IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-パネル構造 図1
  • 特開-パネル構造 図2
  • 特開-パネル構造 図3
  • 特開-パネル構造 図4
  • 特開-パネル構造 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134924
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】パネル構造
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/175 20060101AFI20240927BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G10K11/175
F04B39/00 101T
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045376
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮
【テーマコード(参考)】
3H003
5D061
【Fターム(参考)】
3H003AA01
3H003BA01
3H003CD00
5D061CC04
(57)【要約】
【課題】パネル構造において、軽量化や機械的強度の向上を図りつつ、遮音性を高める。
【解決手段】面材12と、面材13と、を備えている。面材12は、面方向に沿って延び厚さ方向に凹となる凹部14が形成され、凹部14に開口部15が形成されている。面材13は、面材12に接合されて凹部14を閉塞することで筒状空間16を形成する。騒音の進行波が開口部15から筒状空間16内に進入し、凹部14の他端に反射して開口部15から退出するときに、進行波に逆位相で干渉して進行波を減衰させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面方向に沿って延び厚さ方向に凹となる凹部が形成され、前記凹部に開口部が形成された第一の面材と、
前記第一の面材に接合されて前記凹部を閉塞することで筒状空間を形成する第二の面材と、を備え、
騒音の進行波が前記開口部から前記筒状空間内に進入し、前記凹部の他端に反射して前記開口部から退出するときに、前記進行波に逆位相で干渉して前記進行波を減衰させることを特徴とするパネル構造。
【請求項2】
前記凹部の面方向に沿った長さをLとし、音速をCとし、前記進行波の周波数をfとし、L=C/4fの関係を満たすように、長さLが設定されていることを特徴とする請求項1に記載のパネル構造。
【請求項3】
前記開口部の開口面積をSbとし、前記筒状空間の断面積をScとし、Sb=Scの関係を満たすように、前記開口面積Sb及び前記断面積Scが設定されていることを特徴とする請求項1に記載のパネル構造。
【請求項4】
前記開口部は、前記凹部の一端に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のパネル構造。
【請求項5】
騒音源を収容する閉空間の壁体を構成し、
前記第一の面材は、前記閉空間の内側を向けて配置されていることを特徴とする請求項1に記載のパネル構造。
【請求項6】
前記開口部の開口面積をSbとし、前記閉空間の底面積をS0とし、前記開口面積Sbを前記底面積S0で除算した面積比をmとし、m≧0.001の関係を満たすように、面積比mが設定されていることを特徴とする請求項5に記載のパネル構造。
【請求項7】
前記閉空間には、前記進行波の出口が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のパネル構造。
【請求項8】
前記開口部は、前記進行波が前記出口に向かう経路上に配置されていることを特徴とする請求項7に記載のパネル構造。
【請求項9】
前記騒音源は、変圧器、又は圧縮機であることを特徴とする請求項5に記載のパネル構造。
【請求項10】
前記第一の面材及び前記第二の面材は、接着によって接合されていることを特徴とする請求項1に記載のパネル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電気機器を収納する金属閉鎖形スイッチギヤの箱体について開示してあり、箱体の側面を構成する鋼板に凹凸状の波型部を設けることで、板厚を薄くして軽量化を図りつつ、機械的強度の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-193655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
変圧器を収容した受電設備や圧縮機を収容した自動販売機では、変圧器や圧縮機が騒音源となるため、軽量化を目的として板厚を薄くすると遮音性が低下してしまう。
本発明の目的は、パネル構造において、軽量化や機械的強度の向上を図りつつ、遮音性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るパネル構造は、第一の面材と、第二の面材と、を備えている。第一の面材は、面方向に沿って延び厚さ方向に凹となる凹部が形成され、凹部に開口部が形成されている。第二の面材は、第一の面材に接合されて凹部を閉塞することで筒状空間を形成する。騒音の進行波が開口部から筒状空間内に進入し、凹部の他端に反射して開口部から退出するときに、進行波に逆位相で干渉して進行波を減衰させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第一の面材は、厚さ方向に凹となる凹部が形成されているので、板厚を薄くしても剛性を高めることができる。また、進行波が筒状空間内に進入し、反射して退出するときに、逆位相となることで進行波を減衰させることができる。したがって、軽量化や機械的強度の向上を図りつつ、遮音性を高めることである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】パネル構造を示す図である。
図2】パネル構造の模式図である。
図3】閉空間を示す図である。
図4】面積比と減衰量の関係を示すグラフである。
図5】変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
《実施形態》
《構成》
以下の説明では、互いに直交する三方向を、縦方向、幅方向、及び厚さ方向とする。
図1は、パネル構造11を示す図である。
図中の(a)は、パネル構造11の全体を示している。図中の(b)は、拡大したパネル構造11を示している。パネル構造11は、面材12(第一の面材)と、面材13(第二の面材)と、を備えている。面材12及び面材13は、金属製でプレス加工によって成形されている。材料は、金属に限定されるものではなく、樹脂でもよい。
【0010】
面材12は、縦方向及び幅方向に沿った平板状で、厚さ方向から見て略方形に形成されている。面材12には、内周面に多数の凹部14が形成されている。凹部14は、縦方向に沿って延び、厚さ方向に凹となり、断面形状は、底面に向かうほど幅方向の寸法が狭くなる等脚台形である。凹部14は、デボスであり、面材12を外側から見ると、厚さ方向に凸となる凸部である。凹部14には、縦方向の一方に開口部15が形成されている。開口部15は、厚さ方向に貫通した丸穴である。凹部14は、長手方向の並びを列とし、短手方向の並びを行とし、一行おうきに各列が長手方向に半周期分だけずれた千鳥配置にされている。
面材13は、縦方向及び幅方向に沿った平板状で、厚さ方向から見て略方形に形成されている。面材13は、面材12の内周面に接合されて凹部14を閉塞している。凹部14を封止するために、面材12の内周面と面材13とは接着剤によって接合することが望ましい。
【0011】
図2は、パネル構造11の模式図である。
ここでは、説明を分かりやすくするために、凹部14の断面形状を矩形にしてある。図中の(a)は、パネル構造11を示している。図中の(b)は、凹部14における幅方向の中心を通り縦方向及び厚さ方向に沿った断面を示している。パネル構造11は、面材12に面材13が接合されて凹部14を閉塞することで、筒状空間16が形成されている。パネル構造11における面材12の側には、縦方向に沿って進んでいく騒音の進行波がある。凹部14の長手方向の長さをLとし、空気中を伝わる音速をC(≒340[m/s])とし、進行波の周波数をfとし、L=C/4fの関係を満たすように、長さLが設定されている。
【0012】
長さLの設定は、以下の根拠に基づいている。進行波の波長をλとすると、C=fλで表され、これを変形するとλ=C/fとなる。片側閉管のサイドブランチは、L=λ/4の長さとなるときに、進行波を減衰させる効果を発するため、L=C/4fが導かれる。そのため、進行波が開口部15から筒状空間16内に進入し、凹部14の他端に反射して開口部15から退出するときに、進行波に逆位相で干渉して進行波を減衰させる構造になっている。すなわち、筒状空間16が進行波に対してサイドブランチとして機能することになる。
【0013】
図3は、閉空間21を示す図である。
閉空間21は、六枚の面材で囲まれた空間であり、壁体を構成する一枚にパネル構造11が採用されている。閉空間21には、騒音源22が収容されている。騒音源22は、閉空間21が高圧受電設備であれば変圧器であり、閉空間21が自動販売機であれば圧縮機である。騒音源22が定まると、減衰させるべき進行波の周波数帯域が定まるため、それに応じて凹部14の長さLが設定される。閉空間21の天井面には、パネル構造11を採用した壁体の近くに、進行波の出口23が形成されている。したがって、騒音源22から発生する進行波は、閉空間21内での乱反射が抑制され、太い実線矢印で示すように、出口23へ向かって進む。開口部15は、進行波が出口23に向かう経路上に配置されている。
【0014】
また、開口部15の開口面積をSbとし、筒状空間16の断面積をScとし、Sb=Scの関係を満たすように、開口面積Sb及び断面積Scが設定されている。さらに、開口部15の開口面積をSbとし、閉空間21の底面積をS0とし、開口面積Sbを底面積S0で除算した面積比をm(=Sb/S0)とし、m≧0.001の関係を満たすように、面積比mが設定されている。
面積比mの設定は、以下の根拠に基づいている。まず透過損失である減衰量TLは、下記の(1)式により表わされる。
【数1】
mをxと置き換え、k=2πf/C、及びL=C/4fを代入して整理すると、下記の(2)式が得られる。
【数2】
図4は、面積比mと減衰量TLの関係を示すグラフである。
ここでは、(2)式をxの関数としてグラフ化している。このグラフに基づいて、減衰量TL=3[dB]を達成するには、面積比mを0.001以上にする必要がある。
【0015】
《作用効果》
次に、実施形態の主要な作用効果について説明する。
パネル構造11は、面材12と、面材13と、を備えている。面材12は、面方向に沿って延び厚さ方向に凹となる凹部14が形成され、凹部14に開口部15が形成されている。面材13は、面材12に接合されて凹部14を閉塞することで筒状空間16を形成する。騒音の進行波が開口部15から筒状空間16内に進入し、凹部14の他端に反射して開口部15から退出するときに、進行波に逆位相で干渉して進行波を減衰させる。面材12は、厚さ方向に凹となる凹部14が形成されているので、板厚を薄くしても剛性を高めることができる。また、進行波が筒状空間16内に進入し、反射して退出するときに、逆位相となることで進行波を減衰させることができる。したがって、軽量化や機械的強度の向上を図りつつ、遮音性を高めることができる。
【0016】
凹部14の面方向に沿った長さをLとし、音速をCとし、進行波の周波数をfとし、L=C/4fの関係を満たすように、長さLが設定されている。これにより、騒音の進行波が開口部15から筒状空間16内に進入し、凹部14の他端に反射して開口部15から退出するときに、進行波に逆位相で干渉して進行波を減衰させることができる。
開口部15の開口面積をSbとし、筒状空間16の断面積をScとし、Sb=Scの関係を満たすように、開口面積Sb及び断面積Scが設定されている。これにより、入力と出力の音響インピーダンスを一致させ、進行波を効果的に減衰させることができる。
【0017】
開口部15は、凹部14の一端に形成されている。これにより、筒状空間16を片側閉管となる一つのサイドブランチとして機能させ、騒音の進行波を効果的に減衰させることができる。
パネル構造11は、騒音源22を収容する閉空間21の壁体を構成している。面材12は、閉空間21の内側を向けて配置されている。これにより、騒音の進行波を減衰させることができる。
開口部15の開口面積をSbとし、閉空間21の底面積をS0とし、開口面積Sbを底面積S0で除算した面積比をmとし、m≧0.001の関係を満たすように、面積比mが設定されている。これにより、3[dB]以上の減衰量TLを実現できる。
【0018】
閉空間21には、進行波の出口23が形成されている。これにより、進行波を誘導して閉空間21に進行波の経路を作り出すことができる。
開口部15は、進行波が出口23に向かう経路上に配置されている。これにより、騒音の進行波を効果的に減衰させることができる。
騒音源22は、変圧器、又は圧縮機である。このように、騒音の周波数帯域が定まっている騒音源22であれば、凹部14の長さLが定まるため、騒音の進行波を効果的に減衰させることができる。
面材12及び面材13は、接着によって接合されている。これにより、凹部14を確実に閉塞し、騒音の進行波を効果的に減衰させることができる。
【0019】
次に、比較例について説明する。
ここでは、比較例として電気機器を収納する金属閉鎖形スイッチギヤの箱体について説明する。箱体の側面を構成する鋼板に凹凸状の波型部を設けた構成にすると、板厚を薄くして軽量化を図りつつ、機械的強度の向上を図ることができる。しかしながら、変圧器を収容した受電設備や圧縮機を収容した自動販売機では、変圧器や圧縮機が騒音源となるため、軽量化を目的として板厚を薄くすると遮音性が低下してしまうため、改善の余地があった。
【0020】
《変形例》
実施形態では、開口部15の形状が円形である構成について説明したが、これに限定されるものではなく、開口部15の形状を多角形にしてもよい。
図5は、変形例を示す図である。
このように、開口部15の形状を四角形にしてもよい。要は、開口部15の開口面積Sbと筒状空間16の断面積Scとを一致させることができれば、開口部15の形状は任意に設定することができる。
【0021】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0022】
11…パネル構造、12…面材、13…面材、14…凹部、15…開口部、16…筒状空間、21…閉空間、22…騒音源、23…出口
図1
図2
図3
図4
図5