(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134951
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】発塵監視システムおよび発塵監視装置
(51)【国際特許分類】
G08B 25/04 20060101AFI20240927BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240927BHJP
G08B 21/12 20060101ALI20240927BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G08B25/04 K
G06T7/00 300F
G08B21/12
G05B23/02 302Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045420
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】723001999
【氏名又は名称】TECJAPAN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永山 裕起
(72)【発明者】
【氏名】中村 昌洋
(72)【発明者】
【氏名】野口 晃輔
(72)【発明者】
【氏名】田所 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】武田 利継
(72)【発明者】
【氏名】末嶋 晋一
(72)【発明者】
【氏名】竹下 将功
(72)【発明者】
【氏名】中村 和成
(72)【発明者】
【氏名】回 弋
【テーマコード(参考)】
3C223
5C086
5C087
5L096
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223BA03
3C223BB08
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223FF03
3C223FF04
3C223FF15
3C223FF24
3C223FF26
3C223FF34
3C223FF42
3C223GG01
3C223HH03
3C223HH06
3C223HH08
5C086AA45
5C086BA20
5C086CA28
5C086CB36
5C086DA08
5C086DA33
5C087AA09
5C087DD27
5C087EE14
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG02
5C087GG08
5C087GG09
5C087GG17
5C087GG66
5C087GG84
5L096AA06
5L096BA02
5L096CA04
5L096DA02
5L096DA03
5L096FA02
5L096FA59
5L096FA69
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】工場等における発塵監視を、自動かつリアルタイムで行うことができる発塵監視システムおよび発塵監視装置を提供すること。
【解決手段】発塵監視システムは、発塵源を含む領域を撮影範囲として撮影するカメラの画像に基づいて発塵の状況を監視する発塵監視装置を備える発塵監視システムであって、発塵監視装置が、画像に発塵判定プログラムを適用して特定される発塵領域の濃度および面積に基づいて、報知対象の発塵であるか否かを判定し、報知対象の発塵であると判定された場合に、所定の報知を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発塵源を含む領域を撮影範囲として撮影するカメラの画像に基づいて発塵の状況を監視する発塵監視装置を備える発塵監視システムであって、
前記発塵監視装置は、前記画像に発塵判定プログラムを適用して特定される発塵領域の濃度および面積に基づいて、報知対象の発塵であるか否かを判定し、報知対象の発塵であると判定された場合に、所定の報知を行う、
発塵監視システム。
【請求項2】
前記発塵監視装置は、時間的に連続する複数の画像にわたって発塵が検知された場合、最初に発塵を検知した第一の画像に基づいて発塵源を特定し、最後に発塵を検知した第二の画像に基づいて発塵の規模を示す発塵ランクを特定し、前記第一の画像と前記第二の画像の間に存在する一以上の画像に基づいて発塵の連続性を判定する、
請求項1に記載の発塵監視システム。
【請求項3】
前記発塵監視装置は、時間的に連続する複数の画像内において、異なる発塵源からの複数の発塵が検知された場合、発塵期間の長いほうの発塵を、報知対象の発塵であると判定する、
請求項1に記載の発塵監視システム。
【請求項4】
前記発塵監視装置は、時間的に連続する複数の画像内において、異なる発塵源からの複数の発塵が検知された場合、より低い位置の発塵源から発生した発塵を、報知対象の発塵であると判定する、
請求項1に記載の発塵監視システム。
【請求項5】
発塵源を含む領域を撮影範囲として撮影するカメラの画像に基づいて、発塵の状況を監視する発塵監視装置であって、
前記画像に発塵判定プログラムを適用して特定される発塵領域の濃度および面積に基づいて、報知対象の発塵であるか否かを判定し、報知対象の発塵であると判定された場合に、報知装置により所定の報知が行われる対象の発塵であることを示すデータを出力する、
発塵監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発塵監視システムおよび発塵監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等の煙突からの発塵については、環境保護の観点から削減を進める必要があり、発塵が発生した場合には早急に対策が必要となる。そしてそのためには、発塵の発生の有無を常時監視する必要がある。従来は、数名の作業員が交代で録画したビデオをチェックすることで発塵の有無を特定していたが、リアルタイム監視ではないため、発塵発生の特定が遅れることになり、またビデオチェックの際に見落としの可能性もある。また、人員制約上、リアルタイムで広大な敷地の全ての煙突を監視することは不可能である。
【0003】
特許文献1には、画像処理によって発塵または発塵を検知する技術が開示されている。また、特許文献2には、工場から排出されるばい煙の測定値が制御値を超えた場合に、工場の生産を制限状態にする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-10737号公報
【特許文献2】特開2009-199237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
人間による発塵監視では、リアルタイムでの監視不可による発塵の見逃し、個々の人間の発塵の捉え方の違いによる評価の属人化、通知遅延に起因する発塵に対するアクション遅延等が課題となる。また、特許文献1,2で開示された技術においても、発塵監視を自動かつリアルタイムで行うことは困難である。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、工場等における発塵監視を、自動かつリアルタイムで行うことができる発塵監視システムおよび発塵監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る発塵監視システムは、発塵源を含む領域を撮影範囲として撮影するカメラの画像に基づいて発塵の状況を監視する発塵監視装置を備える発塵監視システムであって、前記発塵監視装置が、前記画像に発塵判定プログラムを適用して特定される発塵領域の濃度および面積に基づいて、報知対象の発塵であるか否かを判定し、報知対象の発塵であると判定された場合に、所定の報知を行う。
【0008】
また、本発明に係る発塵監視システムは、上記発明において、前記発塵監視装置が、時間的に連続する複数の画像にわたって発塵が検知された場合、最初に発塵を検知した第一の画像に基づいて発塵源を特定し、最後に発塵を検知した第二の画像に基づいて発塵の規模を示す発塵ランクを特定し、前記第一の画像と前記第二の画像の間に存在する一以上の画像に基づいて発塵の連続性を判定する。
【0009】
また、本発明に係る発塵監視システムは、上記発明において、前記発塵監視装置が、時間的に連続する複数の画像内において、異なる発塵源からの複数の発塵が検知された場合、発塵期間の長いほうの発塵を、報知対象の発塵であると判定する。
【0010】
また、本発明に係る発塵監視システムは、上記発明において、前記発塵監視装置が、時間的に連続する複数の画像内において、異なる発塵源からの複数の発塵が検知された場合、より低い位置の発塵源から発生した発塵を、報知対象の発塵であると判定する。
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る発塵監視装置は、発塵源を含む領域を撮影範囲として撮影するカメラの画像に基づいて、発塵の状況を監視する発塵監視装置であって、前記画像に発塵判定プログラムを適用して特定される発塵領域の濃度および面積に基づいて、報知対象の発塵であるか否かを判定し、報知対象の発塵であると判定された場合に、報知装置により所定の報知が行われる対象の発塵であることを示すデータを出力する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る発塵監視システムおよび発塵監視装置によれば、工場等における発塵監視を、自動かつリアルタイムで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る発塵監視システムの概略的な構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る発塵監視システムにおいて、発塵の監視範囲の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る発塵監視システムにおいて、発塵の監視範囲の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、従来の発塵検知方法を説明するための説明図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る発塵監視システムによる三段階認証を説明するための説明図である。
【
図6】
図6は、時間的に連続する複数の画像にわたって発塵が検知された場合において、フィードバック修正を行わない場合を示す図である。
【
図7】
図7は、時間的に連続する複数の画像にわたって発塵が検知された場合において、フィードバック修正を行う場合を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る発塵監視システムが実行する発塵監視方法の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、本発明に係る発塵監視システムおよび発塵監視装置の実施例であり、本発明の発塵の検知率および誤検知率の一例を示すグラフである。
【
図10】
図10は、本発明に係る発塵監視システムおよび発塵監視装置の実施例であり、本発明の導入前後における作業員の作業時間の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る発塵監視システムおよび発塵監視装置について、図面を参照しながら説明する。なお、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0015】
(発塵監視システム)
実施形態に係る発塵監視システムは、製鉄所等の工場の内外の発塵の状況を監視するためのシステムである。発塵監視システムが監視する発塵には、工場の煙突等から発生する煙、煤塵、水蒸気等が含まれる。
【0016】
発塵監視システム1は、
図1に示すように、複数のカメラ10と、AI(Artificial Intelligence)サーバ20と、データサーバ30と、メールサーバ40と、を備えている。カメラ10、AIサーバ20、データサーバ30およびメールサーバ40は、いずれも通信機能を備えており、ネットワークNを通じて相互に通信可能に構成されている。このネットワークNは、例えばインターネット回線網、携帯電話回線網、WiFi(登録商標、Wireless Fidelity)、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy))等から構成される。また、実施形態に係る発塵監視装置は、発塵監視システム1の構成要素のうちのAIサーバ20、またはAIサーバ20およびメールサーバ40により構成される。
【0017】
カメラ10は、例えば製鉄所等の工場の内外に設置され、一つ以上の発塵源を含む領域を撮影範囲とする画像を撮影する。このカメラ10は、例えば一般的なCCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサを備える撮像装置によって実現される。
【0018】
カメラ10を用いた発塵監視では、例えば
図2に示すように、工場の敷地内において、複数の方向に向けてカメラ10を設置し、画像を連続的に撮影する。
図3において、(a)は
図2の北側に向けたカメラ10の撮影範囲であり、(b)は
図2の中央側に向けたカメラ10の撮影範囲であり、(a)は
図2の南側に向けたカメラ10の撮影範囲である。また、
図3に示した撮影範囲のうち、発塵源である煙突等を含む範囲が、発塵の監視範囲となる。また、
図2および
図3において、「**CO(押出)」、「**煙突」、「**CDQ」等の表示は、発塵源となりうる施設のことを示している。また、「CDQ」は、コークス乾式消化設備のことを示している。
【0019】
カメラ10の設置位置は常時固定されているため、発塵源である煙突等の位置座標も、システム側(AIサーバ20側)で予め把握されている。また、カメラ10で撮影された画像は、ネットワークNを経由して順次AIサーバ20に送信される。
【0020】
AIサーバ20は、カメラ10によって撮影された画像に基づいて、発塵の状況を監視する。このAIサーバ20は、ワークステーションやパソコン等の汎用コンピュータ、またはクラウド上に配置されたサーバ装置等により実現される。また、AIサーバ20は、工場内に設置されてもよい。また、AIサーバ20は、発塵判定部21を備えている。
【0021】
発塵判定部21は、カメラ10によって撮影された画像に発塵判定プログラムを適用して特定される発塵領域の濃度および面積に基づいて、報知対象の発塵であるか否かを判定する。そして、発塵判定部21は、報知対象の発塵であると判定した場合、報知装置として機能するメールサーバ40により所定の報知を行われる対象の発塵であることを示すデータを、当該メールサーバ40に出力する。上記の発塵判定プログラムは、例えば数千枚の発塵画像(発塵が含まれる画像)を教師データとして、ディープラーニングによって発塵を学習させたAIモデルである。
【0022】
AIモデルでは、例えば数千枚の発塵画像を、発塵領域の面積、濃度に基づいて大中小の発塵の規模(以下、「発塵ランク」という)に区分けし、発塵ランク(例えば大中小)とともに、各発塵画像が教師データとして学習されている。そして、発塵判定部21では、カメラ10によって新たに撮影された画像に対して、上記のような発塵判定プログラムを適用することにより、画像に含まれる発塵が報知対象の発塵であるか否か、発塵レベルが大中小のいずれであるのかを特定する。「報知対象の発塵」としては、例えば発塵レベルが「中」以上の発塵が挙げられる。
【0023】
また、AIモデルでは、例えば数千枚の発塵画像を濃度区分(例えば濃い、普通、薄い)で区分けし、これらの濃度区分情報ともに、各発塵画像を教師データとして学習させてもよい。この場合、発塵判定部21では、カメラ10によって新たに撮影された画像に対して、上記のような発塵判定プログラムを適用することにより、画像に含まれる発塵が報知対象の発塵であるか否か、濃度が上記のいずれであるのかを特定する。
【0024】
なお、発塵領域の面積の認識には、セグメンテーションAIモデルを用いて画像内の発塵部分の画素にラベリングを行い、画素数で数値化する方法や、物体検出の手法を用いて画像内の発塵領域を抽出し、画素数で数値化する方法等がある。そして、発塵濃度と発塵領域の面積に基づいて、発塵レベルが大中小の何れかに属するのかを特定することも可能である。なお、発塵レベルの区分としての「大中小」は一例であり、必要に応じて二以下、または四以上の区分に分類してもよい。
【0025】
ここで、例えば
図4に示すように、一つの画像内に複数の発塵源(例えば煙突)が含まれる場合を考える。同図では、発塵が複数の発塵源の上にまたがっているため、このような一つの画像から発塵源および発塵ランクの両方を特定しようとすると、発塵源を正確に特定できない可能性がある。そこで、発塵判定部21は、複数の画像に基づいて、発塵源および発塵ランク等を特定することが好ましい。
【0026】
この場合、発塵判定部21は、上記の発塵判定プログラムによって、時間的に連続する複数の画像にわたって発塵が検知された場合に、最初に発塵を検知した第一の画像に基づいて発塵源を特定し、最後に発塵を検知した第二の画像に基づいて発塵の規模を示す発塵ランクを特定する。そして、発塵判定部21は、第一の画像と第二の画像の間に存在する一以上の画像に基づいて、発塵の連続性を判定する。
【0027】
発塵判定部21は、例えば
図5に示すように、発塵を初期、中期、後期に細分化して認識する。すなわち、発塵判定部21は、発塵初期の画像に基づいて発塵源を特定する。また、発塵判定部21は、発塵後期の画像に基づいて発塵ランク(例えば大中小)を特定する。なお、発塵ランクは、発塵領域の面積、濃度に基づいて特定することができる。また、発塵判定部21は、発塵中期の画像に基づいて発塵の連続性を判定する。このように、発塵の初期、中期、後期の画像に基づいて、発塵源、発塵の連続性および発塵ランクを特定する処理のことを、本実施形態では「三段階認証」と定義する。
【0028】
なお、
図5では、説明の便宜上、発塵期間の後期に相当する画像(上記の第二の画像)のみを示しているが、例えば発塵源の特定に用いる「発塵初期の画像」には、中期および後期の発塵は含まれていない。同様に、発塵の連続性の判定に用いる「発塵中期の画像」には、後期の発塵は含まれていない。
【0029】
また、例えば
図6に示すように、一つの画像内に複数の発塵源(例えば煙突)が含まれる場合、実際の発塵源は「6CO押出」であるが、発塵領域が「56CDQ」にも重なっているため、「56CDQ」が発塵源であると特定される可能性がある。同図では、例えば「6CO押出」と「56CDQ」との両方で発塵が検知された後、「56CDQ」が発塵源であると特定される可能性がある。
【0030】
そこで、発塵判定部21では、上記の発塵判定プログラムによって、複数の発塵を検知した場合に、ロジックの保持およびフィードバック修正を行うことが好ましい。なお、「ロジックの保持」とは、例えば一つの画像内で複数の発塵を検知した場合に、複数の発塵の検知結果をそれぞれ保持することを意味する。この場合、発塵判定部21は、時間的に連続する複数の画像内において、異なる発塵源からの複数の発塵が検知された場合、発塵期間の長いほうの発塵を、報知対象の発塵であると判定する。
【0031】
発塵判定部21は、例えば
図7に示すように、画像内で複数の発塵が検知された場合に、両者(二つの発塵)の間隔が所定時間(例えば1分)以内であれば、両方で発塵を検知した旨のロジックを保持する(同図の(1)参照)。そして、発塵判定部21は、「56CDQ」の発塵期間が終了した後に、発塵期間の長い「6CO押出」から発塵(発塵期間Xの発塵)を、報知対象の発塵であると判定する(同図の(2)参照)。
【0032】
また、発塵判定部21は、例えば
図7に示すように、時間的に連続する複数の画像内において、異なる発塵源(「6CO押出」、「56CDQ」)からの複数の発塵が検知された場合、より低い位置の発塵源(「6CO押出」)から発生した発塵(発塵期間Xの発塵)を、報知対象の発塵であると判定する。このように、異なる発塵源からの複数の発塵が検知された場合に、実際の発塵源を特定する処理のことを、本実施形態では「フィードバック修正」と定義する。
【0033】
データサーバ30は、ワークステーションやパソコン等の汎用コンピュータ、またはクラウド上に配置されたサーバ装置等により実現される。また、データサーバ30は、工場内に設置されてもよい。また、
図1では、データサーバ30とAIサーバ20を別々の構成として図示しているが、AIサーバ20内にデータサーバ30が設けられていてもよい。また、データサーバ30は、分類保存部31および記憶部32を備えている。
【0034】
分類保存部31は、発塵判定部21における発塵の判定結果を、分類および保存する。この「発塵の判定結果」は、報知装置として機能するメールサーバ40により所定の報知が行われる対象の発塵であることを示すデータである。発塵判定部21における発塵の判定結果としては、例えば発塵が含まれる画像(発塵画像)、発塵源、発塵レベル(例えば大中小)、発塵領域、発塵の濃度区分(例えば濃い、普通、薄い)等が含まれる。分類保存部31は、上記のような発塵の判定結果を分類して記憶部32に保存する。
【0035】
記憶部32は、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)およびリムーバブルメディア等の記録媒体から構成される。リムーバブルメディアとしては、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリ、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)のようなディスク記録媒体が挙げられる。記憶部32には、オペレーティングシステム(Operating System:OS)、各種プログラム、各種テーブル、各種データベース等が格納可能である。記憶部32には、例えば発塵判定部21における発塵の判定結果が格納される。
【0036】
メールサーバ40は、ワークステーションやパソコン等の汎用コンピュータ、またはクラウド上に配置されたサーバ装置等により実現される。また、メールサーバ40は、工場内に設置されてもよい。また、メールサーバ40は、報知部41を備えている。
【0037】
報知部41は、発塵判定部21によって、画像内に含まれる発塵が、報知対象の発塵である(例えば発塵レベルが「中」以上の発塵)と判定された場合に、発塵判定部21から発塵の判定結果を取得する。そして、報知部41は、取得した発塵の判定結果に基づいて、所定の報知を行う。「所定の報知」としては、例えば関係者へのメールの発報、関係者へのアラームの発報等が挙げられる。また、報知部41は、報知対象の発塵を含む画像の枚数が、予め定めた閾値に達した場合に、所定の報知を行ってもよい。
【0038】
以上の構成を備える実施形態に係る発塵監視システムおよび発塵監視装置において、例えば一か所の発塵源を一台のカメラ10によって監視する場合を考える。この場合、位置座標の判明している一か所の発塵源が撮影範囲に含まれるように一台のカメラ10を設置した後、AIサーバ20において、例えば「1枚/sec」のペースで画像を取り込む。続いて、AIサーバ20の発塵判定部21において、発塵判定プログラムを用いて画像内における発塵を検知する。発塵が検知されると、例えば発塵の濃度および規模を算出し、発塵ランクとして特定する。
【0039】
続いて、発塵を検知した画像と発塵ランクとを含む判定結果をデータサーバ30に保存し、例えば報知対象の発塵を含む画像の枚数が、予め定めた閾値に達した場合等に、メールサーバ40の報知部41が、関係者に対してメール発報および是正依頼を行う。このような処理を行うことにより、発塵を抑制することができ、環境負荷の低減を実現することができる。
【0040】
また、上記のような構成を備える実施形態に係る発塵監視システムおよび発塵監視装置において、例えば二か所以上の発塵源を一台のカメラ10によって監視する場合を考える。この場合、位置座標の判明している二か所以上の発塵源が撮影範囲に含まれるように一台のカメラ10を設置した後、AIサーバ20において、例えば「1枚/sec」のペースで画像を取り込む。続いて、AIサーバ20の発塵判定部21において、発塵判定プログラムを用いて画像内における発塵を検知する。発塵が検知されると、例えば発塵が消失するまでの発塵画像を追跡し、発塵の前記、中期、後期の画像に分類する。
【0041】
続いて、発塵判定部21は、発塵前記の画像から発塵源を、発塵中期の画像から発塵の連続性を、発塵後期の画像から発塵ランクをそれぞれ判定する(三段階認証)。カメラ10の設置位置は固定されているため、画像内における複数の発塵源の位置座標も予め判明している。また、複数の画像間における発塵の連続性は、例えば画像間における発塵の領域が重複しているか否かにより判定することができる。また、発塵ランクは、発塵を検知し始めてから発塵が消失するまでの発塵の範囲に基づいて特定することができる。
【0042】
更に、発塵判定部21は、予め設定された発塵源に対して二か所以上の発塵が検知された場合、それぞれの発塵に対して上記の三段階認証を行い、例えば発塵発生からの時間が最も長い発塵の発塵源を、今回の発塵の発塵源として採用する(フィードバック修正)。すなわち、発塵判定部21は、発塵を検知した場合、当該発塵を検知し始めてから発塵が終わるまでの一群の画像(追跡画像群)について、三段階認証とフィードバック修正を行う。
【0043】
続いて、発塵画像および発塵ランクを含む判定結果をデータサーバ30に保存し、例えば報知対象の発塵を含む画像の枚数が、予め定めた閾値に達した場合等に、メールサーバ40の報知部41が、関係者に対してメール発報および是正依頼を行う。このような処理を行うことにより、発塵を抑制することができ、環境負荷の低減を実現することができる。
【0044】
このように、実施形態に係る発塵監視システムおよび発塵監視装置では、予め学習を施した発塵判定プログラムを用いて発塵を検知し、必要に応じて所定の後処理(三段階認証、フィードバック修正)を実施する。これにより、工場等における発塵監視を、自動かつリアルタイムで行うことができる。
【0045】
(発塵監視方法)
実施形態に係る発塵監視システムおよび発塵監視装置が実行する発塵監視方法の流れについて、
図8を参照しながら説明する。
【0046】
まず、発塵判定部21は、カメラ10によって撮影された画像を読み込む(ステップS11)。続いて、発塵判定部21は、発塵判定プログラムを用いて、画像内における発塵を検知する(ステップS12)。
【0047】
続いて、発塵判定部21は、発塵初期の画像に基づいて、発塵源を特定する(ステップS13)。続いて、発塵判定部21は、発塵中期の画像に基づいて、発塵の連続性を判定する(ステップS14)。続いて、発塵判定部21は、発塵後期の画像に基づいて、発塵ランクを特定する(ステップS15)。なお、ステップS13~S15の順序は特に限定されず、
図8とは異なる順序で実施されてもよい。
【0048】
続いて、発塵判定部21は、ステップS12において、予め設定された発塵源に対して二か所以上の発塵が検知された場合は、発塵源のフィードバック修正を行う(ステップS16)。続いて、分類保存部31は、ステップS12~S16における発塵の判定結果を分類し、記憶部32に保存する(ステップS17)。続いて、報知部41は、関係者に対して、例えば発塵の時刻、発塵源、発塵ランクのメール発報を行い(ステップS18)、本処理を完了する。
【0049】
(実施例)
本発明に係る発塵監視システムおよび発塵監視装置の実施例について、
図9および
図10を参照しながら説明する。
【0050】
図9は、本発明の導入前後における発塵の検知率および誤検知率の一例を示している。同図において、縦軸は検知率(%)および誤検知率(%)であり、横軸は発塵源である。
【0051】
図9の(a)の3種類の棒グラフは、左から、本発明1(三段階認証およびフィードバック修正の導入前)の発塵の検知率、本発明2(三段階認証の導入後)の発塵の検知率、本発明3(三段階認証およびフィードバック修正の導入後)の発塵の検知率、をそれぞれ示している。「検知率」は、「(システムによる発塵検知数)/(人間による発塵検知数)×100」により算出した。また、同図において太線で示すように、検知率の目標値は「100%」であり、検知率が100%に近いほど性能が高い(発塵を正確に検知できる)ことを意味している。同図の最右欄(「平均」の項目)に示すように、本発明2,3の方法は、本発明1よりも検知率が目標値に近く、性能が高いことがわかる。なお、本発明1は、発塵源によっては、検知率が目標値から離れている(誤検知が多い)場合もあるが、誤検知そのものは安全側であり、発塵検知を行わないよりは行ったほうがよい。
【0052】
図9の(b)の3種類の棒グラフは、左から、本発明1(三段階認証およびフィードバック修正の導入前)の発塵の誤検知率、本発明2(三段階認証導入後)の発塵の誤検知率、本発明3(三段階認証およびフィードバック修正導入後)の発塵の誤検知率、をそれぞれ示している。「誤検知率」は、「(システムによる発塵誤検知数)/(人間による発塵検知数+システムによる発塵検知数)×100」により算出した。また、同図において太線で示すように、誤検知率の目標値は「20%」であり、誤検知率が20%よりも低いほど性能が高い(発塵の誤検知が起きにくい)ことを意味している。同図の最右欄(「平均」の項目)に示すように、本発明2,3の方法は、誤検知率が目標値よりも低いことがわかる。また、本発明2,3の方法は、本発明1よりも発塵源ごとの誤検知率の偏りが解消されていることがわかる。なお、本発明1は、発塵源によっては、誤検知率が目標値から離れている(誤検知が多い)場合もあるが、誤検知そのものは安全側であり、発塵検知を行わないよりは行ったほうがよい。
【0053】
図10は、本発明に係る発塵監視システムおよび発塵監視装置の実施例であり、本発明の導入前後における作業員の作業時間の一例を示している。作業員の作業時間は、例えば「大ランク、中ランクの発塵のチェック」に要する時間、「関係部署への連絡」に要する時間、「小ランクの発塵のチェック」に要する時間、の合計時間からなる。同図に示すように、本発明を導入することにより、発塵監視を自動化することができるため、作業時間が「2.0h/日」削減されたことがわかる。
【0054】
以上、本発明に係る発塵監視システムおよび発塵監視装置について、発明を実施するための形態および実施例により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0055】
1 発塵監視システム
10 カメラ
20 AIサーバ
21 発塵判定部
30 データサーバ
31 分類保存部
32 記憶部
40 メールサーバ
41 報知部