<実施例3>
(i)正極層の形成において、空隙率が12%となるように調整した加圧条件で正極層を加圧したこと、(ii)負極層上への固体電解質層の積層において、固体電解質層の空隙率が7%となるように調整した加圧条件で固体電解質層を加圧して転写したこと、(iii)正極側積層体と負極側積層体との積層の際に加圧したこと、および、(iv)拘束部材を用いた拘束の際に、交流抵抗が20Ω・cmとなるように拘束部材による拘束圧を調整したこと以外は実施例1と同様の方法で、実施例3における電池を作製した。なお、正極側積層体と負極側積層体との積層後、真空封止後、拘束後および電池の特性評価後の各層の空隙率は変化しなかった。
【0179】
<実施例4>
(i)前述の固体電解質層と同様の方法で別の固体電解質層を形成し、正極層上に、この別の固体電解質層の空隙率が18%となるように調整した加圧条件でこの別の固体電解質層を加圧して転写することで形成された正極側積層体を用いたこと、および、(ii)拘束部材を用いた拘束の際に、交流抵抗が34Ω・cmとなるように拘束部材による拘束圧を調整したこと以外は実施例1の方法で、実施例4における電池を作製した。なお、正極側積層体と負極側積層体との積層後、真空封止後、拘束後および電池の特性評価後の各層の空隙率は変化しなかった。
【0180】
<実施例5>
拘束部材を用いた拘束の際に、交流抵抗が28Ω・cmとなるように拘束部材による拘束圧を調整したこと以外は実施例4と同様の方法で、実施例5における電池を作製した。なお、正極側積層体と負極側積層体との積層後、真空封止後、拘束後および電池の特性評価後の各層の空隙率は変化しなかった。
【0181】
<実施例6>
(i)前述の固体電解質層と同様の方法で別の固体電解質層を形成し、正極層上に、この別の固体電解質層の空隙率が18%となるように調整した加圧条件でこの別の固体電解質層を加圧して転写することで形成された正極側積層体を用いたこと、(ii)実施例3よりも低い加圧力で正極側積層体と負極側積層体との積層の際に加圧したこと、および、(iii)拘束部材を用いた拘束の際に、交流抵抗が27Ω・cmとなるように拘束部材による拘束圧を調整したこと以外は実施例3と同様にして、実施例6における電池を作製した。なお、正極側積層体と負極側積層体との積層後、真空封止後、拘束後および電池の特性評価後の各層の空隙率は変化しなかった。
【0182】
<比較例1>
拘束部材を用いた拘束の際に、拘束圧が付与されないように調整したこと以外は実施例1と同様の方法で、比較例1における電池を作製した。交流抵抗は3720Ω・cmとなった。なお、正極側積層体と負極側積層体との積層後、真空封止後、拘束後および電池の特性評価後の各層の空隙率は変化しなかった。
【0183】
<比較例2>
(i)実施例3よりも大きい加圧力で正極側積層体と負極側積層体との積層の際に加圧したこと、および、(ii)拘束部材を用いた拘束の際に、交流抵抗が23Ω・cmとなるように拘束部材による拘束圧を調整したこと以外は実施例3と同様の方法で、比較例2における電池を作製した。なお、正極側積層体と負極側積層体との積層後、真空封止後、拘束後および電池の特性評価後の各層の空隙率は変化しなかった。
【0184】
<比較例3>
拘束部材を用いた拘束の際に、拘束圧が付与されないように調整したこと以外は実施例4と同様の方法で、比較例3における電池を作製した。交流抵抗は、392Ω・cmとなった。なお、正極側積層体と負極側積層体との積層後、真空封止後、拘束後および電池の特性評価後の各層の空隙率は変化しなかった。
【0185】
<比較例4>
(i)実施例6よりも大きい加圧力で正極側積層体と負極側積層体との積層の際に加圧したこと、および、(ii)拘束部材を用いた拘束の際に、交流抵抗が20Ω・cmとなるように拘束部材による拘束圧を調整したこと以外は実施例6と同様にして、比較例4における電池を作製した。なお、正極側積層体と負極側積層体との積層後、真空封止後、拘束後および電池の特性評価後の各層の空隙率は変化しなかった。
【0186】
<比較例5>
(i)正極層の形成において、空隙率が18%となるように調整した加圧条件で正極層を加圧したこと、(ii)負極層上への固体電解質層の積層において、固体電解質層の空隙率が20%となるように調整した加圧条件で固体電解質層を加圧して転写したこと、および、(iii)拘束部材を用いた拘束の際に、交流抵抗が120Ω・cmとなるように拘束部材による拘束圧を調整したこと以外は実施例1と同様の方法で、比較例5における電池を作製した。なお、正極側積層体と負極側積層体との積層後、真空封止後、拘束後および電池の特性評価後の各層の空隙率は変化しなかった。
【0187】
[電池の評価結果]
実施例1から6および比較例1から5における電池の評価結果を表1に示す。なお、表1において、固体電解質層を「SE層」と表記している。また、表1で示される「6C充電容量」は、上記方法において測定された6C充電容量を電池に含まれる正極活物質の質量で除した単位質量当たりの充電容量である。また、表1の6C充電容量の評価における「-」は、6Cクーロン効率評価において内部短絡の兆候が見られたため評価の対象としなかったことを示している。
【0188】
【表1】
【0189】
表1に示す通り、実施例1から6および比較例1、3、5における電池では、剥離試験において、正極側積層体と負極側積層体との間で剥離しており、正負極の分離が可能であった。また、実施例1から6および比較例2、4における電池では、6Cの電流での充電のような急速充電が可能で内部短絡の兆候が見られなかった。そのため、実施例1から6における電池のように、固体電解質層が1層であっても、2層であっても、正極側積層体と負極側積層体との間の剥離強度を1.8N/cm以下とし、かつ交流抵抗を100Ω・cm以下とすることで、電池特性の高い電池が実現できるとともに、正極活物質と負極活物質が混合せず、また、正極集電体層と負極集電体層も混合せず、正負極を容易に分離可能となった。
【0190】
例えば、実施例1と比較例1と、および、実施例4と比較例3とをそれぞれ比べると、負極層に隣接する固体電解質層の空隙率および正極層の空隙率が同一で、剥離試験において正極側積層体と負極側積層体との間で剥離している点も同じであるが、交流抵抗を低減するように電池を作製することで、6Cの電流での充電のような急速充電が可能な電池特性の高い電池を実現できている。
【0191】
また、例えば、実施例3と比較例2と、および、実施例6と比較例4とをそれぞれ比べると、負極層に隣接する固体電解質層の空隙率および正極層の空隙率が同一で、交流抵抗を100Ω・cm以下としている点も同じであるが、正極側積層体と負極側積層体との間の剥離強度を1.8N/cm以下とするように電池を作製することで、正負極を容易に分離可能となる電池を実現できている。
【0192】
また、例えば、実施例1と実施例2と、および、実施例4と実施例5とをそれぞれ比べると、交流抵抗が電池特性に影響を及ぼし、交流抵抗は低い方が、6C充電容量が大きい。また、例えば、実施例1と実施例3と、および、実施例4と実施例6とをそれぞれ比べると、正極層の空隙率が電池特性に影響を及ぼし、正極層の空隙率が低い方が、6C充電容量が大きい。
【0193】
また、例えば、実施例3と比較例5とを比べると、比較例5における電池は、交流抵抗が高いとともに、正極層の空隙率が12%を超えているため、特性が低下している。
【0194】
このように、正極層と固体電解質層と負極層とが積層された電池において、固体電解質層が1層であっても、2層であっても、正極側積層体と負極側積層体との間の剥離強度を1.8N/cm以下とし、かつ、SOCが50%時の25℃での電池の1Hzの交流抵抗が100Ω・cm以下であることで、電池特性が高く、正負極を容易に分離可能な電池を実現できる。
【0195】
なお、本実施例では、最終的な電池の交流抵抗を拘束圧で調整しているが、上記の各実施の形態でも述べているように、加圧条件等のその他の方法でも電池の交流抵抗を調整可能である。つまり、本開示に係る電池において拘束部材による拘束圧の付与は必須ではない。
【0196】
(その他の実施の形態)
以上、本開示に係る電池について、実施の形態および実施例に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態および実施例に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態または実施例に施したもの、ならびに、実施の形態および実施例における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本開示の範囲に含まれる。
【0197】
例えば、上記実施の形態では、電池10、20において伝導するイオンがリチウムイオンである例を説明したが、これに限らない。電池10、20において伝導するイオンは、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンまたは銅イオンなどのリチウムイオン以外のイオンであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0198】
本開示に係る電池は、電子機器、電気器具装置および電気車両などの様々な用途の電池として、利用されうる。
【符号の説明】
【0199】
10、20 電池
11 正極層
12 負極層
13、16 固体電解質層
14 正極集電体層
15 負極集電体層
30、31 正極側積層体
40、41 負極側積層体
50 外装体
60 拘束部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12