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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134908
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】洗濯乾燥機
(51)【国際特許分類】
   D06F 39/08 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
D06F39/08 311D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045350
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河原 晃一
(72)【発明者】
【氏名】小沼 智史
(72)【発明者】
【氏名】浅野 謙進
(72)【発明者】
【氏名】曽我 丈
【テーマコード(参考)】
3B166
【Fターム(参考)】
3B166AA02
3B166AA04
3B166AB23
3B166AB32
3B166AE01
3B166AE02
3B166AE07
3B166BA25
3B166BA34
3B166CA01
3B166CA11
3B166CB01
3B166CB11
3B166DB03
3B166DB18
3B166DE04
3B166DF01
3B166EA03
3B166EA14
3B166EA18
3B166EB01
(57)【要約】
【課題】
溢水口本来の機能に加え、乾燥時には溢水経路からの温風漏れを防止してトラップ部内の異臭発生リスクを低減し、且つ、溢流排水機能及び溢水流路内が良好な状態を維持すること。
【解決手段】
本発明の洗濯乾燥機は、上記課題を解決するために、筐体と、前記筐体内に支持された水を溜める外槽と、洗濯物を収容する回転自在な内槽と、前記外槽内の水を前記筐体外へ排出する排水経路と、前記外槽に設けられ水位が所定以上となったとき溢流排水可能とする溢水口と、前記溢水口と前記排水経路を接続する溢水経路と、前記溢水経路中に通水及び貯水可能で、且つ、貯水により空気の流れを阻止可能としたトラップ部と、を備えた洗濯乾燥機であって、前記溢水口及び前記トラップ部は、前記内槽の回転方向に沿った位置に配置されていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に支持された水を溜める外槽と、
洗濯物を収容する回転自在な内槽と、
前記外槽内の水を前記筐体外へ排出する排水経路と、
前記外槽に設けられ水位が所定以上となったとき溢流排水可能とする溢水口と、
前記溢水口と前記排水経路を接続する溢水経路と、
前記溢水経路中に通水及び貯水可能で、且つ、貯水により空気の流れを阻止可能としたトラップ部と、を備えた洗濯乾燥機であって、
前記溢水口及び前記トラップ部は、前記内槽の回転方向に沿った位置に配置されていることを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯乾燥機であって、
前記内槽の回転方向に沿った位置は、前記内槽の周方向の円周上であることを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の洗濯乾燥機であって、
前記溢水口及び前記トラップ部は、前記内槽の側方に配置されていることを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項4】
請求項3に記載の洗濯乾燥機であって、
前記溢水口及び前記トラップ部は、前記内槽の上下方向中心よりも下側に配置されていることを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項5】
請求項4に記載の洗濯乾燥機であって、
前記溢水口と前記トラップ部の間の溢水入口流路には、前記外槽の振動を吸収するための弾性部材が設けられていることを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項6】
請求項5に記載の洗濯乾燥機であって、
前記溢水口を先端に有する前記溢水経路と前記トラップ部とは、前記弾性部材と第1の溢水ホース固定部品、第2の溢水ホース固定部品とホースを継ぎ手にして接続されていることを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項7】
請求項6に記載の洗濯乾燥機であって、
前記トラップ部は、前記筐体に固定されていることを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項8】
請求項7に記載の洗濯乾燥機であって、
前記トラップ部の前記筐体への固定は、ベースに固定されたステー部品と第3の溢水ホース固定部品をねじ固定すること、及び第4の溢水ホース固定部品とベースが篏合し拘束することで行なわれていることを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項9】
請求項8に記載の洗濯乾燥機であって、
前記トラップ部は略U字状であり、前記トラップ部の流路の中心軸を基準とした曲げ半径は、前記トラップ部の流路の内径と同等以上であることを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項10】
請求項9に記載の洗濯乾燥機であって、
前記トラップ部は、槽回転動作により前記溢水口より給水されて封水の置換及びその周囲の洗浄を行うことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項11】
請求項10に記載の洗濯乾燥機であって、
前記洗濯乾燥機は、洗濯物を乾燥するヒートポンプ装置又はヒーターを備えていることを特徴とする洗濯乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の洗濯乾燥機として、横軸周りに回転する内槽を備えたもの、或は縦軸周りに回転する内槽を備えたものがあり、いずれの洗濯乾燥機も周壁に多数の小孔を有する所謂内槽を備え、同様の洗濯及び乾燥機能を有する。
【0003】
例えば、乾燥行程においては、上記内槽を低速回転させながら乾燥用の温風を循環供給して、内部に収容した洗濯物を乾燥するようにしている。その一方、貯水した状態で洗濯行程を実行するため、上記内槽の外周には貯水可能な外槽(外槽単体、或いは外槽と槽カバーを組み合わせた外槽を含む)を設けている。
【0004】
例えば、特許文献1の請求項1には「洗濯物を収容し周壁に小孔を有する内槽と、この内槽の外周に設けられ貯水可能とする外槽と、この外槽の内外と連通して循環する循環風路と、この循環風路中の空気を温風化する温風発生ユニットと、前記外槽に設けられ該外槽内水位が所定以上となったとき溢流排水可能とする溢水口とを備え、前記溢水口と連通接続された機外への排水経路中に、通水可能で且つ空気の流れを阻止可能とした空気止め手段を設けたことを特徴とする洗濯乾燥機。」が記載されている。
【0005】
また、特許文献1では、前記空気止め手段の具体例として、前記溢水管路中にU字状のトラップ部を設けることにより、通水及び貯水可能で、且つ、貯水により空気の流れを阻止可能とした溢水経路を構成している。
【0006】
このように、特許文献1に記載の洗濯乾燥機では、溢水口に連なる排水経路中に通水可能で空気の流れを阻止する空気止め手段を設けることにより、給水により外槽内の水位が所定以上に達したとき、溢水口から速やかに排水して本来の機能たる異常溢水の状態を回避し、また、乾燥時には、通気性が断たれ温風等が溢水口から機外に漏出することを阻止でき、効率の良い乾燥作用が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4880982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されている洗濯乾燥機の構成では、溢水口やトラップ部が外槽の背面に設けられており、乾燥時などの槽内高圧状況時における内槽の回転振動によって封水抜けが懸念される。
【0009】
また、筐体の背面から見て、他部品との干渉回避等により外槽の輪郭内にトラップ部を収容する場合、トラップ部の高さを十分に確保すると、トラップ部の溢水流入部が高くなる可能性がある。その場合、外槽内のドアの開口部以上まで水位が上昇しないと溢流排水されず、ドアに過剰な水圧が加わり、ドアの下部からの水漏れ及びドア開きによる本体前方及び下方への水漏れが懸念される。
【0010】
また、外槽の背面には、内槽を回転させるためのモータや乾燥時に風を循環させる風路などを配置する場合があり、空間的制約上トラップ部及び溢水流路を外槽の背面に設けられないことがある。また、溢水流路が蛇行しており、且つ、槽内側の圧力によって封水が破封しない高さを確保する必要があることから、洗濯及び乾燥運転中に前記トラップ部内に洗濯水やリント等の異物が流入した場合に排出が困難であるという問題があり、この状態が進行すると異臭や管路詰まりの原因となる恐れがある。
【0011】
なお、前記トラップ部の高さを大きく確保するに従い、異物が前記トラップ部内に蓄積されやすく排出されづらくなる。
【0012】
更に、前記トラップ部内に異物が蓄積した状態で前記外槽内の水位が異常上昇した場合、溢水経路から十分に排水されず、機外への水漏れリスクに繋がる恐れがある。
【0013】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、溢水口本来の機能に加え、乾燥時には溢水経路からの温風漏れを防止して乾燥性能の低下を防止し、トラップ部内の異臭発生リスクを低減し、且つ、溢流排水機能及び溢水流路内が良好な状態を維持することが可能な洗濯乾燥機の提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の洗濯乾燥機は、上記目的を達成するために、筐体と、前記筐体内に支持された水を溜める外槽と、洗濯物を収容する回転自在な内槽と、前記外槽内の水を前記筐体外へ排出する排水経路と、前記外槽に設けられ水位が所定以上となったとき溢流排水可能とする溢水口と、前記溢水口と前記排水経路を接続する溢水経路と、前記溢水経路中に通水及び貯水可能で、且つ、貯水により空気の流れを阻止可能としたトラップ部と、を備えた洗濯乾燥機であって、前記溢水口及び前記トラップ部は、前記内槽の回転方向に沿った位置に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、溢水口本来の機能に加え、乾燥時には溢水経路からの温風漏れを防止してトラップ部内の異臭発生リスクを低減し、且つ、溢流排水機能及び溢水流路内が良好な状態を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の洗濯乾燥機の実施例1を示し、洗濯乾燥機を側方から見た断面図である。
図2(a)】本発明の洗濯乾燥機の実施例1に採用されるトラップ部近傍の詳細を示し、図1の洗濯乾燥機の構成を省略した洗濯乾燥機の正面図である。
図2(b)】図2(a)におけるトラップ部の装着状態を示す図である。
図3(a)】図1に示す実施例1の洗濯乾燥機における排水部及びトラップ部付近の詳細を示す部分斜視図である。
図3(b)】図3(a)の側面図である。
図3(c)】図3(a)のA部拡大図である。
図3(d)】図3(a)のB部拡大図である。
図3(e)】図3(a)のC部拡大図である。
図4】本発明の洗濯乾燥機の実施例2を示し、洗濯乾燥機を側方から見た断面図である。
図5】本発明の洗濯乾燥機の実施例2に採用されるヒートポンプ装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の洗濯乾燥機を説明する。なお、以下の実施例では、洗濯乾燥機の具体的構成として、内槽の回転軸が略水平のドラム式洗濯乾燥機を例示するが、内槽の回転軸が略垂直の縦型洗濯乾燥機に本発明を適用しても同様の効果を得ることができる。また、各図において、同一構成部品には同符号を使用する。
【実施例0018】
図1に、本発明の洗濯乾燥機の実施例1を示し、洗濯乾燥機を側方から見た断面図を示す。
【0019】
図1に示すように本実施例の洗濯乾燥機1Aは、筐体2によって外郭が形成されており、この洗濯乾燥機1Aの筐体2の前面開口には、洗濯物の出し入れに際して開閉される開閉自在なドア2aが取り付けられている。
【0020】
また、洗濯乾燥機1Aは、筐体2の内部に外槽3、外槽3の内側に内槽4、洗濯乾燥機1Aの上方に設置されている送風装置5、外槽3の後方側に配置されている第1の風路フィルタ6a、第1の風路フィルタ6aからの風が送風装置5へ送風される手前に配置されている第2の風路フィルタ6b、外槽3に溜まる水を排水するための経路である排水路7、外槽3に溜まった水が所定の水位を超過した場合に溢流排水するための経路である溢水経路100を備えている。
【0021】
外槽3は、内部に水を貯める貯水槽であり、内槽4は、回転軸4aを中心に回転自在に外槽3の内部に配置されている。内槽4は、略有底円筒形状を有しており、周壁に小孔が多数設けられ、衣類等の洗濯物を入れた状態で、洗い、すすぎ、脱水、乾燥の各工程時に、回転軸4aを中心に低速或いは高速で回転する。
【0022】
図1に示す排水路7は、外槽3に溜まる水を排水するための経路であり、内部排水路7a、水路フィルタ7b、排水弁7c及び排水ホース7dから構成されている。そして、内部排水路7aは、外槽3の底面開口3aに連通しており、水路フィルタ7bは、内部排水路7aを流れる排水中のリント(糸くず)を捕集する。水路フィルタ7bで捕集されたリントは、使用者によって適宜清掃される。
【0023】
また、図1に示す溢水経路100は、外槽3に溜まった水が所定の水位を超過した場合に溢流排水するための経路である。
【0024】
この溢水経路100は、溢水経路100中に通水及び貯水可能で、且つ、貯水により空気の流れを阻止可能とし、しかも、槽回転動作により、後述する溢水口100aより給水されて封水の置換及びその周囲の洗浄を行うトラップ部101を備えている。
【0025】
上記したトラップ部101は、外槽3に設けられ水位が所定以上となったとき溢流排水可能とする溢水経路100の先端に形成されている溢水口100aに連通し、また、トラップ部101は、排水弁7cの下流に連通している。
【0026】
そして、本実施例の洗濯乾燥機1Aは、図1及び図2(a)に示すように、溢水が弁に堰き止められることがないように、溢水口100a及びトラップ101部が、内槽4の回転方向に沿った位置(内槽の周方向の円周上)に配置されている。しかも、溢水口100a及びトラップ101部は内槽4の側方に配置され、更に、内槽4の上下方向中心よりも下側に配置されている。
【0027】
このように、溢水口100aやトラップ部101を、内槽4の回転方向に沿った位置(内槽の周方向の円周上)で、しかも、内槽4の側方及び内槽4の上下方向中心よりも下側に配置、つまり、内槽4の回転方向に沿った位置に溢水口100aやトラップ部101を配置することで、洗濯工程時の水流や槽内をきれいな水で洗浄する槽洗浄工程時の水流が溢水口100a及びトラップ部101に入り込みやすくなり、トラップ部101に堆積した異物を除去しやすくなる。
【0028】
また、溢水口100aとトラップ部101の両方を内槽4の側方に配置することで、トラップ部101の異物を掻き出す水流がより入りやすくなる。
【0029】
また、溢水口100a及びトラップ部101を内槽4の上下方向中心軸よりも下側に配置することで、さらに水流が入り込みやすくなり、水流でトラップ部101に堆積した異物をさらに除去しやすくなる。
【0030】
なお、溢水口100aとトラップ部101は、内槽4の同一側方に配置することが望ましいが、互いに異なる内槽4の側方位置に配置しても良い。
【0031】
また、先端に溢水口100aを備えている溢水経路100は、図2(a)に示すように、溢水入口流路21aとトラップ部101から構成され、排水弁7cの下流に連通し、排水ホース7dに接続されている。
【0032】
また、図2(b)に示すように、ベース5b及びその周囲部品にトラップ部101を装着することにより、形状構築及び保持に加え筐体2との固定を行う。乾燥時等の槽内高圧状況において、トラップ部101を筐体2に固定することで、外槽3の固定と比較して封水が振動により抜けにくくなることが期待される。
【0033】
また、図2(a)に示すように、溢水口100aとトラップ部101の間の溢水入口流路21aには、外槽3の振動を吸収するための弾性部材、例えばジャバラホース102が設けられている。
【0034】
また、溢水経路100はジャバラホース102と溢水ホース103で構成されており、溢水ホース103は溢水ホース固定部品21bに組み込むことで、溢水流路の形成及び形状保持、固定する。
【0035】
また、トラップ部101は、ジャバラホース102を除き溢水ホース固定部品21bと溢水ホース103で構成される。
【0036】
次に、上述した本実施例におけるトラップ部101と筐体2の固定、ジャバラホース102部分の詳細について、図3(a)、図3(b)、図3(c)、図3(d)及び図3(e)を用いて説明する。
【0037】
図3(a)は図1に示す洗濯乾燥機1Aにおける排水部及びトラップ部101付近の詳細を示す部分斜視図、図3(b)は図3(a)の側面図、図3(c)は図3(a)のA部拡大図、図3(d)は図3(a)のB部拡大図、図3(e)は図3(a)のC部拡大図である。
【0038】
図3(a)、図3(b)及び図3(c)に示すように、溢水口100aとトラップ部101の間の溢水入口流路21aには、外槽3の振動を吸収するためのジャバラホース102が設けられているが、溢水口100aとトラップ部101とは、ジャバラホース102と第1の溢水ホース固定部品(接手部、ジャバラホース側)21b1、第2の溢水ホース固定部品(接手部、溢水ホース側)21b2と溢水ホース7eを継ぎ手にして接続されている。なお、図3(a)に示す破線矢印Rは、オーバーフロー排水流路を示す。
【0039】
また、トラップ部101と筐体2の固定は、図3(d)に示すように、ベース5bに固定されたステー部品32と第3の溢水ホース固定部品(ねじ固定部)21b3をねじ固定することで行なわれ、更に、図3(e)に示すように、第4の溢水ホース固定部品(勘合部)21b4とベース5b上に形成されたベース(勘合部)5b1が篏合し拘束することで行なわれている。
【0040】
このような本実施例によれば、溢水口100aに連なる溢水経路100中に通水及び貯水可能で、且つ、貯水により空気の流れを阻止するトラップ部101を設け、このトラップ部101に給水し貯水状態にすることにより、給水により外槽3内の水位が所定以上に達したとき、溢水口100aから速やかに排水して本来の機能たる異常溢水の状態を回避し、また、乾燥時には通気性が断たれ温風等が溢水口から機外に漏出することを阻止でき、効率の良い乾燥作用が期待できると共に、槽内洗浄運転によりトラップ部101内の水及び異物を筐体2外へ効果的に排出することにより、溢水機能及び溢水経路100内の環境が良好な状態を維持する洗濯乾燥機を提供できる。
【実施例0041】
図4に、本発明の洗濯乾燥機の実施例2を示し、洗濯乾燥機を側方から見た断面図を示す。
【0042】
図4に示す本実施例の洗濯乾燥機1Bは、実施例1の洗濯乾燥機1Aにおける送風装置5、第2の風路フィルタ6bを異なる構成としているが、実施例1の洗濯乾燥機1Aと大きく異なる点は、洗濯物を乾燥するヒートポンプ装置50を備えていることである。実施例2の洗濯乾燥機1Bのその他の構成は、実施例1と同様な構成であるので、同様な要素には同一の符号を付して示し、詳細な説明は省略する。
【0043】
図5に、本実施例の洗濯乾燥機1Bに採用されているヒートポンプ装置50の構成を示す。この図5を用いて、本実施例の洗濯乾燥機1Bに採用されているヒートポンプ装置50の構成と動作について説明する。
【0044】
図5に示すヒートポンプ装置50は、圧縮機12と、空気への放熱用熱交換器(凝縮器13)と、減圧装置14(膨張弁等)と、空気の除湿用熱交換器(蒸発器15)と、から概略構成されている。
【0045】
ヒートポンプ装置50は、上述の機器(圧縮機12、凝縮器13、減圧装置14と、蒸発器15)を冷媒配管16kにより順次接続して、樹脂製のケーシング18内に収納したものである。上述の機器(圧縮機12、凝縮器13、減圧装置14と、蒸発器15)を、冷媒配管16kにより順次接続したものは、冷媒回路16という。
【0046】
冷媒回路16内には冷媒が封入され、冷媒として例えば、HFC単一冷媒、HFC混合冷媒、HFO‐1234yf、HFO‐1234ze、自然冷媒(例えばCO2冷媒)等を用いられる。
【0047】
冷媒は図5の矢印α1で示す方向に、圧縮機12、凝縮器13、減圧装置14、蒸発器15の順に流れ、再度圧縮機12に戻る。
【0048】
ヒートポンプ装置50を構成する蒸発器15及び凝縮器13は、空気と熱交換を行うため、積層したアルミフィンに伝熱管を貫通するように取り付けたクロスフィンチューブ式の熱交換器が用いられることが多い。以降、凝縮器13と蒸発器15を合わせて熱交換器という。
【0049】
図4に示すヒートポンプ装置50のケーシング18は、下部ケーシング18aと上部ケーシング18bに分離可能である。熱交換器(蒸発器15と凝縮器13)は、側方に流れる空気を阻害するように、上部ケーシング18bと下部ケーシング18aの間に挟み込むように設置され、空気の循環風路を形成している。圧縮機12は防振ゴム等を介して、下部ケーシング18aに設置されている。なお、図4では、圧縮機12は図示していない。
【0050】
冷媒配管16kは、圧縮機12の回転振動の伝搬により破断することを防ぐため、蛇行した状態で放熱用の凝縮器13と除湿用の蒸発器15のそれぞれと接続されている。
【0051】
圧縮機12は、例えばピストン式、ロータリー式、スクロール式等を用いられ、圧縮機12は、インバータ制御により、低速から高速まで回転速度が可変である。
【0052】
また、冷媒が液相で圧縮機12に戻ると、圧縮機12の摺動面での潤滑不良により信頼性を低下させることがある。これを抑止するために、圧縮機12の冷媒の吸入側にアキュムレータ(図示せず)を設けるとよい。
【0053】
圧縮機12から吐出された高温高圧のガス冷媒は、凝縮器13へ流入し、循環空気に放熱することにより凝縮して液化し、低温高圧の冷媒となる。液化した冷媒は、所定の開度に調整された膨張弁(減圧装置14)により減圧され、低温低圧の気液二相状態となり、蒸発器15へ流入する。そして、循環空気から吸熱することにより蒸発して気化する。気化した冷媒は中温高圧の冷媒となり、圧縮機12に吸入される。中温低圧の冷媒は、圧縮機12により再び圧縮され高温高圧のガス冷媒となる。このようにしてヒートポンプ装置50が形成される。
【0054】
図4に示すように、ヒートポンプ装置50は、外槽3の下部で、かつ、筐体2の後方のベース5b上に設置されている。循環空気は、内槽4から第1の風路フィルタ6aを通って、吸気口22aを経て排出される。排出された空気は、外槽3の上部から下部に向かって吸込風路22を経由してヒートポンプ装置50に流入する。ヒートポンプ装置50おいて蒸発器15で除湿され、凝縮器13で加熱された循環空気は、送風装置23により吹出され、外槽3の下部から上部に向かう吐出風路24とダクト24aを通り、外槽3の前面上部に設けた吹出口5cにより内槽4内に吹き込まれる。
【0055】
ヒートポンプ装置50を構成する蒸発器15は、内槽4内の洗濯物から蒸発した水分を含んだ高湿の空気を除湿する。凝縮器13では、蒸発器15で吸熱した熱量と圧縮機12の熱量を循環空気に放熱する。
【0056】
洗濯物を乾燥させるための重要なポイントは、1)洗濯物に高速の空気を吹き付ける(送風装置23)・乾燥空気を洗濯物に吹き付けること(蒸発器15による除湿)、2)洗濯物に含まれる水の温度を上げること(凝縮器13と圧縮機12による加熱)、3)ヒートポンプ装置50の加熱源は空気なので、空気の加熱が重要になっていること、である。
【0057】
以上のことから、ヒートポンプ装置50を構成する冷凍サイクルの役割は、循環空気を除湿し、加熱することである。
【0058】
このような本実施例の洗濯乾燥機1Bも実施例1の洗濯乾燥機1Aと同様に、溢水が弁に堰き止められることがないように、溢水口100a及びトラップ101部が、内槽4の回転方向に沿った位置(内槽の周方向の円周上)に配置されている。しかも、溢水口100a及びトラップ101部は内槽4の側方に配置され、更に、内槽4の上下方向中心よりも下側に配置されている。
【0059】
トラップ部101は、ヒートポンプ式の場合、送風機駆動時、槽内圧力が上昇するが、第1のフィルタ6a及び第2の風路フィルタ6bが、リント等を捕集し通気面積が低下した場合、槽内圧力のさらなる上昇が想定される。
【0060】
これらの状況でも破封されないトラップ部101の高さを確保する必要がある(本実施例では、製品組み込み可能領域等を考慮し、トラップ部101の高さを約250mm確保する)。
【0061】
なお、溢水路100aの下端は、排水路7の排水弁7cの下流側に連結され、常に機外に連通した状態にあり、排水弁7cは、主に洗い工程時とすすぎ工程時には閉鎖され、排水時には開放され、排水ホース7dは、排水弁7cの開放時に排水が通過する。
【0062】
溢水経路100は、管路の圧損を低下することが有効である。例えば、曲がり部(図1及び図4に示す第1の曲り部101a、第2の曲り部101b)の数を減らす、曲率を大きくとる、トラップ部101の高さを過剰にとらない、溢水経路100を必要以上に長くしない等である。
【0063】
即ち、トラップ部101をU字状にし、図1及び図4に示すトラップ部101の流路の中心軸を基準とした曲げ半径は、トラップ部101の流路の内径と同等以上とするものである。
【0064】
これにより、槽内洗浄運転等でトラップ部101内に入り込む水の勢いを極力減衰させずにトラップ部101の洗浄に活用できる。
【0065】
なお、本現象(トラップ部101の汚れや異物を槽内の水流を使って洗い流す現象)は、ヒートポンプ乾燥方式のみならず、ヒーター式でも適用が可能である。
【0066】
しかしながら、槽内圧力の高圧化によりトラップ部101の高さを大きく確保する必要がある場合、トラップ部101の内部に堆積した異物を排出することが困難になる。この場合、溢水経路100の断面積を小さくすることによって水の流速が速くなり、水流による異物の排出を有利にすることができる。溢水経路100の断面形状は問わないが、円形状が理想である。
【0067】
しかし、溢水経路100の断面積を小さくし過ぎてしまうと、溢流排水能力が給水に追い付かず、機外へ水漏れするリスクに繋がる。そのため、溢流排水能力及びトラップ部101内の異物排出能力の要件を満たす流路、流路断面にする必要がある。
【0068】
上記した要件を満たすため、上述した実施例1及び2では、内径Φ20mmのホースを採用した。
【0069】
トラップ部101への給水方法は、給水弁からの直接及び分岐による給水や、結露水ポンプからの給水、洗濯、すすぎ工程等での内槽4の回転による水流による給水が可能である。
【0070】
上記した現象を利用し、トラップ部101内部の水を排出、置換することにより、例えば、トラップ部101の底部に蓄積したリントや泥等の混入物を排水時の水流で筐体外に排出でき、溢水経路100内が良好な状態を長期間維持できる。
【0071】
また、上記した現象を利用し、トラップ部101内の水を定期的に排出、置換することにより、トラップ部101内の水が腐敗することによる、異臭及び雑菌発生の抑制が期待できる。
【0072】
外槽3内の洗浄運転とは、短、長期間問わず本体を清潔な状態で使用していただくため、洗濯運転時のすすぎ工程の最後に内槽を300~400min-1程度で回転し、その途中で給水し、外槽3の内側壁面や1次フィルタ等を洗浄するものである。
【0073】
本運転時には、洗浄水が外槽3の回転方向で、且つ、内壁に沿って流れる。よって、可能な限り、内槽4の径に対して正接に溢水経路を設けると効果的である。
【0074】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換える事が可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加える事も可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をする事が可能である。
【符号の説明】
【0075】
1A、1B…洗濯乾燥機、2…筐体、2a…ドア、3…外槽、3a…外槽の底面開口、4…内槽、4a…回転軸、5、23…送風装置、5b…ベース、5b1…ベース(勘合部)、5c…吹出口、6a…第1のフィルタ、6b…第2のフィルタ、7…排水路、7a…内部排水路、7b…水路フィルタ、7c…排水弁、7d…排水ホース、12…圧縮機、13…凝縮器、14…減圧装置、15…蒸発器、16…冷媒回路、16k…冷媒配管、18…ケーシング、18a…下部ケーシング、18b…上部ケーシング、21a…溢水入口流路、21b…溢水ホース固定部品、21b1…第1の溢水ホース固定部品(接手部、ジャバラホース側)、21b2…第2の溢水ホース固定部品(接手部、溢水ホース側)、21b3…第3の溢水ホース固定部品(ねじ固定部)、21b4…第4の溢水ホース固定部品(勘合部)、32…ステー部品、22…吸込風路、22a…吸気口、24…吐出風路、24a…ダクト、50…ヒートポンプ装置、100…溢水経路、100a…溢水口、101…トラップ部、101a…第1の曲り部、101b…第2の曲り部、102…ジャバラホース、103…溢水ホース。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3(a)】
図3(b)】
図3(c)】
図3(d)】
図3(e)】
図4
図5