(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134992
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】コイル部品、回路基板およびコイル部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20240927BHJP
H01F 27/30 20060101ALI20240927BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20240927BHJP
H05K 1/16 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F27/30 101A
H01F27/32 140
H05K1/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045471
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慎太郎
【テーマコード(参考)】
4E351
5E044
5E070
【Fターム(参考)】
4E351AA07
4E351BB11
4E351BB31
4E351BB33
4E351CC06
4E351CC11
4E351DD04
4E351DD05
4E351DD10
4E351DD19
4E351GG20
5E044CA10
5E070AA01
5E070AB08
5E070BB03
5E070DA13
5E070DB02
(57)【要約】
【課題】高密度実装が可能なコイル部品を提供する。
【解決手段】一態様に係るコイル部品によれば、金属磁性粒子が絶縁材で結合されてなり、表面として、互いに隣り合う第1面および第2面を有し、上記第1面における表面抵抗よりも上記第2面における表面抵抗が高い磁性部と、上記磁性部の内部あるいは表面に設けられる導体部と、上記第1面に設けられて上記導体部と接続される外部電極と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属磁性粒子が絶縁材で結合されてなり、表面として、互いに隣り合う第1面および第2面を有し、前記第1面における表面抵抗よりも前記第2面における表面抵抗が高い磁性部と、
前記磁性部の内部あるいは表面に設けられる導体部と、
前記第1面に設けられて前記導体部と接続される外部電極と、
を備えることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記磁性部は、前記第2面とは背向し前記第1面と隣り合う第3面を有し、前記第1面における表面抵抗よりも前記第3面における表面抵抗が高いことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記磁性部は、前記第1面および前記第2面の双方と隣り合う第4面および第5面を有し、前記第4面および前記第5面それぞれにおける表面抵抗が前記第1面における表面抵抗よりも高いことを特徴とする請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第2面における表面抵抗に対し、前記第3面、前記第4面および前記第5面における表面抵抗は誤差10%以内であることを特徴とする請求項3に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記磁性部は、前記第1面と背向する第6面を有し、前記第6面における表面抵抗が前記第1面における表面抵抗よりも高いことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第2面における表面抵抗に対し、前記第3面から前記第6面における表面抵抗は誤差10%以内であることを特徴とする請求項5に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記外部電極は、前記第1面に直交する方向に見て前記第1面の外周以内に設けられることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記外部電極は、前記第2面、前記第3面、前記第4面および前記第5面から離間していることを特徴とする請求項3に記載のコイル部品。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のコイル部品と、
前記コイル部品が実装された基板と、を備えることを特徴とする回路基板。
【請求項10】
金属磁性材料の原料粒子と、前記原料粒子を結合させる絶縁性の結合材とにより6つの成形面を持つ成形体を得る成形工程と、
前記6つの成形面のうち少なくとも1つの面に対し、前記原料粒子および前記結合材を除去する加工を施して加工面を得る加工工程と、
前記加工面にめっきにより外部電極を形成する電極形成工程と、
を有することを特徴とするコイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品、回路基板およびコイル部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高性能な電子機器の代表的なものとして携帯電話が知られている。携帯電話に用いられる電子部品は、高性能化だけでなく小型化も求められる。また、一部の電子機器では、より部品点数を増やすことが必要となるため、部品を高い密度で実装する高密度実装が行われている。高密度実装の実現には、部品の小型化と、部品間隔の狭ピッチ化とが求められる。
【0003】
部品間隔の狭ピッチ化に対応した電子部品の設計では、実装面のみに外部電極が設けられる構造が採用されることが多く、この構造に関する技術検討が従来行われている。
また、小型のコイル部品における高性能化として、磁性体材料をフェライトから金属磁性材料に置き換える技術的動向が進んでいる。コイル部品における磁性体材料の置き換えは、電流負荷に対応するもので、材料の置き換えによって電流に対する飽和特性が変わり、同じ電流負荷の場合でもコイル部品の小型化が可能となる。
【0004】
コイル部品において金属磁性材料の採用が増えるのに伴って生産性の向上も求められている。例えば特許文献1では、従来から行われている積層プロセスの一部が採用されてシート状に成形されたものを部品サイズに切断する方法によって小型化と生産性の両方を高めることが提案されている。但し、特許文献1のコイル部品では、切断面である端面に対する外部電極の形成が必要となり、部品間隔の狭ピッチ化を阻害し、延いては高密度実装を阻害する。
【0005】
これに対し、例えば特許文献2では、素体の端面において引出電極を絶縁層で覆うコイルアレイ部品が提案されている。
このように、従来は、高性能化および小型化への対応として金属磁性材料が採用され、狭ピッチ化への対応として絶縁層が採用されている。またこれらの対応の組み合わせも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-92422号公報
【特許文献2】特開2020-17621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、絶縁層が設けられる場合、絶縁性の確保のために絶縁層の十分な厚みが必要となることや、底面側の電極に対する絶縁材料の付着防止が必要となることなどが、電子部品の小型化の制約となり、延いては高密度実装を阻害する。
上記事情に鑑み、本発明は、高密度実装が可能なコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、金属磁性粒子が絶縁材で結合されてなり、表面として、互いに隣り合う第1面および第2面を有し、上記第1面における表面抵抗よりも上記第2面における表面抵抗が高い磁性部と、上記磁性部の内部あるいは表面に設けられる導体部と、上記第1面に設けられて上記導体部と接続される外部電極と、を備える。
【0009】
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記磁性部は、上記第2面とは背向し上記第1面と隣り合う第3面を有し、上記第1面における表面抵抗よりも上記第3面における表面抵抗が高い。
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記磁性部は、上記第1面および上記第2面の双方と隣り合う第4面および第5面を有し、上記第4面および上記第5面それぞれにおける表面抵抗が上記第1面における表面抵抗よりも高い。
【0010】
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記第2面における表面抵抗に対し、上記第3面、上記第4面および上記第5面における表面抵抗は誤差10%以内である。
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記磁性部は、上記第1面と背向する第6面を有し、上記第6面における表面抵抗が上記第1面における表面抵抗よりも高い。
【0011】
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記第2面における表面抵抗に対し、上記第3面から上記第6面における表面抵抗は誤差10%以内である。
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記外部電極は、上記第1面に直交する方向に見て上記第1面の外周以内に設けられる。
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記外部電極は、上記第2面、上記第3面、上記第4面および上記第5面から離間している。
【0012】
また、本発明の一態様に係る回路基板によれば、上述したいずれかのコイル部品と、上記コイル部品が実装された基板と、を備える。
また、本発明の一態様に係るコイル部品の製造方法によれば、金属磁性材料の原料粒子と、上記原料粒子を結合させる絶縁性の結合材とにより6つの成形面を持つ成形体を得る成形工程と、上記6つの成形体のうち少なくとも1つの面に対し、上記原料粒子および上記結合材を除去する加工を施して加工面を得る加工工程と、上記加工面にめっきにより外部電極を形成する電極形成工程と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高密度実装が可能なコイル部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコイル部品を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るコイル部品を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るコイル部品を示す底面図である。
【
図5】コイル部品の高密度実装の例を示す図である。
【
図6】コイル部品の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】成形面の微視的構造を模式的に示す図である。
【
図8】加工面の微視的構造を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の構成に必須のものとは限らない。実施形態の構成は、本発明が適用される装置の仕様や各種条件(使用条件、使用環境等)によって適宜修正または変更され得る。
【0016】
本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって画定され、以下の個別の実施形態によって限定されない。以下の説明に用いる図面は、各構成を分かり易くするため、実際の構造と縮尺および形状などを異ならせることがある。先に説明した図面に示された構成要素については、後の図面の説明で適宜に参照する場合がある。
【0017】
<コイル部品の構造>
図1~
図3は、本発明の一実施形態に係るコイル部品を示す図であり、
図1には斜視図が示され、
図2には、
図1のA-A線に沿った断面が示され、
図3には底面図が示されている。
【0018】
コイル部品1は、基板2aに実装されている。基板2aには、例えば2つのランド部3が設けられている。コイル部品1は、1つの磁性基体(磁性部)11と2つの外部電極12とを有する。コイル部品1は各外部電極12とランド部3とが半田4で接合されることで基板2aに実装される。H軸方向に見た場合、ランド部3の面積は、外部電極12の面積の1.6倍以下である。より望ましくは、H軸方向に見た場合、ランド部3の面積は、外部電極12の面積の1.3倍以下である。
【0019】
本発明の一実施形態による回路基板2は、コイル部品1と、このコイル部品1が実装された基板2aと、を備える。回路基板2は、様々な電子機器に備えられる。回路基板2を備えた電子機器としては、自動車の電装品、サーバ、ボードコンピュータおよびこれら以外の様々な電子機器が想定される。
【0020】
コイル部品1は、インダクタ、フィルタ、リアクトルおよびこれら以外の様々なコイル部品であってもよい。コイル部品1は、カップルドインダクタ、トランス、チョークコイルおよびこれら以外の様々な磁気結合型コイル部品であってもよい。コイル部品1は、例えば、DC/DCコンバータに用いられるインダクタであってもよい。
【0021】
本明細書においては、文脈上別に解される場合を除き、方向の説明は、
図1の「L軸」方向、「W軸」方向および「H軸」方向を基準に用い、それぞれ、「長さ」方向、「幅」方向および「高さ」方向と称する。
コイル部品1は、直方体形状の外形を有する。即ちコイル部品1は、長さ方向Lの両端に端面1a、1bを有し、高さ方向Hの両端に上面1cおよび底面1dを有し、幅方向Wの両端に前面1eおよび後面1fを有する。底面1dは、コイル部品1が基板2aに実装される際に基板2aと対向する実装面である。
【0022】
直方体形状のコイル部品1における各辺の寸法は、外形寸法における最大の1辺が5.0mmより小さく、または2.5mmより小さく、更には2.0mmより小さくてもよい。コイル部品1の外部電極は、コイル部品1の表面積の20%より小さく、更には10%よりちいさくてもよい。コイル部品1の単位体積当たりの重量は、0.6g/mm3より大きく、または0.65g/mm3より大きく、更には0.70g/mm3より大きくてもよい。また、コイル部品1の外部電極の単位面積当たりの重量は、0.025g/mm2より大きく、または0.027g/cm2より大きく、更には0.029g/cm2より大きくてもよい。
【0023】
コイル部品1の外面はいずれも、平坦な平面であってもよいし湾曲した湾曲面であってもよい。また、コイル部品1の8つの角部および12の稜線部は、丸みや面取りを有していてもよい。
本明細書においては、コイル部品1の外面の一部が湾曲している場合や、コイル部品1の角部や稜線部が丸みを有している場合にも、かかる形状を「直方体形状」と称することがある。つまり、本明細書において「直方体」又は「直方体形状」という場合には、数学的に厳密な意味での「直方体」を意味するものではない。
【0024】
本発明の第1実施形態におけるコイル部品1は、磁性基体(磁性部)11と外部電極12を有し、磁性基体11の内部にコイル導体(導体部)14を有する。
磁性基体11は6つの面を有し、外形形状のひとつとしては直方体形状であり、磁性基体11の端面1a、1b、上面1c、底面1d、前面1eおよび後面1fは、実質的にコイル部品1の端面1a、1b、上面1c、底面1d、前面1eおよび後面1fとなっている。ひとつの例として、底面1dは第1面であり、端面1a、1bは第2面、第3面であり、全面1eおよび後面1fは第4面、第5面であり、上面1cは第6面である。第1面は、第2面、第3面、第4面および第5面と隣り合う位置にあり、第6面とは互いの面が背向する位置にある。隣り合うは、隣の面同士が直交する位置関係であり、背向するは、面同士が反対方向に外側を向く位置関係である。
【0025】
本実施形態における磁性基体11は、金属磁性材料と結合材とから形成される磁性体である。結合材は、金属磁性材料の相互間を結合させるものであり、また電気的な導通を防ぐため、絶縁性の高いものでもある。結合材は、磁性基体11の表面抵抗が105Ω/sq.以上となるものが用いられる。Feを主成分とする金属磁性材料自体は抵抗が低いことから、金属磁性材料に合わせて結合材の成分や配合割合等の調整が行われることが望ましい。結合材としては、例えば比抵抗が108Ωcm以上であるものが選ばれ、また絶縁性を高める目的から、結合材としては、樹脂が含まれ、また樹脂以外の成分としてガラス、金属酸化物が選択され得る。
【0026】
磁性基体11は、内部の比抵抗が非常に高く、また表面でも同様であり、表面にも結合材が存在している。金属磁性材料は、Fe、Ni、Coのうちの1以上の成分を含む金属磁性粒子である。また、金属磁性材料は金属磁性粒子に加えて、Mg、Mn、Niのうちの1以上のセラミックの磁性粒子やシリカなどの非磁性粒子を含んでもよい。金属磁性粒子としては、Fe、Ni、Coの成分に加えてSi、Cr、Al、B、Pのうちの1以上の成分を含んでもよく、また複数種の金属磁性粒子が組み合わされてもよい。
【0027】
磁性材料は、粒子の大きさが1μm以上60μm以下である。また、金属磁性材料が金属磁性粒子以外に、金属微粒子、金属酸化物、セラミック材料などの他の材料を更に含む場合、当該他の材料の粒径は平均で0.01~1μmであり、金属磁性粒子より粒径が小さい。金属磁性粒子以外の材料を含む場合は、磁性としての機能を高めることよりも、例えば空隙を減らす、または機械的強度を補うことができる。
磁性基体11は、金属磁性材料の充填率が80vol%以上88vol%以下であり、残部が金属磁性材料以外のものであり、絶縁物または空隙を含んでいる。
【0028】
導体14は、導電性に優れた金属材料から成る。コイル導体14用の金属材料としては、例えば、Cu、Al、Ni、もしくはAgのうちの1以上の金属、又はこれらの金属のいずれかを含む合金が用いられ得る。コイル導体14は、表面に絶縁物の皮膜が設けられた金属の導線が巻回されたものでもよいし、基板やシートなどの表面にめっきや印刷などによって形成されたものでもよい。
【0029】
本実施形態のコイル導体14は、1ターン以上周回した周回部41を有する。周回部41の周回数は、例えば1.5ターン以上10.5ターン以下である。また、コイル部品1の長さ方向Lの寸法が例えば1.0~2.5mmのような場合、周回部41の周回数は、例えば、1.5ターン以上6.5ターン以下である。周回部41の形状は平面状でもよく螺旋状でもよい。周回部41は、例えば、2つの周回が上側と下側で対向した1つの集合体となっていてもよい。更に、コイル導体14は、周回部41を持たない直線状や階段状のものでもよい。
【0030】
導体14は、複数個の素子に分かれていてもよい。複数個の素子とは、それぞれが互いに絶縁の関係にあり、それぞれの素子がコイルとして機能することを意味する。導体14が複数個の素子に分かれたコイル部品1としては、例えば、素子が並列に並ぶアレイタイプや、素子が互いに磁気的に結合するタイプ、などがある。また、導体14が複数個の素子に分かれたコイル部品1は、具体的には、トランス、コモンモードチョークコイル、カップルドインダクタなどである。
【0031】
コイル導体14は、外部との電気的な導通を取るための引き出し部42を有する。引き出し部42は周回部41の両端に設けられており、外部電極12をコイル導体14と接続するものである。コイル導体14の作製には、巻線、薄膜、積層のいずれかのプロセスが用いられ、特に制限されることはない。
【0032】
図2には、磁性基体11の底面1dと上面1cに沿って周回した、いわゆる水平巻きの周回部41が例示されている。コイル導体14は、磁性基体11の端面1a、1bに沿って周回した、いわゆる垂直巻きの周回部を有してもよい。
コイル部品1は、磁性基体11の第1面に相当する底面1dに1対の外部電極12を備えている。本明細書において「面に設けられる」、「面に備えられる」とは、その面を見た場合に見える箇所に存在することを意味し、例えば面よりも内側に食い込んでいても、外側に突き出して設けられてもよい。また、磁性基体11が面に突起を有し、当該突起を覆うように外部電極12が設けられる場合も「面に設けられる」、「面に備えられる」ことに相当する。
【0033】
外部電極12は、一般的な金属材料が用いられて形成され、Ag、Cu、Ti、Ni、Snのうちの1以上の金属からなる金属層を有する。金属層は例えば厚みが0.01~5μmの層である。また、外部電極12は、複数の金属層が組み合わせられてもよく、合わせた厚みが5~10μmとなる。また、外部電極12は、樹脂を含む樹脂層が一部に組み合わせられてもよく、合わせた厚みが10~20μmとなる。
【0034】
外部電極12は、コイル部品1の外形寸法、若しくは底面1dの外周寸法に見合った面積を有し、基板2aへの実装に必要な面積を有する。例えば、コイル部品1の外形寸法から求められる底面1dの面積に対して外部電極12の面積割合は50%以下である。本実施形態では1対の外部電極12が設けられているので、1つの外部電極12の面積は、底面1dの面積の25%以下である。
【0035】
外部電極12は、底面1dの外周以内に設けられ、端面1a、1b、前面1e、後面1fには突き出していない。このため、外部電極12の存在によるコイル部品1の外形寸法の拡大が抑制され、磁性基体11の最大化が可能となる。外部電極12は、コイル部品1の外形寸法に影響を与えることなく、端面1a、1b、前面1e、後面1fと同一面まで設けられ得るので、底面1dにおいて外部電極12の最大化が可能となる。
【0036】
本実施形態では、外部電極12が底面1dの外周から離れた位置に設けられている。即ち、外部電極12は、端面1a、1b、前面1eおよび後面1fに達していない。
図3に示す外部電極12の配置により、実装時の半田4は底面1dの外周内に収まることになり、コイル部品1の実装に必要な面積が小さいので高密度実装に寄与する。
【0037】
外部電極12の配置は
図3に示す配置に限定されない。外部電極12は、例えば
図4に示す配置で設けられてもよい。
図4に示される例では、外部電極12は、一端が、例えば端面1a、1bと同一面となる位置に設けられている。外部電極12が
図4に示す位置に設けられた場合でも、外部電極12の存在によるコイル部品1の外形寸法の拡大が抑制され、コイル部品1の実装に必要な面積が小さいので高密度実装に寄与する。
【0038】
図5は、コイル部品1の高密度実装の例を示す図である。
磁性基体11の表面抵抗は、底面1dよりも端面1a、1bの方が高い。端面1a、1bは、底面1dに対して長さ方向Lに隣り合った面であり、1対の外部電極12は長さ方向Lに間隔を空けて並んでいる。長さ方向Lでは他の方向に較べ、実装時に、外部電極12と他の電子部品との距離が近くなりやすい。しかし、底面1dに対して長さ方向Lに隣り合った端面1a、1bの表面抵抗が大きいため、コイル部品1同士の間隔D1あるいはコイル部品1と他の電子部品との間隔D1の縮小化(即ち狭ピッチ化)が可能となる。また、端面1a、1b同士における表面抵抗の差は10%以内となっている。このため、長さ方向Lに隣り合う他の電子部品との部品間隔の調整が不要となる。
【0039】
また、磁性基体11の表面抵抗は、底面1dよりも前面1eおよび後面1fの方が高い。従って、幅方向Wでも部品間隔の狭ピッチ化が可能となる。また、端面1aの表面抵抗に対する端面1b、前面1eおよび後面1fの表面抵抗の差は10%以内となっている。このため、他の電子部品と隣り合う方向によらず、部品間隔の狭ピッチ化が図られるとともに、隣り合う方向に応じた部品間隔の調整も不要となる。
【0040】
更に、磁性基体11の表面抵抗は、底面1dよりも上面1cの方が高い。このため、高さ方向Hに複数の基板2aが配備される実装形態において、上面1cと他の基盤2aとの間隔D2の縮小化が可能となる。また、端面1aの表面抵抗に対する端面1b、前面1e、後面1fおよび上面1cの表面抵抗の差は10%以内となっている。このため、他の電子部品と隣り合う方向によらず、部品間隔の狭ピッチ化が図られるとともに、隣り合う方向および上下方向に応じた部品間隔の調整も不要となる。
磁性基体11またはコイル部品1は絶縁コートが設けられることなく絶縁性が得られるため、コイル部品1は小型化が可能であり、高密度実装が実現される。
【0041】
次に、コイル部品1の製造方法について説明する。
図6は、コイル部品1の製造方法の一例を示すフローチャートである。
ステップS101では、金属磁性材料を形成する原料粒子と絶縁材を形成する結合材が混合されて複合材料(コンポジット材料)が準備される。また、ステップS102では、コイル導体14となる導体部材が形成される。導体部材は、例えば導線によって形成されてもよいし、導体材料の印刷やめっきによって形成されてもよい。導体部材の形成では、例えば巻線、積層、薄膜などの工程が用いられる。
【0042】
ステップS103は成形工程であり、金型内に導体部材が配置され、例えば、加熱されたコンポジット材料が金型内に充填され圧縮されて冷却されるモールド成形により、導体部材と一体になった成形体が得られる。金型は、成形段階において表面の一部に樹脂成分が存在していても良い。この樹脂成分は、成形時の加熱温度で軟化しない樹脂が良い。樹脂成分は、例えば熱硬化性のものが選ばれる。ステップS103で得られる成形体は、1個のコイル部品1における磁性基体11に相当し、成形体は例えば6面体である。
【0043】
図7は、成形面の微視的構造を模式的に示す図である。
図7には、一例として端面1bに相当する成形面50が示されている。
コンポジット材料が金型内に充填され圧縮される際には、例えば10MPaより低い圧力で圧縮される。このことで、原料粒子54は変形量が少なく抑えられ、原料粒子54から得られる金属磁性粒子51のアスペクト比の変化は、10%より小さい範囲とすることができる。
【0044】
また、充填時には、コンポジット材料が結合材52の軟化温度以上の高い温度に加熱されることで結合材52は動きやすい状態となり、圧縮後は結合材52の軟化温度より低い温度に冷却されることで、結合材52が動かない状態となって成形体58が得られる。すなわち、成形工程において、従来の方法より圧力に頼らず、加熱と冷却とを組み合わせることで、結合材52を原料粒子54の表面に存在させて、成形体58を取り出すことができる。この結果、成形体58は外面の全体に同じように結合材52が存在し、結合材52から形成される絶縁材56も成形面50の全体に同じように存在することになる。このため、成形体58の表面で原料粒子54の表面が露出する面積は小さく、原料粒子54の露出する数も少なくできる。この成形面50の表面抵抗は高く、各成形面50における表面抵抗の差が小さい。成形面50の表面抵抗率は、原料粒子54の大きさと充填率、結合材の比抵抗などによって変わるが108Ω/sq.以下である。つまり、原料粒子54の表面が結合材52で覆われた成形体58が得られ、このような成形体58から得られる磁性基体11は金属磁性粒子51の表面が絶縁材56で覆われたものとなっている。
【0045】
図6に戻って説明を続ける。
ステップS104は加工工程であり、成形体58の外面(即ち成形面50)のうち、外部電極12が設けられる1面に対し、コイル導体14の引き出し部42を露出させる表面加工が施される。この表面加工においては、外部電極12の形成が可能とする範囲で、成形面より抵抗を下げる処理が行われる。外部電極12が、例えば底面1dから端面1bの一部まで達する2面電極である場合、表面加工は端面1bに相当する面の一部にも施される。但し、表面加工は、端面1bに相当する面の一部に限定され、端面1bに相当する面の大部分は成形面のままである。
【0046】
ステップS104では、成形体58の表面から結合材52を取り除く方法で表面加工が施されてもよく、あるいは原料粒子54を取り除く方法で表面加工が施されてもよい。
結合材52を取り除く方法の表面加工としては、レーザやサンドブラストなどを用いて結合材52にダメージを与え、結合材52を先に取り除くことで原料粒子54も取り除く方法が用いられ得る。原料粒子54を取り除く方法の表面加工としては、研磨を用いて原料粒子54に負荷を加え、原料粒子54を先に取り除くことで、結合材52も取り除く方法が用いられ得る。
【0047】
図8は、加工面の微視的構造を模式的に示す図である。
図8には、一例として底面1dに相当する加工面55が示されている。加工面55でも原料粒子54の表面が結合材52で覆われているが、表面加工によって結合材52が減少しており、加工面55における表面抵抗は成形面50よりも小さい。
なお、
図7、
図8には、成形体58における成形面50および加工面55が示されているが、成形体58から得られる磁性基体11、および原料粒子54から得られる金属磁性粒子51の表面についても、同様の構造となっている。
【0048】
結合材52を取り除く方法の表面加工では、結合材52のダメージによって表面抵抗が低下し、加工面55の表面抵抗は成形面50の表面抵抗よりも小さくなる。また、原料粒子54を取り除く方法の表面加工では、加工面55の結合材の欠落や原料粒子54の金属表面露出によって表面抵抗が低下し、加工面55の表面抵抗は成形面50の表面抵抗よりも小さくなる。表面抵抗の低下率は、結合材52を取り除く方法の表面加工の方が、原料粒子54を取り除く方法の表面加工よりも大きい。
【0049】
加工面55では、一部の原料粒子54が取り除かれて凹部53が生じているため、加工面55の表面粗さは成形面50の表面粗さよりも大きい。逆に、成形面50には表面加工が施されていないため、成形面50の表面粗さは加工面55の表面粗さよりも小さい。このため、成形面50における搬送などのハンドリング性が高く、また、成形面50からの原料粒子54の脱落が抑制される。これは、磁性基体11においても同様であり、成形面50の状態を維持しやすくなっている。
【0050】
図6のステップS104で表面加工が施された成形体58が得られ、ステップS105では、加工面55に対してスパッタリングあるいは蒸着により、外部電極12の一部として金属膜からなる下地電極が形成される。下地電極は外部電極12の形成範囲に形成され、例えば1面電極である場合は底面1dのみに形成され、あるいは2面電極である場合は底面1dから端面1bの一部まで形成される。
【0051】
図6のステップS106では、成形体58の表面の絶縁性を高める絶縁処理が行われる。絶縁処理としては、例えば酸処理や置換処理が用いられる。酸処理では、成形体58の表面に存在する原料粒子54が選択的に取り除かれる。置換処理では、例えばリン酸処理が用いられ、成形体58の表面に存在する原料粒子54の金属表面が置換により絶縁物に置き換わる。酸処理でも置換処理でも、絶縁処理後に成形体58から得られる磁性基体11の外形寸法は、成形体58の外形寸法と比べて大きくならない。また、絶縁処理後における成形体58の外形寸法は、成形体58の絶縁処理前の外形寸法と比べても大きくならない。特に、成形面50では、成形体58の表面に露出する原料粒子54に絶縁処理が施されるため、外形寸法の変化を生じることがなく、成形面50の全体に絶縁物が設けられる場合より、外形寸法を小さくすることができる。
【0052】
上述したように、成形面50の表面抵抗は、加工面55の表面抵抗より大きい。ステップS106の絶縁処理が施されない場合、加工面55の表面抵抗率は105Ω/sq.以上であり、絶縁処理された加工面55の表面抵抗率は106Ω/sq.以上である。
絶縁処理されない場合、成形面50の表面抵抗(率)は、加工面55の表面抵抗(率)に較べて10倍以上であり、絶縁処理された場合、成形面50の表面抵抗(率)は、加工面55の表面抵抗(率)に較べて2倍以上である。成形面50の表面には結合材52が加工面55よりも多く存在することから、成形面50および加工面55に対する絶縁処理の効果に違いが生じ、加工面55と比べて成形面50の方が、表面抵抗の増加が少なくなっている。
【0053】
ステップS107では、一例として、下地電極の外側に印刷や塗布により導電性樹脂材料からなる中間層が設けられ、中間層の外側に電解めっきにより金属層が設けられて外部電極12が形成される。外部電極12は下地電極の範囲に形成され、例えば1面電極である場合は底面1dのみに形成され、あるいは2面電極である場合は底面1dから端面1bの一部まで形成される。
外部電極12の形成により、コイル部品1が完成する。
【0054】
図6に示す製造方法によれば、ステップS103における成形工程の結果、成形面50の表面抵抗が大きく、またはそれぞれの成形面50の表面抵抗の差が小さい成形体58が得られるため、ステップS104における表面加工で成形面50よりも表面抵抗の小さい加工面55が容易に得られる。従って、成形面50よりも表面抵抗の小さい加工面55を有する磁性基体11を備えたコイル部品1が容易に得られる。
【符号の説明】
【0055】
1 コイル部品
1a、1b 端面
1c 上面
1d 底面
1e 前面
1f 後面
2 回路基板
2a 基板
3 ランド部
4 半田
11 磁性基体(磁性部)
12 外部電極
14 コイル導体(導体部)
41 周回部
42 引き出し部
50 成形面
51 金属磁性粒子
52 結合材
53 凹部
54 原料粒子
55 加工面
56 絶縁材
58 成形体
【手続補正書】
【提出日】2024-01-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
加工面55では、一部の原料粒子54が取り除かれて凹部53が生じているため、加工面55の表面粗さは成形面50の表面粗さよりも大きい。逆に、成形面50には表面加工が施されていないため、成形面50の表面粗さは加工面55の表面粗さよりも小さい。このため、成形面50における搬送などのハンドリング性が高く、また、成形面50からの原料粒子54の脱落が抑制される。これは、磁性基体11においても同様であり、成形面50の状態を維持しやすくなっている。
上述した説明から明らかに、表面粗さと表面抵抗との関係は、表面抵抗が大きい場合に表面粗さは小さく、表面抵抗が小さい場合に表面粗さは大きい関係となっている。