(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134913
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ブリスターパック包装体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65B 51/16 20060101AFI20240927BHJP
B65D 75/34 20060101ALI20240927BHJP
B65B 9/04 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B65B51/16 100
B65D75/34
B65B9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045359
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】武田 昌樹
【テーマコード(参考)】
3E050
3E067
3E094
【Fターム(参考)】
3E050AA02
3E050AB02
3E050AB05
3E050BA09
3E050DD04
3E050DF02
3E050DF06
3E067AA11
3E067AB82
3E067AC04
3E067AC12
3E067BA26A
3E067BB14A
3E067BC07A
3E067CA24
3E067EA06
3E067FA01
3E067FB04
3E067FC01
3E067GD07
3E094AA15
3E094BA11
3E094CA10
3E094CA12
3E094EA02
3E094FA03
3E094FA30
3E094GA02
3E094HA08
(57)【要約】
【課題】樹脂を含む蓋材と底材を用い、蓋材を溶融させることなく、蓋材と底材とのシール強度が十分に高いブリスターパック包装体を製造する方法の提供。
【解決手段】蓋材110及び底材120がヒートシールされたブリスターパック包装体10の製造方法であって、蓋材110及び底材120が熱可塑性樹脂を含み、前記製造方法は、第1ロール91と第2ロール92の間を、蓋材110及び底材120を通過させることで、蓋材110及び底材120をヒートシールする工程を有し、第1ロール91のロール面91aと、第2ロール92のロール面92aと、が対向しており、前記ヒートシール工程において、加熱した第1ロール91と、第2ロール92と、の間に対して、底材120を第2ロール92側から供給し、蓋材110を前記ロール面91aに接触させながら、第1ロール91側から供給して、蓋材110を予熱してから底材120とヒートシールする、製造方法。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリスターパック包装体の製造方法であって、
前記ブリスターパック包装体は、蓋材及び底材がヒートシールされて構成されており、
前記蓋材及び底材が熱可塑性樹脂を含み、
前記製造方法は、一対のロールの間を、前記蓋材及び底材を通過させることで、前記蓋材及び底材をヒートシールするヒートシール工程を有し、
前記一対のロールは、前記蓋材及び底材を加熱可能な第1ロールと、第2ロールと、を備え、前記第1ロールのロール面と、前記第2ロールのロール面と、が対向しており、
前記ヒートシール工程において、加熱した前記第1ロールと、前記第2ロールと、の間に対して、前記底材を前記第2ロール側から供給するとともに、前記蓋材を、前記第1ロールの前記ロール面に接触させながら、前記第1ロール側から供給することによって、前記蓋材を予熱してから前記底材とヒートシールする、ブリスターパック包装体の製造方法。
【請求項2】
前記第1ロールのロール面における外周の長さをLとし、
前記蓋材及び底材のヒートシールまでに、前記蓋材の前記第1ロールの前記ロール面と接触する領域の長さをAとしたとき、
前記ヒートシール工程において、前記AをL/16~L/2に調節する、請求項1に記載のブリスターパック包装体の製造方法。
【請求項3】
前記ヒートシール工程において、前記蓋材及び底材のヒートシール温度を、前記蓋材が含む前記熱可塑性樹脂の融点以下とする、請求項1又は2に記載のブリスターパック包装体の製造方法。
【請求項4】
前記ヒートシール工程において、前記蓋材及び底材のヒートシール時間を、1秒以下とする、請求項1又は2に記載のブリスターパック包装体の製造方法。
【請求項5】
前記底材が含む前記熱可塑性樹脂と、前記蓋材が含む前記熱可塑性樹脂が、同種の樹脂である、請求項1又は2に記載のブリスターパック包装体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリスターパック包装体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブリスターパックは、日用品をはじめとして、様々な物品に対して幅広く利用されている。例えば、凹部を備えた底材と、シート状の蓋材と、がヒートシールされ、前記凹部内が収納部とされたブリスターパック包装体は、錠剤の包装に利用されている。
【0003】
錠剤を収納物とするブリスターパック包装体では、底材としては透明樹脂フィルムが使用され、蓋材としては、通常、アルミニウム製シートが使用される(特許文献1参照)。
【0004】
ところで、樹脂フィルムを用いて製造された包装体は、その利便性の高さから、世界中で毎日大量に生産及び消費されており、使用後には大量の廃棄物が発生する。廃棄物の発生は、地球環境の改善の観点では、解決すべき重要な課題となっており、近年は、廃棄物の発生量の低減とともに、廃棄物の再利用(リサイクル)の方法について、盛んに検討されている。
【0005】
例えば、複数層からなる樹脂フィルムの場合、その複数層の樹脂層の主要構成材料を同種のものとすれば、各樹脂層を分離して別々に再利用する必要性がなくなり、樹脂フィルム全体を容易に再利用することができることから、有用性が高くなる。そこで、このような複数層からなる樹脂フィルムの開発が、盛んに進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方で、包装体単位でみると、錠剤の包装に利用されるブリスターパック包装体では、蓋材を従来のアルミニウム製シートではなく、底材が含む樹脂と同種の樹脂を主要構成材料として含む樹脂フィルムとすることによって、蓋材及び底材を同時に再利用でき、極めて有用である。すなわち、樹脂を含む蓋材を備えたブリスターパック包装体は、その有用性が極めて高い。
【0008】
しかし、樹脂を含む蓋材を用いた場合には、従来のヒートシールの条件では、蓋材と底材とのシール強度が低くなってしまい、蓋材と底材とのシール強度が十分に高いブリスターパック包装体が得られない、という問題点があった。そして、樹脂を含む蓋材と、底材と、のシール強度を高くするために、ヒートシールの温度を高くすると、蓋材(蓋材中の樹脂)が溶融してしまい、正常にブリスターパック包装体が得られない、という問題点があった。
【0009】
本発明は、樹脂を含む蓋材と、樹脂を含む底材を用い、蓋材を溶融させることなく、蓋材と底材とのシール強度が十分に高いブリスターパック包装体を製造できる製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
[1] ブリスターパック包装体の製造方法であって、
前記ブリスターパック包装体は、蓋材及び底材がヒートシールされて構成されており、
前記蓋材及び底材が熱可塑性樹脂を含み、
前記製造方法は、一対のロールの間を、前記蓋材及び底材を通過させることで、前記蓋材及び底材をヒートシールするヒートシール工程を有し、
前記一対のロールは、前記蓋材及び底材を加熱可能な第1ロールと、第2ロールと、を備え、前記第1ロールのロール面と、前記第2ロールのロール面と、が対向しており、
前記ヒートシール工程において、加熱した前記第1ロールと、前記第2ロールと、の間に対して、前記底材を前記第2ロール側から供給するとともに、前記蓋材を、前記第1ロールの前記ロール面に接触させながら、前記第1ロール側から供給することによって、前記蓋材を予熱してから前記底材とヒートシールする、ブリスターパック包装体の製造方法。
[2] 前記第1ロールのロール面における外周の長さをLとし、
前記蓋材及び底材のヒートシールまでに、前記蓋材の前記第1ロールの前記ロール面と接触する領域の長さをAとしたとき、
前記ヒートシール工程において、前記AをL/16~L/2に調節する、[1]に記載のブリスターパック包装体の製造方法。
[3] 前記ヒートシール工程において、前記蓋材及び底材のヒートシール温度を、前記蓋材が含む前記熱可塑性樹脂の融点以下とする、[1]又は[2]に記載のブリスターパック包装体の製造方法。
[4] 前記ヒートシール工程において、前記蓋材及び底材のヒートシール時間を、1秒以下とする、[1]~[3]のいずれか一項に記載のブリスターパック包装体の製造方法。
[5] 前記底材が含む前記熱可塑性樹脂と、前記蓋材が含む前記熱可塑性樹脂が、同種の樹脂である、[1]~[4]のいずれか一項に記載のブリスターパック包装体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、樹脂を含む蓋材と、樹脂を含む底材を用い、蓋材を溶融させることなく、蓋材と底材とのシール強度が十分に高いブリスターパック包装体を製造できる製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る製造方法の適用対象である、ブリスターパック包装体の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すブリスターパック包装体のII-II線における断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るブリスターパック包装体の製造方法の一例を説明するための模式図である。
【
図4】
図3における、第1ロールと蓋材との接触状態を、拡大して示す模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るブリスターパック包装体の製造方法の他の例を説明するための模式図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るブリスターパック包装体の製造方法で用いるための蓋材の一例を模式的に示す断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るブリスターパック包装体の製造方法で用いるための蓋材の他の例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<<ブリスターパック包装体の製造方法>>
本発明の一実施形態に係るブリスターパック包装体の製造方法は、蓋材及び底材がヒートシールされて構成されたブリスターパック包装体の製造方法であって、前記蓋材及び底材が熱可塑性樹脂を含み、前記製造方法は、一対のロールの間を、前記蓋材及び底材を通過させることで、前記蓋材及び底材をヒートシールするヒートシール工程を有し、前記一対のロールは、前記蓋材及び底材を加熱可能な第1ロールと、第2ロールと、を備え、前記第1ロールのロール面と、前記第2ロールのロール面と、が対向しており、前記ヒートシール工程において、加熱した前記第1ロールと、前記第2ロールと、の間に対して、前記底材を前記第2ロール側から供給するとともに、前記蓋材を、前記第1ロールの前記ロール面に接触させながら、前記第1ロール側から供給することによって、前記蓋材を予熱してから前記底材とヒートシールする。
【0014】
本実施形態の製造方法によれば、このように、加熱した第1ロールのロール面によって蓋材を予熱してから、蓋材を底材とヒートシールすることによって、蓋材(蓋材中の熱可塑性樹脂)を溶融させることなく、蓋材と底材とのシール強度が十分に高いブリスターパック包装体を製造できる。
【0015】
本実施形態の製造方法の適用対象であるブリスターパック包装体で、特に好ましいものとしては、例えば、カプセル若しくは錠剤等の医薬品、又は粒状の食品等の、固形剤を収納物とするプレススルーパッケージ(PTP)包装体が挙げられる。
【0016】
本実施形態の製造方法においては、蓋材及び底材をヒートシールするための前記一対のロールとして、ブリスターパック包装体の製造に利用可能な公知のロールを使用できる。
【0017】
以下、図面を参照しながら、本実施形態のブリスターパック包装体の製造方法について、説明する。
以降の説明で用いる図は、本発明の特徴を判り易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0018】
まず、本実施形態の製造方法の適用対象であるブリスターパック包装体について、説明する。
図1は、本実施形態におけるブリスターパック包装体の一例を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示すブリスターパック包装体のII-II線における断面図である。
なお、
図2以降の図においては、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0019】
ここに示すブリスターパック包装体1は、蓋材11と底材12を備えて構成されている。
蓋材11及び底材12は、いずれも熱可塑性樹脂を含む。
【0020】
底材12には、その一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)12a側に突出し、その他方の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)12bに開口部を有する凹部121が、複数個設けられている。ブリスターパック包装体1において、底材12は、その第2面12bを蓋材11側に向けて配置されており、その第1面12aは、ブリスターパック包装体1の一方の最表面となっている。
【0021】
一方、蓋材11の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)11aは、ブリスターパック包装体1の他方の最表面となっており、ブリスターパック包装体1において、蓋材11は、その第2面11bを底材12側に向けて配置されている。
【0022】
ブリスターパック包装体1においては、蓋材11の第2面11bと、底材12の第2面12bのうち、凹部121が設けられていない領域と、がシールされており、底材12の第2面12bのうち、凹部121が設けられている領域は、蓋材11の第2面11bとシールされておらず、この領域では、底材12の第2面12bと、蓋材11の第2面11bと、によって、収納部19が形成されている。
ブリスターパック包装体1の収納部19には、収納物8が密封収納される。
【0023】
本明細書においては、ブリスターパック包装体の収納部(ブリスターパック包装体1の場合には、収納部19)を形成する、底材の領域を、底材の第2面側(底材12の場合には、その第2面12b側)から見たときには、「凹部」と称することがあり、底材の第1面側(底材12の場合には、その第1面12a側)から見たときには、「凸部」と称することがある。
【0024】
底材12の第1面12a側には、スリット129が形成されている。
より具体的には、底材12においては、複数本のスリット129が、ブリスターパック包装体1の幅方向に、互いに平行に形成されている。そして、それぞれのスリット129は、ブリスターパック包装体1の幅方向の全域に形成されている。スリット129が形成されていることで、収納物8の収納部19への特定収納数ごとに、ブリスターパック包装体1が容易に分割可能となっており、ブリスターパック包装体1の利便性が高くなっている。
【0025】
蓋材11の厚さは、特に限定されないが、例えば、8~100μmであることが好ましい。
底材12の厚さは、特に限定されないが、例えば、100~400μmであることが好ましい。
【0026】
蓋材11と底材12の構成材料については、後ほど詳細に説明する。
【0027】
次に、本実施形態のブリスターパック包装体の製造方法について、説明する。
図3は、本実施形態のブリスターパック包装体の製造方法の一例を説明するための模式図である。ここでは、
図1~
図2に示すブリスターパック包装体1を製造するために、蓋材110及び底材120をヒートシールすることによって、ブリスターパック包装体10を製造する場合を例に挙げて説明する。
【0028】
ブリスターパック包装体1は、これよりもサイズが大きいブリスターパック包装体10に対して、スリット129の形成と、目的とする大きさへの切断と、を行うことで得られる。すなわち、ブリスターパック包装体10は、本実施形態の適用対象であるブリスターパック包装体であるとともに、目的とする最終形態のブリスターパック包装体を得るための中間包装体でもある。すなわち、蓋材110は、その大きさが異なる点を除けば、
図1~
図2に示す蓋材11と同じであってよく、底材120は、その大きさが異なる点と、スリット129が形成されていない点と、を除けば、
図1~
図2に示す底材12と同じであってよい。
【0029】
前記ヒートシール工程においては、蓋材110及び底材120をヒートシールするために、
図3に示すようなシールロール9を使用できる。シールロール9は、公知のものであってよい。
【0030】
シールロール9は、一対のロールとして、蓋材110及び底材120を加熱可能な第1ロール91と、第2ロール92と、を備えて、構成されている。シールロール9中のシール部位とその近傍領域においては、第1ロール91のロール面91aと、第2ロール92のロール面92aとは、対向している。そして、これらロール面(第1ロール91のロール面91aと、第2ロール92のロール面92a)の間の領域のうち、これらロール面の間の距離が最も近い領域と、その近傍領域と、において、これらロール面の間を通過するシート又はフィルム同士が、第1ロール91のロール面91aによって加熱されつつ、これらロール面によって加圧され、ヒートシール可能となっている。
【0031】
第1ロール91は、その内部に、第1ロール91のロール面91aに接触するシート又はフィルムを加熱するための加熱機構(例えば熱源)を備えており、加圧手段としてだけでなく、加熱手段としても機能する。
【0032】
第1ロール91のロール面91aには、シールロール9に供給された底材120のうち、凹部121が設けられていない領域に対して、蓋材110を優先して押圧するための凸状部が設けられていてもよい。前記凸状部を設けることで、底材120の凹部121が設けられていない領域と、蓋材110と、のヒートシール時のシール強度がより高くなる。例えば、底材120において、凹部121が、互いに直交する2方向に整列して配置されている場合には、第1ロール91のロール面91aに設けられている凸状部の全体の形状は、格子状であることが好ましい。
【0033】
第2ロール92は、その内部に、第1ロール91及び第2ロール92の間を通過する蓋材110及び底材120の温度を調節するための温度調節機構を備えていてもよいし、備えていなくてもよい。前記温度調節機構は、加熱及び冷却がともに可能であってもよいし、加熱及び冷却のいずれか一方のみが可能であってもよく、少なくとも冷却可能であることが好ましい。
【0034】
蓋材110及び底材120のヒートシール時には、第1ロール91のロール面91aは、蓋材110の第1面11aと接触する。
一方、蓋材110及び底材120のヒートシール時には、第2ロール92のロール面92aは、底材120と接触する。このとき、底材120は、その第1面12aを第2ロール92側に向けて、第1ロール91と第2ロール92との間に供給される。そのため、第2ロール92のロール面92aには、底材120の凸部121を収納することによって、底材120の第1面12aのうち、凸部121が設けられていない領域が、第2ロール92のロール面92aと接触可能とするための、凹状の凸部収納部が形成されている。前記凸部収納部は、公知のものでよく、底材120の凸部121を収納可能であれば、その大きさ及び形状は、特に限定されない。例えば、前記凸部収納部は、底材120の凸部121の外形に対して相似形であり、かつ底材120の凸部121の大きさに対して、僅かに大きくてもよい。
【0035】
蓋材110及び底材120のヒートシール時には、蓋材110の第2面11bと、底材120の第2面12bと、が接触し、これらの面同士がヒートシールされる。蓋材110及び底材120のヒートシール前の段階で、底材120の凹部121には、包装対象の目的物を収納する。
【0036】
底材120の凹部121に前記目的物を収納した後は、底材120を第1ロール91と第2ロール92との間に供給する前の少なくとも一部の段階で、底材120の第2面12b上に、凹部121内の目的物(収納物)の飛散を防止するための遮蔽物を配置してもよい。このようにすることによって、凹部121に目的物を収納してから、蓋材110及び底材120をヒートシールするまでの間に、凹部121内の目的物の飛散を防止できる。
【0037】
前記ヒートシール工程においては、一対のロール、すなわち、第1ロール91及び第2ロール92の間を、蓋材110及び底材120を通過させることで、蓋材110及び底材120をヒートシールする。
このとき、加熱した第1ロール91と、第2ロール92と、の間に対して、底材120を第2ロール92側から供給するとともに、蓋材110を、第1ロール91のロール面91aに接触させながら、第1ロール91側から供給する。
図3においては、蓋材110の供給方向を矢印D
11で示し、底材120の供給方向を矢印D
12で示している。また、第1ロール91の回転方向を矢印R
91で示し、第2ロール92の回転方向を矢印R
92で示している。
【0038】
第1ロール91と、第2ロール92と、の間に対して、底材120を第2ロール92側から供給するとは、底材120を蓋材110よりも第2ロール92寄り(第2ロール92に近い位置)に配置して、ヒートシール時には、蓋材110ではなく底材120が第2ロール92に接触するように、第1ロール91と、第2ロール92と、の間に対して、底材120を供給することを意味する。
第1ロール91と、第2ロール92と、の間に対して、蓋材110を第1ロール91側から供給するとは、蓋材110を底材120よりも第1ロール91寄り(第1ロール91に近い位置)に配置して、ヒートシール時には、底材120ではなく蓋材110が第1ロール91に接触するように、第1ロール91と、第2ロール92と、の間に対して、蓋材110を供給することを意味する。
【0039】
ヒートシール工程においては、上記のように、蓋材110及び底材120のヒートシール前に、あらかじめ蓋材110を第1ロール91のロール面91aに接触させることで、蓋材110を第1ロール91によって予熱(あらかじめ加熱)する。これにより、ヒートシール直前の蓋材110の温度は、予熱しなかった場合よりも高くなっており、この状態で蓋材110を底材120とヒートシールすることによって、従来よりも低いシール温度でヒートシールでき、蓋材110が樹脂を含むにも関わらず、蓋材110を溶融させることなく、蓋材110と底材120を、十分に高いシール強度でシールできる。すなわち、得られたブリスターパック包装体10においては、蓋材110の溶融の痕跡は認められず、蓋材110と底材120とのシール強度が十分に高くなっている。
【0040】
図4は、
図3における、第1ロールと蓋材との接触状態を、拡大して示す模式図である。
第1ロール91のロール面91aにおける外周の長さをLとし、蓋材110及び底材120のヒートシールまでに、蓋材110の、第1ロール91のロール面91aと接触する領域の長さをAとしたとき、ヒートシール工程においては、前記AをL/16以上に調節することが好ましい。AをL/16以上とすることで、蓋材110の予熱効果がより高くなり、ブリスターパック包装体10における、蓋材110と底材120とのシール強度が、より高くなる。
このような効果がより高くなる点では、ヒートシール工程においては、前記AをL/12以上、L/8以上、及びL/6以上のいずれかに調節してもよい。
【0041】
前記Aは、より具体的には、ヒートシール工程において、蓋材110の第1面11aのうち、第1ロール91のロール面91aと接触している領域での、蓋材110の供給方向D11における長さであり、さらに換言すると、蓋材110の長手方向における、蓋材110の、第1ロール91のロール面91aとの接触領域の長さである。
【0042】
一方、ヒートシール工程においては、前記AをL/2以下に調節することが好ましい。AをL/2以下とすることで、蓋材110の過剰な予熱を抑制できる。
このような効果がより高くなる点では、ヒートシール工程においては、前記AをL/3以下、及びL/4以下のいずれかに調節してもよい。
【0043】
ヒートシール工程においては、前記Aを、上述のいずれかの下限値と、上述のいずれかの上限値と、を任意に組わせて設定される数値範囲内に、適宜調節することが好ましい。
ヒートシール工程においては、例えば、前記AをL/16~L/2に調節することがより好ましい。
【0044】
ヒートシール工程においては、
図3に示すように、蓋材110及び底材120のシールロール9への供給状態を、第1ロール91の中心軸の方向と同じ方向から、シールロール9を平面視し、第1ロール91の中心軸と、第2ロール92の中心軸と、を結ぶ第1線分、並びに、第1ロール91の蓋材110と最初に接触する接触部と、第1ロール91の中心軸と、を結ぶ第2線分、をそれぞれ定義したとき、前記第1線分と前記第2線分との為す角度θ(0°<θ)の大きさを調節することによって、前記Aを調節できる。より具体的には、前記θを大きくするほど、前記Aを長くできる。
前記θの上限値は、第2ロール92の大きさに依存するが、θは240°以下であることが好ましい。
典型的には、θが22.5°以上、30°以上、45°以上、及び60°以上の場合には、それぞれ、AはL/16以上、L/12以上、L/8以上、及びL/6以上となる。θが180°以下、120°以下、及び90°以下の場合には、それぞれ、AはL/2以下、L/3以下、及びL/4以下となる。
【0045】
図5は、本実施形態のブリスターパック包装体の製造方法の他の例を説明するための模式図である。
ここでは、前記第1線分と前記第2線分との為す角度θを、
図3に示す場合よりも大きくすることで、蓋材110の第1面11aと、第1ロール91のロール面91aと、の接触状態を、
図3に示す状態とは変化させた場合について示している。より具体的には、
図5に示す状態では、
図3に示す状態よりも、前記Aが長くなっており、そのため、蓋材110の予熱効果が、
図3に示す場合よりもさらに高くなり、ブリスターパック包装体10における、蓋材110と底材120とのシール強度が、さらに高くなる。
【0046】
ヒートシール工程においては、蓋材110及び底材120のヒートシール温度を、蓋材110が含む前記熱可塑性樹脂の融点以下とするか、又は、前記熱可塑性樹脂の軟化点以下とすることが好ましく、前記熱可塑性樹脂の融点以下とすることがより好ましい。このようにすることで、蓋材110及び底材120のヒートシール時において、蓋材110の溶融がより高度に抑制される。
蓋材110が1種の前記熱可塑性樹脂を含む場合に、このように蓋材110及び底材120のヒートシール温度を調節することが好ましい。
【0047】
蓋材110が2種以上の前記熱可塑性樹脂を含む場合には、ヒートシール工程においては、蓋材110及び底材120のヒートシール温度を、蓋材110中のすべての前記熱可塑性樹脂の融点以下とするか、又は、蓋材110中のすべての前記熱可塑性樹脂の軟化点以下としてもよい。そして、蓋材110及び底材120のヒートシール時において、蓋材110の溶融が抑制される効果が、特に高くなる点では、蓋材110及び底材120のヒートシール温度を、蓋材110中での量(質量部)が最も多い前記熱可塑性樹脂の融点以下又は軟化点以下とすることが好ましく、前記融点以下とすることがより好ましい。
【0048】
蓋材110が、その中での量(質量部)が最も多い前記熱可塑性樹脂を2種以上含む場合には、ヒートシール工程においては、蓋材110及び底材120のヒートシール温度を、蓋材110中の前記2種以上の熱可塑性樹脂の融点のうち、最も高い融点以下とするか、又は、蓋材110中の前記2種以上の熱可塑性樹脂の軟化点のうち、最も高い軟化点以下とすることが好ましく、最も高い融点以下とすることがより好ましい。このようにすることで、蓋材110及び底材120のヒートシール時において、蓋材110の溶融が抑制される効果が、特に高くなる。
【0049】
ヒートシール工程においては、蓋材110及び底材120のヒートシール温度を、蓋材110が含む前記熱可塑性樹脂の融点以下とする場合、前記ヒートシール温度を、例えば、前記熱可塑性樹脂の融点よりも2℃以上低い温度としてもよいし、前記熱可塑性樹脂の融点よりも4℃以上低い温度としてもよい。
一方、前記ヒートシール温度の下限値は、前記熱可塑性樹脂の融点よりも30℃低い温度とすることが好ましく、前記熱可塑性樹脂の融点よりも20℃低い温度とすることがより好ましく、例えば、前記熱可塑性樹脂の融点よりも10℃低い温度としてもよい。前記ヒートシール温度の下限値をこのようにすることで、ブリスターパック包装体10における、上記蓋材110と底材120との高いシール強度を実現しつつ、蓋材110の破断等の破損を抑制する高い効果が得られる。
蓋材110が1種の前記熱可塑性樹脂を含む場合に、このように蓋材110及び底材120のヒートシール温度を調節することが好ましい。
【0050】
蓋材110が2種以上の前記熱可塑性樹脂を含む場合には、ヒートシール工程においては、蓋材110及び底材120のヒートシール温度を、蓋材110中での量(質量部)が最も多い前記熱可塑性樹脂の融点よりも2℃以上低い温度としてもよいし、前記融点よりも4℃以上低い温度としてもよい。
一方、前記ヒートシール温度の下限値は、蓋材110中での量(質量部)が最も多い前記熱可塑性樹脂の融点よりも30℃低い温度とすることが好ましく、前記融点よりも20℃低い温度とすることがより好ましく、例えば、前記融点よりも10℃低い温度としてもよい。前記ヒートシール温度の下限値をこのようにすることで、ブリスターパック包装体10における、上記蓋材110と底材120との高いシール強度を実現しつつ、蓋材110の破断等の破損を抑制する、より高い効果が得られる。
【0051】
蓋材110が、その中での量(質量部)が最も多い前記熱可塑性樹脂を2種以上含む場合には、ヒートシール工程においては、蓋材110及び底材120のヒートシール温度を、蓋材110中の前記2種以上の熱可塑性樹脂の融点のうち、最も高い融点よりも2℃以上低い温度としてもよいし、前記融点よりも4℃以上低い温度としてもよい。
一方、前記ヒートシール温度の下限値は、蓋材110中の前記2種以上の熱可塑性樹脂の融点のうち、最も高い融点よりも30℃低い温度とすることが好ましく、前記融点よりも20℃低い温度とすることがより好ましく、例えば、前記融点よりも10℃低い温度としてもよい。前記ヒートシール温度の下限値をこのようにすることで、ブリスターパック包装体10における、上記蓋材110と底材120との高いシール強度を実現しつつ、蓋材110の破断等の破損を抑制する、より高い効果が得られる。
【0052】
蓋材110が含む前記熱可塑性樹脂が、融点を示さない非晶性樹脂である場合には、前記ヒートシール温度は、蓋材110と底材120とのシール強度が高くなるとともに、蓋材110の破断等の破損が避けられるように、適宜調節すればよい。
【0053】
ヒートシール工程における前記ヒートシール温度は、少なくとも第1ロール91の温度(加熱温度)の調節によって調節でき、例えば、第1ロール91及び第2ロール92の両方の温度(加熱温度)の調節によって調節してもよいし、第1ロール91の温度の調節のみによって調節してもよい。
【0054】
ヒートシール工程における前記ヒートシール温度は、例えば、110℃以上、120℃以上、及び130℃以上のいずれかとすることができ、例えば、180℃以下、170℃以下、及び160℃以下のいずれかとすることができる。
【0055】
ヒートシール工程においては、蓋材110及び底材120のヒートシール時間を、1秒以下とすることが好ましい。ヒートシール時間をこのようにすることで、蓋材110及び底材120のヒートシールの効率を過度に低下させることなく、蓋材110及び底材120のシール強度を、より高くできる。
蓋材110及び底材120のシール強度を、より高くできる点では、ヒートシール工程においては、蓋材110及び底材120のヒートシール時間を、0.001秒以上とすることが好ましく、0.003秒以上とすることがより好ましく、0.005秒以上とすることがさらに好ましい。
ヒートシール工程における前記ヒートシール時間は、例えば、シールロール9に対する、蓋材110及び底材120の供給速度の調節によって調節できる。
【0056】
ヒートシール工程においては、蓋材110及び底材120のヒートシール温度を、蓋材110が含む前記熱可塑性樹脂の融点以下とするか、又は、前記熱可塑性樹脂の軟化点以下とする場合に、蓋材110及び底材120のヒートシール時間を、上記の数値範囲とすることが好ましい。蓋材110及び底材120のヒートシール温度とヒートシール時間をこのように設定することで、ヒートシール工程において、蓋材110の溶融がより高度に抑制される効果と、蓋材110及び底材120のヒートシールの効率を過度に低下させることなく、蓋材110及び底材120のシール強度を高くできる効果が、バランスよく、顕著に得られる。
【0057】
ヒートシール工程においては、蓋材110及び底材120のヒートシール時に、これらに加える圧力は、十分なシール強度が得られる限り、特に限定されないが、9N/mm以上であることが好ましく、13N/mm以上であることがより好ましい。前記ヒートシール時の圧力が前記下限値以上であることで、ブリスターパック包装体10における、蓋材110と底材120とのシール強度が、より高くなる。
一方、前記ヒートシール時の圧力は、46N/mm以下であることが好ましく、19N/mm以下であることがより好ましい。前記ヒートシール時の圧力が前記上限値以下であることで、過剰な加圧が抑制される。
【0058】
本明細書においては、圧力単位「N/mm」は、圧力を加えている対象物において、単位長さあたりに加えられている圧力を意味し、例えば、長尺の対象物の場合には、単位幅あたりに加えられている圧力であってよい。
【0059】
ヒートシール工程においては、蓋材110及び底材120のヒートシール時に、これらに加える圧力を、上記のように、好ましくは9N/mm以上、より好ましくは13N/mm以上とするためには、ヒートシール時のシリンダー圧力は、0.2MPa以上であることが好ましく、0.3MPa以上であることがより好ましい。
一方、前記圧力を、上記のように、好ましくは46N/mm以下、より好ましくは19N/mm以下とするためには、ヒートシール時のシリンダー圧力は、1.0MPa以下であることが好ましく、0.8MPa以下であることがより好ましい。
後述する実施例においては、蓋材及び底材のヒートシール時に、これらに加える圧力と、ヒートシール時のシリンダー圧力は、このような条件を満たす。
【0060】
ヒートシール工程においては、蓋材110を、これに加えられる張力を調節するためのロール(いわゆるダンサーロール)を介してから、第1ロール91のロール面91aに接触させて、シールロール9に供給することが好ましい。このようにすることで、前記ロールによって蓋材110に適切な荷重を加えることができ、蓋材110をより安定してシールロール9に供給できる。
【0061】
このとき、前記ロールによって蓋材110に加えられる荷重は、0.01N/mm以上であることが好ましく、0.05N/mm以上であることがより好ましく、0.1N/mm以上であることがさらに好ましい。前記荷重が前記下限値以上であることで、ブリスターパック包装体10を構成している蓋材110にシワが入ることが高度に抑制される。
一方、前記ロールによって蓋材110に加えられる荷重は、0.3N/mm以下であることが好ましく、0.2N/mm以下であることがより好ましく、0.15N/mm以下であることがさらに好ましい。前記荷重が前記上限値以下であることで、蓋材110の破断等の破損が抑制される効果が高くなる。
【0062】
蓋材110及び底材120のヒートシールによって得られたブリスターパック包装体10は、そのまま目的とする用途に用いることができる。そして、底材120の凹部121を備えて構成された収納部19の特定数ごとに、ブリスターパック包装体10を分割するためのスリット(
図1~
図2に示すスリット129)を形成し、ブリスターパック包装体10を目的とする大きさへ切断することで、
図1~
図2に示すブリスターパック包装体1等の、異なるサイズのブリスターパック包装体が得られる。
【0063】
本実施形態の製造方法は、目的に応じて、前記ヒートシール工程以外に、1種又は2種以上の他の工程を有していてもよい。前記他の工程としては、例えば、上記のような、ブリスターパック包装体を分割するためのスリットを形成する工程、ブリスターパック包装体を目的とする大きさへ切断する工程等が挙げられる。
【0064】
<蓋材>
次に、本実施形態のブリスターパック包装体の製造方法で用いる蓋材について、説明する。
前記蓋材は熱可塑性樹脂を含む。すなわち、蓋材は、前記熱可塑性樹脂を含む蓋材用樹脂フィルムを備えて構成されている。
従来のブリスターパック包装体における蓋材は、通常、アルミニウム製シートであるが、本実施形態においては、前記熱可塑性樹脂を含む底材とともに、前記熱可塑性樹脂を含む蓋材を用いることで、製造されたブリスターパック包装体、又はその中の蓋材の、再利用適性が高い。
【0065】
前記蓋材及び蓋材用樹脂フィルムが含む前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル等が挙げられる。
【0066】
前記ポリオレフィン系樹脂は、オレフィンから誘導された構成単位を有していれば、特に限定されず、1種のオレフィンの単独重合体であってもよいし、2種以上のオレフィンの共重合体であってもよい。
【0067】
前記オレフィンの単独重合体としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン(PE);ポリプロピレン(ホモポリプロピレン、hPP)等が挙げられる。
【0068】
本明細書において、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及びメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)の密度は、0.91g/cm3以上、0.94g/cm3未満である。
中密度ポリエチレン(MDPE)の密度は、0.94g/cm3以上、0.95g/cm3未満である。
高密度ポリエチレン(HDPE)の密度は、0.95g/cm3以上である。
【0069】
前記オレフィンの共重合体としては、例えば、エチレンから誘導された構成単位を少なくとも有するエチレン系共重合体と、プロピレンから誘導された構成単位を少なくとも有するプロピレン系共重合体と、が挙げられる。
【0070】
前記エチレン系共重合体は、エチレンから誘導された構成単位と、エチレン以外のモノマーから誘導された構成単位と、を有する。ただし、エチレンから誘導された構成単位と、プロピレンから誘導された構成単位と、を有するオレフィンの共重合体のうち、プロピレンから誘導された構成単位の数が、エチレンから誘導された構成単位の数よりも多い共重合体は、プロピレン系共重合体に分類する。
【0071】
エチレン系共重合体としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン-ビニルアルコール-酢酸ビニル共重合体(別名:エチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン化物、本明細書においては「EVA部分ケン化物」と称することがある)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸エチル-無水マレイン酸共重合体(E-EA-MAH)、アイオノマー(ION)等が挙げられる。
前記アイオノマーとしては、例えば、エチレンと少量のアクリル酸又はメタクリル酸との共重合体が、その中の酸部分と、金属イオンと、の塩形成によって、イオン橋かけ構造を有している樹脂が挙げられる。
【0072】
前記プロピレン系共重合体は、プロピレンから誘導された構成単位と、プロピレン以外のモノマーから誘導された構成単位と、を有する。
プロピレン系共重合体としては、例えば、プロピレン-エチレンランダム共重合体(別名:ポリプロピレンランダムコポリマー(rPP))、プロピレン-エチレンブロック共重合体(別名:ポリプロピレンブロックコポリマー(bPP))等が挙げられる。
【0073】
前記ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンフラノエート(PEF、別名:ポリエチレンフランジカルボキシレート)等が挙げられる。
【0074】
蓋材及び蓋材用樹脂フィルムが含む前記熱可塑性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0075】
蓋材及び底材のヒートシール時に、蓋材(換言すると蓋材用樹脂フィルム)が溶融することなく、蓋材及び底材のシール強度がより高くなる点では、蓋材及び蓋材用樹脂フィルムが含む前記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリエチレンテレフタレートからなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0076】
蓋材及び蓋材用樹脂フィルムは、前記熱可塑性樹脂以外に、他の成分を含んでいてもよい。すなわち、蓋材は、前記熱可塑性樹脂と、前記他の成分と、を含む蓋材用樹脂フィルムを備えて構成されていてもよい。
【0077】
蓋材及び蓋材用樹脂フィルムが含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0078】
前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
樹脂成分である前記他の成分は、前記熱可塑性樹脂に該当しない樹脂である。
樹脂成分である前記他の成分は、1種のモノマーの重合体である単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーの重合体である共重合体であってもよい。
【0079】
非樹脂成分である前記他の成分としては、例えば、当該分野で公知の添加剤が挙げられる。
前記添加剤としては、例えば、防曇剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、減粘剤、増粘剤、熱安定化剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0080】
前記蓋材用樹脂フィルムにおいて、蓋材用樹脂フィルムの総質量に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量の割合([蓋材用樹脂フィルムの熱可塑性樹脂の含有量(質量部)]/[蓋材用樹脂フィルムの総質量(質量部)]×100)は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、例えば、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、蓋材及び蓋材用樹脂フィルムが熱可塑性樹脂を含んでいることにより得られる効果が、より高くなる。
一方、前記割合は、100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述する蓋材用樹脂フィルム形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、熱可塑性樹脂の含有量の割合([蓋材用樹脂フィルム形成用組成物の熱可塑性樹脂の含有量(質量部)]/[蓋材用樹脂フィルム形成用組成物の常温で気化しない成分の総含有量(質量部)]×100)と同じである。
【0081】
本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0082】
前記蓋材用樹脂フィルムは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。蓋材用樹脂フィルムが複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0083】
本明細書においては、前記蓋材用樹脂フィルムの場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0084】
前記蓋材用樹脂フィルムの厚さは、特に限定されないが、例えば、8~100μmであることが好ましく、10~60μmであってもよい。
ここで、「蓋材用樹脂フィルムの厚さ」とは、蓋材用樹脂フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる蓋材用樹脂フィルムの厚さとは、蓋材用樹脂フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0085】
蓋材は、前記蓋材用樹脂フィルムのみを備えて構成されていてもよい(前記蓋材用樹脂フィルムからなるものであってもよい)し、前記蓋材用樹脂フィルムと、それ以外の他の層と、を備えて構成されていてもよい。
前記他の層は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合には、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0086】
前記他の層は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できるが、接着性樹脂を含むシーラント層であることが好ましい。
【0087】
前記シーラント層が含む前記接着性樹脂は、特に限定されない。
前記接着性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、エラストマー、酸変性ポリオレフィン(酸性基又は酸性基が無水物化された基を有する酸変性ポリオレフィン)、酸変性エラストマー(酸性基又は酸性基が無水物化された基を有するエラストマー)等が挙げられる。
【0088】
シーラント層が含む前記接着性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0089】
蓋材及び底材のヒートシール時に、蓋材(換言すると蓋材用樹脂フィルム及びシーラント層)が溶融することなく、蓋材及び底材のシール強度がより高くなる点では、シーラント層が含む前記接着性樹脂は、ポリビニルアルコール及びエラストマーからなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0090】
シーラント層は、接着性樹脂以外に、他の成分を含んでいてもよい。すなわち、蓋材は、接着性樹脂と、前記他の成分と、を含むシーラント層を備えて構成されていてもよい。
【0091】
シーラント層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0092】
シーラント層が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
シーラント層が含む樹脂成分である前記他の成分は、接着性樹脂に該当しない樹脂である。
シーラント層が含む樹脂成分である前記他の成分は、1種のモノマーの重合体である単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーの重合体である共重合体であってもよい。
【0093】
シーラント層が含む非樹脂成分である前記他の成分としては、例えば、蓋材用樹脂フィルムが含む前記他の成分として挙げたものと同様の添加剤が挙げられる。
【0094】
シーラント層において、シーラント層の総質量に対する、前記接着性樹脂の含有量の割合([シーラント層の接着性樹脂の含有量(質量部)]/[シーラント層の総質量(質量部)]×100)は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、例えば、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、蓋材及び底材のシール強度がより高くなる。
一方、前記割合は、100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述するシーラント層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、接着性樹脂の含有量の割合([シーラント層形成用組成物の接着性樹脂の含有量(質量部)]/[シーラント層形成用組成物の常温で気化しない成分の総含有量(質量部)]×100)と同じである。
【0095】
シーラント層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。シーラント層が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
シーラント層は、1層からなるものが好ましい。
【0096】
シーラント層の厚さは、特に限定されないが、例えば、2~30μmであることが好ましい。
ここで、「シーラント層の厚さ」とは、シーラント層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなるシーラント層の厚さとは、シーラント層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0097】
蓋材において、蓋材の総質量に対する、同種の熱可塑性樹脂の含有量の割合([蓋材の同種の熱可塑性樹脂の含有量(質量部)]/[蓋材の総質量(質量部)]×100)は、90質量%以上であることが好ましく、93質量%以上であることがより好ましく、96質量%以上であることがさらに好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、蓋材のモノマテリアル化(蓋材を単一の素材で構成すること)を実現でき、蓋材を容易に再利用できる。
蓋材において、蓋材の総質量に対する、同種の熱可塑性樹脂の含有量の割合は、100質量%以下である。
【0098】
本明細書において、熱可塑性樹脂の場合に限らず、「同種の樹脂」とは、共通の構成単位を有する樹脂同士を比較したとき、どちらの樹脂においても、構成単位の全量(モル)に対する、共通の構成単位の量(モル)の割合が、20モル%以上であるものを意味する。
例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸エチル-無水マレイン酸共重合体(E-EA-MAH)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-ビニルアルコール-酢酸ビニル共重合体(EVA部分ケン化物)等は、すべて、構成単位の全量(モル)に対する、エチレンから誘導された構成単位の量(モル)の割合が、20モル%以上であるため、同種であるとする。一方、例えば、プロピレン-エチレンランダム共重合体及びプロピレン-エチレンブロック共重合体等のうち、構成単位の全量(モル)に対する、エチレンから誘導された構成単位の量(モル)の割合が、20モル%未満であるものは、上述の低密度ポリエチレン等とは、同種ではないとする。
例えば、ポリプロピレン(hPP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体(ポリプロピレンランダムコポリマー、rPP)、プロピレン-エチレンブロック共重合体(ポリプロピレンブロックコポリマー、bPP)等は、すべて、構成単位の全量(モル)に対する、プロピレンから誘導された構成単位の量(モル)の割合が、20モル%以上であるため、同種であるとする。
【0099】
蓋材において、同種の樹脂は、比較対象のどちらの樹脂においても、構成単位の全量(モル)に対する、共通の構成単位の量(モル)の割合が、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上、特に好ましくは50モル%以上であり、例えば、60モル%以上、70モル%以上、及び80モル%以上のいずれかであってもよい。
【0100】
一方、蓋材において、同種の樹脂は、比較対象のどちらの樹脂においても、構成単位の全量(モル)に対する、共通の構成単位の量(モル)の割合は、100モル%以下である。
蓋材において、前記割合は、例えば、20~100モル%、30~100モル%、40~100モル%、50~100モル%、60~100モル%、70~100モル%、及び80~100モル%のいずれかであってもよい。
【0101】
上述の「蓋材の同種の熱可塑性樹脂の含有量(質量部)」とは、蓋材が、前記蓋材用樹脂フィルムのみを備えて構成されている(前記蓋材用樹脂フィルムからなる)場合には、「蓋材用樹脂フィルムの同種の熱可塑性樹脂の含有量(質量部)」であり、蓋材が、前記蓋材用樹脂フィルムと、前記他の層と、を備えて構成されている(前記蓋材用樹脂フィルムと、前記他の層と、からなる)場合には、「蓋材用樹脂フィルムの同種の熱可塑性樹脂の含有量(質量部)と、前記他の層の、蓋材用樹脂フィルムが含む熱可塑性樹脂と同種の熱可塑性樹脂の含有量(質量部)と、の合計量」である。
上述の「蓋材の総質量(質量部)」とは、蓋材が、前記蓋材用樹脂フィルムのみを備えて構成されている場合には、「蓋材用樹脂フィルムの総質量(質量部)」であり、蓋材が、前記蓋材用樹脂フィルムと、前記他の層と、を備えて構成されている場合には、「蓋材用樹脂フィルムの総質量(質量部)と、前記他の層の総質量(質量部)と、の合計量」である。
【0102】
図6は、本実施形態のブリスターパック包装体の製造方法で用いるための蓋材の一例を模式的に示す断面図である。
ここに示す蓋材210は、フィルム状又はシート状であり、蓋材用樹脂フィルム211と、蓋材用樹脂フィルム211の一方の面211b上に設けられたシーラント層212と、を備えて構成されている。
蓋材用樹脂フィルム211の他方の面211aは、蓋材210の一方の面210aと同じであり、シーラント層212の一方の面212bは、蓋材210の他方の面210bと同じである。
【0103】
図3~
図4に示す蓋材110が、
図6に示す蓋材210である場合には、蓋材110の第2面11bは、蓋材210の前記他方の面210bと同じであり、蓋材110の第1面11aは、蓋材210の前記一方の面210aと同じである。
【0104】
図6に示す蓋材210は、シーラント層212を備えておらず、蓋材用樹脂フィルム211からなるものであってもよい。
図7は、このような、本実施形態のブリスターパック包装体の製造方法で用いるための蓋材の他の例を模式的に示す断面図である。
図7に示す蓋材310は、フィルム状又はシート状であり、蓋材用樹脂フィルム311からなる。
蓋材用樹脂フィルム311の一方の面311aは、蓋材310の一方の面310aと同じであり、蓋材用樹脂フィルム311の他方の面311bは、蓋材310の他方の面310bと同じである。
【0105】
図3~
図4に示す蓋材110が、
図7に示す蓋材310である場合には、蓋材110の第2面11bは、蓋材310の前記他方の面310bと同じであり、蓋材110の第1面11aは、蓋材310の前記一方の面310aと同じである。
【0106】
<<蓋材の製造方法>>
前記蓋材のうち、1層の蓋材用樹脂フィルムからなる蓋材(例えば、
図7に示す蓋材310のうち、1層からなる蓋材310)は、例えば、蓋材用樹脂フィルムの形成材料となる樹脂又は樹脂組成物等を押出し成形することにより、製造できる。
前記蓋材のうち、2層以上の蓋材用樹脂フィルムからなる蓋材、及び、1層又は2層以上の蓋材用樹脂フィルムと、1層又は2層以上の前記他の層と、を備えた蓋材など、2層以上の層を備えた蓋材(例えば、
図6に示す蓋材210)は、例えば、数台の押出機を用いて、各層の形成材料となる樹脂又は樹脂組成物等を溶融押出するフィードブロック法や、マルチマニホールド法等の共押出Tダイ法、空冷式又は水冷式共押出インフレーション法等により、製造できる。
【0107】
前記樹脂組成物を用いる場合には、例えば、2種以上の成分の配合物(ドライブレンド物、非混練物)を、樹脂組成物として押出機へ直接投入してもよいし、2種以上の成分を予め練り合わせた事前混練物を、樹脂組成物として押出機へ投入してもよい。
前記事前混練物は、例えば、2種以上の成分を二軸押出機又はバンバリーミキサー等の装置を用いて、溶融混練することで得られる。
【0108】
2層以上の層を備えた蓋材は、そのうちのいずれか2層以上を構成するための2枚以上のフィルムをあらかじめ別々に作製しておき、接着剤を用いずに、サーマル(熱)ラミネート法等によって貼り合わせて積層し、必要に応じて、これら以外の層を目的とする配置形態となるようにさらに積層することでも、製造できる。
【0109】
蓋材中のいずれかの層の形成材料となる前記樹脂組成物は、形成する層が目的とする成分を、目的とする含有量で含むように、含有成分の種類と含有量を調節して、製造すればよい。例えば、前記樹脂組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、この樹脂組成物から形成された層中の、前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0110】
蓋材用樹脂フィルム(
図6に示す蓋材210においては蓋材用樹脂フィルム211、
図7に示す蓋材310においては蓋材用樹脂フィルム311)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「蓋材用樹脂フィルム形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、前記熱可塑性樹脂と、必要に応じて前記他の成分と、を含有する組成物が挙げられる。前記熱可塑性樹脂と前記他の成分はいずれも、先に説明した成分である。
【0111】
シーラント層(
図6に示す蓋材210においてはシーラント層211)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「シーラント層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、前記接着性樹脂と、必要に応じて前記他の成分と、を含有する組成物が挙げられる。前記接着性樹脂と前記他の成分はいずれも、先に説明した成分である。
【0112】
<底材>
次に、本実施形態のブリスターパック包装体の製造方法で用いる底材について、説明する。
前記底材は熱可塑性樹脂を含む。すなわち、底材は、前記熱可塑性樹脂を含む底材用樹脂フィルムを用いて構成されており、後述するように、底材用樹脂フィルムの成形体である。
【0113】
前記底材及び底材用樹脂フィルムが含む前記熱可塑性樹脂としては、前記蓋材及び蓋材用樹脂フィルムが含む熱可塑性樹脂と同様のもの、すなわち、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル等が挙げられる。
【0114】
従来のブリスターパック包装体における底材としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等のハロゲン化樹脂を主成分として含む底材が汎用されている。
これに対して、本実施形態においては、前記熱可塑性樹脂を含む蓋材とともに、前記熱可塑性樹脂(ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル等)を含む底材を用いることで、製造されたブリスターパック包装体、又はその中の底材の、再利用適性が高い。また、前記ハロゲン化樹脂を用いないことによって、環境負荷を低減できる。
【0115】
底材及び底材用樹脂フィルムが含む前記熱可塑性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0116】
再利用適性が高い樹脂であるという点では、底材及び底材用樹脂フィルムが含む前記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリエチレンテレフタレートからなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0117】
底材及び底材用樹脂フィルムは、前記熱可塑性樹脂以外に、他の成分を含んでいてもよい。すなわち、底材は、前記熱可塑性樹脂と、前記他の成分と、を含む底材用樹脂フィルムを用いて構成されていてもよい。
【0118】
底材及び底材用樹脂フィルムが含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0119】
底材及び底材用樹脂フィルムが含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
底材及び底材用樹脂フィルムが含む樹脂成分である前記他の成分としては、蓋材及び蓋材用樹脂フィルムが含む樹脂成分である前記他の成分と、同様のものが挙げられる。
底材及び底材用樹脂フィルムが含む非樹脂成分である前記他の成分としては、蓋材及び蓋材用樹脂フィルムが含む非樹脂成分である前記他の成分と、同様のものが挙げられる。
【0120】
底材用樹脂フィルムにおいて、底材用樹脂フィルムの総質量に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量の割合([底材用樹脂フィルムの熱可塑性樹脂の含有量(質量部)]/[底材用樹脂フィルムの総質量(質量部)]×100)は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、例えば、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、底材及び底材用樹脂フィルムが熱可塑性樹脂を含んでいることにより得られる効果が、より高くなる。
一方、前記割合は、100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述する底材用樹脂フィルム形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、熱可塑性樹脂の含有量の割合([底材用樹脂フィルム形成用組成物の熱可塑性樹脂の含有量(質量部)]/[底材用樹脂フィルム形成用組成物の常温で気化しない成分の総含有量(質量部)]×100)と同じである。
【0121】
前記底材用樹脂フィルムは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。底材用樹脂フィルムが複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0122】
前記底材用樹脂フィルムの厚さは、特に限定されないが、例えば、100~400μmであることが好ましい。
ここで、「底材用樹脂フィルムの厚さ」とは、底材用樹脂フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる底材用樹脂フィルムの厚さとは、底材用樹脂フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0123】
底材は、前記底材用樹脂フィルムと、それ以外の他の層と、を備えて構成されていてもよい。
前記他の層は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0124】
前記他の層は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
【0125】
底材において、底材の総質量に対する、同種の熱可塑性樹脂の含有量の割合([底材の同種の熱可塑性樹脂の含有量(質量部)]/[底材の総質量(質量部)]×100)は、90質量%以上であることが好ましく、93質量%以上であることがより好ましく、96質量%以上であることがさらに好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、底材のモノマテリアル化(底材を単一の素材で構成すること)を実現でき、底材を容易に再利用できる。
底材において、底材の総質量に対する、同種の熱可塑性樹脂の含有量の割合は、100質量%以下である。
【0126】
底材において、同種の樹脂は、比較対象のどちらの樹脂においても、構成単位の全量(モル)に対する、共通の構成単位の量(モル)の割合が、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上、特に好ましくは50モル%以上であり、例えば、60モル%以上、70モル%以上、及び80モル%以上のいずれかであってもよい。
【0127】
一方、底材において、同種の樹脂は、比較対象のどちらの樹脂においても、構成単位の全量(モル)に対する、共通の構成単位の量(モル)の割合は、100モル%以下である。
底材において、前記割合は、例えば、20~100モル%、30~100モル%、40~100モル%、50~100モル%、60~100モル%、70~100モル%、及び80~100モル%のいずれかであってもよい。
【0128】
上述の「底材の同種の熱可塑性樹脂の含有量(質量部)」とは、底材が、前記底材用樹脂フィルムのみを備えて構成されている(前記底材用樹脂フィルムからなる)場合には、「底材用樹脂フィルムの同種の熱可塑性樹脂の含有量(質量部)」であり、底材が、前記底材用樹脂フィルムと、前記他の層と、を備えて構成されている(前記底材用樹脂フィルムと、前記他の層と、からなる)場合には、「底材用樹脂フィルムの同種の熱可塑性樹脂の含有量(質量部)と、前記他の層の、底材用樹脂フィルムが含む熱可塑性樹脂と同種の熱可塑性樹脂の含有量(質量部)と、の合計量」である。
上述の「底材の総質量(質量部)」とは、底材が、前記底材用樹脂フィルムのみを備えて構成されている場合には、「底材用樹脂フィルムの総質量(質量部)」であり、底材が、前記底材用樹脂フィルムと、前記他の層と、を備えて構成されている場合には、「底材用樹脂フィルムの総質量(質量部)と、前記他の層の総質量(質量部)と、の合計量」である。
【0129】
<<底材の製造方法>>
前記底材は、例えば、上述の各層の形成材料として、蓋材の場合とは異なり得る形成材料を用いる点を除けば、前記蓋材の場合と同じ方法で底材用樹脂フィルムを製造した後、この底材用樹脂フィルムを、前記凹部を設けるために成形することによって、製造できる。
【0130】
<ブリスターパック包装体の一例>
好ましいブリスターパック包装体の一例としては、前記底材が含む前記熱可塑性樹脂と、前記蓋材が含む前記熱可塑性樹脂が、同種の樹脂であるブリスターパック包装体が挙げられる。このようなブリスターパック包装体は、そのモノマテリアル化(ブリスターパック包装体を単一の素材で構成すること)の実現に好適であり、ブリスターパック包装体の容易な再利用の実現に好適である。
【0131】
ブリスターパック包装体において、ブリスターパック包装体の総質量に対する、同種の熱可塑性樹脂の含有量の割合([ブリスターパック包装体の同種の熱可塑性樹脂の含有量(質量部)]/[ブリスターパック包装体の総質量(質量部)]×100)は、80~100質量%であることが好ましく、90~100質量%であることがより好ましく、例えば、95~100質量%、及び99~100質量%のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、ブリスターパック包装体の再利用適性がより高くなる。
前記割合は、ブリスターパック包装体において、蓋材と底材との合計質量に対する、蓋材と底材が含む同種の熱可塑性樹脂の含有量の割合(([蓋材の同種の熱可塑性樹脂の含有量(質量部)]+[底材の同種の熱可塑性樹脂の含有量(質量部)])/([蓋材の質量(質量部)]+[底材の質量(質量部)])×100)と同じである。
蓋材と底材との間における同種の樹脂とは、構成単位の点で、例えば、先に挙げた蓋材における同種の樹脂と同様のものを意味する。
【実施例0132】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0133】
<<ブリスターパック包装体の製造>>
[実施例1]
幅が100mmの長尺の蓋材用樹脂フィルム(フタムラ化学社製「FOH-L」、2軸延伸ポリプロピレンフィルム、厚さ25μm))がロール状に捲回された蓋材ロールを用意した。蓋材が含む熱可塑性樹脂(ポリプロピレン)の融点は、166℃であった。
また、幅が103mmの長尺の底材用樹脂フィルム(住友ベークライト社製「スミライト(登録商標)NS-3180」、ポリプロピレン製単層フィルム、厚さ300μm)がロール状に捲回された底材用樹脂フィルムロールを用意した。
前記蓋材ロール及び底材用樹脂フィルムロールを、ブリスター包装機(CKD社製「FBP-300E」)にセットした。このとき、蓋材のうち、ブリスター包装機中の第1ロールのロール面と接触する領域の長さAを、60.6648mmとし、前記角度θを50.4°とした。ブリスター包装機中の第1ロールのロール面における外周の長さLは、433.32mmであり、A=L/7.14であった。
【0134】
次いで、下記成形条件で、底材用樹脂フィルムに凹部を形成することで、底材を作製した。
(成形条件)
成形型:レンズ状、サイズ(間口径)φ10、ポケット深さ5.0mm
加熱板:ピンポイント加熱板
加熱板温度:138℃
プラグ温度:20℃
成形ブロー圧力:0.3MPa
ライン速度:3.67m/min
【0135】
次いで、ブリスター包装機中の加熱した第1ロールと、加熱していない第2ロールと、の間に対して、底材を第2ロール側から供給するとともに、蓋材を、第1ロールのロール面に接触させながら、第1ロール側から供給することによって、蓋材を予熱してから、下記条件で蓋材を底材とヒートシールし(ヒートシール工程)、ブリスターパック包装体を製造した。
(ヒートシール条件)
ライン速度:3.67m/min
温度:150℃
シリンダー圧力:0.45MPa
時間:0.06s
角度θ:50.4°
A:60.6648mm
L:433.32mm
【0136】
本実施例及び以降の比較例においては、蓋材に加える荷重を0.10N/mmとした。
【0137】
<<ブリスターパック包装体の評価>>
<蓋材と底材のシール強度の評価>
上記で得られたブリスターパック包装体において、蓋材をその端部から手で底材より剥離し、このときの剥離感から、下記評価基準に従って、蓋材と底材のシール強度を評価した。結果を表1に示す。
[評価基準]
X:蓋材と底材を手で剥離することが困難であり、蓋材と底材のシール強度が高い。
Y:蓋材と底材を手で剥離することが容易であり、蓋材と底材のシール強度が低い。
【0138】
[比較例1]
前記Aを、60.6648mmに代えて0mmとし、前記角度θを、50.4°に代えて0°とした、すなわち、蓋材を予熱せずに底材とヒートシールした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、ブリスターパック包装体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0139】
【0140】
上記結果から明らかなように、実施例1においては、熱可塑性樹脂を含む蓋材を、予熱してから底材とヒートシールすることにより、蓋材を溶融させることなく、蓋材と底材とのシール強度が十分に高いブリスターパック包装体を製造できた。
これに対して、比較例1においては、蓋材を予熱せずに底材とヒートシールした結果、得られたブリスターパック包装体において、蓋材と底材とのシール強度が低かった。