(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134917
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】防カビ剤、防カビ樹脂フィルム、防カビ積層フィルム及び防カビ包装体
(51)【国際特許分類】
A01N 35/02 20060101AFI20240927BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240927BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20240927BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A01N35/02
A01P3/00
A01N25/10
B32B27/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045366
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】松岡 みなも
【テーマコード(参考)】
4F100
4H011
【Fターム(参考)】
4F100AH08A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK03A
4F100AK25A
4F100AK29A
4F100AK31A
4F100AK41A
4F100AK51A
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA30A
4F100CB00A
4F100GB15
4F100JC00A
4F100JD03B
4F100JD03C
4F100YY00B
4F100YY00C
4H011AA03
4H011BA01
4H011BB05
4H011BC19
4H011DA08
4H011DH16
(57)【要約】
【課題】食品等の保存用として使用可能な防カビ包装体、前記防カビ包装体を構成するのに好適な防カビ樹脂フィルム、前記防カビ樹脂フィルムを用いて構成された防カビ積層フィルム、及び前記防カビ樹脂フィルムを構成するのに好適な防カビ剤の提供。
【解決手段】防カビ積層フィルム1であって、防カビ積層フィルム1は、防カビ樹脂フィルム12と、第1樹脂層11と、第2樹脂層13と、を備え、防カビ樹脂フィルム12が、第1樹脂層11と第2樹脂層13との間に配置され、防カビ樹脂フィルム12は、新規の特定範囲の防カビ剤と、樹脂と、を含み、第1樹脂層11の25℃、65%RHの雰囲気下における酸素ガス透過量が、3000cm
3/m
2・atm・day以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化合物群(1-1)~(1-14)及び(2-1)~(2-26):
(1-1) trans-2-ペンテナール、2-ヘキセナール、2-ヘプテナール、2-オクテナール、2-ノネナール、2-デセナール、2-ウンデセナール、2-ドデセナール、2-トリデセナール、テトラデカ-2-エナール、trans-2-メチル-2-ブテナール、3-メチル-2-ブテナール、2-エチル-2-ブテナール、2-メチル-2-ペンテナール、4-メチル-2-ペンテナール、2-エチリデンヘキサナール、2-エチル-2-ヘキセナール、2-エチリデンオクタナール、2-ブチル-2-オクテナール、2-ヘキシルデカ-2-エナール、2-オクチルドデカ-2-エナール、2-イソプロピル-5-メチル-2-ヘキセナール、4-メチル-2-[(メチルチオ)メチル]-2-ヘキセナール、5-メチル-2-[(メチルチオ)メチル]-2-ヘキセナール、4-メチル-2-[(メチルチオ)メチル]-2-ペンテナール、2-[(メチルチオ)メチル]-2-ブテナール及び5-(メチルチオ)-2-[(メチルチオ)メチル]-2-ペンテナール、
(1-2) 2,6-オクタジエナール、2,6-ノナジエナール、2,6-ドデカジエナール、2(E),8(Z)-テトラデカジ-1-エナール、2,8-テトラデカジエナール、trans,trans-2,4-ヘキサジエナール、2,4-ヘプタジエナール、2,4-オクタジエナール、2,4-ノナジエナール、2,4-デカジエナール、2,4-ウンデカジエナール、2,4-ドデカジエナール、ネラール、シトラール、ゲラニアール及び3,7-ジメチル-2,6-ノナジエナール、
(1-3) (2E,4E,6E)-ノナ-2,4,6-トリエナール、trans,trans,cis-2,4,7-デカトリエナール、(2E,4Z,7Z)-トリデカ-2,4,7-トリエナール、trans-2-メチル-6-メチレン-2,7-オクタジエナール及び2,6,10-トリメチル-2,6,11-ドデカトリエナール、
(1-4) α-シネンサール及びβ-シネンサール、
(1-5) シクロシトラール及びミルテナール、
(1-6) ペリラアルデヒド、l-ペリルアルデヒド、1,3-p-メンタジエン-7-アール及びサフラナール、
(1-7) 4,5-エポキシ-trans-2-デセナール、
(1-8) 4,5-エポキシ-2,7-デカジエナール、
(1-9) 4-メチル-2-フェニル-2-ペンテナール、5-メチル-2-フェニル-2-ヘキセナール、4-メチル-2-フェニル-2-ヘキセナール、2-フェニル-2-ブテナール、シンナムアルデヒド、α-メチルシンナムアルデヒド、α-エチルシンナムアルデヒド、α-ブチルシンナムアルデヒド、α-アミルシンナムアルデヒド、α-ヘキシルシンナムアルデヒド、4’-メトキシ-α-メチルシンナムアルデヒド、2’-メトキシシンナムアルデヒド、4’-メトキシシンナムアルデヒド及び(2E)-3-[4-(1-メチルエトキシ)フェニル]プロペ-2-エナール(別名:4-イソプロポキシシンナムアルデヒド)、
(1-10) 1-エチル-2-ピロリルカルバルデヒド、1-メチル-2-ピロリルカルバルデヒド、1-フェネチル-2-ピロリルカルバルデヒド、2-ピロリルカルバルデヒド及び5-メチル-2-ピロリルカルバルデヒド、
(1-11) 5-(ヒドロキシメチル)-2-フルフラール、フルフラール及び5-メチルフルフラール、
(1-12) 3-(2-フリル)-2-プロペナール、3-(2-フリル)-2-イソプロピル-2-プロペナール、3-(2-フリル)-2-メチル-2-プロペナール、3-(2-フリル)-2-フェニル-2-プロペナール及び3-(2-フリル)-2-[(メチルチオ)メチル]-2-プロペナール、
(1-13) 5-(2-フリル)-2,4-ペンタジエナール、
(1-14) 5-メチル-2-チエニルカルバルデヒド、3-チエニルカルバルデヒド、2-チエニルカルバルデヒド、3-メチル-2-チエニルカルバルデヒド、3-イソペンチルチオフェン-2-カルバルデヒド及び4-イソペンチルチオフェン-2-カルバルデヒド、
(2-1) 3-ヘプテン-2-オン、trans-6-メチル-3-ヘプテン-2-オン、3-オクテン-2-オン、7-メチル-3-オクテン-2-オン、3-デセン-2-オン及び5-イソプロピル-3-ノネン-2,8-ジオン、
(2-2) 4,8-ジメチル-3,7-ノナジエン-2-オン及び6-メチル-3,5-ヘプタジエン-2-オン、
(2-3) アセチルセドレン及び2,6,6-トリメチル-1-[3-(メチルチオ)-ブチリル]シクロヘキセン、
(2-4) 1-(2,4,4-トリメチル-2-シクロヘキセニル)-trans-2-ブテン-1-オン、α-イオノン、β-イオノン、γ-イオノン、α-イソメチルイオノン、メチルイオノン、β-ダマスコン、δ-ダマスコン及び3,5,5-トリメチル-1-(2-オキソプロピリデン)-2-シクロヘキセン、
(2-5) α-ダマセノン、β-ダマセノン、α-アリルイオノン及び3-メチルチオ-1-(2,6,6-トリメチル-1,3-シクロヘキサジエニル)-2-ブテン-1-オン、
(2-6) プレゴン、ピノカルボン及び2-ヘキシリデンシクロペンタノン、
(2-7) 3-メチル-2-シクロペンテノン、2-シクロヘキセノン、2,3-ジメチル-2-シクロペンテノン、イソホロン、4-イソプロピル-2-シクロヘキセノン、2-アミル-2-シクロペンテノン、8-ヒドロキシ-4-p-メンテン-3-オン、3-メチル-5-プロピル-2-シクロヘキセノン、ピペリトン、ベルベノン、3-メチル-2-ペンチル-2-シクロペンテノン、2-ヘキシル-2-シクロペンテノン、5-エチル-2,3,4,5-テトラメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、ヒノキチオール、2-ヒドロキシ-6-イソプロピル-3-メチル-2-シクロヘキセノン、2-ヒドロキシ-2-シクロヘキセノン、2-ヒドロキシ-3,4-ジメチル-2-シクロペンテノン、3-エチル-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-シクロペンテノン、シクロテン及び3-エチル-2-ヒドロキシ-2-シクロペンテノン、
(2-8) カルボン、6-ヒドロキシカルボン、2-メチル-3-(2-ペンテニル)-2-シクロペンテノン、3‐メチル-2-(cis-2-ペンテニル)-2-シクロペンテノン、3-メチル-2-(trans-2-ペンテニル)-2-シクロペンテノン、ヌートカトン、(3S,5R,8S)-3,8-ジメチル-5-(プロパ-1-エン-2-イル)-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロアズレン-1(2H)-オン、ピペリテノン、3,5,5-トリメチル-4-メチレン-2-シクロヘキセノン及び7-メチル-4,4a,5,6-テトラヒドロナフタレン-2(3H)-オン、
(2-9) デヒドロヌートカトン及び4-(2-ブテニリデン)-3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセノン、
(2-10) 4-フェニル-3-ブテン-2-オン、4-(2,3,6-トリメチルフェニル)-3-ブテン-2-オン、4-(4-メトキシフェニル)-3-ブテン-2-オン及び1-(4-メトキシフェニル)-1-ペンテン-3-オン、
(2-11) 5,6-エポキシ-β-イオノン、
(2-12) 5-アセチル-2,4-ジメチルチアゾール、2-アセチルチアゾール、2-プロピオニルチアゾール及び2-アセチル-4-メチルチアゾール、
(2-13) 2-アセチル-2-チアゾリン及び2-プロピオニル-2-チアゾリン、
(2-14) 2-アセチル-1-メチルピロール、2-アセチルピロール、3-アセチルピロール及び2-プロピオニルピロール、
(2-15) 2-アセチル-3,5-ジメチルピラジン、2-アセチル-3,6-ジメチルピラジン、2-アセチル-3-エチルピラジン、2-アセチル-3-メチルピラジン及びアセチルピラジン、
(2-16) 2-アセチルピリジン、3-アセチルピリジン、4-アセチルピリジン及び2-アセチル-4-イソプロピルピリジン、
(2-17) 2-アセチル-3,4,5,6-テトラヒドロピリジン及び2-アセチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリジン、
(2-18) 4-アセチル-2-メチルピリミジン、
(2-19) 3-アセチル-2,5-ジメチルフラン、2-アセチル-5-メチルフラン、2-アセチルフラン、2-メチル-5-プロピオニルフラン、2-プロピオニルフラン及び2-ヘキサノイルフラン、
(2-20) 2-アセチル-5-メチルチオフェン、2-アセチルチオフェン、2-プロピオニルチオフェン、2-アセチル-3-メチルチオフェン及び2-アセチル-4-メチルチオフェン、
(2-21) 2-アセチル-1-ピロリン、
(2-22) 4-(2-フリル)-3-ブテン-2-オン、
(2-23) エチルマルトール及び3,5-ジヒドロキシ-6-メチル-2,3-ジヒドロ-4(4H)-ピラノン、
(2-24) 4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン、4-ヒドロキシ-5-メチル-3(2H)-フラノン、4-メトキシ-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン、2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン、5-エチル-4-ヒドロキシ-2-メチル-3(2H)-フラノン及び2,5-ジメチル-4-(1-ピロリジニル)-3(2H)-フラノン、
(2-25) 4-オキソイソホロン、並びに
(2-26) 2-メチル-5,6-ジヒドロピリジン-3(4H)-オン、4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルチオフェン-3(2H)-オン及び4-エトキシ-2,5-ジメチルフラン-3(2H)-オン
からなる群より選択される1種又は2種以上の化合物を有効成分とする、防カビ剤。
【請求項2】
前記防カビ剤が、クラドスポリウム(Cladosporium)属に属する微生物用である、請求項1に記載の防カビ剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の防カビ剤と、樹脂と、を含む、防カビ樹脂フィルム。
【請求項4】
前記樹脂として、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、チタネート系接着剤、イミン系接着剤、ブタジエン系接着剤、ポリエステル系接着剤及びオレフィン系接着剤からなる群より選択される1種又は2種以上を含み、前記防カビ樹脂フィルムが接着性を有する、請求項3に記載の防カビ樹脂フィルム。
【請求項5】
防カビ積層フィルムであって、
前記防カビ積層フィルムは、請求項3に記載の防カビ樹脂フィルムと、第1樹脂層と、第2樹脂層と、を備え、
前記防カビ樹脂フィルムが、前記第1樹脂層と、前記第2樹脂層と、の間に配置され、
前記第1樹脂層の25℃、65%RHの雰囲気下における酸素ガス透過量が、3000cm3/m2・atm・day以上である、防カビ積層フィルム。
【請求項6】
前記第2樹脂層の25℃、65%RHの雰囲気下における酸素ガス透過量が、3000cm3/m2・atm・day以下である、請求項5に記載の防カビ積層フィルム。
【請求項7】
防カビ包装体であって、
前記防カビ包装体は、請求項5に記載の防カビ積層フィルムを用いて構成され、
前記防カビ包装体は、前記第1樹脂層同士の一部が接着され、形成されている収納空間を有し、
前記防カビ樹脂フィルムが前記第2樹脂層よりも前記収納空間側に配置されている、防カビ包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防カビ剤、防カビ樹脂フィルム、防カビ積層フィルム及び防カビ包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
目的物を収納して保存するために、種々の保存用の包装体が用いられている。例えば、保存対象物が食品等の経口摂取されるものである場合には、この対象物を、良好な品質を維持しながら保存できることが求められ、このような目的を達成するための包装体が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
一方で、包装体を衛生的に製造し、取り扱っても、保存対象物を包装体に収納するときに、この保存対象物などの、包装体の収納部へ接触するものに付着しているカビが、包装体の収納空間内に取り込まれることがある。保存対象物を衛生的に保存したい場合には、このようなカビの混入は大きな問題となる。
【0004】
保存対象物を収納するときに、この保存対象物に付着しているカビの収納空間内への混入を抑制するためには、例えば、加熱処理、薬品処理、紫外線照射処理等のカビを死滅させる処理を行った後の保存対象物を、包装体へ収納することが考えられる。しかし、保存対象物が、上述のような経口摂取されるものである場合など、その種類によっては、これらの処理を行うことができない場合もあり、この方法は汎用性があるとはいえない。したがって、保存中の包装体の収納空間内で、問題点を生じない程度にカビの増殖を抑制することが、より現実的で重要であり、そのためには、例えば、包装体に防カビ性を付与することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、保存対象物が食品等の経口摂取されるものである場合には、保存対象物を収納した後の包装体は、外部からのカビの侵入を継続的に抑制できることが好ましく、そのためには、包装体を樹脂フィルムや金属箔等の、ある程度の密封性を有する材料で構成する必要がある。なかでも、樹脂フィルムは、収納された保存対象物を包装体の外部から目視できる点で有利である。また、防カビ性を発現する防カビ剤を用いる場合、防カビ剤は、その保存対象物への付着の可能性を考慮して、人体に対して一定水準の安全性を有している必要がある。また、包装体の収納空間内において、防カビ効果を一定期間、継続的に発現させるためには、例えば、包装体自体から防カビ剤を収納空間内へ継続的に供給可能であることが望ましい。しかし、特許文献1で開示されている包装体は、このような方策をすべて可能とするものではない。
【0007】
本発明は、食品等の保存用として使用可能な防カビ包装体、前記防カビ包装体を構成するのに好適な防カビ樹脂フィルム、前記防カビ樹脂フィルムを用いて構成された防カビ積層フィルム、及び前記防カビ樹脂フィルムを構成するのに好適な防カビ剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
[1] 下記化合物群(1-1)~(1-14)及び(2-1)~(2-26):
(1-1) trans-2-ペンテナール、2-ヘキセナール、2-ヘプテナール、2-オクテナール、2-ノネナール、2-デセナール、2-ウンデセナール、2-ドデセナール、2-トリデセナール、テトラデカ-2-エナール、trans-2-メチル-2-ブテナール、3-メチル-2-ブテナール、2-エチル-2-ブテナール、2-メチル-2-ペンテナール、4-メチル-2-ペンテナール、2-エチリデンヘキサナール、2-エチル-2-ヘキセナール、2-エチリデンオクタナール、2-ブチル-2-オクテナール、2-ヘキシルデカ-2-エナール、2-オクチルドデカ-2-エナール、2-イソプロピル-5-メチル-2-ヘキセナール、4-メチル-2-[(メチルチオ)メチル]-2-ヘキセナール、5-メチル-2-[(メチルチオ)メチル]-2-ヘキセナール、4-メチル-2-[(メチルチオ)メチル]-2-ペンテナール、2-[(メチルチオ)メチル]-2-ブテナール及び5-(メチルチオ)-2-[(メチルチオ)メチル]-2-ペンテナール、
(1-2) 2,6-オクタジエナール、2,6-ノナジエナール、2,6-ドデカジエナール、2(E),8(Z)-テトラデカジ-1-エナール、2,8-テトラデカジエナール、trans,trans-2,4-ヘキサジエナール、2,4-ヘプタジエナール、2,4-オクタジエナール、2,4-ノナジエナール、2,4-デカジエナール、2,4-ウンデカジエナール、2,4-ドデカジエナール、ネラール、シトラール、ゲラニアール及び3,7-ジメチル-2,6-ノナジエナール、
(1-3) (2E,4E,6E)-ノナ-2,4,6-トリエナール、trans,trans,cis-2,4,7-デカトリエナール、(2E,4Z,7Z)-トリデカ-2,4,7-トリエナール、trans-2-メチル-6-メチレン-2,7-オクタジエナール及び2,6,10-トリメチル-2,6,11-ドデカトリエナール、
(1-4) α-シネンサール及びβ-シネンサール、
(1-5) シクロシトラール及びミルテナール、
(1-6) ペリラアルデヒド、l-ペリルアルデヒド、1,3-p-メンタジエン-7-アール及びサフラナール、
(1-7) 4,5-エポキシ-trans-2-デセナール、
(1-8) 4,5-エポキシ-2,7-デカジエナール、
(1-9) 4-メチル-2-フェニル-2-ペンテナール、5-メチル-2-フェニル-2-ヘキセナール、4-メチル-2-フェニル-2-ヘキセナール、2-フェニル-2-ブテナール、シンナムアルデヒド、α-メチルシンナムアルデヒド、α-エチルシンナムアルデヒド、α-ブチルシンナムアルデヒド、α-アミルシンナムアルデヒド、α-ヘキシルシンナムアルデヒド、4’-メトキシ-α-メチルシンナムアルデヒド、2’-メトキシシンナムアルデヒド、4’-メトキシシンナムアルデヒド及び(2E)-3-[4-(1-メチルエトキシ)フェニル]プロペ-2-エナール(別名:4-イソプロポキシシンナムアルデヒド)、
(1-10) 1-エチル-2-ピロリルカルバルデヒド、1-メチル-2-ピロリルカルバルデヒド、1-フェネチル-2-ピロリルカルバルデヒド、2-ピロリルカルバルデヒド及び5-メチル-2-ピロリルカルバルデヒド、
(1-11) 5-(ヒドロキシメチル)-2-フルフラール、フルフラール及び5-メチルフルフラール、
(1-12) 3-(2-フリル)-2-プロペナール、3-(2-フリル)-2-イソプロピル-2-プロペナール、3-(2-フリル)-2-メチル-2-プロペナール、3-(2-フリル)-2-フェニル-2-プロペナール及び3-(2-フリル)-2-[(メチルチオ)メチル]-2-プロペナール、
(1-13) 5-(2-フリル)-2,4-ペンタジエナール、
(1-14) 5-メチル-2-チエニルカルバルデヒド、3-チエニルカルバルデヒド、2-チエニルカルバルデヒド、3-メチル-2-チエニルカルバルデヒド、3-イソペンチルチオフェン-2-カルバルデヒド及び4-イソペンチルチオフェン-2-カルバルデヒド、
(2-1) 3-ヘプテン-2-オン、trans-6-メチル-3-ヘプテン-2-オン、3-オクテン-2-オン、7-メチル-3-オクテン-2-オン、3-デセン-2-オン及び5-イソプロピル-3-ノネン-2,8-ジオン、
(2-2) 4,8-ジメチル-3,7-ノナジエン-2-オン及び6-メチル-3,5-ヘプタジエン-2-オン、
(2-3) アセチルセドレン及び2,6,6-トリメチル-1-[3-(メチルチオ)-ブチリル]シクロヘキセン、
(2-4) 1-(2,4,4-トリメチル-2-シクロヘキセニル)-trans-2-ブテン-1-オン、α-イオノン、β-イオノン、γ-イオノン、α-イソメチルイオノン、メチルイオノン、β-ダマスコン、δ-ダマスコン及び3,5,5-トリメチル-1-(2-オキソプロピリデン)-2-シクロヘキセン、
(2-5) α-ダマセノン、β-ダマセノン、α-アリルイオノン及び3-メチルチオ-1-(2,6,6-トリメチル-1,3-シクロヘキサジエニル)-2-ブテン-1-オン、
(2-6) プレゴン、ピノカルボン及び2-ヘキシリデンシクロペンタノン、
(2-7) 3-メチル-2-シクロペンテノン、2-シクロヘキセノン、2,3-ジメチル-2-シクロペンテノン、イソホロン、4-イソプロピル-2-シクロヘキセノン、2-アミル-2-シクロペンテノン、8-ヒドロキシ-4-p-メンテン-3-オン、3-メチル-5-プロピル-2-シクロヘキセノン、ピペリトン、ベルベノン、3-メチル-2-ペンチル-2-シクロペンテノン、2-ヘキシル-2-シクロペンテノン、5-エチル-2,3,4,5-テトラメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、ヒノキチオール、2-ヒドロキシ-6-イソプロピル-3-メチル-2-シクロヘキセノン、2-ヒドロキシ-2-シクロヘキセノン、2-ヒドロキシ-3,4-ジメチル-2-シクロペンテノン、3-エチル-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-シクロペンテノン、シクロテン及び3-エチル-2-ヒドロキシ-2-シクロペンテノン、
(2-8) カルボン、6-ヒドロキシカルボン、2-メチル-3-(2-ペンテニル)-2-シクロペンテノン、3‐メチル-2-(cis-2-ペンテニル)-2-シクロペンテノン、3-メチル-2-(trans-2-ペンテニル)-2-シクロペンテノン、ヌートカトン、(3S,5R,8S)-3,8-ジメチル-5-(プロパ-1-エン-2-イル)-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロアズレン-1(2H)-オン、ピペリテノン、3,5,5-トリメチル-4-メチレン-2-シクロヘキセノン及び7-メチル-4,4a,5,6-テトラヒドロナフタレン-2(3H)-オン、
(2-9) デヒドロヌートカトン及び4-(2-ブテニリデン)-3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセノン、
(2-10) 4-フェニル-3-ブテン-2-オン、4-(2,3,6-トリメチルフェニル)-3-ブテン-2-オン、4-(4-メトキシフェニル)-3-ブテン-2-オン及び1-(4-メトキシフェニル)-1-ペンテン-3-オン、
(2-11) 5,6-エポキシ-β-イオノン、
(2-12) 5-アセチル-2,4-ジメチルチアゾール、2-アセチルチアゾール、2-プロピオニルチアゾール及び2-アセチル-4-メチルチアゾール、
(2-13) 2-アセチル-2-チアゾリン及び2-プロピオニル-2-チアゾリン、
(2-14) 2-アセチル-1-メチルピロール、2-アセチルピロール、3-アセチルピロール及び2-プロピオニルピロール、
(2-15) 2-アセチル-3,5-ジメチルピラジン、2-アセチル-3,6-ジメチルピラジン、2-アセチル-3-エチルピラジン、2-アセチル-3-メチルピラジン及びアセチルピラジン、
(2-16) 2-アセチルピリジン、3-アセチルピリジン、4-アセチルピリジン及び2-アセチル-4-イソプロピルピリジン、
(2-17) 2-アセチル-3,4,5,6-テトラヒドロピリジン及び2-アセチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリジン、
(2-18) 4-アセチル-2-メチルピリミジン、
(2-19) 3-アセチル-2,5-ジメチルフラン、2-アセチル-5-メチルフラン、2-アセチルフラン、2-メチル-5-プロピオニルフラン、2-プロピオニルフラン及び2-ヘキサノイルフラン、
(2-20) 2-アセチル-5-メチルチオフェン、2-アセチルチオフェン、2-プロピオニルチオフェン、2-アセチル-3-メチルチオフェン及び2-アセチル-4-メチルチオフェン、
(2-21) 2-アセチル-1-ピロリン、
(2-22) 4-(2-フリル)-3-ブテン-2-オン、
(2-23) エチルマルトール及び3,5-ジヒドロキシ-6-メチル-2,3-ジヒドロ-4(4H)-ピラノン、
(2-24) 4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン、4-ヒドロキシ-5-メチル-3(2H)-フラノン、4-メトキシ-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン、2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン、5-エチル-4-ヒドロキシ-2-メチル-3(2H)-フラノン及び2,5-ジメチル-4-(1-ピロリジニル)-3(2H)-フラノン、
(2-25) 4-オキソイソホロン、並びに
(2-26) 2-メチル-5,6-ジヒドロピリジン-3(4H)-オン、4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルチオフェン-3(2H)-オン及び4-エトキシ-2,5-ジメチルフラン-3(2H)-オン
からなる群より選択される1種又は2種以上の化合物を有効成分とする、防カビ剤。
【0009】
[2] 前記防カビ剤が、クラドスポリウム(Cladosporium)属に属する微生物用である、[1]に記載の防カビ剤。
[3] [1]又は[2]に記載の防カビ剤と、樹脂と、を含む、防カビ樹脂フィルム。
[4] 前記樹脂として、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、チタネート系接着剤、イミン系接着剤、ブタジエン系接着剤、ポリエステル系接着剤及びオレフィン系接着剤からなる群より選択される1種又は2種以上を含み、前記防カビ樹脂フィルムが接着性を有する、[3]に記載の防カビ樹脂フィルム。
【0010】
[5] 防カビ積層フィルムであって、前記防カビ積層フィルムは、[3]に記載の防カビ樹脂フィルムと、第1樹脂層と、第2樹脂層と、を備え、前記防カビ樹脂フィルムが、前記第1樹脂層と、前記第2樹脂層と、の間に配置され、前記第1樹脂層の25℃、65%RHの雰囲気下における酸素ガス透過量が、3000cm3/m2・atm・day以上である、防カビ積層フィルム。
[6] 前記第2樹脂層の25℃、65%RHの雰囲気下における酸素ガス透過量が、3000cm3/m2・atm・day以下である、[5]に記載の防カビ積層フィルム。
[7] 防カビ包装体であって、前記防カビ包装体は、[5]に記載の防カビ積層フィルムを用いて構成され、前記防カビ包装体は、前記第1樹脂層同士の一部が接着され、形成されている収納空間を有し、前記防カビ樹脂フィルムが前記第2樹脂層よりも前記収納空間側に配置されている、防カビ包装体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、食品等の保存用として使用可能な防カビ包装体、前記防カビ包装体を構成するのに好適な防カビ樹脂フィルム、前記防カビ樹脂フィルムを用いて構成された防カビ積層フィルム、及び前記防カビ樹脂フィルムを構成するのに好適な防カビ剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る防カビ積層フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る防カビ包装体の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<<防カビ剤>>
本発明の一実施形態に係る防カビ剤は、下記化合物群(1-1)~(1-14)及び(2-1)~(2-26):
(1-1) trans-2-ペンテナール、2-ヘキセナール、2-ヘプテナール、2-オクテナール、2-ノネナール、2-デセナール、2-ウンデセナール、2-ドデセナール、2-トリデセナール、テトラデカ-2-エナール、trans-2-メチル-2-ブテナール、3-メチル-2-ブテナール、2-エチル-2-ブテナール、2-メチル-2-ペンテナール、4-メチル-2-ペンテナール、2-エチリデンヘキサナール、2-エチル-2-ヘキセナール、2-エチリデンオクタナール、2-ブチル-2-オクテナール、2-ヘキシルデカ-2-エナール、2-オクチルドデカ-2-エナール、2-イソプロピル-5-メチル-2-ヘキセナール、4-メチル-2-[(メチルチオ)メチル]-2-ヘキセナール、5-メチル-2-[(メチルチオ)メチル]-2-ヘキセナール、4-メチル-2-[(メチルチオ)メチル]-2-ペンテナール、2-[(メチルチオ)メチル]-2-ブテナール及び5-(メチルチオ)-2-[(メチルチオ)メチル]-2-ペンテナール、
(1-2) 2,6-オクタジエナール、2,6-ノナジエナール、2,6-ドデカジエナール、2(E),8(Z)-テトラデカジ-1-エナール、2,8-テトラデカジエナール、trans,trans-2,4-ヘキサジエナール、2,4-ヘプタジエナール、2,4-オクタジエナール、2,4-ノナジエナール、2,4-デカジエナール、2,4-ウンデカジエナール、2,4-ドデカジエナール、ネラール、シトラール、ゲラニアール及び3,7-ジメチル-2,6-ノナジエナール、
(1-3) (2E,4E,6E)-ノナ-2,4,6-トリエナール、trans,trans,cis-2,4,7-デカトリエナール、(2E,4Z,7Z)-トリデカ-2,4,7-トリエナール、trans-2-メチル-6-メチレン-2,7-オクタジエナール及び2,6,10-トリメチル-2,6,11-ドデカトリエナール、
(1-4) α-シネンサール及びβ-シネンサール、
(1-5) シクロシトラール及びミルテナール、
(1-6) ペリラアルデヒド、l-ペリルアルデヒド、1,3-p-メンタジエン-7-アール及びサフラナール、
(1-7) 4,5-エポキシ-trans-2-デセナール、
(1-8) 4,5-エポキシ-2,7-デカジエナール、
(1-9) 4-メチル-2-フェニル-2-ペンテナール、5-メチル-2-フェニル-2-ヘキセナール、4-メチル-2-フェニル-2-ヘキセナール、2-フェニル-2-ブテナール、シンナムアルデヒド、α-メチルシンナムアルデヒド、α-エチルシンナムアルデヒド、α-ブチルシンナムアルデヒド、α-アミルシンナムアルデヒド、α-ヘキシルシンナムアルデヒド、4’-メトキシ-α-メチルシンナムアルデヒド、2’-メトキシシンナムアルデヒド、4’-メトキシシンナムアルデヒド及び(2E)-3-[4-(1-メチルエトキシ)フェニル]プロペ-2-エナール(別名:4-イソプロポキシシンナムアルデヒド)、
(1-10) 1-エチル-2-ピロリルカルバルデヒド、1-メチル-2-ピロリルカルバルデヒド、1-フェネチル-2-ピロリルカルバルデヒド、2-ピロリルカルバルデヒド及び5-メチル-2-ピロリルカルバルデヒド、
(1-11) 5-(ヒドロキシメチル)-2-フルフラール、フルフラール及び5-メチルフルフラール、
(1-12) 3-(2-フリル)-2-プロペナール、3-(2-フリル)-2-イソプロピル-2-プロペナール、3-(2-フリル)-2-メチル-2-プロペナール、3-(2-フリル)-2-フェニル-2-プロペナール及び3-(2-フリル)-2-[(メチルチオ)メチル]-2-プロペナール、
(1-13) 5-(2-フリル)-2,4-ペンタジエナール、
(1-14) 5-メチル-2-チエニルカルバルデヒド、3-チエニルカルバルデヒド、2-チエニルカルバルデヒド、3-メチル-2-チエニルカルバルデヒド、3-イソペンチルチオフェン-2-カルバルデヒド及び4-イソペンチルチオフェン-2-カルバルデヒド、
(2-1) 3-ヘプテン-2-オン、trans-6-メチル-3-ヘプテン-2-オン、3-オクテン-2-オン、7-メチル-3-オクテン-2-オン、3-デセン-2-オン及び5-イソプロピル-3-ノネン-2,8-ジオン、
(2-2) 4,8-ジメチル-3,7-ノナジエン-2-オン及び6-メチル-3,5-ヘプタジエン-2-オン、
(2-3) アセチルセドレン及び2,6,6-トリメチル-1-[3-(メチルチオ)-ブチリル]シクロヘキセン、
(2-4) 1-(2,4,4-トリメチル-2-シクロヘキセニル)-trans-2-ブテン-1-オン、α-イオノン、β-イオノン、γ-イオノン、α-イソメチルイオノン、メチルイオノン、β-ダマスコン、δ-ダマスコン及び3,5,5-トリメチル-1-(2-オキソプロピリデン)-2-シクロヘキセン、
(2-5) α-ダマセノン、β-ダマセノン、α-アリルイオノン及び3-メチルチオ-1-(2,6,6-トリメチル-1,3-シクロヘキサジエニル)-2-ブテン-1-オン、
(2-6) プレゴン、ピノカルボン及び2-ヘキシリデンシクロペンタノン、
(2-7) 3-メチル-2-シクロペンテノン、2-シクロヘキセノン、2,3-ジメチル-2-シクロペンテノン、イソホロン、4-イソプロピル-2-シクロヘキセノン、2-アミル-2-シクロペンテノン、8-ヒドロキシ-4-p-メンテン-3-オン、3-メチル-5-プロピル-2-シクロヘキセノン、ピペリトン、ベルベノン、3-メチル-2-ペンチル-2-シクロペンテノン、2-ヘキシル-2-シクロペンテノン、5-エチル-2,3,4,5-テトラメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、ヒノキチオール、2-ヒドロキシ-6-イソプロピル-3-メチル-2-シクロヘキセノン、2-ヒドロキシ-2-シクロヘキセノン、2-ヒドロキシ-3,4-ジメチル-2-シクロペンテノン、3-エチル-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-シクロペンテノン、シクロテン及び3-エチル-2-ヒドロキシ-2-シクロペンテノン、
(2-8) カルボン、6-ヒドロキシカルボン、2-メチル-3-(2-ペンテニル)-2-シクロペンテノン、3‐メチル-2-(cis-2-ペンテニル)-2-シクロペンテノン、3-メチル-2-(trans-2-ペンテニル)-2-シクロペンテノン、ヌートカトン、(3S,5R,8S)-3,8-ジメチル-5-(プロパ-1-エン-2-イル)-3,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロアズレン-1(2H)-オン、ピペリテノン、3,5,5-トリメチル-4-メチレン-2-シクロヘキセノン及び7-メチル-4,4a,5,6-テトラヒドロナフタレン-2(3H)-オン、
(2-9) デヒドロヌートカトン及び4-(2-ブテニリデン)-3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセノン、
(2-10) 4-フェニル-3-ブテン-2-オン、4-(2,3,6-トリメチルフェニル)-3-ブテン-2-オン、4-(4-メトキシフェニル)-3-ブテン-2-オン及び1-(4-メトキシフェニル)-1-ペンテン-3-オン、
(2-11) 5,6-エポキシ-β-イオノン、
(2-12) 5-アセチル-2,4-ジメチルチアゾール、2-アセチルチアゾール、2-プロピオニルチアゾール及び2-アセチル-4-メチルチアゾール、
(2-13) 2-アセチル-2-チアゾリン及び2-プロピオニル-2-チアゾリン、
(2-14) 2-アセチル-1-メチルピロール、2-アセチルピロール、3-アセチルピロール及び2-プロピオニルピロール、
(2-15) 2-アセチル-3,5-ジメチルピラジン、2-アセチル-3,6-ジメチルピラジン、2-アセチル-3-エチルピラジン、2-アセチル-3-メチルピラジン及びアセチルピラジン、
(2-16) 2-アセチルピリジン、3-アセチルピリジン、4-アセチルピリジン及び2-アセチル-4-イソプロピルピリジン、
(2-17) 2-アセチル-3,4,5,6-テトラヒドロピリジン及び2-アセチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリジン、
(2-18) 4-アセチル-2-メチルピリミジン、
(2-19) 3-アセチル-2,5-ジメチルフラン、2-アセチル-5-メチルフラン、2-アセチルフラン、2-メチル-5-プロピオニルフラン、2-プロピオニルフラン及び2-ヘキサノイルフラン、
(2-20) 2-アセチル-5-メチルチオフェン、2-アセチルチオフェン、2-プロピオニルチオフェン、2-アセチル-3-メチルチオフェン及び2-アセチル-4-メチルチオフェン、
(2-21) 2-アセチル-1-ピロリン、
(2-22) 4-(2-フリル)-3-ブテン-2-オン、
(2-23) エチルマルトール及び3,5-ジヒドロキシ-6-メチル-2,3-ジヒドロ-4(4H)-ピラノン、
(2-24) 4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン、4-ヒドロキシ-5-メチル-3(2H)-フラノン、4-メトキシ-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン、2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン、5-エチル-4-ヒドロキシ-2-メチル-3(2H)-フラノン及び2,5-ジメチル-4-(1-ピロリジニル)-3(2H)-フラノン、
(2-25) 4-オキソイソホロン、並びに
(2-26) 2-メチル-5,6-ジヒドロピリジン-3(4H)-オン、4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルチオフェン-3(2H)-オン及び4-エトキシ-2,5-ジメチルフラン-3(2H)-オン
からなる群より選択される1種又は2種以上の化合物を有効成分とする。
【0014】
本実施形態の防カビ剤は、目的とする保存対象物と共存させることで、この保存対象物におけるカビの増殖を抑制する。なお、本明細書において、後述するような「カビの発生」とは、対象物において、カビが目視確認できない状態から、目視確認できる程度にまで増殖することを意味する。
【0015】
上述の各化合物群に属する化合物は、防カビ活性を有し、それ自体が防カビ剤として作用する。
カビとして認識される微生物の生育の過程では、まず発芽が生じ、菌糸が発生及び伸長し、次いで胞子が形成される。その後、胞子が拡散し、着床する。以降、このサイクルが繰り返されることにより、カビが増殖していく。本実施形態の防カビ剤は、これらの過程のうち、菌糸の発生及び伸長、並びに胞子の形成を阻害することで、防カビ効果を発現すると推測される。
【0016】
前記化合物群に属する化合物は、α,β-不飽和アルデヒド、α,β-不飽和ケトン、又はこれらに準じる化合物であり、構造上の共通点を有する。
前記化合物群は、これら化合物を、さらなる構造上の類似点に基づいて分類した化合物グループである。これらの中には、化合物を1種のみ特定した化合物群も存在するが、このようなものにも便宜上、「化合物群」との名称を付与している。
【0017】
本明細書においては、特に断りのない限り「化合物」とは、上述の化合物群に属する化合物を意味する。
【0018】
化合物群(1-1)~(1-14)及び(2-1)~(2-26)に属する化合物は、すべて、日本国内で食品添加物として使用可能である。ここで「食品添加物」とは、日本国厚生労働省が令和5年1月31日現在、その使用を認めているものを意味する。
【0019】
前記化合物(化合物群(1-1)~(1-14)及び(2-1)~(2-26)に属する化合物)はすべて、常温及び常圧下で気化可能である。例えば、4-フェニル-3-ブテン-2-オン等、常温及び常圧下で固形状の化合物は、溶媒に溶解させて溶液とし、この溶液を用いることで、気化可能である。
前記化合物は、常温及び常圧下で気化することによって、後述する包装体の収納空間内において継続的にその効果を発揮するのに有利であり、包装体において、優れた防カビ効果をより長時間維持できる。
【0020】
本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0021】
本明細書においては、ある特定の化合物において、1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換された構造が想定される場合、このような置換された構造を有する化合物を、上述の特定の化合物の「誘導体」と称する。
本明細書において、「基」とは、特に断りのない限り、複数個の原子が結合してなる原子団だけでなく、1個の原子も包含するものとする。
【0022】
化合物群(1-1)~(1-14)に属する化合物は、ホルミル基(-C(=O)-H)の結合先が非芳香族性の基であるα,β-不飽和アルデヒド(ホルミル基と、前記ホルミル基が結合している第1炭素原子と、前記第1炭素原子に、前記ホルミル基中の炭素原子とは別途に結合している第2炭素原子と、を有し、前記第1炭素原子と前記第2炭素原子との間の結合が、二重結合である化合物);
メチレン基(-CH2-)を有する前記α,β-不飽和アルデヒド中の1個又は2個のメチレン基が、酸素原子(-O-)又は硫黄原子(-S-)で置換された構造を有する置換α,β-不飽和アルデヒド;
ホルミル基と、前記ホルミル基が結合しているピロール環骨格と、を有し、前記ピロール環骨格中で窒素原子(-N(-)-)に隣接している炭素原子に、前記ホルミル基が結合した構造を有する、ピロール環含有不飽和アルデヒド;
ホルミル基と、前記ホルミル基が直接又は連結基を介して結合しているフラン環骨格と、を有し、前記フラン環骨格中で酸素原子(-O-)に隣接している炭素原子に、前記ホルミル基が直接又は連結基を介して結合した構造を有する、フラン環含有不飽和アルデヒド;又は
ホルミル基と、前記ホルミル基が結合しているチオフェン環骨格と、を有し、前記チオフェン環骨格中で硫黄原子(-S-)に隣接している炭素原子に、前記ホルミル基が結合した構造を有する、チオフェン環含有不飽和アルデヒドである。
すなわち、化合物群(1-1)~(1-14)に属する化合物は、ホルミル基と、前記ホルミル基が結合している第1炭素原子と、前記第1炭素原子に、前記ホルミル基中の炭素原子とは別途に結合している第2炭素原子と、を有し、前記第1炭素原子と前記第2炭素原子との間の結合が、不飽和結合である、という構造上の共通点を有する。
本明細書においては、化合物群(1-1)~(1-14)に属する化合物を包括して、「不飽和アルデヒド」と称することがある。
【0023】
より具体的には、化合物群(1-1)に属する化合物は、鎖状脂肪族モノエナール又は置換鎖状脂肪族モノエナール(鎖状構造のみを有し、1個又は2個のメチレン基が硫黄原子で置換されていてもよく、炭素原子間の二重結合を1個有し、前記二重結合を形成している炭素原子と、ホルミル基中の炭素原子と、が結合している不飽和アルデヒド)である。
化合物群(1-2)に属する化合物は、鎖状脂肪族ジエナール(鎖状構造のみを有し、炭素原子間の二重結合を2個有し、前記二重結合を形成しているいずれか1個の炭素原子と、ホルミル基中の炭素原子と、が結合している不飽和アルデヒド)である。
化合物群(1-3)に属する化合物は、鎖状脂肪族トリエナール(鎖状構造のみを有し、炭素原子間の二重結合を3個し、前記二重結合を形成しているいずれか1個の炭素原子と、ホルミル基中の炭素原子と、が結合している不飽和アルデヒド)である。
化合物群(1-4)に属する化合物は、鎖状脂肪族テトラエナール(鎖状構造のみを有し、炭素原子間の二重結合を4個有し、前記二重結合を形成しているいずれか1個の炭素原子と、ホルミル基中の炭素原子と、が結合している不飽和アルデヒド)である。
【0024】
化合物群(1-1)~(1-4)に属する化合物は、1個又は2個のメチレン基が硫黄原子で置換されていてもよい鎖状脂肪族エナールである。
【0025】
化合物群(1-5)に属する化合物は、環状脂肪族モノエナール(環状構造を有し、炭素原子間の二重結合を1個有し、前記環状構造中に前記二重結合が存在し、前記二重結合を形成している炭素原子と、ホルミル基中の炭素原子と、が結合している不飽和アルデヒド)である。
化合物群(1-6)に属する化合物は、環状脂肪族ジエナール(環状構造を有し、炭素原子間の二重結合を2個有し、前記環状構造中に前記二重結合が1個又は2個存在し、前記環状構造中の前記二重結合を形成している1個の炭素原子と、ホルミル基中の炭素原子と、が結合している不飽和アルデヒド)である。
【0026】
化合物群(1-5)~(1-6)に属する化合物は、環状脂肪族エナールである。
【0027】
化合物群(1-7)に属する化合物は、エポキシ基含有モノエナール(エポキシ基を有し、炭素原子間の二重結合を1個有し、前記二重結合を形成している炭素原子と、ホルミル基中の炭素原子と、が結合している不飽和アルデヒド)である。
化合物群(1-8)に属する化合物は、エポキシ基含有ジエナール(エポキシ基を有し、炭素原子間の二重結合を2個有し、前記二重結合を形成しているいずれか1個の炭素原子と、ホルミル基中の炭素原子と、が結合している不飽和アルデヒド)である。
【0028】
化合物群(1-7)~(1-8)に属する化合物は、エポキシ基含有エナールである。
【0029】
化合物群(1-9)に属する化合物は、芳香族モノエナール又は置換芳香族モノエナール(芳香族環式基を有し、1個の前記メチレン基が酸素原子で置換されていてもよく、前記芳香族環式中の不飽和結合とは異なる、炭素原子間の二重結合を1個有し、前記二重結合を形成している1個の炭素原子と、ホルミル基中の炭素原子と、が結合している不飽和アルデヒド)である。
化合物群(1-9)に属する化合物は、アシル基を構成している炭素原子と、炭素原子間の二重結合と、をともに有する基が、芳香族環式基に結合している、モノエナールである。
【0030】
すなわち、化合物群(1-1)~(1-9)に属する化合物は、ホルミル基を有し、ホルミル基が結合している基は、炭素原子間の二重結合を有し、ホルミル基が結合している基において、1個又は2個のメチレン基が硫黄原子で置換されていてもよく、1個のメチレン基が酸素原子で置換されていてもよく、ホルミル基中の炭素原子と、前記二重結合を形成している炭素原子と、が結合しているという、構造上の共通点を有する。
【0031】
化合物群(1-10)に属する化合物は、ピロリルカルバルデヒド類(ホルミル基と、前記ホルミル基が結合しているピロール環骨格と、を有し、前記ピロール環骨格中で窒素原子に隣接している炭素原子に、前記ホルミル基が結合した構造を有する、ピロール環含有不飽和アルデヒド)である。
化合物群(1-11)に属する化合物は、フルフラール類(ホルミル基と、前記ホルミル基が結合しているフラン環骨格と、を有し、前記フラン環骨格中で酸素原子に隣接している炭素原子に、前記ホルミル基が結合した構造を有する、フラン環含有不飽和アルデヒド)である。
化合物群(1-12)に属する化合物は、フラン環含有モノエナール又は置換フラン環含有モノエナール(ホルミル基と、前記ホルミル基が連結基を介して結合しているフラン環骨格と、を有し、前記連結基が炭素原子間の二重結合を1個有し、1個のメチレン基が硫黄原子で置換されていてもよく、前記フラン環骨格中で酸素原子に隣接している炭素原子に、前記ホルミル基が前記連結基を介して結合した構造を有する、フラン環含有不飽和アルデヒド)である。
化合物群(1-13)に属する化合物は、フラン環含有ジエナール(ホルミル基と、前記ホルミル基が連結基を介して結合しているフラン環骨格と、を有し、前記連結基が炭素原子間の二重結合を2個有し、前記フラン環骨格中で酸素原子に隣接している炭素原子に、前記ホルミル基が前記連結基を介して結合した構造を有する、フラン環含有不飽和アルデヒド)である。
化合物群(1-14)に属する化合物は、チエニルカルバルデヒド類(ホルミル基と、前記ホルミル基が結合しているチオフェン環骨格と、を有し、前記チオフェン環骨格中で硫黄原子に隣接している炭素原子に、前記ホルミル基が結合した構造を有する、チオフェン環含有不飽和アルデヒド)である。
【0032】
すなわち、化合物群(1-10)~(1-14)に属する化合物は、ホルミル基を有し、ホルミル基が直接又は連結基を介して結合している基が、芳香族複素環式基であり、前記連結基において、1個のメチレン基が硫黄原子で置換されていてもよく、前記連結基が炭素原子間の二重結合を1個又は2個有し、ホルミル基が直接前記芳香族複素環式基に結合している場合には、ホルミル基中の炭素原子と、前記芳香族複素環式基中の二重結合を形成している炭素原子と、が結合し、ホルミル基が連結基を介して前記芳香族複素環式基に結合している場合には、ホルミル基中の炭素原子と、前記連結基中の二重結合を形成している炭素原子と、が結合しているという、構造上の共通点を有する。
【0033】
化合物群(2-1)~(2-26)に属する化合物は、アシル基(-C(=O)-R(式中、Rは炭化水素基であり、前記Rと、前記Rが結合しているカルボニル基中の炭素原子と、がさらに結合して、環を形成していてもよい。)、以下、同様)の結合先が非芳香族性の基であるα,β-不飽和ケトン(アシル基と、前記アシル基が結合している第1炭素原子と、前記第1炭素原子に、前記アシル基中の炭素原子とは別途に結合している第2炭素原子と、を有し、前記第1炭素原子と前記第2炭素原子との間の結合が、二重結合である化合物);
メチレン基(-CH2-)を有する前記α,β-不飽和ケトン中の1個のメチレン基が、酸素原子(-O-)又は硫黄原子(-S-)で置換された構造を有する置換α,β-不飽和ケトン;
アシル基と、前記アシル基が直接若しくは連結基を介して結合している、芳香族複素環式基又は脂肪族複素環式基と、を有し、前記芳香族複素環式基又は脂肪族複素環式基が、その複素環骨格中に、炭素原子間の二重結合(-C=C-)、又は炭素原子及び窒素原子間の二重結合(-C=N-)を有し、前記二重結合を形成している炭素原子に、前記アシル基が直接又は連結基を介して結合した構造を有する、不飽和ケトン;あるいは
脂肪族複素環式基を有し、前記脂肪族複素環式基がメチレン基を有している場合には、1個の前記メチレン基がカルボニル基で置換されていてもよく、前記脂肪族複素環式基が、その複素環骨格中に、炭素原子間の二重結合(-C=C-)、又は炭素原子及び窒素原子間の二重結合(-C=N-)を有し、かつ、前記二重結合を形成している炭素原子に隣接している炭素原子が、カルボニル基(-C(=O)-)を形成している、不飽和ケトンである。
すなわち、化合物群(2-1)~(2-26)に属する化合物は、アシル基と、前記アシル基が結合している第1炭素原子と、前記第1炭素原子に、前記アシル基中の炭素原子とは別途に結合している第2炭素原子又は窒素原子と、を有し、前記第1炭素原子と、前記第2炭素原子又は窒素原子と、の間の結合が、不飽和結合である、という構造上の共通点を有する。
本明細書においては、化合物群(2-1)~(2-26)に属する化合物を包括して、「不飽和ケトン」と称することがある。
【0034】
より具体的には、化合物群(2-1)に属する化合物は、鎖状脂肪族アルケノン又は置換鎖状脂肪族アルケノン(鎖状構造のみを有し、1個のメチレン基がカルボニル基で置換されていてもよく、炭素原子間の二重結合を1個有し、前記二重結合を形成している炭素原子と、アシル基中の炭素原子と、が結合している不飽和ケトン)である。
化合物群(2-2)に属する化合物は、鎖状脂肪族アルケノンモノエン類(鎖状構造のみを有し、炭素原子間の二重結合を2個有し、前記二重結合を形成しているいずれか1個の炭素原子と、アシル基中の炭素原子と、が結合している不飽和ケトン)である。
【0035】
化合物群(2-1)~(2-2)に属する化合物は、1個のメチレン基がカルボニル基で置換されていてもよい鎖状アルケノンである。
【0036】
化合物群(2-3)に属する化合物は、環状脂肪族アルケノン又は置換環状脂肪族アルケノン(環状構造を有し、1個のメチレン基が硫黄原子で置換されていてもよく、アシル基を構成している炭素原子を脂肪族環骨格外に1個有し、炭素原子間の二重結合を脂肪族環骨格中に1個有し、前記二重結合を形成している炭素原子と、アシル基中の炭素原子と、が結合している不飽和ケトン)である。
化合物群(2-4)に属する化合物は、環状脂肪族アルケノンモノエン類(環状構造を有し、アシル基を構成している炭素原子を、脂肪族環骨格外に1個有し、炭素原子間の二重結合を、脂肪族環骨格中及び脂肪族環骨格外に1個ずつ有するか、又は脂肪族環骨格外に2個有し、前記二重結合を形成している炭素原子と、アシル基中の炭素原子と、が結合している不飽和ケトン)である。
化合物群(2-5)に属する化合物は、環状脂肪族アルケノンジエン類又は置換環状脂肪族アルケノンジエン類(環状構造を有し、1個のメチレン基が硫黄原子で置換されていてもよく、アシル基を構成している炭素原子を、脂肪族環骨格外に1個有し、炭素原子間の二重結合を、脂肪族環骨格中及び脂肪族環骨格外に、合計で3個有し、前記二重結合を形成している炭素原子と、アシル基中の炭素原子と、が結合している不飽和ケトン)である。
【0037】
化合物群(2-3)~(2-5)に属する化合物は、1個のメチレン基が酸素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい環状アルケノンである。
【0038】
化合物群(2-6)に属する化合物は、環状脂肪族ケトンモノエン類(脂肪族環骨格を有し、アシル基を構成している炭素原子を、前記脂肪族環骨格中に1個有し、炭素原子間の二重結合を、脂肪族環骨格外に1個有し、前記二重結合を形成している炭素原子と、アシル基中の炭素原子と、が結合している不飽和ケトン)である。
化合物群(2-6)に属する化合物は、アシル基を構成している炭素原子と、二重結合を形成している一方の炭素原子と、をともに脂肪族環骨格中に有するが、前記二重結合を前記脂肪族環骨格中に有しないアルケノンである。
【0039】
化合物群(2-7)に属する化合物は、シクロアルケノン又は置換シクロアルケノン(シクロアルケノン環骨格を有し、1個のメチレン基が酸素原子で置換されていてもよく、シクロアルケノン環骨格中で、カルボニル基を構成している炭素原子と、炭素原子間の二重結合を形成している炭素原子と、が結合している不飽和ケトン)である。
化合物群(2-8)に属する化合物は、シクロアルケノンモノエン類又は置換シクロアルケノンモノエン類(シクロアルケノン環骨格と、前記シクロアルケノン環骨格に結合しているアルケニル基又はアルキリデン基を有し、1個のメチレン基が酸素原子で置換されていてもよく、シクロアルケノン環骨格中で、カルボニル基を構成している炭素原子と、炭素原子間の二重結合を形成している炭素原子と、が結合している不飽和ケトン)である。
化合物群(2-9)に属する化合物は、シクロアルケノンジエン類(シクロアルケノン環骨格と、前記シクロアルケノン環骨格に結合している不飽和炭化水素基と、を有し、1個のメチレン基が酸素原子で置換されていてもよく、前記不飽和炭化水素基は炭素原子間の二重結合を2個有し、シクロアルケノン環骨格中で、カルボニル基を構成している炭素原子と、炭素原子間の二重結合を形成している炭素原子と、が結合している不飽和ケトン)である。
【0040】
化合物群(2-7)~(2-9)に属する化合物は、1個のメチレン基が酸素原子で置換されていてもよいシクロアルケノンである。
【0041】
化合物群(2-10)に属する化合物は、芳香族アルケノン又は置換芳香族アルケノン(芳香族環式基を有し、1個のメチレン基が酸素原子で置換されていてもよく、前記芳香族環式基中の不飽和結合とは異なる、炭素原子間の二重結合と、アシル基とを、前記芳香族環式基外に1個ずつ有し、前記二重結合を形成している炭素原子と、アシル基中の炭素原子と、が結合している不飽和ケトン)である。
化合物群(2-10)に属する化合物は、1個のメチレン基が酸素原子で置換されていてもよい芳香族アルケノンである。
【0042】
化合物群(2-11)に属する化合物は、エポキシ基含有アルケノン(エポキシ基を有し、炭素原子間の二重結合を1個有し、前記二重結合を形成している炭素原子と、アシル基中の炭素原子と、が結合している不飽和ケトン)である。
化合物群(2-11)に属する化合物は、エポキシ基を有し、芳香族環式基を有さないアルケノンである。
【0043】
すなわち、化合物群(2-1)~(2-11)に属する化合物は、アシル基を有し、アシル基が結合している基は、炭素原子間の二重結合を有し、アシル基が結合している基において、1個のメチレン基がカルボニル基、酸素原子又は硫黄原子で置換されていてもよく、アシル基中の炭素原子と、前記二重結合を形成している炭素原子と、が結合しているという、構造上の共通点を有する。
【0044】
化合物群(2-12)に属する化合物は、アシルチアゾール類(アシル基と、前記アシル基が結合しているチアゾール環骨格と、を有し、前記チアゾール環骨格中で硫黄原子(-S-)に隣接しているいずれかの炭素原子に、前記アシル基が結合した構造を有する、チアゾール環含有不飽和ケトン)である。
化合物群(2-13)に属する化合物は、アシルチアゾリン類(アシル基と、前記アシル基が結合しているチアゾリン環骨格と、を有し、前記チアゾリン環骨格中で硫黄原子(-S-)と窒素原子(-N=)の両方に結合している炭素原子に、前記アシル基が結合した構造を有する、チアゾリン環含有不飽和ケトン)である。
化合物群(2-14)に属する化合物は、アシルピロール類(アシル基と、前記アシル基が結合しているピロール環骨格と、を有し、前記ピロール環骨格中のいずれかの炭素原子に、前記アシル基が結合した構造を有する、ピロール環含有不飽和ケトン)である。
化合物群(2-15)に属する化合物は、アシルピラジン類(アシル基と、前記アシル基が結合しているピラジン環骨格と、を有し、前記ピラジン環骨格中のいずれかの炭素原子に、前記アシル基が結合した構造を有する、ピラジン環含有不飽和ケトン)である。
化合物群(2-16)に属する化合物は、アシルピリジン類(アシル基と、前記アシル基が結合しているピリジン環骨格と、を有し、前記ピリジン環骨格中のいずれかの炭素原子に、前記アシル基が結合した構造を有する、ピリジン環含有不飽和ケトン)である。
化合物群(2-17)に属する化合物は、ヒドロピリジン類(アシル基と、前記アシル基が結合しているテトラヒドロピリジン環骨格と、を有し、前記テトラヒドロピリジン環骨格中で窒素原子(-NH-、-N=)に隣接し、かつ二重結合を形成している炭素原子に、前記アシル基が結合した構造を有する、テトラヒドロピリジン環含有不飽和ケトン)である。
化合物群(2-18)に属する化合物は、アシルピリミジン類(アシル基と、前記アシル基が結合しているピリミジン環骨格と、を有し、前記ピリミジン環骨格中のいずれかの炭素原子に、前記アシル基が結合した構造を有する、ピリミジン環含有不飽和ケトン)である。
化合物群(2-19)に属する化合物は、アシルフラン類(アシル基と、前記アシル基が結合しているフラン環骨格と、を有し、前記フラン環骨格中のいずれかの炭素原子に、前記アシル基が結合した構造を有する、フラン環含有不飽和ケトン)である。
化合物群(2-20)に属する化合物は、アシルチオフェン類(アシル基と、前記アシル基が結合しているチオフェン環骨格と、を有し、前記チオフェン環骨格中で硫黄原子(-S-)に隣接しているいずれかの炭素原子に、前記アシル基が結合した構造を有する、チオフェン環含有不飽和ケトン)である。
化合物群(2-21)に属する化合物は、アシルピロリン類(アシル基と、前記アシル基が結合しているピロリン環骨格と、を有し、前記ピロリン環骨格中で二重結合を形成している炭素原子に、前記アシル基が結合した構造を有する、ピロリン環含有不飽和ケトン)である。
化合物群(2-22)に属する化合物は、フラン環含有アルケノン(アシル基と、前記アシル基が連結基を介して結合しているフラン環骨格と、を有し、前記連結基が炭素原子間の二重結合を1個有し、前記アシル基を構成している炭素原子と、前記二重結合を形成している炭素原子と、が結合し、前記フラン環骨格中で酸素原子に隣接している炭素原子に、前記アシル基が前記連結基を介して結合した構造を有する、フラン環含有不飽和ケトン)である。
【0045】
すなわち、化合物群(2-12)~(2-22)に属する化合物は、アシル基を有し、アシル基が直接若しくは連結基を介して、芳香族複素環式基又は非芳香族複素環式基(芳香族性を有しない複素環式基)に結合し、前記連結基が炭素原子間の二重結合を1個有し、アシル基中の炭素原子と、前記芳香族複素環式基又は非芳香族複素環式基中の二重結合を形成している炭素原子と、が直接又は連結基を介して結合しているという、構造上の共通点を有する。
【0046】
化合物群(2-23)に属する化合物は、ピラノン類(4-ピラノン(別名:4-ピロン、γ-ピラノン、γ-ピロン)環骨格を有する、4-ピラノン誘導体)である。
化合物群(2-24)に属する化合物は、フラノン類(3(2H)-フラノン環骨格を有する、3(2H)-フラノン誘導体)である。
化合物群(2-25)に属する化合物は、オキソイソホロン類(イソホロン環骨格を有する、イソホロン誘導体)である。
化合物群(2-26)に属する化合物は、脂肪族複素環式基含有環状ケトン(チアゾリン環骨格と、テトラヒドロピリジン環骨格と、ピロリン環骨格と、4-ピラノン環骨格と、3(2H)-フラノン環骨格と、イソホロン環骨格と、のいずれにも該当しない脂肪族複素環式基を有し、前記脂肪族複素環式基が、その複素環骨格中に、炭素原子間の二重結合(-C=C-)、又は炭素原子及び窒素原子間の二重結合(-C=N-)を有し、かつ、前記二重結合を形成している炭素原子に隣接している炭素原子が、カルボニル基(-C(=O)-)を形成している、不飽和ケトン)である。
【0047】
すなわち、化合物群(2-23)~(2-26)に属する化合物は、非芳香族複素環骨格(芳香族性を有しない複素環骨格)を有し、前記非芳香族複素環骨格が、その中に、炭素原子間の二重結合(-C=C-)、又は炭素原子及び窒素原子間の二重結合(-C=N-)を有し、かつ、前記二重結合を形成している炭素原子に隣接している炭素原子が、カルボニル基(-C(=O)-)を形成しているという、構造上の共通点を有する。
【0048】
本明細書においては、化合物群(1-1)~(1-14)及び(2-1)~(2-26)に属する化合物のうち、立体異性体の区別がなされていない化合物については、すべての立体異性体が対応する化合物群に属するものとする。
【0049】
例えば、化合物群(1-1)において、2-ヘキセナールの場合、trans-2-ヘキセナール及びcis-2-ヘキセナールの両方が該当する。
同様に、2-ヘプテナールの場合、trans-2-ヘプテナール及びcis-2-ヘプテナールの両方が該当する。
同様に、2-オクテナールの場合、trans-2-オクテナール及びcis-2-オクテナールの両方が該当する。
同様に、2-ノネナールの場合、trans-2-ノネナール及びcis-2-ノネナールの両方が該当する。
同様に、2-デセナールの場合、trans-2-デセナール及びcis-2-デセナールの両方が該当する。
同様に、2-ウンデセナールの場合、trans-2-ウンデセナール及びcis-2-ウンデセナールの両方が該当する。
同様に、2-ドデセナールの場合、trans-2-ドデセナール及びcis-2-ドデセナールの両方が該当する。
同様に、2-トリデセナールの場合、trans-2-トリデセナール及びcis-2-トリデセナールの両方が該当する。
ただし、trans体及びcis体の両方が存在する化合物は、trans体であることが好ましい。
【0050】
例えば、化合物群(1-2)において、2,6-ノナジエナールの場合、trans,trans-2,6-ノナジエナール、cis,trans-2,6-ノナジエナール、trans,cis-2,6-ノナジエナール及びcis,cis-2,6-ノナジエナールのすべてが該当する。これらの中でも、2,6-ノナジエナールは、trans,trans-2,6-ノナジエナール又はtrans,cis-2,6-ノナジエナールであることが好ましい。
同様に、2,4-ヘプタジエナールの場合、trans,trans-2,4-ヘプタジエナール、cis,trans-2,4-ヘプタジエナール、trans,cis-2,4-ヘプタジエナール及びcis,cis-2,4-ヘプタジエナールのすべてが該当する。これらの中でも、2,4-ヘプタジエナールは、trans,trans-2,4-ヘプタジエナールであることが好ましい。
同様に、2,4-オクタジエナールの場合、trans,trans-2,4-オクタジエナール、trans,cis-2,4-オクタジエナール、cis,trans-2,4-オクタジエナール及びcis,cis-2,4-オクタジエナールのすべてが該当する。これらの中でも、2,4-オクタジエナールは、trans,trans-2,4-ヘプタジエナールであることが好ましい。
同様に、2,4-ノナジエナールの場合、trans,trans-2,4-ノナジエナール、trans,cis-2,4-ノナジエナール、cis,trans-2,4-ノナジエナール及びcis,cis-2,4-ノナジエナールのすべてが該当する。これらの中でも、2,4-ノナジエナールは、trans,trans-2,4-ノナジエナールであることが好ましい。
同様に、2,4-デカジエナールの場合、trans,trans-2,4-デカジエナール、trans,cis-2,4-デカジエナール、cis,trans-2,4-デカジエナール及びcis,cis-2,4-デカジエナールのすべてが該当する。これらの中でも、2,4-デカジエナールは、trans,trans-2,4-デカジエナールであることが好ましい。
同様に、2,4-ウンデカジエナールの場合、trans,trans-2,4-ウンデカジエナール、trans,cis-2,4-ウンデカジエナール、cis,trans-2,4-ウンデカジエナール及びcis,cis-2,4-ウンデカジエナールのすべてが該当する。これらの中でも、2,4-ウンデカジエナールは、trans,trans-2,4-ウンデカジエナールであることが好ましい。
【0051】
例えば、化合物群(2-4)において、メチルイオノンの場合、α-メチルイオノン(別名:L-メチルイオノン)及びβ-メチルイオノンの両方が該当する。これらの中でも、メチルイオノンは、α-メチルイオノンであることが好ましい。
化合物群(2-7)において、ピペリトンの場合、D-ピペリトンと、それ以外のピペリトン異性体のすべてが該当する。これらの中でも、ピペリトンは、D-ピペリトンであることが好ましい。
化合物群(2-8)において、カルボンの場合、D-カルボン及びL-とカルボンの両方が該当する。D-カルボン及びL-とカルボンはいずれも、カルボンとして好ましい。
【0052】
本実施形態の防カビ剤において、有効成分は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。すなわち、前記防カビ剤は、有効成分として、前記化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0053】
前記化合物は、無臭のもの又はにおいの弱いものが好ましい。このような前記化合物は、保存対象物に付着したとしても、保存対象物の使用時に、その存在を全く又はほとんど想起させないため、官能上好ましい。
前記化合物でにおいのあるものは、香料として使用可能なものが好ましい。このような前記化合物としては、例えば、食品添加物の天然香料に分類されるものが挙げられる。
【0054】
前記化合物としては、市販品を用いてもよいし、公知の方法によって製造したものを用いてもよい。
【0055】
本実施形態の防カビ剤は、前記化合物以外に、他の成分を含有していてもよい。
防カビ剤における前記他の成分は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
例えば、前記化合物は、溶媒に溶解又は分散させて用いてもよく、溶媒で希釈して用いてもよい。すなわち、前記他の成分としては、例えば、溶媒等が挙げられる。
【0056】
前記溶媒は、前記化合物の種類に応じて適宜選択すればよく、その種類は特に限定されない。
好ましい前記溶媒としては、例えば、有機溶媒、水が挙げられる。
【0057】
前記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール等のアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル(カルボン酸エステル);メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;シクロヘキサン、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
【0058】
前記防カビ剤が含有する前記溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0059】
前記防カビ剤が前記溶媒を含有する場合、前記防カビ剤において、前記防カビ剤の総質量に対する、前記溶媒の含有量の割合([防カビ剤の溶媒の含有量(質量部)]/[防カビ剤の総質量(質量部)]×100)は、特に限定されず、例えば、10~90質量%であってもよい。
【0060】
前記防カビ剤が前記溶媒以外の前記他の成分を含有する場合、前記他の成分の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、前記他の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
通常は、前記防カビ剤において、溶媒以外の成分(すなわち、前記化合物と、溶媒以外の前記他の成分)の合計含有量に対する、溶媒以外の前記他の成分の含有量の割合([防カビ剤の、溶媒以外の前記他の成分の含有量(質量部)]/[防カビ剤の、前記化合物と、溶媒以外の前記他の成分と、の合計含有量(質量部)]×100)は、溶媒の含有の有無によらず、20質量%以下であることが好ましく、例えば、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、及び1質量%以下のいずれかであってもよい。これは、前記防カビ剤において、溶媒以外の成分の合計含有量に対する、前記化合物の含有量の割合([防カビ剤の前記化合物の含有量(質量部)]/[防カビ剤の、前記化合物と、溶媒以外の前記他の成分と、の合計含有量(質量部)]×100)が、溶媒の含有の有無によらず、80質量%以上であることが好ましく、例えば、90質量%以上、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい、ことと同義である。
【0061】
前記防カビ剤の使用によって、カビの増殖抑制効果(防カビ効果)が認められるカビ(微生物)は、一概に特定範囲のものに限定されないが、防カビ効果が高いものとしては、クラドスポリウム(Cladosporium)属に属する微生物が挙げられる。すなわち、前記防カビ剤は、クラドスポリウム属に属する微生物用であることが好ましい。
クラドスポリウム属に属する微生物としては、例えば、クラドスポリウム クラドスポリオイデス(NBRC6368)(Cladosporium cladosporioides(NBRC6368))等が挙げられる。
【0062】
前記防カビ剤のうち、2種以上の成分を含有するものは、これらの成分を配合することで得られる。
【0063】
各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよく、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー、ニーダー又はビーズミル等を使用して混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
【0064】
配合時の温度、及び配合時間は、各成分が劣化しない限り特に限定されない。配合時の温度は、例えば、5~50℃であってよく、配合時間は、例えば、5~60分であってよいが、これらは一例である。
【0065】
<<防カビ樹脂フィルム>>
本発明の一実施形態に係る防カビ樹脂フィルムは、前記防カビ剤(前記化合物を有効成分とする防カビ剤)と、樹脂と、を含む。
本実施形態の防カビ樹脂フィルムは、前記防カビ剤を含んでいることにより、優れた防カビ性を有する。
【0066】
前記防カビ樹脂フィルムは、その中に含まれている前記化合物が、防カビ樹脂フィルムの内部から外部に徐々に移行することで、防カビ性を持続的に発現する。前記化合物は、常温及び常圧下で気化可能であるため、防カビ樹脂フィルムの外部へ、気体状となって移行可能である。
【0067】
前記防カビ樹脂フィルムは、前記防カビ剤、前記樹脂等の、防カビ樹脂フィルムを構成するための成分を含有する防カビ樹脂組成物を用いて製造できる。より具体的には、液状の前記防カビ樹脂組成物を、防カビ樹脂フィルムの形成対象面に塗工し、必要に応じて乾燥させることで、防カビ樹脂フィルムが得られる。
後述するような複数層からなる防カビ樹脂フィルムは、例えば、1層(単層)の防カビ樹脂フィルムを複数枚作製し、これらを貼り合わせることで、製造できる。
【0068】
前記防カビ樹脂組成物は、例えば、スピンコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター、マルチコーター等の各種コーターを用いて、塗工できる。
【0069】
<樹脂>
前記樹脂は、前記防カビ樹脂フィルムにおいて、フィルムの形状を維持するために必要な成分である。前記樹脂は、このような機能を有するものであれば、特に限定されないが、接着性樹脂(本明細書においては「接着剤」と称することがある)であることが好ましい。前記樹脂として、接着性樹脂(接着剤)を用いることで、防カビ樹脂フィルムを、接着性を有するもの(すなわち、接着性防カビ樹脂フィルム)とすることができ、例えば、別途接着剤層を設けることなく、後述する防カビ積層フィルムを構成できる。
【0070】
好ましい前記接着性樹脂としては、例えば、ポリウレタン等のウレタン系接着剤(ウレタン結合を有する接着性樹脂);アクリル系共重合樹脂等のアクリル系接着剤((メタ)アクリロイル基を有する接着性樹脂);チタネート系接着剤(チタン酸エステルを用いて得られた接着性樹脂);イミン系接着剤(エチレンイミンを用いて得られた接着性樹脂);スチレン・ブタジエン共重合体等のブタジエン系接着剤(モノマーとしてブタジエンを用いて得られた接着性樹脂);ポリ酢酸ビニル等のポリエステル系接着剤(エステル結合を有する接着性樹脂);イソブテン・無水マレイン酸共重合樹脂等のオレフィン系接着剤(モノマー成分としてオレフィンを用いて得られた接着性樹脂)等が挙げられる。
【0071】
本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包含する概念である。
【0072】
前記防カビ樹脂フィルムが含む前記樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
前記防カビ樹脂フィルムは、例えば、前記樹脂として、接着性を有しない非接着性樹脂のみを1種又は2種以上含んでいてもよいし、接着性樹脂のみを1種又は2種以上含んでいてもよいし、非接着性樹脂及び接着性樹脂を、それぞれ1種又は2種以上含んでいてもよい。
【0073】
前記防カビ樹脂フィルムは、前記樹脂として、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、チタネート系接着剤、イミン系接着剤、ブタジエン系接着剤、ポリエステル系接着剤及びオレフィン系接着剤からなる群より選択される1種又は2種以上を含み、接着性を有することが好ましい。
【0074】
<他の成分>
前記防カビ樹脂フィルム及び防カビ樹脂組成物は、前記防カビ剤及び樹脂以外に、これらのいずれにも該当しない他の成分を含んでいてもよい。
防カビ樹脂フィルム及び防カビ樹脂組成物が含む前記他の成分は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
【0075】
前記防カビ樹脂フィルム及び防カビ樹脂組成物が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0076】
前記防カビ樹脂フィルム及び防カビ樹脂組成物が含む前記他の成分としては、例えば、上述の本実施形態の防カビ剤に該当しない防カビ剤(本明細書においては、「他の防カビ剤」と称することがある)、硬化剤、架橋剤等が挙げられる。前記硬化剤及び架橋剤は、前記樹脂に対して作用する成分である。
本明細書においては、単なる「防カビ剤」との記載は、前記他の防カビ剤ではなく、上述の本実施形態の防カビ剤を意味する。
【0077】
前記防カビ樹脂組成物が含む前記他の成分としては、例えば、溶媒が挙げられる。前記溶媒は、前記防カビ樹脂組成物の取り扱い性を良好にするための成分であり、その種類は本発明の効果を損なわない限り特に限定されない。
前記防カビ樹脂組成物が含む前記溶媒としては、例えば、上述の本実施形態の防カビ剤が含有していてもよいものとして先に挙げた溶媒と同様のものが挙げられる。
【0078】
前記防カビ樹脂フィルムにおいて、前記防カビ樹脂フィルムの総質量に対する、前記化合物の含有量の割合([防カビ樹脂フィルムの前記化合物の含有量(質量部)]/[防カビ樹脂フィルムの総質量(質量部)]×100)は、特に限定されないが、10~60質量%であることが好ましく、例えば、10~26質量%、26~43質量%、及び43~60質量%のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、防カビ樹脂フィルムの防カビ効果がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、防カビ樹脂フィルムにおいて、前記化合物が高い均一性でより安定して保持される。
前記割合は、通常、前記防カビ樹脂組成物における、常温で気化しない成分の総含有量に対する、前記化合物の含有量の割合([防カビ樹脂組成物の前記化合物の含有量(質量部)]/[防カビ樹脂組成物の、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)]×100)、と同じである。
【0079】
前記防カビ樹脂フィルムにおいて、前記防カビ樹脂フィルムの総質量に対する、前記樹脂の含有量の割合([防カビ樹脂フィルムの樹脂の含有量(質量部)]/[防カビ樹脂フィルムの総質量(質量部)]×100)は、特に限定されず、例えば、40~90質量%であってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、防カビ樹脂フィルムの形状安定性がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、防カビ樹脂フィルムの形状安定性が高くなる効果と、防カビ樹脂フィルムの防カビ効果が高くなる効果と、がバランスよく得られる。
前記割合は、通常、前記防カビ樹脂組成物における、常温で気化しない成分の総含有量に対する、前記樹脂の含有量の割合([防カビ樹脂組成物の樹脂の含有量(質量部)]/[防カビ樹脂組成物の、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)]×100)、と同じである。
【0080】
前記防カビ樹脂フィルムにおいて、前記防カビ樹脂フィルムの総質量に対する、前記化合物と、前記樹脂と、の合計含有量の割合([防カビ樹脂フィルムの、前記化合物と、前記樹脂と、の合計含有量(質量部)]/[防カビ樹脂フィルムの総質量(質量部)]×100)は、特に限定されないが、80質量%以上であることが好ましく、例えば、90質量%以上、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、防カビ樹脂フィルムの防カビ効果と、形状安定性と、がより高くなる。
一方、前記割合は100質量%以下である。
前記割合は、通常、前記防カビ樹脂組成物における、常温で気化しない成分の総含有量に対する、前記化合物と、前記樹脂と、の合計含有量の割合([防カビ樹脂組成物の、前記化合物と、前記樹脂と、の合計含有量(質量部)]/[防カビ樹脂組成物の、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)]×100)、と同じである。
【0081】
前記防カビ樹脂フィルムにおいて、前記防カビ樹脂フィルムの総質量に対する、溶媒以外の前記他の成分の含有量の割合は、例えば、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、及び1質量%以下のいずれかであってもよい。
【0082】
前記防カビ樹脂組成物が前記溶媒を含有する場合、防カビ樹脂組成物において、防カビ樹脂組成物の総質量に対する、溶媒の含有量の割合([防カビ樹脂組成物の溶媒の含有量(質量部)]/[防カビ樹脂組成物の総質量(質量部)]×100)は、特に限定されないが、10~80質量%であることが好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、溶媒を用いたことにより得られる効果がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、溶媒の過剰使用が抑制される。
【0083】
前記防カビ樹脂フィルムは1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。防カビ樹脂フィルムが複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0084】
本明細書においては、前記防カビ樹脂フィルムの場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0085】
前記防カビ樹脂フィルムの厚さは、防カビ樹脂フィルムの用途に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。
防カビ樹脂フィルムを用いて、例えば、袋状等の包装体を製造する場合には、防カビ樹脂フィルムの厚さは、10~50μmであることが好ましく、20~46μmであることがより好ましい。防カビ樹脂フィルムの厚さが前記下限値以上であることで、防カビ樹脂フィルムの強度がより高くなる。さらに、厚さが前記下限値以上である防カビ樹脂フィルムにおいては、前記防カビ剤の含有量の調節がより容易である。一方、防カビ樹脂フィルムの厚さが前記上限値以下であることで、防カビ樹脂フィルムの厚さが過剰となることが避けられる。そして、例えば、防カビ樹脂フィルムの柔軟性がより高くなる。
防カビ樹脂フィルムが複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の数値範囲内であることが好ましい。
【0086】
<<防カビ積層フィルム>>
本発明の一実施形態に係る防カビ積層フィルムは、上述の本発明の一実施形態に係る防カビ樹脂フィルムと、第1樹脂層と、第2樹脂層と、を備え、前記防カビ樹脂フィルムが、前記第1樹脂層と、前記第2樹脂層と、の間に配置され、前記第1樹脂層の25℃、65%RHの雰囲気下における酸素ガス透過量が、3000cm3/m2・atm・day以上である。
本実施形態の防カビ積層フィルムは、前記防カビ樹脂フィルムを用いていることで、優れた防カビ性を有し、目的物を収納して保存するための包装体の製造に好適である。
【0087】
図1は、本実施形態の防カビ積層フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
なお、以降の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0088】
ここに示す防カビ積層フィルム1は、防カビ樹脂フィルム12と、第1樹脂層11と、第2樹脂層13と、を備え、防カビ樹脂フィルム12が、第1樹脂層11と、第2樹脂層13と、の間に配置されて、概略構成されている。すなわち、防カビ積層フィルム1は、第1樹脂層11、防カビ樹脂フィルム12及び第2樹脂層13がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成されている。
第1樹脂層11の25℃、65%RH(相対湿度)の雰囲気下における酸素ガス透過量は、3000cm3/m2・atm・day以上である。
【0089】
防カビ積層フィルム1において、防カビ樹脂フィルム12は第1樹脂層11に直接接触して配置され、第2樹脂層13は防カビ樹脂フィルム12に直接接触して配置されている。
【0090】
第1樹脂層11の露出面(防カビ樹脂フィルム12側とは反対側の表面、本明細書においては「第2面」と称することがある)11bは、防カビ積層フィルム1の一方の表面である。
第2樹脂層13の露出面(防カビ樹脂フィルム12側とは反対側の表面、本明細書においては「第1面」と称することがある)13aは、防カビ積層フィルム1の他方の表面である。
【0091】
本実施形態の防カビ積層フィルムは、
図1に示す防カビ積層フィルム1に限定されず、例えば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、防カビ積層フィルム1において、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
例えば、防カビ積層フィルム1は、防カビ樹脂フィルム12と、第1樹脂層11と、第2樹脂層13と、を備えて構成されているが、本実施形態の防カビ積層フィルムは、さらに、これら以外の他の層を備えていてもよい。前記他の層の配置位置は、第1樹脂層と防カビ樹脂フィルムとの間、防カビ樹脂フィルムと第2樹脂層との間、第1樹脂層の防カビ樹脂フィルム側とは反対側、及び第2樹脂層の防カビ樹脂フィルム側とは反対側、のいずれであってもよい。
以下、防カビ積層フィルムを構成する各層について、より詳細に説明する。
【0092】
<第1樹脂層>
第1樹脂層は、防カビ積層フィルムを用いて目的物を保存するときに、防カビ樹脂フィルムよりも保存対象物側に配置される。例えば、防カビ積層フィルムを用いて製造された袋状等の包装体においては、第1樹脂層が防カビ樹脂フィルムよりも、この包装体の収納空間側に配置される。
したがって、例えば、第1樹脂層が防カビ積層フィルムの一方の最外層(最も外側に配置される層)である場合には、包装体において、第1樹脂層が保存対象物と接触する。
このように、包装体において、第1樹脂層は、防カビ樹脂フィルムの保存対象物との接触を防止し、これにより、防カビ樹脂フィルムから保存対象物への防カビ剤の過剰な移行を抑制する。
【0093】
第1樹脂層の、25℃、65%RH(相対湿度)の雰囲気下における酸素ガス透過量は、3000cm3/m2・atm・day以上であり、例えば、4000cm3/m2・atm・day以上、及び5000cm3/m2・atm・day以上のいずれかであってもよい。第1樹脂層の前記酸素ガス透過量が前記下限値以上であることで、防カビ樹脂フィルムの内部から第1樹脂層側へ移行した前記化合物が、第1樹脂層を介してその外部(防カビ積層フィルムの第1樹脂層側の外部)へ容易に移行する。これにより、防カビ積層フィルムは、優れた防カビ効果を発現する。
【0094】
一方、第1樹脂層の、25℃、65%RH(相対湿度)の雰囲気下における酸素ガス透過量の上限値は、特に限定されない。例えば、前記酸素ガス透過量が10000cm3/m2・atm・day以下である第1樹脂層は、より容易に形成できる。
【0095】
第1樹脂層の前記酸素ガス透過量は、JIS K 7126-2に準拠して測定できる。
後述する第2樹脂層の酸素ガス透過量も、同じ方法で測定できる。
【0096】
第1樹脂層の前記酸素ガス透過量は、例えば、後述する樹脂等の、第1樹脂層が含む成分の種類と、その含有量を調節することで、調節できる。第1樹脂層の前記酸素ガス透過量は、第1樹脂層の厚さを調節することでも、調節できる。
【0097】
第1樹脂層は、樹脂を含む。
第1樹脂層が含む前記樹脂の種類は、上述の酸素ガス透過量の条件を満たすものであれば、特に限定されない。
例えば、上述の酸素ガス透過量を容易に達成でき、後述する防カビ包装体の製造も容易である点では、好ましい前記樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)等のポリエチレン(PE)が挙げられる。
第1樹脂層が含む前記樹脂としては、これら以外の合成樹脂も挙げられる。
【0098】
第1樹脂層が含む樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0099】
第1樹脂層が含む樹脂は、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及びメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンからなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0100】
第1樹脂層は、前記樹脂以外に、他の成分を含んでいてもよい。
第1樹脂層が含む前記他の成分は、非樹脂成分であれば特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
【0101】
第1樹脂層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0102】
第1樹脂層において、第1樹脂層の総質量に対する、樹脂の含有量の割合([第1樹脂層の樹脂の含有量(質量部)]/[第1樹脂層の総質量(質量部)]×100)は、特に限定されないが、90質量%以上であることが好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、第1樹脂層の形成がより容易となる。
一方、前記割合は100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述する第1樹脂組成物における、常温で気化しない成分の総含有量に対する、樹脂の含有量の割合([第1樹脂組成物の樹脂の含有量(質量部)]/[第1樹脂組成物の、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)]×100)、と同じである。
【0103】
第1樹脂層において、樹脂の合計含有量に対する、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及びメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンの合計含有量の割合([第1樹脂層の低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及びメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンの合計含有量(質量部)]/[第1樹脂層の樹脂の合計含有量(質量部)]×100)は、特に限定されないが、90質量%以上であることが好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン又はメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンを用いたことにより得られる効果が、より高くなる。
一方、前記割合は100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述する第1樹脂組成物における、樹脂の合計含有量に対する、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及びメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンの合計含有量の割合([第1樹脂組成物の低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及びメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンの合計含有量(質量部)]/[第1樹脂組成物の樹脂の合計含有量(質量部)]×100)と同じである。
例えば、第1樹脂層又は第1樹脂組成物が、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及びメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンのいずれかを含まない場合には、第1樹脂層又は第1樹脂組成物の、その樹脂の含有量は、0質量部である。
【0104】
第1樹脂層は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。第1樹脂層が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0105】
第1樹脂層の厚さは、特に限定されないが、9~40μmであることが好ましく、12 ~30μmであることがより好ましい。第1樹脂層の厚さが前記下限値以上であることで、第1樹脂層の強度がより高くなる。さらに、防カビ樹脂フィルムから、第1樹脂層を介して、防カビ積層フィルムの外部(第1樹脂層側の外部)へ、前記化合物が過剰に移行することを抑制できる。一方、第1樹脂層の厚さが前記上限値以下であることで、第1樹脂層の厚さが過剰となることが避けられる。さらに、防カビ樹脂フィルムから、第1樹脂層を介して、防カビ積層フィルムの外部(第1樹脂層側の外部)へ、前記化合物がより容易に移行する。
第1樹脂層が複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の数値範囲内であることが好ましい。
【0106】
<防カビ樹脂フィルム>
防カビ積層フィルムが備えている防カビ樹脂フィルムは、先に説明した、本実施形態の防カビ樹脂フィルムである。ここでは、防カビ樹脂フィルムについての詳細な説明は省略する。
【0107】
<第2樹脂層>
第2樹脂層は、防カビ積層フィルムを用いて目的物を保存するときに、防カビ樹脂フィルムよりも、保存対象物から離れて配置される。例えば、防カビ積層フィルムを用いて作製された袋状等の包装体においては、防カビ樹脂フィルムが第2樹脂層よりも、この包装体の収納空間側に配置される。
第2樹脂層は、防カビ樹脂フィルムを保護する機能を有する。
【0108】
第2樹脂層の、25℃、65%RH(相対湿度)の雰囲気下における酸素ガス透過量は、3000cm3/m2・atm・day以下であることが好ましく、例えば、2500cm3/m2・atm・day以下、及び2000cm3/m2・atm・day以下のいずれかであってもよい。
第2樹脂層の前記酸素ガス透過量の上限値が小さいほど、防カビ樹脂フィルムの内部から第2樹脂層への前記化合物の移行と、第2樹脂層から、防カビ積層フィルムの第2樹脂層側の外部への、前記化合物の移行とが、効果的に抑制される。その結果、防カビ樹脂フィルムの内部から保存対象物側へ移行する前記化合物の量を、長期間、適切な水準で維持できるため、防カビ積層フィルムは、より優れた防カビ効果を発現する。さらに、例えば、防カビ積層フィルムを用いて製造された袋状の包装体に目的物を収納して、封止した場合には、この包装体の外部への前記化合物の移行が抑制され、目的物の保存時に、前記化合物の使用を全く又はほとんど想起させず、官能上好ましい。
さらに、第2樹脂層の前記酸素ガス透過量の上限値が小さいほど、防カビ積層フィルムの第2樹脂層側の外部から、第2樹脂層を介して、第1樹脂層側に、酸素ガスが移行し難くなる。その結果、目的物を、その品質を劣化させずに保存できる効果が、より高くなる。
【0109】
一方、第2樹脂層の、25℃、65%RH(相対湿度)の雰囲気下における酸素ガス透過量の下限値は、特に限定されない。例えば、前記酸素ガス透過量が50cm3/m2・atm・day以上である第2樹脂層は、より容易に形成できる。
【0110】
第2樹脂層の前記酸素ガス透過量は、例えば、後述する樹脂等の、第2樹脂層が含む成分の種類と、その含有量を調節することで、調節できる。第2樹脂層の前記酸素ガス透過量は、第2樹脂層の厚さを調節することでも、調節できる。
【0111】
第2樹脂層は、樹脂を含む。
第2樹脂層が含む前記樹脂の種類は、特に限定されず、上述の酸素ガス透過量の条件を満たすものが好ましい。
例えば、上述の酸素ガス透過量を容易に達成でき、後述する防カビ包装体の製造も容易である点では、好ましい前記樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等のポリエステル;ナイロン等のポリアミド;ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。
第2樹脂層が含む前記樹脂としては、これら以外の合成樹脂も挙げられる。
【0112】
第2樹脂層が含む樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0113】
第2樹脂層が含む樹脂は、ポリエステル、ポリアミド及びポリプロピレンからなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0114】
第2樹脂層は、前記樹脂以外に、他の成分を含んでいてもよい。
第2樹脂層が含む前記他の成分は、非樹脂成分であれば特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
【0115】
第2樹脂層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0116】
第2樹脂層において、第2樹脂層の総質量に対する、樹脂の含有量の割合([第2樹脂層の樹脂の含有量(質量部)]/[第2樹脂層の総質量(質量部)]×100)は、特に限定されないが、90質量%以上であることが好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、第2樹脂層の形成がより容易となる。
一方、前記割合は100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述する第2樹脂組成物における、常温で気化しない成分の総含有量に対する、樹脂の含有量の割合([第2樹脂組成物の樹脂の含有量(質量部)]/[第2樹脂組成物の、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)]×100)、と同じである。
【0117】
第2樹脂層において、樹脂の合計含有量に対する、ポリエステル、ポリアミド及びポリプロピレンの合計含有量の割合([第2樹脂層のポリエステル、ポリアミド及びポリプロピレンの合計含有量(質量部)]/[第2樹脂層の樹脂の合計含有量(質量部)]×100)は、特に限定されないが、90質量%以上であることが好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、ポリエステル、ポリアミド又はポリプロピレンを用いたことにより得られる効果が、より高くなる。
一方、前記割合は100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述する第2樹脂組成物における、樹脂の合計含有量に対する、ポリエステル、ポリアミド及びポリプロピレンの合計含有量の割合([第2樹脂組成物のポリエステル、ポリアミド及びポリプロピレンの合計含有量(質量部)]/[第2樹脂組成物の樹脂の合計含有量(質量部)]×100)と同じである。
例えば、第2樹脂層又は第2樹脂組成物が、ポリエステル、ポリアミド及びポリプロピレンのいずれかを含まない場合には、第2樹脂層又は第2樹脂組成物の、その樹脂の含有量は、0質量部である。
【0118】
第2樹脂層は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。第2樹脂層が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0119】
第2樹脂層の厚さは、特に限定されないが、9~40μmであることが好ましく、15~30μmであることがより好ましい。第2樹脂層の厚さが前記下限値以上であることで、第2樹脂層の強度がより高くなる。さらに、防カビ樹脂フィルムから、第2樹脂層を介して、防カビ積層フィルムの外部(第2樹脂層側の外部)へ、前記化合物が移行する量を、より顕著に低減できる。一方、第2樹脂層の厚さが前記上限値以下であることで、第2樹脂層の厚さが過剰となることが避けられる。
第2樹脂層が複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の数値範囲内であることが好ましい。
【0120】
<他の層>
本実施形態の防カビ積層フィルムは、上述のとおり、第1樹脂層と、防カビ樹脂フィルムと、第2樹脂層と、のいずれにも該当しない他の層を備えていてもよく、前記他の層は特に限定されず、目的に応じて適宜選択できる。
防カビ積層フィルムが前記他の層を備えている場合の、前記他の層の配置位置も、目的に応じて適宜選択できる。
【0121】
ただし、本実施形態の防カビ積層フィルムは、第1樹脂層、防カビ樹脂フィルム及び第2樹脂層がこの順に、これらの厚さ方向において、互いに直接接触して積層されていることが好ましい。このように、第1樹脂層と防カビ樹脂フィルムとの間、並びに防カビ樹脂フィルムと第2樹脂層との間に、いずれも前記他の層を備えていないことにより、防カビ積層フィルムの防カビ効果が、より高くなる。
【0122】
本実施形態の防カビ積層フィルムは、第1樹脂層の防カビ樹脂フィルムを備えている側とは反対側には、前記他の層を備えていないことが好ましい。このように、第1樹脂層が防カビ積層フィルムの一方の最外層となっていることにより、防カビ積層フィルムの防カビ効果が、より高くなる。
【0123】
本実施形態の防カビ積層フィルムは、上述の防カビ樹脂フィルム用の防カビ樹脂組成物を用い、積層フィルムの公知の製造方法を適用することで製造できる。
例えば、第1樹脂層及び第2樹脂層のいずれか一方の表面(片面)に前記防カビ樹脂組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、防カビ樹脂フィルムを形成するとともに、第1樹脂層又は第2樹脂層と、防カビ樹脂フィルムと、が積層されて構成された中間積層体を形成する。このときの防カビ樹脂フィルムの形成方法は、先に説明した防カビ樹脂フィルムの製造方法と同じである。
【0124】
次いで、前記中間積層体における防カビ樹脂フィルムの露出面(第1樹脂層又は第2樹脂層が設けられていない側の表面)と、第2樹脂層又は第1樹脂層の表面(片面)と、を貼り合わせることで、防カビ積層フィルムを形成する。ここで、「第2樹脂層又は第1樹脂層」とは、前記中間積層体において、第1樹脂層が防カビ樹脂フィルムに積層されている場合には、第2樹脂層を意味し、前記中間積層体において、第2樹脂層が防カビ樹脂フィルムに積層されている場合には、第1樹脂層を意味する。
前記中間積層体と、第2樹脂層又は第1樹脂層と、の貼り合わせは、公知の各種ラミネート法を適用することで、行うことができる。
【0125】
第1樹脂層及び第2樹脂層はいずれも、公知の樹脂フィルムの製造方法を適用することで、作製できる。
【0126】
前記他の層を備えた防カビ積層フィルムを製造する場合には、上述の製造方法において、前記他の層が目的の位置に配置されるよう、適切なタイミングで、前記他の層を形成する工程を追加して行えばよい。
【0127】
ここまでは、防カビ積層フィルムの製造方法として、前記防カビ樹脂組成物を用いて、防カビ樹脂フィルムと前記中間積層体を同時に形成する工程を有するものについて説明した。ただし、防カビ積層フィルムの製造方法は、これに限定されない。
【0128】
例えば、あらかじめ形成済みの防カビ樹脂フィルムを用いて、前記中間積層体を形成する工程を有する製造方法でも、防カビ積層フィルムを製造できる。
その場合には、まず、剥離処理面を有する剥離フィルムの前記剥離処理面に、前記防カビ樹脂組成物を用いて、防カビ樹脂フィルムを形成する。このときの防カビ樹脂フィルムの形成方法は、先に説明した防カビ樹脂フィルムの製造方法と同じである。形成済みの防カビ樹脂フィルムは、剥離フィルムを備えていない側の表面に、さらに別途剥離フィルムを備えたものとしてもよい。
【0129】
次いで、適切なタイミングで剥離フィルムを取り除き、防カビ樹脂フィルムの一方の表面に第1樹脂層を貼り合わせ、防カビ樹脂フィルムの他方の表面に第2樹脂層を貼り合わせることで、防カビ積層フィルムを形成する。防カビ樹脂フィルムと第1樹脂層との貼り合わせ、並びに防カビ樹脂フィルムと第2樹脂層との貼り合わせは、いずれか一方を先に行い、他方を後で行って、順次行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0130】
<<防カビ包装体>>
本発明の一実施形態に係る防カビ包装体は、上述の本発明の一実施形態に係る防カビ積層フィルムを用いて構成され、前記防カビ包装体は、前記第1樹脂層同士の一部が接着され、形成されている収納空間を有し、前記防カビ樹脂フィルムが前記第2樹脂層よりも前記収納空間側に配置されている。
本実施形態の防カビ包装体は、前記防カビ積層フィルム(防カビ樹脂フィルム)を用いていることで、優れた防カビ性を有し、目的物の保存中に収納空間内において、カビの増殖を顕著に抑制する。
【0131】
図2は、本実施形態の防カビ包装体の一例を模式的に示す断面図である。
図2において、
図1に示すものと同じ構成要素には、
図1の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0132】
ここに示す防カビ包装体10は、
図1に示す防カビ積層フィルム1を用いて構成されている。防カビ包装体10は、一対の防カビ積層フィルム1,1の第1樹脂層11,11同士の一部が接着され、形成されている収納空間Sを有しており、防カビ樹脂フィルム12が第2樹脂層13よりも収納空間S側に配置されて、概略構成されている。すなわち、一対の防カビ積層フィルム1,1は、これらの第1樹脂層11,11同士が対向するように配置されている。より具体的には、防カビ包装体10においては、第1樹脂層11の第2面11b同士が接着されており、第2樹脂層13の第1面13aはいずれも、露出面となっている。なお、
図2においては、防カビ積層フィルム1中での第1樹脂層11、防カビ樹脂フィルム12及び第2樹脂層13の区別を省略している。
防カビ包装体10の収納空間Sには、目的とする保存対象物(図示略)が収納される。
【0133】
防カビ包装体10においては、防カビ樹脂フィルム12の内部から第1樹脂層11を介して収納空間S内へ、前記化合物が容易に移行する。これにより、防カビ包装体10は、収納空間S内の前記化合物の濃度を適切な水準で一定期間維持でき、優れた防カビ効果を発現する。
さらに、防カビ包装体10においては、第1樹脂層11により、収納空間S内の保存対象物と防カビ樹脂フィルム12との接触が防止され、防カビ樹脂フィルム12から保存対象物への防カビ剤の過剰な移行が抑制される。
【0134】
防カビ包装体10においては、先に説明したとおり、第2樹脂層13の構成を調節することで、防カビ効果の持続性や、外部からの酸素ガスによる保存対象物の劣化の抑制効果を、より高めることが可能である。
防カビ包装体10を用い、前記化合物の種類を調節することで、保存後の使用時における保存対象物を、前記化合物(防カビ剤)の使用を全く又はほとんど想起させないような、官能上好ましいものとすることもできる。
【0135】
ここまでは、本実施形態の防カビ包装体として、
図1に示す防カビ積層フィルム1を用いて構成されたものについて説明したが、本実施形態の防カビ包装体は、本実施形態の他の防カビ積層フィルムを用いて構成されていてもよい。
【0136】
本実施形態の防カビ包装体は、上述のものに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
例えば、
図2に示す防カビ包装体10は、一対の同じ種類の防カビ積層フィルム1,1を用いて構成されているが、本実施形態の防カビ包装体は、一対の異なる種類の防カビ積層フィルム用いて構成されていてもよい。
例えば、本実施形態の防カビ包装体は、本発明の効果を損なわない範囲内において、防カビ積層フィルム以外の他の構成を備えていてもよい。前記他の構成は特に限定されず、目的に応じて適宜選択できる。
【0137】
本実施形態の防カビ包装体は、本実施形態の防カビ積層フィルムを用いて、収納空間を有するように、第1樹脂層同士の一部を接着することで製造できる。
第1樹脂層同士の接着は、例えば、公知の各種ラミネート法を適用することで、行うことができる。
【実施例0138】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0139】
<化合物の防カビ性の評価>
[実施例1]
以下に示すペーパーディスク法により、化合物群(1-1)に属する、常温及び常圧下で液状の2-ヘキセナールの防カビ性を確認した。
すなわち、下皿(口径85mm)と上皿(口径90mm)で構成されたプラスチック製シャーレを用意した。
前記下皿の底面全面を覆うようにして、寒天培地層を設けた。微生物の胞子として、クラドスポリウム クラドスポリオイデス(NBRC6368)(Cladosporium cladosporioides(NBRC6368))の胞子を、約1×106個/mLの胞子数で懸濁させた懸濁液を調製し、この懸濁液(100μL)をこの寒天培地層の表面全面に塗布した。
直径8mmのペーパーディスクに、2-ヘキセナール(1μL)を浸み込ませた。前記上皿を、その底面を上向きにした状態とし、前記底面上の中央部に、この2-ヘキセナールを含むペーパーディスクを載置した。
上記で作製した、寒天培地層付きの下皿を、寒天培地層の懸濁液塗布済みの表面を下向きにして、この表面を上皿内のペーパーディスクに対向させ、下皿を上皿に被せた。これにより、下皿と上皿によって形成された密封空間であって、その上部(下皿の底面上)には懸濁液塗布済みの寒天培地層が配置され、その下部(上皿の底面上)には、2-ヘキセナールを含むペーパーディスクが、寒天培地層とは接触することなく配置された密封空間を形成した。すなわち、前記微生物の胞子を付着させた寒天培地層と、この寒天培地層とは非接触に配置された、2-ヘキセナールを含むペーパーディスクと、を備えたプラスチック製シャーレを作製した。
【0140】
次いで、この寒天培地層とペーパーディスクを備えたプラスチック製シャーレを、25℃の温度条件下で5日間静置保管し、寒天培地層での前記微生物の生育状態を確認した。その結果、寒天培地層には、菌糸の伸長と胞子の形成がいずれも認められなかった。すなわち、発育阻止円の直径は85mm超であり、胞子形成阻止領域の存在の有無を確認できなかった。このように、寒天培地層に付着させた前記微生物の生育は、気化した2-ヘキセナールによって高度に阻害されており、2-ヘキセナールは優れた防カビ性を示した。
【0141】
2-ヘキセナールの使用量(浸み込ませる量、以下同様)を、1μLに代えて5μLとした点以外は、上記と同様に、寒天培地層での前記微生物の生育状態を確認したところ、使用量を1μLとした場合と同様の結果が得られた。
2-ヘキセナールの使用量を、1μLに代えて0.2μLとした点以外は、上記と同様に、寒天培地層での前記微生物の生育状態を確認したところ、発育阻止領域は認められず(発育阻止円の直径が0mmであり)、胞子形成阻止領域も認められなかった(胞子形成阻止円の直径が0mmであった)。そして、寒天培地層では、菌糸の伸長と胞子の形成が、弱いながらも認められた。すなわち、2-ヘキセナールの使用量が0.2μLの場合は、使用量が1μLの場合よりも、防カビ性が低かった。
【0142】
これらの結果を表1に示す。表1中の「阻止円以外での生育度」とは、発育阻止円以外又は胞子形成阻止円以外の領域での、菌糸の伸長の程度又は胞子の形成の程度を直接、あるいはブランクの場合と比較して、評価したときの結果である。すなわち、化合物の防カビ性の評価時には、2-ヘキセナールを用いなかった点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、ペーパーディスク法により、ブランク試験を行った。評価結果は、より具体的には以下のとおりであり、「A」の場合に防カビ性が最も高く、「A」から「E」へ向かうにつれて防カビ性が順次低くなり、「E」の場合に防カビ性が最も低いか又は認められないことを示している。
A:発育阻止円の直径が85mm超であり、発育阻止円以外の領域及び胞子形成阻止円以外の領域がいずれも存在しない。
B:菌糸の伸長又は胞子の形成が、極めて軽度で認められるが、ブランクの場合と比較して、これらの程度が著しく低い。
C:菌糸の伸長又は胞子の形成が、軽度で認められるが、ブランクの場合と比較して、これらの程度が極めて低い。
D:菌糸の伸長又は胞子の形成が認められるが、ブランクの場合と比較して、これらの程度が低い。
E:菌糸の伸長又は胞子の形成が認められ、ブランクの場合と比較して、これらの程度が同等以上である。
【0143】
本明細書において、「発育阻止円」とは、微生物の培養時に、培地表面で、菌糸の伸長及び胞子の形成がともに認められない領域(発育阻止領域)中で作成可能な、円形領域の直径の最大値を意味する。
「胞子形成阻止円」とは、微生物の培養時に、培地表面で、菌糸の伸長は認められ、かつ胞子の形成は認められない領域(胞子形成阻止領域)中で作成可能な、円形領域の直径の最大値を意味する。
【0144】
[実施例2~9]
化合物群(1-1)に属する2-オクテナール(実施例2)、2-ノネナール(実施例3)、2-デセナール(実施例4)、
化合物群(1-2)に属する2,4-デカジエナール(実施例5)、
化合物群(1-9)に属するシンナムアルデヒド(実施例6)、
化合物群(2-1)に属する3-オクテン-2-オン(実施例7)、3-デセン-2-オン(実施例8)、及び
化合物群(2-10)に属する4-フェニル-3-ブテン-2-オン(実施例9)について、上記の2-ヘキセナール(実施例1)の場合と同じ方法で、防カビ性を評価した。
ただし、実施例2~8の化合物はすべて、常温及び常圧下で液状であるが、実施例9の化合物(4-フェニル-3-ブテン-2-オン)は、常温及び常圧下で固形状である。そのため、実施例9においては、化合物の濃度が50質量%のエタノール溶液を調製した。そして、実施例2~8においては、ペーパーディスクに液状の化合物を0.2μL、1μL及び5μL浸み込ませたが、実施例9においては、ペーパーディスクに前記エタノール溶液を0.4μL、2μL及び10μL浸み込ませて、化合物の防カビ性を評価した。
評価結果を表1に示す。
【0145】
[実施例10~11]
化合物群(1-1)に属する2-ヘプテナール(実施例10)、及び化合物群(2-1)に属する3-ヘプテン-2-オン(実施例11)について、上記の2-ヘキセナール(実施例1)の場合と同じ方法で、防カビ性を評価した。結果を表2に示す。
実施例10~11の化合物はいずれも、常温及び常圧下で液状である。
【0146】
[比較例1~5]
化合物群(1-1)~(1-14)及び(2-1)~(2-26)のいずれにも属さない2-ヘプタノン(比較例1)、3-メチルアセトフェノン(比較例2)、1-ヘプタノール(比較例3)、2-ヘプテン酸(比較例4)及び2-フェノキシエタノール(比較例5)について、上記の2-ヘプテナール(実施例10)及び3-ヘプテン-2-オン(実施例11)の場合と同じ方法で、防カビ性を評価した。結果を表2に示す。
比較例1~5の化合物はすべて、常温及び常圧下で液状である。
【0147】
【0148】
【0149】
上記結果から明らかなように、実施例1~11においては、化合物の使用量が5μLである場合に、発育阻止円の直径が50mm以上であり、化合物の防カビ性が高かった。なかでも実施例1~5、7、8、10、11においては、発育阻止円の直径が85mm超であり、化合物の防カビ性がより高かった。さらに、実施例1~3、10においては、化合物の使用量が1μLである場合も、発育阻止円の直径が85mm超であり、化合物の防カビ性が特に高かった。実施例4、8においても、化合物の使用量が1μLである場合に、発育阻止円の直径が45mm以上(45~58mm)であり、実施例4、8の化合物は、実施例1~3、10の化合物に次いで防カビ性が高かった。
【0150】
上記の発育阻止円の直径に加え、胞子形成阻止円の直径、及び阻止円以外での生育度を考慮しても、実施例1~11の化合物は、防カビ剤の有効成分として有用であることを確認できた。
【0151】
これに対して、比較例1~5においては、化合物の使用量が5μLである場合に、発育阻止円の直径が32mm以下であり、化合物の防カビ性が低かった。なかでも比較例1~3、5においては、化合物の使用量が0.2μL、1μL及び5μLのいずれの場合であっても、発育阻止領域が存在せず、化合物の防カビ性がより低かった。さらに、比較例1、5においては、化合物の使用量が0.2μL、1μL及び5μLのいずれの場合であっても、発育阻止領域及び胞子形成阻止領域がいずれも存在せず、化合物の防カビ性が特に低かった。