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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013495
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ピックアップ装置及び弦楽器
(51)【国際特許分類】
   G10H 3/18 20060101AFI20240125BHJP
   G10H 1/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G10H3/18 A
G10H1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115614
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 健佑
(72)【発明者】
【氏名】石坂 健太
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478NN02
5D478NN05
(57)【要約】
【課題】プレートの端部に反りが生じることを抑制できるピックアップ装置を提供する。
【解決手段】ピックアップ装置7は、板厚方向に間隔をあけて配置され、板厚方向と直交する第一方向に延びる2枚のプレート21、及び、2枚のプレート21の間において板厚方向に延びて2枚のプレート21に取り付けられると共に、第一方向に並ぶ複数の磁石22、を有するボビン20と、2枚のプレート21の間で複数の磁石22に巻き付けられるコイル30と、を備える。板厚方向及び第一方向に直交するプレート21の第二方向における磁石22の両端が、第二方向においてコイル30に対向する。ボビン20は、2枚のプレート21同士を接続する補強部24を有する。補強部24は、第一方向において端に位置する磁石22Aのうち第二方向においてコイル30に対向する部位の第一方向の位置よりも、第一方向で外側に位置する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板厚方向に間隔をあけて配置され、前記板厚方向と直交する第一方向に延びる2枚のプレート、及び、2枚の前記プレートの間において前記板厚方向に延びて2枚の前記プレートに取り付けられると共に、前記第一方向に並ぶ複数の磁石、を有するボビンと、
2枚の前記プレートの間で複数の前記磁石に巻き付けられるコイルと、を備え、
前記板厚方向及び前記第一方向に直交する前記プレートの第二方向における前記磁石の両端が、前記第二方向において前記コイルに対向し、
前記ボビンは、2枚のプレート同士を接続する補強部を有し、
前記補強部は、前記第一方向において端に位置する前記磁石のうち前記第二方向において前記コイルに対向する部位の前記第一方向の位置よりも、前記第一方向で外側に位置するピックアップ装置。
【請求項2】
前記補強部は、前記第一方向において端に位置する前記磁石から離れて位置する請求項1に記載のピックアップ装置。
【請求項3】
前記コイルは、複数の前記磁石に巻き付けられた状態において、前記補強部と前記第一方向において端に位置する前記磁石との間に位置する請求項2に記載のピックアップ装置。
【請求項4】
前記コイルは、複数の前記磁石に巻き付けられた状態において前記補強部の外側に位置する請求項2に記載のピックアップ装置。
【請求項5】
前記補強部は、前記第一方向において端に位置する前記磁石に接する請求項1に記載のピックアップ装置。
【請求項6】
弦と、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のピックアップ装置と、を備え、
前記ピックアップ装置は、前記弦の振動に対応する電気信号を出力する弦楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピックアップ装置及び弦楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エレクトリックギター(電気ギター)等の弦楽器に使用されるピックアップ装置が開示されている。ピックアップ装置は、ボビンと、複数の磁石と、コイルと、を備える。ボビンは、板状に形成されて板厚方向に並ぶ一対のボビン片(プレート)を有する。複数の磁石は、それぞれ一対のボビン片の間においてボビン片の板厚方向に延びると共に、当該板厚方向に直交するボビンの長手方向に間隔をあけて並ぶように、ボビンに取り付けられる。コイルは、一対のボビン片の間において複数の磁石に巻き付けられる。
特許文献1の第4図には、ボビン片の板厚方向及び長手方向に直交するボビン片の幅方向における複数の磁石の両端が、何も介さずにコイルに対向するピックアップ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭57-44392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなピックアップ装置において、コイルは、一対のプレート(ボビン片)の間で密に巻き付けられるため、板厚方向(一対のプレートが並ぶ方向)においてプレートに押し付けられる。ここで、プレートの幅方向における磁石の両端がコイルに対向するピックアップ装置では、ボビンの長手方向におけるプレートの端部が、片持ち梁のような構造となっている。このため、長手方向におけるプレートの両端部は、コイルの押付力によって外側に反りやすい、という問題がある。プレートの両端部が外側に反ってしまうと、ピックアップ装置を弦楽器において正しく位置決めすることができないため、好ましくない。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、プレートの幅方向における磁石の両側がコイルに対向していても、プレートの端部に反りが生じることを抑制できるピックアップ装置及び弦楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様は、板厚方向に間隔をあけて配置され、前記板厚方向と直交する第一方向に延びる2枚のプレート、及び、2枚の前記プレートの間において前記板厚方向に延びて2枚の前記プレートに取り付けられると共に、前記第一方向に並ぶ複数の磁石、を有するボビンと、2枚の前記プレートの間で複数の前記磁石に巻き付けられるコイルと、を備え、前記板厚方向及び前記第一方向に直交する前記プレートの第二方向における前記磁石の両端が、前記第二方向において前記コイルに対向し、前記ボビンは、2枚のプレート同士を接続する補強部を有し、前記補強部は、前記第一方向において端に位置する前記磁石のうち前記第二方向において前記コイルに対向する部位の前記第一方向の位置よりも、前記第一方向で外側に位置するピックアップ装置である。
【0007】
本発明の第二の態様は、弦と、前記ピックアップ装置と、を備え、前記ピックアップ装置は、前記弦の振動に対応する電気信号を出力する弦楽器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ピックアップ装置を構成するプレートの端部に反りが生じることを補強部によって抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第一実施形態に係る弦楽器を示す正面図である。
図2】本発明の第一実施形態に係るピックアップ装置を示す断面図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4図2,3のピックアップ装置からコイル及び磁石を取り外した状態を示す斜視図である。
図5図3におけるV部の拡大図である。
図6図2のピックアップ装置にピックアップカバーを取り付けた状態を示す断面図である。
図7図2のピックアップ装置にメタルプレートを取り付けた状態を示す断面図である。
図8】本発明の第一実施形態に係る補強部の第一変形例を示す断面図である。
図9】本発明の第一実施形態に係る補強部の第二変形例を示す断面図である。
図10】本発明の第一実施形態に係る補強部の第三変形例を示す断面図である。
図11】本発明の第二実施形態に係るピックアップ装置の要部を示す断面図である。
図12】本発明の第二実施形態に係る補強部の第一変形例を示す断面図である。
図13】本発明の第二実施形態に係る補強部の第二変形例を示す断面図である。
図14】本発明の第二実施形態に係るピックアップ装置の変形例を示す断面図である。
図15】本発明の他の実施形態に係るピックアップ装置の要部を示す断面図である。
図16】本発明の他の実施形態に係るピックアップ装置の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第一実施形態)
以下、図1~5を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
図1に示すように、第一実施形態の弦楽器1は、複数本(図示例では6本)の弦2を有するギターである。弦楽器1は、ボディ3と、ブリッジ4と、ネック5と、ヘッド6と、ピックアップ装置7と、を備える。
【0011】
ブリッジ4は、ボディ3に設けられて、弦2の第一端部を支持する。ネック5は、ボディ3から一方向に延びている。ヘッド6は、ネック5の延長方向の先端に設けられ、弦2の第二端部を支持する。具体的に、弦2の第二端部はヘッド6に設けられた巻き取り器8によって巻き取られる。
【0012】
ピックアップ装置7は、ボディ3に設けられる。ピックアップ装置7は、ブリッジ4とヘッド6との間に架け渡された複数本の弦2に対応するように配置される。図1に例示する弦楽器1では、3つのピックアップ装置7が弦2(ネック5)の長手方向に並んでいる。
図2~4に示すように、各ピックアップ装置7は、ボビン20と、コイル30と、を備える。ボビン20は、2枚のプレート21と、複数の磁石22と、複数の接続柱23と、補強部24と、を有する。
【0013】
2枚のプレート21は、その板厚方向に間隔をあけて配置される。各プレート21は、板厚方向に直交する第一方向に延びている。第一方向における各プレート21の寸法は、板厚方向及び第一方向に直交する第二方向における各プレート21の寸法よりも大きい。すなわち、各プレート21は、第一方向を長手方向とし、第二方向を幅方向とする細長い板状に形成されている。
【0014】
図2~5においては、プレート21の板厚方向がZ軸方向で示されており、プレート21の長手方向(第一方向)がX軸方向で示されている。また、プレート21の幅方向(第二方向)がY軸方向で示されている。以下の説明では、Z軸正方向側(+Z側)を上側と呼び、Z軸負方向側(-Z側)を下側と呼ぶことがある。
【0015】
長手方向における2枚のプレート21の寸法(以下、長さ寸法と呼ぶ。)は、例えば互いに等しくてもよい。本実施形態において、2枚のプレート21の長さ寸法は、互いに異なっている。具体的には、2枚のプレート21のうち上側に位置するプレート21A(第一プレート21A)の長さ寸法は、下側に位置するプレート21B(第二プレート21B)の長さ寸法よりも小さい。本実施形態において、幅方向における2枚のプレート21の寸法(以下、幅寸法と呼ぶ。)は、互いに等しいが、例えば互いに異なってもよい。
【0016】
複数の磁石22は、それぞれ2枚のプレート21の間においてプレート21の板厚方向に延びている。複数の磁石22は、それぞれ2枚のプレート21に取り付けられている。板厚方向における各磁石22の両端部が、各プレート21に形成された挿入孔25に挿入されることで、各磁石22が2枚のプレート21に取り付けられる。2枚のプレート21に取り付けられた複数の磁石22は、プレート21の長手方向に並ぶ。磁石22の数及び位置は、図1に示した弦2の本数及び位置に対応する。
本実施形態において、磁石22は、プレート21の板厚方向を軸方向とする円柱状に形成されているが、例えば角柱状などに形成されてもよい。
【0017】
複数の接続柱23は、それぞれ2枚のプレート21の間においてプレート21の板厚方向に延び、2枚のプレート21同士を接続する。各接続柱23は、プレート21の長手方向において隣り合う磁石22の間に配置される。図3に示すように、各接続柱23の幅寸法は、磁石22の幅寸法と同等である。これにより、プレート21の幅方向において、磁石22の両端をそれぞれ接続柱23の両端に対応するように位置させることができる。さらに、プレート21の長手方向における各接続柱23の両端部は、磁石22の周面に倣う凹面状に形成されている。これにより、プレート21の長手方向における接続柱23と磁石22とのクリアランスを小さくすることができる。このように複数の接続柱23が設けられていることで、幅方向における磁石22の両端は、後述するコイル30によって覆われない限り、外側に露出する。
本実施形態において、複数の接続柱23は、2枚のプレート21と一体に形成されているが、例えば2枚のプレート21と別個に形成された上で、2枚のプレート21に固定されてもよい。
【0018】
図3~5に示すように、補強部24は、接続柱23と同様に、2枚のプレート21の間においてプレート21の板厚方向に延びて2枚のプレート21同士を接続する。補強部24は、複数の磁石22のうちプレート21の長手方向において端に位置する磁石22A(以下、端の磁石22Aと呼ぶ。)に対応した位置において、2枚のプレート21に接続されている。また、補強部24は、プレート21の長手方向において端の磁石22Aのうち幅方向において後述するコイル30に対向する部位のプレート21の長手方向の位置よりも、プレート21の長手方向で外側(図5においてX軸負方向側)に位置する。さらに、補強部24は、端の磁石22Aに接する。また、補強部24は、接続柱23と別個に形成されており、接続柱23に対してプレート21の長手方向に間隔をあけて位置する。上記補強部24は、プレート21の長手方向の両端に位置する2つの端の磁石22Aにそれぞれ対応した位置に設けられている。
以下、本実施形態の補強部24について、より具体的に説明する。
【0019】
図5に示すように、プレート21の板厚方向から見て、補強部24は、プレート21の幅方向に間隔をあけて2つ並んでいる。2つの補強部24は、プレート21の幅方向における端の磁石22Aの中心線C1の両側に配置されている。各補強部24は、端の磁石22Aの周面に沿う円弧状に形成されている。また、各補強部24は、幅方向において端の磁石22Aの中心線C1から離れるにしたがって、端の磁石22Aの径方向に対応する補強部24の厚さが厚くなるように形成されている。また、各補強部24は、プレート21の幅方向において端の磁石22Aの両端から外側に出ないように形成されている。
【0020】
図2,3に示すように、コイル30は、2枚のプレート21の間で複数の磁石22に巻き付けられる。本実施形態において、複数の磁石22に巻き付けられたコイル30は、複数の接続柱23及び補強部24の外側に位置する。すなわち、コイル30は、複数の接続柱23及び補強部24にも巻き付けられる。
コイル30を上記のように巻き付けた状態において、幅方向における磁石22の両端は、当該幅方向において何も介在せずにコイル30に対向する。このため、磁石22とコイル30との間隔は小さい。
【0021】
ピックアップ装置7は、プレート21の長手方向が複数本の弦2(図1参照)の配列方向に向くように、また、プレート21の幅方向が弦2の長手方向に向くように弦楽器1のボディ3(図1参照)に取り付けられる。ピックアップ装置7は、各弦2の振動に対応する電気信号を出力する。具体的に、ピックアップ装置7は、各弦2の振動を電磁誘導として検出し、電気信号に変換して出力する。
【0022】
以上説明したように、本実施形態のピックアップ装置7では、プレート21の長手方向における2枚のプレート21の端部が、片持ち梁のような構造となっている。そして、これら2枚のプレート21の端部は、補強部24を介して連結されている。このため、補強部24は、2枚のプレート21の端部同士がこれらの板厚方向に互いに離れることを規制する。したがって、複数の磁石22に巻き付けられたコイル30がプレート21の端部に押し付けられても、プレート21の端部に反りが生じることを補強部24によって抑制することができる。
【0023】
また、本実施形態のピックアップ装置7では、ボビン20が補強部24を備えるが、幅方向における磁石22の両端が何も介さずにコイル30に対向する。このため、ボビン20が補強部24を備えず、幅方向における磁石22の両端が何も介さずにコイルに対向するピックアップ装置(例えば特許文献1の第4図に記載の装置)を基準として、複数の磁石22とコイル30との位置関係の変化を小さく抑えることができる。したがって、補強部24を備えないピックアップ装置に対して、ピックアップ装置の特性の変化を小さく抑えることができる。
【0024】
また、本実施形態のピックアップ装置7では、複数の磁石22に巻き付けられたコイル30が、補強部24の外側に位置する。このため、コイル30を補強部24と端の磁石22Aとの間に通す場合と比較して、コイル30を複数の磁石22に対して容易に巻き付けることができる。したがって、ピックアップ装置7を容易に製造することができる。
【0025】
また、本実施形態のピックアップ装置7では、補強部24が、端の磁石22Aに接している。このため、補強部24が端の磁石22Aから離れている場合と比較して、複数の磁石22に巻き付けたコイル30を、端の磁石22Aの近くに配置することができる。すなわち、補強部24がない場合を基準として、複数の磁石22に巻き付けられるコイル30の態様の変化を小さく抑えることができる。これにより、補強部24がない場合を基準としたピックアップ装置7の電磁気的な特性の変化を小さく抑えることができる。したがって、弦2の振動に応じてピックアップ装置7から出力される電気信号の変化を小さく抑えることができる。
【0026】
また、本実施形態では、補強部24が端の磁石22Aの周面に沿う円弧状に形成されている。また、補強部24がプレート21の幅方向において端の磁石22Aの両端から外側に出ないように形成されている。これにより、補強部24がない場合を基準として、複数の磁石22に巻き付けられるコイル30の態様の変化をさらに小さく抑えることができる。
【0027】
そして、本実施形態に係る弦楽器1では、前述したようにプレート21の端部の反りが抑制されたピックアップ装置7が採用される。これにより、弦楽器1においてピックアップ装置7を高い精度で位置決めすることができる。したがって、弦楽器1を演奏するユーザは、より高い精度で弦高(ピックアップ装置7に対する弦2の位置)を調整することが可能となる。
【0028】
また、本実施形態に係る弦楽器1では、例えば図6に示すように、ピックアップ装置7の上側(弦2側)がピックアップカバー40によって覆われる場合にも、高い精度で弦高を調整することができる。以下、この点について説明する。ピックアップ装置7(第一プレート21A)の上側がピックアップカバー40で覆われる場合、弦高はピックアップカバー40の位置を基準として設定される。しかしながら、第一プレート21Aの端部が上側に反ってしまうと、ピックアップ装置7に対するピックアップカバー40の位置にバラツキが生じ、弦高を正しく設定することが難しくなる。これに対し、本実施形態のようにプレート21の端部の反りが抑制されていることで、ピックアップ装置7に対するピックアップカバー40の位置にバラツキが生じることを抑制できる。これにより、高い精度で弦高を調整することができる。図6に例示したピックアップカバー40は、例えば図1に示す弦楽器1において、ネック5側に位置するピックアップ装置7に対して設けられる。
【0029】
また、プレート21の端部の反りが抑制されていることで、例えば図7に示すように、ピックアップ装置7(第二プレート21B)の下側に帯磁可能なメタルプレート50が配置されていても、当該メタルプレート50とピックアップ装置7(第二プレート21B)とのクリアランスを小さくすることができる。これにより、メタルプレート50が磁石22やコイル30から離れて位置することを抑えて、ピックアップ装置7における磁力の増強を図ることができる。したがって、ゲインの高いピックアップ装置7を有する弦楽器1を提供することができる。図7に例示したメタルプレート50は、例えば図1に示す弦楽器1において、ブリッジ4側に位置するピックアップ装置7に対して設けられる。
【0030】
第一実施形態においては、例えば図8に示すように、プレート21の板厚方向から見て、端の磁石22Aに接する1つの補強部24Dが、プレート21の幅方向における端の磁石22Aの中心線C1を起点に、端の磁石22Aの周面に沿って延びる円弧状に形成されてよい。言い換えれば、図5における2つの補強部24が一体に形成されてよい。
【0031】
第一実施形態においては、例えば図9に示すように、プレート21の板厚方向から見て、それぞれドット状に形成されて端の磁石22Aに接触する複数の補強部24Eが、端の磁石22Aの周面に沿って並んでもよい。この場合には、少なくとも1つのドット状の補強部24Eが、プレート21の幅方向における端の磁石22Aの中心線C1上、あるいは、中心線C1の近傍に位置していればよい。
【0032】
第一実施形態においては、例えば図10に示すように、プレート21の板厚方向から見て、端の磁石22Aに接する補強部24Fが、プレート21の長手方向において端の磁石22Aの外側に延びてもよい。この構成では、2枚のプレート21のうちその長手方向において端の磁石22Aから外側に離れた部位が補強部24Fによって連結される。このため、プレート21の端部の反りをより効果的に抑制することができる。図10においては、2つの補強部24Fがプレート21の幅方向における端の磁石22Aの中心線C1の両側に配置されているが、これに限ることはない。
【0033】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態について、図11を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0034】
図11に示すように、第二実施形態のピックアップ装置7Gでは、第一実施形態と同様に、2枚のプレート21同士を接続する補強部24Gが、プレート21の長手方向において端の磁石22Aのうち幅方向においてコイル30に対向する部位よりも外側(図11においてX軸負方向側)に位置するプレート21の部位に接続されている。ただし、第二実施形態では、補強部24Gがプレート21の長手方向において端の磁石22Aから外側に離れて位置している。
具体的に、補強部24Gは、プレート21の幅方向における端の磁石22Aの中心線C1上に位置している。なお、補強部24Gは、例えば端の磁石22Aの中心線C1に対して幅方向にずれて位置してもよい。また、図11に示す補強部24Gは、プレート21の板厚方向から見て、ドット状に形成されている。
【0035】
第二実施形態のピックアップ装置7Gにおいて、複数の磁石22に巻き付けられたコイル30(図2,3参照)は、補強部24Gと端の磁石22Aとの間に位置している。
コイル30を補強部24Gと端の磁石22Aとの間に位置させるためには、例えばコイル30を複数の磁石22に巻き付けた後に、補強部24Gを2枚のプレート21に対して取り付けてよい。
【0036】
第二実施形態のピックアップ装置7G及び弦楽器によれば、第一実施形態と同様の効果を奏し得る。
また、第二実施形態のピックアップ装置7Gでは、補強部24Gが、端の磁石22Aから離れて位置している。このため、補強部24Gが端の磁石22Aに接する場合と比較して、補強部24Gをプレート21の端部の縁に近づけて配置することができる。ここで、「プレート21の端部の縁」は、プレート21の反りによる板厚方向への変位が大きくなりやすい箇所である。プレート21の端部の縁の近くに補強部24Gを配置することで、プレート21の端部に反りが生じることをより効果的に抑制することができる。
【0037】
また、補強部24Gが端の磁石22Aから離れて位置することで、図10に示したように補強部24Gが端の磁石22Aに接すると共にプレート21の端部の縁に向けて延びる場合と比較して、ボビン20(特に補強部24Gを含む部分)の製造に要する材料を削減することができる。これにより、ピックアップ装置7Gの製造コスト削減を図ることができる。
【0038】
また、第二実施形態のピックアップ装置7Gでは、コイル30が補強部24Gと端の磁石22Aとの間に位置する。このため、補強部24Gを備えないピックアップ装置を基準として、複数の磁石22とコイル30との位置関係の変化を小さく抑えることができる。したがって、補強部24Gを備えないピックアップ装置に対して、ピックアップ装置の特性の変化を小さく抑えることができる。
【0039】
また、コイル30が補強部24Gと端の磁石22Aとの間に位置することで、コイル30が補強部24Gの外側に位置する場合と比較して、複数の磁石22に巻き付けられるコイル30をコンパクトに形成することができる。したがって、ピックアップ装置7Gの大型化を抑制することができる。
【0040】
さらに、コイル30が補強部24Gと端の磁石22Aとの間に位置することで、補強部24Gは、複数の磁石22に巻き付けられたコイル30よりも外側で2枚のプレート21を連結する。このため、2枚のプレート21の端部にコイル30の巻き付けに起因する応力が作用しても、補強部24Gによって2枚のプレート21の端部同士がこれらの板厚方向に互いに離れることをより効果的に規制することができる。
【0041】
第二実施形態においては、例えば図12に示すように、プレート21の板厚方向から見て、ドット状に形成された複数の補強部24Hが、端の磁石22Aから離れた位置において、端の磁石22Aの周面に沿うように並んでもよい。図12においては、3つの補強部24H全てがプレート21の長手方向において端の磁石22Aよりも外側に位置しているが、少なくとも1つの補強部24Hが端の磁石22Aよりも外側に位置していればよい。
【0042】
第二実施形態においては、例えば図13に示すように、プレート21の板厚方向から見て、1つの補強部24Iが、端の磁石22Aから離れた位置において、端の磁石22Aの周面に沿って延びる円弧状に形成されてよい。図13においては、補強部24I全体がプレート21の長手方向において端の磁石22Aよりも外側に位置しているが、少なくとも補強部24Iの一部が端の磁石22Aよりも外側に位置していればよい。
【0043】
第二実施形態のピックアップ装置において、コイル30は、例えば図14に示すように、複数の磁石22に巻き付けられた状態において端の磁石22Aから離れて配置された補強部24Gの外側に位置してもよい。この場合には、コイル30を補強部24Gと端の磁石22Aとの間に通す場合と比較して、コイル30を複数の磁石22に対して容易に巻き付けることができる。したがって、ピックアップ装置を容易に製造することができる。
【0044】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0045】
本発明においては、例えば図15,16に示すように、補強部24J,24Kが接続柱23と一体に形成されてもよい。
図15においては、補強部24Jが、プレート21の板厚方向から見て、端の磁石22Aの周面に沿って延びる円弧状に形成されている。そして、プレート21の幅方向における端の磁石22Aの両側において、補強部24Jと接続柱23とがつながっている。これにより、端の磁石22Aが接続柱23及び補強部24Jによって囲まれている。図15において、補強部24Jの幅寸法は接続柱23の幅寸法よりも大きい。
【0046】
図16においては、補強部24Kが、プレート21の板厚方向から見て、端の磁石22Aを囲むリング状に形成されている。そして、補強部24Kは、プレート21の長手方向における端の磁石22Aの内側において接続されている。図16において、接続柱23の幅寸法は、磁石22(端の磁石22A)の幅寸法よりも小さく、また、補強部24Kの幅寸法よりも小さいが、例えば磁石22(端の磁石22A)及び補強部24Kの幅寸法よりも大きくてもよい。
図15,16において、補強部24J,24Kは端の磁石22に接しているが、例えば端の磁石22から離れて位置してもよい。
【0047】
本発明において、ボビンが備える接続柱の数は、例えば1つであってもよい。この場合、接続柱には、複数の磁石がプレートの板厚方向にそれぞれ挿通される複数の挿通孔が形成されてよい。接続柱の複数の挿通孔の両端は、各プレートの複数の挿入孔にそれぞれ連なっていればよい。
【0048】
本発明において、ボビンは、例えば接続柱を備えず、2枚のプレート、複数の磁石及び補強部によって構成されてもよい。
【0049】
本発明のピックアップ装置は、ギターに適用されることに限らず、弦の振動により音を発生させる任意の弦楽器に適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…弦楽器、2…弦、7,7G…ピックアップ装置、20…ボビン、21…プレート、22…磁石、24,24D,24E,24F,24G,24H,24I,24J,24K…補強部、30…コイル
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