(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134953
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】運行管理装置、運行管理システム、列車連結判定方法及び列車連結判定プログラム
(51)【国際特許分類】
B61L 27/14 20220101AFI20240927BHJP
【FI】
B61L27/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045422
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】大塚 百恵
(72)【発明者】
【氏名】萩原 雅
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161JJ22
5H161JJ40
(57)【要約】
【課題】効率的な運行を行える連結順序で複数の列車を連結させることができる運行管理装置を得ること。
【解決手段】運行管理装置10は、線路が合流する箇所である合流点を有する鉄道網において、合流点を通る複数の列車の終点を含む列車運行情報を取得する情報取得部161と、情報取得部161が取得した複数の列車の列車運行情報に基づいて、複数の列車が連結を行う際の前後の順序である連結順序を決定する処理部162と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線路が合流する箇所である合流点を有する鉄道網において、前記合流点を通る複数の列車の終点を含む列車運行情報を取得する情報取得部と、
前記複数の列車の前記列車運行情報に基づいて、前記複数の列車が連結を行う際の前後の順序である連結順序を決定する処理部と、
を備えることを特徴とする運行管理装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記複数の列車の終点が同じ駅である場合には、列車連結が可能な連結駅に先に到着する列車を先行列車とし、前記連結駅に後に到着する列車を後続列車として連結順序を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の運行管理装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記複数の列車の終点が異なる路線にある場合には、解放後に線路が分岐する箇所である分岐点をより速い速度で通過する列車を先行列車とし、解放後に前記分岐点を前記先行列車よりも低い速度で通過する列車を後続列車として連結順序を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の運行管理装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記複数の列車の終点が同じ路線の異なる駅である場合には、列車連結が可能な連結駅からより遠い駅が終点である列車を先行列車とし、前記連結駅により近い駅が終点である列車を後続列車として連結順序を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の運行管理装置。
【請求項5】
前記情報取得部は、前記複数の列車の走行位置及び走行速度を含む列車走行情報と、前記複数の列車の連結に関する属性情報とを取得し、
前記処理部は、前記複数の列車の前記列車走行情報に基づいて、列車連結が可能な連結駅への前記複数の列車の到着時刻を予測し、前記複数の列車の前記属性情報と、予測した前記複数の列車の前記到着時刻とに基づいて、前記複数の列車が連結可能か否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の運行管理装置。
【請求項6】
前記連結駅は、前記合流点が設けられた駅又は前記合流点の直後の駅である
ことを特徴とする請求項5に記載の運行管理装置。
【請求項7】
前記属性情報は、前記複数の列車の各々を構成する車両の車種を示す車両種別情報を含み、
前記処理部は、前記複数の列車の各々を構成する車両の車種が異なる場合には、前記複数の列車が連結不可能であると判定する
ことを特徴とする請求項5に記載の運行管理装置。
【請求項8】
前記属性情報は、前記列車の運行ダイヤにおける列車種別を示す列車種別情報を含み、
前記処理部は、前記複数の列車の各々の列車種別が異なる場合には、前記複数の列車が連結不可能であると判定する
ことを特徴とする請求項5に記載の運行管理装置。
【請求項9】
前記処理部は、連結した前記複数の列車を連結後に解放する解放駅を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の運行管理装置。
【請求項10】
前記処理部は、連結した前記複数の列車の終点が異なる路線にある場合には、線路が分岐する箇所である分岐点が設けられた駅又は前記分岐点の直前の駅を前記解放駅とする
ことを特徴とする請求項9に記載の運行管理装置。
【請求項11】
前記処理部は、連結可能と判定した前記複数の列車の終点が同じ路線にある場合には、列車連結が可能な連結駅により近い駅が終点である列車の終着駅を前記解放駅とする
ことを特徴とする請求項9に記載の運行管理装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の運行管理装置と、
前記運行管理装置による判定結果を前記複数の列車に送信する通信装置と、
を備えることを特徴とする運行管理システム。
【請求項13】
線路が合流する箇所である合流点を有する鉄道網において、前記合流点を通る複数の列車の終点を含む列車運行情報を取得する情報取得部と、
前記複数の列車の前記列車運行情報に基づいて、前記複数の列車が連結を行う際の前後の順序である連結順序を決定する処理部と、
を備える列車連結判定装置と、
前記処理部の決定に基づいて、前記複数の列車に対して連結作業のための運行指示を出力する運行管理装置と、
を備えることを特徴とする運行管理システム。
【請求項14】
線路が合流する箇所である合流点を有する鉄道網において、前記合流点を通る複数の列車の終点を含む列車運行情報を取得するステップと、
前記複数の列車の前記列車運行情報に基づいて、前記複数の列車が連結を行う際の前後の順序である連結順序を決定するステップと、
を含むことを特徴とする列車連結判定方法。
【請求項15】
コンピュータシステムに、
線路が合流する箇所である合流点を有する鉄道網において、前記合流点を通る複数の列車の終点を含む列車運行情報を取得するステップと、
前記複数の列車の前記列車運行情報に基づいて、前記複数の列車が連結を行う際の前後の順序である連結順序を決定するステップと、
を実行させることを特徴とする列車連結判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の列車を最適な連結順序で連結させる運行管理装置、運行管理システム、列車連結判定方法及び列車連結判定プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道網において、列車は一定の車間距離を確保して運行する必要がある。例えば、列車に遅れが生じ、先行列車と後続列車との車間距離が短くなった場合、後続の列車は車間距離を保つために、出発を遅らせるなどの運用を行う。そこで、このような事態を防ぐべく、運行時の列車同士の車間距離に余裕を持たせるために、列車同士を連結して運行することで鉄道網における列車密度を下げる手法がある。
【0003】
特許文献1には、二つの車両の距離と、後方の車両の走行速度とに基づいて後方の車両を制御して前方の車両に連結させる車両併合制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される列車併合制御方法においては、列車を連結する前後の順序を特に定めていないため、連結順序によっては、効率的な運行が難しくなってしまうという課題があった。特に、線路の合流点がある路線で異なる方向から走行してきた車両同士を連結して走行させる場合には、無作為の連結順序で連結すると、例えば先に到着した列車の停止時間が長くなってしまったり、連結後に解放を行う際に前後の車両を入れ替える作業が必要になってしまうことが想定される。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、効率的な運行を行える連結順序で複数の列車を連結させることができる運行管理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る運行管理装置は、線路が合流する箇所である合流点を有する鉄道網において、合流点を通る複数の列車の終点を含む列車運行情報を取得する情報取得部を備える。運行管理装置は、複数の列車の列車運行情報に基づいて、複数の列車が連結を行う際の前後の順序である連結順序を決定する処理部を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、効率的な運行を行える連結順序で複数の列車を連結させることができる運行管理装置を得られる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る運行管理システムの構成を示す図
【
図2】実施の形態1に係る運行管理システムの変形例を示す図
【
図3】実施の形態1に係る運行管理システムが連結駅に到着予定の二つの列車が連結可能であるか否かを判定する処理の流れを示すフローチャート
【
図4】実施の形態1に係る運行管理システムの処理部による二つの列車の連結順序の決定の第1の例を示す図
【
図5】実施の形態1に係る運行管理システムの処理部による二つの列車の連結順序の決定の第2の例を示す図
【
図6】実施の形態1に係る運行管理システムの処理部による二つの列車の連結順序の決定の第3の例を示す図
【
図7】実施の形態2に係る運行管理システムの構成を示す図
【
図8】実施の形態2に係る運行管理システムが連結する列車の解放駅を決定する処理の流れを示すフローチャート
【
図9】実施の形態2に係る運行管理システムの処理部による二つの列車の解放駅の決定の第1の例を示す図
【
図10】実施の形態2に係る運行管理システムの処理部による二つの列車の解放駅の決定の第2の例を示す図
【
図11】実施の形態1又は実施の形態2に係る運行管理システム及び実施の形態1又は実施の形態2に係る運行管理装置を実現するコンピュータシステムのハードウェア構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の形態に係る運行管理装置、運行管理システム、列車連結判定方法及び列車連結判定プログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る運行管理システムの構成を示す図である。運行管理システム50は、運行管理装置10及び通信装置20を備える。通信装置20は、鉄道網を構成する線路を走行する各列車30と通信し、運行指示を送る装置である。なお、ここでは運行管理装置10と通信装置20とを備えた運行管理システム50について説明するが、運行管理装置10を単独で運用してもよい。運行管理装置10は、各列車30に対する運行指示を作成し、通信装置20に出力する。ここで、列車30は、停車場外の線路を運転させる目的で組成された車両を指し、複数の車両が連結された編成と一両編成との両方を含む。なお、鉄道網は、複数の路線で構成されており、各路線は複数の区間に分けて管理されている。鉄道網に複数の路線が存在することにより、線路には少なくとも一つの分岐箇所が含まれている。分岐箇所が線路の合流点となるか分岐点となるかは、列車30の進行方向によって変わる。すなわち、二方向から延びる線路が列車30の進行方向において一つにまとまる場合は合流点となり、一方向から延びる線路が列車30の進行方向において二つに分かれる場合は分岐点となる。なお、一方向から分岐点に延びる線路に繋がっている線路が本線であり、本線から枝分かれする線路が分岐線である。
【0012】
運行管理装置10は、列車運行データ収集部11、列車走行データ収集部12、在線検知部13、路線データ記憶部14、列車制御指令部15及び列車連結判定部16を備える。
【0013】
列車運行データ収集部11は、各列車30の識別番号、車両の識別番号及び各列車30の運行ダイヤのデータである列車運行情報を取得する。列車運行情報は、線路が合流する箇所である合流点を有する鉄道網において、合流点を通る複数の列車30の終点を含む。すなわち、列車運行データ収集部11は、どの識別番号を持つ列車30がどの識別番号の車両で構成されており、いつどの区間を走行する予定であるかを示すデータを収集する。運行ダイヤにおいて列車30の識別番号によって特定される列車種別及び車両の識別番号によって特定される車両の車種は、複数の列車30の連結に関する属性情報である。
【0014】
列車走行データ収集部12は、列車30の走行速度及び走行位置を示す列車走行情報のデータを走行中の全列車30について収集する。すなわち、列車走行データ収集部12は、データ収集の時点において各列車30がどの区間をどのような速度で走行しているかを示すデータを収集する。
【0015】
在線検知部13は、複数の線路が並列して設置されている区間において、どの線路上に列車30が在線しているのかを検知する。複数の線路が並列して設置された区間の例としては、複線化、複々線化、単線並列化又は双単線化された区間、待避線が設置された区間、車両基地、及び複数のプラットフォームを備えた駅構内を挙げることができるがこれらに限定されない。以下、複数の線路が並列して設置されている区間において列車30が在線している線路を示す情報を在線情報という。
【0016】
路線データ記憶部14は、鉄道網を構成する路線の各区間における線路状態を示す路線データを記憶する。線路状態には、勾配の位置及び大きさ、カーブの位置及び大きさ、分岐の位置及び駅の位置を例示できる。
【0017】
列車制御指令部15は、列車運行データ収集部11、列車走行データ収集部12、在線検知部13及び路線データ記憶部14の各々から情報を取得して各列車30に対する運行指示を作成し、作成した運行指示を通信装置20に出力する。
【0018】
列車連結判定部16は、走行中の各列車30の中に連結可能な列車30の組み合わせがあるか否かを判定し、連結可能な列車30の組み合わせがあるか否かの判定結果を列車制御指令部15に通知する列車連結判定装置である。列車連結判定部16は、情報処理機能を備えた処理部162によって実現される。処理部162のハードウェア構成については後述する。
【0019】
通信装置20は、連結対象通知部21を備える。連結対象通知部21は、列車連結判定部16が連結可能な組み合わせと判定した連結対象の列車30に対し、連結作業のための運行指示を出力する。
【0020】
列車運行データ収集部11及び列車走行データ収集部12は、合流点を通る複数の列車30の終点を含む列車運行情報、複数の列車30の走行位置及び走行速度を含む列車走行情報及び複数の列車30の連結に関する属性情報を取得する情報取得部161である。
【0021】
なお、ここでは列車連結判定装置である列車連結判定部16を運行管理装置10に組み込んだ構成を例に挙げたが、列車連結判定装置は、運行管理装置10から独立した装置として構成してもよい。
図2は、実施の形態1に係る運行管理システムの変形例を示す図である。実施の形態1の変形例に係る運行管理システム50は、運行管理装置10と、列車連結判定装置40と、通信装置20とを備える。列車連結判定装置40は、列車運行データ収集部11及び列車走行データ収集部に12によって収集された列車運行情報、列車走行情報及び属性情報を取得する情報取得部161と、複数の列車30の列車運行情報及び列車走行情報に基づいて、列車連結が可能な連結駅への各列車30の到着時刻を予測し、各列車30の属性情報と、各列車30の予測到着時刻とに基づいて、複数の列車30が連結可能か否かを判定する列車連結判定部16を備えた処理部162とを有する。実施の形態1の変形例に係る運行管理システム50は、処理部162が複数の列車30の列車運行情報に基づいて決定した連結順序に基づいて、運行管理装置10が複数の列車30に対して連結作業のための運行指示を出力する。
【0022】
図3は、実施の形態1に係る運行管理システムが連結駅に到着予定の二つの列車が連結可能であるか否かを判定する処理の流れを示すフローチャートである。ステップS1において、処理部162は、列車制御指令部15が列車運行データ収集部11、列車走行データ収集部12、在線検知部13及び路線データ記憶部14の各々から取得した各種のデータを、列車制御指令部15から取得する。
【0023】
ステップS2において、処理部162は、路線データに基づいて、連結駅を決定する。なお、連結駅は、線路の合流点が設けられた駅又は線路の合流点の直後の駅とする。
【0024】
ステップS3において、処理部162は、列車走行情報及び在線情報に基づいて、各列車30の連結駅への到着時刻を予測する。列車30の走行位置が同じであっても在線する線路が異なる場合には、線路の混雑具合に差があって連結駅への到着時刻が異なることがある。このため、列車走行情報だけで無く在線情報にも基づいて連結駅への到着時刻を予測することにより、到着時刻を正確に予測できる。
【0025】
ステップS4において、処理部162は、列車30の識別番号及び車両の識別番号に基づいて、車両性能判定を行う。車両性能判定においては、各々の列車30を構成する車両が物理的に連結できる組み合わせであるか否かを判定する。例えば、一方の列車30が気動車の編成であり、他方の列車30が電車の編成である場合には、処理部162は、各々の列車30を構成する車両が物理的に連結不可能な組み合わせであると判定する。また、各々の列車30を構成する車両の連結器の形状が異なる場合には、処理部162は、各々の列車30を構成する車両が物理的に連結不可能な組み合わせであると判定する。
【0026】
なお、物理的な連結を行わないものの、列車30の間隔を通常よりも短くして擬似的に一編成として運行するいわゆるソフト連結を行う場合には、処理部162は、各々の列車30の車種に関わりなく各々の列車30を構成する車両が物理的に連結可能な組み合わせであると判定する。
【0027】
各々の列車30を構成する車両が物理的に連結可能な組み合わせであると判定した場合、ステップS4でYesとなり、処理部162は処理をステップS5に進める。各々の列車30を構成する車両が物理的に連結可能な組み合わせでないと判定した場合、ステップS4でNoとなり、処理部162は処理をステップS9に進める。
【0028】
ステップS5において、処理部162は、列車30の識別番号及び運行ダイヤに基づいて、列車種別判定を行う。列車種別判定では、停車駅が同一であり、かつ連結により遅延を生じることのない列車30の組み合わせであるか否かを判定する。例えば、処理部162は、一方の列車30が普通列車であり、他方の列車30が急行列車であるように速達性が異なる場合には、停車駅が異なる列車30の組み合わせであると判定する。ただし、速達性が異なる列車30の組み合わせであっても停車駅が同じである場合には、処理部162は、停車駅が同一の列車30の組み合わせであると判定する。また、処理部162は、連結可否の判定対象の列車30の標準運転時分が異なる場合には、連結により遅延が生じる列車30の組み合わせであると判定する。例えば、連結可否の判定対象の列車30を構成する車両同士で最高速度及び加減速性能の少なくとも一方が異なっており、連結することにより一方の列車30に標準運転時分から遅延が生じる場合には、処理部162は、連結により遅延が生じる列車30の組み合わせであると判定する。なお、標準運転時分は、各区間を走行するのに要する時間として運行ダイヤ上で各列車30に設定される時間である。
【0029】
なお、運行ダイヤにおいて高性能車両で構成される列車30に対して速度及び加減速度を抑えて標準運転時分が設定されている場合には、処理部162は、最高速度及び加減速性能の少なくとも一方が異なる車両で構成された列車30同士であっても、連結により遅延を生じることのない列車30の組み合わせであると判定する。
【0030】
停車駅が同一であり、かつ連結により遅延を生じることのない列車30の組み合わせであると判定した場合、ステップS5でYesとなり、処理部162は処理をステップS6に進める。停車駅が同一であること及び連結により遅延を生じることのない組み合わせであることの少なくとも一方を満たさない列車30の組み合わせであると判定した場合、ステップS5でNoとなり、処理部162は処理をステップS9に進める。
【0031】
ステップS6において、処理部162は、連結可否の判定対象の二つの列車30の連結駅への到着時刻の差が予め設定された閾値以内であるか否かを判定する。連結可否の判定対象の二つの列車30の連結駅への到着時刻の差が予め設定された閾値以内である場合、ステップS6でYesとなり、処理部162は処理をステップS7に進める。連結可否の判定対象の二つの列車30の連結駅への到着時刻の差が予め設定された閾値を超える場合、ステップS6でNoとなり、処理部162は処理をステップS9に進める。
【0032】
ステップS7において、処理部162は、運行ダイヤ及び連結可否の判定対象の二つの列車30の連結駅への到着時刻に基づいて、連結順序を決定する。すなわち処理部162は、二つの列車30のうちどちらを先行列車とし、どちらを後続列車として連結するかを決定する。
【0033】
二つの列車30が連結後に解放することなく終着駅又は車庫まで走行する場合、処理部162は、連結駅に先に到着する列車30が先行列車となるように連結順序を決定する。
図4は、実施の形態1に係る運行管理システムの処理部による二つの列車の連結順序の決定の第1の例を示す図である。
図4に示す列車30A及び列車30Bは、運行ダイヤにおいて同一の駅が終点として設定されている。また、列車30Aは、15時0分0秒に連結駅に到着し、列車30Bは、15時0分30秒に到着する。このため、処理部162は、列車30Aを先行列車とし、列車30Bを後続列車として連結順序を決定する。
【0034】
また、二つの列車30が連結後に分岐駅で解放し、一方の列車30が分岐線を走行する場合には、処理部162は、本線及び分岐線のうち解放後の分岐点を通過する際の速度制限が小さい方の線路を走行する列車30を先行列車とし、速度制限が大きい方の線路を走行する列車を後続列車として連結順序を決定する。すなわち、処理部162は、分岐点をより速い速度で通過する列車30を先行列車とし、分岐点をより遅い速度で通過する列車30を後続列車とするように連結順序を決定する。一般的には、分岐線の速度制限は本線の速度制限よりも大きいため、処理部162は、解放後に本線を走行する列車30を先行列車とし、分岐線を走行する列車30を後続列車として連結順序を決定することになる。ただし、本線の速度制限が分岐線の速度制限よりも大きい場合には、処理部162は、解放後に分岐線を走行する列車30を先行列車とし、本線を走行する列車30を後続列車として連結順序を決定することになる。
【0035】
図5は、実施の形態1に係る運行管理システムの処理部による二つの列車の連結順序の決定の第2の例を示す図である。
図5に示す列車30Cは、運行ダイヤにおいて本線上の
図5には不図示の駅が終点として設定されており、列車30Dは、運行ダイヤにおいて分岐線上の
図5には不図示の駅が終点として設定されている。また、列車30Cは、15時0分30秒に連結駅に到着し、列車30Dは、15時0分0秒に到着する。また、分岐線を走行する場合の分岐点を通過する際の速度制限は、本線を走行する場合の分岐点を通過する場合の速度制限よりも大きく設定されている。この場合、処理部162は、列車30Cを先行列車とし、列車30Dを後続列車として連結順序を決定する。
【0036】
また、二つの列車30が連結後に同じ路線を走行するが終点が異なる場合には、処理部162は、連結駅から遠い駅まで走行する方の列車30が先行列車となるように連結順序を決定する。
図6は、実施の形態1に係る運行管理システムの処理部による二つの列車の連結順序の決定の第3の例を示す図である。
図6に示す列車30E及び列車30Fは、運行ダイヤにおいて同一の路線上の異なる駅が終点として設定されており、列車30Fの終点である終着駅は、列車30Eの終点である終着駅よりも連結駅から遠い駅である。また、列車Eは、15時0分0秒に連結駅に到着し、列車30Fは、15時0分30秒に到着する。この場合、処理部162は、列車30Fを先行列車とし、列車30Eを後続列車として連結順序を決定する。
【0037】
ステップS8において、処理部162は、連結可能と判定された列車30の連結設定を行う。連結設定では、連結駅、先行列車及び後続列車、連結対象の列車30の列車の識別番号及び車両の識別番号、連結作業に伴い出発時刻の変更が生じる場合の変更後の出発時刻を決定する。
【0038】
ステップS9において、処理部162は、判定結果を列車制御指令部15に通知する。ステップS4、ステップS5及びステップS6のいずれかでNoとなった場合には、処理部162は、連結駅に到着予定の二つの列車30が連結できないことを列車制御指令部15に通知する。一方、ステップS4、ステップS5及びステップS6の全てでYesとなった場合には、処理部162は、連結駅に到着予定の二つの列車30が連結可能であることと、連結設定において決定した各種の情報とを列車制御指令部15に通知する。
【0039】
ステップS10において、列車制御指令部15は、列車連結判定部16からの通知に従って、二つの列車30に対する運行指示を通信装置20に出力する。すなわち、列車制御指令部15は、連結駅に到着予定の二つの列車30が連結できないことが列車連結判定部16から通知された場合には、各々の列車30に対して独立運転を行う運行指示を送信する。一方、列車制御指令部15は、連結駅に到着予定の二つの列車30が連結可能であることを通知された場合には、各々の列車30に対して連結駅、連結順序及び連結に伴い出発時刻の変更が生じる場合の変更後の出発時刻を含む運行指示を送信する。また、
図5に示した連結順序の決定の第2の例及び
図6に示した連結順序の決定の第3の例のように、後続列車の連結駅への予測到着時刻が先行列車の連結駅への予測到着時刻よりも早い場合には、後続列車を連結駅に進入させずに待機させ、先行列車の到着後に入線させて連結作業を行うように運行指示を送信する。
【0040】
上記の説明においては連結駅に到着予定の二つの列車30について連結可能であるか否かを判定したが、鉄道網を構成する線路上の全ての連結駅に関して、到着予定の二つの列車30の組み合わせを変えながらステップS1からステップS10の処理を繰り返すことで、鉄道網を構成する線路を走行する列車30の連結の可否を判定し、連結可能な列車30の組み合わせがある場合には効率的な運用を行える連結順序で列車30を連結することが可能となる。連結駅に到着予定の二つの列車30を連結することにより、連結対象ではない列車30同士の間隔を広げることが可能となり、列車30の渋滞を予防することができる。
【0041】
また、上記の説明においては連結駅に到着予定の二つの列車30について連結可能であるか否かを判定したが、三つ以上の列車30についても同様の処理により連結可能であるか否かを判定することができる。
【0042】
実施の形態1に係る運行管理システムは、連結後に列車30がどのように運行されるかを考慮して連結順序を決定するため、効率的な運行を行える連結順序で複数の列車30を連結させることできる。
【0043】
実施の形態2.
図7は、実施の形態2に係る運行管理システムの構成を示す図である。実施の形態2に係る運行管理システムは、処理部162が列車解放判定部17を備える点で実施の形態1に係る運行管理システム50と相違する。
【0044】
列車解放判定部17は、連結する列車30を解放する解放駅をどの駅にするかを判定する。
図8は、実施の形態2に係る運行管理システムが連結する列車の解放駅を決定する処理の流れを示すフローチャートである。
図8に示す処理は、
図3に示した連結駅に到着予定の二つの列車30について連結可能であるか否かの判定を行う処理において連結可能と判定した場合に、
図3の処理に引き続いて行われる。
【0045】
ステップS11において、処理部162は、列車制御指令部15が列車運行データ収集部11、列車走行データ収集部12、在線検知部13及び路線データ記憶部14の各々から取得した各種のデータを、列車制御指令部15から取得する。
【0046】
ステップS12において、処理部162は、解放駅を決定する。連結する二つの列車30の終点が異なる路線にある場合、処理部162は、線路の分岐点が設けられた駅又は線路の分岐点の直前の駅を解放駅に決定する。
図9は、実施の形態2に係る運行管理システムの処理部による二つの列車の解放駅の決定の第1の例を示す図である。
図9に示す列車30Gは、運行ダイヤにおいて本線上の
図9には不図示の駅が終点として設定されており、列車30Hは、運行ダイヤにおいて分岐線上の
図9には不図示の駅が終点として設定されている。処理部162は、P駅において連結する列車30G及び列車30Hの解放駅を本線と分岐線との分岐点が設けられているQ駅に決定する。
【0047】
また、連結する二つの列車30の終点が同一路線にある場合、処理部162は、後続列車の終着駅を解放駅に決定する。
図10は、実施の形態2に係る運行管理システムの処理部による二つの列車の解放駅の決定の第2の例を示す図である。
図10に示す列車30K及び列車30Lは、運行ダイヤにおいて同一の路線上の異なる駅が終点として設定されており、列車30Lの終着駅であるZ駅は、列車30Kの終着駅であるY駅よりも連結駅であるX駅から遠い駅である。処理部162は、X駅において連結する列車K及び列車30Lの解放駅を、後続列車である列車30Kの終着駅であるY駅に決定する。連結する二つの列車30の終点が同一路線にある場合には、列車30の連結順序が、より遠くの駅まで走行する列車30が先行列車となるようにステップS7の処理において決定されているため、先行列車は、後続列車の終着駅で後続列車を解放した後に、そのまま先行列車の終点である終着駅に向けて走行することができる。
【0048】
ステップS13において、処理部162は、解放設定を行う。解放設定では、列車制御指令部15に通知する情報を作成する。列車制御指令部15に通知する情報とは、解放駅及び解放によって出発時刻が変更される場合の変更後の出発時刻である。
【0049】
ステップS14において、処理部162は、解放設定において作成した情報を列車制御指令部15へ通知する。
【0050】
ステップS15において、列車制御指令部15は、列車連結判定部16からの通知に従って、二つの列車30に対する運行指示を通信装置20に出力する。すなわち、列車制御指令部15は、連結駅に到着予定の二つの列車30に対して、解放駅及び解放によって出発時刻が変更される場合の変更後の出発時刻を通知する運行指示を送信する。
【0051】
連結する二つの列車30の終点が異なる路線にある場合、線路の分岐点が設けられた駅又は線路の分岐点の直前の駅よりも手前の駅で列車30を解放してしまうと、解放駅から線路の分岐点が設けられた駅の間、又は解放駅から線路の分岐点の直前の駅の間は、解放した列車30同士の車間距離を確保しなければならないため、後続列車の出発が遅れる要因となってしまう。また、連結する二つの列車30の終点が同じ路線にある場合、後続列車の終着駅よりも手前の駅で列車30を解放してしまうと、解放駅から後続列車の終着駅の間は、解放した列車30同士の車間距離を確保しなければならないため、後続列車の出発が遅れる要因となってしまう。
【0052】
実施の形態2に係る運行管理システムは、解放後の各列車30が走行する路線を考慮して解放駅を決定するため、解放後に後続列車の出発が遅れることはなく、効率的な列車30の運行が可能である。
【0053】
次に、実施の形態1又は実施の形態2に係る運行管理システム及び実施の形態1又は実施の形態2に係る運行管理装置のハードウェア構成について説明する。実施の形態1又は実施の形態2に係る運行管理システム及び実施の形態1又は実施の形態2に係る運行管理装置は、サーバのようなコンピュータシステムによって実現される。
図11は、実施の形態1又は実施の形態2に係る運行管理システム及び実施の形態1又は実施の形態2に係る運行管理装置を実現するコンピュータシステムのハードウェア構成の一例を示す図である。
図11に示すように、コンピュータシステムは、プロセッサ101と、メモリ102と、記憶装置103と、インタフェース回路104とを備えるコンピュータシステムである。プロセッサ101、メモリ102、記憶装置103及びインタフェース回路104は、バス105によって互いにデータの送受信が可能である。プロセッサ101は、記憶装置103に記憶されたOS(Operation System)及び処理プログラムを読み出して実行することによって、処理部162の機能を実行する。
【0054】
プロセッサ101は、記憶装置103に記憶されたOS及び処理プログラムを読み出して実行することによって、処理部162の機能を実行する。なお、処理部162の一部又は全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)及びFPGA(Field Programmable Gate Array)に代表されるハードウェアで構成することもできる。すなわち、処理部162の一部又は全部を実現する処理回路は、専用のハードウェアであってもよい。
【0055】
また、プロセッサ101は、磁気ディスク、USB(Universal Serial Bus)メモリ、光ディスク、コンパクトディスク及びDVD(Digital Versatile Disc)のうち一つ以上の記憶媒体から不図示のインタフェースを介してOS及び処理プログラムを読み出し記憶装置103に記憶して実行することもできる。
【0056】
以上の実施の形態に示した構成は、内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【0057】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0058】
(付記1)
線路が合流する箇所である合流点を有する鉄道網において、前記合流点を通る複数の列車の終点を含む列車運行情報を取得する情報取得部と、
前記複数の列車の前記列車運行情報に基づいて、前記複数の列車が連結を行う際の前後の順序である連結順序を決定する処理部と、
を備えることを特徴とする運行管理装置。
(付記2)
前記処理部は、前記複数の列車の終点が同じ駅である場合には、列車連結が可能な連結駅に先に到着する列車を先行列車とし、前記連結駅に後に到着する列車を後続列車として連結順序を決定する
ことを特徴とする付記1に記載の運行管理装置。
(付記3)
前記処理部は、前記複数の列車の終点が異なる路線にある場合には、解放後に線路が分岐する箇所である分岐点をより速い速度で通過する列車を先行列車とし、解放後に前記分岐点を前記先行列車よりも低い速度で通過する列車を後続列車として連結順序を決定する
ことを特徴とする付記1に記載の運行管理装置。
(付記4)
前記処理部は、前記複数の列車の終点が同じ路線の異なる駅である場合には、列車連結が可能な連結駅からより遠い駅が終点である列車を先行列車とし、前記連結駅により近い駅が終点である列車を後続列車として連結順序を決定する
ことを特徴とする付記1に記載の運行管理装置。
(付記5)
前記情報取得部は、前記複数の列車の走行位置及び走行速度を含む列車走行情報と、前記複数の列車の連結に関する属性情報とを取得し、
前記処理部は、前記複数の列車の前記列車走行情報に基づいて、列車連結が可能な連結駅への前記複数の列車の到着時刻を予測し、前記複数の列車の前記属性情報と、予測した前記複数の列車の前記到着時刻とに基づいて、前記複数の列車が連結可能か否かを判定する
ことを特徴とする付記1から付記4のいずれか一つに記載の運行管理装置。
(付記6)
前記連結駅は、前記合流点が設けられた駅又は前記合流点の直後の駅である
ことを特徴とする付記5に記載の運行管理装置。
(付記7)
前記属性情報は、前記複数の列車の各々を構成する車両の車種を示す車両種別情報を含み、
前記処理部は、前記複数の列車の各々を構成する車両の車種が異なる場合には、前記複数の列車が連結不可能であると判定する
ことを特徴とする付記5に記載の運行管理装置。
(付記8)
前記属性情報は、前記列車の運行ダイヤにおける列車種別を示す列車種別情報を含み、
前記処理部は、前記複数の列車の各々の列車種別が異なる場合には、前記複数の列車が連結不可能であると判定する
ことを特徴とする付記5に記載の運行管理装置。
(付記9)
前記処理部は、連結した前記複数の列車を連結後に解放する解放駅を決定する
ことを特徴とする付記1から付記8のいずれか一つに記載の運行管理装置。
(付記10)
前記処理部は、連結した前記複数の列車の終点が異なる路線にある場合には、線路が分岐する箇所である分岐点が設けられた駅又は前記分岐点の直前の駅を前記解放駅とする
ことを特徴とする付記9に記載の運行管理装置。
(付記11)
前記処理部は、連結可能と判定した前記複数の列車の終点が同じ路線にある場合には、列車連結が可能な連結駅により近い駅が終点である列車の終着駅を前記解放駅とする
ことを特徴とする付記9に記載の運行管理装置。
(付記12)
付記1から付記11のいずれか一つに記載の運行管理装置と、
前記運行管理装置による判定結果を前記複数の列車に送信する通信装置と、
を備えることを特徴とする運行管理システム。
(付記13)
線路が合流する箇所である合流点を有する鉄道網において、前記合流点を通る複数の列車の走行位置及び走行速度を含む列車走行情報と、前記複数の列車の連結に関する属性情報とを取得する情報取得部と、
前記複数の列車の前記列車走行情報に基づいて、列車連結が可能な連結駅への前記複数の列車の到着時刻を予測し、前記複数の列車の前記属性情報と、予測した前記複数の列車の前記到着時刻とに基づいて、前記複数の列車が連結可能か否かを判定する処理部と、
を備えることを特徴とする運行管理装置。
【符号の説明】
【0059】
10 運行管理装置、11 列車運行データ収集部、12 列車走行データ収集部、13 在線検知部、14 路線データ記憶部、15 列車制御指令部、16 列車連結判定部、17 列車解放判定部、20 通信装置、21 連結対象通知部、30,30A,30B,30C,30D,30E,30F,30G,30H,30K,30L 列車、40 列車連結判定装置、50 運行管理システム、101 プロセッサ、102 メモリ、103 記憶装置、104 インタフェース回路、105 バス、161 情報取得部、162 処理部。