(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134988
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ワークの保護方法およびワークの加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240927BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L21/304 622J
H01L21/304 631
H01L21/78 Q
H01L21/78 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045464
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中西 勇人
【テーマコード(参考)】
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
5F057AA11
5F057AA21
5F057AA31
5F057BA15
5F057BA26
5F057BB03
5F057BB06
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5F063EE08
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5F063EE23
5F063EE42
5F063EE43
5F063EE44
5F063EE86
(57)【要約】
【課題】 表面保護シート10によりワーク1を確実に保護しつつも、表面保護シート10を含む他の部材と回路面との接触を防止できるワークの保護方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係るワークの保護方法は、ワーク1の表面に表面保護シート10を貼付する工程を有し、
前記ワーク1の表面は、複数の回路が形成された内周部と、前記内周部を取り囲む回路を有しない外周部とを有し、
前記回路の間、および前記外周部に凸状パターン4を形成し、
凸状パターン4を設けた面に表面保護シート10を貼付することを特徴とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの表面に表面保護シートを貼付する工程を有するワークの保護方法であって、
前記ワークの表面は、複数の回路が形成された内周部と、前記内周部を取り囲む回路を有しない外周部とを有し、
前記回路の間、および前記外周部に凸状パターンを形成し、
凸状パターンを設けた面に表面保護シートを貼付する、ワークの保護方法。
【請求項2】
内周部に形成された回路の高さHcと、凸状パターンの高さHpとが、Hc<Hpである関係を満足する、請求項1に記載のワークの保護方法。
【請求項3】
前記凸状パターンが樹脂から構成される、請求項1に記載のワークの保護方法。
【請求項4】
前記表面保護シートが、樹脂フィルムである、請求項1に記載のワークの保護方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載の方法によりワークを保護し、
ワークを保護しつつ、ワーク裏面を研削し、
前記表面保護シートを剥離するとともに、前記凸状パターンを表面保護シートに同伴して除去する、ワークの加工方法。
【請求項6】
前記ワークの表面に凸状パターンを形成する工程の前に、前記ワークの表面に溝を形成する工程を有し、
前記ワークの裏面を研削する工程において、溝を起点として、前記ワークを複数のワーク個片化物に個片化する請求項5に記載のワークの加工方法。
【請求項7】
前記ワークの裏面を研削する工程の前に、前記ワーク内部に改質領域を形成する工程を有し、
前記ワークの裏面を研削する工程において、改質領域を起点として、前記ワークを複数のワーク個片化物に個片化する請求項5に記載のワークの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの保護方法および加工方法に関する。特に、ワークの表面に形成された回路が、他の部材に接触することを防止する必要が高いワークを保護する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積化、小型化が進む半導体装置では、半導体チップの薄化が要求され続けている。チップを小型化および低背化するために、ウエハの裏面を研削して、ウエハの厚さを薄くすることが一般的である。
【0003】
ウエハの裏面研削時には、ウエハ表面の回路および配置されたチップを保護し、かつ、ウエハを保持するために、ウエハ表面にバックグラインドテープと呼ばれる表面保護シートが貼付される。
【0004】
特許文献1は、段差や突起を有する半導体ウエハに対し、半導体ウエハ表面への追従性が良好で、剥離時には半導体ウエハの破損や糊残りすることなく剥離可能な半導体ウエハ加工用粘着テープを開示している。
【0005】
上記のような半導体ウエハ加工用粘着テープを用いて回路表面を保護すると、回路面に粘着剤が接触する。一般的な半導体素子では、回路面に粘着剤が接触しても、粘着テープを糊残りすることなく剥離できれば、問題は生じなかった。しかしながら、イメージセンサ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等の回路は、極めて高い清澄性が求められ、回路面の一部に粘着剤などの有機物が接触するだけで、その機能を損なう恐れがある。特に近年急速に進行する回路の微細化の結果、イメージセンサ等の回路では他の部材に接触することを防止する必要性が高くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のような半導体ウエハ加工用粘着テープを用いての保護方法では、回路面に粘着剤が接触することを避けられない。このため、表面保護シートによりワークを確実に保護しつつも、保護シートを含む他の部材と回路面との接触を防止できるワークの保護方法が求められた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような問題に対し、本発明者は、回路が形成されたワークの表面に、回路形成部分を囲むように凸状パターンを形成し、その上に保護シートを貼付することで、保護シートを含む他の部材と回路面とが接触することなく、回路面を確実に保護することを着想し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の態様は、以下の通りである。
(1) ワークの表面に表面保護シートを貼付する工程を有するワークの保護方法であって、
前記ワークの表面は、複数の回路が形成された内周部と、前記内周部を取り囲む回路を有しない外周部とを有し、
前記回路の間、および前記外周部に凸状パターンを形成し、
凸状パターンを設けた面に表面保護シートを貼付する、ワークの保護方法。
(2) 内周部に形成された回路の高さHcと、凸状パターンの高さHpとが、Hc<Hpである関係を満足する、(1)に記載のワークの保護方法。
(3) 前記凸状パターンが樹脂から構成される、(1)に記載のワークの保護方法。
(4) 前記表面保護シートが、樹脂フィルムである、(1)に記載のワークの保護方法。
(5) 上記(1)~(4)の何れかに記載の方法によりワークを保護し、
ワークを保護しつつ、ワーク裏面を研削し、
前記表面保護シートを剥離するとともに、前記凸状パターンを表面保護シートに同伴して除去する、ワークの加工方法。
(6) 前記ワークの表面に凸状パターンを形成する工程の前に、前記ワークの表面に溝を形成する工程を有し、
前記ワークの裏面を研削する工程において、溝を起点として、前記ワークを複数のワーク個片化物に個片化する(5)に記載のワークの加工方法。
(7) 前記ワークの裏面を研削する工程の前に、前記ワーク内部に改質領域を形成する工程を有し、
前記ワークの裏面を研削する工程において、改質領域を起点として、前記ワークを複数のワーク個片化物に個片化する(5)に記載のワークの加工方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表面保護シートを含む他の部材と回路面とが接触することなく、ワークの回路面を確実に保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図2は、回路表面に形成した凸状パターンの一例を示す平面図である。
【
図3】
図3は、回路表面に形成した凸状パターンの他の例を示す平面図である。
【
図5】
図5は、凸状パターン上に表面保護シートを貼付した状態を示す断面模式図である。
【
図6】
図6は、本発明のワークの保護方法によりワークを保護しつつ、ワークの裏面を加工(研削)している状態を示す断面模式図である。
【
図7】
図7は、ワークの裏面を加工後に、表面保護シートを剥離している状態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を、具体的な実施形態に基づき、図面を用いて詳細に説明する。まず、本明細書で使用する主な用語を説明する。
【0013】
ワークとは、表面保護シートが貼付されて、その後、個片化される板状体を言う。ワークとしては、円形(ただし、オリエンテーションフラットを有する場合を含む)のウエハ、角形のパネルレベルパッケージおよびモールド樹脂封止を施したストリップ(短冊形基板)等が挙げられ、その中でも本発明の効果が得られ易い観点から、回路を有するウエハが好ましい。ウエハとしては、例えばシリコンウエハ、ガリウム砒素ウエハ、炭化ケイ素ウエハ、窒化ガリウムウエハ、インジウム燐ウエハなどの半導体ウエハや、ガラスウエハ、タンタル酸リチウムウエハ、ニオブ酸リチウムウエハなどの絶縁体ウエハであってもよく、また、ファンアウトパッケージ等の作製に用いる樹脂と半導体から成る再構成ウエハであってもよい。本発明の効果が得られ易い観点から、ウエハとしては、半導体ウエハまたは絶縁体ウエハが好ましく、半導体ウエハがより好ましい。
【0014】
ワークの個片化は、ワークを回路毎に分割し、ワーク個片化物を得ることを言う。例えば、ワークがウエハである場合には、ワーク個片化物はチップであり、ワークがパネルレベルパッケージまたはモールド樹脂封止を施したストリップ(短冊形基板)である場合には、ワーク個片化物は半導体パッケージである。
【0015】
ワークの「表面」は、回路が形成されている面を指し、ワークの「裏面」は、回路等が形成されていない面を指す。回路は特に限定はされないが、本発明の方法は、回路と他の部材との接触が強く忌避される、イメージセンサ用回路、MEMSに特に好ましく用いられる。
【0016】
DBGとは、ウエハの表面側に所定深さの溝を形成した後、ウエハ裏面側から研削を行い、研削によりウエハを個片化する方法を言う。ウエハの表面側に形成される溝は、ブレードダイシング、レーザーダイシングやプラズマダイシングなどの方法により形成される。
【0017】
また、LDBGとは、DBGの変形例であり、レーザーでウエハ内部に改質領域を設け、ウエハ裏面研削時の応力等でウエハの個片化を行う方法を言う。
【0018】
「ワーク個片化物群」とは、ワークの個片化後に、本発明に係る表面保護シート上に保持された、複数のワーク個片化物をいう。これらのワーク個片化物は、全体として、ワークの形状と同様の形状を構成する。また、「チップ群」とは、ワークとしてのウエハの個片化後に、本発明に係る表面保護シート上に保持された、複数のチップをいう。これらのチップは、全体として、ウエハの形状と同様の形状を構成する。
【0019】
「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および「メタクリレート」の双方を示す語として用いており、他の類似用語についても同様である。
【0020】
「エネルギー線」は、紫外線、電子線等を指し、好ましくは紫外線である。
【0021】
「重量平均分子量」は、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。このような方法による測定は、たとえば、東ソー社製の高速GPC装置「HLC-8120GPC」に、高速カラム「TSK guard column HXL-H」、「TSK Gel GMHXL」、「TSK Gel G2000 HXL」(以上、全て東ソー社製)をこの順序で連結したものを用い、カラム温度:40℃、送液速度:1.0mL/分の条件で、検出器を示差屈折率計として行われる。
【0022】
剥離シートは、粘着剤層を剥離可能に支持するシートである。シートとは、厚みを限定するものではなく、フィルムを含む概念で用いる。
【0023】
粘着剤や、凸状パターン形成用組成物等の組成物に関する説明における質量比は、有効成分(固形分)に基づいており、特段の説明が無い限り、溶媒は算入しない。
【0024】
本発明の実施形態として、 一方の面(表面)に回路等が形成され、他方の面(裏面)に回路等が形成されていないワークの加工の一つとして、ワークの裏面を研削することが例示される。裏面を研削することにより、ワークの厚みを薄くでき、また上記DBG、LDBGによれば、ワークを個片化して得られるワーク個片化物の薄型化を実現することができる。
【0025】
このとき、ワークの裏面研削を行う前に、ワークの表面を保護するために、表面保護シートがワークの表面に貼付される。表面保護シートをワークの表面に貼付することにより、裏面研削時におけるワーク表面への研磨材、冷却水等の浸入による回路等の汚染、裏面研削時に印加される力による回路等の破損が防止される。
【0026】
本実施形態に係る方法により保護されるワークは、ワークの表面において、複数の回路が形成されている内周部と、内周部を取り囲み回路を有しない外周部と、が存在している。
【0027】
以下の説明では、図面を参照するが、図面ではワーク(ウエハ)に対する回路の相対的な大きさ、回路間隔については、大きくデフォルメしている。
【0028】
図1にワーク表面側からの平面図を示す。ワーク1の表面には、破線で示した切断予定ライン3に囲まれた複数の回路が形成されている。図面では、回路のうち特に他の部材との接触が強く忌避される部分を符号2で示した。以下、この領域を「特定領域2」と記載する。このワークは最終的には、破線で示した切断予定ライン3に沿って回路毎に切断され複数の素子小片(チップ)に分割される。
【0029】
本実施形態に係るワークの保護方法は、以下の工程1および工程2を備えている。
工程1:ワーク表面の特定領域の間、および外周部に凸状パターンを形成する工程
工程2:凸状パターンを設けた面に表面保護シートを貼付する工程
【0030】
以下では、ワークがウエハである場合について、ワークの保護方法を説明する。
【0031】
(工程1)
工程1では、ウエハ表面内周部の特定領域の間、および外周部に凸状パターンを形成する。特定領域の間とは、具体的には切断予定ライン3の近傍であり、凸状パターンは、切断予定ライン3を覆うように設けられる。外周部はウエハの縁部であり、回路が形成されていない領域を指す。一般にウエハの縁部から10mm程度の領域が回路を有しない外周部となる。
【0032】
(凸状パターン4)
凸状パターン4は、ウエハ1の表面において、ウエハ1の厚さ方向に突出して形成されるパターンである。このような凸状パターン4が、ウエハの表面の内周部の回路の特定領域2の間および外周部に形成されていることにより、ウエハ1の表面に、表面保護シート10を貼付した場合であっても、表面保護シート10と特定領域2とは非接触の状態を保つ。
【0033】
本実施形態では、凸状パターン4の高さHpを、ウエハの表面の回路2の高さHcに応じて設定することが好ましい。なお、回路2の高さHcとは、ウエハ表面の回路間の平面部分に対する、回路の最も高い部分の高さを言う。凸状パターン4の高さHpは、ウエハ表面の回路間の平面部分に対する、凸状パターンの最も高い部分の高さを言う。凸状パターン4の高さHpと、ウエハの表面の回路2の高さHcとは、Hc<Hpの関係を満足することが好ましい。凸状パターン4の高さHpを、ウエハの表面の回路2の高さHcよりも高く設定することで、凸状パターン4の上に貼付される表面保護シート10が、回路2に接触することを防止できる。
【0034】
本実施形態では、凸状パターンの高さHpは1~2000μmであることが好ましい。
【0035】
凸状パターン4を構成する材料は、その上に貼付される表面保護シート10を安定して保持できる材料であればよい。本実施形態では;;、凸状パターンの形成が容易であるという観点から、凸状パターンを構成する材料は樹脂であることが好ましい。樹脂としては、ウエハ表面に対して密着する粘着性樹脂であることが好ましい。粘着性樹脂としては、たとえば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、ナイロン、ポリカーボネート、ポリプロピレン等が例示される。
【0036】
また、粘着性樹脂は硬化性であることが好ましい。硬化前には所定の形状とすることが容易であり、硬化後には、裏面研削時において研磨材、冷却水等がウエハの回路等へ浸入することを抑制できる程度に硬質な材料とすることが容易となる。
【0037】
硬化性樹脂として、熱硬化性樹脂、エネルギー線硬化性樹脂等が例示され、裏面研削後にウエハ表面から凸状パターンを除去する観点から、エネルギー線硬化性樹脂が好ましい。
【0038】
凸状パターンの23℃におけるせん断貯蔵弾性率が50MPa以上であることが好ましい。23℃におけるせん断貯蔵弾性率が上記の範囲内であることにより、凸状パターンが比較的硬質となり、裏面研削時においても、ウエハの外周部とウエハの内周部との高低差が抑制される。なお、凸状パターンが硬化性樹脂から形成される場合には、せん断貯蔵弾性率は、硬化後の樹脂について測定した値である。
【0039】
凸状パターン4は、
図2、
図3、
図4に示すように、ウエハ表面内周部の特定領域の間、および外周部に形成される。凸状パターン4は、
図2に示すように、特定領域2以外の表面部分をすべて覆うように形成されていてもよい。また
図3に示すように、特定領域2以外の表面の一部を覆うように形成されていてもよい。凸状パターン4は、連続して切れ目なく形成されていることが好ましい。凸状パターン4を連続して形成しておくと、凸状パターンを除去する際に、凸状パターンを連続して剥離できる。一方、凸状パターンが不連続であると、凸状パターンの除去の際に、一部がウエハ表面に残留してしまうことがある。
【0040】
凸状パターン4の形成手段は、凸状パターン4を形成するための材料に応じて決定すればよい。たとえば、硬化性樹脂を用いて凸状パターンを形成する場合、硬化前の液状樹脂を塗布する手段を用いることができる。具体的には、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、スリットコーター、ナイフコーター等の塗布装置;スクリーン印刷、インクジェット印刷等の印刷装置;ディスペンサー等の滴下装置が使用可能である。
【0041】
(工程2)
図5に示すように、凸状パターン4を形成した後、凸状パターン4の頂部に表面保護シート10が貼付される。
(表面保護シート10)
表面保護シート10は、ウエハ表面の回路等を保護するように構成されていればよい。凸状パターンの材料との密着性が良好であれば、表面保護シート10は、樹脂フィルムであってもよい。なお、樹脂フィルムとは、粘着剤層を有しない薄層状の樹脂成型物であり、単層あってもよく、積層体であってもよい。かかる樹脂フィルムは、一般に接着性を有しないが、凸状パターンの材質との親和性が高い樹脂フィルムであれば、適度な圧力を加え、必要に応じ加熱することで、樹脂フィルムを凸状パターン上に貼付できる。
【0042】
また、表面保護シート10は、基材と粘着剤層とを有する、いわゆる粘着シートであってもよい。粘着剤層が凸状パターン4の頂部に貼付されることにより、特定領域2が確実に保護される。また、表面保護シート10は、基材と粘着剤層との間に中間層を有していてもよい。さらに、中間層と粘着剤層との間に他の層が形成されていてもよい。
【0043】
表面保護シートが樹脂フィルムである場合、1つの樹脂フィルムからなる単層フィルムから構成されていてもよいし、複数の樹脂フィルムが積層された複層フィルムから構成されていてもよい。
【0044】
本実施形態では、樹脂フィルムの材質としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、全芳香族ポリエステル等のポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、二軸延伸ポリプロピレン等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステルが好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0045】
樹脂フィルムの厚さは、表面保護シートの剛性に影響するため、樹脂フィルムの材質に応じて設定すればよい。本実施形態では、樹脂フィルムの厚さは25μm以上200μm以下であることが好ましく、35μm以上150μm以下であることがより好ましく、40μm以上150μm以下であることがさらに好ましい。
【0046】
表面保護シート10は、基材と粘着剤層とを有する、いわゆる粘着シートであってもよい。かかる粘着シートの基材としては、上記した樹脂フィルムが用いられる。粘着剤層の組成は、凸状パターンの頂部に貼付できる程度の粘着性を有していれば限定されない。本実施形態では、粘着剤層は、たとえば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等から構成されることが好ましい。また、粘着剤層は、エネルギー線硬化性のアクリル系粘着剤から形成されることが好ましい。基材の一方の面には、粘着剤層との密着性を向上させるために、コロナ処理等の接着処理を施してもよい。
【0047】
粘着剤層の厚みは、凸状パターンの頂部に十分に接着できるような厚みであれば特に制限されない。本実施形態では、粘着剤層の厚みは1μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。なお、粘着剤層の厚さは、粘着剤層全体の厚さを意味する。たとえば、複数層から構成される粘着剤層の厚さは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0048】
(ワークの保護方法)
本実施形態では、
図5に示すように、凸状パターン4の頂部に表面保護シート10を貼付して、ワークを保護する。表面保護シート10は、予めワークと同形状に切断されていてもよく、表面保護シート10を貼付後に、ワークの外周形状に合わせて表面保護シート10を切断してもよい。ワークが回路を有する半導体ウエハである場合、各特定領域2が凸状パターン4に囲まれ、その上は表面保護シート10に覆われている。また、凸状パターン4は回路よりも高く設けられているため、表面保護シート10が特定領域に接触することもない。したがって、本実施形態によれば、回路の特定領域を清澄に保護できる。この状態で、ワークの輸送、保管、加工を行っても、特定領域がダメージを受けることが無い。
【0049】
(ワークの加工方法)
本実施形態によりワークを保護した状態で、ワークに加工を加えることができる。以下では、ワークが表面に回路を有する半導体ウエハであり、加工がウエハの裏面研削である場合を例にとり説明する。
【0050】
本発明のワークの加工方法では、表面保護シートが貼付されたウエハは、表面保護シート10側がチャックテーブル(図示せず)上に配置される。チャックテーブルは、たとえば、ポーラスな保持面を有しており、保持面から吸引することにより、表面保護シートがチャックテーブルに吸着され固定される。
【0051】
図6に示すように、ウエハがチャックテーブルに固定された後、たとえば、研削ホイール5等によりウエハの裏面を研削する。ウエハの裏面研削中には、研削時に発生する熱、研削屑を除去するため、研削面に水を噴霧しつつ研削するが、本発明のワークの保護方法によれば、ワークの特定領域は、凸状パターンおよび表面保護シートにより保護されているため、研削加工時の洗浄水等の浸入は起こらずウエハの特定領域を汚染することがない。裏面研削後のウエハの厚さは、たとえば、25μm以上600μm以下程度である。
【0052】
研削後、吸引を解除すると、ウエハおよび表面保護シートは、チャックテーブルから開放される。
【0053】
(剥離工程)
表面保護シート10を剥離する際には、
図7に示すように、裏面研削後のワーク1の裏面側に、ピックアップテープ12を貼付し、ピックアップが可能なように位置及び方向合わせを行う。この際、ワーク1の外周側に配置したリングフレーム14もピックアップテープ12に貼り合わせ、ピックアップテープ12の外周縁部をリングフレーム14に固定する。ピックアップテープ12には、ワーク1とリングフレームを同時に貼り合わせてもよいし、別々のタイミングで貼り合わせてもよい。次いで、ピックアップテープ12上に保持されたワーク1から表面保護シート10を剥離する。
【0054】
本実施形態では、裏面研削後のワーク1から、表面保護シート10を剥離する。この際に、表面保護シート10と同伴して、凸状パターン4を剥離する。表面保護シート10として、凸状パターン4の材質との親和性が高い樹脂フィルムを用いると、表面保護シート10と凸状パターン4とを一体化した状態で剥離できる。たとえば、凸状パターン4と樹脂フィルムとを同一または類似の樹脂から形成すると、樹脂フィルムと凸状パターンとを一体化して剥離できる。また、表面保護シート10として粘着シートを用いても、凸状パターン4が粘着シートに密着するため、表面保護シート10と凸状パターン4とを一体化した状態で剥離できる。
【0055】
(DBGまたはLDBG)
本実施形態に係るワークの加工方法をDBGまたはLDBGに適用する場合、上記の工程1、2に加えて、ウエハの表面に溝を形成する工程(工程3A:DBG)、または、当該ウエハ内部に改質領域を形成する工程(工程3B:LDBG)を有する。溝および改質領域は、上述した裏面研削において、ウエハが分割されて個片化される際の切断予定ライン3に沿うように形成される。
【0056】
ダイシング等によりウエハの表面に溝を形成する場合には、工程3Aの後に工程1、2を行う。すなわち、工程1において、後述する工程3Aで形成した溝を覆うように凸状パターンを形成する。なお、凸状パターンを形成する樹脂の粘度が低すぎると、樹脂が溝の間に浸入し分割後のチップ同士を接着し、チップのピックアップが不可能になる。このため、本実施形態に係るワークの加工方法をDBGに適用する場合には、凸状パターンを形成する樹脂材料の粘度を高めに設定することが好ましい。
【0057】
工程3Aで形成される溝は、ウエハの厚さより浅い深さの溝である。溝の形成は、従来公知のダイシング装置等を用いてダイシングにより行うことが可能である。また、ウエハは、裏面研削時に印加される応力により溝に沿って複数のチップに分割される。
【0058】
一方、ウエハに改質領域を形成する場合には、工程1、2を工程3Bの前に行ってもよいし、工程3Bの後に行ってもよい。本実施形態では、ウエハに改質領域を形成する場合には、工程1、2を工程3Bの前に行うことが好ましい。
【0059】
また、改質領域は、ウエハにおいて、脆質化された部分であり、研削工程における研削によって、ウエハが薄くなったり、裏面研削時に印加される応力が加わったりすることによりウエハの改質領域が破壊されてチップに個片化される起点となる領域である。
【0060】
改質領域は、ウエハの内部に焦点を合わせたレーザーの照射によりウエハの内部に形成される。レーザーの照射は、ウエハの表面側から行っても、裏面側から行ってもよい。なお、改質領域を形成する態様において、工程3Bを工程1の後に行いウエハ表面からレーザー照射を行う場合、表面保護シートを介してウエハにレーザーを照射することになる。
【0061】
DBGでは、裏面研削は、少なくとも溝の底部に至る位置までウエハを薄くするように行う。この裏面研削により、溝は、ウエハを貫通する切り込みとなり、ウエハは切り込みにより分割されて、個々のチップに個片化され、表面保護シート上に整列したチップ群となり、表面保護シート上に、ワーク個片化物群が得られる。
【0062】
LDBGでは、研削によって研削面(ウエハ裏面)は、改質領域に至ってもよいが、厳密に改質領域まで至らなくてもよい。すなわち、改質領域を起点としてウエハが破壊されてチップに個片化されるように、改質領域に近接する位置まで研削すればよい。この結果、ワークは個々のチップに個片化され、表面保護シート上に整列したチップ群となり、表面保護シート上に、ワーク個片化物群が得られる。また、チップの実際の個片化は、ピックアップテープを貼付してからピックアップテープを延伸することで行ってもよい。
【0063】
また、裏面研削の終了後、チップのピックアップに先立ち、ドライポリッシュを行ってもよい。
【0064】
個片化されたチップ(ワーク個片化物)の形状は、方形でもよいし、矩形等の細長形状となっていてもよい。また、個片化されたチップの厚さは特に限定されないが、好ましくは5~100μm程度であるが、より好ましくは10~45μmである。LDBGによれば、個片化されたチップの厚さを50μm以下、より好ましくは10~45μmとすることが容易になる。また、個片化されたチップの大きさは、特に限定されないが、チップサイズが好ましくは600mm2未満、より好ましくは400mm2未満、さらに好ましくは120mm2未満である。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の態様で改変しても良い。
【実施例0066】
以下、実施例を用いて、発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
本実施例における評価方法は以下の通りである。
【0068】
(汚染性)
回路の特定領域に表面保護シートが接触すると、特定領域に表面保護シート由来の有機物が付着し、特定領域を汚染する。この汚染の有無を調べるため、以下の評価を行った。
【0069】
(1.粘着シートの作成)
ブチルアクリレート(BA)80質量部と、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)20質量部とを共重合してなるアクリル系共重合体に、2-イソシアナートエチルメタクリレート(MOI)を、HEA由来の水酸基(100当量)に対して付加率が80当量となるように付加して得たエネルギー線硬化性アクリル系共重合体(重量平均分子量:800,000)100質量部に対して、架橋剤としてのトリメチロールプロパンアダクトトリレンジイソシアネート(東ソー製、コロネートL)を1.5質量部、光重合開始剤としての2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(IGM Resin社製、Omnirad651)を2.2質量部添加し、さらにトルエンを加えて固形分濃度が30%となるように調整し、30分間撹拌を行って粘着剤組成物を調製した。
【0070】
次いで、調製した粘着剤組成物の溶液を、PETフィルム(厚み110μm)に塗布し、乾燥させて厚さ20μmの粘着剤層を形成し、粘着シートを作製した。
【0071】
(2.サンプルウエハの作成)
2官能ポリオール変性ウレタンアクリレート(分子量7300)25質量部、イソボルニルアクリレート75質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート20質量部、光重合開始剤(IGM Resin社製、Omnirad1173)0.5質量部配合して紫外線硬化性樹脂を得た。
【0072】
12インチシリコンミラーウエハ(厚さ720μm)の鏡面に、幅200μm、厚さ20μmで10mm間隔で格子状に下記の紫外線硬化型樹脂を塗布し、10mmX10mmの非塗布部を形成し、またウエハの外周部には、幅3mm、厚さ20μmで同様に紫外線硬化型樹脂をウエハ外周端との間に隙間が生じないように塗布した。紫外線照射(照度150mW/cm2、照射量300mJ/cm2)し樹脂を硬化した。この結果、シリコンウエハの内周部に、高さ20μmの凸状パターンに囲まれた10mmX10mmのウエハ鏡面露出部を多数有するサンプルウエハを作成した。ウエハ鏡面露出部を、前記特定領域(回路のうち、他の部材との接触を避けるべき領域)とみなし、以下の試験を行う。
【0073】
(3.水接触角の測定)
上記のサンプルウエハの鏡面露出部表面の水接触角を、JIS R 3257:1999に準拠して測定した。具体的には、実施例及び比較例で表面保護シートを剥離した後のウエハ鏡面露出部表面に精製水を滴下した際の静的接触角を、全自動式接触角測定計(協和界面科学社製、製品名「DM-701」)を用いて以下の条件にて測定した。
【0074】
なお、サンプルウエハ作成直後のウエハ鏡面露出部表面の水接触角は2°であった。ウエハ鏡面露出部表面が、有機部材に接触するとウエハ鏡面露出部表面が汚染され、水接触角は増大する。
・測定温度:23℃
・精製水の液滴量:2μl
・測定時間:滴下1秒後
・画像解析法:θ/2法
【0075】
[実施例1]
上記の凸状パターン上に、厚さ50μmのPETフィルムを貼付した。この状態で、ウエハの裏面研削を行い厚さ200μmまで研削した。研削終了後、粘着シートを剥離し、サンプルウエハのウエハ鏡面露出部表面の水接触角を測定した。結果を表1に示す。
【0076】
[実施例2]
上記の凸状パターン上に、1.で作成した粘着シートの粘着剤層を貼付した。この状態で、ウエハの裏面研削を行い厚さ200μmまで研削した。研削終了後、粘着シートを剥離し、サンプルウエハのウエハ鏡面露出部表面の水接触角を測定した。結果を表1に示す。
【0077】
[比較例1]
凸状パターンを設けないサンプルウエハの表面に、直接上記粘着シートを貼付し、この状態で、ウエハの裏面研削を行い厚さ200μmまで研削した。研削終了後、粘着シートを剥離し、サンプルウエハ表面の水接触角を測定した。結果を表1に示す。
【0078】
【0079】
本発明のワークの保護方法によれば、ワークの保護中に、保護対象物(たとえば回路)が、表面保護シートを含む他の部材と接触することなく、保護対象物を確実に保護できる。