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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134910
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 7/02 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
F24C7/02 340J
F24C7/02 531G
F24C7/02 320J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045354
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉川 政志
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 礼
(72)【発明者】
【氏名】上野 真司
【テーマコード(参考)】
3L086
【Fターム(参考)】
3L086AA02
3L086BD10
3L086CB08
3L086CC06
3L086DA12
(57)【要約】
【課題】食品を解凍するに適した加熱調理器を提供することを目的とする。
【解決手段】本体内部に食品を収納する加熱室と、加熱室の底部に設けられて加熱室内の食品を加熱するマイクロ波加熱源と、加熱室の上部に設けられて加熱室内の食品を加熱するヒータ加熱源と、本体内部の食品の表面温度を検知する赤外線センサと、少なくともマイクロ波加熱源とヒータ加熱源を制御する制御部とを備える加熱調理器であって、制御部は、食品の解凍処理時に、マイクロ波加熱源とヒータ加熱源を用いる加熱処理を実行する加熱段階と、マイクロ波加熱源とヒータ加熱源による加熱処理を実行しない観察段階の2つの段階を交互に実行し、観察段階に移動後に、赤外線センサで検知した食品の表面温度の低下の状況に応じて食品の解凍状態を判断することを特徴とする加熱調理器。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体内部に食品を収納する加熱室と、加熱室の底部に設けられて加熱室内の食品を加熱するマイクロ波加熱源と、加熱室の上部に設けられて加熱室内の食品を加熱するヒータ加熱源と、本体内部の食品の表面温度を検知する赤外線センサと、少なくとも前記マイクロ波加熱源と前記ヒータ加熱源を制御する制御部とを備える加熱調理器であって、
前記制御部は、食品の解凍処理時に、前記マイクロ波加熱源と前記ヒータ加熱源を用いる加熱処理を実行する加熱段階と、前記マイクロ波加熱源と前記ヒータ加熱源による加熱処理を実行しない観察段階の2つの段階を交互に実行し、
前記観察段階に移動後に、前記赤外線センサで検知した食品の表面温度の低下の状況に応じて食品の解凍状態を判断することを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器であって、
前記観察段階に移動後に、前記赤外線センサで検知した食品の表面温度の低下幅が大きいことをもって再度前記加熱段階に移行し、食品の表面温度の低下幅が小さいことをもって食品の解凍が完了と判断して再度前記加熱段階に移行することを停止することを特徴とする加熱調理器。
【請求項3】
請求項2に記載の加熱調理器であって、
再度前記加熱段階に移行するに際し、前記観察段階に移動した時刻から一定時間経過後とすることを特徴とする加熱調理器。
【請求項4】
請求項1に記載の加熱調理器であって、
前記ヒータ加熱源は、電力供給が遮断されてからヒータ加熱源の温度が低下するまでの応答性が高い高応答ヒータ加熱源とされることを特徴とする加熱調理器。
【請求項5】
請求項4に記載の加熱調理器であって、
前記高応答ヒータ加熱源は、グラファイトヒータ、カーボンヒータ、ハロゲンヒータ、石英管ヒータであることを特徴とする加熱調理器。
【請求項6】
請求項1に記載の加熱調理器であって、
食品の温度は、解凍処理の加熱開始前に、食品温度と壁面温度の差から、食品領域を判別し、食品領域内の温度として検知することを特徴とする加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を解凍するに適した加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱調理器においてマイクロ波のみを用いて食品を解凍する際に、食品表面の一部が解凍された状態でさらにマイクロ波が照射されると、食品内部に対して著しく加熱されることになり、食品表面では煮えや焦げ付きが発生し、食品内部は低温状態となり、加熱斑が発生することが知られている。
【0003】
この点に関して特許文献1では、短時間で食材を斑なく解凍できる加熱調理器を提供することを目的として、「調理物が収容される調理室と、前記調理室内にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段と、前記調理室内に形成された導入口から、前記調理室内に蒸気を供給する蒸気供給手段と、前記調理室内の前記導入口の前方に外気を吹出す外気供給手段と、前記マイクロ波照射手段、前記蒸気供給手段および前記外気供給手段のそれぞれの作動を制御する制御手段と、調理中の調理物上の複数個所の温度を検出可能な調理物温度検出手段と、を備え、前記制御手段は、前記マイクロ波照射手段を作動させることにより調理物を加熱する第1工程を実行した後、前記マイクロ波照射手段の作動を停止させるとともに、前記蒸気供給手段および前記外気供給手段をともに作動させて前記調理物を加熱する第2工程を実行することにより、前記調理物を解凍し、前記制御手段は、前記調理物温度検出手段による検出結果に基づき、調理物上の温度斑の大きさに応じて前記第2工程の継続時間を長く設定するところに特徴を有する。」のようにすることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4976989号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は要するに、マイクロ波のみの加熱により生じる加熱斑を防止するために、マイクロ波により所定量の解凍を行った後、マイクロ波の発生を停止して、蒸気供給手段と外気供給段により仕上げ解凍を行っているものである。
【0006】
然しながら、特許文献1は蒸気供給手段を用いることで、マイクロ波による食品の煮えや焦げ付きを防止できるものの、蒸気手段を用いることにより、蒸気が赤外線を妨げることで、赤外線センサによる食品の仕上がり温度検知ができなくなる。予め設定している食品の形状や質量等の条件から外れた食品をユーザが加熱しようとした際に、仕上がり温度検知ができない場合、過加熱や加熱不足の仕上がりが発生する。
【0007】
このことから本発明においては、食品を解凍するに適した加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のことから本発明においては、「本体内部に食品を収納する加熱室と、加熱室の底部に設けられて加熱室内の食品を加熱するマイクロ波加熱源と、加熱室の上部に設けられて加熱室内の食品を加熱するヒータ加熱源と、本体内部の食品の表面温度を検知する赤外線センサと、少なくともマイクロ波加熱源とヒータ加熱源を制御する制御部とを備える加熱調理器であって、制御部は、食品の解凍処理時に、マイクロ波加熱源とヒータ加熱源を用いる加熱処理を実行する加熱段階と、マイクロ波加熱源とヒータ加熱源による加熱処理を実行しない観察段階の2つの段階を交互に実行し、観察段階に移動後に、赤外線センサで検知した食品の表面温度の低下の状況に応じて食品の解凍状態を判断することを特徴とする加熱調理器」としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、食品を解凍するに適した加熱調理器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】加熱調理器本体を前面側から見た斜視図。
図2図1のA-A断面を示す図。
図3】加熱調理器の制御部Cの構成例を示す図。
図4】解凍制御時における制御部Cの処理内容を示す図。
図5】本発明の解凍制御における温度変化を示す時間図。
図6】ヒータ源が高応答ヒータでないときの、解凍制御における温度変化を示す時間図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下,本発明の実施例について、図面を用いて説明する。
【実施例0012】
図1は加熱調理器本体を前面側から見た斜視図である。図1において、加熱調理器の本体1は、加熱室28の中に加熱する食品を入れ、マイクロ波やヒータの熱、さらには加熱水蒸気を使用して食品を加熱調理する。
【0013】
外枠7は、加熱調理器の本体1の上面と左右側面を覆うキャビネットである。ドア2は、加熱室28の内部に食品を出し入れするために開閉するもので、ドア2を閉めることで加熱室28を密閉状態にし、食品を加熱する時に使用するマイクロ波の漏洩を防止し、ヒータの熱や加熱水蒸気を封じ込め、効率良く加熱することを可能とする。
【0014】
取っ手9は、ドア2に取り付けられ、ドア2の開閉を容易にするもので、手で握りやすい形状になっている。ガラス窓3は、調理中の食品の状態が確認できるようにドア2に取り付けられており、ヒータ等の発熱による高温に耐えるガラスを使用している。
【0015】
入力部71は、ドア2の前面下側の操作パネル4に設けられ、マイクロ波加熱やヒータ加熱等の加熱部や加熱する時間等と加熱温度の入力するための操作部6と、操作部6から入力された内容や調理の進行状態を表示する表示部5とで構成されている。
【0016】
なお、外部構造を示す図1には示されていないが、加熱調理器の本体1内には計算機を用いて構成された制御部Cを備えており、入力部71からの入力、加熱器内の各種センサで検知したデータなどを用いて、各種の制御を実行し、またその結果を表示部5に表示している。
【0017】
図2図1のA-A断面図である。図2において、機械室20は、加熱室底面28aと本体1の底板21との間の空間部に設けられ、底板21上には食品を加熱するためのマグネトロン33、マグネトロン33に接続された導波管47等を実装した制御基板、その他後述する各種部品、これらの各種部品を冷却するファン装置等が取り付けられている。
【0018】
加熱室底面28aは、略中央部が凹状に窪んでおり、その中に回転アンテナ26が設置され、マグネトロン33より放射されるマイクロ波エネルギーが導波管47、回転アンテナ26の出力軸46aが貫通する開孔部47aを通して回転アンテナ26の下面に流入し、該回転アンテナ26で拡散されて加熱室28内に放射される。回転アンテナ26の出力軸46aは回転アンテナ駆動部46に連結されている。
【0019】
加熱室28の加熱室天面28cの裏側には、ヒータよりなる加熱部12が取り付けられている。加熱部12は、例えばマイカ板にヒータ線を巻き付けて平面状に形成し、加熱室28の天面裏側に押し付けて固定し、加熱室28の天面を加熱して加熱室28内の食品を輻射熱によって焼くものである。
【0020】
加熱室28の加熱室天面28cの左奥側には、加熱室28の庫内温度を検出する温度センサ80や食材の表面温度を検知する赤外線センサ50を設けている。
【0021】
また、加熱室底面28aには、複数個の重量センサ25、例えば前側左右に左側重量センサ25b、右側重量センサ(図示せず)、後側中央に奥側重量センサ25cが設けられ、その上にテーブルプレート24が載置されている。
【0022】
テーブルプレート24は、食品を載置するためのもので、ヒータ加熱とマイクロ波加熱の両方に使用できるように耐熱性を有し、かつ、マイクロ波の透過性が良い材料で成形されている。
【0023】
以上要するに加熱調理器では、テーブルプレート24上の食品を下側からマイクロ波加熱(マグネトロン33)し、上側からヒータ加熱(加熱部12)し、さらには水蒸気を用いた加熱とすることで食品を加熱している。またその際に、温度センサ80などによる庫内の測定温度を制御に反映している。
【0024】
係る加熱調理器の調理メニューには種々のものがあるが、本発明では特に食品の解凍を行う場合に工夫されたものである。
【0025】
図3は、加熱調理器の制御部Cの構成例を示す図である。図3において制御部Cは、各種の入力を得てその演算結果によりレンジ加熱部330を制御する。ここで各種の入力としては、入力部71からのユーザ設定入力の他に、重量センサ25,赤外線センサ50,庫内温度センサ80,戸外温度センサ102などからセンサデータを得る。またタイマー101、記録部100に接続されてデータの受け渡しを行う。
【0026】
この結果としてレンジ加熱部330は、加熱調理器内の各部を制御し、その主なものは、加熱することに関してヒータ加熱とマイクロ波加熱と水蒸気加熱に関する制御であり、さらには付随的に冷却系統の制御を実行する。但し、図3では、加熱調理器の複数メニューを実現する上での標準的なセンサを示している。解凍制御を実施する上で、本発明が着目するセンサ要因は、特に赤外線センサ50であり、これにより食品表面温度を測定する。
【0027】
図4は、解凍制御時における制御部Cの処理内容を示す図である。この処理フローではまず処理ステップS1においてユーザ指定のメニューが解凍か、それ以外かを識別し、解凍外である場合に処理ステップS2に移って解凍外メニューを実行する。
【0028】
解凍の処理である場合には、処理ステップS3に移ってヒータ加熱(加熱部12)とマイクロ波加熱(マグネトロン33)による加熱処理を実行する第1加熱段階A1(図5参照)に入る。なお本発明の解凍処理では、水蒸気加熱は適用されない。
【0029】
図5は、本発明の解凍制御における温度変化を示す時間図である。処理ステップS3におけるヒータ加熱とマイクロ波加熱による加熱処理を実行する第1加熱段階A1では、赤外線センサ50が検知する食品表面温度Tが上昇し、時刻t1で設定温度T0に達したものとする。
【0030】
図4の処理ステップS4では、ほぼ常温(例えば10度乃至15度)に設定される設定温度T0と、赤外線センサ50が検知する食品表面温度Tを比較し、設定温度T0に達するまで処理ステップS3の加熱を継続する。
【0031】
図5において時刻t1とt2の間の期間は、第1観察段階B1であり、この期間ではまず処理ステップS5において、ヒータ加熱とマイクロ波加熱を停止すべく、時刻t1においてヒータ及びマグネトロンへの電力供給を阻止する。これにより食品は加熱源を喪失するために冷却過程に入る。次に、処理ステップS6において、食品表面温度Tの温度変化分ΔTを観察する。
【0032】
図5の第1観察段階B1では、点線のように温度変化分ΔTが小さいケースと、実線のように温度変化分ΔTが大きいケースが観察されたものとする。このとき点線は表面温度と内部温度に差が少ないことから解凍が進んでいる状態と推定でき、実線では表面温度と内部温度に差が大きいことから解凍ができていない状態と推定することができる。
【0033】
このことから処理ステップS6では、電力供給遮断後の温度変化分ΔTをその基準値ΔT0と比較し、ΔT>ΔT0(YES)のときには処理ステップS7において一定時間経過を確認後に再度処理ステップS3に戻り、加熱処理を最初から実行する。ΔT<ΔT0(NO)のときには処理ステップS8に移り、解凍完了とする。なおA2,B2は第2加熱段階、第2観察段階というべきものであり、この加熱と観察の段階の組み合わせ処理は、解凍が確認できる(ΔT<ΔT0)まで継続実行される。
【0034】
実施例1によれば、水蒸気加熱を適用しない状態で赤外線センサによる食品表面温度の観察と、その温度変化から解凍状態を推定することで食品を解凍するに適した加熱調理器を得ることができる。
【実施例0035】
実施例1の効果を高めるには、ヒータ加熱におけるヒータ源が高応答ヒータであることが望ましい。ここでヒータ源における高い応答性とは、電力供給が遮断されてからヒータ源の温度が低下するまでの応答が速いことを意味する。
【0036】
ヒータ源の応答性能が低い場合には、ヒータへの電力供給を遮断した時点以降もヒータ温度が高温を維持し続けており、その発熱により食品を加熱し続けるラグタイムが発生(温度のオーバーシュート)してしまい、結果として解凍の観察に要する時間が長期化し、不要に食品を加熱してしまう結果になるからである。図7は、温度のオーバーシュートが発生した場合の様相を示している。
【0037】
以上要するに実施例1、実施例2によれば、マイクロ波による加熱手段に加えて、スチームではなく、高応答性ヒータを用いることで、赤外線センサによる食品の仕上がり温度検知を可能にする。
【0038】
マイクロ波による加熱は、主に食品下面の温度を上昇させるため、食品上方に設置された高応答性ヒータにより、食品上面を加熱する。高応答性ヒータによる加熱と並行して、赤外線センサにより食品温度を検知し続け、測定温度が所定の温度に達した場合に、高応答性ヒータの加熱を終了する。食品温度は、加熱開始前に、温度センサにより、食品温度と壁面温度の差から、食品領域を判別し、食品領域内の温度として検知するのがよい。
【0039】
ヒータの応答性が低い(熱容量が大きく、温度上昇と温度減少が遅い)場合、ヒータへの通電を終了した後も、ヒータに残存した熱により食品の加熱が進行するため、食品の所定の温度をオーバーシュートしてしまい、必要以上に加熱し、食品の煮えが発生してしまう。なお、高応答性ヒータは、グラファイトヒータ、カーボンヒータ、ハロゲンヒータ、石英管ヒータである。低応答性ヒータの例は、マイカヒータである。
【0040】
ヒータへの通電終了後において、赤外線センサで検知した食品温度が急激に低下する場合は、食品内部の温度が所定の温度よりも低い状態である。そこで、通電終了から所定の時間における温度変化を確認し、温度変化の大きさが所定の値以上であれば、再度ヒータに通電して、所定の温度に到達するまで加熱を行う工程を繰り返す。これにより、食品内部まで温度上昇することができる。
【符号の説明】
【0041】
1:加熱調理器の本体1
2:ドア
3:ガラス窓
4:操作パネル
5:表示部
6:操作部
7:外枠
9:取っ手
12:ヒータ
33:マグネトロン
47:導波管
50:赤外線センサ
71:入力部
80:庫内温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6