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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134985
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/20 20160101AFI20240927BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20240927BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20240927BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20240927BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20240927BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20240927BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240927BHJP
   B60L 50/61 20190101ALI20240927BHJP
【FI】
B60W20/20
B60K6/442 ZHV
B60K6/54
B60W10/08 900
B60W10/26 900
B60L50/16
B60L15/20 J
B60L50/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045460
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】錦織 秀隆
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202BB11
3D202BB19
3D202BB57
3D202CC03
3D202CC08
3D202CC22
3D202CC23
3D202CC24
3D202CC55
3D202DD24
3D202DD29
3D202DD42
3D202DD45
3D202FF04
3D202FF12
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125CA09
5H125DD06
5H125EE05
5H125EE09
5H125EE27
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】モータとクラッチとのサイズを大きくすることなく、モータとクラッチとの過熱を抑制することができるハイブリッド車両の制御装置を提供すること。
【解決手段】発電モータ9の温度、駆動モータ11の温度、クラッチ4の温度、駆動モータ11に対する要求トルク及びバッテリ8の充電状態に基づいて、第1パワーフロー、第2パワーフロー及び第3パワーフローのなかから駆動輪7に動力を伝達するパワーフローを選択し、選択したパワーフローから伝達された動力で車両1を発進又は極低速走行させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
前記内燃機関の動力によって発電する発電モータと、
駆動輪に走行用の駆動力を発生可能な駆動モータと、
前記内燃機関と前記駆動輪との動力伝達経路に設けられて前記内燃機関と前記駆動輪とを接続又は切断するクラッチと、
前記駆動モータに供給する電力を蓄電するバッテリと、
を備えたハイブリッド車両の制御装置であって、
前記ハイブリッド車両は、
前記バッテリに蓄電された電力を前記駆動モータに供給することにより前記駆動モータによって発生された駆動力を前記駆動輪に伝達する第1パワーフローと、
前記内燃機関を駆動して前記発電モータに発電させ、前記発電モータによって発電された電力を前記駆動モータに供給することにより前記駆動モータによって発生された駆動力を前記駆動輪に伝達する第2パワーフローと、
前記内燃機関を駆動して前記クラッチを介して前記内燃機関が発生した動力を前記駆動輪に伝達する第3パワーフローと、
を有し、
前記ハイブリッド車両の制御装置は、前記発電モータの温度、前記駆動モータの温度、前記クラッチの温度、前記駆動モータに対する要求トルク及び前記バッテリの充電状態に基づいて、前記第1パワーフロー、前記第2パワーフロー及び前記第3パワーフローのなかから前記駆動輪に動力を伝達するパワーフローを選択し、選択したパワーフローから伝達された動力で前記ハイブリッド車両を発進又は極低速走行させる制御部を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記発電モータの温度及び前記駆動モータの温度が通常範囲内で、かつ前記クラッチの温度が高温範囲内で、かつ前記駆動モータに対する要求トルクが許容トルク以下である場合、前記バッテリの充電状態に応じて前記第1パワーフローと前記第2パワーフローとの何れか一方を選択することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記発電モータの温度及び前記駆動モータの温度が通常範囲内で、かつ前記クラッチの温度が高温範囲内で、かつ前記駆動モータに対する要求トルクが前記許容トルク以下である場合、前記バッテリの充電状態が高充電状態である場合には前記第1パワーフローを選択し、前記バッテリの充電状態が高充電状態でない場合には前記第2パワーフローを選択することを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記発電モータの温度及び前記駆動モータの温度が通常範囲内で、かつ前記クラッチの温度が高温範囲内で、かつ前記駆動モータに対する要求トルクが許容トルクを超える場合、前記第2パワーフローと前記第3パワーフローとを選択することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記発電モータの温度及び前記駆動モータの温度が通常範囲内で、かつ前記クラッチの温度が高温範囲内で、かつ前記駆動モータに対する要求トルクが許容トルクを超える場合、前記駆動モータに前記許容トルクを出力させることによって発生する駆動力を前記第2パワーフローに伝達させ、前記要求トルクから前記許容トルクを減じた不足トルクに応じた駆動力を前記第3パワーフローに伝達させることを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記発電モータの温度及び前記駆動モータの温度が通常範囲内で、かつ前記クラッチの温度が過熱範囲内で、かつ前記駆動モータに対する要求トルクが許容トルクを超える場合、前記バッテリの充電状態に応じて前記第1パワーフローと前記第2パワーフローとの何れか一方を選択することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記発電モータの温度又は前記駆動モータの温度が過熱範囲内で、かつ前記クラッチの温度が通常範囲内又は高温範囲内である場合、前記第3パワーフローを選択することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記発電モータの温度及び前記駆動モータの温度が通常範囲内で、かつ前記クラッチの温度が通常範囲内で、かつ前記駆動モータに対する要求トルクが許容トルク以下で、かつ前記バッテリの充電状態が中間充電状態である場合、前記第2パワーフローの総合ロスと前記第3パワーフローの総合ロスとを算出し、前記第2パワーフロー及び前記第3パワーフローのうち総合ロスが小さい方のパワーフローを選択することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記発電モータの温度及び前記駆動モータの温度が通常範囲内で、かつ前記クラッチの温度が過熱範囲内で、かつ前記駆動モータに対する要求トルクが許容トルクを超える場合、前記クラッチを締結状態にし、前記クラッチが前記締結状態を維持できる駆動力を前記第3パワーフローに伝達させ、前記要求トルクから不足するトルクに応じた駆動力を前記第1パワーフローに伝達させることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記クラッチの温度が高温範囲内である場合、前記バッテリの充電状態が高充電状態になるまで前記発電モータに発電させることを特徴とする請求項9に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関と、電動機として機能するM/G(Motor/Generator)と、発電手段である発電機と、変速機と、内燃機関と変速機との間に介在するクラッチとを備えた車両が特許文献1に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-324730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で提案されたような従来の車両の発進方法としては、M/G(以下、「モータ」という)を駆動して発進する方法と、内燃機関(以下、単に「エンジン」という)を始動しクラッチを係合して発進する方法とがある。
【0005】
例えば、従来の車両は、バッテリの充電量が十分であり、要求パワーまたは要求トルクが閾値以下であれば、モータを駆動して発進し、それ以外であれば、エンジンを始動しクラッチを係合して発進する。
【0006】
また、従来の車両は、エンジンの駆動力で極低速走行を行う場合には、クラッチを完全係合させることができないため、クラッチを半クラッチ状態(クラッチを滑らせた状態)で走行する。
【0007】
モータは、最大トルク付近で連続して使用されると過熱(オーバーヒート)しやすい。クラッチは、半クラッチ状態で大きいパワーを伝達し続けると過熱しやすい。このため、従来の車両は、要求パワーに対して十分な熱容量を持ったモータと、要求パワーに対して十分な熱容量を持ったクラッチとを設けることによって、モータとクラッチとの過熱を抑制していた。
【0008】
しかしながら、要求パワーに対して十分な熱容量を持ったモータは、コストをかけてサイズを大きくする必要がある。同様に、要求パワーに対して十分な熱容量を持ったクラッチは、コストをかけてサイズを大きくする必要がある。このように、従来の車両は、モータとクラッチとの過熱を抑制するために、モータとクラッチとのサイズを大きくする必要があるといった課題があった。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、モータとクラッチとのサイズを大きくすることなく、モータとクラッチとの過熱を抑制することができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、内燃機関と、前記内燃機関の動力によって発電する発電モータと、駆動輪に走行用の駆動力を発生可能な駆動モータと、前記内燃機関と前記駆動輪との動力伝達経路に設けられて前記内燃機関と前記駆動輪とを接続又は切断するクラッチと、前記駆動モータに供給する電力を蓄電するバッテリと、を備えたハイブリッド車両の制御装置であって、前記ハイブリッド車両は、前記バッテリに蓄電された電力を前記駆動モータに供給することにより前記駆動モータによって発生された駆動力を前記駆動輪に伝達する第1パワーフローと、前記内燃機関を駆動して前記発電モータに発電させ、前記発電モータによって発電された電力を前記駆動モータに供給することにより前記駆動モータによって発生された駆動力を前記駆動輪に伝達する第2パワーフローと、前記内燃機関を駆動して前記クラッチを介して前記内燃機関が発生した動力を前記駆動輪に伝達する第3パワーフローと、を有し、前記ハイブリッド車両の制御装置は、前記発電モータの温度、前記駆動モータの温度、前記クラッチの温度、前記駆動モータに対する要求トルク及び前記バッテリの充電状態に基づいて、前記第1パワーフロー、前記第2パワーフロー及び前記第3パワーフローのなかから前記駆動輪に動力を伝達するパワーフローを選択し、選択したパワーフローから伝達された動力で前記ハイブリッド車両を発進又は極低速走行させる制御部を備えた構成を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、モータとクラッチとのサイズを大きくすることなく、モータとクラッチとの過熱を抑制することができるハイブリッド車両の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の第1実施例に係るハイブリッド車両の制御装置を搭載した車両の概略構成図である。
図2図2は、図1に示した車両の構成とパワーフローとの関係を示す説明図である。
図3図3は、図1に示した車両の構成とパワーフローとの関係をブロック形式で示す説明図である。
図4図4は、本発明の第1実施例に係るハイブリッド車両の制御装置を構成するハイブリッドコントローラを説明するためのブロック図である。
図5図5は、本発明の第1実施例に係るハイブリッド車両の制御装置のパワーフロー選択動作を示すフローチャートである。
図6図6は、図5に示したパワーフロー選択動作の一部の動作を説明するための説明図である。
図7図7は、第2パワーフローの総合ロスを算出する処理の流れを説明するための説明図である。
図8図8は、第3パワーフローの総合ロスを算出する処理の流れを説明するための説明図である。
図9図9は、本発明の第1実施例に係るハイブリッド車両の制御装置によって参照される動作決定マップを示す概念図である。
図10図10は、本発明の第1実施例に係るハイブリッド車両の制御装置によって参照される許容トルクマップを示す概念図である。
図11図11は、本発明の第2実施例に係るハイブリッド車両の制御装置によって参照される動作決定マップを示す概念図である。
図12図12は、本発明の第2実施例に係るハイブリッド車両の制御装置の予備発電動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両の制御装置は、内燃機関と、内燃機関の動力によって発電する発電モータと、駆動輪に走行用の駆動力を発生可能な駆動モータと、内燃機関と駆動輪との動力伝達経路に設けられて内燃機関と駆動輪とを接続又は切断するクラッチと、駆動モータに供給する電力を蓄電するバッテリと、を備えたハイブリッド車両の制御装置であって、ハイブリッド車両は、バッテリに蓄電された電力を駆動モータに供給することにより駆動モータによって発生された駆動力を駆動輪に伝達する第1パワーフローと、内燃機関を駆動して発電モータに発電させ、発電モータによって発電された電力を駆動モータに供給することにより駆動モータによって発生された駆動力を駆動輪に伝達する第2パワーフローと、内燃機関を駆動してクラッチを介して内燃機関が発生した動力を駆動輪に伝達する第3パワーフローと、を有し、ハイブリッド車両の制御装置は、発電モータの温度、駆動モータの温度、クラッチの温度、駆動モータに対する要求トルク及びバッテリの充電状態に基づいて、第1パワーフロー、第2パワーフロー及び第3パワーフローのなかから駆動輪に動力を伝達するパワーフローを選択し、選択したパワーフローから伝達された動力でハイブリッド車両を発進又は極低速走行させる制御部を備えることを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両の制御装置は、モータとクラッチとのサイズを大きくすることなく、モータとクラッチとの過熱を抑制することができる。
【実施例0014】
(第1実施例)
以下、本発明の第1実施例に係るハイブリッド車両の制御装置を搭載した車両について図面を参照して説明する。
【0015】
図1に示すように、車両1は、内燃機関型のエンジン2と、変速機3と、クラッチ4と、トランスファ5と、デファレンシャルギア6と、駆動輪7と、バッテリ8と、発電モータ9(以下、「MG1」ともいう)と、第1インバータ10と、駆動モータ11(以下、「MG2」ともいう)と、第2インバータ12と、を含んで構成されている。
【0016】
エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行うことによって、動力を生成する。
【0017】
本実施例において、変速機3は、平行軸歯車機構からなる常時噛合式のAMT(Automated Manual Transmission)によって構成されている。なお、変速機3は、DCT(Dual-Clutch Transmissions)等のその他の変速機によって構成されていてもよい。
【0018】
クラッチ4は、エンジン2と変速機3との間の動力伝達経路に設けられている。クラッチ4は、エンジン2から変速機3までの動力伝達経路を接続又は切断することによって、エンジン2と駆動輪7とを接続又は切断する。
【0019】
トランスファ5は、エンジン2から変速機3を介して伝達された駆動力と、MG2から伝達された駆動力とを前輪側のデファレンシャルギアと後輪側のデファレンシャルギアに分配してプロペラシャフト21を介して伝達する。
【0020】
なお、本実施例は、前輪及び後輪をそれぞれ駆動輪7としてドライバが選択可能なパートタイム四輪駆動車を車両1に適用した例について説明するが、発明を理解し易くするため、トランスファ5は、エンジン2から変速機3を介して伝達された駆動力と、MG2から伝達された駆動力とを前輪側のデファレンシャルギアに伝達せずに、後輪側のデファレンシャルギアに伝達する状態であるものとして説明する。
【0021】
このため、図1において、後輪側のデファレンシャルギアは、デファレンシャルギア6として図示されているが、前輪側のデファレンシャルギアは、図示が省かれている。また、図1において、車輪のうち、後輪は、駆動輪7として図示されているが、前輪は、図示が省かれている。
【0022】
バッテリ8は、充電可能な二次電池によって構成され、例えば、48Vの出力電圧を発生させることができるリチウムイオン電池からなる。バッテリ8は、MG1及びMG2による発電によって充電され、MG1及びMG2を駆動させる電力を供給する。
【0023】
MG1は、プーリベルト22等の動力伝達部材を介してエンジン2のクランクシャフト23に連結され、エンジン2と連動して回転する。MG1は、第1インバータ10を介してバッテリ8及び第2インバータ12に接続されている。
【0024】
MG1は、バッテリ8から電力が供給されることにより回転することでエンジン2を回転駆動させる電動機の機能と、エンジン2の駆動によってクランクシャフト23から入力された回転力を電力に変換する発電機の機能とを有する。
【0025】
MG1は、バッテリ8から電力が供給されることによりエンジン2を始動させる。また、MG1は、エンジン2の駆動によって発電した電力をバッテリ8及びMG2に供給する。
【0026】
MG2は、第2インバータ12を介してバッテリ8及び第1インバータ10に接続されている。MG2は、バッテリ8及びMG1から電力が供給されることにより回転することで駆動輪7を回転させる電動機の機能と、駆動輪7の回転力を電力に変換する発電機の機能とを有する。
【0027】
MG2は、バッテリ8及びMG1から電力が供給されることにより駆動輪7を回転させて車両1を駆動する。また、MG2は、駆動輪7の回転力によって発電した電力をバッテリ8に供給する回生を行う。
【0028】
図2及び図3に示すように、車両1は、バッテリ8に蓄電された電力をMG2に供給することによりMG2によって発生された駆動力を駆動輪7に伝達する第1パワーフローと、エンジン2を駆動してMG1に発電させ、MG1によって発電された電力をMG2に供給することによりMG2によって発生された駆動力を駆動輪7に伝達する第2パワーフローと、エンジン2を駆動してクラッチ4を介してエンジン2が発生した動力を駆動輪に伝達する第3パワーフローと、を有する。
【0029】
なお、図3において、(a)は、第1パワーフローの伝達経路を示し、(b)は、第2パワーフローの伝達経路を示し、(c)は、第3パワーフローの伝達経路を示している。
【0030】
第1パワーフローは、バッテリ8、MG2、トランスファ5、プロペラシャフト21及びデファレンシャルギア6を経由して駆動輪7に駆動力が伝達される。なお、バッテリ8とMG2との間は、駆動力として電力が伝達される。
【0031】
第2パワーフローは、エンジン2、プーリベルト22、MG1、MG2、トランスファ5、プロペラシャフト21及びデファレンシャルギア6を経由して駆動輪7に駆動力が伝達される。なお、MG1とMG2との間は、駆動力として電力が伝達される。第3パワーフローは、エンジン2、クラッチ4、変速機3、トランスファ5、プロペラシャフト21及びデファレンシャルギア6を経由して駆動輪7に駆動力が伝達される。
【0032】
図4に示すように、車両1は、車両1の各部を制御するハイブリッドコントローラ(以下、単に「HCU」と記す)30を含んで構成されている。HCU30は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0033】
このコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをHCU30として機能させるためのプログラムが格納されている。すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、このコンピュータユニットは、本実施例におけるHCU30として機能する。
【0034】
図4に示すように、HCU30の入力ポートには、各種センサ類が接続されている。各種センサ類は、MG1の温度を検出するMG1温度センサ31と、MG2の温度を検出するMG2温度センサ32と、バッテリ8の充放電電流及び端子間電圧を検出するバッテリセンサ33、車輪の回転角を検出する車輪回転角センサ34と、アクセルペダルの操作量(以下、「アクセル開度」ともいう)を検出するアクセル開度センサ35とを含む。
【0035】
バッテリセンサ33は、バッテリ8の充放電電流及び電圧を検出する。HCU30は、バッテリセンサ33の検出結果に基づき、バッテリ8の充電状態、すなわちSOC(State Of Charge)を算出する。車輪回転角センサ34は、車輪の回転角を検出する。HCU30は、車輪回転角センサ34の検出結果に基づき、車輪の回転速度を算出する。
【0036】
また、HCU30の入力ポートに接続されている各種センサ類は、クラッチ4の入力軸の回転角を検出するクラッチ入力回転角センサ36と、クラッチ4の出力軸の回転角を検出するクラッチ出力回転角センサ37と、クラッチ4の雰囲気温度を検出するクラッチ雰囲気温度センサ38と、トランスファ5の出力軸の回転角を検出するトランスファ回転角センサ39とを含む。
【0037】
HCU30は、クラッチ入力回転角センサ36の検出結果に基づき、クラッチ4の入力軸の回転速度(以下、「クラッチ入力回転速度」という)を算出する。HCU30は、クラッチ出力回転角センサ37の検出結果に基づき、クラッチ4の出力軸の回転速度(以下、「クラッチ出力回転速度」という)を算出する。
【0038】
HCU30は、クラッチ出力回転速度と、クラッチ4の伝達トルクと、クラッチ4を構成する摩擦材の特性と、クラッチ雰囲気温度センサ38の検出結果とからクラッチ4の温度を算出する。HCU30は、トランスファ回転角センサ39の検出結果に基づき、トランスファ5の出力軸の回転速度(以下、「トランスファ回転速度」という)を算出する。
【0039】
また、HCU30の入力ポートに接続されている各種センサ類は、MG2の回転角を検出するMG2回転角センサ40と、MG2の入力電圧を検出するMG2入力電圧センサ41と、MG1の回転角を検出するMG1回転角センサ42と、MG1の入力電圧を検出するMG1入力電圧センサ43と、変速機3に形成されているギア段を検出するギアポジションセンサ44と、変速機3の出力軸の回転角を検出する変速機出力回転角センサ45とを含む。
【0040】
HCU30は、MG2回転角センサ40の検出結果に基づき、MG2の回転速度(以下、「MG2回転速度」という)を算出する。HCU30は、MG1回転角センサ42の検出結果に基づき、MG1の回転速度(以下、「MG1回転速度」という)を算出する。HCU30は、変速機出力回転角センサ45の検出結果に基づき、変速機3の出力軸の回転速度(以下、「変速機出力回転速度」という)を算出する。
【0041】
HCU30の出力ポートには、エンジン2、MG1、MG2、クラッチ4及び変速機3を制御する制御対象類が接続されている。エンジン2を制御する制御対象類は、図示を省略するが、吸入空気量を調整するスロットルバルブを駆動するスロットルバルブアクチュエータ、エンジン2に燃料を供給するインジェクタ及びエンジン2の燃焼室に点火する点火プラグを含む。
【0042】
MG1を制御する制御対象類は、第1インバータ10を含む。MG2を制御する制御対象類は、第2インバータ12を含む。クラッチ4を制御する制御対象類は、図示を省略するが、クラッチ4の係合状態を調整するクラッチアクチュエータを含む。変速機3を制御する制御対象類は、図示を省略するが、変速機3に形成させる変速段を変更するトランスミッションアクチュエータを含む。
【0043】
HCU30は、入力ポートに接続された各種センサ類から得られる情報に基づいて、出力ポートに接続された各種制御対象類を制御する。例えば、HCU30は、第1パワーフロー、第2パワーフロー及び第3パワーフローのなかから駆動輪7に動力を伝達するパワーフローを選択し、選択したパワーフローから伝達された動力で車両1を発進又は極低速走行させる制御部50としての機能を有する。
【0044】
以上のように構成されたHCU30のパワーフロー選択動作について図5を参照して説明する。なお、以下に説明するパワーフロー選択動作は、車両1の発進時を含む極低速走行期間(例えば、0~7km/h)に繰り返し実行される。
【0045】
まず、S1において、HCU30は、クラッチ4が完全に係合している完全締結状態であるか否かを判断する。S1において、クラッチ4が完全に係合している完全締結状態であると判断した場合には、HCU30は、パワーフロー選択動作を終了する。S1において、クラッチ4が完全に係合している完全締結状態でないと判断した場合には、HCU30は、S2の処理を実行する。
【0046】
S2において、HCU30は、ドライバの要求パワーを算出する。S2の処理を実行した後、HCU30は、S3の処理を実行する。S3において、HCU30は、MG2に対する要求トルクを算出する。
【0047】
S2及びS3の処理の具体例について、図6を参照して説明する。P1において、HCU30は、車輪回転角センサ34の検出結果に基づき、車輪の回転速度、すなわち、車軸の回転速度(以下、「車軸回転速度」という)を算出する。
【0048】
P2において、HCU30は、ROMに格納されたマップを参照するなどして、アクセル開度センサ35によって検出されたアクセル開度からドライバの要求トルク(以下、「ドライバ要求トルク」ともいう)を算出する。ここで、ドライバ要求トルクは、車軸から駆動輪7に出力させるトルクに相当する。
【0049】
P3において、HCU30は、車軸回転速度と、P2で算出したドライバ要求トルクとを積算してドライバの要求パワー(以下、「ドライバ要求パワー」ともいう)を算出する。ここで、ドライバ要求パワーは、車軸から駆動輪7に伝達させるパワーに相当する。
【0050】
P4において、HCU30は、ドライバ要求パワーと、デファレンシャルギア6のギア比及び効率と、トランスファ5のギア比及び効率とに基づき、MG2に対する要求トルクを算出する。なお、デファレンシャルギア6のギア比及び効率と、トランスファ5のギア比及び効率とは、ROMに格納されている。
【0051】
なお、車両1は、MG2を駆動できる状態では、ドライバ要求パワーをMG2に発生させ、MG2を駆動できない状態では、ドライバ要求パワーをエンジン2に発生させる。このため、P4において、HCU30は、ドライバ要求パワーに応じたMG2に対する要求トルクを算出する。
【0052】
図5において、S3の処理を実行した後、HCU30は、S4の処理を実行する。S4において、HCU30は、第2パワーフローと第3パワーフローとの総合ロスを算出する。
【0053】
S4の処理の具体例について、図7及び図8を参照して説明する。なお、図7は、第2パワーフローの総合ロスを算出する処理の流れを示し、図8は、第3パワーフローの総合ロスを算出する処理の流れを示している。
【0054】
図7のP11において、HCU30は、ROMに格納されたデファレンシャルギア6のロスマップを参照し、ドライバ要求パワー(図6参照)と車軸回転速度(図6参照)とからデファレンシャルギア6のロスを算出する。
【0055】
HCU30は、P11で算出したデファレンシャルギア6のロスをドライバ要求パワーに加算して、トランスファ5に要求される要求トランスファパワーを算出する。P12において、HCU30は、ROMに格納されたトランスファ5のロスマップを参照し、要求トランスファパワーと、トランスファ回転速度とからトランスファ5のロスを算出する。
【0056】
HCU30は、P12で算出したトランスファ5のロスを要求トランスファパワーに加算して、MG2に要求される要求MG2パワーを算出する。P13において、HCU30は、ROMに格納されたMG2のロスマップを参照し、要求トランスファパワーと、MG2回転速度と、MG2入力電圧センサ41によって検出されたMG2の入力電圧とからMG2のロスを算出する。
【0057】
HCU30は、P13で算出したMG2のロスを要求MG2パワーに加算して、MG1に要求される要求MG1発電パワーを算出する。P14において、HCU30は、ROMに格納されたMG1のロスマップを参照し、要求MG1発電パワーと、MG1回転速度と、MG1入力電圧センサ43によって検出されたMG1の入力電圧とからMG1のロスを算出する。
【0058】
HCU30は、P14で算出したMG1のロスを要求MG1発電パワーに加算して、MG1に要求される要求MG1駆動パワーを算出する。P15において、HCU30は、ROMに格納されたプーリベルト22のロスマップを参照し、要求MG1駆動パワーと、MG1回転速度とからプーリベルト22のロスを算出する。
【0059】
HCU30は、P15で算出したプーリベルト22のロスを要求MG1駆動パワーに加算して、エンジン2に要求される要求エンジンパワーを算出する。HCU30は、要求エンジンパワーからドライバ要求パワーを減算して、第2パワーフローの総合ロスを算出する。
【0060】
図8のP21において、HCU30は、ROMに格納されたデファレンシャルギア6のロスマップを参照し、ドライバ要求パワー(図6参照)と車軸回転速度(図6参照)とからデファレンシャルギア6のロスを算出する。
【0061】
HCU30は、P21で算出したデファレンシャルギア6のロスをドライバ要求パワーに加算して、トランスファ5に要求される要求トランスファパワーを算出する。P22において、HCU30は、ROMに格納されたトランスファ5のロスマップを参照し、要求トランスファパワーと、トランスファ回転速度とからトランスファ5のロスを算出する。
【0062】
HCU30は、P22で算出したトランスファ5のロスを要求トランスファパワーに加算して、変速機3に要求される要求変速機パワーを算出する。P23において、HCU30は、ROMに格納された変速機3のロスマップを参照し、要求変速機パワーと、ギアポジションセンサ44によって検出されたギア段と、変速機出力回転速度とから変速機3のロスを算出する。
【0063】
HCU30は、P23で算出した変速機3のロスを要求変速機パワーに加算して、クラッチ4に要求される要求クラッチ出力パワーを算出する。P24において、HCU30は、要求クラッチ出力パワーと、クラッチ入力回転速度と、クラッチ出力回転速度とからクラッチ4のロスを算出する。具体的には、HCU30は、以下に示す演算式に基づいてクラッチ4のロス(以下、「クラッチロス」という)を算出する。
【0064】
クラッチロス=クラッチ入力回転速度×(要求クラッチ出力パワー/出力回転速度)-要求クラッチ出力パワー
【0065】
HCU30は、P24で算出したクラッチロスを要求クラッチ出力パワーに加算して、エンジン2に要求される要求エンジンパワーを算出する。HCU30は、要求エンジンパワーからドライバ要求パワーを減算して、第3パワーフローの総合ロスを算出する。
【0066】
図5において、S4の処理を実行した後、HCU30は、S5の処理を実行する。S5において、HCU30は、第1パワーフロー、第2パワーフロー及び第3パワーフローのなかから駆動輪7に動力を伝達するパワーフローを選択し、パワーフロー選択動作を終了する。
【0067】
S5において、HCU30は、ROMに格納された動作決定マップを参照し、MG1温度センサ31によって検出されたMG1の温度、MG2温度センサ32によって検出されたMG2の温度、クラッチ4の温度、MG2に対する要求トルク及びバッテリ8のSOCに基づいて、パワーフローを選択する。
【0068】
図9に示すように、動作決定マップは、モータ温度と、クラッチ温度と、要求MG2トルクと、バッテリSOCとに対して、実行動作とクラッチ状態とが対応付けられている。
【0069】
モータ温度は、MG1及びMG2の温度が通常範囲内であるか(以下、「モータ通常」ともいう)、MG1又はMG2の温度が過熱範囲内であるか(以下、「モータ過熱」ともいう)のいずれかに判別される。MG1及びMG2の各モータに対して通常範囲と過熱範囲とが定められている。
【0070】
各モータには、耐熱温度未満の境界温度が予め定められている。各モータの温度は、境界温度未満であれば、通常範囲内であると判別され、境界温度以上であれば、過熱範囲内であると判別される。
【0071】
クラッチ温度は、クラッチ4の温度が通常範囲内であるか(以下、「クラッチ通常」ともいう)、高温範囲内であるか(以下、「クラッチ高温」ともいう)及び過熱範囲内であるか(以下、「クラッチ過熱」ともいう)のいずれかに判別される。
【0072】
クラッチ4には、耐熱温度未満の第1境界温度と、第1境界温度未満の第2境界温度が予め定められている。クラッチ4の温度は、第2境界温度未満であれば、通常範囲内であると判別され、第2境界温度以上かつ第1境界温度未満であれば、高温範囲内であると判別され、第1境界温度以上であれば、過熱範囲内であると判別される。
【0073】
要求MG2トルクは、図10に示すような許容トルクマップを参照して判別される。許容トルクマップは、ROMに格納され、MG2トルクと車速とに対して許容トルクが対応付けられている。要求MG2トルクは、許容トルクマップに基づいて、許容トルク以下であるか、許容トルクを超えている(以下、「許容トルク超」ともいう)かのいずれかに判別される。
【0074】
バッテリSOCは、バッテリ8のSOCが高充電状態であるか(以下、単に「高」ともいう)、中間充電状態であるか(以下、単に「中」ともいう)、低充電状態であるか(以下、単に「低」ともいう)のいずれかに判別される。バッテリ8には、フル充電状態(充電率が100%)の第1境界状態と、第1境界状態未満の第2境界状態が予め定められている。
【0075】
バッテリ8のSOCは、第2境界状態未満であれば、低充電状態であると判別され、第2境界状態以上かつ第1境界状態未満であれば、中間充電状態であると判別され、第1境界状態以上であれば、高充電状態であると判別される。
【0076】
図9に示した動作決定マップでは、モータ温度が「モータ通常」、クラッチ温度が「クラッチ通常」、要求MG2トルクが「許容トルク以下」、バッテリSOCが「高」に対して、実行動作として「第1パワーフロー」が対応付けられ、クラッチ状態として「開」が対応付けられている。この場合、HCU30は、クラッチ4を開状態(すなわち、解放状態)に制御し、駆動輪7に動力を伝達するパワーフローとして第1パワーフローを選択する。
【0077】
動作決定マップでは、モータ温度が「モータ通常」、クラッチ温度が「クラッチ通常」、要求MG2トルクが「許容トルク以下」、バッテリSOCが「中」に対して、実行動作として「第2パワーフロー又は第3パワーフロー」が対応付けられ、クラッチ状態として「開」又は「半係合」が対応付けられている。
【0078】
この場合、HCU30は、駆動輪7に動力を伝達するパワーフローとして第2パワーフローと第3パワーフローのうち、総合ロス(図5のS4参照)が小さいパワーフローを選択する。第2パワーフローを選択した場合、HCU30は、クラッチ4を開状態に制御する。第3パワーフローを選択した場合、HCU30は、クラッチ4を半係合状態(すなわち、半クラッチ状態)に制御する。
【0079】
動作決定マップでは、モータ温度が「モータ通常」、クラッチ温度が「クラッチ通常」、要求MG2トルクが「許容トルク以下」、バッテリSOCが「低」に対して、実行動作として「第3パワーフロー」が対応付けられ、クラッチ状態として「半係合」が対応付けられている。この場合、HCU30は、クラッチ4を半係合状態に制御し、駆動輪7に動力を伝達するパワーフローとして第3パワーフローを選択する。
【0080】
動作決定マップでは、モータ温度が「モータ通常」、クラッチ温度が「クラッチ通常」、要求MG2トルクが「許容トルク超」に対して、実行動作として「第3パワーフロー」が対応付けられ、クラッチ状態として「半係合」が対応付けられている。この場合、HCU30は、クラッチ4を半係合状態に制御し、駆動輪7に動力を伝達するパワーフローとして第3パワーフローを選択する。
【0081】
動作決定マップでは、モータ温度が「モータ通常」、クラッチ温度が「クラッチ高温」、要求MG2トルクが「許容トルク以下」、バッテリSOCが「高」に対して、実行動作として「第1パワーフロー」が対応付けられ、クラッチ状態として「開」が対応付けられている。この場合、HCU30は、クラッチ4を開状態に制御し、駆動輪7に動力を伝達するパワーフローとして第1パワーフローを選択する。
【0082】
動作決定マップでは、モータ温度が「モータ通常」、クラッチ温度が「クラッチ高温」、要求MG2トルクが「許容トルク以下」、バッテリSOCが「中」に対して、実行動作として「第2パワーフロー」が対応付けられ、クラッチ状態として「開」が対応付けられている。この場合、HCU30は、クラッチ4を開状態に制御し、駆動輪7に動力を伝達するパワーフローとして第2パワーフローを選択する。
【0083】
動作決定マップでは、モータ温度が「モータ通常」、クラッチ温度が「クラッチ高温」、要求MG2トルクが「許容トルク以下」、バッテリSOCが「低」に対して、実行動作として「第2パワーフロー」が対応付けられ、クラッチ状態として「開」が対応付けられている。この場合、HCU30は、クラッチ4を開状態に制御し、駆動輪7に動力を伝達するパワーフローとして第2パワーフローを選択する。
【0084】
動作決定マップでは、モータ温度が「モータ通常」、クラッチ温度が「クラッチ高温」、要求MG2トルクが「許容トルク超」に対して、実行動作として「第2パワーフロー及び第3パワーフロー」が対応付けられ、クラッチ状態として「半係合」が対応付けられている。
【0085】
この場合、HCU30は、駆動輪7に動力を伝達するパワーフローとして第2パワーフロー及び第3パワーフローを選択し、MG2に許容トルクを出力させ、クラッチ4を半係合状態に制御し、要求MG2トルクから許容トルクを減じた不足トルクに応じた駆動力を第3パワーフローに伝達させるようにエンジン2を制御する。
【0086】
動作決定マップでは、モータ温度が「モータ通常」、クラッチ温度が「クラッチ過熱」、要求MG2トルクが「許容トルク以下」、バッテリSOCが「高」に対して、実行動作として「第1パワーフロー」が対応付けられ、クラッチ状態として「開」が対応付けられている。この場合、HCU30は、クラッチ4を開状態に制御し、駆動輪7に動力を伝達するパワーフローとして第1パワーフローを選択する。
【0087】
動作決定マップでは、モータ温度が「モータ通常」、クラッチ温度が「クラッチ過熱」、要求MG2トルクが「許容トルク以下」、バッテリSOCが「中」に対して、実行動作として「第2パワーフロー」が対応付けられ、クラッチ状態として「開」が対応付けられている。この場合、HCU30は、クラッチ4を開状態に制御し、駆動輪7に動力を伝達するパワーフローとして第2パワーフローを選択する。
【0088】
動作決定マップでは、モータ温度が「モータ通常」、クラッチ温度が「クラッチ過熱」、要求MG2トルクが「許容トルク以下」、バッテリSOCが「低」に対して、実行動作として「第2パワーフロー」が対応付けられ、クラッチ状態として「開」が対応付けられている。この場合、HCU30は、クラッチ4を開状態に制御し、駆動輪7に動力を伝達するパワーフローとして第2パワーフローを選択する。
【0089】
動作決定マップでは、モータ温度が「モータ通常」、クラッチ温度が「クラッチ過熱」、要求MG2トルクが「許容トルク超」、バッテリSOCが「高」に対して、実行動作として「第1パワーフロー」が対応付けられ、クラッチ状態として「開」が対応付けられている。
【0090】
この場合、HCU30は、クラッチ4を開状態に制御し、駆動輪7に動力を伝達するパワーフローとして第1パワーフローを選択する。ただし、MG2に出力させるトルクは、許容トルクを上限とするため、車両1は、ドライバの要求パワーに満たない駆動力で走行する異常時走行を行う。
【0091】
動作決定マップでは、モータ温度が「モータ通常」、クラッチ温度が「クラッチ過熱」、要求MG2トルクが「許容トルク超」、バッテリSOCが「中」に対して、実行動作として「第2パワーフロー」が対応付けられ、クラッチ状態として「開」が対応付けられている。
【0092】
この場合、HCU30は、クラッチ4を開状態に制御し、駆動輪7に動力を伝達するパワーフローとして第2パワーフローを選択する。ただし、MG2に出力させるトルクは、許容トルクを上限とするため、車両1は、ドライバの要求パワーに満たない駆動力で走行する異常時走行を行う。
【0093】
動作決定マップでは、モータ温度が「モータ通常」、クラッチ温度が「クラッチ過熱」、要求MG2トルクが「許容トルク超」、バッテリSOCが「低」に対して、実行動作として「第2パワーフロー」が対応付けられ、クラッチ状態として「開」が対応付けられている。
【0094】
この場合、HCU30は、クラッチ4を開状態に制御し、駆動輪7に動力を伝達するパワーフローとして第2パワーフローを選択する。ただし、MG2に出力させるトルクは、許容トルクを上限とするため、車両1は、ドライバの要求パワーに満たない駆動力で走行する異常時走行を行う。
【0095】
動作決定マップでは、モータ温度が「モータ過熱」、クラッチ温度が「クラッチ通常」に対して、実行動作として「第3パワーフロー」が対応付けられ、クラッチ状態として「半係合」が対応付けられている。この場合、HCU30は、クラッチ4を半係合状態に制御し、駆動輪7に動力を伝達するパワーフローとして第3パワーフローを選択する。
【0096】
動作決定マップでは、モータ温度が「モータ過熱」、クラッチ温度が「クラッチ高温」に対して、実行動作として「第3パワーフロー」が対応付けられ、クラッチ状態として「半係合」が対応付けられている。この場合、HCU30は、クラッチ4を半係合状態に制御し、駆動輪7に動力を伝達するパワーフローとして第3パワーフローを選択する。
【0097】
動作決定マップでは、モータ温度が「モータ過熱」、クラッチ温度が「クラッチ過熱」に対して、実行動作として「待機」が対応付けられ、クラッチ状態として「開」が対応付けられている。
【0098】
この場合、HCU30は、通常には起こり得ない故障が車両1に生じていると判断し、車両1の走行を停止し、クラッチ4を開状態に制御する待機状態となり、MG2とクラッチ4との冷却を待つ。HCU30は、待機状態となると、図示しないインストルメントパネルに設けられた警告ランプなどを点灯させるなどして警告を発する。
【0099】
以上のように、本実施例に係るハイブリッド車両の制御装置は、発電モータ9の温度、駆動モータ11の温度、クラッチ4の温度、駆動モータ11に対する要求トルク及びバッテリ8のSOCに基づいて複数のパワーフローから駆動輪7に動力を伝達するパワーフローを選択するため、駆動モータ11とクラッチ4とのサイズを大きくすることなく、駆動モータ11とクラッチ4との過熱を抑制することができる。
【0100】
また、本実施例に係るハイブリッド車両の制御装置は、発電モータ9の温度、駆動モータ11の温度、クラッチ4の温度、駆動モータ11に対する要求トルク及びバッテリ8のSOCに基づいて複数のパワーフローから駆動輪7に動力を伝達するパワーフローを選択するため、車両1に重量物を積載し、上り坂を極低速(クラッチ4が完全に締結できない速度)で走行を続けた場合、クラッチ4の過熱を抑制することができる。
【0101】
また、本実施例に係るハイブリッド車両の制御装置は、発電モータ9の温度及び駆動モータ11の温度が通常範囲内で、かつクラッチ4の温度が高温範囲内で、かつ駆動モータ11に対する要求トルクが許容トルク以下である場合、バッテリ8のSOCに応じて第1パワーフローと第2パワーフローの何れか一方を選択するため、駆動モータ11とクラッチ4とのサイズを大きくすることなく、駆動モータ11とクラッチ4との過熱を抑制することができる。
【0102】
また、本実施例に係るハイブリッド車両の制御装置は、発電モータ9の温度及び駆動モータ11の温度が通常範囲内で、かつクラッチ4の温度が高温範囲内で、かつ駆動モータ11に対する要求トルクが許容トルク以下である場合、バッテリ8のSOCに応じて第1パワーフローと第2パワーフローの何れか一方を選択するため、車両1に重量物を積載し、上り坂を極低速(クラッチ4が完全に締結できない速度)で走行を続けている状態で、クラッチ4の過熱を抑制することができる。
【0103】
また、本実施例に係るハイブリッド車両の制御装置は、バッテリ8のSOCが高充電状態である場合には、第1パワーフローを選択するため、バッテリ8を適正なSOCにして充電可能な余地を確保することができる。
【0104】
また、本実施例に係るハイブリッド車両の制御装置は、バッテリ8のSOCが高充電状態でない場合には、第2パワーフローを選択するため、バッテリ8を適正なSOCにしてバッテリ8が放電し過ぎることを防止することができる。
【0105】
また、本実施例に係るハイブリッド車両の制御装置は、発電モータ9の温度及び駆動モータ11の温度が通常範囲内で、かつクラッチ4の温度が高温範囲内で、かつ駆動モータ11に対する要求トルクが許容トルクを超える場合、第2パワーフローと第3パワーフローとを選択するため、クラッチ4を接続する第3パワーフローで出力するトルクが減少することによって、クラッチ4の温度が上昇することを抑制することができる。
【0106】
また、本実施例に係るハイブリッド車両の制御装置は、発電モータ9の温度及び駆動モータ11の温度が通常範囲内で、かつクラッチ4の温度が高温範囲内で、かつ駆動モータ11に対する要求トルクが許容トルクを超える場合、第2パワーフローと第3パワーフローとを併用するため、車両1に重量物を積載し、上り坂を極低速(クラッチ4が完全に締結できない速度)で走行を続けている状態で、クラッチ4の過熱を抑制することができる。
【0107】
また、本実施例に係るハイブリッド車両の制御装置は、駆動モータ11に対する要求トルクが許容トルクを超える場合、駆動モータ11に許容トルクを出力させ、要求トルクから許容トルクを減じた不足トルクに応じた駆動力を第3パワーフローに伝達させるため、クラッチ4を接続する第3パワーフローで出力するトルクを極力減らすことによって、クラッチ4の温度が上昇することを抑制することができる。
【0108】
また、本実施例に係るハイブリッド車両の制御装置は、発電モータ9の温度及び駆動モータ11の温度が通常範囲内で、かつクラッチ4の温度が過熱範囲内で、かつ駆動モータ11に対する要求トルクが許容トルクを超える場合、バッテリ8のSOCに応じて第1パワーフローと第2パワーフローの何れか一方を選択するため、クラッチ4の温度が上昇することを抑制することができる。
【0109】
また、本実施例に係るハイブリッド車両の制御装置は、発電モータ9の温度及び駆動モータ11の温度が通常範囲内で、かつクラッチ4の温度が過熱範囲内で、かつ駆動モータ11に対する要求トルクが許容トルクを超える場合、バッテリ8のSOCに応じて第1パワーフローと第2パワーフローの何れか一方を選択するため、走行可能な駆動トルクを出力して走行状態を維持することができる。
【0110】
また、本実施例に係るハイブリッド車両の制御装置は、発電モータ9の温度又は駆動モータ11の温度が過熱範囲内で、かつクラッチ4の温度が通常範囲内又は高温範囲内である場合、第3パワーフローを選択するため、走行可能な駆動トルクを出力して走行状態を維持することができる。
【0111】
また、本実施例に係るハイブリッド車両の制御装置は、発電モータ9の温度及び駆動モータ11の温度が通常範囲内で、かつクラッチ4の温度が通常範囲内で、かつ駆動モータ11に対する要求トルクが許容トルク以下で、かつバッテリ8の充電状態が中間充電状態である場合、第2パワーフローの総合ロスと第3パワーフローの総合ロスとを算出し、第2パワーフロー及び第3パワーフローのうち総合ロスが小さい方のパワーフローを選択するため、エネルギー消費の少ない走行が可能となる。
【0112】
(第2実施例)
以下、本発明の第2実施例に係るハイブリッド車両の制御装置を搭載した車両について図面を参照して説明する。本実施例については、第1実施例との相違点について説明する。
【0113】
図11に示すように、本実施例は、第1実施例に対して、動作決定マップが相違する。具体的には、本実施例における動作決定マップは、第1実施例における動作決定マップに対して、モータ温度が「モータ通常」、クラッチ温度が「クラッチ過熱」、要求MG2トルクが「許容トルク超」、バッテリSOCが「高」及び「中」に対して対応付けられている実行動作とクラッチ状態とが相違する。
【0114】
本実施例における動作決定マップでは、モータ温度が「モータ通常」、クラッチ温度が「クラッチ過熱」、要求MG2トルクが「許容トルク超」、バッテリSOCが「高」及び「中」に対して、実行動作として「第1パワーフロー及び第3パワーフロー」が対応付けられ、クラッチ状態として「閉」が対応付けられている。
【0115】
この場合、HCU30は、駆動輪7に動力を伝達するパワーフローとして第1パワーフロー及び第3パワーフローを選択し、エンジン2の回転速度を調節した上でクラッチ4を係合状態(すなわち、締結状態)に制御し、クラッチ4が係合状態を維持できるトルクをエンジン2に出力させ、要求MG2トルクから不足するトルクに応じた駆動力を第1パワーフローに伝達させるようにMG2を制御する。
【0116】
このため、本実施例において、HCU30は、クラッチ4の温度が高温範囲内である場合、クラッチ4の温度が過熱範囲内になることに備えて、バッテリ8の充電状態が高充電状態になるまでMG1に発電させる予備発電動作を実行する。予備発電動作を実行することにより、クラッチ4の温度が過熱範囲内になったときに、HCU30は、第1パワーフローに十分な駆動力を伝達させることができる。
【0117】
HCU30の予備発電動作について図12を参照して説明する。なお、以下に説明する予備発電動作は、車両1の極低速走行期間において繰り返し実行されてもよく、HCU30が作動している期間において繰り返し実行されてもよい。
【0118】
まず、S11において、HCU30は、クラッチ4の温度が高温範囲内であるか否かを判断する。S11において、クラッチ4の温度が高温範囲内でないと判断した場合には、HCU30は、予備発電動作を終了する。S11において、クラッチ4の温度が高温範囲内であると判断した場合には、HCU30は、S12の処理を実行する。
【0119】
S12において、HCU30は、バッテリ8の充電状態が高充電状態であるか否かを判断する。S12において、バッテリ8の充電状態が高充電状態であると判断した場合には、HCU30は、予備発電動作を終了する。S12において、バッテリ8の充電状態が高充電状態でないと判断した場合には、HCU30は、S13の処理を実行する。
【0120】
S13において、HCU30は、MG1による発電が行われていなければ、MG1により発電を開始し、MG1による発電が行われていればMG1により発電を継続し、予備発電動作を終了する。
【0121】
以上のように、本実施例に係るハイブリッド車両の制御装置は、発電モータ9の温度及び駆動モータ11の温度が通常範囲内で、かつクラッチ4の温度が過熱範囲内で、かつ駆動モータに対する要求トルクが許容トルクを超える場合、エンジン2の回転速度を調節した上でクラッチ4を締結状態に制御し、クラッチ4が締結状態を維持できるトルクをエンジン2に出力させ、要求MG2トルクから不足するトルクに応じた駆動力を第1パワーフローに伝達させるようにMG2を制御するため、動力性能を優先して車両1を走行させることができる。
【0122】
また、本実施例に係るハイブリッド車両の制御装置は、クラッチ4の温度が高温範囲内である場合、バッテリ8の充電状態が高充電状態になるまで発電モータ9に発電させるため、クラッチ4の温度が過熱範囲内となったときに、第1パワーフローに十分な駆動力を伝達させることができる。
【0123】
以上に説明した実施例において、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置を搭載した車両として、前輪及び後輪をそれぞれ駆動輪7としてドライバが選択可能なパートタイム四輪駆動車を適用した例について説明した。
【0124】
これに対し、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置を搭載した車両として、前輪及び後輪の両方が駆動輪7として固定されたフルタイム四輪駆動車、又は、前輪及び後輪の何れかを駆動輪7とする二輪駆動車にも適用できる。本発明に係るハイブリッド車両の制御装置を搭載した車両として二輪駆動車を適用した場合には、トランスファ5は、車両1の構成から除かれる。
【0125】
また、図7を参照して説明したように各パワーフローの総合ロスを算出し、総合ロスが少ないパワーフローを選択する処理は、クラッチ4が締結状態であるときの通常走行時においても適用することができる。
【0126】
また、実施例において、HCU30が車両1の各部を制御する例について説明したが、エンジン2を制御するエンジンコントローラ、変速機3及びクラッチ4を制御するトランスミッションコントローラ及びバッテリ8を制御するバッテリコントローラなどをHCU30に加えて車両1に設け、これらコントローラをCAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内LAN(Local Area Network)を介して接続することにより、HCU30の処理を分散するように構成してもよい。
【0127】
以上、本発明の実施例について開示したが、本発明の範囲を逸脱することなく本実施例に変更を加えられ得ることは明白である。本発明の実施例は、このような変更が加えられた等価物が特許請求の範囲に記載された発明に含まれることを前提として開示されている。
【符号の説明】
【0128】
1 車両(ハイブリッド車両)
2 エンジン(内燃機関)
4 クラッチ
7 駆動輪
8 バッテリ
9 発電モータ
11 駆動モータ
50 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12