(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134909
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20240927BHJP
A47C 7/02 20060101ALI20240927BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20240927BHJP
【FI】
B60N2/68
A47C7/02 A
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045352
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 一志
(72)【発明者】
【氏名】砂田 健吾
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DB03
3B087DB05
3B087DE03
(57)【要約】
【課題】運転席と助手席との間にシートクッションから延設させた延設部を設けた構成において質量増加を抑制することが可能な車両用シートを得る。
【解決手段】運転席に設けられたクッションパン40がクッションパッド部をシート下方側から支持し、ワイヤフレーム60が延設パッド部をシート下方側から支持する。ワイヤフレーム60は、第一ワイヤ部62と第二ワイヤ部70とで構成されている。第一ワイヤ部62は、クッションパン40における助手席側の部分のシート前後方向中間部に固定されると共に助手席側へ複数延出して張り出し部分を形成している。また、第二ワイヤ部70は、第一ワイヤ部62に固定されると共に第一ワイヤ部62からシート前方側及びシート後方側へ延設されて延設パッド部の前部及び後部を支持する部分を形成している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席及び助手席のうちの一方の座席を含んで構成された車両用シートであって、
前記運転席及び前記助手席のうちの一方の座席のシートクッションに設けられ、クッションパッド部をシート下方側から支持するクッションパンと、
前記クッションパッド部から前記運転席及び前記助手席のうちの他方の座席側へ延設された延設パッド部と、
ワイヤで構成されて前記延設パッド部をシート下方側から支持し、前記クッションパンにおける前記他方の座席側の部分のシート前後方向中間部に固定されると共に前記他方の座席側へ複数延出して張り出し部分を形成する第一ワイヤ部と、前記第一ワイヤ部に固定されると共に前記第一ワイヤ部からシート前方側及びシート後方側へ延設されて前記延設パッド部の前部及び後部を支持する部分を形成する第二ワイヤ部と、で構成されたワイヤフレームと、
を備える車両用シート。
【請求項2】
前記第一ワイヤ部がブラケットを介して前記クッションパンに固定されている、請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記クッションパッド部と前記延設パッド部とを含んで構成されたパッドは、前記クッションパンの前端側の垂下部と前記ワイヤフレームの前端側を形成する部分との間の空間にシート上方側から入り込んで当該空間を埋める凸状部を有する、請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記クッションパンの前端側の垂下部であって前記凸状部が隣接する部分は、前記クッションパンの前端部でシート幅方向に沿って延在する前端垂下部と前記クッションパンの側端部でシート前後方向に沿って延在する側端垂下部とを繋ぐ湾曲状のコーナ垂下部とされ、
前記凸状部の下端の位置は、前記コーナ垂下部の下端の位置よりもシート下方側に設定されている、請求項3に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、シートクッション用の支持板の側部側にパネル状の延設支持部を溶接し、支持板及び延設支持部の上側にパッド及び表皮で覆って構成したシートクッションが開示されている。このような構成によれば、シートクッションの側方に延設部を付加することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記先行技術では、延設部は、ドア開口側に若干延設された程度のものでかつシートクッションの後部側方側には延設されていない比較的小さいものであるが、運転席と助手席との間の空間を埋めるために比較的大きい延設部を設けたい場合がある。このような場合に、パネル状の延設支持部を運転席及び助手席のうちの一方の座席側から他方の座席側へ延設する構成を採ると、延設支持部が大型化するので、質量増加を抑制する観点から改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、運転席と助手席との間にシートクッションから延設させた延設部を設けた構成において質量増加を抑制することが可能な車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明の車両用シートは、運転席及び助手席のうちの一方の座席を含んで構成された車両用シートであって、前記運転席及び前記助手席のうちの一方の座席のシートクッションに設けられ、クッションパッド部をシート下方側から支持するクッションパンと、前記クッションパッド部から前記運転席及び前記助手席のうちの他方の座席側へ延設された延設パッド部と、ワイヤで構成されて前記延設パッド部をシート下方側から支持し、前記クッションパンにおける前記他方の座席側の部分のシート前後方向中間部に固定されると共に前記他方の座席側へ複数延出して張り出し部分を形成する第一ワイヤ部と、前記第一ワイヤ部に固定されると共に前記第一ワイヤ部からシート前方側及びシート後方側へ延設されて前記延設パッド部の前部及び後部を支持する部分を形成する第二ワイヤ部と、で構成されたワイヤフレームと、を備える。
【0007】
上記構成によれば、本発明の車両用シートは、運転席及び助手席のうちの一方の座席を含んで構成されている。運転席及び助手席のうちの一方の座席のシートクッションにおいて、クッションパッド部は、クッションパンによってシート下方側から支持される。クッションパッド部からは運転席及び助手席のうちの他方の座席側へ延設パッド部が延設されており、この延設パッド部は、ワイヤで構成されたワイヤフレームによってシート下方側から支持される。このため、例えば、延設パッド部がパネル状のパンによってシート下方側から支持される対比例と比べて、質量増加を抑制することが可能になる。
【0008】
ここで、ワイヤフレームは、第一ワイヤ部と第二ワイヤ部とで構成されている。第一ワイヤ部は、クッションパンにおける前記他方の座席側の部分のシート前後方向中間部に固定されると共に前記他方の座席側へ複数延出して張り出し部分を形成している。また、第二ワイヤ部は、第一ワイヤ部に固定されると共に第一ワイヤ部からシート前方側及びシート後方側へ延設されて延設パッド部の前部及び後部を支持する部分を形成している。よって、例えば、ワイヤフレームが本発明のワイヤフレームの構成に加えてクッションパンのシート前後方向の前端部及び後端部に対して固定されるワイヤをも含むような対比例と比べて、質量増加が抑制される。
【0009】
請求項2に記載する本発明の車両用シートは、請求項1に記載の構成において、前記第一ワイヤ部がブラケットを介して前記クッションパンに固定されている。
【0010】
上記構成によれば、例えば、ワイヤフレームとブラケットとを一体化したサブアッシーを製造しておけば、そのサブアッシーのブラケットをクッションパンに固定するだけで、ワイヤフレームをクッションパンに固定することができるので、製造の容易化を図ることができる。
【0011】
請求項3に記載する本発明の車両用シートは、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記クッションパッド部と前記延設パッド部とを含んで構成されたパッドは、前記クッションパンの前端側の垂下部と前記ワイヤフレームの前端側を形成する部分との間の空間にシート上方側から入り込んで当該空間を埋める凸状部を有する。
【0012】
上記構成によれば、パッドの凸状部がクッションパンの前端側の垂下部とワイヤフレームの前端側を形成する部分との間の空間にシート上方側から入り込んで当該空間を埋める。このため、パッドに表皮が被せられた場合に、表皮がクッションパンの前端側の垂下部とワイヤフレームの前端側を形成する部分との間に対応する部分で凹んでしまうのを凸状部によって抑制することができる。
【0013】
請求項4に記載する本発明の車両用シートは、請求項3に記載の構成において、前記クッションパンの前端側の垂下部であって前記凸状部が隣接する部分は、前記クッションパンの前端部でシート幅方向に沿って延在する前端垂下部と前記クッションパンの側端部でシート前後方向に沿って延在する側端垂下部とを繋ぐ湾曲状のコーナ垂下部とされ、前記凸状部の下端の位置は、前記コーナ垂下部の下端の位置よりもシート下方側に設定されている。
【0014】
上記構成によれば、クッションパンの前端側の垂下部であって凸状部が隣接する部分は、クッションパンの前端部でシート幅方向に沿って延在する前端垂下部とクッションパンの側端部でシート前後方向に沿って延在する側端垂下部とを繋ぐ湾曲状のコーナ垂下部となっている。ここで、凸状部の下端の位置は、コーナ垂下部の下端の位置よりもシート下方側に設定されているので、乗員の手がコーナ垂下部の下端に触れるのを凸状部の下端部によって防ぐことができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の車両用シートによれば、運転席と助手席との間にシートクッションから延設させた延設部を設けた構成において質量増加を抑制することが可能になるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートが配置される車室内の一部を簡略化して示す平面図である。
【
図2】
図1の車両用シートのシートクッション及び延設部をシート斜め上方側から見た状態で示す斜視図である。
【
図3】
図2のシートクッション及び延設部に設けられるクッションパン及びワイヤフレーム等を示す斜視図である。
【
図4】
図2のシートクッション及び延設部を表皮のない状態でシート前方斜め下方側から見た状態で示す斜視図である。
【
図5】
図4と同様の状態をシート下方斜め後方側から見た状態で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る車両用シートについて
図1~
図5を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両用シートの前方側を示しており、矢印UPは車両用シートの上方側を示しており、矢印LHは車両用シートの前方を向いた場合の左方側を示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両用シートの前後、車両用シートの上下、車両用シートの前方を向いた場合の左右を示すものとする。また、各図においては、図面を見易くする関係から一部の符号を省略している場合がある。
【0018】
(実施形態の構成)
図1には、本実施形態に係る車両用シート20が配置された車室12内の一部が簡略化された平面図で示されている。車両用シート20が搭載される車両10は、一例として軽自動車とされる。この車両用シート20は、運転席14(運転席及び助手席のうちの一方の座席)を含んで構成されている。運転席14の一方の側方(ここではシート左方側)には助手席16(運転席及び助手席のうちの他方の座席)が車両幅方向に離れて配置される。
【0019】
車両用シート20の運転席14は、乗員が着座する着座部を構成して着座乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション22と、着座乗員の背部を支持するシートバック26と、着座乗員の頭部を支持するヘッドレスト28と、を備えている。また、本実施形態の車両用シート20は、シートクッション22から助手席16側へ延設された延設部24を備えている。
【0020】
延設部24は、運転席14と助手席16との隙間を埋めるように配置され、車室12内の前部のセンタ部を構成している。延設部24は、運転席14と助手席16との間の座り替えを容易にする構成部とされる。なお、シートクッション22の後部と延設部24の後部との間に形成された隙Gは、シートベルト装置のバックル装置(図示省略)を配置するためのものである。
【0021】
図2には、
図1の車両用シート20のシートクッション22及び延設部24をシート斜め上方側から見た状態の斜視図が示されている。また、
図3には、シートクッション22及び延設部24(いずれも
図2参照)に設けられるクッションパン40及びワイヤフレーム60等が斜視図で示されている。
【0022】
図2に示されるシートクッション22は、クッション材であるクッションパッド部32と、クッションパッド部32をシート下方側から支持するクッションパン40(
図3参照)と、を有している。また、延設部24は、クッションパッド部32から助手席側(他方の座席側であるシート左方側)へ延設された延設パッド部34と、延設パッド部34をシート下方側から支持するワイヤフレーム60(
図3参照)と、を有している。
【0023】
延設パッド部34は、クッションパッド部32と一体に成形されたものであり、助手席16(
図1参照)の近傍まで延設されている。クッションパッド部32と延設パッド部34とを含んで構成されたパッド30は、ウレタンフォーム等の発泡体からなり、パッド30の表面は表皮38によって覆われている。なお、
図2では、シートクッション22及び延設部24の構成の理解を容易にするために、表皮38を切り欠いてパッド30(クッションパッド部32及び延設パッド部34)を示している。
【0024】
図3に示されるクッションパン40は、金属板(例えば高張力鋼板)がプレス成形されて形成されたものである。クッションパン40は、後部に底壁部43を備えた凹形状に形成されている。また、クッションパン40は、基本的に左右対称に形成されている。以下、クッションパン40について具体的に説明する。
【0025】
クッションパン40は、底壁部43の後端からシート上方側へ向けてシート後方側へ傾斜した後壁部44と、底壁部43の前端からシート上方側へ向けてシート前方側へ傾斜した中間傾斜部42と、中間傾斜部42の前端に連続して全体として略平坦状の前側一般部41と、を有している。また、クッションパン40は、底壁部43及び中間傾斜部42のシート幅方向外側の端部からシート上方側へ向けてシート幅方向外側へ傾斜した下側サイド傾斜部45と、下側サイド傾斜部45の上端からシート幅方向外側へ延出された棚状部46と、棚状部46のシート幅方向外側の端部からシート上方側へ向けてシート幅方向外側へ傾斜した上側傾斜部47と、を有している。
【0026】
クッションパン40には、前側一般部41のシート幅方向外側の一部に連続して台座状に隆起した被固定部48が形成されている。被固定部48及び前述した棚状部46は、そのシート下方側に配置される図示しないサイド骨格部材に締結具Bを用いて固定される。また、クッションパン40のシート幅方向外側の端部には、シート前後方向前側部分からシート前後方向中間部にかけての部分にシート幅方向外側に張り出した張出部50が形成されている。張出部50は、前側一般部41の後部と被固定部48とで形成される部分のシート幅方向外側の端部に段差を介して接続されると共に、上側傾斜部47の前部上端に接続されている。
【0027】
クッションパン40において前側一般部41の前端からは前端垂下部52がシート下方側へ垂下されて形成されている。前端垂下部52は、クッションパン40の前端部でシート幅方向に沿って延在している。前端垂下部52の下端部には、表皮38(
図2参照)の前端側に縫製されたJフック(図示省略)が係止される。
【0028】
また、クッションパン40において張出部50のシート幅方向外側の端部からは側端垂下部56がシート下方側へ垂下されて形成されている。側端垂下部56は、クッションパン40の側端部でシート前後方向に沿って延在している。前端垂下部52と側端垂下部56とは、平面視で湾曲状のコーナ垂下部54によって繋がれている。なお、前端垂下部52の下端52Lの位置及び側端垂下部56の下端56Lの位置は、コーナ垂下部54の下端54Lの位置よりもシート下方側に設定されている。
【0029】
次に、ワイヤフレーム60について説明する。ワイヤフレーム60は、クッションパン40における助手席側(シート左方側)の部分のシート前後方向中間部に固定されると共に助手席側(シート左方側)へ複数延出して張り出し部分を形成する第一ワイヤ部62と、第一ワイヤ部62に固定されると共に第一ワイヤ部62からシート前方側及びシート後方側へ延設された第二ワイヤ部70と、で構成されている。
【0030】
第一ワイヤ部62は、一例として、二本のワイヤ64、66で構成されている。ワイヤ64は、平面視でクッションパン40側が開放されたU字状をなし、シート幅方向に沿って延在すると共にシート幅方向外側でシート上方側へ曲げられている。ワイヤ66は、ワイヤ64のシート幅方向外側の端部のシート前後方向中央部に下側から接合され、ワイヤ64と接合された端部から平面視でシート幅方向内側に沿って延在すると共に、シート幅方向内側の部分がシート幅方向外側の部分よりも低くなるようにクランク状に曲げられている。ワイヤ64のシート幅方向内側の端部とワイヤ66のシート幅方向内側の端部とは、シート幅方向において揃えられると共に、ブラケット80に接合されている。
【0031】
ブラケット80は、第一ワイヤ部62の基端部側が接合されるワイヤ固定部80Aを備えると共に、ワイヤ固定部80Aのシート幅方向内側の端部から下方側へ曲げられて更にシート幅方向内側へ曲げられている。ブラケット80のシート幅方向内側の部分は着座部80Bとされている。ブラケット80は、ワイヤ固定部80Aがクッションパン40の左側の張出部50に載せられると共に着座部80Bがクッションパン40の前側一般部41の左側の一部及び左側の棚状部46の一部に載せられた状態でクッションパン40に溶接により接合されている。すなわち、第一ワイヤ部62は、ブラケット80を介してクッションパン40に固定されている。
【0032】
第二ワイヤ部70は、延設パッド部34(
図2参照)の前部及び後部を支持する部分を形成しており、延設パッド部34の形状を踏まえた形状に形成されている。この第二ワイヤ部70は、第二ワイヤ部70のシート前後方向前側の部分を構成する第二ワイヤ前部70Aと、第二ワイヤ部70のシート前後方向後側の部分を構成する第二ワイヤ後部70Bと、を備えている。
【0033】
第二ワイヤ前部70Aは、第一ワイヤ部62の前部に支持され、第一ワイヤ部62よりもシート幅方向外側となる部分及び第一ワイヤ部62よりもシート前方側となる部分を第一ワイヤ部62よりもシート下方側において形成している。第二ワイヤ前部70Aは、一例として、三本のワイヤ72、73、74で構成されている。
【0034】
ワイヤ72は、その一端部が第一ワイヤ部62のワイヤ64のシート幅方向外側の端部の前部に下側から接合されている。このワイヤ72は、ワイヤ64と接合された一端部からシート幅方向外側へ延出されると共に複数箇所で屈曲されて三次元形状を形成している。ワイヤ72の他端部は、ワイヤ73を介して第一ワイヤ部62のワイヤ64の前端部におけるシート幅方向外側寄りの部分に接合されている。
【0035】
ワイヤ73は、ワイヤ64との接合された一端部からシート前方側へ延出されてその一部にワイヤ72の他端部が接合されると共に、中間部が複数箇所で屈曲され、他端部がワイヤ72のシート幅方向外側かつシート前方側の部分に接合されている。一方、ワイヤ74は、一端部がワイヤ72の前端部かつシート幅方向内側の部分に接合され、中間部が複数箇所で屈曲され、他端部がワイヤ72のシート幅方向外側の後部に接合されている。
【0036】
第二ワイヤ前部70Aのシート幅方向内側の端部でかつ前端側を構成する部分72Aは、クッションパン40のコーナ垂下部54に対してシート幅方向外側に離間して配置されている。また、第二ワイヤ前部70Aの前端側の下端72Bの位置は、クッションパン40のコーナ垂下部54の下端位置よりもシート下方側の位置に設定されている。更に、この第二ワイヤ前部70Aの前端側の下端72Bの位置は、一例としてクッションパン40の前端垂下部52の下端位置よりも僅かにシート下方側かつ僅かにシート後方側の位置に設定されている。
【0037】
第二ワイヤ後部70Bは、第一ワイヤ部62の後部に支持され、第一ワイヤ部62よりもシート幅方向外側となる部分及び第一ワイヤ部62よりもシート後方側となる部分を第一ワイヤ部62よりもシート下方側において形成している。第二ワイヤ後部70Bは、一例として、二本のワイヤ76、78で構成されている。
【0038】
ワイヤ76は、その一端部が第一ワイヤ部62のワイヤ64のシート幅方向外側の端部の後部に下側から接合されている。このワイヤ76は、ワイヤ64と接合された一端部からシート幅方向外側へ延出されると共に複数箇所で屈曲されて三次元形状を形成している。ワイヤ76の他端部は、第一ワイヤ部62のワイヤ64の後端部におけるシート幅方向中間部に接合されている。一方、ワイヤ78は、一端部がワイヤ76のシート幅方向外側の前部に接合され、中間部が複数箇所で屈曲され、他端部がワイヤ76のシート幅方向内側の後部に接合されている。
【0039】
次に、
図4及び
図5を参照しながら、クッションパン40及びワイヤフレーム60の各前部とパッド30の前部との関係について説明する。
図4には、表皮38(
図2参照)のない状態のシートクッション22及び延設部24をシート前方斜め下方側から見た状態が示されている。また、
図5には、
図4と同様の状態がシート下方斜め後方側から見た状態で示されている。
【0040】
図4に示されるように、クッションパッド部32の前端部32Fは、クッションパン40の前端垂下部52よりもシート前方側に配置され、クッションパッド部32の前端側の下端32Lの位置は、前端垂下部52の下端52Lの位置よりもシート上方側に位置している。一方、
図4及び
図5に示されるように、延設パッド部34の前端部34Fは、クッションパッド部32の前端部32Fと連続して形成されると共にワイヤフレーム60よりもシート前方側に配置され、延設パッド部34の前端側の下端34Lは、ワイヤフレーム60の前端側の下端72Bにシート上下方向位置が揃えられている。
【0041】
図5に示されるように、パッド30は、クッションパッド部32及び延設パッド部34と一体に形成された凸状部36を有している。凸状部36は、クッションパン40の前端側の垂下部を構成するコーナ垂下部54とワイヤフレーム60の前端側を形成する部分との間の空間にシート上方側から入り込んで当該空間を埋める。これにより、凸状部36は、クッションパン40のコーナ垂下部54と隣接している。凸状部36の下端36Lの位置は、コーナ垂下部54の下端54Lの位置よりもシート下方側に設定されている。
【0042】
(実施形態の作用・効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0043】
図2に示されるクッションパッド部32は、クッションパン40(
図3参照)によってシート下方側から支持される。また、クッションパッド部32からは助手席側(シート左方側)へ延設パッド部34が延設されており、延設パッド部34は、
図3に示されるワイヤフレーム60によってシート下方側から支持される。このため、例えば、延設パッド部がパネル状のパンによってシート下方側から支持される対比例と比べて、質量増加を抑制することが可能になる。
【0044】
ここで、ワイヤフレーム60は、第一ワイヤ部62と第二ワイヤ部70とで構成されている。第一ワイヤ部62は、クッションパン40における助手席側(シート左方側)の部分のシート前後方向中間部に固定されると共に助手席側(シート左方側)へ複数延出して張り出し部分を形成している。また、第二ワイヤ部70は、第一ワイヤ部62に固定されると共に第一ワイヤ部62からシート前方側及びシート後方側へ延設されて延設パッド部34(
図2参照)の前部及び後部を支持する部分を形成している。よって、例えば、ワイヤフレームが本実施形態のワイヤフレーム(60)の構成に加えてクッションパン(40)のシート前後方向の前端部及び後端部に対して固定されるワイヤをも含むような対比例と比べて、質量増加が抑制される。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の
図1に示される車両用シート20によれば、運転席14と助手席16との間にシートクッション22から延設させた延設部24を設けた構成において質量増加を抑制することが可能になる。
【0046】
また、本実施形態では、
図3に示されるように、第一ワイヤ部62がブラケット80を介してクッションパン40に固定されている。このような構成では、ワイヤフレーム60とブラケット80とを一体化したサブアッシーを製造しておけば、そのサブアッシーのブラケット80をクッションパン40に溶接等により固定するだけで、ワイヤフレーム60をクッションパン40に固定することができるので、製造の容易化を図ることができる。
【0047】
また、本実施形態では、
図5に示されるように、パッド30の凸状部36がクッションパン40のコーナ垂下部54とワイヤフレーム60の前端側を形成する部分との間の空間にシート上方側から入り込んで当該空間を埋める。このため、パッド30に表皮38(
図2参照)が被せられた場合に、表皮38がクッションパン40のコーナ垂下部54とワイヤフレーム60の前端側を形成する部分との間に対応する部分で凹んでしまうのを凸状部36によって抑制することができ、外観品質を良好にすることができる。
【0048】
また、本実施形態では、凸状部36の下端36Lの位置は、コーナ垂下部54の下端54Lの位置よりもシート下方側に設定されている。このため、乗員の手がコーナ垂下部54の下端54Lに触れるのを凸状部36の下端部によって防ぐことができ、コーナ垂下部54の下端54Lに保護テープを貼る必要がなくなる。
【0049】
(実施形態の補足説明)
なお、上記実施形態では、
図1に示される車両用シート20が運転席14を含んで構成されたものとされているが、本発明の車両用シートは、助手席を含んで構成されて運転席側へ延設部が延設された車両用シートに適用されてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、
図1に示される車両用シート20が軽自動車に搭載される車両用シートとされているが、本発明の車両用シートは、軽自動車以外の車両に搭載される車両用シートに適用されてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、
図3に示されるように、第一ワイヤ部62がブラケット80を介してクッションパン40に固定されており、製造の容易化の観点からはこのような構成が好ましいが、上記実施形態の変形例として、第一ワイヤ部(62)がクッションパン(40)に直接溶接等によって固定されるような構成も採り得る。
【0052】
また、上記実施形態では、
図5に示されるように、パッド30は、クッションパン40のコーナ垂下部54とワイヤフレーム60の前端側を形成する部分との間の空間にシート上方側から入り込んで当該空間を埋める凸状部36を有しており、そのような凸状部36が設けられる構成が好ましいが、凸状部36を設けないような構成も採り得る。
【0053】
また、上記実施形態では、凸状部36の下端36Lの位置がコーナ垂下部54の下端54Lの位置よりもシート下方側に設定されており、そのような構成が好ましいが、そのような構成を採らずに、コーナ垂下部54の下端54Lに保護テープを貼るという構成も採り得る。
【0054】
なお、上記実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0055】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
14 運転席(一方の座席)
16 助手席(他方の座席)
20 車両用シート
22 シートクッション
30 パッド
32 クッションパッド部
34 延設パッド部
36 凸状部
36L 凸状部の下端
40 クッションパン
52 前端垂下部
54 コーナ垂下部(クッションパンの前端側の垂下部)
54L コーナ垂下部の下端
56 側端垂下部
60 ワイヤフレーム
62 第一ワイヤ部
64 ワイヤ
66 ワイヤ
70 第二ワイヤ部
72 ワイヤ
73 ワイヤ
74 ワイヤ
76 ワイヤ
78 ワイヤ
80 ブラケット