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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134960
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】バッテリパック
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/244 20210101AFI20240927BHJP
   H01M 50/269 20210101ALI20240927BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20240927BHJP
【FI】
H01M50/244 A
H01M50/244 Z
H01M50/269
H01M50/291
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045430
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】家村 侑
(72)【発明者】
【氏名】安井 健
(72)【発明者】
【氏名】川辺 悟
(72)【発明者】
【氏名】立脇 正章
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA07
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY04
5H040AY08
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】バッテリモジュールとの固定部が設けられたフレーム部材から入力された衝突荷重に対して適切にバッテリモジュールを保護できるバッテリパックを提供する。
【解決手段】バッテリケース20は、後方から見てバッテリモジュール10の中間プレート12と重なる位置においてバッテリモジュール10の一部をフレーム部材40に固定する第1固定部60と、後方から見て中間プレート12と重なる位置とは異なる位置においてフレーム部材40に設けられ、バッテリモジュール10の他の一部をフレーム部材40に固定する第2固定部70と、を備える。第1固定部60は、第1固定部60及び第2固定部70に対して後方から荷重が加わったときにバッテリモジュール10への荷重伝達力が第2固定部70の荷重伝達力よりも大きく、且つ耐荷重が第2固定部70の耐荷重よりも大きく構成される。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向のうち第1方向に積層された複数のバッテリセルと、前記水平方向のうち前記第1方向と直交する第2方向に延在する耐荷重部材とを有するバッテリモジュールと、
前記バッテリモジュールを収容するバッテリケースと、を備え、車両に搭載されるバッテリパックであって、
前記バッテリケースは、
前記バッテリモジュールが載置されるベースプレートと、
前記ベースプレートの外縁部に接合され、前記バッテリケースの外枠を構成するフレーム部材と、
前記第2方向から見て前記耐荷重部材と重なる位置において前記フレーム部材に設けられ、前記バッテリモジュールの第1の部分を前記フレーム部材に固定する第1固定部と、
前記第2方向から見て前記耐荷重部材と重なる位置とは異なる位置において前記フレーム部材に設けられ、前記バッテリモジュールの第2の部分を前記フレーム部材に固定する第2固定部と、を備え、
前記ベースプレートは、前記外縁部の断面で見た先端が前記フレーム部材の下側に配置され、
前記フレーム部材は、前記ベースプレートの前記先端より外側に位置し、且つ前記第2方向から見て前記ベースプレートの前記先端と重なるように上下方向に延在する縦壁部を有し、
前記第1固定部は、前記第1固定部及び前記第2固定部に対して前記第2方向の荷重が加わったときに前記バッテリモジュールへの荷重伝達力が前記第2固定部の荷重伝達力よりも大きく、且つ耐荷重が前記第2固定部の耐荷重よりも大きく構成される、
バッテリパック。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリパックであって、
前記第1固定部及び前記第2固定部はそれぞれ、前記フレーム部材から前記バッテリモジュールに向かって延出した第1固定ブラケット及び第2固定ブラケットにより構成され、
上下方向において、前記第1固定ブラケットと前記フレーム部材との連結部の高さは、前記第2固定ブラケットと前記フレーム部材との連結部の高さよりも高い、
バッテリパック。
【請求項3】
請求項2に記載のバッテリパックであって、
前記第1固定ブラケットは、前記バッテリモジュールの前記第1の部分に締結される第1締結部を有し、
前記第1固定ブラケットの上部は、前記フレーム部材との前記連結部と前記第1締結部との間に、前記連結部から前記バッテリケースの内側に向かって下方に傾斜する傾斜部を有する、
バッテリパック。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のバッテリパックであって、
前記第2固定ブラケットは、前記バッテリモジュールの前記第2の部分に締結される第2締結部を有し、
第2固定ブラケットの上部は、前記フレーム部材との前記連結部から前記第2締結部まで略水平である、
バッテリパック。
【請求項5】
請求項2又は3に記載のバッテリパックであって、
前記第1固定ブラケットは、前記第2固定ブラケットよりも肉厚である、
バッテリパック。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載のバッテリパックであって、
前記第1固定部は、前記バッテリモジュールの前記第1の部分に第1ボルトにより締結される第1締結部を有し、
前記第2固定部は、前記バッテリモジュールの前記第2の部分に第2ボルトにより締結される第2締結部を有し、
前記第1ボルトの径は前記第2ボルトの径よりも大きい、
バッテリパック。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1項に記載のバッテリパックであって、
前記第1固定部及び前記第2固定部は、前記フレーム部材に一体に設けられている、
バッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるバッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池(以下、バッテリとも称する)に関する研究開発が行われている。
【0003】
バッテリ式電気自動車やハイブリッド車、燃料電池車などの車両には、大容量のバッテリが搭載される。このような車両に搭載されるバッテリは高電圧部品であるので、衝撃からバッテリを保護する必要がある。しかしながら、車両の衝突等によりバッテリに大きな荷重が入力される可能性がある。
【0004】
これに対し、例えば特許文献1には、車両の側面衝突時にフロアパネルの下方に配置されたバッテリパックを保護することのできる車体の下部構造が記載されている。特許文献1に記載されたバッテリパックのバッテリサイドフレームは、車幅方向内側に位置するバッテリクロスメンバへ衝突荷重を良好に伝達する構成を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-131133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、バッテリパックの外枠を構成するフレーム部材には、バッテリを固定する固定部が設けられることがある。この場合、フレーム部材に衝突荷重の入力があったときに固定部を介してバッテリに入力される衝突荷重からバッテリを適切に保護する構造が望まれる。
【0007】
本発明は、バッテリモジュールとの固定部が設けられたフレーム部材に入力された衝突荷重に対して適切にバッテリモジュールを保護できるバッテリパックを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
水平方向のうち第1方向に積層された複数のバッテリセルと、前記水平方向のうち前記第1方向と直交する第2方向に延在する耐荷重部材とを有するバッテリモジュールと、
前記バッテリモジュールを収容するバッテリケースと、を備え、車両に搭載されるバッテリパックであって、
前記バッテリケースは、
前記バッテリモジュールが載置されるベースプレートと、
前記ベースプレートの外縁部に接合され、前記バッテリケースの外枠を構成するフレーム部材と、
前記第2方向から見て前記耐荷重部材と重なる位置において前記フレーム部材に設けられ、前記バッテリモジュールの第1の部分を前記フレーム部材に固定する第1固定部と、
前記第2方向から見て前記耐荷重部材と重なる位置とは異なる位置において前記フレーム部材に設けられ、前記バッテリモジュールの第2の部分を前記フレーム部材に固定する第2固定部と、を備え、
前記ベースプレートは、前記外縁部の断面で見た先端が前記フレーム部材の下側に配置され、
前記フレーム部材は、前記ベースプレートの前記先端より外側に位置し、且つ前記第2方向から見て前記ベースプレートの前記先端と重なるように上下方向に延在する縦壁部を有し、
前記第1固定部は、前記第1固定部及び前記第2固定部に対して前記第2方向の荷重が加わったときに前記バッテリモジュールへの荷重伝達力が前記第2固定部の荷重伝達力よりも大きく、且つ耐荷重が前記第2固定部の耐荷重よりも大きく構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バッテリモジュールとの固定部が設けられたフレーム部材に入力された衝突荷重に対して適切にバッテリモジュールを保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】バッテリパック1、及びバッテリパック1を搭載する車両Vの斜視図である。
図2】バッテリパック1の分解斜視図である。
図3】バッテリモジュール10の部分斜視図である。
図4】バッテリモジュール10の上面図である。
図5】バッテリトレイ21、及びバッテリトレイ21に載置される4つのバッテリモジュール10を示す斜視図である。
図6】バッテリパック1の内部構造を示す上面図である。
図7】後クロスメンバ41及びベースプレート30の断面の斜視図である。
図8図6のA-A線断面図である。
図9】第1固定部60の斜視図である。
図10図6のB-B線断面図である。
図11】第2固定部70の斜視図である。
図12図6のA-A断面において、後方から衝突荷重が加わったときに後クロスメンバ41に加わる回転力Tを示す図である。
図13図6のB-B断面において、後方から衝突荷重が加わったときに後クロスメンバ41に加わる回転力Tを示す図である。
図14】変形例1のバッテリパック1の上面図である。
図15】変形例2のバッテリパック1の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態のバッテリパックを、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとし、以下の説明において、前後、左右、上下の各方向は、車両の運転者から見た方向に従って記載する。図面には、車両の前方をFr、後方をRr、左方をL、右方をR、上方をU、下方をD、として示す。また、左右方向を車幅方向とも称する。
【0012】
図1に示すように、本発明の一実施形態のバッテリパック1は、車両Vに搭載される。車両Vは、例えばバッテリ式電気自動車やハイブリッド車、燃料電池車などの電動車両である。バッテリパック1は、車両Vのフロアパネルの下方に配置され、車体に取り付けられる。
【0013】
図2に示すように、バッテリパック1は、4つのバッテリモジュール10と、バッテリモジュール10を収容するバッテリケース20と、を備える。
【0014】
(バッテリモジュール)
4つのバッテリモジュール10は、前後方向に2列、且つ左右方向に2列並べて配置されている。4つのバッテリモジュール10は、不図示の電気接続部材(例えばバスバー)を介して互いに電気的に接続されている。バッテリモジュール10は、車両Vの駆動源となるモータ等に供給する電力を蓄電する。なお、バッテリモジュール10の数は任意に設定することができ、配置も特に限定されるものではない。
【0015】
図3及び図4に示すように、各バッテリモジュール10は、複数のバッテリセル11と、中間プレート12と、一対のエンドプレート13と、一対の拘束部材14と、一対のカバープレート15と、を備える。
【0016】
バッテリセル11は、例えば、固体電池からなるラミネート型セルである。本実施形態では、複数のバッテリセル11は、左右方向に積層されている。ラミネート型セルは、正極タブが連結された正極と、負極タブが連結された負極と、正極と負極との間に配置された固体電解質と、これらを収容するラミネートフィルムと、を有しており、固体電解質を介した正極と負極との間のイオン(例えば、リチウムイオン)の授受により充放電を行う。なお、各バッテリセル11は、ラミネート型に限らず、角型又は円筒型であってもよく、電解質は、液状であっても固体であってもよい。
【0017】
中間プレート12は、複数のバッテリセル11の積層方向(ここでは左右方向)における中間部に設けられており、積層方向と直交する方向(ここでは前後方向)に延在する。中間プレート12は、複数のバッテリセル11よりも耐荷重の大きい部材であり、本発明の耐荷重部材の一例である。なお、中間プレート12を2つ以上設けてもよい。
【0018】
一対のエンドプレート13は、複数のバッテリセル11の積層方向における両端部に設けられており、積層方向と直交する方向に延在する。
【0019】
一対の拘束部材14は、上下方向において互いに対向し、一対のエンドプレート13に連結されて複数のバッテリセル11を拘束する。一対の拘束部材14は、プレート形状を有し、複数のバッテリセル11、中間プレート12、及び一対のエンドプレート13を上下方向から覆う。
【0020】
一対のカバープレート15は、前後方向において複数のバッテリセル11よりも外側に設けられ、積層方向に延在する。
【0021】
カバープレート15は、長手方向(ここでは左右方向)の中央部15Cに設けられ、中間プレート12と連結する中間プレート連結部152と、長手方向の左端部15L及び右端部15Rに設けられ、一対のエンドプレート13と連結するエンドプレート連結部154と、を有する。
【0022】
また、カバープレート15の中央部15Cには、上方からボルトB1が挿通可能な第1固定部156が設けられている。カバープレート15の第1固定部156は、ボルトB1により後述するバッテリケース20の第1固定部60に固定される。同様に、カバープレート15の中央部15Cと左端部15Lとの間、及び中央部15Cと右端部15Rとの間には、上方からボルトB2が挿通可能な第2固定部158が設けられている。カバープレート15の第2固定部158は、ボルトB2により後述するバッテリケース20の第2固定部70に固定される。第1固定部156に挿通されるボルトB1の径は第2固定部158に挿通されるボルトB2の径よりも大きい。
【0023】
(バッテリケース)
図2に戻って、バッテリケース20は、バッテリモジュール10が載置されるベースプレート30と、バッテリケース20の外枠を構成するフレーム部材40と、バッテリモジュール10を覆うカバー50と、を備える。
【0024】
ベースプレート30は、例えばアルミニウム等の金属材料をプレス加工することにより形成される。ベースプレート30は、バッテリモジュール10が載置されるボトムプレート31と、ボトムプレート31の下方に設けられたウォータジャケットプレート32と、を有し、上下方向で重なる2枚のプレートで構成される。ボトムプレート31とウォータジャケットプレート32との間には、バッテリモジュール10を冷却する冷媒(例えば冷却水)が流れるウォータジャケット33が形成される(図7等参照)。
【0025】
また、ベースプレート30には、例えば発泡ポリプロピレンで形成された断熱材34が下方から取り付けられ、ウォータジャケット33を下方から覆う。さらに、ベースプレート30には、断熱材34の下方から下カバー35が取り付けられる。
【0026】
フレーム部材40は、ベースプレート30の外縁部に接合され、バッテリケース20の外枠(すなわち、後壁、前壁、左壁、及び右壁)を構成する。フレーム部材40は、例えば、アルミニウムの鋳物である。フレーム部材40には、ボルト等により車体に締結される締結部が設けられている。
【0027】
フレーム部材40は、ベースプレート30の後縁部に設けられた後クロスメンバ41と、ベースプレート30の前縁部に設けられた前クロスメンバ42と、ベースプレート30の左右縁部に設けられた一対のサイドフレーム43、44と、を有する。後クロスメンバ41及び前クロスメンバ42は、左右方向に延設されており、一対のサイドフレーム43、44は、前後方向に延設されている。また、後クロスメンバ41及び前クロスメンバ42は、溶接等により一対のサイドフレーム43、44に連結される。
【0028】
後クロスメンバ41、前クロスメンバ42、及び一対のサイドフレーム43、44は、ベースプレート30の外縁部に例えば摩擦攪拌接合や溶接等により接合され、図5に示すようなバッテリケース20の下側部分、すなわちバッテリトレイ21を構成する。4つのバッテリモジュール10は、バッテリトレイ21に載置される。
【0029】
フレーム部材40は、前後方向におけるベースプレート30の中央部に設けられ、左右方向に延設されている中央クロスメンバ45をさらに有する。中央クロスメンバ45は、前側に配置された2つのバッテリモジュール10と後側に配置された2つのバッテリモジュール10との間に配置される。中央クロスメンバ45は、溶接等により一対のサイドフレーム43、44に連結される。
【0030】
図6に示すように、バッテリケース20は、バッテリモジュール10をフレーム部材40に固定する第1固定部60及び第2固定部70を備える。図6では、第1固定部60を破線の丸で図示し、第2固定部70を実線の丸で図示している。本実施形態では、第1固定部60及び第2固定部70は、後クロスメンバ41、前クロスメンバ42、及び中央クロスメンバ45に設けられている。
【0031】
第1固定部60は、後方から見て中間プレート12と重なる位置に設けられている。バッテリケース20の第1固定部60は、カバープレート15の第1固定部156を後クロスメンバ41、前クロスメンバ42、及び中央クロスメンバ45に固定する。
【0032】
第2固定部70は、後方から見てバッテリセル11と重なる位置に設けられている。バッテリケース20の第2固定部70は、カバープレート15の第2固定部158を後クロスメンバ41、前クロスメンバ42、及び中央クロスメンバ45に固定する。
【0033】
4つのバッテリモジュール10がバッテリトレイ21に固定された後、カバー50が上方からシール部材(不図示)を介してフレーム部材40に取り付けられる。フレーム部材40に対するカバー50の取り付けは、例えばボルト等により行われる。
【0034】
(第1固定部及び第2固定部)
続いて、バッテリケース20の第1固定部60及び第2固定部70の詳細について、図7図13を参照して説明する。以下では、後クロスメンバ41に設けられる第1固定部60及び第2固定部70について説明するが、前クロスメンバ42及び中央クロスメンバ45に設けられる第1固定部60及び第2固定部70についても同様の構成を有するので、これらの説明は省略する。
【0035】
先ず、後クロスメンバ41の具体的な構成について説明する。
図7に示すように、後クロスメンバ41は、接合部410と、内側縦壁部411と、上壁部412と、外側縦壁部413と、を備える。接合部410は、ベースプレート30の上面に接合される部分である。後クロスメンバ41とベースプレート30とは、例えば摩擦攪拌接合や溶接等により接合される。内側縦壁部411は、接合部410から上方に立設し、バッテリケース20の内側に位置する。上壁部412は、内側縦壁部411の上端からバッテリケース20の外側方向に延在する。上壁部412は、カバー50が取り付けられるときカバー50の対向面に当接する。外側縦壁部413は、バッテリケース20の外側に設けられ、上壁部412から下方に延在する。内側縦壁部411、上壁部412、及び外側縦壁部413は、後クロスメンバ41の長手方向(左右方向)と直交する平面で切った断面が下方に開口した形状を構成する。
【0036】
ベースプレート30の後端301は、後クロスメンバ41の下側に配置されている。また、後クロスメンバ41の外側縦壁部413は、ベースプレート30の後端301より外側に位置し、後方から見てベースプレート30の後端301と重なるように上下方向に延在している。換言すると、外側縦壁部413の下端414は、ベースプレート30の後端301より下方に位置する。なお、本実施形態では、ベースプレート30の後端301と外側縦壁部413とは離隔しているが、当接していてもよい。
【0037】
続いて、第1固定部60及び第2固定部70の具体的な構成について説明する。
図8図6のA-A線断面図であり、図9は第1固定部60の斜視図である。第1固定部60は、後クロスメンバ41からバッテリモジュール10に向かって延出した第1固定ブラケット61により構成される。
【0038】
第1固定ブラケット61は、後クロスメンバ41と連結する連結部62と、カバープレート15の第1固定部156にボルトB1により締結される締結部63と、を有する。締結部63は、ボルト穴である。また、第1固定ブラケット61の上部は、連結部62と締結部63との間に、連結部62からバッテリケース20の内側に向かって下方に傾斜する傾斜部64と、傾斜部64の下端から締結部63まで水平に延在する水平部65と、を有する。
【0039】
図10図6のB-B線断面図であり、図11は第2固定部70の斜視図である。第2固定部70は、後クロスメンバ41からバッテリモジュール10に向かって延出した第2固定ブラケット71により構成される。
【0040】
第2固定ブラケット71は、後クロスメンバ41と連結する連結部72と、カバープレート15の第2固定部158にボルトB2により締結される締結部73と、を有する。締結部73は、ボルト穴である。また、第2固定ブラケット71の上部は、連結部72から締結部73まで略水平である。
【0041】
第1固定ブラケット61及び第2固定ブラケット71は、後クロスメンバ41に一体に設けられている。これにより、第1固定ブラケット61及び第2固定ブラケット71を後クロスメンバ41とは別体として設ける場合と比較して、部品点数を削減することができる。
【0042】
続いて、バッテリパック1の後方から衝突荷重が入力されたときにおける、第1固定部60及び第2固定部70からバッテリモジュール10への荷重の伝達について説明する。
【0043】
図12及び図13に示すように、ベースプレート30は、断面で見た後端301が後クロスメンバ41の下側に配置されている。さらに、後クロスメンバ41の外側縦壁部413は、ベースプレート30の後端301より外側に位置し、且つ後方から見てベースプレート30の後端301に重なるように上下方向に延在している。このような構成によると、車両Vの衝突により車両後方からバッテリパック1に衝突荷重が入力されたとき、外側縦壁部413はベースプレート30の後端301に衝突し、後クロスメンバ41には、ベースプレート30の後端301を回転中心としてバッテリパック1の内側方向に回転する力T(以下、回転力Tとも称する)が加わる。この回転力Tは、第1固定部60及び第2固定部70を介してバッテリモジュール10へ伝達される。
【0044】
前述のとおり、後方から見たとき、第1固定部60は中間プレート12と重なる位置に設けられており、第2固定部70はバッテリセル11と重なる位置に設けられている。前述した回転力Tが第1固定部60及び第2固定部70を介してバッテリモジュール10に伝達されるとき、バッテリセル11を保護するために、耐荷重の大きい中間プレート12に回転力Tが多く伝達されることが望ましい。
【0045】
本実施形態では、第1固定部60は、バッテリモジュール10への荷重伝達力が第2固定部70の荷重伝達力よりも大きくなるように構成されている。荷重伝達力とは、後クロスメンバ41の回転力Tを受け、回転力Tをバッテリモジュール10へ伝達する能力を意味する。すなわち、第1固定部60からバッテリモジュール10への伝達荷重は、第2固定部70からバッテリモジュール10への伝達荷重よりも大きい。
【0046】
また、第1固定部60は、第1固定部60に加わった荷重が確実に中間プレート12に伝達されるよう、耐荷重が第2固定部70の耐荷重よりも大きく構成される。第1固定部60は、後方から見て耐荷重の大きい中間プレート12に重なって配置されているので、衝突により後クロスメンバ41に加わった回転力Tの多くを第1固定部60から中間プレート12に伝達することができる。したがって、適切にバッテリモジュール10を保護することができる。
【0047】
具体的に説明すると、第1固定部60及び第2固定部70はそれぞれ第1固定ブラケット61及び第2固定ブラケット71により構成されており、上下方向において第1固定ブラケット61の連結部62の高さが第2固定ブラケット71の連結部72の高さよりも高い。このような構成により、第1固定部60の荷重伝達力を第2固定部70の荷重伝達力よりも大きくすることができる。すなわち、第1固定部60は第2固定部70よりも多くの後クロスメンバ41の回転力Tを受け、回転力Tを第1固定部60からバッテリモジュール10へ伝達することができる。
【0048】
また、第1固定ブラケット61の上部は、後クロスメンバ41との連結部62からバッテリケース20の内側に向かって下方に傾斜する傾斜部64を有する。傾斜部64の傾斜方向は、回転力Tが後クロスメンバ41に加わる方向と略一致するので、例えば、傾斜部64を設けず連結部62と締結部63との間に鉛直方向に延在する段差部が設けられる場合と比較して、第1固定ブラケット61の一部に応力が集中することを防止できる。よって、第1固定ブラケット61の耐荷重を大きくすることができる。
【0049】
一方、第2固定ブラケット71の上部は、後クロスメンバ41との連結部72から締結部73まで略水平である。第2固定ブラケット71の連結部72は第1固定ブラケット61の連結部62よりも高さが低く、且つ、第2固定ブラケット71の上部が略水平であるので、第2固定ブラケット71は、第1固定ブラケット61よりもバッテリモジュール10への荷重伝達力が小さくなる。すなわち、第2固定ブラケット71からバッテリモジュール10へ伝達される後クロスメンバ41の回転力Tは小さいので、後方から見て第2固定ブラケット71に重なって配置されるバッテリセル11が保護される。
【0050】
また、第1固定ブラケット61は、第2固定ブラケット71よりも肉厚に形成される。具体的に説明すると、第1固定ブラケット61及び第2固定ブラケット71には、連結部62、72と締結部63、73との間に肉抜き部分が形成されているが、この領域において、第1固定ブラケット61は第2固定ブラケット71よりも肉厚に形成される。このような構成により、第1固定ブラケット61の耐荷重を第2固定ブラケット71よりも大きくすることができる。また、連結部62において第1固定ブラケット61と後クロスメンバ41との接続面積が大きくなるので、第1固定ブラケット61の荷重伝達力をより大きくすることができる。
【0051】
また、第1固定ブラケット61の締結部63とカバープレート15の第1固定部156とを締結するボルトB1の径は、第2固定ブラケット71の締結部73とカバープレート15の第2固定部158とを締結するボルトB2の径よりも大きい。換言すると、第1固定ブラケット61の締結部63のボルト穴の径は、第2固定ブラケット71の締結部73のボルト穴の径よりも大きい。このような構成により、第1固定ブラケット61がカバープレート15の第1固定部156に強固に固定される。よって、第1固定ブラケット61の耐荷重を大きくすることができ、中間プレート12へ多くの荷重を伝達することができる。
【0052】
《変形例1》
図14は、変形例1のバッテリパック1の上面図である。以下では、前述した実施形態と共通する部材については共通の符号を用いて説明する。
【0053】
変形例1では、4つのバッテリモジュール10は、バッテリセル11が車両前後方向に複数積層されて配置されている。そして、左側に配置された2つのバッテリモジュール10と右側に配置された2つのバッテリモジュール10の間には、前後方向に延設されている中央フレーム46が設けられおり、第1固定部60及び第2固定部70は、一対のサイドフレーム43、44及び中央フレーム46に設けられている。
【0054】
変形例1において、車幅方向から見て第1固定部60は耐荷重の大きい中間プレート12と重なる位置に配置されているので、多くの荷重を中間プレート12に伝達することができる。よって、車両Vの側方から衝突荷重が入力されたときであっても、一対のサイドフレーム43、44のバッテリケース20の内側方向の回転力Tの多くを中間プレート12に伝達し、バッテリモジュール10を保護することができる。
【0055】
《変形例2》
図15は、変形例2のバッテリパック1の上面図である。以下では、前述した実施形態と共通する部材については共通の符号を用いて説明する。
【0056】
変形例2では、各バッテリモジュール10Aのバッテリセル11は角型セルである。各バッテリモジュール10Aは、角型セルのバッテリセル11の積層方向の両端部に、一対のエンドプレート13Aを備える。一対のエンドプレート13Aは、耐荷重の大きい部材であり、本発明の耐荷重部材の一例である。
【0057】
変形例2では、後クロスメンバ41、前クロスメンバ42、及び中央クロスメンバ45に設けられた第1固定部60は、後方から見て一対のエンドプレート13Aと重なる位置に設けられている。また、第2固定部70は、後方から見てバッテリセル11と重なる位置に設けられている。
【0058】
変形例2においても、後方から見て第1固定部60は耐荷重の大きい一対のエンドプレート13Aと重なる位置に配置されているので、多くの荷重を一対のエンドプレート13Aに伝達することができる。よって、車両Vの側方から衝突荷重が入力されたときであっても、フレーム部材40のバッテリケース20の内側方向の回転力Tの多くを一対のエンドプレート13Aに伝達し、バッテリモジュール10Aを保護することができる。
【0059】
以上、本発明の一実施形態及び変形例について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0060】
例えば、前述した実施形態では、バッテリケース20の第1固定部60は、後方から見て中間プレート12と重なる位置において、バッテリモジュール10のカバープレート15の第1固定部156をフレーム部材40に固定したが、これに限られない。例えば、第1固定部60は、中間プレート12をフレーム部材40に直接固定してもよい。
【0061】
また、例えば、前述した実施形態では、第1固定ブラケット61の上部が傾斜部64を有したが、これに限られず、傾斜部64を有しなくてもよい。第1固定ブラケット61の連結部62の高さは、第2固定ブラケット71の連結部72の高さよりも高いので、傾斜部64を設けなくても第1固定ブラケット61の荷重伝達力を大きくすることができ、バッテリモジュール10を保護することができる。
【0062】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0063】
(1) 水平方向のうち第1方向に積層された複数のバッテリセル(バッテリセル11)と、前記水平方向のうち前記第1方向と直交する第2方向に延在する耐荷重部材(中間プレート12、一対のエンドプレート13A)とを有するバッテリモジュール(バッテリモジュール10、10A)と、
前記バッテリモジュールを収容するバッテリケース(バッテリケース20)と、を備え、車両(車両V)に搭載されるバッテリパック(バッテリパック1)であって、
前記バッテリケースは、
前記バッテリモジュールが載置されるベースプレート(ベースプレート30)と、
前記ベースプレートの外縁部に接合され、前記バッテリケースの外枠を構成するフレーム部材(フレーム部材40)と、
前記第2方向から見て前記耐荷重部材と重なる位置において前記フレーム部材に設けられ、前記バッテリモジュールの第1の部分(第1固定部156、中間プレート12、一対のエンドプレート13A)を前記フレーム部材に固定する第1固定部(第1固定部60)と、
前記第2方向から見て前記耐荷重部材と重なる位置とは異なる位置において前記フレーム部材に設けられ、前記バッテリモジュールの第2の部分(第2固定部158)を前記フレーム部材に固定する第2固定部(第2固定部70)と、を備え、
前記ベースプレートは、前記外縁部の断面で見た先端(後端301)が前記フレーム部材の下側に配置され、
前記フレーム部材は、前記ベースプレートの前記先端より外側に位置し、且つ前記第2方向から見て前記ベースプレートの前記先端と重なるように上下方向に延在する縦壁部(外側縦壁部413)を有し、
前記第1固定部は、前記第1固定部及び前記第2固定部に対して前記第2方向の荷重が加わったときに前記バッテリモジュールへの荷重伝達力が前記第2固定部の荷重伝達力よりも大きく、且つ耐荷重が前記第2固定部の耐荷重よりも大きく構成される、
バッテリパック。
【0064】
(1)によれば、車両の衝突等により第2方向からバッテリパックに荷重が入力されたとき、フレーム部材にはベースプレートの先端を回転中心としてバッテリパックの内側方向に回転する力が加わる。そして、第1固定部は、荷重伝達力及び耐荷重が第2固定部よりも大きいので、フレーム部材の回転力を第2固定部よりも多く受ける。第1固定部は、第2方向から見て耐荷重部材と重なる位置に設けられているので、フレーム部材に加わった回転力の多くを第1固定部から耐荷重部材に伝達することができる。よって、フレーム部材に入力された荷重に対してバッテリモジュールを保護できる。
【0065】
(2) (1)に記載のバッテリパックであって、
前記第1固定部及び前記第2固定部はそれぞれ、前記フレーム部材から前記バッテリモジュールに向かって延出した第1固定ブラケット(第1固定ブラケット61)及び第2固定ブラケット(第2固定ブラケット71)により構成され、
上下方向において、前記第1固定ブラケットと前記フレーム部材との連結部(連結部62)の高さは、前記第2固定ブラケットと前記フレーム部材との連結部(連結部72)の高さよりも高い、
バッテリパック。
【0066】
(2)によれば、第1固定部の荷重伝達力を第2固定部の荷重伝達力よりも大きくすることができる。
【0067】
(3) (2)に記載のバッテリパックであって、
前記第1固定ブラケットは、前記バッテリモジュールの前記第1の部分に締結される第1締結部(締結部63)を有し、
前記第1固定ブラケットの上部は、前記フレーム部材との前記連結部と前記第1締結部との間に、前記連結部から前記バッテリケースの内側に向かって下方に傾斜する傾斜部(傾斜部64)を有する、
バッテリパック。
【0068】
(3)によれば、第1固定ブラケットの一部に応力が集中することを防止でき、第1固定ブラケットの耐荷重を大きくすることができる。
【0069】
(4) (2)又は(3)に記載のバッテリパックであって、
前記第2固定ブラケットは、前記バッテリモジュールの前記第2の部分に締結される第2締結部(締結部73)を有し、
第2固定ブラケットの上部は、前記フレーム部材との前記連結部から前記第2締結部まで略水平である、
バッテリパック。
【0070】
(4)によれば、第2固定ブラケットの連結部は第1固定ブラケットの連結部よりも高さが低く、且つ第2固定ブラケットの上部は略水平となっているので、第2固定部からバッテリモジュールへの荷重伝達力を第1固定部の荷重伝達力よりも小さくできる。よって、バッテリモジュールを保護することができる。
【0071】
(5) (2)から(4)のいずれかに記載のバッテリパックであって、
前記第1固定ブラケットは、前記第2固定ブラケットよりも肉厚である、
バッテリパック。
【0072】
(5)によれば、第1固定ブラケットの耐荷重を第2固定ブラケットよりも大きくすることができる。
【0073】
(6) (1)から(5)のいずれかに記載のバッテリパックであって、
前記第1固定部は、前記バッテリモジュールの前記第1の部分に第1ボルト(ボルトB1)により締結される第1締結部(締結部63)を有し、
前記第2固定部は、前記バッテリモジュールの前記第2の部分に第2ボルト(ボルトB2)により締結される第2締結部(締結部73)を有し、
前記第1ボルトの径は前記第2ボルトの径よりも大きい、
バッテリパック。
【0074】
(6)によれば、第1固定部とバッテリモジュールの第1の部分との固定が強固となり、第1固定部で多くの荷重を受けることができる。
【0075】
(7) (1)から(6)のいずれかに記載のバッテリパックであって、
前記第1固定部及び前記第2固定部は、前記フレーム部材に一体に設けられている、
バッテリパック。
【0076】
(7)によれば、部品点数を削減できる。
【符号の説明】
【0077】
1 バッテリパック
10、10A バッテリモジュール
11 バッテリセル
12 中間プレート(耐荷重部材、第1の部分)
13A 一対のエンドプレート(耐荷重部材)
156 第1固定部(第1の部分)
158 第2固定部(第2の部分)
20 バッテリケース
30 ベースプレート
40 フレーム部材
413 外側縦壁部(縦壁部)
60 第1固定部
61 第1固定ブラケット
62 連結部
63 締結部(第1締結部)
64 傾斜部
70 第2固定部
71 第2固定ブラケット
72 連結部
73 締結部(第2締結部)
B1 ボルト(第1ボルト)
B2 ボルト(第2ボルト)
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15