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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013494
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】乾式コンデンサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/32 20060101AFI20240125BHJP
   H01G 4/224 20060101ALI20240125BHJP
   H01G 2/02 20060101ALI20240125BHJP
   H01G 4/228 20060101ALI20240125BHJP
   H01G 2/10 20060101ALI20240125BHJP
   H01G 4/38 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
H01G4/32 540
H01G4/32 301F
H01G4/32 550
H01G4/32 531
H01G4/32 305
H01G2/02 101E
H01G4/228 S
H01G2/10 R
H01G4/38 A
H01G4/224 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115613
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】中屋敷 萌佳
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082AA11
5E082AB04
5E082CC06
5E082GG08
5E082HH27
5E082HH48
(57)【要約】
【課題】外装樹脂の一部分である取付足において、空洞やクラックを生じさせないようにして乾式コンデンサの耐湿性能の向上および強度確保を図るとともに、コンパクト化を図る。
【解決手段】外装樹脂4はコンデンサ本体1、第1極および第2極の結線用導電板2a,2bの全体を被覆する。結線用導電板に接続された引出端子3a,3bは外装樹脂4から外部へ露出する。乾式コンデンサを外部の固定部に取り付けるための取付足5は、引出端子3a,3bとともに外装樹脂の共通配置面4bに配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ本体と、前記コンデンサ本体の第1極および第2極の両電極に接続された結線用導電板対と、前記結線用導電板対と前記コンデンサ本体の全体とを被覆する外装樹脂と、前記結線用導電板対に接続されて前記外装樹脂から外部へ露出された引出端子対と、前記外装樹脂によって一体的に形成されて外部の固定部に取り付けるための取付足とを有する乾式コンデンサであって、
前記取付足は、前記外装樹脂における前記引出端子を配置した面を共通配置面として当該共通配置面に配置されていることを特徴とする乾式コンデンサ。
【請求項2】
前記取付足を複数有し、前記引出端子対は前記共通配置面の中央部に配置され、前記複数の取付足は前記共通配置面の辺縁部に分散して配置されている請求項1に記載の乾式コンデンサ。
【請求項3】
前記取付足の外周側面は、前記コンデンサ本体を被覆する前記外装樹脂の外周側面と同一平面に形成されている請求項1または請求項2に記載の乾式コンデンサ。
【請求項4】
前記取付足には締結用インサート部材が挿入されており、前記締結用インサート部材の挿入方向が前記引出端子の引き出し方向と同一である請求項3に記載の乾式コンデンサ。
【請求項5】
コンデンサ本体と、前記コンデンサ本体の第1極および第2極の両電極に接続された結線用導電板対と、前記結線用導電板対と前記コンデンサ本体の全体とを被覆する外装樹脂と、前記結線用導電板対に接続されて前記外装樹脂から外部へ露出された引出端子対と、前記外装樹脂によって一体的に形成されて外部の固定部に取り付けるための取付足とを有する乾式コンデンサを製造する方法であって、
成形型枠のキャビティ底面に形成された前記取付足用の凹所に締結用インサート部材を収容配置する状態で、前記引出端子対と前記取付足とが前記外装樹脂の共通の面である共通配置面を下向きにして前記結線用導電板対および前記引出端子対が接続された前記コンデンサ本体を前記キャビティに収容する第1の工程と、
前記キャビティに対して溶融樹脂を注入充填し、前記インサート部材をインサート成形して前記取付足を形成するとともに前記引出端子対を露出させた状態で前記結線用導電板対と前記コンデンサ本体を樹脂被覆する第2の工程と、
前記第2の工程後に、前記キャビティに対して真空脱泡を行う第3の工程とを含むことを特徴とする乾式コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ本体、結線用導電板(バスバー)、引出端子、外装樹脂および取付足を備えたフィルムコンデンサなどの乾式コンデンサに関する。また、そのような構成を有する乾式コンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された従来の乾式コンデンサにおいては、引出端子と取付足とがそれぞれ専用の配置面に設けられていた。図12図13はその様子を表す。図12は内部透視状態の斜視図、図13は外観斜視図である。複数個のコンデンサ素子1aを3次元的に並べてなるコンデンサ本体1は正負(第1極および第2極)の両電極の結線用導電板2a,2b(2bの素子面側は隠れている)と引出端子3a,3bを備えている。コンデンサ本体1および結線用導電板2a,2bは外装樹脂4によって被覆され、外装樹脂4には取付足5が設けられている。正負の引出端子3a,3bはまとめて外装樹脂4の上面(第1の配置面)4Uに配置され、取付足5の1つは外装樹脂4の右側面(第2の配置面)4Rに配置され、もう1つの取付足5は外装樹脂4の左側面(第3の配置面)4Lに取り付けられている。すなわち、上面4Uは引出端子3a,3bの専用配置面、右側面4Rと左側面4Lは取付足5の専用配置面として用いられるようになっている。なお、第2の配置面(右側面)4Rでは前後方向(Y方向)の奥側に取付足5が配置され、第3の配置面(左側面)4Lでは前後方向の手前側に取付足5が配置されている。
【0003】
なお、上記の従来例に類似するものとして、特許文献1、2、3に開示の技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-216453号公報
【特許文献2】特開2015-56513号公報
【特許文献3】特開2017-38065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来例で説明したように、引出端子3a,3bの配置面と取付足5の配置面が異なる場合、コンデンサ製品の設置方向を考慮すると、樹脂注入面をどこにするか、また取付足5の形状をどのようにするか等、様々な要素を検討する必要があり、作業が大変に煩瑣なものになっていた。
【0006】
特に、図14に示すように、引出端子3a,3bを重力方向下向きにして金属固定板11に取り付ける場合、取付足5が外装樹脂4の外周側面4aから突出する(引出端子3a,3bの水平な配置面に対して平行な横外側方へ突出する)ので、取付足5に当接させる金属固定板11を垂直に立つ姿勢とし、取付足5の袋ナットに螺合して取付足5を金属固定板11に取り付ける締結部材(ボルトなど)12はその長手方向(軸方向)を水平にして金属固定板11の貫通孔(縦方向長孔)に差し込むことになる。その取り付け作業の間、作業者は位置合わせや締め付けが完了するまでコンデンサ製品に作用する重力を支えていなければならない。何故なら、コンデンサ製品に作用する重力を、引出端子3a,3bを載置することによって受け止める手段(横方向姿勢の金属固定板)がないからであって、締結部材12による締め付けが完了するまではコンデンサ製品の重量は人為的に支えなければならず、作業性がはなはだ悪いものとなっている。コンデンサ製品が重量化・大型化すればするほど、作業負荷が厳しいものとなる。
【0007】
以上のように、引出端子3a,3bと取付足5とを外装樹脂4の相異なる面に配置していたことから様々な不都合が派生しているという実態がある。
【0008】
加えて、上記従来の乾式コンデンサを樹脂モールドする際に、図15に示すように、成形型枠6におけるキャビティ6aの内周側面6a1 に取付足用の凹所6bを形成しているため、凹所6b内で樹脂成形される取付足5の表面(傾斜面)、特に傾斜面と傾斜面とが交わる稜線部に気泡ができやすいという問題があった。すなわち、取付足用の凹所6bがキャビティ6aの内周側面6a1 に形成されている。そのため、溶融樹脂が流下すると、一旦キャビティ6aの底部に達したのちに流動方向を下向きから上向きに反転し、時間差をおいて再度取付足用の凹所6b内で流動する。溶融樹脂は凹所6b内で下降と上昇とが混じりあって乱流を起こし、空気を巻き込むため、気泡が発生しやすく、また真空脱泡でも気泡の除去が充分に行えず残留する。そのため、実使用においてクラックによる耐湿性能低下や強度低下が生じるおそれがある。その要因は、取付足用の凹所6bがキャビティ6aの内周側面6a1 つまりは重力方向に沿う延長面に形成されていることにあると考えられる。
【0009】
そこで本発明は、上記した従来例の乾式コンデンサに認められた諸問題を解決することを目的としている。
【0010】
なお、説明の都合上、後記において本発明の実施例との比較対照のため従来例について追加の説明をすることとしている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、次の手段を講じることにより上記の課題を解決する。
【0012】
まず、本発明による乾式コンデンサは、
コンデンサ本体と、前記コンデンサ本体の第1極および第2極両電極に接続された結線用導電板対と、前記結線用導電板対と前記コンデンサ本体の全体とを被覆する外装樹脂と、前記結線用導電板対に接続されて前記外装樹脂から外部へ露出された引出端子対と、前記外装樹脂によって一体的に形成されて外部の固定部に取り付けるための取付足とを有する乾式コンデンサであって、
前記取付足には締結用インサート部材が挿入されるとともに、前記取付足が前記外装樹脂における前記引出端子を配置した面を共通配置面として当該共通配置面に配置されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明による乾式コンデンサの製造方法は、
コンデンサ本体と、前記コンデンサ本体の第1極および第2極両電極に接続された結線用導電板対と、前記結線用導電板対と前記コンデンサ本体の全体とを被覆する外装樹脂と、前記結線用導電板対に接続されて前記外装樹脂から外部へ露出された引出端子対と、前記外装樹脂によって一体的に形成されて外部の固定部に取り付けるための取付足とを有する乾式コンデンサを製造する方法であって、
成形型枠のキャビティ底面に形成された前記取付足用の凹所に締結用インサート部材を収容配置する状態で、前記引出端子と前記取付足とが前記外装樹脂の共通の面である共通配置面を下向きにして前記結線用導電板対および前記引出端子対が接続された前記コンデンサ本体を前記キャビティに収容する第1の工程と、
前記キャビティに対して溶融樹脂を注入充填し、前記インサート部材をインサート成形して前記取付足を形成するとともに前記引出端子対を露出させた状態で前記結線用導電板対と前記コンデンサ本体を樹脂被覆する第2の工程と、前記第2の工程後に、前記キャビティに対して真空脱泡を行う第3の工程とを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の構成(本発明の乾式コンデンサおよびその製造方法)によれば、取付足を利用した製品設置のための構造と引出端子の構造とが共通の面である共通配置面にまとめて設けられているため、作業者はこれら双方の構造に対する認識、作業等を一括的・総合的に行うことができ、設計、製造、組付け等が容易化される。詳しくは次のとおりである。
【0015】
引出端子群も取付足群もともに外装樹脂における1つの面である共通配置面に集約して配置しているので、樹脂成形作業の際の取り扱いが容易化されるとともに、取付足を利用した製品の取り付けの作業も効率化される。
【0016】
また、従来例ではできなかった姿勢で製品を取り付けることができる。すなわち、外部の水平な取り付け面に対して取付足群を載置し、締結部材(ボルトなど)を用いて取付足群を取り付け面に連結固定すると、引出端子群を重力方向下向きにする姿勢で製品を設置することができる。その水平な取り付け面に製品を載置して製品重量を取り付け面に預ける状態で取り付け作業が行え、無理なく迅速・容易な作業が可能となる。この取付足および引出端子をともに重力方向下向きにする取り付け姿勢は特殊な取り付け方式である。
【0017】
もっとも、本発明による乾式コンデンサはこのような取り付け方式のみに制約されるものではない。取付足・引出端子の共通配置面を上向きにしたり、あるいは横向けにして取り付ける方式を採用することも可能である。
【0018】
さらに、取付足用の凹所がキャビティ底面にあって、取付足形成の時期が溶融樹脂上昇の初期となるため、キャビティの内周側面(外装樹脂の外周側面に対応し、延長面となっている。)に取付足用の凹所を形成している従来例に比べて、キャビティ底面の凹所では溶融樹脂はゆっくりと流動するので流動に対する抵抗性が弱いだけでなく、樹脂面上昇の速さが遅く、その結果、インサート部材の周囲に取付足として成長していく過程において溶融樹脂の流動性は充分に滑らかなものとなる。それゆえに、空気の抱き込みによる気泡発生が抑制される。また、一部残留した気泡に対する真空脱泡の効果が高く、気泡残留を効果的に防止することができる。
【0019】
上記構成の本発明の乾式コンデンサには、次のようないくつかの好ましい態様ないし変化・変形の態様がある。
【0020】
〔1〕前記取付足を複数有し、前記引出端子対は前記共通配置面の中央部に配置され、前記複数の取付足は前記共通配置面の辺縁部に分散して配置されている。この構成によれば、乾式コンデンサを安定良く強固に取り付け固定することができる。
【0021】
〔2〕前記取付足の外周側面は、前記コンデンサ本体を被覆する前記外装樹脂の外周側面と同一平面に形成されている。この構成によれば、コンパクトかつ取り扱い性の向上を図ることができる。
【0022】
〔3〕前記締結用インサート部材の挿入方向が前記引出端子の引き出し方向と同一であることが好ましい
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、樹脂成形作業の際の取り扱いが容易化されるとともに、取付足を利用した製品の取り付けの作業も効率化することができる。また、乾式コンデンサの耐湿性能の向上および強度確保を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施例における乾式コンデンサの構成を示す内部透視状態の斜視図(共通配置面上向き)
図2】実施例の乾式コンデンサの外観斜視図(共通配置面上向き)
図3】実施例の乾式コンデンサの正面図(共通配置面上向き)
図4】実施例の乾式コンデンサの製造装置(成形型枠)を示す正面断面図(共通配置面下向き)
図5】実施例の乾式コンデンサの製造装置(成形型枠)を示す正面断面図(共通配置面下向き)
図6】実施例の乾式コンデンサの斜視図(共通配置面下向き)
図7】実施例の乾式コンデンサの取り付け姿勢の斜視図(共通配置面下向き)
図8】実施例の乾式コンデンサの取り付け姿勢の正面図(共通配置面下向き)
図9】実施例の乾式コンデンサの取り付け姿勢の斜視図(共通配置面上向き)
図10】実施例の乾式コンデンサの取り付け姿勢の正面図(共通配置面上向き)
図11】実施例の乾式コンデンサの取り付け姿勢の斜視図(共通配置面横向き)
図12】従来例における乾式コンデンサの構成を示す内部透視状態の斜視図(引出端子配置面上向き)
図13】従来例の乾式コンデンサの斜視図(引出端子配置面上向き)
図14】従来例の乾式コンデンサの正面図(引出端子配置面下向き)
図15】従来例の乾式コンデンサの製造装置(成形型枠)を示す正面断面図(共通配置面下向き)
図16】従来例の乾式コンデンサの正面図(引出端子配置面下向き)
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施例の乾式コンデンサの製品構成を示す図1図2図3において、1はコンデンサ本体、1aはコンデンサ素子、2aは第1の結線用導電板(バスバー)、2bは第2の結線用導電板(2bの素子面側は隠れている)、3aは第1の引出端子、3bは第2の引出端子、4は外装樹脂、4aは外装樹脂4における外周側面、4bは外装樹脂4における共通配置面、5は取付足、5aは取付足5における取付足締結用のインサート部材としての袋ナットである。
【0026】
コンデンサ本体1は、複数個のコンデンサ素子1aを積み重ねた上で、その積層体を前後左右に並列配置する状態で集合した積層集合体として構成されている。個々のコンデンサ素子1aは小判形の扁平柱状体であり、軸方向の両端面が正極(P極、本発明の「第1極」に相当)と負極(N極、本発明の「第2極」に相当)の電極面に形成されている。図示のコンデンサ本体1の構造は一例に過ぎない。積層集合体は直方体の近似形状をなすもので、一対の結線用導電板2a,2bを接続可能なものであれば、その他の構造については任意とする。
【0027】
図1図2図3の図示例を詳しく説明する。縦積み5個のコンデンサ素子1a‥が1単位として前方左側と前方右側に並列され、前方素子ユニットを構成する。同様に5個のコンデンサ素子1a‥が後方左側と後方右側に並列され、後方素子ユニットを構成する。1単位のコンデンサ素子1a‥は、正極どうしが同一面(縦面)上に並べられ、負極どうしも同一面(縦面)上に並べられている。第1の結線用導電板2aは正極の電極面に電気的かつ機械的に接続され、第2の結線用導電板2bは負極の電極面に電気的かつ機械的に接続され、第1の結線用導電板2aと第2の結線用導電板2bとで本発明の結線用導電板対を構成する。第1の結線用導電板2aも第2の結線用導電板2bも積層集合体であるコンデンサ本体1の上面と外周側面4aとの境界における稜線の位置で直角に折り曲げられている。折り曲げられて上面に沿う2つの第1の結線用導電板2a,2aどうしが繋ぎ部を介して接続され、共通の外部接続端子部を構成する。その共通の外部接続端子部に正極の円柱状の第1の引出端子3aが電気的かつ機械的に接続されている。同様に、2つの第2の結線用導電板2b,2bどうしが繋ぎ部を介して接続され、共通の外部接続端子部を構成する。その共通の外部接続端子部に負極の円柱状の第2の引出端子3bが電気的かつ機械的に接続されている。
【0028】
外装樹脂4は、コンデンサ本体1の全体と正極・負極一対の第1および第2の結線用導電板2a,2bとを被覆している。その被覆においては、第1の引出端子3a,3aおよび第2の引出端子3b,3b(引出端子対)は外装樹脂4から外部に露出されている。外装樹脂4はほぼ直方体形状を呈しており、第1および第2の引出端子3a,3bを配置している1つの面を共通配置面4bとして、この共通配置面4bに当該乾式コンデンサを外部の固定部に取り付けるための取付足5を配置している。共通配置面4bは矩形状を呈するが、その矩形の4つのコーナーに取付足5が配置されている。4つの取付足5は矩形状の共通配置面4bの中心に関して点対称の配置となっている。取付足5は外装樹脂4と同一材質の樹脂で形成されており、外装樹脂4を樹脂成形する際に同時一体的に形成されたものである。
【0029】
外装樹脂4において第1および第2の引出端子3a,3bを配置している共通配置面4bに4つの取付足5が配置されている。その配置は、ほぼ直方体形状の外装樹脂4の外周側面4a(共通配置面4bに対して90度の角度をなしている周面)を四角筒状に延長した仮想周側面4a′の内側に限定して配置されている。仮想周側面4a′は仮想線(二点鎖線)で描いてある(図2参照)。引出端子対3a,3bは共通配置面4bの中央部に配置され、取付足5‥は共通配置面4bの辺縁部に分散して配置されている。
【0030】
第1および第2の引出端子3a,3bも4つの取付足5もともに外装樹脂4における共通配置面4bから垂直な上方向へ突き出る凸部を構成している。引出端子3a,3bの突出方向の端面は共通配置面4bに平行な面となっているが、取付足5も同様に、その突出方向の端面は共通配置面4bに平行な面となっている。引出端子3a,3bの突出方向端面と取付足5の突出方向端面とは互いに平行となっている。その突出寸法の大小関係は、引出端子3a,3bに比べて取付足5の方がより長くなっている。その差分寸法は3~5mm程度が適正な範囲である。外部機器からの接続ケーブルの端子を挿入できるだけの隙間が確保されていれば問題ない。
【0031】
各取付足5は、正四角錐台ではなく異形の四角錐台形状を呈している。取付足5の4つの外周側面5aのうち、共通配置面4bの内側に面する2つの側面は傾斜面となっており、共通配置面4bに対して外側に面する2つの側面は外装樹脂4の互いに直角をなす外周側面4aの延長面(鉛直面)となっている。つまり、外側に面する2つの側面は、ほぼ直方体形状の外装樹脂4の外周側面4aを共通配置面4bに対して90度の方向に延長した仮想周側面4a′を共有している。
【0032】
なお、取付足5の傾斜面の水平面に対する開き角については、100度以上の角度にすることが充填樹脂内の気泡の残置を回避する上で好ましい。この開き角100度以上の範囲では溶融樹脂の流れが緩やかになるからである。
【0033】
取付足5には、その中心部に金属製の袋ナット(締結用インサート部材)5aが埋設されている。取付足5の袋ナットの挿入方向は、引出端子3a,3bの引き出し方向と同じである。
【0034】
以下、上記した構造をもつ乾式コンデンサの製造方法について説明する。
【0035】
複数個のコンデンサ素子1aを3次元方向に並べて構成されたコンデンサ本体1と、第1および第2の引出端子3a,3bと、取付足締結用のインサート部材である袋ナット5aとが成形対象としての被成形体Aを構成する(図1参照)。
【0036】
まず、図4に示すように、成形型枠6のキャビティ6aの底面の所定の位置に形成された凹所6bに取付足締結用のインサート部材である袋ナット5aを収容配置する。
【0037】
次に、被成形体A(コンデンサ本体1、正負の結線用導電板2a,2b、引出端子3a,3bなど)を成形型枠6のキャビティ6aに収容する。この収容においては、前述の共通配置面4bおよび正負の引出端子3a,3bを下向きにする。引出端子3a,3bは、下向きに突出しているのでキャビティ6aの底面に形成された凹所6cに内嵌合される。
【0038】
以上によって、成形型枠6の底面の凹所6bにインサート部材である袋ナット5aがセットされ、さらにその上から引出端子3a,3b付きのコンデンサ本体1がその共通配置面4bおよび引出端子3a,3bを下向きにする状態でキャビティ6a内に収容される。これが第1の工程である。
【0039】
次いで型締めを行ったのちに、キャビティ6aに溶融樹脂7を注入充填する(図4の矢印参照)。溶融樹脂7の注入口はキャビティ6aの上部に設けるのが一般的であるが、それ以外の任意所望の場所に設けてもよい。キャビティ6aに対して溶融樹脂7を注入充填すると、溶融樹脂7はキャビティ6a内を流下し、キャビティ6aの底部に達して取付足用の凹所6bに流れ込む。キャビティ6aの底面に至り、さらに凹所6bに流入して袋ナット5aの周りに取付足5を形成する。凹所6bに流れ込んだ溶融樹脂7がインサート部材である袋ナット5aの周囲で次第に固化することにより、取付足5の中心部に固定化される(インサート成形:図5の矢印とパターン塗りつぶし参照)。溶融樹脂7としては通常、エポキシ樹脂など電気絶縁性で熱硬化性の樹脂が用いられる。これが第2の工程である。
【0040】
第2の工程において、樹脂による凹所6b内での取付足5の形成の時期はキャビティ6aの内部で溶融樹脂7が上昇する初期であるため、溶融樹脂7の流動に対する抵抗性が弱く、袋ナット5aの周囲に取付足5として成長していく過程において溶融樹脂7は充分滑らかに流動する。その結果、空気の抱き込みが抑制されるとともに、工程後半に並行して行われる真空脱泡の際に気泡発生や気泡残留を効果的に防止することができる。
【0041】
このような乾式コンデンサの製造方法によって、上記した乾式コンデンサを製造することができる。すなわち、インサート部材である袋ナット5aの周囲に取付足5を形成していく過程において、気泡発生の抑制と効果的な真空脱泡の機能を作用させることができ、外装樹脂4に空洞やクラック生じることを確実に防止し、耐湿性能および強度に優れた乾式コンデンサを得ることができる。図6は離型によってキャビティ6aから取り出された乾式コンデンサの斜視図を示す。
【0042】
以下、コンデンサ製品の取り扱いについて説明する。
【0043】
図7図8に示すように、引出端子3a,3bおよび取付足5が配置されている共通配置面4bを下向きにした状態で乾式コンデンサを外部の支持部材に対して金属固定板11、締結部材(ボルトなど)12を介して取り付ける場合、取付足5の底面は引出端子3a,3bの底面よりいくぶんか下位に位置している。取付足5の固定に際しては、金属固定板11の下方から締結部材12を差し込み、取付足5の袋ナット5aに螺進して固定する。この作業に際して、取付足5を金属固定板11(水平な取り付け面)に載置することにより、金属固定板11によって乾式コンデンサの荷重(重量)を支えることができる。従来例のように、作業者が取り付け完了まで乾式コンデンサの大きな荷重を支えたり、水平姿勢を保つ必要がない。つまり、乾式コンデンサの重量を金属固定板11に預ける状態で取り付け作業が行え、無理なく迅速・容易な作業が可能となる。
【0044】
載置方式により共通配置面4bと金属固定板11との間に空間を確保することができ、その空間を、引出端子3a,3bに接続された引き出し用の導体(外部接続用の導電板やリード線など)の配線に利用することができる。よって、乾式コンデンサの固定作業を効率良く容易に遂行することが可能となる。
【0045】
また、乾式コンデンサの固定において、乾式コンデンサの向き(姿勢)の自由度が従来例に比べて高くなっている。
【0046】
すなわち、従来例(図12図16参照)の場合、引出端子3a,3bの配置面(共通配置面4b相当)に対して垂直姿勢となる2つの相対向する側面(4R,4L)に取付足5が設けられており、取付足5の軸方向は引出端子3a,3bの軸方向に対して垂直の関係にある。一方の側面から他方の側面に向かう方向をX軸方向(正面視で左右方向)とすると、取付足5の軸方向はX軸方向に沿ったものとなる。つまり、取付足5に締結部材(ボルトなど)12を螺進して乾式コンデンサを固定する作業において、乾式コンデンサの姿勢についての自由度がただ1種類に限定されている。
【0047】
これに対して本発明の場合は、引出端子3a,3bと取付足5とがともに共通配置面4bに配置されているため、乾式コンデンサをX軸周りで回転すると、共通配置面4b(引出端子3a,3b)とともに取付足5の方向が変化する。したがって、取付足5に対する締結部材12の螺進方向も供回りして変化する。
【0048】
引出端子3a,3bを上向きにする第1の姿勢(図1図2図3図9図10参照)では、取付足5に対する締結部材12の螺進方向は鉛直下向きとなり、それは重量方向に対して交差角度が0度である。引出端子3a,3bを横向きにする第2の姿勢(図11参照)では、締結部材12の螺進方向はY軸方向の向きとなり、それは重量方向に対して交差角度が90度である。引出端子3a,3bを下向きにする第3の姿勢(図6図8参照)では、締結部材12の螺進方向は鉛直上向きとなり、それは重量方向に対して交差角度が180度である。このように、本発明によれば、取付足5に締結部材12を螺進して乾式コンデンサを固定する作業において、乾式コンデンサの姿勢についての自由度が高いものとなっている。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、乾式コンデンサの外装樹脂の一部分である取付足において、空洞やクラックを生じさせないようにして乾式コンデンサの耐湿性能の向上および強度確保を図るとともに、乾式コンデンサのコンパクト化を図る技術として有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 コンデンサ本体
2a,2b 結線用導電板
3a,3b 引出端子
4 外装樹脂
4a 外周側面
4b 共通配置面
5 取付足
5a 取付足締結用のインサート部材(袋ナット)
6 成形型枠
6a キャビティ
6b 取付足用の凹所
7 溶融樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
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図16