(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134963
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60K 11/02 20060101AFI20240927BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20240927BHJP
【FI】
B60K11/02
B60K1/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045434
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】本荘 拓也
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC23
3D235AA01
3D235BB45
3D235BB46
3D235CC12
3D235CC13
3D235FF32
3D235GB02
3D235HH05
3D235HH12
(57)【要約】
【課題】エネルギー効率をより向上させることが可能な車両を提供する。
【解決手段】車両Vは、通常モードと、通常モードに比べて電動機20の出力変動が抑制される省燃費制御モードと、をとり得るように構成される。車両Vを制御する制御装置ECUは、車両Vが通常モードの場合には、第1温調回路61を循環し且つ電動機20および変速装置40を温調および潤滑する第1温調媒体TCM1の温度が第1温度になったことに基づいて第1温調媒体TCM1の冷却を開始させる。一方、制御装置ECUは、車両Vが省燃費制御モードの場合には、第1温調媒体TCM1の温度が第1温度よりも高い第2温度になったことに基づいて第1温調媒体TCM1の冷却を開始させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、ギヤボックスと、所定の温調媒体が循環して前記電動機および前記ギヤボックスの温調を行う温調回路と、前記温調回路を循環する前記温調媒体を冷却可能な冷却装置と、前記冷却装置を制御する制御装置と、を備える車両であって、
前記温調媒体は、前記電動機および前記ギヤボックスの潤滑および温調を行うことが可能なオイルであり、
前記車両は、第1モードと、前記第1モードに比べて前記電動機の出力変動が抑制される第2モードと、をとり得るように構成され、
前記制御装置は、
前記車両が前記第1モードとされている場合には、前記温調媒体の温度が第1温度になったことに基づいて前記冷却装置による前記温調媒体の冷却を開始させ、
前記車両が前記第2モードとされている場合には、前記温調媒体の温度が前記第1温度よりも高い第2温度になったことに基づいて前記冷却装置による前記温調媒体の冷却を開始させる、
車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両であって、
前記冷却装置は、冷却水と前記温調媒体との間で熱交換を行う熱交換器を含む、
車両。
【請求項3】
請求項2に記載の車両であって、
前記車両は、前記温調媒体の温度を検出する温度センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記温度センサによって検出された前記温調媒体の温度に基づいて前記冷却装置を制御し、
前記温度センサは、前記熱交換器と前記電動機との間を流れる前記温調媒体の温度を検出する、
車両。
【請求項4】
請求項3に記載の車両であって、
前記温調回路は、前記温調媒体を貯留可能な貯留部に貯留された前記温調媒体が前記熱交換器を介して前記電動機に供給されるとともに、前記電動機および前記ギヤボックスを潤滑および温調した前記温調媒体が前記貯留部に供給されるように構成され、
前記温度センサとしての第1温度センサは、前記熱交換器から前記電動機に供給される前記温調媒体の温度である供給媒体温度を検出し、
前記車両は、前記貯留部に貯留された前記温調媒体の温度である貯留媒体温度を検出する第2温度センサをさらに備え、
前記制御装置は、
前記冷却装置による冷却を行わせた際の、前記第1温度センサによって検出された前記供給媒体温度と、前記第2温度センサによって検出された前記貯留媒体温度とに基づいて、前記冷却装置が正常であるか異常であるかを判定し、
前記冷却装置が正常であると判定した場合に、前記冷却装置による冷却を開始させる条件となる前記温調媒体の温度を前記第2温度とすることを許容し、
前記車両が前記第2モードとされている場合であって、且つ、前記冷却装置による冷却を開始させる条件となる前記温調媒体の温度を前記第2温度とすることを許容した場合に、前記温調媒体の温度が前記第2温度になったことに基づいて前記冷却装置による前記温調媒体の冷却を開始させる、
車両。
【請求項5】
請求項4に記載の車両であって、
前記制御装置は、
前記供給媒体温度が前記貯留媒体温度よりも低く、且つ、前記供給媒体温度と前記貯留媒体温度との温度差が所定値以上である場合に前記冷却装置が正常と判定する、
車両。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の車両であって、
前記制御装置は、
前記温調媒体の温度が前記第1温度になったことに基づいて前記冷却装置による前記温調媒体の冷却を開始させ、当該冷却により前記温調媒体の温度が前記第1温度よりも低い所定温度になった場合に、前記冷却装置による冷却を開始させる条件となる前記温調媒体の温度を前記第2温度とすることを許容し、
前記車両が前記第2モードとされている場合であって、且つ、前記冷却装置による冷却を開始させる条件となる前記温調媒体の温度を前記第2温度とすることを許容した場合に、前記温調媒体の温度が前記第2温度になったことに基づいて前記冷却装置による前記温調媒体の冷却を開始させる、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の気候変動に対する具体的な対策として、低炭素社会または脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化している。自動車などの車両においても、CO2排出量の削減やエネルギー効率の向上が要求され、駆動源の電動化が進んでいる。例えば、駆動輪を駆動する駆動源としてのモータ(「トラクションモータ」とも称される)と、このモータに電力を供給する電源としてのバッテリとを備える電気自動車やハイブリッド電気自動車が開発されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、電動機や発電機の温調を行う第1温調回路と、電力変換装置の温調を行う第2温調回路と、第1温調回路を循環する第1温調媒体と第2温調回路を循環する第2温調媒体との間の熱交換を行う熱交換器と、を備える車両用温調システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術にあっては、車両のエネルギー効率を向上させる観点から改善の余地があった。
【0006】
本発明は、エネルギー効率を向上させることが可能な車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
電動機と、ギヤボックスと、所定の温調媒体が循環して前記電動機および前記ギヤボックスの温調を行う温調回路と、前記温調回路を循環する前記温調媒体を冷却可能な冷却装置と、前記冷却装置を制御する制御装置と、を備える車両であって、
前記温調媒体は、前記電動機および前記ギヤボックスの潤滑および温調を行うことが可能なオイルであり、
前記車両は、第1モードと、前記第1モードに比べて前記電動機の出力変動が抑制される第2モードと、をとり得るように構成され、
前記制御装置は、
前記車両が前記第1モードとされている場合には、前記温調媒体の温度が第1温度になったことに基づいて前記冷却装置による冷却を開始させ、
前記車両が前記第2モードとされている場合には、前記温調媒体の温度が前記第1温度よりも高い第2温度になったことに基づいて前記冷却装置による前記温調媒体の冷却を開始させる、
車両である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エネルギー効率を向上させることが可能な車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】省燃費制御モードと通常モードとのそれぞれにおけるAP開度と目標駆動力との関係の一例を示す図である。
【
図3】省燃費制御モードにおける車両Vの動作の一例を示すタイムチャートである。
【
図4】制御装置ECUが実行する処理の一例を示すフローチャート(その1)である。
【
図5】制御装置ECUが実行する処理の一例を示すフローチャート(その2)である。
【
図6】制御装置ECUが実行する処理の一例を示すフローチャート(その3)である。
【
図7】制御装置ECUが実行する処理の他の一例を示すフローチャートである。
【
図8】温調システム異常検出処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の車両の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴の組み合わせのすべてが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち2つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、以下では、同一または類似の要素には同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略または簡略化することがある。また、図面は、符号の向きに見るものとする。
【0011】
[車両]
図1に示すように、本実施形態の車両Vは、内燃機関ICEと、制御装置ECUと、車両用温調システム10と、電動機20と、発電機30と、変速装置40と、電力変換装置(PCU:Power Control Unit)50と、温調回路60と、を含んで構成されるハイブリッド電気自動車である。
【0012】
電動機20は、車両Vに搭載された不図示の蓄電装置に蓄電されている電力、または、発電機30によって発電された電力によって、車両Vを駆動する動力を出力する回転電機である。また、電動機20は、車両Vの制動時に、車両Vの駆動輪(不図示)の運動エネルギーによって発電し、前述の蓄電装置を充電してもよい。電動機20としては、例えば三相交流モータを採用することができる。
【0013】
また、電動機20には、電動機20の温度を検出する電動機温度センサ20aが設けられている。電動機温度センサ20aは、電動機20の温度の検出値を制御装置ECUに出力する。これにより、制御装置ECUは、電動機20の温度を取得可能である。なお、電動機温度センサ20aは、電動機20のコイル部分の温度を電動機20の温度として検出してもよいし、電動機20の磁石部分の温度を電動機20の温度として検出してもよい。また、電動機温度センサ20aは、電動機20のコイル部分の温度と磁石部分の温度とのそれぞれを検出するようにしてもよい。
【0014】
発電機30は、内燃機関ICEの動力によって発電し、前述の蓄電装置を充電する、または電動機20に電力を供給する回転電機である。電動機20と同様に、発電機30としては、例えば三相交流モータを採用することができる。
【0015】
変速装置40は、電動機20と車両Vの駆動輪との間に設けられ、電動機20と駆動輪との間における動力伝達が可能に構成された動力伝達装置である。例えば、変速装置40は、電動機20から出力された動力を減速して駆動輪に伝達する歯車式の動力伝達装置である。
【0016】
電力変換装置50は、前述の蓄電装置から出力された電力を直流から交流へと変換するとともに電動機20および発電機30の入出力電力を制御するPDU(Power Drive Unit)51と、前述の蓄電装置から出力された電力を必要に応じて昇圧するVCU(Voltage Control Unit)52と、を備える。PDU51は、例えば、直流を交流(例えば三相交流)に変換可能なインバータである。また、VCU52は、例えば、DC/DCコンバータである。電力変換装置50には、電力変換装置50の温度を検出するPCU温度センサ50aが設けられている。PCU温度センサ50aは、電力変換装置50の温度の検出値を制御装置ECUに出力する。これにより、制御装置ECUは、電力変換装置50の温度を取得可能である。
【0017】
温調回路60は、第1温調回路61と、第2温調回路62と、熱交換器63と、を有する。第1温調回路61は、非導電性の第1温調媒体TCM1が循環し、電動機20、発電機30、および変速装置40の温調を行う。第2温調回路62は、導電性の第2温調媒体TCM2が循環し、電力変換装置50の温調を行う。熱交換器63は、第1温調回路61を循環する第1温調媒体TCM1と、第2温調回路62を循環する第2温調媒体TCM2との間で熱交換を行う。第2温調回路62および熱交換器63を含む温調回路60は、第1温調回路61を循環する第1温調媒体TCM1を冷却可能な冷却装置の一例である。
【0018】
非導電性の第1温調媒体TCM1は、例えば、ATF(Automatic Transmission Fluid)と呼ばれる、電動機20、発電機30、および変速装置40の潤滑および温調を行うことが可能なオイルである。導電性の第2温調媒体TCM2は、例えば、LLC(Long Life Coolant)と呼ばれる冷却水である。
【0019】
第1温調回路61には、第1ポンプ611と、貯留部612と、が設けられている。第1ポンプ611は、内燃機関ICEの動力と、車両Vの不図示の車軸の回転力とによって駆動し、第1温調媒体TCM1を圧送する機械式ポンプである。貯留部612は、第1温調回路61を循環する第1温調媒体TCM1を貯留する。貯留部612は、例えば、電動機20、発電機30、および変速装置40を収容する不図示のハウジングの底部に設けられたオイルパンである。
【0020】
また、第1温調回路61は、第1ポンプ611が設けられた圧送流路610aと、電動機20および発電機30が設けられた第1分岐流路610b1と、変速装置40が設けられた第2分岐流路610b2と、第1分岐流路610b1または第2分岐流路610b2に分岐する分岐部613と、を有する。
【0021】
圧送流路610aは、上流側の端部が貯留部612に接続され、第1ポンプ611を通って、下流側の端部が分岐部613に接続される。第1分岐流路610b1は、上流側の端部が分岐部613に接続され、電動機20および発電機30を通って、下流側の端部が貯留部612に接続される。第2分岐流路610b2は、上流側の端部が分岐部613に接続され、変速装置40を通って、下流側の端部が貯留部612に接続される。
【0022】
第1温調回路61において、熱交換器63は、第1分岐流路610b1における電動機20および発電機30よりも上流に配置されている。したがって、第1温調回路61には、第1ポンプ611から圧送された第1温調媒体TCM1が、分岐部613から第1分岐流路610b1を通って、熱交換器63で第2温調媒体TCM2と熱交換することによって冷却され、電動機20および発電機30に供給されて電動機20および発電機30を潤滑および温調した後、貯留部612に貯留されるという『第1の流路』と、第1ポンプ611から圧送された第1温調媒体TCM1が、分岐部613から第2分岐流路610b2を通って、変速装置40に供給されて変速装置40を潤滑および温調した後、貯留部612に貯留されるという『第2の流路』と、が並列に形成される。そして、貯留部612に貯留された第1温調媒体TCM1は、圧送流路610aを介して第1ポンプ611に供給され、第1ポンプ611によって圧送されることにより第1温調回路61を循環する。
【0023】
本実施形態では、第1分岐流路610b1および第2分岐流路610b2は、第1分岐流路610b1を流れる第1温調媒体TCM1の流量が、第2分岐流路610b2を流れる第1温調媒体TCM1の流量よりも大きくなるように形成されている。
【0024】
第1温調回路61には、第1温調回路61を循環する第1温調媒体TCM1の温度を検出する第1温度センサ61aおよび第2温度センサ61bが設けられている。本実施形態では、第1温度センサ61aは、熱交換器63の冷却媒体出口63aの近傍に設けられており、熱交換器63と電動機20および発電機30との間を流れる第1温調媒体TCM1の温度を検出し、その検出値を制御装置ECUに出力する。これにより、制御装置ECUは、熱交換器63と電動機20および発電機30との間を流れる第1温調媒体TCM1の温度を取得可能である。
【0025】
第1温度センサ61aは、熱交換器63と電動機20および発電機30との間を流れる第1温調媒体TCM1の温度、すなわち、熱交換器63による熱交換後の第1温調媒体TCM1の温度を検出する。これにより、第1温度センサ61aを熱交換器63の冷却媒体入口63b側に設けて熱交換前の第1温調媒体TCM1の温度を検出させるようにした場合に比べて、電動機20および発電機30に供給される第1温調媒体TCM1の温度により近い温度を、第1温度センサ61aによって検出させることが可能となる。なお、第1温度センサ61aによって検出される第1温調媒体TCM1の温度を、以下、「供給媒体温度」とも称する。
【0026】
また、本実施形態では、第2温度センサ61bは、貯留部612に設けられており、貯留部612に貯留された第1温調媒体TCM1の温度を検出し、その検出値を制御装置ECUに出力する。これにより、制御装置ECUは、貯留部612に貯留された第1温調媒体TCM1の温度を取得可能である。なお、第2温度センサ61bによって検出される第1温調媒体TCM1の温度を、以下、「貯留媒体温度」とも称する。
【0027】
また、第1温調回路61は、調圧バルブ619が設けられた調圧回路610cをさらに有する。調圧回路610cは、上流側の端部が貯留部612に接続され、下流側の端部が圧送流路610aにおける第1ポンプ611の下流に接続される。調圧バルブ619は、逆止弁であってもよいし、ソレノイドバルブなどの電磁弁であってもよい。第1ポンプ611から圧送される第1温調媒体TCM1の液圧が所定圧以上となると調圧バルブ619は開状態となり、第1ポンプ611から圧送される第1温調媒体TCM1の一部が貯留部612に戻される。これにより、第1分岐流路610b1および第2分岐流路610b2を流れる第1温調媒体TCM1の液圧は、所定圧以下に保持される。
【0028】
第2温調回路62には、第2ポンプ621と、ラジエータ622と、貯留タンク623と、が設けられている。第2ポンプ621は、例えば、前述の蓄電装置に蓄電されている電力、または、発電機30によって発電された電力によって駆動し、第2温調媒体TCM2を圧送する電動式ポンプであり、制御装置ECUによって制御される。
【0029】
また、第2ポンプ621には、第2ポンプ621の回転速度を検出する回転速度センサ621aが取り付けられている。回転速度センサ621aは、第2ポンプ621の回転速度の検出値を制御装置ECUに出力する。制御装置ECUは、回転速度センサ621aの検出値、すなわち第2ポンプ621の回転速度に基づき、第2ポンプ621の流量を推定可能である。
【0030】
ラジエータ622は、車両Vの前部に配置されており、車両Vの走行時における走行風によって、第2温調媒体TCM2を冷却する放熱装置である。貯留タンク623は、第2温調回路62を循環する第2温調媒体TCM2を一時的に貯留するタンクである。第2温調回路62を循環する第2温調媒体TCM2にキャビテーションが発生した場合でも、第2温調回路62を循環する第2温調媒体TCM2が貯留タンク623で一時的に貯留されることによって、第2温調媒体TCM2に発生したキャビテーションは消滅する。
【0031】
第2温調回路62は、分岐部624および合流部625を有する。第2温調回路62は、貯留タンク623、第2ポンプ621、およびラジエータ622が、上流側からこの順に設けられている。また、第2温調回路62は、圧送流路620aをさらに有する。圧送流路620aは、上流側の端部が合流部625に接続され、貯留タンク623、第2ポンプ621、およびラジエータ622を通って、下流側の端部が分岐部624に接続される。貯留タンク623に貯留された第2温調媒体TCM2は、圧送流路620aを通って第2ポンプ621で圧送され、ラジエータ622で冷却される。
【0032】
また、第2温調回路62は、電力変換装置50が設けられた第1分岐流路620b1と、第1分岐流路620b1に並列に設けられ且つ熱交換器63が設けられた第2分岐流路620b2と、をさらに有する。
【0033】
具体的に説明すると、第1分岐流路620b1は、上流側の端部が分岐部624に接続され、電力変換装置50を通って、下流側の端部が合流部625に接続される。第2分岐流路620b2は、上流側の端部が分岐部624に接続され、熱交換器63を通って、下流側の端部が合流部625に接続される。
【0034】
本実施形態では、第2分岐流路620b2における熱交換器63よりも上流部分に、第2分岐流路620b2を流れる第2温調媒体TCM2の流量(換言すると、第1分岐流路620b1を流れる第2温調媒体TCM2の流量)を調整する流量調整弁としてのバルブ装置626が設けられている。本実施形態では、バルブ装置626をON-OFFバルブとする。すなわち、バルブ装置626は、開放時には第2分岐流路620b2を全開状態とする一方、閉鎖時には第2分岐流路620b2を全閉状態とする。なお、バルブ装置626は、ON-OFFバルブに限られず、第2分岐流路620b2を流れる第2温調媒体TCM2の流量を調節可能な可変流量バルブであってもよい。バルブ装置626は、制御装置ECUによって制御される。
【0035】
圧送流路620aにおいて第2ポンプ621で圧送されてラジエータ622で冷却された第2温調媒体TCM2は、分岐部624で第1分岐流路620b1と第2分岐流路620b2とに分岐する。第1分岐流路620b1を流れる第2温調媒体TCM2は、電力変換装置50を冷却して合流部625で第2分岐流路620b2および圧送流路620aと合流する。第2分岐流路620b2を流れる第2温調媒体TCM2は、熱交換器63で第1温調媒体TCM1と熱交換することによって第1温調媒体TCM1を冷却し、合流部625で第1分岐流路620b1および圧送流路620aと合流する。第1分岐流路620b1を流れた第2温調媒体TCM2と第2分岐流路620b2を流れた第2温調媒体TCM2とは、合流部625で合流して圧送流路620aを流れて貯留タンク623に一時的に貯留される。そして、貯留タンク623に貯留された第2温調媒体TCM2が圧送流路620aを通って第2ポンプ621に再び供給されて、第2温調媒体TCM2が第2温調回路62を循環する。
【0036】
本実施形態では、バルブ装置626の開放時にも、第1分岐流路620b1を流れる第2温調媒体TCM2の流量が、第2分岐流路620b2を流れる第2温調媒体TCM2の流量よりも大きくなるように、第1分岐流路620b1および第2分岐流路620b2が形成されている。
【0037】
第2温調回路62には、第2温調回路62を循環する第2温調媒体TCM2の温度を検出する冷却水温度センサ62aが設けられている。本実施形態では、冷却水温度センサ62aは、圧送流路620aにおけるラジエータ622と分岐部624との間の設けられており、ラジエータ622から排出された第2温調媒体TCM2、すなわち電力変換装置50に供給される第2温調媒体TCM2の温度を検出し、その検出値を制御装置ECUに出力する。これにより、制御装置ECUは、電力変換装置50に供給される第2温調媒体TCM2の温度を取得可能である。
【0038】
第1温調回路61において、電動機20、発電機30、および変速装置40を冷却した後に貯留部612に貯留した第1温調媒体TCM1の温度が約100[℃]であるとすると、熱交換器63には、約100[℃]の第1温調媒体TCM1が供給される。
【0039】
一方、第2温調回路62において、ラジエータ622で冷却された第2温調媒体TCM2の温度が約40[℃]であるとすると、熱交換器63に供給される第2温調媒体TCM2は、被温調装置である電力変換装置50を通らないため、熱交換器63には、約40[℃]の第2温調媒体TCM2が供給される。
【0040】
この場合、熱交換器63は、熱交換器63に供給された約100[℃]の第1温調媒体TCM1と約40[℃]の第2温調媒体TCM2との間で、熱交換を行う。そして、例えば、熱交換器63からは、約80[℃]の第1温調媒体TCM1が第1温調回路61における第1分岐流路610b1の下流側に排出され、約70[℃]の第2温調媒体TCM2が第2温調回路62における第2分岐流路620b2の下流側に排出される。
【0041】
このようにして、第1温調媒体TCM1は熱交換器63で冷却されるので、温調回路60に第1温調媒体TCM1を冷却するためのラジエータを別途設けなくても、第1温調媒体TCM1を冷却することができる。したがって、温調回路60は、1つのラジエータ622で、第1温調回路61を流れる第1温調媒体TCM1と第2温調回路62を流れる第2温調媒体TCM2とを冷却することができるので、温調回路60を小型化し、車両Vの構成を簡素化できる。
【0042】
制御装置ECUは、例えば、各種演算を行うプロセッサ、各種情報(データやプログラム)を記憶する非一過性の記憶媒体を有する記憶装置、制御装置ECUの内部と外部とのデータの入出力を制御する入出力装置などを備えるECU(Electronic Control Unit)によって実現され、車両V全体を統括制御する。制御装置ECUは、1つのECUによって実現されてもよいし、複数のECUによって実現されてもよい。制御装置ECUは、例えば、内燃機関ICE、電力変換装置50、第2ポンプ621、バルブ装置626などを制御する。
【0043】
[車両がとり得るモード]
車両Vは、通常モードと、通常モードに比べて電動機20の出力変動が抑制される省燃費制御モードと、をとり得るように構成されている。通常モードは、第1モードの一例である。省燃費制御モードは、例えば、通常モードよりも燃費を重視した設定によって、内燃機関ICE、電動機20、発電機30、または変速装置40等が制御されるモードであり、第2モードの一例である。
【0044】
ここで、
図2を参照して、省燃費制御モードの一例についてより詳細に説明する。
図2には、車両Vのアクセルペダルに対する操作量をあらわすAP(アクセルポジション)開度と、車両Vから出力させる駆動力の目標値となる目標駆動力との関係であるAP開度-目標駆動力特性を示した。
図2において、符号αを付したAP開度-目標駆動力特性は、省燃費制御モードにおけるAP開度-目標駆動力特性である。一方、符号βを付したAP開度-目標駆動力特性は、通常モードにおけるAP開度-目標駆動力特性である。
【0045】
図2に示すように、AP開度が同じX[%]であっても、通常モードのときには目標駆動力がF1[N]とされるのに対し、省燃費制御モードのときには目標駆動力がF1[N]よりも小さいF2[N]とされる。さらに、省燃費制御モードのときには、AP開度がX[%]からY[%](例えばY>X)に変化したときの目標駆動力の変化率が通常モードのときに比べて小さい。
【0046】
このように、省燃費制御モードでは、AP開度-目標駆動力特性を通常モードに比べて穏やかにすることで、車両Vのドライバ(運転者)によるアクセルペダルの操作が多少乱雑であっても、車両Vの動力源である電動機20からの出力が通常モードに比べて急変しづらくなっている。そして、省燃費制御モードでは、電動機20の出力変動が抑制されることで、電動機20に供給される電力の変動も通常モードに比べて小さくなり、その結果、発電機30や内燃機関ICEの出力変動も通常モードに比べて抑制され得る。
【0047】
制御装置ECUは、例えば、車両Vに設けられた所定の操作ボタンに対する操作に基づいて、通常モードと省燃費制御モードとを切り替える。これにより、通常モードと省燃費制御モードとのうち、ドライバが所望する方のモードで車両Vを制御することが可能となる。より具体的には、制御装置ECUは、車両Vのイグニッション電源がオンとされると、イグニッション電源が前回オフとされたときのモードに設定する。そして、制御装置ECUは、車両Vのイグニッション電源がオンであり、且つ車両Vが通常モードとされているときに、上記の操作ボタンが押下されると、通常モードから省燃費制御モードに切り替える。一方、制御装置ECUは、車両Vのイグニッション電源がオンであり、且つ車両Vが省燃費制御モードとされているときに、上記の操作ボタンが押下されると、省燃費制御モードから通常モードに切り替える。
【0048】
[制御装置による第1温調媒体の温度管理]
車両Vが通常モードとされている場合、制御装置ECUは、第1温調媒体TCM1の温度が第1温度T1(例えば80[℃])に達したことに基づいて、温調回路60による第1温調媒体TCM1の冷却を開始させる。一方、車両Vが省燃費制御モードとされている場合、制御装置ECUは、第1温調媒体TCM1の温度が第1温度T1よりも高い第2温度T2(例えば90[℃])になったことに基づいて、温調回路60による第1温調媒体TCM1の冷却を開始させ得る。なお、第1温調媒体TCM1の冷却は、例えば、第2温調回路62のバルブ装置626を開放することで、熱交換器63によって第1温調媒体TCM1と第2温調媒体TCM2とを熱交換させることにより実現できる。
【0049】
このように、電動機20等の出力変動が大きくなり得る通常モードでは、電動機20や変速装置40等の潤滑および温調を行う第1温調媒体TCM1の温度が比較的低い第1温度T1になったことに基づいて第1温調媒体TCM1の冷却を開始させることで、第1温調媒体TCM1を比較的低温に保ち、電動機20等の出力(すなわち発熱)が急激に増大したとしても電動機20等を適切に冷却できる。
【0050】
一方、電動機20等の出力変動が抑制される省燃費制御モードでは、電動機20等の出力が急激に増大することは考えにくい。したがって、電動機20等の出力変動が抑制される省燃費制御モードでは、第1温調媒体TCM1の温度が比較的高い第2温度T2になったことに基づいて第1温調媒体TCM1の冷却を開始させることで、第1温調媒体TCM1を比較的高温に保ち、第1温調媒体TCM1の温度が低いことによる電動機20や変速装置40等のフリクションロスの増加を抑制できる。したがって、電動機20等が高温になるのを抑制しながら、電動機20や変速装置40等のフリクションロスを低減して車両Vのエネルギー効率の向上を図れる。
【0051】
[車両の動作の一例]
図3は、省燃費制御モードにおける車両Vの動作の一例を示すタイムチャートである。なお、以下の説明において、貯留部612に貯留された第1温調媒体TCM1の温度である貯留媒体温度を「貯留媒体温度TATF1」とも称する。また、熱交換器63と電動機20および発電機30との間を流れる第1温調媒体TCM1の温度を「供給媒体温度TATF2」とも称する。そして、電動機20の温度を「電動機温度TMOT」とも称する。
【0052】
図3において、(a)は車両Vのイグニッション電源がオンであるか否かをあらわし、(b)は車両Vのモードが省燃費制御モードであるか否かをあらわし、(c)は車両Vの走行速度である車速をあらわす。また、(d)は貯留媒体温度TATF1をあらわし、(e)は供給媒体温度TATF2をあらわし、(f)はバルブ装置626が開放されているか閉鎖されているかをあらわし、(g)は電動機温度TMOTをあらわす。
【0053】
車両Vでは、貯留媒体温度TATF1に関する閾値として、第3温度T3(
図3に示す例では75[℃])と、第3温度T3よりも高い第4温度T4(
図3に示す例では85[℃])とが、車両Vの製造者などによりあらかじめ定められている。詳細は後述するが、貯留媒体温度TATF1に関する閾値は、バルブ装置626を閉鎖するか否か、すなわち、第1温調媒体TCM1の冷却を停止させるか否かの判定に用いられる。換言すると、制御装置ECUは、電動機20や発電機30等を温調した後の比較的高温な第1温調媒体TCM1の温度である貯留媒体温度TATF1に基づいて、第1温調媒体TCM1の冷却を停止させ得る。これにより、第1温調回路61を循環する第1温調媒体TCM1のうち比較的低温な第1温調媒体TCM1の温度に基づいて第1温調媒体TCM1の冷却を停止させるようにした場合に比べて、第1温調媒体TCM1の温度が高くなり過ぎるのを抑制できる。
【0054】
また、車両Vでは、供給媒体温度TATF2に関する閾値として、前述の第1温度T1(
図3に示す例では80[℃])と第2温度T2(
図3に示す例では90[℃])とが、車両Vの製造者などによりあらかじめ定められている。詳細は後述するが、供給媒体温度TATF2に関する閾値は、バルブ装置626を開放するか否か、すなわち、第1温調媒体TCM1の冷却を開始させるか否かの判定に用いられる。換言すると、制御装置ECUは、熱交換器63によって第2温調媒体TCM2と熱交換された後の比較的低温な第1温調媒体TCM1の温度である供給媒体温度TATF2に基づいて、第1温調媒体TCM1の冷却を開始させ得る。これにより、第1温調回路61を循環する第1温調媒体TCM1のうち比較的高温な第1温調媒体TCM1の温度に基づいて第1温調媒体TCM1の冷却を開始させるようにした場合に比べて、第1温調媒体TCM1を冷却し過ぎるのを抑制できる。
【0055】
車両Vが省燃費制御モードとされている場合、制御装置ECUは、イグニッション電源がオンとされた後に所定の閾値変更条件が成立すると、貯留媒体温度TATF1に関する閾値を第3温度T3から第4温度T4に変更するとともに、供給媒体温度TATF2に関する閾値を第1温度T1から第2温度T2に変更する。
【0056】
より具体的には、貯留媒体温度TATF1に関する閾値を第3温度T3とし、且つ供給媒体温度TATF2に関する閾値を第1温度T1として、第1温調媒体TCM1の冷却を所定回数(本実施形態では2回とする)行った結果、電動機温度TMOTが所定のTth[℃]を超えないことが確認できた場合に、制御装置ECUは、閾値変更条件が成立したと判定し、上記の閾値の変更を行う。この変更により、貯留媒体温度TATF1に関する閾値を第4温度T4とし、供給媒体温度TATF2に関する閾値を第2温度T2とすることで、変更前に比べて第1温調媒体TCM1を高温に保つことが可能となる。
【0057】
図3に示す時期t1において、車両Vのイグニッション電源がオンとされ、また、車両Vのモードが省燃費制御モードに設定されたとする。時期t1では、供給媒体温度TATF2が80[℃](すなわち第1温度T1)未満であるため、制御装置ECUは、バルブ装置626を閉鎖させる。これにより、第1温調媒体TCM1を速やかに昇温できる。
【0058】
そして、時期t1後の時期t2において、供給媒体温度TATF2が80[℃]に達したとする。この場合、制御装置ECUは、時期t2からバルブ装置626を開放させることにより、第1温調媒体TCM1の冷却を開始させる。これにより、第1温調媒体TCM1の温度、すなわち、貯留媒体温度TATF1および供給媒体温度TATF2は、時期t2から低下し得る。
【0059】
そして、時期t2後の時期t3において、貯留媒体温度TATF1が75[℃](すなわち第3温度T3)まで低下したとする。この場合、制御装置ECUは、時期t3においてバルブ装置626を閉鎖させることで、第1温調媒体TCM1の冷却を終了する。これにより、第1温調媒体TCM1の温度は、時期t3から再び上昇し得る。
【0060】
そして、時期t3後の時期t4において、供給媒体温度TATF2が再び80[℃]に達したとする。この場合、制御装置ECUは、時期t4からバルブ装置626を開放させることにより、第1温調媒体TCM1の冷却を再び開始させる。これにより、第1温調媒体TCM1の温度は、時期t4から低下し得る。
【0061】
そして、時期t4後の時期t5において、貯留媒体温度TATF1が75[℃]まで再び低下したとする。この場合、制御装置ECUは、時期t5においてバルブ装置626を閉鎖させることで、第1温調媒体TCM1の冷却を終了する。
【0062】
このように、貯留媒体温度TATF1に関する閾値を第3温度T3(ここでは75[℃])とし、且つ供給媒体温度TATF2に関する閾値を第1温度T1(ここでは80[℃])とした第1温調媒体TCM1の冷却を所定回数(ここでは2回)行った結果、電動機温度TMOTがTth[℃]を超えなければ、制御装置ECUは閾値の変更を行う。
【0063】
より具体的には、
図3中の符号γで示す矢印のように、制御装置ECUは、貯留媒体温度TATF1に関する閾値を75[℃](すなわち第3温度T3)から85[℃](すなわち第4温度T4)に変更する。さらに、
図3中の符号δで示す矢印のように、制御装置ECUは、供給媒体温度TATF2に関する閾値を80[℃](すなわち第1温度T1)から90[℃](すなわち第2温度T2)に変更する。これにより、制御装置ECUは、時期t5後には、供給媒体温度TATF2が80[℃]に達したとしてもバルブ装置626を開放せず、第1温調媒体TCM1がより高温となるまで昇温できる。
【0064】
そして、時期t5後の時期t6において、供給媒体温度TATF2が90[℃]に達したとする。この場合、制御装置ECUは、時期t6からバルブ装置626を開放させることにより、第1温調媒体TCM1の冷却を開始させる。これにより、第1温調媒体TCM1が高温になり過ぎるのを抑制できる。
【0065】
なお、
図3では図示を省略するが、制御装置ECUは、時期t6後に貯留媒体温度TATF1が85[℃]まで低下すると、その時点でバルブ装置626を閉鎖させて、第1温調媒体TCM1の冷却を終了する。これにより、第1温調媒体TCM1を冷却し過ぎるのを抑制できる。
【0066】
[制御装置が実行する処理の一例]
つぎに、
図4から
図6を参照して、制御装置ECUが実行する処理の一例について説明する。制御装置ECUは、例えば、車両Vのイグニッション電源がONとされると、
図4から
図6に示す処理を実行する。
【0067】
図4に示すように、制御装置ECUは、まず、車両Vが省燃費制御モードであるか否かを判定する(ステップS1)。省燃費制御モードでないと判定した場合(ステップS1:NO)、すなわち通常モードであると判定した場合、制御装置ECUは、
図6に示すステップS16の処理(後述)へ進む。
【0068】
省燃費制御モードと判定した場合(ステップS1:YES)、制御装置ECUは、第1温度センサ61aによって検出された供給媒体温度TATF2が80[℃](すなわち第1温度T1)以上であるか否か判定する(ステップS2)。供給媒体温度TATF2が80[℃]未満と判定した場合(ステップS2:NO)、制御装置ECUは、供給媒体温度TATF2が80[℃]以上と判定するまでステップS2の処理を繰り返す。
【0069】
そして、供給媒体温度TATF2が80[℃]以上と判定すると(ステップS2:YES)、制御装置ECUは、バルブ装置626を開放して(ステップS3)、第1温調媒体TCM1の冷却を開始する。
【0070】
つぎに、制御装置ECUは、第2温度センサ61bによって検出された貯留媒体温度TATF1が75[℃](すなわち第3温度T3)以下となったか否かを判定する(ステップS4)。貯留媒体温度TATF1が75[℃]以下でないと判定した場合(ステップS4:NO)、制御装置ECUは、貯留媒体温度TATF1が75[℃]以下と判定するまでステップS4の処理を繰り返す。
【0071】
そして、貯留媒体温度TATF1が75[℃]以下と判定すると(ステップS4:YES)、制御装置ECUは、バルブ装置626を閉鎖して(ステップS5)、第1温調媒体TCM1の冷却を終了する。
【0072】
つぎに、制御装置ECUは、供給媒体温度TATF2に関する閾値を第1温度T1とし且つ貯留媒体温度TATF1に関する閾値を第3温度T3とした冷却の連続実行回数カウンタのカウント値nに1を加算(すなわちインクリメント)する(ステップS6)。そして、制御装置ECUは、カウント値nが2となったか否かを判定する(ステップS7)。
【0073】
カウント値nが2となっていないと判定した場合(ステップS7:NO)、制御装置ECUは、ステップS2の処理へ復帰する。一方、カウント値nが2となったと判定した場合(ステップS7:YES)、制御装置ECUは、カウント値nを0(ゼロ)にリセットして(ステップS8)、ステップS9の処理へ進む。
【0074】
つぎに、制御装置ECUは、電動機温度センサ20aによって検出された電動機温度TMOTがTth[℃]以下であるか否かを判定する(ステップS9)。ここで、Tth[℃]は、車両Vの製造者などによりあらかじめ設定される。電動機温度TMOTがTth[℃]を超えたと判定した場合(ステップS9:NO)、制御装置ECUは、ステップS2の処理へ復帰する。この場合、供給媒体温度TATF2および貯留媒体温度TATF1のそれぞれに関する閾値は変更されない。
【0075】
一方、電動機温度TMOTがTth[℃]以下と判定した場合(ステップS9:YES)、制御装置ECUは、供給媒体温度TATF2に関する閾値を第2温度T2(例えば90[℃])に変更するとともに、貯留媒体温度TATF1に関する閾値を第4温度T4(例えば85[℃])に変更して、
図5に示すステップS10の処理へ進む。
【0076】
そして、
図5に示すように、制御装置ECUは、第1温度センサ61aによって検出された供給媒体温度TATF2が90[℃](すなわち第2温度T2)以上であるか否か判定する(ステップS10)。供給媒体温度TATF2が90[℃]未満と判定した場合(ステップS10:NO)、制御装置ECUは、供給媒体温度TATF2が90[℃]以上と判定するまでステップS10の処理を繰り返す。
【0077】
そして、供給媒体温度TATF2が90[℃]以上と判定すると(ステップS10:YES)、制御装置ECUは、バルブ装置626を開放して(ステップS11)、第1温調媒体TCM1の冷却を開始する。
【0078】
つぎに、制御装置ECUは、第2温度センサ61bによって検出された貯留媒体温度TATF1が85[℃](すなわち第4温度T4)以下となったか否かを判定する(ステップS12)。貯留媒体温度TATF1が85[℃]以下でないと判定した場合(ステップS12:NO)、制御装置ECUは、貯留媒体温度TATF1が85[℃]以下と判定するまでステップS12の処理を繰り返す。
【0079】
そして、貯留媒体温度TATF1が85[℃]以下と判定すると(ステップS12:YES)、制御装置ECUは、バルブ装置626を閉鎖して(ステップS13)、第1温調媒体TCM1の冷却を終了する。
【0080】
つぎに、制御装置ECUは、車両Vのイグニッション電源がオフとされたか否かを判定する(ステップS14)。そして、車両Vのイグニッション電源がオフとされると(ステップS14:YES)、制御装置ECUは、
図4から
図6に示す処理を終了する。一方、車両Vのイグニッション電源がオフとされていなければ(ステップS14:NO)、制御装置ECUは、第1温調媒体TCM1を昇温させた状態を継続可能であるか否かを判定する(ステップS15)。
【0081】
ステップS15の処理において、制御装置ECUは、例えば、通常モードへ変更されておらず、且つ電動機温度TMOTがTth[℃]以下であることを条件に、継続可能と判定する。換言すると、制御装置ECUは、通常モードへ変更されていたり、電動機温度TMOTがTth[℃]を超えていたりした場合には、継続不可と判定する。
【0082】
第1温調媒体TCM1を昇温させた状態を継続可能と判定した場合(ステップS15:YES)、制御装置ECUは、ステップS10の処理へ復帰する。第1温調媒体TCM1を昇温させた状態を継続不可と判定した場合(ステップS15:NO)、制御装置ECUは、
図6に示すステップS16の処理へ進む。
【0083】
ステップS1の処理において省燃費制御モードでないと判定した場合(ステップS1:NO)、またはステップS15の処理において継続不可と判定した場合(ステップS15:NO)、
図6に示すように、制御装置ECUは、第1温度センサ61aによって検出された供給媒体温度TATF2が80[℃](すなわち第1温度T1)以上であるか否か判定する(ステップS16)。供給媒体温度TATF2が80[℃]未満と判定した場合(ステップS16:NO)、制御装置ECUは、供給媒体温度TATF2が80[℃]以上と判定するまでステップS16の処理を繰り返す。
【0084】
そして、供給媒体温度TATF2が80[℃]以上と判定すると(ステップS16:YES)、制御装置ECUは、バルブ装置626を開放して(ステップS17)、第1温調媒体TCM1の冷却を開始する。
【0085】
つぎに、制御装置ECUは、第2温度センサ61bによって検出された貯留媒体温度TATF1が75[℃](すなわち第3温度T3)以下となったか否かを判定する(ステップS18)。貯留媒体温度TATF1が75[℃]以下でないと判定した場合(ステップS18:NO)、制御装置ECUは、貯留媒体温度TATF1が75[℃]以下と判定するまでステップS18の処理を繰り返す。
【0086】
そして、貯留媒体温度TATF1が75[℃]以下と判定すると(ステップS18:YES)、制御装置ECUは、バルブ装置626を閉鎖して(ステップS19)、第1温調媒体TCM1の冷却を終了する。
【0087】
つぎに、制御装置ECUは、車両Vのイグニッション電源がオフとされたか否かを判定する(ステップS20)。そして、車両Vのイグニッション電源がオフとされると(ステップS20:YES)、制御装置ECUは、
図4から
図6に示す処理を終了する。一方、車両Vのイグニッション電源がオフとされていなければ(ステップS20:NO)、制御装置ECUは、ステップS16の処理へ復帰する。
【0088】
以上に説明したように、本実施形態によれば、車両Vが通常モードとされている場合には、第1温調媒体TCM1の温度が第1温度T1(例えば80[℃])になったことに基づいて、温調回路60による第1温調媒体TCM1の冷却を開始させる(例えば
図6に示したステップS16およびステップS17を参照)。一方、車両Vが省燃費制御モードとされている場合には、第1温調媒体TCM1の温度が第2温度T2(例えば90[℃])になったことに基づいて、温調回路60による第1温調媒体TCM1の冷却を開始させる(例えば
図5に示したステップS10およびステップS11を参照)。これにより、電動機20等の出力変動が抑制される省燃費制御モードでは、第1温調媒体TCM1を比較的高温に保ち、第1温調媒体TCM1の温度が低いことによる電動機20および変速装置40のフリクションロスの増加を抑制できる。したがって、電動機20等が高温になるのを抑制しながら、電動機20および変速装置40のフリクションロスを低減して車両Vのエネルギー効率の向上を図れる。
【0089】
また、本実施形態によれば、第1温調回路61を循環する第1温調媒体TCM1を冷却可能な冷却装置である温調回路60は、冷却水である第2温調媒体TCM2と第1温調媒体TCM1との間で熱交換を行う熱交換器63を含む、いわゆる水冷式の冷却装置となっている。これにより、第1温調回路61を循環する第1温調媒体TCM1を冷却する冷却装置を、外気と第1温調媒体TCM1との間で熱交換を行うような、いわゆる空冷式のものとした場合に比べて、第1温調回路61を循環する第1温調媒体TCM1を安定して冷却することが可能となる。
【0090】
第1温調媒体TCM1の冷却を開始させる条件となる第1温度T1や第2温度T2は、例えば、電動機温度TMOTが所定の許容温度を超えてしまうこと、すなわち電動機温度TMOTが高くなり過ぎてしまうのを回避するために、この許容温度に対してマージンを持たせた温度とされる。本実施形態によれば、熱交換器63を含む水冷式の冷却装置である温調回路60によって第1温調媒体TCM1を安定して冷却できるため、空冷式の冷却装置とした場合に比べて、上記のマージンを小さくした第1温度T1や第2温度T2を採用でき、第1温調媒体TCM1をより高温に保つことを可能にする。
【0091】
また、本実施形態によれば、第1温調回路61を循環する第1温調媒体TCM1を冷却可能な冷却装置である温調回路60は、冷却水である第2温調媒体TCM2と外気との間で熱交換を行うラジエータ622をさらに含む。これにより、1つのラジエータ622によって第2温調媒体TCM2および第1温調媒体TCM1の両方を冷却することを可能にし、車両Vの構成の簡素化を図れる。
【0092】
また、本実施形態によれば、制御装置ECUは、熱交換器63と電動機20との間を流れる第1温調媒体TCM1の温度を検出する第2温度センサ61bの検出値に基づいて、温調回路60(例えば第2温調回路62のバルブ装置626)を制御することで、第1温調媒体TCM1の冷却を行う。これにより、電動機20に供給される第1温調媒体TCM1の温度により近い、熱交換器63によって熱交換された後の比較的低温な第1温調媒体TCM1の温度に基づいて、制御装置ECUが第2温調回路62を制御することを可能にする。そして、第1温調回路61を循環する第1温調媒体TCM1のうち比較的高温な第1温調媒体TCM1の温度に基づいて第1温調媒体TCM1の冷却を開始させるようにした場合に比べて、第1温調媒体TCM1を冷却し過ぎるのを抑制できる。
【0093】
また、本実施形態によれば、制御装置ECUは、第1温調媒体TCM1の温度が第1温度T1になったことに基づいて第1温調媒体TCM1の冷却を開始させ、当該冷却により第1温調媒体TCM1の温度が第1温度T1よりも低い第3温度T3になった場合に、第1温調媒体TCM1の冷却を開始させる条件となる第1温調媒体TCM1の温度を第2温度T2とすることを許容する(例えば
図4に示したステップS2からステップS9を参照)。そして、制御装置ECUは、車両Vが省燃費制御モードとされている場合であって、且つ、冷却を開始させる条件となる温度を第2温度T2とすることを許容した場合に、第1温調媒体TCM1の温度が第2温度T2になったことに基づいて第1温調媒体TCM1の冷却を開始させるようにする(例えば
図5に示したステップS10およびステップS11を参照)。
【0094】
より具体的には、制御装置ECUは、例えば、第1温調媒体TCM1を少なくとも一度は第1温度T1(例えば80[℃])から第3温度T3(例えば75[℃])まで冷却できること、すなわち、第1温調媒体TCM1の温度を下げられることを確認したうえで、第2温度T2(例えば90[℃])からの冷却開始を許容する。これにより、ただでさえ第1温調媒体TCM1の温度を下げるのが困難な状態であるにもかかわらず、第1温調媒体TCM1が第2温度T2以上になるまで冷却せずに放置してしまうといった事態が発生するのを抑制できる。
【0095】
なお、以上に説明した例では、省燃費制御モードのときに第1温調媒体TCM1の温度を下げられることを確認したうえで、第2温度T2からの冷却開始を許容するようにしたが、これに限られない。例えば、制御装置ECUは、車両Vが通常モードであるときに第1温調媒体TCM1を第1温度T1(例えば80[℃])から第3温度T3(例えば75[℃])まで冷却できたことを確認すると、その確認結果を自装置の記憶装置などに記憶しておいてもよい。そして、制御装置ECUは、車両Vが省燃費制御モードとされた際、記憶装置などに記憶された上記の確認結果を参照して、第2温度T2からの冷却開始を許容するようにしてもよい。
【0096】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0097】
例えば、前述した実施形態では、電力変換装置50と熱交換器63とが並列に配置された構成について説明したが、電力変換装置50と熱交換器63とが直列に配置された構成としてもよい。このようにした場合、例えば、
図1に示したラジエータ622と分岐部624との間に電力変換装置50が配置された構成としてもよい。
【0098】
また、前述した実施形態では、本発明における第2モードを省燃費制御モードとした例を説明したが、これに限られない。例えば、車両Vの前方を走行する前走車両を追従するように、車両Vの駆動力や車両Vに対する制動力を制御装置ECU等が自動的に制御して車両Vを走行させる、ACC(Adaptive cruise control)と称される機能を車両Vが有することも想定される。一般的に、ACCによる走行時には、ドライバの運転による走行時に比べて、車両Vの動力源である電動機20等の出力変動が抑制され得ることから、本発明における第2モードはACCとしてもよい。この場合、本発明における第1モードは、ドライバの運転(具体的にはアクセルペダルやブレーキペダルに対する操作)によって車両Vを走行させる手動運転モードとすることができる。
【0099】
また、車両用温調システム10に何らかの異常が発生して第1温調媒体TCM1を安定して冷却できなくなることも想定される。このような異常が発生している際に、第1温調媒体TCM1の冷却を開始させる条件となる温度を第2温度T2としてしまうと、第1温調媒体TCM1を十分に冷却できなくなる可能性がある。そこで、制御装置ECUは、車両用温調システム10に何らかの異常が発生していないことが確認できた場合に、第1温調媒体TCM1の冷却を開始させる条件となる温度を第2温度T2とすることを許容するようにしてもよい。
【0100】
[制御装置が実行する処理の他の一例]
以下、
図7を参照して、制御装置ECUが実行する処理の他の一例について説明する。ここでは、
図4から
図6までの説明と異なる箇所を中心に説明することとし、
図4から
図6までの説明と共通する箇所には同符号を付してその説明を適宜省略または簡略化する。
【0101】
本例において、制御装置ECUは、ステップS3の処理のつぎに、車両用温調システム10の異常を検出するための温調システム異常検出処理を行う(ステップS21)。温調システム異常検出処理の一例については
図8を用いて後述する。
【0102】
そして、制御装置ECUは、温調システム異常検出処理の処理結果に基づいて、車両用温調システム10に異常がないか否かを判定する(ステップS22)。車両用温調システム10に異常がないと判定した場合(ステップS22:YES)、制御装置ECUは、前述したステップS4の処理へ進む。
【0103】
一方、車両用温調システム10に異常があると判定した場合(ステップS22:NO)、制御装置ECUは、異常時処理を行って(ステップS23)、
図7に示す処理を終了する。この場合、供給媒体温度TATF2および貯留媒体温度TATF1のそれぞれに関する閾値は変更されない。
【0104】
ステップS23の処理において、制御装置ECUは、例えば、車両Vが備える所定の報知装置を制御して、車両用温調システム10の異常が検出された旨や、車両Vの点検を受けるように促す旨をドライバに報知する。報知装置の一例としては、いわゆるMID(Multi Information Display)と称される表示装置を挙げることができる。
【0105】
[温調システム異常検出処理の一例]
つぎに、
図8を参照して、前述した温調システム異常検出処理の一例について説明する。なお、以下の説明において、第2温調回路62を循環する第2温調媒体TCM2の温度を「冷却水温度TW」とも称する。
【0106】
図8に示すように、温調システム異常検出処理において、制御装置ECUは、冷却水温度センサ62aによって検出された冷却水温度TWが正常値であるか否かを判定する(ステップS31)。ステップS31の処理において、制御装置ECUは、例えば、車両Vの製造者などによってあらかじめ定められた温度範囲に冷却水温度TWが含まれることを条件に、冷却水温度TWが正常値であると判定する。なお、温調回路60が正常であれば、冷却水温度TWは、通常、上記の温度範囲に収まる。
【0107】
冷却水温度TWが正常値でないと判定した場合(ステップS31:NO)、制御装置ECUは、今回の温調システム異常検出処理の処理結果を「異常」として(ステップS32)、
図8に示す処理を終了する。
【0108】
一方、冷却水温度TWが正常値と判定した場合(ステップS31:YES)、制御装置ECUは、第1温度センサ61aによって検出された供給媒体温度TATF2と、第2温度センサ61bによって検出された貯留媒体温度TATF1とを比較して、供給媒体温度TATF2が貯留媒体温度TATF1よりも低いか否かを判定する(ステップS33)。
【0109】
前述したように、通常、供給媒体温度TATF2は、貯留媒体温度TATF1よりも相対的に低い温度をとる。したがって、供給媒体温度TATF2が貯留媒体温度TATF1よりも低くない場合には、温調回路60(すなわち車両用温調システム10)に何らかの異常が発生している可能性がある。このため、供給媒体温度TATF2が貯留媒体温度TATF1よりも低くないと判定した場合(ステップS33:NO)、制御装置ECUは、ステップS32の処理へ進む。
【0110】
一方、供給媒体温度TATF2が貯留媒体温度TATF1よりも低いと判定した場合(ステップS33:YES)、制御装置ECUは、第1温度センサ61aによって検出された供給媒体温度TATF2と、第2温度センサ61bによって検出された貯留媒体温度TATF1との温度差ΔTが所定の閾値としてあらかじめ設定された10[℃]以上であるか否かを判定する(ステップS34)。
【0111】
もし、温調回路60が正常であれば、ステップS2およびステップS3の処理によって第1温調媒体TCM1の冷却を行わせると、熱交換器63から電動機20に供給される第1温調媒体TCM1の温度(すなわち供給媒体温度TATF2)は急激に低下する。一方、貯留部612に貯留された第1温調媒体TCM1の温度(すなわち貯留媒体温度TATF1)は、供給媒体温度TATF2に比べて緩やかに低下する。よって、温調回路60が正常であれば、温度差ΔTはある程度大きくなる。換言すると、供給媒体温度TATF2と貯留媒体温度TATF1との温度差ΔTが小さ過ぎる場合には、温調回路60に何らかの異常が発生している可能性がある。このため、温度差ΔTが10[℃]未満と判定した場合(ステップS34:NO)、ステップS32の処理へ進む。
【0112】
一方、温度差ΔTが10[℃]以上と判定した場合(ステップS34:YES)、今回の温調システム異常検出処理の処理結果を「正常(換言すると異常なし)」として(ステップS35)、
図8に示す処理を終了する。この場合、前述したステップS4の処理へ進むことになるから、供給媒体温度TATF2および貯留媒体温度TATF1のそれぞれに関する閾値が変更され得る。
【0113】
このような温調システム異常検出処理により、制御装置ECUは、第1温調媒体TCM1や第2温調媒体TCM2の温度管理に用いる第1温度センサ61a、第2温度センサ61b、冷却水温度センサ62aの検出値を用いて、温調回路60(すなわち車両用温調システム10)の異常を精度よく検出することが可能となる。よって、温調回路60の異常を検出するためのセンサを車両Vに別途追加する必要がなく、このようなセンサの追加により車両Vの構成が煩雑化するのを抑制できる。
【0114】
そして、制御装置ECUは、上記のような供給媒体温度TATF2および貯留媒体温度TATF1の特性などに基づいて、温調回路60が正常であることを確認したうえで、第2温度T2からの冷却開始を許容する。これにより、温調回路60に異常が発生しているにもかかわらず、第1温調媒体TCM1が第2温度T2となるまで冷却せずに放置してしまうといった事態が発生するのを抑制できる。
【0115】
なお、前述した実施形態における具体的な数値(例えば温度)はあくまで一例であり、これに限定されないことは言うまでもない。
【0116】
また、前述した実施形態で説明した制御方法は、あらかじめ用意されたプログラムをコンピュータ(換言するとプロセッサ)で実行することによって実現できる。本プログラム(制御プログラム)は、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶され、記憶媒体から読み出されることによって実行される。また、本プログラムは、フラッシュメモリなどの不揮発性(非一過性)の記憶媒体に記憶された形で提供されてもよいし、インターネットなどのネットワークを介して提供されてもよい。本プログラムを実行するコンピュータは、前述した制御装置ECUのように車両Vに含まれるものとしてもよいし、車両Vと通信可能な外部装置(例えばサーバ)に含まれるものとしてもよい。
【0117】
本明細書などには少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、前述した実施形態において対応する構成要素などを示しているが、これに限定されるものではない。
【0118】
(1) 電動機(電動機20、発電機30)と、ギヤボックス(変速装置40)と、所定の温調媒体(第1温調媒体TCM1)が循環して前記電動機および前記ギヤボックスの温調を行う温調回路(第1温調回路61)と、前記温調回路を循環する前記温調媒体を冷却可能な冷却装置(温調回路60)と、前記冷却装置を制御する制御装置(制御装置ECU)と、を備える車両(車両V)であって、
前記温調媒体は、前記電動機および前記ギヤボックスの潤滑および温調を行うことが可能なオイルであり、
前記車両は、第1モードと、前記第1モードに比べて前記電動機の出力変動が抑制される第2モードと、をとり得るように構成され、
前記制御装置は、
前記車両が前記第1モードとされている場合には、前記温調媒体の温度が第1温度(第1温度T1)になったことに基づいて前記冷却装置による前記温調媒体の冷却を開始させ、
前記車両が前記第2モードとされている場合には、前記温調媒体の温度が前記第1温度よりも高い第2温度(第2温度T2)になったことに基づいて前記冷却装置による前記温調媒体の冷却を開始させる、
車両。
【0119】
(1)によれば、電動機の出力変動が大きくなり得る第1モードでは、電動機の潤滑および温調を行う温調媒体の温度が比較的低い第1温度になったことに基づいて温調媒体の冷却を開始させることで、温調媒体を比較的低温に保ち、電動機の出力(すなわち発熱)が急激に増大したとしても電動機を適切に冷却できる。一方、電動機の出力変動が抑制される第2モードでは、電動機の出力が急激に増大することは考えにくい。(1)によれば、電動機の出力変動が抑制される第2モードでは、温調媒体の温度が比較的高い第2温度になったことに基づいて温調媒体の冷却を開始させることで、温調媒体を比較的高温に保ち、温調媒体の温度が低いことによる電動機およびギヤボックスのフリクションロスの増加を抑制できる。したがって、電動機が高温になるのを抑制しながら、電動機およびギヤボックスのフリクションロスを低減して車両のエネルギー効率の向上を図れる。
【0120】
(2) (1)に記載の車両であって、
前記冷却装置は、冷却水(第2温調媒体TCM2)と前記温調媒体との間で熱交換を行う熱交換器(熱交換器63)を含む、
車両。
【0121】
冷却装置による温調媒体の冷却を開始させる条件となる第1温度や第2温度は、電動機の温度が所定の許容温度を超えてしまう(すなわち電動機の温度が高くなり過ぎてしまう)のを回避するために、電動機の許容温度に対してマージンを持たせた温度とされる。(2)によれば、冷却水と温調媒体との間で熱交換を行う熱交換器を含む、いわゆる水冷式の冷却装置によって温調媒体を安定して冷却することを可能にする。これにより、冷却装置をいわゆる空冷式のものとした場合に比べて、上記のマージンを小さくした第1温度や第2温度を採用でき、温調媒体を高温に保つことを可能にする。
【0122】
(3) (2)に記載の車両であって、
前記車両は、前記温調媒体の温度を検出する温度センサ(第1温度センサ61a)をさらに備え、
前記制御装置は、前記温度センサによって検出された前記温調媒体の温度に基づいて前記冷却装置を制御し、
前記温度センサは、前記熱交換器と前記電動機との間を流れる前記温調媒体の温度を検出する、
車両。
【0123】
(3)によれば、電動機に供給される温調媒体の温度により近い、熱交換器によって熱交換された後の温調媒体の温度に基づいて、制御装置が冷却装置を制御することを可能にする。
【0124】
(4) (3)に記載の車両であって、
前記温調回路は、前記温調媒体を貯留可能な貯留部(貯留部612)に貯留された前記温調媒体が前記熱交換器を介して前記電動機に供給されるとともに、前記電動機および前記ギヤボックスを潤滑および温調した前記温調媒体が前記貯留部に供給されるように構成され、
前記温度センサとしての第1温度センサ(第1温度センサ61a)は、前記熱交換器から前記電動機に供給される前記温調媒体の温度である供給媒体温度(供給媒体温度TATF2)を検出し、
前記車両は、前記貯留部に貯留された前記温調媒体の温度である貯留媒体温度(貯留媒体温度TATF1)を検出する第2温度センサ(第2温度センサ61b)をさらに備え、
前記制御装置は、
前記冷却装置による冷却を行わせた際の、前記第1温度センサによって検出された前記供給媒体温度と、前記第2温度センサによって検出された前記貯留媒体温度とに基づいて、前記冷却装置が正常であるか異常であるかを判定し、
前記冷却装置が正常であると判定した場合に、前記冷却装置による冷却を開始させる条件となる前記温調媒体の温度を前記第2温度とすることを許容し、
前記車両が前記第2モードとされている場合であって、且つ、前記冷却装置による冷却を開始させる条件となる前記温調媒体の温度を前記第2温度とすることを許容した場合に、前記温調媒体の温度が前記第2温度になったことに基づいて前記冷却装置による前記温調媒体の冷却を開始させる、
車両。
【0125】
もし冷却装置が正常であれば、冷却装置による温調媒体の冷却を行わせると、熱交換器から電動機に供給される温調媒体の温度(すなわち供給媒体温度)は急激に低下する一方、貯留部に貯留された温調媒体の温度(すなわち貯留媒体温度)は供給媒体温度に比べて緩やかに低下する。(4)によれば、このような供給媒体温度および貯留媒体温度の特性に基づいて冷却装置が正常であることを確認したうえで、第2温度からの冷却開始を許容する。これにより、冷却装置に異常が発生しているにもかかわらず、温調媒体が第2温度となるまで冷却せずに放置してしまうといった事態が発生するのを抑制できる。
【0126】
(5) (4)に記載の車両であって、
前記制御装置は、
前記供給媒体温度が前記貯留媒体温度よりも低く、且つ、前記供給媒体温度と前記貯留媒体温度との温度差が所定値以上である場合に前記冷却装置が正常と判定する、
車両。
【0127】
(5)によれば、冷却装置が正常であるか異常であるかを精度よく判定することが可能となる。
【0128】
(6) (1)から(5)のいずれかに記載の車両であって、
前記制御装置は、
前記温調媒体の温度が前記第1温度になったことに基づいて前記冷却装置による前記温調媒体の冷却を開始させ、当該冷却により前記温調媒体の温度が前記第1温度よりも低い所定温度になった場合に、前記冷却装置による冷却を開始させる条件となる前記温調媒体の温度を前記第2温度とすることを許容し、
前記車両が前記第2モードとされている場合であって、且つ、前記冷却装置による冷却を開始させる条件となる前記温調媒体の温度を前記第2温度とすることを許容した場合に、前記温調媒体の温度が前記第2温度になったことに基づいて前記冷却装置による前記温調媒体の冷却を開始させる、
車両。
【0129】
(6)によれば、冷却装置によって温調媒体を少なくとも一度は第1温度から所定温度まで冷却できること、すなわち、冷却装置によって温調媒体の温度を下げられることを確認したうえで、第2温度からの冷却開始を許容する。これにより、ただでさえ温調媒体の温度を下げるのが困難な状態であるにもかかわらず、温調媒体が第2温度となるまで冷却せずに放置してしまうといった事態が発生するのを抑制できる。
【符号の説明】
【0130】
20 電動機
30 発電機(電動機)
40 変速装置(ギヤボックス)
60 温調回路(冷却装置)
61 第1温調回路(温調回路)
61a 第1温度センサ(温度センサ)
61b 第2温度センサ
ECU 制御装置
T1 第1温度
T2 第2温度
TCM1 第1温調媒体(温調媒体)
TCM2 第2温調媒体(冷却水)
V 車両