(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134980
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電子部品構造体
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240927BHJP
H01G 4/232 20060101ALI20240927BHJP
H01G 4/228 20060101ALI20240927BHJP
H01G 4/38 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01G4/30 201F
H01G4/30 201G
H01G4/30 201H
H01G4/232 B
H01G4/228 J
H01G4/228 W
H01G4/38
H01G4/30 516
H01G4/30 513
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045453
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】井口 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】福岡 智久
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AF01
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC32
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG08
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG28
(57)【要約】
【課題】応力による接続部分の脆化を防止し得る電子部品構造体を提供する。
【解決手段】第1の電子部品と、第2の電子部品と、前記第1の電子部品と前記第2の電子部品の間にあり融点が300℃以下である第1の金属材料を含む低融点層と、前記第1の電子部品と前記第2の電子部品の間にあり融点が400℃以上である第2の金属材料を含む高融点層と、を有し、前記第1の電子部品と前記第2の電子部品とは、前記低融点層と前記高融点層とが重なって構成される複層接続部により接続されている電子部品構造体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電子部品と、
第2の電子部品と、
前記第1の電子部品と前記第2の電子部品の間にあり融点が300℃以下である第1の金属材料を含む低融点層と、
前記第1の電子部品と前記第2の電子部品の間にあり融点が400℃以上である第2の金属材料を含む高融点層と、を有し、
前記第1の電子部品と前記第2の電子部品とは、前記低融点層と前記高融点層とが重なって構成される複層接続部により接続されている電子部品構造体。
【請求項2】
第1の電子部品と、
金属板材と、
前記第1の電子部品と前記金属板材の間にあり融点が300℃以下である第1の金属材料を含む低融点層と、
前記第1の電子部品と前記金属板材の間にあり融点が400℃以上である第2の金属材料を含む高融点層と、を有し、
前記第1の電子部品と前記金属板材とは、前記低融点層と前記高融点層が重なって構成される複層接続部により接続されている、電子部品構造体。
【請求項3】
前記第2の金属材料は、金属間化合物である請求項1または請求項2に記載の電子部品構造体。
【請求項4】
前記第1の金属材料は、Sn単体またはSnを主成分とする固溶体である請求項1または請求項2に記載の電子部品構造体。
【請求項5】
前記複層接続部は、2つの前記低融点層の間に、1つの前記高融点層を挟む3層以上の積層構造を有する請求項1または請求項2に記載の電子部品構造体。
【請求項6】
前記2つの前記低融点層のうち一方は、他方に比べて厚みが厚いことを特徴とする請求項5に記載の電子部品構造体。
【請求項7】
前記高融点層は、前記複層接続部の積層方向に直交する第1の方向に関して中央に配置される中央部と、前記第1の方向に沿って前記中央部を挟むように前記中央部の両側に配置されており前記中央部より厚みが厚い周辺部と、を有し、
前記低融点層は、前記中央部を挟む一方の前記周辺部から前記中央部を経由して他方の前記周辺部まで、前記高融点層に対して連続的に接している請求項1または請求項2に記載の電子部品構造体。
【請求項8】
前記第1の金属材料はSn単体またはSnを主成分とする固溶体であり、
前記高融点層は、前記低融点層より少ない含有割合で、前記第1の金属材料を含む請求項1または請求項2に記載の電子部品構造体。
【請求項9】
前記第1の金属材料はSn単体またはSnを主成分とする固溶体であり、
前記高融点層は、金属間化合物である前記第2の金属材料と、前記第1の金属材料と、Cu単体またはCuを主成分とする固溶体で構成される第3の金属材料と、を含む請求項1または請求項2に記載の電子部品構造体。
【請求項10】
前記第2の金属材料は、Snを含む金属間化合物である請求項9に記載の電子部品構造体。
【請求項11】
前記第2の金属材料は、CuおよびSnを含む金属間化合物である請求項9に記載の電子部品構造体。
【請求項12】
前記高融点層における前記第1の金属材料と前記第2の金属材料との含有比率は、前記第1の金属材料を前記第2の金属材料で割った値が0.4~0.8である請求項9に記載の電子部品構造体。
【請求項13】
前記高融点層における前記第2の金属材料と前記第3の金属材料との含有比率は、前記第3の金属材料を前記第2の金属材料で割った値が0.3~1.0である請求項9に記載の電子部品構造体。
【請求項14】
前記低融点層の平均厚みは10~60μmである請求項1または請求項2に記載の電子部品構造体。
【請求項15】
前記高融点層の平均厚みは30~100μmである請求項1または請求項2に記載の電子部品構造体。
【請求項16】
前記金属間化合物は、Cu6Sn5、Cu3Sn、Ni3Sn4、(Cu,Ni)6Sn5、Ag3Snのいずれかである請求項3に記載の電子部品構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電子部品または電子部品と金属板材とを接続して構成される電子部品構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、実装時の応力緩和や実装密度の高密度化などの要求により、複数のチップ部品またはチップ部品と金属板材とを接続して一体化した電子部品構造体が提案されている。このような電子部品構造体では、表面実装時などにおけるリフロー加熱時などにおいて、構造体に含まれる構成部分を接続する接続部分が溶融し、構成部分が分離してしまう問題を防止する必要がある。
【0003】
たとえば、従来技術に係る電子部品構造体では、接合部分にCuを含む金属間化合物を用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術において接続材料として提案されている金属間化合物は、低融点の金属に比べて融点は高いものの、単体の金属などにくらべて脆い傾向がある。したがって、このような金属間化合物で構成部分を接合する従来の電子部品構造体は、大きな応力などが作用する使用条件などにおいては、接続部分の脆化が進み、接続強度が低下するリスクがあることが判ってきた。
【0006】
本開示は、このような実情に鑑みてなされ、応力による接続部分の脆化を防止し得る電子部品構造体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の第1の観点に係る電子部品構造体は、
第1の電子部品と、
第2の電子部品と、
前記第1の電子部品と前記第2の電子部品の間にあり融点が300℃以下である第1の金属材料を含む低融点層と、
前記第1の電子部品と前記第2の電子部品の間にあり融点が400℃以上である第2の金属材料を含む高融点層と、を有し、
前記第1の電子部品と前記第2の電子部品とは、前記低融点層と前記高融点層とが重なって構成される複層接続部により接続されている。
【0008】
また、本開示の第2の観点に係る電子部品構造体は、
第1の電子部品と、
金属板材と、
前記第1の電子部品と前記金属板材の間にあり融点が300℃以下である第1の金属材料を含む低融点層と、
前記第1の電子部品と前記金属板材の間にあり融点が400℃以上である第2の金属材料を含む高融点層と、を有し、
前記第1の電子部品と前記金属板材とは、前記低融点層と前記高融点層が重なって構成される複層接続部により接続されている。
【0009】
本開示に係る電子部品構造体は、複数の電子部品または電子部品と金属板材とが、低融点層と高融点層が重なって構成される複層接続部により接続されている。このような複層接続部は、リフロー時の熱に耐えて電子部品等の接続を維持するとともに、応力によって複層接続部に微小なクラックが生じて脆化が進む問題を防止することができる。
【0010】
また、たとえば、前記第2の金属材料は、金属間化合物であってもよく、また、前記金属間化合物は、Cu6Sn5、Cu3Sn、Ni3Sn4、(Cu,Ni)6Sn5、Ag3Snのいずれかであってもよい。
【0011】
このような金属間化合物である第2の金属材料を含む高融点層が積層されていることで、複層接続部がリフロー時の熱に耐えうるための適切な融点の高さと、適切な電気伝導性と、低融点層、電子部品および金属板材との好適な結合性を奏する。
【0012】
また、たとえば、前記第1の金属材料は、Sn単体またはSnを主成分とする固溶体であってもよい。
【0013】
このようなSn単体または固溶体である第1の金属材料を含む低融点層が積層されていることで、応力等により複層接続部の脆化が進行する問題を好適に防止できる。
【0014】
また、たとえば、前記複層接続部は、2つの前記低融点層の間に、1つの前記高融点層を挟む3層以上の積層構造を有してもよい。
【0015】
2つの低融点層が高融点層を挟む多層積層構造を有することにより、このような複層接続部は、リフロー時の熱に好適に耐え得るとともに、応力による脆化の進行を好適に防止することができる。
【0016】
また、たとえば、前記2つの前記低融点層のうち一方は、他方に比べて厚みが厚くてもよい。
【0017】
低融点層の厚みを、高融点層の一方側と他方側とで非対称とすることにより、応力による微小クラック等の発生をより好適に防止することができる。
【0018】
また、たとえば、前記高融点層は、前記複層接続部の積層方向に直交する第1の方向に関して中央に配置される中央部と、前記第1の方向に沿って前記中央部を挟むように前記中央部の両側に配置されており前記中央部より厚みが厚い周辺部と、を有してもよく、
前記低融点層は、前記中央部を挟む一方の前記周辺部から前記中央部を経由して他方の前記周辺部まで、前記高融点層に対して連続的に接してもよい。
【0019】
このような低融点層と高融点層が積層している複層接続部は、リフロー時の熱に好適に耐え得るとともに、応力によって複層接続部が脆くなる問題を防止することができる。
【0020】
また、たとえば、前記第1の金属材料はSn単体またはSnを主成分とする固溶体であってもよく
前記高融点層は、前記低融点層より少ない含有割合で、前記第1の金属材料を含んでもよい。
また、前記高融点層は、金属間化合物である前記第2の金属材料と、前記第1の金属材料と、Cu単体またはCuを主成分とする固溶体で構成される第3の金属材料と、を含んでもよい。
また、前記第2の金属材料は、Snを含む金属間化合物で構成されてもよい。
また、前記第2の金属材料は、CuおよびSnを含む金属間化合物で構成されてもよい。
【0021】
このような低融点層と高融点層が積層している複層接続部は、フロー時の熱に好適に耐え得るとともに、低融点層と高融点層との結合が強く、接続強度を好適に維持することができる。
【0022】
また、たとえば、前記高融点層における前記第1の金属材料と前記第2の金属材料との含有比率は、前記第1の金属材料を前記第2の金属材料で割った値が0.4~0.8であってもよい。
また、たとえば、前記高融点層における前記第2の金属材料と前記第3の金属材料との含有比率は、前記第3の金属材料を前記第2の金属材料で割った値が0.3~1.0であってもよい。
【0023】
高融点層における各金属材料の含有比率は特に限定されないが、含有比率を所定の範囲内とすることにより、複層接続部の耐熱性を高めたり、脆化防止効果を高めたりすることができる。
【0024】
また、たとえば、前記低融点層の平均厚みは10~60μmであってもよい。
また、たとえば、前記高融点層の平均厚みは30~100μmであってもよい。
【0025】
複層接続部における低融点層および高融点層の厚みは特に限定されないが、低融点層および高融点層の厚みを所定の範囲内とすることにより、複層接続部の耐熱性を高めたり、脆化防止効果を高めたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係る電子部品構造体を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電子部品構造体における複層接続部の周辺部分を示す模式断面図である。
【
図3】
図3は、本開示の第2実施形態に係る電子部品構造体を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
第1実施形態
図1は、第1実施形態に係る電子部品構造体10を示す概略断面図である。
図1に示すように、電子部品構造体10は、第1の電子部品20aと、第2の電子部品20bと、第1の電子部品20aと第2の電子部品20bとを接続する複層接続部40とを有する。
【0028】
図1に示すように、電子部品構造体10は、第1の電子部品20aと第2の電子部品20bとが複層接続部40を介して一体化されており、1個の電子部品として機能する。第1の電子部品20aおよび第2の電子部品20bは、それぞれ単独でも表面実装可能なチップ部品として機能するが、電子部品構造体10も、電子部品として基板等に表面実装可能である。ただし、第1の電子部品20a、第2の電子部品20bおよび電子部品構造体10としては、表面実装型のもののみには限定されず、たとえば、スルーホール実装が可能なものも含まれる。他の実施形態についても同様である。
【0029】
また、後述するように、複層接続部40は、第1の電子部品20aと第2の電子部品20bとを電気的に接続する導電経路にもなっており、電子部品構造体10は、第1の電子部品20aと第2の電子部品20bとが電気的に接続した1個の電子部品20aとして機能する。
【0030】
電子部品構造体10に含まれる第1の電子部品20aと第2の電子部品20bは、互いに同様の形状、構造および機能を有する電子部品である。ただし、電子部品構造体10に含まれる複数の電子部品20a、20bとしては、互いに同様の形状、構造および機能を有するもののみには限定されず、互いに異なる形状、構造または機能を有するものであってもかまわない。
【0031】
第1の電子部品20a、第2の電子部品20bの大きさについては、特に限定されないが、たとえば、長さ0.4~×6.4mm程度、幅0.2~3.2mm程度のJISおよびEIA規格サイズが例示される。他の実施形態に用いる電子部品20a、20bについても同様である。
【0032】
図1に示すように、第1の電子部品20aは、略直方体状の外形状を有しており、素体21と、1対の端子電極26とを有する。端子電極26は、略直方体状の素体21において互いに対向する一対の端面および端面に隣接する側面の一部に広がるように形成されている。一対の端子電極26は、素体21の表面において、互いに離間するように形成されており、一方の端子電極26に対して、他方の端子電極26は、電気的に絶縁されている。
【0033】
第1の電子部品20aは、チップコンデンサである。
図1では素体21の内部構造については図示していないが、素体21の内部には、誘電体層と内部電極層とが交互に積層されている。誘電体層と内部電極層の積層方向は、第1の電子部品20aと第2の電子部品20bの接続方向(配列方向)と平行である上下方向であるが、これとは異なり、電子部品20a、20bの接続方向(配列方向)および電極対向方向に垂直であってもよい。
【0034】
誘電体層の材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸ストロンチウム、ジルコン酸カルシウムストロンチウム、またはこれらの混合物などの誘電体材料で構成される。各誘電体層の厚みは、特に限定されないが、1μm~数百μmのものが一般的である。本実施形態では、各誘電体層の厚みは、好ましくは0.5~10.0μmである。
【0035】
素体21の内部の内部電極層は、導電体材料を含有する。内部電極層が含有する導電体材料としては、特に限定されないが、誘電体層の構成材料が耐還元性を有する場合には、比較的安価な卑金属を用いることができる。内部電極層に用いられる卑金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金としては、Cu、Sn、Mn、CrおよびAlから選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P等の各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。また、内部電極層は、汎用的な電極用ペーストを使用して形成してもよい。内部電極層の厚みは用途等に応じて適宜決定すればよい。また、内部電極層は、金属以外の導電性材料で構成されていてもよい。
【0036】
素体21の内部に積層される内部電極層は、一方の端子電極26(
図1における素体21の右側の配置)に接続しているものと、他方の端子電極26(
図1において素体21の左側に配置)に接続しているものがある。一対の端子電極26の間に加えられる電位差は、内部電極層を介して、第1の電子部品20aの誘電体層に加えられる。
【0037】
図1に示すように、端子電極26は、下層の焼結層26aと、上層の表面層26bの2層構造になっている。焼結層26aの材質は、CuやCu合金、NiやNi合金、AgやAg合金、パラジウム合金などが挙げられるが、これら以外の金属であってもよい。表面層26bの材質としては、Sn、Cu、Niなどが挙げられる。表面層26bは、たとえば湿式メッキ法などにより、焼結層26aの上に形成される。
【0038】
一例を挙げると、
図1に示す端子電極26は、焼結Cuで構成される焼結層26aと、湿式メッキによるSnで構成される表面層26bで構成される。ただし、第1の電子部品20aの端子電極26としては、
図1に例示されるものみには限定されず、単層または三層以上の構造を有していてもよく、焼結または湿式メッキ以外の方法で形成されてもよい。
【0039】
第2の電子部品20bも、第1の電子部品20aと同様に、素体21と一対の端子電極26とを有する。第2の電子部品20bは、第1の電子部品20aと同様の形状および構造を有するため、第2の電子部品20bの詳細については、説明を省略する。
【0040】
図1に示すように、電子部品構造体10は、第1の電子部品20aと、第2の電子部品20bとが、実装面に対して高さ方向に積み上げられた構造を有する。第1の電子部品20aと第2の電子部品20bとは、2箇所に形成される複層接続部40により、互いの端子電極26同士が、それぞれ接続されている。
【0041】
図1に示す電子部品構造体10は、たとえば、
図1に示すような姿勢で、第1の電子部品20aを実装基板に接触させたのちリフロー接合することにより、第1の電子部品20aと第2の電子部品20bとが並列接続した一体の電子部品として機能する。
【0042】
図1に示すように、複層接続部40は、第1の電子部品20aの端子電極26と、第2の電子部品20bの端子電極26とを接続する。さらに、複層接続部40は、低融点層50a、50bと、高融点層60とを有しており、複層接続部40の内部で、低融点層50a、50bと、高融点層60とが積層している。
【0043】
すなわち、第1の電子部品20aと第2の電子部品20bとは、低融点層50a、50bと高融点層60とが重なって構成される複層接続部40により接続されている。複層接続部40内における低融点層50a、50bと高融点層60との積層方向は、第1の電子部品20aと第2の電子部品20bの接続方向(配列方向)と平行である上下方向である。
【0044】
図2は、
図1に示す電子部品構造体10における複層接続部40およびその周辺部分を示す模式断面図である。
図2に示すように、複層接続部40は、2つの低融点層50a、50bの間に、1つの高融点層60を挟む3層以上(
図2に示す例では3層)の積層構造を有する。ただし、複層接続部40は、低融点層50a、50bと、高融点層60とを、少なくとも1層ずつ有していればよく(
図3等参照)、低融点層50a、50bと高融点層60とを1層ずつ有するものや、2つ以上の高融点層60を有するものも、複層接続部に含まれる。
【0045】
図2に示す低融点層50a、50bは、第1の電子部品20aと第2の電子部品20bの間にあり、第1の電子部品20aの端子電極26と第2の電子部品20bの端子電極26とを接続する複層接続部40の一部を構成する。高融点層60に対して下側の低融点層50aと上側の低融点層50bとは、配置、厚みおよび形状が異なるが、含有する材料や内部組織などは同様である。
【0046】
低融点層50a、50bは、融点が300℃以下である第1の金属材料を含む。第1の金属材料としては、Sn単体またはSnを主成分とする固溶体や、BiやSnを含む合金などが挙げられる。低融点層50a、50bにおける第1の金属材料の含有割合は、顕微鏡下における面積割合で80~100%程度とすることができ、
図2に示すように、低融点層50a、50bは、概ね第1の金属材料による1つの相で構成されていてもよい。
【0047】
なお、低融点層50a、50bには、空隙(ボイド)などが含まれていてもよいが、面積割合の算出に際しては、ボイドは低融点層50a、50bの面積に含めない。他の層における含有割合についても、ボイドの扱いは同様である。
【0048】
図2に示すように、2つの低融点層50a、50bのうち、一方の低融点層50aは、第1の電子部品20aの端子電極26と高融点層60とを接続し、他方の低融点層50bは第2の電子部品20bの端子電極26と高融点層60とを接続する。2つの低融点層50a、50bは、互いに厚みが異なり、2つの低融点層50a、50bのうち一方である低融点層50bは、他方であり下方にある低融点層50aに比べて厚みが厚い。複層接続部40のように2つの低融点層50a、50bを有する場合、低融点層50a、50bを同じ厚みとするよりも、一方を他方より厚くすることにより、低融点層50a、50bの合計の厚みを抑制しつつ、応力による高融点層60の脆化の進行を効果的に抑制できる。
【0049】
低融点層50a、50bの平均厚みは、特に限定されないが、たとえば、10~60μmとすることができ、15~55μmとすることが好ましい。低融点層50a、50bを所定の値より厚くすることにより、応力による高融点層60の脆化の進行を効果的に抑制でき、低融点層50a、50bを所定の値より薄くすることにより、複層接続部40がリフロー時の熱に適切に耐えることができる。
【0050】
図2に示す高融点層60は、低融点層50a、50bと同様に、第1の電子部品20aと第2の電子部品20bの間にあり、第1の電子部品20aの端子電極26と第2の電子部品20bの端子電極26とを接続する複層接続部40の一部を構成する。高融点層60は、2つの低融点層50a、50bによって挟まれており、低融点層50a、50bを介して、第1の電子部品20aおよび第2の電子部品20bの端子電極26に接続している。
【0051】
高融点層60は、融点が400℃以上である第2の金属材料を含む。
図2では、高融点層60に含まれる3つの異なる金属材料の相による3つの領域を、それぞれ異なるハッチングで表している。高融点層60における第2の金属材料の相である第2領域62は、
図2の高融点層60において、右下がりの斜めハッチングで示されている。
【0052】
高融点層60に含まれる第2の金属材料としては、金属間化合物であることが好ましく、Snを含む金属間化合物であることがより好ましく、CuおよびSnを含む金属間化合物であることがさらに好ましい。また、高融点層60に含まれる第2の金属材料としては、Cu6Sn5、Cu3Sn、Ni3Sn4、(Cu,Ni)6Sn5、Ag3Snのいずれかの金属間化合物であることも好ましい。第2の金属材料を金属間化合物とすることで、複層接続部40が、リフロー時の熱に耐えうるための適切な融点の高さと、適切な電気伝導性とを有する。また、第2の金属材料がSnを含む金属間化合物であることにより、低融点層50a、50bとの結合性が良好であり、層間剥離などの問題をより確実に防止できる。
【0053】
図2に示すように、高融点層60には、融点が400℃以上である第2の金属材料以外に、Sn単体またはSnを主成分とする固溶体である第1の金属材料が含まれていてもよい。高融点層60における第1の金属材料の層である第1領域61は、
図2の高融点層60において、右上がりの密な斜めハッチングで示されている。
【0054】
図2に示す複層接続部40では、高融点層60は、低融点層50a、50bより少ない含有割合で、第1の金属材料を含む。このような高融点層60は、リフロー時の熱に耐える耐熱性を奏するとともに、応力により高融点層60が脆くなる問題を好適に防止できる。また、このような高融点層60は、低融点層50a、50bとの結合性がより良好であり、層間剥離などの問題をより確実に防止できる。
【0055】
また、高融点層60には、金属間化合物等である第2の金属材料と、Sn単体またはSnを主成分とする固溶体等である第1の金属材料に加えて、Cu単体またはCuを主成分とする固溶体で構成される第3の金属材料を含んでいてもよい。高融点層60における第3の金属材料の層である第3領域63は、
図2の高融点層60において、右上がりの粗い斜めハッチングで示されている。
【0056】
高融点層60が、Cu等による第3の金属材料を含むことにより、融点の低い第1の金属材料を含んでいる場合であっても、複層接続部40は、リフロー時の熱に耐える耐熱性を奏する。また、高融点層60が、Cu等による第3の金属材料を含むことにより、応力により高融点層60が脆くなる問題を好適に防止できる。
【0057】
高融点層60における第1の金属材料(第1領域61)と第2の金属材料(第2領域62)との含有比率は、特に限定されないが、たとえば顕微鏡下における面積割合において、第1の金属材料(第1領域61の面積)を第2の金属材料(第2領域62の面積)で割った値で0.4~0.8であることが好ましい。第1の金属材料(第1領域61)の含有割合を第2の金属材料(第2領域62)に対して所定値以上とすることにより、応力により高融点層60が脆くなる問題を好適に防止するとともに、層間剥離などの問題をより確実に防止できる。また、第1の金属材料(第1領域61)の含有割合を第2の金属材料(第2領域62)に対して所定値以下とすることにより、高融点層60がリフロー時の熱に耐える良好な耐熱性を奏する。
【0058】
高融点層60における第2の金属材料(第2領域62)と第3の金属材料(第3領域63)との含有比率は、特に限定されないが、たとえば顕微鏡下における面積割合において、第3の金属材料(第3領域63の面積)を第2の金属材料(第2領域62の面積)で割った値で0.3~1.0であることが好ましい。第3の金属材料(第3領域63)の含有割合を第2の金属材料(第2領域62)に対して所定値以上とすることにより、応力により高融点層60が脆くなる問題を好適に防止するとともに、高融点層60の耐熱性を高めることができる。また、第3の金属材料(第3領域63)の含有割合を第2の金属材料(第2領域62)に対して所定値以下とすることにより、複層接続部40が良好な接続強度を奏する。
【0059】
図2に示すように、複層接続部40の高融点層60は、複層接続部の積層方向(上下方向)に直交する第1の方向D1に関して中央に配置される中央部65と、第1の方向D1に沿って中央部65を挟むように中央部65の両側に配置されており中央部65より厚みが厚い周辺部66、67を有する。また、高融点層60に接触する低融点層50a、50bは、中央部65を挟む一方の周辺部66から、中央部65を経由して他方の周辺部67まで、高融点層60に対して連続的に接している。
【0060】
このように、複層接続部40の高融点層60が厚みの薄い中央部65を有し、その中央部65に低融点層50a、50bが接していることにより、たとえ温度上昇により低融点層が溶融し始めた場合であっても、毛細管現象により第1の金属は高融点層60と端子電極26との間に維持される。したがって、このような形状的特徴を有する複層接続部40は、リフロー時の熱により低融点層50a、50bの温度が第1の金属の融点以上に上昇した場合にも、外力に抗して第1の電子部品20aと第2の電子部品20bとの接続を維持できる。
【0061】
高融点層60の平均厚みは、特に限定されないが、たとえば、30~100μmとすることができ、40~90μmとすることが好ましい。高融点層60を所定の値より厚くすることにより、複層接続部40がリフロー時の熱に適切に耐えることができ、高融点層60を所定の値より薄くすることにより、応力による高融点層60の脆化の進行により複層接続部40の接続強度が低下する問題を効果的に抑制できる。
【0062】
また、高融点層60の平均厚みを、低融点層50a、50bの平均厚みより厚くすることも、複層接続部40がリフロー時の熱に適切に耐えることができるようにする観点から好ましい。
【0063】
図1に示す電子部品構造体10は、第1の電子部品20aおよび第2の電子部品20bを所定の製法等により準備したのち、第1の電子部品20aと第2の電子部品20bの間に高融点層60および低融点層50a、50bを形成し、複層接続部40により第1の電子部品20aと第2の電子部品20bを接続することにより製造することができる。
【0064】
図2に示すような複層接続部40は、たとえば、中央部65が薄く周辺部66、67が厚い凹レンズ型の高融点層60を第2の金属材料などで形成したのち、高融点層60の両側に低融点層50a、50bを形成する。その後、準備した第1の電子部品20aおよび第2の電子部品20bに対して、3層構造にプリフォームされた高融点層60および低融点層50a、50bを配置し、低融点層50a、50bを再溶融および固化させることで、第1の電子部品20aと低融点層50a、第2の電子部品20bと低融点層50bとをそれぞれ接続する。このようにして、
図2に示すような複層接続部40を形成し、
図1に示すような電子部品構造体10を得ることができる。
【0065】
ただし、電子部品構造体10の製造方法としては、上述したように高融点層60および低融点層50a、50bが予め形成された(プリフォームされた)接合部材を用いる方法のみには限定されない。たとえば、電子部品構造体10は、予め高融点層60および低融点層50a、50bが形成されていない接合材料を用いて、電子部品20a、20bの接続に伴う一連の加熱・冷却プロセス中に、高融点層60および低融点層50a、50bが形成される方法を用いて製造してもよい。他の実施形態に係る電子部品構造体の製造方法についても同様である。
【0066】
上述した電子部品構造体10は、複数の電子部品20a、20bが、低融点層50a、50bと高融点層60が重なって構成される複層接続部40により接続されている。このような複層接続部40は、主に融点の高い高融点層60の働きによりリフロー時の熱に耐えて電子部品20a、20bの接続を好適に維持することができるとともに、主に柔軟で靭性に富む低融点層50a、50bの働きにより、応力によって微小なクラックや剥離等が生じて複層接続部40の脆化が進む問題を好適に防止することができる。
【0067】
第2実施形態
図3は、第2実施形態に係る電子部品構造体110を示す概略断面図である。
図3に示すように、電子部品構造体110は、第1の電子部品20aと、一対の金属板材130a、130bと、第1の電子部品20aと金属板材130a、130bとを接続する複層接続部140とを有する。電子部品構造体110に関しては、第1実施形態に係る電子部品構造体10との相違点を中心に説明を行い、電子部品構造体10との共通点については説明を省略する。
【0068】
図3に示すように、電子部品構造体110は、第1の電子部品20aと1対の金属板材130a、130bとが複層接続部140を介して一体化されている。第1の電子部品20aは、
図1に示す第1の電子部品20aと同様である。複層接続部140は、
図1に示す複層接続部40と同様に、第1の電子部品20aと1対の金属板材130a、130bとを電気的に接続する導電経路にもなっている。
【0069】
電子部品構造体110は、2つの複層接続部140を有しており、一方は第1の電子部品20aの一方の端子電極26と金属板材130aとを接続しており、他方は第1の電子部品20aの他方の端子電極26と金属板材130bとを接続している。金属板材130a、130bは、例えばCuまたはCu合金などの良導体金属で構成される。電子部品構造体110は、たとえば、
図3に示すような姿勢で、一対の金属板材130a、130bを実装基板に接触させたのち、リフロー接合することにより実装される。
【0070】
図3に示す複層接続部140は、低融点層150と、高融点層160とが重なって構成される。複層接続部140における低融点層150と高融点層160の積層方向は、第1の電子部品20aと金属板材130a、130bの接続方向と平行である水平方向である。
【0071】
複層接続部140は、低融点層150と、高融点層160が各1層ずつ重なった2層の積層構造を有する。低融点層150は、第1の電子部品20aの端子電極26と高融点層160とを接続する。低融点層150が含む第1の金属材料やその融点、低融点層150の厚みなどについては、第1実施形態で説明した低融点層50a、50bと同様である。
【0072】
高融点層160は、低融点層150と金属板材130a、130bとを接続する。高融点層160が含む第1の金属材料、第2の金属材料および第3の金属材料やそれらの比率、第2の金属材料の融点や、高融点層160の厚みや、
図2に示すような高融点層160の内部組織については、第1実施形態で説明した高融点層60と同様である。
【0073】
図3に示すように、複層接続部140の高融点層160は、複層接続部の積層方向(水平方向)に直交する第1の方向D11(上下方向)に関して中央に配置される中央部165と、第1の方向D11に沿って中央部165を挟むように中央部165の両側に配置されており中央部165より厚みが厚い周辺部166、167を有する。また、高融点層160に接触する低融点層150は、中央部165を挟む一方の周辺部166から、中央部165を経由して他方の周辺部167まで、高融点層160に対して連続的に接している。
【0074】
図3に示すように、高融点層160の片側の湾曲面に低融点層150が形成される複層接続部140も、
図2に示すように高融点層60の両側の湾曲面に低融点層50a、50bが形成される複層接続部40と同様の効果を奏する。
【0075】
その他、第2実施形態に係る電子部品構造体110は、電子部品構造体10との共通の特徴については、電子部品構造体10と同様の効果を奏する。
【0076】
実施例
以下、実施例を挙げてさらに本開示に係る電子部品構造体について詳細に説明する。ただし、実施例で記載する条件などは一例にすぎず、電子部品構造体の技術的範囲は、特定の実施例の記載のみに限定されるものではない。
【0077】
<評価1>
以下の試料01~試料08、試料15および試料16を作製し、後述する固着強度試験および落下試験(230℃)を実施した。
(試料01)
図1および
図2に示す第1実施形態に示す電子部品構造体10の一実施例である試料01を作製した。具体的には、第1および第2の電子部品20a、20bとして、4.5×3.2×2.2mmのチップコンデンサを準備し、2つのチップコンデンサを2つの低融点層50a、50bが1つの高融点層60を挟む3層の複層接続部40で接続し、
図1に示すような電子部品構造体10である試料01を作製した。低融点層50a、50bは第1の金属材料としてSnを含み、第1の金属材料の相で構成されていた。高融点層60は、第1の金属材料としてSn、第2の金属材料として金属間化合物であるCu
6Sn
5、第3の金属材料としてCuを含み、
図2に示すように、高融点層60には第1領域61、第2領域62および第3領域63が形成されていた。顕微鏡下の面積比率で、第1領域61(Sn)/第2領域62(Cu
6Sn
5)は、0.71であった。高融点層60の中央部65の最大厚みは63μmであり、周辺部66、67の最大厚みは109μmであり、中央部65と周辺部66、67の厚み差は46μmであった。
【0078】
(試料02)
3層の複層接続部40に換えて、試料01における高融点層60と同様の1層のみの接続部で2つのチップコンデンサを接続し、試料02を作製した。接続部以外の部分は、試料01と同様である。
(試料03)
3層の複層接続部40に換えて、試料1における低融点層50aと同様の1層のみの接続部で2つのチップコンデンサを接続し、試料3を作製した。接続部以外の部分は、試料1と同様である。
【0079】
(試料04)
図3に示す第2実施形態に示す電子部品構造体110の一実施例である試料04を作製した。具体的には、第1の電子部品20aとして、4.5×3.2×2.2mmのチップコンデンサを準備し、2枚の金属板材130a、130bとチップコンデンサとを、1つの低融点層150と1つの高融点層160が重なる2層の複層接続部140で接続し、
図3に示すような電子部品構造体110である試料04を作製した。低融点層150は第1の金属材料としてSnを含み、Snの単相で構成されていた。高融点層160は、第1の金属材料としてSn、第2の金属材料として金属間化合物であるCu
6Sn
5、第3の金属材料としてCuを含み、
図2に示す高融点層60と同様に、高融点層160には第1~第3金属材料による第1~第3領域が形成されていた。
【0080】
(試料05)
2層の複層接続部140に換えて、試料04における高融点層160と同様の1層のみの接続部でチップコンデンサと金属板材130a、130bを接続し、試料05を作製した。接続部以外の部分は、試料04と同様である。
(試料06)
2層の複層接続部140に換えて、試料04における低融点層50aと同様の1層のみの接続部で2つのチップコンデンサを接続し、試料06を作製した。接続部以外の部分は、試料01と同様である。
【0081】
(試料07)
試料01における高融点層60を、第2の金属材料であるCu6Sn5で構成したことを除き、試料01と同様に2つのチップコンデンサを接続し、試料07を作製した。
(試料08)
試料01における高融点層60を、第1の金属材料であるSnと第2の金属材料であるCu6Sn5で構成したことを除き、試料01と同様に2つのチップコンデンサを接続し、試料07を作製した。
【0082】
(試料15)
試料01における高融点層60に含まれる第2の金属材料としての金属間化合物を、Cu6Sn5からCu3Snに換えたことを除き、試料01と同様に2つのチップコンデンサを接続し、試料15を作製した。
(試料16)
試料01における高融点層60に含まれる第2の金属材料としての金属間化合物を、Cu6Sn5から(Cu,Ni)6Sn5に換えたことを除き、試料01と同様に2つのチップコンデンサを接続し、試料16を作製した。
【0083】
(固着強度試験)
準備した各試料を、プリント基板に表面実装したのち、-55/125℃の熱衝撃試験を240サイクル行う。試料の表面実装は、Sn-Ag-Cuのクリームはんだを250μmのメタルマスクを使用してプリント基板に塗布して行った。熱衝撃後の実装試料に対して、30mm/minの速度で故障するまで治具をあて続け、故障に至った際の力を測定した。試料01~試料08、試料15、試料16について、10サンプルずつ試験し(n=10)、平均値を算出した。結果を表1に示す。なお、120N以上をA評価(非常に良好)、100N以上をB評価(良好)、100N未満をC評価(不十分)とした。
【0084】
(落下試験(230℃))
治具を用いて試料を所定の高さに保持した後、一方の電子部品または金属板材に対して、治具に保持される他方の電子部品から外れて落下する方向の荷重(15gの重り)をかけて、高温環境(230℃)下に3分間放置する。試料01~試料08、試料15、試料16について、10サンプルずつ試験し(n=10)、放置後に一方の電子部品または金属板材が荷重により落下した試料の数を算出した。結果を表1に示す。なお、10サンプル全てが落下しなかったものをA評価(非常に良好)、1サンプル以上落下したものをC評価(不十分)とした。
【0085】
【0086】
(評価1の総合評価)
表1に示すように、低融点層と高融点層を積層した複層接続部で接続した試料01、試料04、試料07、試料08、試料15、試料16については、固着強度試験と落下試験(230℃)の両方において、良好な結果となった。これらの試料の複層接続部は、リフロー時に想定される熱に耐えて電子部品の接続を維持可能であり(落下試験)、かつ、熱衝撃試験で生じた応力によって複層接続部に微小なクラックが生じて脆化が進む問題を防止できたと評価できる(固着強度試験)。
【0087】
また、高融点層が、第2の金属材料である金属間化合物に加えて、第1の金属材料であるSnを含む試料01、試料04、試料08、試料15、試料16については、固着強度試験の結果が非常に良好であり、熱衝撃による複層接続部の脆化をより好適に防止できると評価できる。
【0088】
一方、金属間化合物を含む高融点層のみの1層で構成される接続部を有する試料02および試料05は、固着強度試験の結果が不十分であり、熱衝撃試験で生じた応力によって接続部の脆化が進行することが確認できた。また、Sn相の低融点層のみの1層で構成される接続部を有する試料03および試料06は、落下試験(230℃)の結果が不十分であり、接続部が表面実装時の熱により溶融して接続が解除されるリスクがあることが確認できた。
【0089】
<評価2>
上述の試料01と、以下の試料09および試料10を作製し、上述の固着強度試験および落下試験(230℃)と、後述の落下試験(250℃)を実施した。
【0090】
(試料09)
試料09は、
図2に示す高融点層60の中央部65の最大厚みを55μmとし、周辺部66、67の最大厚みは72μmとし、中央部65と周辺部66、67の厚み差を17μmとしたことを除き、試料01と同様である。
(試料10)
試料10は、
図2に示す高融点層60の中央部65の最大厚みを67μmとし、周辺部66、67の最大厚みを88μmとし、中央部65と周辺部66、67の厚み差を21μmとしたことを除き、試料01と同様である。
【0091】
(落下試験(250℃))
試料を放置する温度を250℃としたことを除き、落下試験(230℃)と同様の評価を行った。結果を表2に示す。なお、10サンプル全てが落下しなかったものをA評価(非常に良好)、1サンプルまたは2サンプルの落下であったものをB評価(良好)、3サンプル以上落下したものをC評価(不十分)とした。
【0092】
【0093】
(評価2の総合評価)
厚み差の違いにかかわらず、試料01、試料09、試料10のいずれについても、固着強度試験、落下試験(230℃)、落下試験(250℃)において、良好な結果となった。また、特に厚み差が大きい(18μm以上である)試料10、試料01については、厚み差が相対的に小さい試料09に比べて、落下試験(250℃)の結果がより良好であった。これらの試料の複層接続部は、リフロー時に想定される熱に耐えて電子部品の接続を維持可能であり(落下試験230℃)、かつ、熱衝撃試験で生じた応力によって複層接続部に微小なクラックが生じて脆化が進む問題を防止できたと評価できる(固着強度試験)。また、高融点層60の中央部65と周辺部66、67との厚み差が大きい試料10、試料01は、より高温での表面実装時に生じる熱に耐えて電子部品の接続を維持可能であると評価できる(落下試験250℃)。
【0094】
<評価3>
上述の試料01と、以下の試料11~試料14を作製し、固着強度試験、落下試験(230℃)および落下試験(250℃)を実施した。
【0095】
(試料12~試料14)
試料12~試料14は、高融点層における顕微鏡下の面積比率で算出される第1領域(Sn)/第2領域(Cu6Sn5)の値が、それぞれ0.38、0.42、0.79、0.85であった。試料12~試料14は、第1領域61(Sn)/第2領域62(Cu6Sn5)の値を除く特徴は、試料01と同様である。結果を表3に示す。
【0096】
【0097】
(評価3の総合評価)
高融点層における第1領域(Sn)/第2領域(Cu6Sn5)の値にかかわらず、試料01、試料12~試料14のいずれについても、固着強度試験、落下試験(230℃)、落下試験(250℃)において、良好な結果となった。ただし、第1領域(Sn)/第2領域(Cu6Sn5)の値が最も小さい試料11は、他に比べて、固着強度試験の結果がやや劣っていた。このような結果は、高融点層が第1領域(Sn)を所定の比率(0.39)以上含むことで、複層接続部の脆化の進行を、より効果的に防止できると評価できる。
【0098】
また、第1領域(Sn)/第2領域(Cu6Sn5)の値が最も大きい試料14は、他に比べて、落下試験(250℃)の結果がやや劣っていた。このような結果は、高融点層に含まれる第1領域(Sn)を所定の比率(0.84)以下とすることにより、複層接続部の耐熱性を向上させることができると評価できる。
【0099】
以上、実施形態や実施例等を挙げて本開示に係る電子部品構造体の特徴を説明してきたが、電子部品構造体は、これらの実施形態や実施例のみに限定されるものではなく、他の実施形態や変形例を数多く含むことは言うまでもない。たとえば、電子部品構造体が有する電子部品の数は、実施形態に示される1個または2個に限定されず、3個以上の電子部品を複層接続部により接続するものも、本開示の電子部品構造体に含まれる。
【0100】
また、電子部品構造体に含まれる電子部品としては、コンデンサのみには限定されず、インダクタやバリスタなどであってもよく、これらの組み合わせであってもよい。
【符号の説明】
【0101】
10、110…電子部品構造体
20a…第1の電子部品
20b…第2の電子部品
21…素体
26…端子電極
26a…焼結層
26b…表面層
40、140…複層接続部
50a、50b、150…低融点層
60、160…高融点層
61…第1領域
62…第2領域
63…第3領域
65、165…中央部
66、67、166、167…周辺部
D1、D11…第1の方向
130a、130b…金属板材