(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134981
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】無線装置、制御方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 72/54 20230101AFI20240927BHJP
H04W 72/0457 20230101ALI20240927BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20240927BHJP
H04W 76/15 20180101ALI20240927BHJP
【FI】
H04W72/54 110
H04W72/0457 110
H04W84/12
H04W76/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045454
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】390040187
【氏名又は名称】株式会社バッファロー
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳橋 馨
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA23
5K067EE02
5K067EE10
5K067HH22
5K067JJ02
5K067JJ31
(57)【要約】 (修正有)
【課題】スキャンに伴う通信切断を抑制する無線装置、制御方法及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】無線LANにおいて、アクセスポイント10は、無線端末20と複数のバンドでの同時接続が可能な無線装置であって、各バンドについての混雑情報を取得し(S11)、混雑度がしきい値を超えたスキャン対象のバンドが複数ある場合(S12:Yes)、スキャン対象のバンドのスキャンを順次実行する(S13~S20)ことにより、スキャン実施中のバンド以外での無線接続を可能にする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線端末と複数のバンドでの同時接続が可能な無線装置であって、
少なくとも1つのバンドで接続が可能な状態で、前記少なくとも1つのバンドと異なるバンドの無線チャンネルのスキャンを実行する無線部を備える、
無線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線装置であって、
前記無線部は、前記無線装置が使用可能なバンドのうち、混雑度合いが所定条件を満たすバンドの前記スキャンを実行する、
無線装置。
【請求項3】
請求項2に記載の無線装置であって、
前記無線部は、前記異なるバンドの接続を切断した後に前記異なるバンドの前記スキャンを実行する、
無線装置。
【請求項4】
請求項3に記載の無線装置であって、
前記無線部は、前記混雑度合いが前記所定条件を満たすバンドが複数ある場合、前記混雑度合いが前記所定条件を満たすバンドの前記スキャンを順次実行する、
無線装置。
【請求項5】
請求項3に記載の無線装置であって、
前記混雑度合いは、TXOP(Transmission Opportunity)に基づく情報である、
無線装置。
【請求項6】
請求項3に記載の無線装置であって、
前記所定条件は、前記複数のバンドでの同時接続を用いて実行中の通信の方式に応じた条件である、
無線装置。
【請求項7】
請求項3に記載の無線装置であって、
前記無線部は、前記異なるバンドの接続を切断する際に、前記異なるバンドに接続中の無線端末に対して、前記異なるバンドの前記スキャンを行うことを通知する、
無線装置。
【請求項8】
請求項3に記載の無線装置であって、
前記無線部は、前記異なるバンドの接続を切断する際に、前記異なるバンドに接続中の無線端末に対して、前記異なるバンドの接続の切断後、時間経過により前記異なるバンドの接続が可能になることを通知する、
無線装置。
【請求項9】
請求項3に記載の無線装置であって、
前記無線部は、前記異なるバンドに接続中の無線端末との通信の方式を所定の通信方式に切り替えた後に前記異なるバンドの前記スキャンを実行する、
無線装置。
【請求項10】
請求項3に記載の無線装置であって、
前記無線端末とネットワークの間のデータ通信の中継を行うアクセスポイントである、
無線装置。
【請求項11】
無線端末と複数のバンドでの同時接続が可能な無線装置の制御方法であって、
前記無線装置のプロセッサが、
少なくとも1つのバンドで接続が可能な状態で、前記少なくとも1つのバンドと異なるバンドの無線チャンネルのスキャンを実行する、
制御方法。
【請求項12】
無線端末と複数のバンドでの同時接続が可能な無線装置の制御プログラムであって、
前記無線装置のプロセッサに、
少なくとも1つのバンドで接続が可能な状態で、前記少なくとも1つのバンドと異なるバンドの無線チャンネルのスキャンを実行する、
処理を実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線装置、制御方法、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線LAN(Local Area Network)においては、2.4GHz、5GHz、6GHzといった周波数帯域を用いた無線通信が行われる。無線LANの規格の1つであるWi-Fi 7(登録商標)においては、複数の周波数帯域のチャンネルを同時に用いて無線通信を行うMLO(Multi-Link Operation)が検討されている。
【0003】
また、無線LANにおいては、無線端末は無線通信する基地局を切替える場合、チャンネルスキャンと呼ばれる動作をする技術が知られている。例えば、特許文献1には、基地局と無線通信を行う無線端末であって、チャンネルスキャンの時間を短縮するために、基地局との距離に基づいてチャンネルスキャンを実行する無線端末が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アクセスポイント等の基地局側の無線装置においても、使用中のチャンネルよりも通信品質が良好なチャンネルを検出するためのスキャンを行うことが考えられる。しかしながら、基地局側の無線装置がスキャンを行う際には使用中のチャンネルでの無線通信を停止することになるため、使用中のチャンネルに無線接続している無線端末の無線通信が切断されてしまう場合がある。
【0006】
本発明は、スキャンに伴う通信切断を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示された無線装置は、無線端末と複数のバンドでの同時接続が可能な無線装置であって、少なくとも1つのバンドで接続が可能な状態で、前記少なくとも1つのバンドと異なるバンドの無線チャンネルのスキャンを実行する無線部を備える、ものである。
【0008】
開示された制御方法は、無線端末と複数のバンドでの同時接続が可能な無線装置の制御方法であって、前記無線装置のプロセッサが、少なくとも1つのバンドで接続が可能な状態で、前記少なくとも1つのバンドと異なるバンドの無線チャンネルのスキャンを実行する、ものである。
【0009】
開示された制御プログラムは、無線端末と複数のバンドでの同時接続が可能な無線装置の制御プログラムであって、前記無線装置のプロセッサに、少なくとも1つのバンドで接続が可能な状態で、前記少なくとも1つのバンドと異なるバンドの無線チャンネルのスキャンを実行する、処理を実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スキャンに伴う通信切断を抑制することのできる無線装置、制御方法、及び制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態であるアクセスポイント10の構成を示す図である。
【
図2】無線端末の一例である無線端末20の構成を示す図である。
【
図3】アクセスポイント10のプロセッサ11による処理の一例を示す図である。
【
図4】バンドのスキャンによる無線接続の変化の一例を示す図(その1)である。
【
図5】バンドのスキャンによる無線接続の変化の一例を示す図(その2)である。
【
図6】複数のバンドの順次スキャンによる無線接続の変化の一例を示す図である。
【
図7】MLOの高速モードでの通信の一例を示す図である。
【
図8】MLOの高品質モードでの通信の一例を示す図である。
【
図9】通信方式に応じたスキャン対象のバンドの判定を含む、プロセッサ11による処理の一例を示す図である。
【
図10】スキャン前の通信方式の切り替えを含む、プロセッサ11による処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
(実施の形態)
<アクセスポイント10の構成>
図1は、本発明の一実施形態であるアクセスポイント10の構成を示す図である。
図1に示すアクセスポイント10は、Wi-Fi 7等の無線LANのアクセスポイントであり、本発明の無線装置の一例である。
【0014】
アクセスポイント10は、プロセッサ11と、メインメモリ12と、補助メモリ13と、通信用無線I/F14a~14cと、有線I/F15,16と、を備える。
【0015】
プロセッサ11は、信号処理を行う回路であり、例えばアクセスポイント10の全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit)である。なお、プロセッサ11は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やDSP(Digital Signal Processor)などの他のデジタル回路により実現されてもよい。また、プロセッサ11は、複数のデジタル回路を組み合わせて実現されてもよい。
【0016】
メインメモリ12は、例えばRAM(Random Access Memory)である。メインメモリ12は、プロセッサ11のワークエリアとして使用される。補助メモリ13は、例えば磁気ディスク、光ディスク、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリである。補助メモリ13には、アクセスポイント10を動作させる各種のプログラムが記憶されている。補助メモリ13に記憶されたプログラムは、メインメモリ12にロードされてプロセッサ11によって実行される。
【0017】
通信用無線I/F14a~14cは、無線端末との間で無線通信を行う通信インターフェースである。通信用無線I/F14aは、2.4GHzのバンド(周波数帯域)を使用して無線通信を行う。通信用無線I/F14bは、5GHzのバンドを使用して無線通信を行う。通信用無線I/F14cは、6GHzのバンドを使用して無線通信を行う。アクセスポイント10は、通信用無線I/F14a~14cを用いて、無線端末との間で、複数のバンドでの同時接続(例えばMLO)が可能である。プロセッサ11及び通信用無線I/F14a~14cは、本発明における無線部の一例である。
【0018】
有線I/F15は、インターネット等のWAN(Wide Area Network)に接続し、WANを介して他の通信装置との通信を行う。有線I/F16は、LANに接続し、LANを介して他の通信装置との通信を行う。
【0019】
例えば、アクセスポイント10は、通信用無線I/F14a~14cにより無線端末と通信を行い、有線I/F15によりWAN側の通信装置と通信を行うことで、無線端末とWAN側の通信装置との間のデータ通信を中継する。また、アクセスポイント10は、有線I/F16によりLAN側の通信端末と通信を行い、有線I/F15によりWAN側の通信装置と通信を行うことで、LAN側の通信端末とWAN側の通信装置との間のデータ通信を中継する。
【0020】
<無線端末20の構成>
図2は、無線端末の一例である無線端末20の構成を示す図である。
図2に示す無線端末20は、Wi-Fi 7等の無線LANの無線通信に対応した無線端末である。無線端末20は、プロセッサ21と、メインメモリ22と、補助メモリ23と、通信用無線I/F24a~24cと、を備える。
【0021】
プロセッサ21は、信号処理を行う回路であり、例えば無線端末20の全体の制御を司るCPUである。なお、プロセッサ21は、FPGAやDSPなどの他のデジタル回路により実現されてもよい。また、プロセッサ21は、複数のデジタル回路を組み合わせて実現されてもよい。
【0022】
メインメモリ22は、例えばRAMである。メインメモリ22は、プロセッサ21のワークエリアとして使用される。補助メモリ23は、例えば磁気ディスク、光ディスク、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリである。補助メモリ23には、無線端末20を動作させる各種のプログラムが記憶されている。補助メモリ23に記憶されたプログラムは、メインメモリ22にロードされてプロセッサ21によって実行される。
【0023】
通信用無線I/F24a~24cは、無線端末との間で無線通信を行う通信インターフェースである。通信用無線I/F24aは、2.4GHzの周波数帯域を使用して無線通信を行うことが可能である。通信用無線I/F24bは、5GHzの周波数帯域を使用して無線通信を行うことが可能である。通信用無線I/F24cは、6GHzの周波数帯域を使用して無線通信を行うことが可能である。
【0024】
<アクセスポイント10のプロセッサ11による処理>
図3は、アクセスポイント10のプロセッサ11による処理の一例を示す図である。プロセッサ11は、例えば
図3に示す処理を繰り返し実行する。
【0025】
まず、プロセッサ11は、アクセスポイント10が無線通信に使用している各バンド(例えば2.4GHz、5GHz、及び6GHz)について、そのバンドで使用中のチャンネルの混雑度合いを示す混雑度情報を取得する(ステップS11)。
【0026】
チャンネルの混雑度合いとは、アクセスポイント10の通信エリアにおいて、アクセスポイント10を含む無線装置がそのチャンネルを使用している度合い(例えば時間占有率、通信量など)である。チャンネルの混雑度合いが高いほど、そのチャンネルでの無線通信品質は低下する。混雑度情報は、一例としてはTXOP(Transmission Opportunity)の値である。
【0027】
次に、プロセッサ11は、ステップS11によって取得した混雑度情報に基づいて、アクセスポイント10が無線通信に使用している各バンドのうち、スキャン対象のバンドがあるか否かを判断する(ステップS12)。例えば、プロセッサ11は、混雑度情報が示す混雑度合いが閾値を超えたバンドをスキャン対象のバンドと判定する。スキャン対象のバンドがない場合(ステップS12:No)は、プロセッサ11は、一連の処理を終了する。
【0028】
ステップS12において、スキャン対象のバンドがある場合(ステップS12:Yes)は、プロセッサ11は、iを1に設定(初期化)する(ステップS13)。iは、スキャン対象のバンドのインデックスであり、1~Nの値をとる。Nは、スキャン対象のバンドの数である。
【0029】
次に、プロセッサ11は、i番目のスキャン対象のバンドであるスキャン対象のバンドiに接続中の無線端末(例えば無線端末20)があるか否かを判断する(ステップS14)。接続中の無線端末がない場合(ステップS14:No)は、プロセッサ11はステップS16へ移行する。
【0030】
ステップS14において、スキャン対象のバンドiに接続中の無線端末がある場合(ステップS14:Yes)は、プロセッサ11は、スキャン対象のバンドiの切断処理を行う(ステップS15)。例えば、プロセッサ11は、スキャン対象のバンドiに接続中の無線端末に対して、スキャン対象のバンドiでの無線接続の切断を指示する切断指示信号を送信する。
【0031】
次に、プロセッサ11は、スキャン対象のバンドiにおいてスキャンを実行する(ステップS16)。バンドのスキャンは、そのバンドの各チャンネルの電波を受信する動作である。次に、プロセッサ11は、スキャン対象のバンドiにおいて、使用中のチャンネルよりも通信品質が良好な他のチャンネルがあるか否かを判断する(ステップS17)。通信品質が良好な他のチャンネルがない場合(ステップS17:No)は、プロセッサ11は、ステップS19へ移行する。この場合、アクセスポイント10は、スキャン対象のバンドiにおいてスキャン前に使用していたチャンネルでの無線通信を再開する。
【0032】
ステップS17において、通信品質が良好な他のチャンネルがある場合(ステップS17:Yes)は、プロセッサ11は、スキャン対象のバンドiにおいて使用するチャンネルを、その他のチャンネルに変更するチャンネル移行を実行する(ステップS18)。この場合、アクセスポイント10は、スキャン対象のバンドiにおいて、変更後のチャンネルでの無線通信を開始する。
【0033】
次に、プロセッサ11は、iの値がNと等しいか否かを判断する(ステップS19)。すなわち、プロセッサ11は、スキャン対象のバンドの全てについてスキャンを実行したか否かを判断する。iの値がNと等しくない場合(ステップS19:No)は、スキャン対象のバンドのうちスキャンを未実行のバンドが存在する状況であるため、プロセッサ11は、iをインクリメントし(ステップS20)、ステップS14へ戻る。
【0034】
ステップS19において、iの値がNと等しい場合(ステップS19:Yes)は、プロセッサ11は、スキャン対象のバンドの全てについてスキャンを実行した状況であるため、プロセッサ11は、一連の処理を終了する。
【0035】
なお、ステップS15において、アクセスポイント10は、スキャン対象のバンドiの接続を切断する際に、スキャン対象のバンドiに接続中の無線端末に対して、スキャン対象のバンドiのスキャンを行うこと、あるいは、スキャン対象のバンドiの接続の切断後、時間経過によりスキャン対象のバンドiの接続が可能になることを通知してもよい。これにより、スキャン対象のバンドiに接続していた無線端末は、スキャン対象のバンドiに接続できない状態が一時的なものであることを認識できるため、スキャン対象のバンドiの接続が切断された後に、時間をおいてスキャン対象のバンドiに接続のスキャンを行い、スキャン後の同バンドに円滑に再接続することが可能になる。
【0036】
<バンドのスキャンによる無線接続の変化>
図4及び
図5は、バンドのスキャンによる無線接続の変化の一例を示す図である。例えば、
図4に示すように、アクセスポイント10と無線端末20は、MLOにより、2.4GHz、5GHz、及び6GHzで同時に無線接続し、無線通信を行っていたとする。
【0037】
例えば2.4GHzの混雑度合いが高くなり、アクセスポイント10が2.4GHzのスキャンを行ったとする。この場合、
図5に示すように、アクセスポイント10と無線端末20との間の2.4GHzでの無線接続は切断され、アクセスポイント10と無線端末20は、5GHz及び6GHzで同時に無線接続し、無線通信を行う状態となる。
【0038】
その後、アクセスポイント10が、2.4GHzのスキャンにより選択した通信品質が良好な2.4GHzのチャンネルでの接続が可能な状態に移行する。この場合、無線端末20は、例えば、2.4GHzでアクセスポイント10と再度無線接続する。これにより、アクセスポイント10と無線端末20は、2.4GHz、5GHz、及び6GHzで同時に無線接続し、無線通信を行う
図4の状態に戻る。
【0039】
<複数のバンドの順次スキャンによる無線接続の変化>
図6は、複数のバンドの順次スキャンによる無線接続の変化の一例を示す図である。
図6において、横軸は時間を示す。まず、アクセスポイント10と無線端末20は、
図4の例と同様に、2.4GHz、5GHz、及び6GHzで同時に無線接続し、無線通信を行っていたとする。
【0040】
時刻t1において、アクセスポイント10は、2.4GHz、5GHz、及び6GHzの各混雑度情報に基づいて、2.4GHz、5GHz、及び6GHzの全てをスキャン対象のバンドと判定したとする。この場合、例えば、アクセスポイント10は、まず2.4GHzの切断処理を行い、2.4GHzのスキャンを開始する。無線端末20は、2.4GHzの無線接続が切断されたため、5GHz及び6GHzでアクセスポイント10と無線接続した状態となり、アクセスポイント10との間で無線通信を継続する。
【0041】
時刻t2において、アクセスポイント10による2.4GHzのスキャンが完了したとする。アクセスポイント10は、2.4GHzのスキャンにより選択した通信品質が良好な2.4GHzのチャンネルでの無線通信を再開する。また、アクセスポイント10は、5GHzの切断処理を行い、5GHzのスキャンを開始する。無線端末20は、2.4GHzでの無線通信が再開され、5GHzの無線接続が切断されたため、2.4GHz及び6GHzでアクセスポイント10と無線接続した状態となり、アクセスポイント10との間で無線通信を継続する。
【0042】
時刻t3において、アクセスポイント10による5GHzのスキャンが完了したとする。アクセスポイント10は、5GHzのスキャンにより選択した通信品質が良好な5GHzのチャンネルでの無線通信を再開する。また、アクセスポイント10は、6GHzの切断処理を行い、6GHzのスキャンを開始する。無線端末20は、5GHzでの無線通信が再開され、6GHzの無線接続が切断されたため、2.4GHz及び5GHzでアクセスポイント10と無線接続した状態となり、アクセスポイント10との間で無線通信を継続する。
【0043】
このように、アクセスポイント10は、アクセスポイント10が使用可能なバンドのうち、スキャン対象のバンドが複数ある場合、それらのスキャン対象のバンドのスキャンを順次実行する。順次実行するとは、同時に実行するのではなく1つずつ実行することである。これにより、複数のスキャン対象のバンドのスキャンを同時に実行する構成と比べて、スキャン対象のバンド以外で無線端末がアクセスポイント10と無線接続している可能性を高くし、アクセスポイント10が実行するスキャンに伴う通信切断を抑制することができる。
【0044】
以上説明したように、アクセスポイント10は、無線端末(例えば無線端末20)と複数のバンドでの同時接続が可能であり、少なくとも1つの第1バンドで接続が可能な状態で、他の第2バンド(スキャン対象のバンド)の無線チャンネルのスキャンを実行する。例えば
図4,
図5に示した例では、アクセスポイント10は、5GHz及び6GHzで接続が可能な状態で2.4GHzのスキャンを実行する。
【0045】
これにより、例えば、スキャン対象の第2バンド(例えば2.4GHz)で無線端末が接続していても、その無線端末が第1バンド(例えば5GHz及び6GHz)でも接続していれば、第2バンドのスキャンに伴うアクセスポイント10と無線端末20との間の通信切断を抑制することができる。このため、アクセスポイント10が実行するスキャンに伴う通信切断を抑制することができる。
【0046】
また、アクセスポイント10は、アクセスポイント10が使用可能なバンドのうち、混雑度合いが所定条件を満たすバンド(例えば混雑度合いが閾値を超えたバンド)についてスキャンを実行する。これにより、現在使用しているチャンネルが混雑しているバンドがある場合に、そのバンドの各チャンネルの通信品質を測定し、通信品質が良好なチャンネルへの移行を行うことができる。これにより、通信切断を抑制しつつ、バンド内でのチャンネル切り替えを行って通信品質の向上を図ることができる。
【0047】
また、アクセスポイント10は、第2バンド(スキャン対象のバンド)の接続を切断した後に、第2バンドのスキャンを行う。これにより、第2バンドのスキャンの実行に伴う無線端末の誤動作を抑制することができる。
【0048】
また、アクセスポイント10は、第2バンド(スキャン対象のバンド)の接続を切断する際に、第2バンドに接続中の無線端末に対して、第2バンドのスキャンを行うこと、あるいは、第2バンドの接続の切断後、時間経過により第2バンドの接続が可能になることを通知してもよい。これにより、第2バンドに接続していた無線端末は、第2バンドに接続できない状態が一時的なものであることを認識できるため、第2バンドの切断後に、繰り返し、あるいは時間をおいて、第2バンドへの接続用のスキャンを行い、スキャン後の第2バンドのチャンネルに円滑に再接続することが可能になる。
【0049】
また、アクセスポイント10は、アクセスポイント10が使用可能なバンドのうち、混雑度合いが所定条件を満たすバンド(例えば混雑度合いが閾値を超えたバンド)が複数ある場合、それらのバンドのスキャンを順次実行する。これにより、同時に複数のバンドのスキャンを実行する構成と比べて、スキャン対象のバンド以外で無線端末がアクセスポイント10と無線接続している可能性を高くし、アクセスポイント10が実行するスキャンに伴う通信切断を抑制することができる。
【0050】
<MLOの高速モードでの通信>
図7は、MLOの高速モードでの通信の一例を示す図である。アクセスポイント10と無線端末20は、例えばMLOの高速モードでの通信が可能である。ここでは、アクセスポイント10から無線端末20へデータ#1,#2,#3,…を送信する場合について説明する。
【0051】
高速モードにおいて、アクセスポイント10は、例えば2.4GHz、5GHz、及び6GHzの3つのバンドにデータ#1,#2,#3,…を振り分けて無線端末20へ送信する。具体的には、アクセスポイント10は、データ#1~#3を2.4GHzで送信し、データ#4~#6を5GHzで送信し、データ#7~#9を6GHzで送信する。また、図示を省略するが、アクセスポイント10は、データ#10~#12を2.4GHzで送信し、データ#13~#15を5GHzで送信し、データ#16~#18を6GHzで送信する。これにより、1つのバンドを使用する場合よりも高速(例えば約3倍の速度)でアクセスポイント10から無線端末20へデータ#1,#2,#3,…を送信することができる。
【0052】
<MLOの高品質モードでの通信>
図8は、MLOの高品質モードでの通信の一例を示す図である。アクセスポイント10と無線端末20は、例えばMLOの高品質モードでの通信が可能である。ここでは、アクセスポイント10から無線端末20へデータ#1,#2,#3,…を送信する場合について説明する。
【0053】
高品質モードにおいて、アクセスポイント10は、例えば2.4GHz、5GHz、及び6GHzの3つのバンドのそれぞれで、データ#1,#2,#3,…を無線端末20へ送信する。これにより、1つのバンドを使用する場合よりも冗長性を持たせてアクセスポイント10から無線端末20へデータ#1,#2,#3,…を送信することができる。
【0054】
<通信方式に応じたスキャン対象のバンドの判定>
図7,
図8に示したように、アクセスポイント10は、高速モードと高品質モードなど、複数の通信方式を切り替えて無線端末(例えば無線端末20)と通信が可能であってもよい。この場合、アクセスポイント10は、接続中の無線端末との間でMLOを用いて実行中の通信の方式に応じて、スキャン対象のバンドの判定を行ってもよい。
【0055】
例えば、高速モードは、高品質モードよりも、使用中の一部のバンドが切断されるとデータの欠落が生じ、再送等の処理が必要になるため、スキャンによる通信への影響が大きいと考えられる。したがって、例えば、アクセスポイント10は、高速モードで通信を行っている無線端末が接続しているバンドについては、スキャン対象となりにくいように判定を行ってもよい。
【0056】
図9は、通信方式に応じたスキャン対象のバンドの判定を含む、プロセッサ11による処理の一例を示す図である。プロセッサ11は、例えば
図9に示す処理を繰り返し実行してもよい。
図9に示すステップS11~S20は、
図3に示したステップS11~S20と同様である。
【0057】
ただし、
図9に示すステップS11において、プロセッサ11は、各バンドについての混雑度情報に加えて、各バンドについての、接続中の無線端末との間でMLOを用いて実行中の通信の方式を示す通信方式情報を取得する。例えば、通信方式情報は、対象のバンドでアクセスポイント10に接続している無線端末のそれぞれについて取得される。
【0058】
また、
図9に示すステップS12において、プロセッサ11は、ステップS11によって取得した混雑度情報及び通信方式情報に基づいてスキャン対象のバンドの判定を行う。例えば、プロセッサ11は、高速モードで通信を行っている無線端末が接続しているバンドについては、高速モードで通信を行っている無線端末が接続していないバンドよりも、混雑度情報が示す混雑度合いと比較する閾値を高く設定する。これにより、高速モードで通信を行っている無線端末が接続しているバンドがスキャン対象となりにくいようにすることができる。
【0059】
また、プロセッサ11は、高速モードで通信を行っている無線端末の数や、高速モードで通信を行っている無線端末が行っている通信の優先度等に応じて、混雑度情報が示す混雑度合いと比較する閾値を設定してもよい。
【0060】
このように、スキャン対象のバンドと判定するための混雑度合いが満たすべき所定条件を、MLO(複数のバンドでの同時接続)を用いて実行中の通信の方式に応じた条件とすることで、スキャンによる通信への影響を考慮して、スキャンを行うことができる。
【0061】
<スキャン前の通信方式の切り替え>
アクセスポイント10は、スキャン対象のバンドに接続中の無線端末との通信の方式を所定の通信方式に切り替えた後にスキャン対象のバンドのスキャンを実行してもよい。
【0062】
図10は、スキャン前の通信方式の切り替えを含む、プロセッサ11による処理の一例を示す図である。プロセッサ11は、例えば
図10に示す処理を繰り返し実行してもよい。
図10に示すステップS11~S20は、
図3に示したステップS11~S20と同様である。
【0063】
ただし、
図9に示すステップS14において、スキャン対象のバンドiに接続中の無線端末がある場合(ステップS14:Yes)は、プロセッサ11は、スキャン対象のバンドiに接続中の無線端末の中に、特定の通信方式で通信を行っている無線端末があるか否かを判断する(ステップS21)。特定の通信方式は、例えば切断による影響が比較的大きい通信方式(例えば高速モード)である。
【0064】
ステップS21において、特定の通信方式で通信を行っている無線端末がない場合(ステップS21:No)は、プロセッサ11は、ステップS15へ移行する。特定の通信方式で通信を行っている無線端末がある場合(ステップS21:Yes)は、プロセッサ11は、スキャン対象のバンドiにおいて特定の通信方式で通信を行っている無線端末の通信方式を、所定の通信方式に切り替える切替処理を実行し(ステップS22)、ステップS15へ移行する。所定の通信方式は、例えば切断による影響が比較的小さい通信方式(例えば高品質モード)である。切替処理は、例えば通信方式の切り替えを指示する切替指示信号をアクセスポイント10が無線端末に送信することによって行われる。
【0065】
このように、第2バンド(スキャン対象のバンド)に接続中の無線端末との通信の方式を所定の通信方式に切り替えた後に第2バンドのスキャンを実行することで、スキャンによる通信への影響を抑制できる状態にしてからスキャンを行うことができる。
【0066】
特定の通信方式(切断による影響が比較的大きい通信方式)及び所定の通信方式(切断による影響が比較的小さい通信方式)がそれぞれ高速モード及び高品質モードである場合について説明したが、特定の通信方式及び所定の通信方式はこれに限らない。例えば、特定の通信方式が非MLO(1つのバンドで通信)であり、所定の通信方式がMLOであってもよい。また、特定の通信方式がMLOにおいて上り伝送と下り伝送を異なるバンドに振り分けて通信を行う方式であり、所定の通信方式がMLOにおいて各バンドで双方向の通信を行う方式であってもよい。
【0067】
また、アクセスポイント10は、
図10に示したステップS22の切替処理によって通信方式を所定の方式に切り替えた無線端末が、スキャン後に再度接続してきた場合は、その無線端末の通信方式を、切替前の特定の通信方式に切り戻す切戻処理を行ってもよい。切戻処理は、例えば通信方式の切り替えを指示する切替指示信号をアクセスポイント10が無線端末に送信することによって行われる。
【0068】
(変形例)
アクセスポイント10が有線I/F16を備える構成について説明したが、アクセスポイント10が有線I/F16を備えない構成としてもよい。
【0069】
アクセスポイント10と無線端末20がWi-Fi 7による無線通信を行う構成について説明したが、アクセスポイント10と無線端末20が無線通信に用いる通信規格はWi-Fi 7に限らず、例えばWi-Fi 7の後継規格等であってもよい。
【0070】
バンドの混雑度情報の一例としてTXOPについて説明したが、バンドの混雑度情報はTXOPに限らない。例えば、バンドの混雑度情報は、そのバンドでアクセスポイント10が行っている無線通信における、ノイズ強度、誤り率、再送率等の通信品質を示す情報であってもよい。
【0071】
また、上述した各実施の形態は、組み合わせて実施することも可能である。
【0072】
(制御プログラムについて)
前述した実施形態で説明した制御方法は、予め用意された制御プログラムをコンピュータで実行することにより実現できる。本制御プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録され、記憶媒体から読み出されることによって実行される。また、本制御プログラムは、フラッシュメモリ等の非一過性の記憶媒体に記憶された形で提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介して提供されてもよい。本制御プログラムを実行するコンピュータは、無線装置に含まれるものであってもよいし、無線装置と通信可能なスマートフォン、タブレット端末、又はパーソナルコンピュータ等の電子機器に含まれるものでもあってもよいし、これら制御装置及び電子機器と通信可能なサーバ装置に含まれるものであってもよい。
【0073】
以上のように本明細書には以下の事項が開示されている。
【0074】
開示された無線装置は、無線端末と複数のバンドでの同時接続が可能な無線装置であって、少なくとも1つのバンドで接続が可能な状態で、前記少なくとも1つのバンドと異なるバンドの無線チャンネルのスキャンを実行する無線部を備えるものである。
【0075】
開示された無線装置は、前記無線部が、前記無線装置が使用可能なバンドのうち、混雑度合いが所定条件を満たすバンドの前記スキャンを実行するものである。
【0076】
開示された無線装置は、前記無線部が、前記異なるバンドの接続を切断した後に前記異なるバンドの前記スキャンを実行するものである。
【0077】
開示された無線装置は、前記無線部が、前記混雑度合いが前記所定条件を満たすバンドが複数ある場合、前記混雑度合いが前記所定条件を満たすバンドの前記スキャンを順次実行するものである。
【0078】
開示された無線装置は、前記混雑度合いが、TXOP(Transmission Opportunity)に基づく情報であるものである。
【0079】
開示された無線装置は、前記所定条件が、前記複数のバンドでの同時接続を用いて実行中の通信の方式に応じた条件であるものである。
【0080】
開示された無線装置は、前記無線部が、前記異なるバンドの接続を切断する際に、前記異なるバンドに接続中の無線端末に対して、前記異なるバンドの前記スキャンを行うことを通知するものである。
【0081】
開示された無線装置は、前記無線部が、前記異なるバンドの接続を切断する際に、前記異なるバンドに接続中の無線端末に対して、前記異なるバンドの接続の切断後、時間経過により前記異なるバンドの接続が可能になることを通知するものである。
【0082】
開示された無線装置は、前記無線部が、前記異なるバンドに接続中の無線端末との通信の方式を所定の通信方式に切り替えた後に前記異なるバンドの前記スキャンを実行するものである。
【0083】
開示された無線装置は、前記無線端末とネットワークの間のデータ通信の中継を行うアクセスポイントであるものである。
【0084】
開示された制御方法は、無線端末と複数のバンドでの同時接続が可能な無線装置の制御方法であって、前記無線装置のプロセッサが、少なくとも1つのバンドで接続が可能な状態で、前記少なくとも1つのバンドと異なるバンドの無線チャンネルのスキャンを実行するものである。
【0085】
開示された制御プログラムは、無線端末と複数のバンドでの同時接続が可能な無線装置の制御プログラムであって、前記無線装置のプロセッサに、少なくとも1つのバンドで接続が可能な状態で、前記少なくとも1つのバンドと異なるバンドの無線チャンネルのスキャンを実行する、処理を実行させるためのものである。
【符号の説明】
【0086】
10 アクセスポイント
11,21 プロセッサ
12,22 メインメモリ
13,23 補助メモリ
14a~14c,24a~24c 通信用無線I/F
15,16 有線I/F
20 無線端末
t1,t2,t3 時刻