(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134937
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車両状態報知システムおよび車両状態報知方法
(51)【国際特許分類】
G08B 21/00 20060101AFI20240927BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240927BHJP
B60K 35/00 20240101ALI20240927BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20240927BHJP
G01C 21/26 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
G08B21/00 L
B60R16/02 650D
B60K35/00 Z
G08B25/00 510B
G01C21/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045400
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼津 幸広
【テーマコード(参考)】
2F129
3D344
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129DD13
2F129DD40
2F129DD46
2F129EE92
3D344AA19
3D344AA20
3D344AA26
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3D344AD05
3D344AD13
5C086AA45
5C086BA22
5C086CA16
5C086DA03
5C086FA18
5C087AA02
5C087AA03
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5C087AA11
5C087AA37
5C087BB72
5C087DD08
5C087DD14
5C087EE05
5C087EE18
5C087FF01
5C087FF04
5C087GG07
5C087GG08
5C087GG19
5C087GG66
(57)【要約】
【課題】車両状態の異常を知らせる警告表示に対して、適切な対処行動の判断が可能な情報を運転者に適時報知できる車両状態報知システムおよび車両状態報知方法を提供する。
【解決手段】車両状態報知システム1は、車両状態情報を検知する検知部21と、検知された車両状態情報が異常であるか否かを判定する異常判定部22と、異常と判定された車両状態情報に対応する警告表示を行い運転者に異常を知らせる警告表示部と、異常と判定された車両状態情報が、緊急度に応じて予め定めた複数の緊急レベルのいずれに該当するかを判別する緊急レベル判別部24と、緊急レベルの判別結果に従って、複数の緊急レベルごとに異なる情報を運転者に報知する報知部と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の状態を表す車両状態情報を検知する検知部と、
前記検知部で検知された前記車両状態情報が異常であるか否かを判定する異常判定部と、
前記異常判定部で異常と判定された前記車両状態情報に対応する警告表示を行い前記車両の運転者に異常を知らせる警告表示部と、
を含む車両状態報知システムにおいて、
前記異常判定部で異常と判定された前記車両状態情報が、緊急度に応じて予め定めた複数の緊急レベルのいずれに該当するかを判別する緊急レベル判別部と、
前記緊急レベル判別部の判別結果に従って、前記複数の緊急レベルごとに異なる情報を前記運転者に報知する報知部と、
を含むことを特徴とする車両状態報知システム。
【請求項2】
前記異常判定部は、前記検知部で検知された前記車両状態情報が、正常範囲の上限を示す第1上限側基準値を超える場合、または、正常範囲の下限を示す第1下限側基準値未満である場合に、前記車両状態情報の異常を判定し、
前記緊急レベル判別部は、前記異常判定部で異常と判定された前記車両状態情報が、前記第1上限側基準値よりも大きい第2上限側基準値以下である場合、または、前記第1下限側基準値よりも小さい第2下限側基準値以上である場合に、前記車両状態情報の異常が第1緊急レベルに該当すると判別するとともに、前記異常判定部で異常と判定された前記車両状態情報が、前記第2上限側基準値を超える場合、または、前記第2下限側基準値未満である場合に、前記車両状態情報の異常が前記第1緊急レベルよりも緊急度の高い第2緊急レベルに該当すると判別し、
前記報知部は、前記緊急レベル判別部で前記第1緊急レベルが判別された場合に、前記車両状態情報の異常に関する簡易情報を前記運転者に報知し、前記緊急レベル判別部で前記第2緊急レベルが判別された場合に、前記車両状態情報の異常に関する詳細情報を前記運転者に報知する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両状態報知システム。
【請求項3】
前記異常判定部および前記緊急レベル判別部は、前記検知部で検知された前記車両状態情報の時間変化量が予め定めた閾値以上である場合に、前記車両状態情報の異常を判定するとともに、前記車両状態情報の異常が前記第2緊急レベルに該当すると判別することを特徴とする請求項2に記載の車両状態報知システム。
【請求項4】
前記報知部は、前記緊急レベル判別部で前記第1緊急レベルが判別された場合に、前記運転者に対して前記車両状態情報の異常に関する簡易情報を報知し、前記運転者から前記簡易情報に対応した説明情報が要求された場合に、前記説明情報を報知することを特徴とする請求項2に記載の車両状態報知システム。
【請求項5】
前記報知部は、前記運転者から前記説明情報が要求されなかった場合に、前記簡易情報の報知に対して、前記運転者が前記車両状態情報の異常を理解できたか否かを推認可能に構成されていることを特徴とする請求項4に記載の車両状態報知システム。
【請求項6】
前記報知部は、前記運転者が前記車両状態情報の異常を理解できていないことを推認した場合に、前記簡易情報を前記運転者に再度報知することを特徴とする請求項5に記載の車両状態報知システム。
【請求項7】
前記報知部は、前記緊急レベル判別部で判別された緊急レベルに対応して、前記車両状態情報の異常に対処するための行動情報を前記運転者に報知することを特徴とする請求項1に記載の車両状態報知システム。
【請求項8】
車両の状態を表す車両状態情報を検知し、
該検知した車両状態情報が異常であるか否かを判定し、
該判定した異常な前記車両状態情報に対応する警告表示を行い前記車両の運転者に異常を知らせる、車両状態報知方法において、
前記判定した異常な前記車両状態情報が、緊急度に応じて予め定めた複数の緊急レベルのいずれに該当するかを判別し、
該判別した緊急レベルに従って、前記複数の緊急レベルごとに異なる情報を前記運転者に報知する、ことを特徴とする車両状態報知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両状態報知システムおよび車両状態報知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に異常が発生した場合や危険を検知した場合などに、その車両状態を運転者に伝達する手段の一つとして、メータパネルの警告灯を点灯させたり、ディスプレイ画面に車両状態を示すイラストおよびメッセージを表示させたりする車両状態報知システムが知られている。例えば、特許文献1には、点灯する車両状態表示に関する説明情報を出力するか否かを運転者に問い合わせ、運転者が必要とした場合に説明情報を出力するようにした車両状態表示システムが開示されている。この車両状態表示システムによれば、運転者は、内容を把握していない車両状態表示が点灯した場合でも、説明情報により車両状態表示の内容を把握して適切な対応をとることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術については、車両状態の異常を知らせる警告表示に関する説明情報の要否の問い合わせ段階において、運転者が警告表示の内容や緊急度の高低を正しく判断できていないことが想定される。そのため、運転者が警告表示の内容を誤認し、問い合わせに対して説明情報の不要を返答した場合には、緊急度の高い車両状態の異常が放置されてしまうおそれがあった。つまり、従来技術において、警告表示に関して運転者が十分な知見を有していない場合、それが車両の走行機能に影響を及ぼす故障情報であっても、運転者が情報確認を行わずに走行を継続してしまう可能性があった。また、たとえ運転者が十分な知見を有していても、車両自体が走行できてしまうと、運転者は「後で確認をしても大丈夫だろう」という心理状態となってしまい、警告表示に対する適切な対処行動を判断できない状況に陥ることも考えられる。
【0005】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、車両状態の異常を知らせる警告表示に対して、適切な対処行動の判断が可能な情報を運転者に適時報知できる車両状態報知システムおよび車両状態報知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため本発明の一態様は、車両の状態を表す車両状態情報を検知する検知部と、前記検知部で検知された前記車両状態情報が異常であるか否かを判定する異常判定部と、前記異常判定部で異常と判定された前記車両状態情報に対応する警告表示を行い前記車両の運転者に異常を知らせる警告表示部と、を含む車両状態報知システムを提供する。この車両状態報知システムは、前記異常判定部で異常と判定された前記車両状態情報が、緊急度に応じて予め定めた複数の緊急レベルのいずれに該当するかを判別する緊急レベル判別部と、前記緊急レベル判別部の判別結果に従って、前記複数の緊急レベルごとに異なる情報を前記運転者に報知する報知部と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様に係る車両状態報知システムによれば、車両状態の異常を知らせる警告表示に対して、適切な対処行動の判断が可能な情報を運転者に適時報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両状態報知システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】上記実施形態に係る車両状態報知システムにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】上記実施形態における車両状態情報の具体例としてタイヤ空気圧が検知される場合の処理について説明する図である。
【
図4】上記実施形態における車両状態情報の他の具体例としてモータールーム温度が検知される場合の処理について説明する図である。
【
図5】上記実施形態において第1緊急レベルの判別時に報知される簡易情報の一例を示す図である。
【
図6】上記実施形態において第2緊急レベルの判別時に報知される詳細情報の一例を示す図である。
【
図7】上記実施形態において第2緊急レベルの判別時に報知される詳細情報の他の例を示す図である。
【
図8】上記実施形態における簡易情報に対応した説明情報の一例を示す図である。
【
図9】上記実施形態における簡易情報に対応した説明情報の他の例を示す図である。
【
図10】上記実施形態における詳細情報に関連する行動情報の一例を示す図である。
【
図11】上記実施形態における詳細情報に関連する行動情報の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両状態報知システムの構成を示すブロック図である。
図1において、本実施形態の車両状態報知システム1は、例えば、自動車等の車両に搭載され、該車両の運転者に車両状態の異常を知らせるための各種情報を制御可能な電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)2を含む。ECU2には、CAN(Controller Area Network)等の車載ネットワークNを介して、車両に搭載されている複数のセンサ3が通信可能に接続されている。また、ECU2には、車両の運転席周辺に配置されている、メータパネル4、タッチディスプレイ5、スピーカ6、マイク7およびカメラ8などが電気的に接続されている。
【0010】
本実施形態におけるECU2は、その機能構成として、検知部21と、異常判定部22と、警告表示制御部23と、緊急レベル判別部24と、報知情報制御部25と、を有している。ECU2のハードウェア構成は、ここでは図示を省略するが、例えば、プロセッサ、メモリ、ユーザ入力インターフェースおよび通信インターフェースを含むコンピュータシステムを備える。つまり、ECU2では、コンピュータシステムのプロセッサがメモリに格納されたプログラムを読み出して実行することによって各ブロックの機能が実現されている。なお、本実施形態では、警告表示制御部23およびメータパネル4が本発明の「警告表示部」に相当し、報知情報制御部25、タッチディスプレイ5およびスピーカ6が本発明の「報知部」に相当する。
【0011】
検知部21は、複数のセンサ3から車載ネットワークNを経由してECU2に伝えられるセンサ信号を用いて、車両の状態を表す車両状態情報を検知する。複数のセンサ3は、例えば、タイヤの空気圧を検知可能なセンサ、ガソリン等の燃料やバッテリの残量を検知可能なセンサ、モータールームの温度を検知可能なセンサなどを含む。つまり、各センサ3では、車両状態情報として、タイヤ空気圧、燃料残量、バッテリ残量、モータールーム温度などのパラメータPがそれぞれ計測され、各々の計測値を示すセンサ信号が車載ネットワークNに送信される。車載ネットワークN上には、上記センサ信号の他にも、パワーユニット制御用やブレーキ制御用などの各種用途に応じたECU(図示せず)の制御情報が伝送される。したがって、検知部21は、車載ネットワークN上の伝送情報を利用して、様々な車両状態情報を検知可能に構成されている。検知部21で検知された車両状態情報は、異常判定部22、緊急レベル判別部24および報知情報制御部25にそれぞれ伝えられる。
【0012】
異常判定部22は、検知部21で検知された車両状態情報が異常であるか否かを判定する。本実施形態における異常判定部22では、検知部21で検知された車両状態情報(パラメータPの値)が、正常範囲の上限を示す第1上限側基準値VU1を超える場合(P>VU1)、または、正常範囲の下限を示す第1下限側基準値VL1未満である場合(P<VL1)に、車両状態情報の異常を判定する。換言すると、検知部21で検知されたパラメータPの値がVL1≦P≦VU1の関係を満たす場合に正常と判定され、それ以外の場合には異常と判定される。また、異常判定部22は、検知部21で検知された車両状態情報(パラメータPの値)の時間変化量ΔPが予め定めた閾値TH以上である場合(ΔP≧TH)にも、車両状態情報の異常を判定する。異常判定部22の判定結果は、警告表示制御部23および緊急レベル判別部24にそれぞれ伝えられる。
【0013】
警告表示制御部23は、異常判定部22で異常と判定された車両状態情報に対応する警告をメータパネル4に表示させる制御を行う。メータパネル4は、運転席の前方に設置されたインストルメントパネルを構成している。本実施形態におけるメータパネル4には、運転者が視認可能な位置に複数の警告灯(図示せず)が配置されている。警告表示制御部23は、メータパネル4上の複数の警告灯うち、異常判定部22で異常が判定された車両状態情報に対応する警告灯を点灯させることによって、車両状態情報の異常を運転者に知らせる警告表示を行う。
【0014】
緊急レベル判別部24は、異常判定部22で異常と判定された車両状態情報が、緊急度に応じて予め定めた複数の緊急レベルのいずれに該当するかを判別する。本実施形態では、複数の緊急レベルとして、緊急度が相対的に低い第1緊急レベルL1と、緊急度が相対的に高い第2緊急レベルL2とが、緊急レベル判別部24に予め定められている。第1緊急レベルL1には、車両の走行に危険が伴わないレベルの緊急度の低い車両状態情報の異常が分類される。第2緊急レベルL2には、車両の走行に危険が伴うレベルの緊急度の高い車両状態情報の異常が分類される。
【0015】
このような2段階の緊急レベルL1,L2に対して、緊急レベル判別部24は、異常判定部22で異常と判定された車両状態情報(パラメータPの値)が、前述した第1上限側基準値VU1よりも大きい第2上限側基準値VU2以下である場合(VU1<P≦VU2)、または、前述した第1下限側基準値VL1よりも小さい第2下限側基準値VL2以上である場合(VL1>P≧VL2)に、当該車両状態情報の異常が第1緊急レベルL1に該当すると判別する。また、緊急レベル判別部24は、異常判定部22で異常と判定された車両状態情報(パラメータPの値)が、第2上限側基準値VU2を超える場合(P>VU2)、または、第2下限側基準値VL2未満である場合に(P<VL2)、当該車両状態情報の異常が第2緊急レベルL2に該当すると判別する。さらに、緊急レベル判別部24は、検知部21で検知された車両状態情報(パラメータPの値)の時間変化量ΔPが予め定めた閾値TH以上である場合(ΔP≧TH)にも、当該車両状態情報の異常が第2緊急レベルL2に該当すると判別する。緊急レベル判別部24の判別結果は、報知情報制御部25に伝えられる。
【0016】
報知情報制御部25は、緊急レベル判別部24の判別結果に従って、複数の緊急レベルL1,L2ごとに異なる情報を、タッチディスプレイ5および/またはスピーカ6から出力させる制御を行う。タッチディスプレイ5は、車両のダッシュボードなどに取り付けられており、運転者が目視およびタッチ操作可能な位置に配置されている。スピーカ6は、運転席の周辺に設けられている。タッチディスプレイ5およびスピーカ6は、ナビゲーションシステムやオーディオシステムなどに利用されているものを併用可能である。また、運転席の周辺には、運転者の声を集音可能なマイク7と、運転者の顔を撮像可能なカメラ8とが設けられており、マイク7およびカメラ8の各出力がECU2に接続されている。
【0017】
本実施形態における報知情報制御部25は、緊急レベル判別部24で第1緊急レベルL1が判別された場合に、タッチディスプレイ5および/またはスピーカ6から車両状態情報の異常に関する簡易情報を出力させる制御を行う。そして、報知情報制御部25は、運転者から簡易情報に対応した説明情報が要求された場合には、タッチディスプレイ5および/またはスピーカ6から説明情報を出力させる制御を行う。また、報知情報制御部25は、緊急レベル判別部24で第2緊急レベルL2が判別された場合に、タッチディスプレイ5および/またはスピーカ6から、車両状態情報の異常に関する詳細情報や当該異常に対処するための行動情報を出力させる制御を行う。さらに、報知情報制御部25は、第1緊急レベルL1に対応した簡易情報の報知に対して、運転者が車両状態情報の異常を理解できたか否かを推認する機能を備えている。この推認機能は、カメラ8で撮像された運転者の顔の画像情報や、検知部21で検知された車載ネットワークN上の伝送情報などに基づいて実現されており、その詳細については後述する。
【0018】
次に、本実施形態による車両状態報知システム1の動作を説明する。
図2は、車両状態報知システム1における処理の流れを示すフローチャートである。
上記のように構成された車両状態報知システム1の処理が開始されると、まず、
図2のステップS10において、車両に搭載されている複数のセンサ3が起動され、各センサ3の出力信号などが車載ネットワークN経由でECU2の検知部21に伝えらえる。これにより、検知部21は、車載ネットワークN上の伝送情報を利用して様々な車両状態情報を検知する。本実施形態において検知部21で検知される車両状態情報は、各センサ3において随時計測される、タイヤ空気圧、燃料残量、バッテリ残量、モータールーム温度などのパラメータPを所定のサンプリング周期Sで抽出した値を示すものとする。
【0019】
続くステップS20では、異常判定部22および緊急レベル判別部24のそれぞれが、検知部21で検知された車両状態情報(パラメータPの値)の時間変化量ΔPを算出し、該算出した時間変化量ΔPと予め定めた閾値THとの大小関係を比較して、当該車両状態情報が第2緊急レベルL2相当の異常であるか否かを判定する。時間変化量ΔPは、検知部21でのサンプリング周期Sの前後におけるパラメータPの値の差分を表している。時間変化量ΔPが閾値THよりも小さい場合(ΔP<TH;ステップS20のNO)、次のステップS30に進む。一方、時間変化量ΔPが閾値TH以上の場合(ΔP≧TH;ステップS20のYES)には、当該車両状態情報が第2緊急レベルL2相当の異常であると判定して、ステップS90に移る。
【0020】
ステップS30では、異常判定部22が、検知部21で検知された車両状態情報(パラメータPの値)と、第1上限側基準値VU1または第1下限側基準値VL1との大小関係を比較し、当該車両状態情報が異常であるか否かを判定する。このときの判定対象となるパラメータPの値は、ノイズ等の影響を抑えるために、所定回数nの平均化処理を施した値を用いるのが好ましい。平均化処理におけるアベレージング周期Aは、前述したサンプリング周期Sのn倍であり、サンプリング周期Sよりも十分に長くなっている(A=n×S>S)。パラメータPの値が第1上限側基準値VU1を超えるか、または、第1下限側基準値VL1未満である場合(P>VU1またはP<VL1;ステップS30のYES)、当該車両状態情報が異常であると判定して、ステップS40に進む。一方、パラメータPの値が第1上限側基準値VU1以下であるか、または、第1下限側基準値VL1以上である場合(P≦VU1またはP≧VL1;ステップS30のNO)には、当該車両状態情報が正常であると判定して、前述したステップS10に戻る。
【0021】
ステップS40では、警告表示制御部23が、メータパネル4上の複数の警告灯のうち、上記ステップS30で異常と判定された車両状態情報に対応する警告灯を点灯させる制御を行う。これにより、車両状態情報の異常を運転者に知らせる警告表示が行われる。
【0022】
続くステップS50では、緊急レベル判別部24が、上記ステップS30で異常と判定された車両状態情報(パラメータPの値)と、第2上限側基準値VU2または第2下限側基準値VL2との大小関係を比較し、当該車両状態情報の異常が第1、2緊急レベルL1,L2のいずれに該当するかを判別する。パラメータPの値が、第2上限側基準値VU2以下であるか、または、第2下限側基準値VL2以上である場合(P≦VU2またはP≧VL2;ステップS50のNO)、当該車両状態情報の異常が第1緊急レベルL1に該当すると判別して、次のステップS60に進む。一方、パラメータPの値が、第2上限側基準値VU2を超えるか、または、第2下限側基準値VL2未満である場合(P>VU2またはP<VL2;ステップS50のYES)には、当該車両状態情報の異常が第2緊急レベルL2に該当すると判別して、ステップS100に移る。
【0023】
ここで、上記各ステップS20,S30およびS50における処理の詳細について、車両状態情報の具体例を挙げながら説明する。
図3は、車両状態情報の具体例としてタイヤ空気圧が検知される場合の処理について説明する図である。
図3に示すグラフは、横軸を時間t、縦軸をタイヤ空気圧Paとして、検知部21で検知されたタイヤ空気圧の変化Pa(t)と第1、2下限側基準値V
L1,V
L2との大小関係を示している。
【0024】
通常、タイヤ空気圧は、適正値に対して予め決められた基準値(例えば、適正値の-10%など)よりも低下した場合に異常であると判断され、タイヤ空気圧の異常を知らせる警告灯が点灯する。そこで、本実施形態では、上記基準値が第1下限側基準値VL1に設定され、更に、第1下限側基準値VL1よりも小さい第2下限側基準値VL2(例えば、適正値の-20%など)が設定されている。なお、ここでは、タイヤ空気圧に関する上限側基準値を考慮していないが、タイヤ空気圧を調整等する際の過剰空気圧を異常として運転者に報知する場合には、第1、2上限側基準値VU1,VU2を設定することも可能である。
【0025】
図3において実線で示すタイヤ空気圧の変化Pa(t)は、車両の使用中における自然な空気漏れや外気温による空気圧の変化などによってタイヤ空気圧が徐々に減少していく状況を例示している。このようなタイヤ空気圧の変化Pa(t)では、時間t1よりも前において、タイヤ空気圧Paが第1下限側基準値V
L1以上となっており、タイヤ空気圧Paは正常と判定される(
図2におけるステップS30のNO)。そして、時間t1以降においては、タイヤ空気圧Paが第1下限側基準値V
L1未満となるので、タイヤ空気圧Paは異常と判定され、タイヤ空気圧に対応した警告表示が行われる(
図2におけるステップS30のYES、ステップS40)。
【0026】
時間t1からt2までの期間においては、タイヤ空気圧Paが第1下限側基準値V
L1未満かつ第2下限側基準値V
L2以上となるので、タイヤ空気圧Paの異常が第1緊急レベルL1に該当する、すなわち、タイヤ空気圧Paは減少しているが車両の走行に危険が伴わない状態(緊急度が低い状態)に該当すると判別される(
図2におけるステップS50のNO)。そして、時間t2以降においては、タイヤ空気圧Paが第2下限側基準値V
L2未満となるので、タイヤ空気圧Paの異常が第2緊急レベルL2に該当する、すなわち、車両の走行に危険が伴う状態(緊急度が高い状態)に該当すると判別される(
図2におけるステップS50のYES)。
【0027】
また、
図3において破線で示すタイヤ空気圧の変化Pa(t)’は、パンク等によるタイヤ空気圧の急激な低下が発生している状況を例示している。このようなタイヤ空気圧の変化Pa(t)’では、タイヤ空気圧の時間変化量ΔPa(サンプリング周期S当たりのタイヤ空気圧の変化量)が閾値TH以上となる。このようなタイヤ空気圧の急激な低下は、車両の走行に危険が伴う第2緊急レベルL2相当のタイヤ空気圧Paの異常であると判定される(
図2におけるステップS20のYES)。
【0028】
さらに、
図3における丸印は運転終了時のタイヤ空気圧Pa1を示し、三角印は運転開始時のタイヤ空気圧Pa2を示しており、車両の駐車中にタイヤ空気圧が大幅に減少した状況を例示している。このような駐車前後におけるタイヤ空気圧の低下についても、運転終了時のタイヤ空気圧Pa1と運転開始時のタイヤ空気圧Pa2との差分値を前述した時間変化量ΔPaと見做して、閾値THとの大小比較を行うことにより、車両の走行に危険が伴う第2緊急レベルL2相当のタイヤ空気圧Paの異常であると判定される(
図2におけるステップS20のYES)。
【0029】
なお、上記のようなタイヤ空気圧の変化と第1、2下限側基準値VL1,VL2との大小関係の比較により、タイヤ空気圧の異常の判定および第1、2緊急レベルL1,L2の判別を行うのと同様な考え方に従って、燃料残量やバッテリ残量などについての異常の判定および第1、2緊急レベルL1,L2の判別を行うことが可能である。
【0030】
図4は、車両状態情報の他の具体例としてモータールーム温度が検知される場合の処理について説明する図である。
図4に示すグラフは、横軸を時間t、縦軸をモータールーム温度Pbとして、検知部21で検知されたモータールーム温度の変化Pb(t)と、第1、2上限側基準値V
U1,V
U2および第1、2下限側基準値V
L1,V
L2との大小関係を示している。
【0031】
一般に、電動車のモータールーム温度が正常範囲の上限を超えた状態になると、駆動モーターおよびその周辺回路等に使用されている電気部品が正常に動作しない、或いは、電気部品の劣化が進むなどの不具合が生じる可能性がある。また、モータールーム温度が正常範囲の下限を下回った状態になると、モータールーム内の水分により電気部品が凍結するなどして不具合が生じる可能性がある。そこで、本実施形態では、モータールーム温度の正常範囲の上限および下限が、第1上限側基準値VU1および第1下限側基準値VL1に設定され、更に、第1上限側基準値VU1よりも大きい第2上限側基準値VU2と、第1下限側基準値VL1よりも小さい第2下限側基準値VL2とが設定されている。
【0032】
図4において実線で示すモータールーム温度の変化Pb(t)は、車両の走行中における駆動モーター等の発熱や外気温度の上昇などによってモータールーム温度が徐々に上昇していく状況を例示している。このようなモータールーム温度の変化Pb(t)では、走行開始から時間t1までの期間において、モータールーム温度Pbが第1下限側基準値V
L1未満となっているので、モータールーム温度Pbは異常と判定され、モータールーム温度に対応した警告表示が行われる(
図2におけるステップS30のYES、ステップS40)。この期間におけるモータールーム温度Pbは第2下限側基準値V
L2以上であるので、モータールーム温度の異常は第1緊急レベルL1に該当する、すなわち、モータールーム温度は低いが車両の走行に危険を伴わない状態(緊急度が低い状態)に該当すると判別される(
図2におけるステップS50のNO)。そして、時間t1からt2までの期間においては、モータールーム温度Pbが第1下限側基準値V
L1以上かつ第1上限側基準値V
U1以下の正常範囲となる(
図2におけるステップS30のNO)。これにより、モータールーム温度に対応した警告表示は消される。
【0033】
時間t2からt3までの期間においては、モータールーム温度Pbが第1上限側基準値V
U1を超えているので、モータールーム温度Pbは異常と判定され、モータールーム温度に対応した警告表示が再度行われる(
図2におけるステップS30のYES、ステップS40)。この期間におけるモータールーム温度Pbは第2上限側基準値V
U2以下であるので、モータールーム温度の異常は第1緊急レベルL1に該当すると判別される(
図2におけるステップS50のNO)。そして、時間t3以降においては、モータールーム温度Pbが第2上限側基準値V
U2を超えているので、モータールーム温度Pbの異常が第2緊急レベルL2に該当する、すなわち、車両の走行に危険が伴うような過熱状態(緊急度が高い状態)に該当すると判別される(
図2におけるステップS50のYES)。
【0034】
また、
図4において破線で示すモータールーム温度の変化Pb(t)’は、駆動モーター等の不具合によるモータールーム温度の急激な上昇が発生している状況を例示している。このモータールーム温度の変化Pb(t)’では、モータールーム温度の時間変化量ΔPb(サンプリング周期S当たりのモータールーム温度の変化量)が閾値TH以上となる。このようなモータールーム温度の急激な上昇は、車両の走行に危険が伴う第2緊急レベルL2相当のモータールーム温度の異常であると判定される(
図2におけるステップS20のYES)。
【0035】
さらに、
図4における丸印は運転終了時のモータールーム温度Pb1を示し、三角印は運転開始時のモータールーム温度Pb2を示しており、車両の駐車中にモータールーム温度が大幅に低下した状況を例示している。このような駐車前後におけるモータールーム温度の低下についても、運転終了時のモータールーム温度Pb1と運転開始時のモータールーム温度Pb2との差分値を前述した時間変化量ΔPbと見做して、閾値THとの大小比較を行うことにより、車両の走行に危険が伴う第2緊急レベルL2相当のモータールーム温度Pbの異常であると判定される(
図2におけるステップS20のYES)。
【0036】
図2のフローチャートに戻って、ステップS60では、報知情報制御部25が、上述したステップS50で車両状態情報の異常が第1緊急レベルL1に該当すると判別されたことを受けて、タッチディスプレイ5および/またはスピーカ6から、車両状態情報の異常に関する簡易情報を出力させる制御を行う。これにより、第1緊急レベルL1に該当する車両状態情報の異常に関する簡易情報が運転者に報知されるようになる。
【0037】
図5は、第1緊急レベルL1に対応した簡易情報をタッチディスプレイ5に出力した一例を示す図である。
図5に示すように、タッチディスプレイ5の画面5Aの概ね中央部分には、車両状態情報の異常に関する簡易情報I1が表示される。ここでは、車両状態情報としてタイヤ空気圧の異常が判定された場合に、タイヤ空気圧の異常に関する簡易情報I1として「タイヤの空気が減っています。」というメッセージが描かれたメッセージボタンB1と、タイヤ空気圧に対応する警告灯と同じイラストが描かれたアイコンボタンB2とが強調表示されている。また、タッチディスプレイ5の画面5Aの左上部分には、音声案内のヘルプボタンB3が表示されている。
【0038】
運転者は、車両状態情報の異常に関する簡易情報I1としてタッチディスプレイ5の画面5Aに表示されたメッセージボタンB1またはアイコンボタンB2をタッチ操作することにより、簡易情報I1に対応した説明情報(ヘルプ)の表示を車両側に要求することができる。また、運転者は、音声案内のヘルプボタンB3をタッチ操作することにより、簡易情報I1に対応した説明情報の音声案内を車両側に要求することも可能である。さらに、運転者は、ECU2に接続されたマイク7(
図1)を使用して音声により説明情報の要求を行うこともできる。なお、所定の待機時間が経過しても、説明情報を要求するタッチ操作や音声操作が行われなかった場合には、運転者が説明情報を必要としていないものとして、簡易情報の報知を終了する。
【0039】
図2のステップS70では、報知情報制御部25が、車両状態情報の異常に関する簡易情報I1の報知に対して、運転者から説明情報が要求されたか否かを判定する。説明情報が要求されなかった場合(NO)には、次のステップS80に進み、説明情報が要求された場合(YES)には、ステップS110に移る。
【0040】
ステップS80では、報知情報制御部25が、上記ステップS60における第1緊急レベルL1に対応した簡易情報I1の報知に対して、運転者が当該車両状態情報の異常を理解できたか否かを推認する。この推認機能は、ECU2に接続されたカメラ8(
図1)からの画像情報や車載ネットワークN上の伝送情報を利用して、運転者の状態を監視することにより実現される。
【0041】
具体的には、例えば、報知情報制御部25が、カメラ8で撮像された運転者の顔の画像情報を基に運転者の視線の動きを監視して、運転者がタッチディスプレイ5の簡易情報I1(またはメータパネル4の警告表示)を見ていない場合に、運転者が車両状態情報の異常を理解できていないと推認することが可能である。また、報知情報制御部25が、車載ネットワークN上の伝送情報などから運転者の脈拍情報やステアリングの把持力情報を取得し、タッチディスプレイ5の簡易情報I1の表示後に、運転者の脈拍またはステアリングの把持力が所定値上昇した場合に、運転者が車両状態情報の異常を理解できたと推認することが可能である。さらに、報知情報制御部25が、車載ネットワークN上の伝送情報から操舵情報を取得し、走行中の車両を道路の端に寄せて停止させようとする操作が行われた場合に、運転者が車両状態情報の異常を理解できたと推認することが可能である。
【0042】
上記のような報知情報制御部25の推認機能により、簡易情報I1の報知に対して、運転者が車両状態情報の異常を理解できたと推認された場合(ステップS80のYES)には、ステップS10に戻って、上述した一連の処理が繰り返される。一方、運転者が車両状態情報の異常を理解できていないと推認された場合(ステップS80のNO)には、ステップS60に戻って、簡易情報I1を運転者に再度報知する。
【0043】
ステップS90では、警告表示制御部23が、上述したステップS20で車両状態情報が第2緊急レベルL2相当の異常であると判定されたことを受けて、メータパネル4上の複数の警告灯のうち、異常と判定された車両状態情報に対応する警告灯を点灯させる制御を行う。これにより、車両状態情報の異常を運転者に知らせる警告表示が行われる。
【0044】
ステップS100では、報知情報制御部25が、上述したステップS20,S50で車両状態情報の異常が第2緊急レベルL2に該当すると判別されたことを受けて、タッチディスプレイ5および/またはスピーカ6から、車両状態情報の異常に関する詳細情報を出力させる制御を行う。
【0045】
図6および
図7は、第2緊急レベルL2に対応した詳細情報をタッチディスプレイ5に出力した一例を示す図である。
図6および
図7に示すように、タッチディスプレイ5の画面5Aの概ね中央部分には、車両状態情報の異常に関する詳細情報I2が表示される。
【0046】
具体的に、
図6の例では、車両状態情報としてタイヤ空気圧の異常が判定された場合に、第2緊急レベルL2に該当するタイヤ空気圧の異常に関する詳細情報I2として「タイヤの空気が適正値から20%減っています。すみやかに安全な場所に停車し、タイヤを点検してください。」というメッセージが表示されている。また、
図7の例では、車両状態情報として燃料残量の異常が判定された場合に、第2緊急レベルL2に該当する燃料残量の異常に関する詳細情報I2として「ガソリンが残り僅かです。(残量:10%)すみやかに給油してください。」というメッセージが表示されている。
【0047】
運転者は、タッチディスプレイ5の画面5Aに表示された詳細情報I2の内容を確認し、当該車両状態情報の異常に対処するための行動情報を車両側に要求する場合には、詳細情報I2の表示部分、音声案内のヘルプボタンB3、または、「詳細」と描かれたボタンB4をタッチ操作する。運転者から行動情報が要求されると、
図2のステップS110に進む。
【0048】
ステップS110では、報知情報制御部25が、上述したステップS70で簡易情報に対応した説明情報が要求されたことを受けて、タッチディスプレイ5および/またはスピーカ6から説明情報を出力させる制御を行う、或いは、ステップS100で詳細情報に関連する行動情報が要求されたことを受けて、タッチディスプレイ5および/またはスピーカ6から行動情報を出力させる制御を行う。
【0049】
図8および
図9は、簡易情報に対応した説明情報をタッチディスプレイ5の画面5Aに出力した一例を示す図である。
図8の例では、車両状態情報としてタイヤ空気圧の異常が判定された場合に、第1緊急レベルL1に該当するタイヤ空気圧の異常に関する簡易情報(
図5)の具体的な内容を説明するための説明情報I3として「タイヤの空気が適正値から10%減っています。安全な場所に停車した後、タイヤの状態を確認してください。」というメッセージが表示される。また、
図9の例では、車両状態情報として燃料残量の異常が判定された場合に、第1緊急レベルL1に該当する燃料残量の異常に関する簡易情報に対応した説明情報I3として「ガソリンが減っています。(残量:20%)給油してください。」というメッセージが表示される。
【0050】
図10および
図11は、詳細情報に関連する行動情報をタッチディスプレイ5の画面5Aに出力した一例を示す図である。
図10の例では、車両状態情報としてタイヤ空気圧の異常が判定された場合に、第2緊急レベルL2に該当するタイヤ空気圧の異常に対処するための行動情報I4として、図示のようなタイヤがパンクしている場合の具体的な対処方法(補修材の使い方)などが表示される。また、
図11の例では、車両状態情報として燃料残量の異常が判定された場合に、第2緊急レベルL2に該当する燃料残量の異常に対処するための行動情報I4として、図示のような走行可能距離およびガソリンスタンドの検索結果などが表示される。このようにナビゲーション画面と連動したシステム構成とすれば、運転者は、詳細情報を見聞きしただけでは分からなかった対処行動まで把握できるようになる。なお、タイヤ空気圧の異常に対処するための行動情報I4に関して、補修材が車両に搭載されてない場合には、近くのディーラーを自動で検索して案内するようにしてもよい。
【0051】
上記のように車両状態情報の異常に関する情報の報知をナビゲーション画面と連動させる場合には、車両状態情報の異常の緊急度に応じて画面割り込みの優先度を変更してもよい。例えば、タッチディスプレイ5の画面5Aに表示されているアプリケーション画面がラジオ表示や時刻表示の場合、緊急度の高い異常に関する情報を前面に大きくポップアップ表示してもよい。また、ナビゲーション実行中の場合には、ナビゲーション情報の表示を妨害しないように、タッチディスプレイ5の画面5Aを分割して、緊急度の高い異常に関する情報を大きく表示し、ナビゲーション情報を小さく表示するようにしてもよい。
【0052】
次に、本実施形態による車両状態報知システム1の作用効果について説明する。
上述したように本実施形態の車両状態報知システム1では、検知部21で検知された車両状態情報が、異常判定部22により異常であると判定された場合に、警告表示制御23によってメータパネル4に警告表示が行われる。このとき、異常判定部22で異常と判定された車両状態情報について、緊急レベル判別部24が、緊急度に応じて予め定めた複数の緊急レベルL1,L2のいずれに該当するかを判別し、その判別結果に従って、報知情報制御部25により、複数の緊急レベルL1,L2ごとに異なる情報がタッチディスプレイ5等に出力されて運転者に報知される。これにより、運転者は、警告表示だけでなく、緊急レベルL1,L2に従って適時報知される様々な情報を見聞きすることで、車両状態情報の異常をその緊急度も含めて把握できるようになり、当該異常に対処するための行動等を適切に判断することが可能になる。つまり、本実施形態の車両状態報知システム1によれば、車両状態の異常を知らせる警告表示に対して、適切な対処行動の判断が可能な情報を運転者に適時報知することができる。
【0053】
また、本実施形態の車両状態報知システム1では、第1、2上限側基準値VU1,VU2および第1、2下限側基準値VL1,VL2を用いて、車両状態情報の異常が緊急度の低い第1緊急レベルL1および緊急度の高い第2緊急レベルL2のいずれに該当するかの判別が行われる。そして、第1緊急レベルL1が判別された場合に、車両状態情報の異常に関する簡易情報が運転者に報知され、第2緊急レベルL2が判別された場合に、車両状態情報の異常に関する詳細情報が運転者に報知される。このような車両状態報知システム1によれば、車両状態情報の異常に関する緊急度の高低を的確に判別することができ、緊急度の高低に応じた適切な量(内容)の情報を運転者に適時報知することが可能になる。これにより、運転者は、車両の走行に危険が伴わないような緊急度の低い異常のときには、報知される簡易情報によって車両状態情報の異常を素早く把握することができ、車両の走行に危険が伴うような緊急度の高い異常のときには、報知される詳細情報によって車両状態情報の異常を正確に把握することができる。
【0054】
さらに、本実施形態の車両状態報知システム1では、車両状態情報の時間変化量ΔPが予め定めた閾値TH以上である場合に、当該車両状態情報の異常が判定されるとともに、その異常が第2緊急レベルL2に該当すると判別される。これにより、車両状態情報が急激に変化するような緊急度の高い異常(例えば、タイヤのパンク等)を運転者に迅速かつ確実に報知することができる。特に、車両状態情報(パラメータPの値)に平均化処理を施し、第1、2上限側基準値VU1,VU2および第1、2下限側基準値VL1,VL2を用いて第1、2緊急レベルL1,L2の判別を行う場合、該判別には時間を要するため車両状態情報の急激な変化に対応するのは難しい。そこで、平均化処理を施す前の車両状態情報を用いて、その時間変化量ΔPと閾値THの大小比較を行うようにすれば、車両状態情報の急激な変化を捉えて異常を判定することができる。これにより、駐車前後のタイミングでの車両状態情報の大幅な変化や、走行中における車両状態情報の急激な変化による緊急度の高い異常を迅速に判定して、該異常に関する情報を運転者に即座に報知することが可能になる。
【0055】
加えて、本実施形態の車両状態報知システム1では、第1緊急レベルL1が判別された場合に、運転者に対して車両状態情報の異常に関する簡易情報が報知され、運転者が簡易情報に対応した説明情報を要求した場合に、説明情報が報知される。このような車両状態報知システム1によれば、緊急度の低い車両状態情報の異常に関して、警告表示や簡易情報について十分な知見を有していないなどの理由により積極的に説明情報を要望する運転者に対して、簡易情報に対応した説明情報を適時報知することができる。これにより、緊急度の低い車両状態情報の異常であっても、運転者に対して異常に対処するための行動を効果的に促すことが可能になる。
【0056】
また、本実施形態の車両状態報知システム1では、簡易情報に対応した説明情報が運転者から要求されなかった場合に、簡易情報の報知に対して、運転者が車両状態情報の異常を理解できたか否かが推認される。これにより、警告表示や簡易情報を運転者が確認していなかったり、警告表示や簡易情報についての運転者の知見が不足していたりする場合などへの対応が可能になる。さらに、本実施形態の車両状態報知システム1では、運転者が車両状態情報の異常を理解できていないことが推認された場合に、簡易情報が運転者に再度報知される。これにより、運転者に対して簡易情報の確認を改めて促すことが可能になる。
【0057】
加えて、本実施形態の車両状態報知システム1では、緊急レベル判別部24で判別された第1、2緊急レベルL1,L2に対応して、車両状態情報の異常に対処するための行動情報が運転者に報知される。これにより、運転者は、報知された行動情報に沿った行動をとりやすくなり、車両状態の把握および安全確保が可能となる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、車両状態情報の異常の緊急度について、緊急レベル判定部24が2段階の第1、2緊急レベルL1,L2を判別する一例を示したが、3段階以上の緊急レベルを判別するようにしてもよい。
【0059】
また、上述した実施形態では、検知部21で検知される車両状態情報として、センサ3で計測されるタイヤ空気圧等のパラメータPの値を用いる場合を説明したが、センサ3による計測値以外にも、例えば、車両の走行速度や走行場所に関する情報、車載カメラで取得される画像情報などに基づいて車両の状態を検知してもよい。
【0060】
さらに、上述した実施形態では、簡易情報に対応した説明情報が要求されず、運転者が車両状態情報の異常を理解できていないことが推認された場合に、簡易情報が運転者に再度報知される場合について説明した。これに関連して、既に報知した情報の履歴を記録して履歴表示を行い、運転者が確認できなかった情報や再確認したい情報を履歴表示から選択することで、当該情報が運転者に再度報知されるようにすることも有効である。この場合の履歴表示は、時系列での表示順と緊急度での表示順とを切り替えられるようにしてもよい。これにより、車両状態報知システムの利便性を向上させることができる。
【0061】
加えて、上述した実施形態では、簡易情報に対応した説明情報が要求されなかった場合に、運転者が車両状態情報の異常を理解できたか否かを推認する機能が報知情報制御部25に備えられている一例を説明した。この推認機能を応用して、運転者の状態(運転姿勢や体調など)を検知し、運転者の状態を加味した行動情報を報知することも可能である。例えば、体調が良くない運転者に対して休憩を促すなどしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…車両状態報知システム
2…電子制御ユニット(ECU)
3…センサ
4…メータパネル
5…タッチディスプレイ
5A…画面
6…スピーカ
7…マイク
8…カメラ
21…検知部
22…異常判定部
23…警告表示制御部
24…緊急レベル判別部
25…報知情報制御部
I1…簡易情報
I2…詳細情報
I3…説明情報
I4…行動情報
L1…第1緊急レベル
L2…第2緊急レベル
N…車載ネットワーク
P…パラメータ(車両状態情報)
Pa…タイヤ空気圧
Pb…モータールーム温度
VU1…第1上限側基準値
VU2…第2上限側基準値
VL1…第1下限側基準値
VL2…第2下限側基準値