(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134995
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】エスカレータの静止利用誘導システム、静止利用誘導装置及び静止利用誘導方法
(51)【国際特許分類】
B66B 31/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B66B31/00 B
B66B31/00 A
B66B31/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045474
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】梶田 昭成
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321EA04
3F321EB07
3F321EC06
3F321HA01
3F321HA11
(57)【要約】
【課題】従来のエスカレータの歩行又は走行抑止装置は、ステップ上を歩行又は走行する移動利用者に対して注意喚起音等を発していた。移動利用者は、仕方なく注意喚起音等に従うこととなるため、移動利用者に煩わしさ又は不快感を与えずに、静止して利用するように誘導することができないという課題があった。
【解決手段】本開示に係るエスカレータの静止利用誘導システムは、エスカレータが備えるステップ上の利用者に関する情報を取得する情報取得装置と、娯楽性を有する音、光、音楽又は映像の少なくとも一つを出力する出力装置と、利用者に関する情報を用いて、ステップ上を歩行若しくは走行してエスカレータを利用している移動利用者がいるかを判断し、移動利用者がいる場合、出力装置の出力を止めさせる制御装置と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレータが備えるステップ上の利用者に関する情報を取得する情報取得装置と、
娯楽性を有する音、光、音楽又は映像の少なくとも一つを出力する出力装置と、
前記利用者に関する情報を用いて、前記ステップ上を歩行若しくは走行して前記エスカレータを利用している移動利用者がいるかを判断し、前記移動利用者がいる場合、前記出力装置の出力を止めさせる制御装置と、
を備えたエスカレータの静止利用誘導システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記移動利用者がいない場合、娯楽性を有する音、光、音楽又は映像の少なくとも一つを前記出力装置に出力させる
請求項1に記載のエスカレータの静止利用誘導システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記移動利用者がいる場合、前記出力装置の全ての出力を止めさせる
請求項1又は請求項2に記載のエスカレータの静止利用誘導システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記移動利用者がいる場合であって、前記ステップ上に静止して前記エスカレータを利用している静止利用者がいる場合、前記静止利用者に対する娯楽性を有する音、光、音楽又は映像を前記出力装置に出力させる
請求項1又は請求項2に記載のエスカレータの静止利用誘導システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記ステップ上に静止して前記エスカレータを利用している静止利用者の人数が多いほど、前記出力装置に出力させる音、光、音楽又は映像を構成する要素の数を増やす
請求項1又は請求項2に記載のエスカレータの静止利用誘導システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記ステップを複数の区画に分けたうち、前記静止利用者がいる前記区画の数が多いほど前記静止利用者の人数が多いと判断する
請求項5に記載のエスカレータの静止利用誘導システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記エスカレータに備えられた手すりを複数の区画に分けたうち、前記静止利用者が前記手すりをつかんでいる前記区画の数が多いほど前記静止利用者の人数が多いと判断する
請求項5に記載のエスカレータの静止利用誘導システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記ステップ上に静止して前記エスカレータを利用している静止利用者の性別又は年齢のうち少なくとも一つを含む属性情報を取得する属性情報取得部と、
前記属性情報取得部が取得した前記静止利用者の属性情報を用いて、前記出力装置に出力させる娯楽性を有する音、光、音楽又は映像を選択する制御部と、
を備える請求項1又は請求項2に記載のエスカレータの静止利用誘導システム。
【請求項9】
前記出力装置が出力する娯楽性を有する音、光、音楽又は映像を見聞きした前記静止利用者の反応を示す情報である反応データを蓄積する反応データ蓄積部を更に備え、
前記制御部は、前記反応データ蓄積部に蓄積された反応データを用いて、前記出力装置に出力させる娯楽性を有する音、光、音楽又は映像を選択する
請求項8に記載のエスカレータの静止利用誘導システム。
【請求項10】
エスカレータが備えるステップ上の利用者に関する情報を用いて、前記ステップ上を歩行若しくは走行して前記エスカレータを利用している移動利用者がいるかを判断する判断部と、
前記移動利用者がいる場合、娯楽性を有する音、光、音楽又は映像の少なくとも一つを出力する出力装置の出力を止めさせる制御部と、
を備えたエスカレータの静止利用誘導装置。
【請求項11】
エスカレータが備えるステップ上の利用者に関する情報を用いて、前記ステップ上を歩行若しくは走行して前記エスカレータを利用している移動利用者がいるかを判断する工程と、
前記移動利用者がいる場合、娯楽性を有する音、光、音楽又は映像の少なくとも一つを出力する出力装置の出力を止めさせる工程と、
を備えたエスカレータの静止利用誘導方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エスカレータの静止利用誘導システム、装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータを利用する際に、2列のうち、1列は静止して利用する利用者、もう1列は歩行又は走行する利用者が利用する場合がある。一方の列の利用者が歩行又は走行すると、静止して利用している利用者に、歩行又は走行する利用者の荷物などが衝突し、バランスを崩したり転倒したりするおそれがある。このようなトラブルや事故の発生を未然に防止するため、ステップ上を歩行又は走行している利用者に音声をもって注意や警告を与える歩行又は走行抑止装置が開示されている。
【0003】
従来の歩行又は走行抑止装置は、まず、ステップの右側に乗っている利用者の移動速度とステップの左側に乗っている利用者の移動速度とを別々に測定する。次に、従来の歩行又は走行抑止装置は、ステップの右側の検出範囲内にいる利用者の平均速度とステップの左側の検出範囲内にいる利用者の平均速度をそれぞれ算出する。従来の歩行又は走行抑止装置は、ステップの右側の検出範囲内にいる利用者の平均速度とステップの左側の検出範囲内にいる利用者の平均速度の差が所定値以上であるかを判別する。平均速度の差が所定値以上である場合、従来の歩行又は走行抑止装置は、注意又は警告が必要であると判断する。注意又は警告が必要である場合、従来の歩行又は走行抑止装置は、平均速度の大小関係を判定する。従来の歩行又は走行抑止装置は、ステップの右側の検出範囲内にいる利用者の平均速度とステップの左側の検出範囲内にいる利用者の平均速度の差の絶対値と判別値を比較し、絶対値が判別値よりも大きい場合、利用者が走行していると判断し、絶対値が判別値よりも小さい場合、利用者が歩行していると判断する。利用者が歩行しているか又は走行しているかを判別すると、従来の歩行又は走行抑止装置は、平均速度が大きいと判定したステップの右側又は左側を歩行している利用者に注意喚起音を優先的に流し、又は走行している利用者に警告音を優先的に流す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のエスカレータの歩行又は走行抑止装置は、ステップ上を歩行又は走行する利用者に対して優先的に注意喚起音又は警告音を発していた。このため、ステップ上を歩行又は走行している利用者が注意喚起音又は警告音に従う場合、歩行又は走行を止めて静止して利用するようになるため、利用者がステップ上を歩行又は走行することを抑止できる。しかしながら、この場合、ステップ上を歩行又は走行していた利用者は、仕方なく注意喚起音又は警告音に従うこととなるため、煩わしさ又は不快感を感じてしまう場合がある。したがって、ステップ上を歩行又は走行する利用者に煩わしさ又は不快感を与えずに、静止して利用するように誘導することができないという課題があった。
【0006】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであり、エスカレータのステップ上を歩行又は走行する利用者が煩わしさ又は不快感を感じてしまう場合を減らしつつ、静止して利用するように誘導することができる静止利用誘導システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るエスカレータの静止利用誘導システムは、エスカレータが備えるステップ上の利用者に関する情報を取得する情報取得装置と、娯楽性を有する音、光、音楽又は映像の少なくとも一つを出力する出力装置と、利用者に関する情報を用いて、ステップ上を歩行若しくは走行してエスカレータを利用している移動利用者がいるかを判断し、移動利用者がいる場合、出力装置の出力を止めさせる制御装置と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
ステップ上を歩行又は走行する利用者がいない場合、制御装置は、出力装置に娯楽性を有する音、光、音楽又は映像を出力させている。ステップ上を歩行又は走行する利用者が現れると、制御装置は、出力装置による出力を止めさせる。このため、利用者は、歩行又は走行してエスカレータを利用すると、出力装置による出力が止まることに気づく。歩行又は走行する利用者は、出力装置による出力の再開を望む場合、静止して利用するようになる。したがって、本開示のエスカレータの静止利用誘導システムによれば、ステップ上を歩行又は走行する利用者が煩わしさ又は不快感を感じてしまう場合を減らしつつ、静止して利用するように誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】エスカレータと利用者を上から見た模式図である。
【
図2】実施の形態1におけるエスカレータの静止利用誘導システムを示した構成の概略図である。
【
図3】実施の形態1におけるエスカレータの静止利用誘導システムを示した構成の詳細図である。
【
図4】実施の形態1における制御装置のハードウェア構成図である。
【
図5】実施の形態1におけるエスカレータの静止利用誘導システムの動作を示すフローチャートである。
【
図6】エスカレータを複数の区画に分けて上から見た模式図である。
【
図7】実施の形態1におけるエスカレータの静止利用誘導システムを導入する前及び導入した後におけるエスカレータと利用者を上から見た模式図である。
【
図8】実施の形態1の変形例におけるエスカレータの静止利用誘導システムの動作を示すフローチャートである。
【
図9】実施の形態2におけるエスカレータの静止利用誘導システムの詳細を示した構成図である。
【
図10】実施の形態2における制御装置のハードウェア構成図である。
【
図11】実施の形態2におけるエスカレータの静止利用誘導システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。各図において共通または対応する要素には、同一の符号を付して、説明を簡略化または省略する。また、以下に示す実施の形態に示した構成は、本開示による技術的思想の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本開示に記載の複数の技術的思想を組み合わせることも可能である。また、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略または変更することも可能である。
【0011】
実施の形態1.
図1はエスカレータ100と利用者200を上から見た模式図である。本実施の形態では、エスカレータ100を利用する利用者200が静止して利用するように誘導するエスカレータ100の静止利用誘導システム1について説明する。具体的には、エスカレータ100を利用する利用者200が右側の列と左側の列に分かれてエスカレータ100を利用する場合において、どちらか一方の列の利用者200が歩行又は走行すると、歩行又は走行する利用者200に対して静止して利用するように誘導する例について説明する。
【0012】
図1において、エスカレータ100は、複数の踏板からなるステップ110と、手すり120及びステップ110の側方に設けられた内側板130とを備える。
図1に示すように、利用者200は、ステップ110の右側の列と左側の列に分かれてエスカレータ100を利用する。
【0013】
図2は、エスカレータ100の静止利用誘導システム1を示した構成の概略図である。
図2に示すように、エスカレータ100の静止利用誘導システム1は、情報取得装置2、出力装置3及び制御装置4を備える。情報取得装置2は、エスカレータ100が備えるステップ110上の利用者200に関する情報を取得する。出力装置3は、娯楽性を有する音、光、音楽又は映像の少なくとも一つを出力する装置である。娯楽性を有するとは、エスカレータ100を利用する利用者200が見聞きしたくなる性質を有していることを言う。制御装置4は、エスカレータ100が備えるステップ110上の利用者200に関する情報を用いて、ステップ110上を歩行若しくは走行してエスカレータを利用している移動利用者がいるかを判断する。ここで、移動利用者とは、ステップ110上を歩行若しくは走行してエスカレータ100を利用している利用者200のことである。そして、制御装置4は、移動利用者がいる場合、出力装置3の出力を止めさせる。情報取得装置2と制御装置4、出力装置3と制御装置4は、それぞれ有線又は無線で接続されている。
【0014】
図3は、エスカレータ100の静止利用誘導システム1を示した構成の詳細図である。本実施の形態では、
図3に示すように、情報取得装置2としてカメラ21を用いた例について説明する。カメラ21は、ステップ110上を撮影して得られる画像情報を取得する。カメラ21は、
図1に示すような、エスカレータ100の全体を上から見た場合における画像を撮影する。カメラ21は、エスカレータ100の稼働中に、画像情報を取得し続ける。したがって、画像情報は、ステップ110上に利用者200がいる場合及びいない場合のどちらの場合も含む。ここで、ステップ110上に利用者200がいる場合における画像情報は、利用者に関する情報である。なお、カメラ21は、例えば、可視光カメラ、赤外線カメラなど、画像若しくは映像を捉える画像センサである。また、カメラ21は、1台でエスカレータ100の全体を上から見た場合における画像を撮影しても良いし、複数台で撮影することとしても良い。
【0015】
本実施の形態では、
図3に示すように、出力装置3として音又は音楽を出力するスピーカー31を用いた例について説明する。スピーカー31は、利用者200に対して音又は音楽を出力する。
【0016】
本実施の形態では、
図3に示すように、制御装置4は、カメラ21が取得した画像情報を用いて、スピーカー31の出力の制御を行う。制御装置4は、入力部41、判断部42、制御部43、出力データ保存部44及び出力部45を備える。入力部41は、カメラ21が取得した画像情報が入力される。
【0017】
判断部42は、入力部41に入力された画像情報を用いて、ステップ110上に利用者200がいるかどうかを判断する。ここで、判断部42が画像情報を用いて、利用者200がいるか否かの判断を行う処理の方法について説明する。まず、判断部42は、画像情報から人物を検出する処理を行う。人物を検出する処理として、例えば、判断部42は、画像情報から円又は楕円などの幾何学的図形を検出することが可能なHOUGH変換を行う。次に、判断部42は、撮影範囲内に存在する円又は楕円などを利用者200の頭部として検出する。判断部42は、検出した頭部の中心にそれぞれ異なるラベルを付与する。ラベルを付与できた場合、判断部42は、利用者200がいると判断する。
【0018】
ステップ110上に利用者200がいると判断すると、判断部42は、画像情報を用いて、ステップ110上を歩行若しくは走行してエスカレータ100を利用している移動利用者がいるかを判断する。ここで、判断部42が画像情報を用いて、移動利用者がいるか否かの判断を行う処理の方法について説明する。まず、判断部42は、複数の画像情報から検出される利用者200の位置を示す情報及び各画像情報を取得した取得時刻を用いて、検出した利用者200の位置の変化量を取得時刻の差で割って、利用者200の移動速度を算出する。具体的には、カメラ21が取得した連続する複数の画像情報は、それぞれ利用者200にラベルが付与されている。カメラ21が画像P1を取得してから所定時間が経過した際に取得する画像情報を画像P2とすると、画像P1と画像P2における同一ラベルが付与された各利用者200の頭部の位置の移動量を取得時刻の差で割った値を各利用者200の移動速度とする。判断部42は、算出した移動速度と、予め定められた所定の値とを比較し、移動速度が所定の値よりも大きい場合に、移動利用者がいると判断する。判断部42は、算出した移動速度が所定の値より大きい利用者200がいない場合、移動利用者がいないと判断する。
【0019】
出力データ保存部44は、出力データを保存する。ここで、出力データとは、例えば、音楽ファイルである。音楽ファイルとは、音楽を流すために必要なデータが保存されているファイルのことである。制御部43は、スピーカー31の出力を開始又は停止する制御を行う。制御部43は、スピーカー31を制御するために必要な信号及び出力データを出力部45へ出力する。出力部45は、入力された信号及び出力データを制御信号へ変換し、スピーカー31に出力する。スピーカー31は、制御信号が入力されると、出力の開始又は停止を行う。
【0020】
図4は、実施の形態1における制御装置4のハードウェア構成図である。
図4において、制御装置4は、演算装置5、記憶装置6、入力デバイス7、補助記憶装置8及び出力デバイス9により構成される。また、演算装置5、記憶装置6、入力デバイス7、補助記憶装置8及び出力デバイス9は、信号路10を介して接続されている。
【0021】
判断部42及び制御部43は、例えば、演算装置5で実現可能である。演算装置5は、補助記憶装置8から必要なプログラムを読み出して処理を実行することによって、判断部42及び制御部43の機能を実現する。演算装置5は、例えば、プロセッサであり、プロセッサは、演算処理を行うIC(Integrated Circuit)である。プロセッサの具体例は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)である。
【0022】
記憶装置6は、制御装置4の主記憶装置である。主記憶装置は、演算装置5が行う処理の計算を一時的に保存する。例えば、記憶装置6は、RAM(Random Access Memory)である。
【0023】
入力デバイス7は、演算装置5に画像情報を入力する。入力デバイス7は、入力部41の機能を有する、制御装置4の入力インターフェースである。
【0024】
補助記憶装置8は、制御装置4の補助記憶装置である。例えば、補助記憶装置8は、判断部42及び制御部43の動作に必要な初期値データ、プログラム、エラーログ、出力データなどを記憶する。例えば、補助記憶装置8は、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、又はSSD(Solid State Drive)である。
【0025】
出力デバイス9は、スピーカー31に制御信号を出力する。出力デバイス9は、出力部45の機能を有する、制御装置4の出力インターフェースである。
【0026】
信号路10は、
図4に記載された各構成要素間でデータの送受信を行うための伝送路である。
【0027】
次に、実施の形態1におけるエスカレータ100の静止利用誘導システム1の動作について説明する。
図5は、エスカレータ100の静止利用誘導システム1の動作を示すフローチャートである。まず、エスカレータ100の静止利用誘導システム1は、エスカレータ100の静止利用誘導システム1を構成するカメラ21、スピーカー31及び制御装置4の電源が投入されると動作を開始する。工程S1において、制御部43がスピーカー31に例えば音を出力させると、処理は工程S2に進む。
【0028】
ここで、工程S1においてスピーカー31が出力する音量は、後述する工程S8においてスピーカー31が出力する音量と同じ音量であってもよいし、異なる音量であってもよい。異なる音量とする場合、例えば、工程S1においてスピーカー31が出力する音量は、後述する工程S8においてスピーカー31が出力する音量よりも小さくしてもよい。利用者200がいないとき、エスカレータ100にはスピーカー31の出力を聞く人がいない。このため、音量を小さくして消費電力を節約することができる。また、利用者200が現れた際に音量を大きくして聞こえやすくすることができる。
【0029】
工程S2において、カメラ21がエスカレータ100のステップ110上の画像情報を取得すると、処理は工程S3に進む。工程S3において、カメラ21が画像情報を入力部41に入力すると、処理は工程S4に進む。
【0030】
工程S4において、判断部42は、ステップ110上にエスカレータ100を利用する利用者200がいるか否かを判断する。利用者200がいると判断部42が判断すると、処理は工程S5へ進む。利用者200がいないと判断部42が判断すると、処理は工程S1へ戻る。
【0031】
工程S5において、判断部42は、ステップ110上を歩行又は走行して利用する移動利用者がいるか否かを判断する。移動利用者がいると判断部42が判断すると、処理は工程S6に進む。移動利用者がいないと判断部42が判断すると、処理は工程S7に進む。
【0032】
工程S6において、制御部43がスピーカー31の出力を止めさせると、処理は工程S1に戻る。ここで、制御部43がスピーカー31の出力を全て止めさせる制御を行う場合について説明する。前提として、静止利用者及び移動利用者がいる場合について考えるものとする。制御部43がスピーカー31の出力を全て止めさせる制御を行うとは、制御部43が静止利用者及び移動利用者の両方に対するスピーカー31の出力を全て止める制御を行うことを意味する。なお、静止利用者がおらず、移動利用者しかいない場合でも、制御部43はスピーカー31の出力を全て止めさせる制御を行う。また、移動利用者も静止利用者もいない場合、処理は工程S1に戻るため、制御部43はスピーカー31に出力させる制御を行う。なお、静止利用者とは、ステップ110上に静止してエスカレータ100を利用している利用者200のことである。
【0033】
工程S7において、制御部43は、静止利用者がいる区画数の計測を行う。ここで、区画数の計測について
図6を用いて説明する。
図6は、エスカレータ100を複数の区画に分けて上から見た模式図である。まず、区画とは、エスカレータ100のステップ110を複数の区画に分けた、例えば
図6に示すA~Hのことである。
図6の例では、静止利用者が区画A、C、D、E、Fの計5つの区画にいる。制御部43は、静止利用者がいると判断した区画の数を数えることによって、静止利用者がいる区画数の計測を行う。制御部43が区画数を計測すると、処理は工程S8に進む。
【0034】
なお、制御部43は、ステップ110ではなくエスカレータ100に備えられた手すり120を複数の区画に分けて計測を行っても良い。この場合、制御部43は、利用者200が手すりをつかんでいると判断した区画の数を数えることによって、区画数の計測を行う。なお、制御部43が行う区画数の計測は、ステップ110を複数の区画に分けて計測する場合も、手すり120を複数の区画に分けて計測する場合も、どちらもカメラ21が取得した画像を用いて行うことができる。
【0035】
工程S8において、制御部43は、区画数に応じて、スピーカー31に出力させる音又は音楽を構成する要素の数を増やすこととなるように、出力データ保存部44に保存された出力データを選択する。制御部43が出力データを選択すると、処理は工程S9に進む。ここで、スピーカー31が音を出力する場合を用いて、区画数に応じて音を構成する要素の数を増やすことについて説明する。
【0036】
【0037】
表1は、静止利用者がいる区画数と、それぞれの区画数の場合に出力する音を構成する要素の例と、を示す対応表である。表1に示すように、静止利用者がいる区画数が1つの場合、スピーカー31が出力する音を構成する要素は、風の音である。静止利用者がいる区画数が2つの場合、スピーカー31が出力する音を構成する要素は、風の音及び川のせせらぎである。静止利用者がいる区画数が3つの場合、スピーカー31が出力する音を構成する要素は、風の音、川のせせらぎ及び鳥のさえずりである。静止利用者がいる区画数が4つ以上の場合、スピーカー31が出力する音を構成する要素は、風の音、川のせせらぎ、鳥のさえずり及び木々の音である。
図6の例の場合、区画数は5つであり、表1の対応表では4つ以上に該当するため、音を構成する要素は、風の音、川のせせらぎ、鳥のさえずり及び木々の音である。ここで、風の音、川のせせらぎ、鳥のさえずり及び木々の音は、娯楽性を有する音である。
【0038】
なお、音を構成する要素は、他のものであっても良い。音を構成する要素は、例えば、音の強さ、音の高さ又は音の大きさでもよい。
【0039】
工程S9において、出力部45は、制御部43が選択した出力データを制御信号へ変換し、スピーカー31に出力する。制御信号が入力されると、スピーカー31は音又は音楽を出力し、処理は工程S2に戻る。工程S9において制御部43がスピーカー31に行わせる出力は、工程S4において、判断部42が利用者200はいないと判断して処理が工程S1に戻る場合、又は、工程S6において、制御部43がスピーカー31の出力を全て止めさせる制御を行うまで継続する。エスカレータ100の静止利用誘導システム1は、エスカレータ100の静止利用誘導システム1を構成するカメラ21、スピーカー31及び制御装置4の電源が切られると処理を終了する。
【0040】
なお、上記において、情報取得装置2としてカメラ21を用いた例について説明したが、その他のセンサを用いても良い。例えば、情報取得装置2が重量センサ及びドップラ―速度計からなる場合について説明する。重量センサは、ステップ110上に設けられており、利用者200がステップ110上に乗ると、利用者200がいることを示す情報を取得して、入力部41に入力する。判断部42は、利用者200がいることを示す情報を用いて、利用者200がいるか否かを判断する。利用者200がいる場合、ドップラー速度計は、電磁波や超音波を使用して、利用者200の速度を計測する。計測された利用者200の速度は、速度情報として入力部41に入力される。判断部42は、入力部41に入力された速度情報を用いて移動利用者がいるか否かを判断する。したがって、情報取得装置2が重量センサ及びドップラ―速度計からなる場合における利用者200に関する情報は、利用者200がいることを示す情報及び速度情報である。なお、情報取得装置2としてカメラ以外のセンサを用いた場合においても、情報取得装置2としてカメラ21を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
【0041】
なお、上記において、出力装置3としてスピーカー31を用いた例について説明したが、ほかのものであっても良い。例えば、出力装置3が光を出力する場合、LED照明を用いることによって実現される。出力装置3が映像を出力する場合、例えば、プロジェクターで出力したものをスクリーンに投影することよって実現される。スクリーンは、
図1に示すエスカレータ100の内側板130に設けられていても良い。スクリーンは、利用者200から視認できる場所であればどこに設置されていてもよい。なお、スクリーンとプロジェクターの例について説明したが、内側板130が映像を投影する画面としての機能を有していても良い。
【0042】
なお、出力データとは、出力装置3が娯楽性を有する音、光、音楽又は映像を出力するために必要なデータである。
【0043】
また、出力装置3が光を出力する場合、光を構成する要素として、例えば、光の強さ、光の色、光の明るさ、あるいは光の本数又は個数が考えられるが、他のものであっても良い。出力装置3が音楽を出力する場合、音楽を構成する要素として、例えば、楽器のパートの数又は旋律の数が考えられるが、他のものであっても良い。出力装置3が映像を出力する場合、映像を構成する要素として、例えば、映し出される物もしくは人の数、色又は明るさが考えられるが、他のものであっても良い。他にも、出力装置3は、音と光、音と光と音楽といったように、複数を組み合わせても良い。なお、ここで記載した音、光、音楽又は映像は、娯楽性を有するものであるとする。
【0044】
実施の形態1によれば、制御装置4は、ステップ110上を歩行若しくは走行してエスカレータ100を利用している移動利用者がいる場合、出力装置3の出力を止めさせる。
【0045】
ステップ110上を歩行又は走行する利用者200がいない場合、制御装置4は、出力装置3に娯楽性を有する音、光、音楽又は映像を出力させている。ステップ110上を歩行又は走行する利用者200が現れると、制御装置4は、出力装置3による出力を止めさせる。このため、利用者200は、歩行又は走行してエスカレータ100を利用すると、出力装置3による出力が止まることに気づく。歩行又は走行する利用者200は、出力装置3による出力の再開を望む場合、静止して利用するようになる。したがって、実施の形態1のエスカレータ100の静止利用誘導システム1は、ステップ110上を歩行又は走行する利用者200が煩わしさ又は不快感を感じてしまう場合を減らしつつ、静止して利用するように誘導することができる。
【0046】
図7は、実施の形態1におけるエスカレータ100の静止利用誘導システム1を導入する前及び導入した後におけるエスカレータ100と利用者200を上から見た模式図である。
図7(a)はエスカレータ100の静止利用誘導システム1を導入する前を示し、
図7(b)は導入した後を示している。
図7(a)に示すように、静止して乗車したい利用者200の列がエスカレータ100の左側1列である場合、静止して乗車したい利用者200は、エスカレータ100の乗車待ちの列をなすこととなる。エスカレータ100の静止利用誘導システム1によって静止して利用する利用者200が増え、静止して利用することが一般的となれば、静止して利用する利用者200の列を1列から2列へ増やすことができる。このため、静止利用誘導システム1を導入することにより、
図7(b)に示すようなエスカレータ100の乗車方法が浸透すると、乗車までの待ち時間が減り、利便性を向上させることができる。
【0047】
実施の形態1における変形例.
実施の形態1では、静止利用者がいたとしても、移動利用者がいると判断部42が判断した場合、制御部43はスピーカー31の出力を全て止めさせる例について説明した。変形例では、移動利用者と静止利用者のどちらもいる場合、制御部43が、静止利用者に対する出力を維持し、移動利用者に対する出力のみを止めさせる制御を行う場合について説明する。なお、エスカレータ100の静止利用誘導システム1の構成については、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0048】
実施の形態1の変形例におけるエスカレータ100の静止利用誘導システム1の処理について、
図8を用いて説明する。
図8は、実施の形態1の変形例におけるエスカレータ100の静止利用誘導システム1の動作を示すフローチャートである。なお、実施の形態1と実施の形態1の変形例とでは、工程S16の処理のみ異なる。そのため、実施の形態1の変形例では、工程S16の処理についてだけ説明し、他の同様である処理については説明を省略する。
【0049】
工程S16において、移動利用者と静止利用者のどちらもいる場合、制御部43は、静止利用者に対する出力を維持し、移動利用者に対する出力を止めさせる制御を行う。スピーカー31の出力は、静止利用者に対して継続して行われているため、処理は工程S2に進む。
【0050】
ここで、制御部43がスピーカー31に、移動利用者に対する出力を止めさせる制御を行うことについて説明する。実施の形態1の変形例では、実施の形態1とは異なり、スピーカー31として、例えば、指向性スピーカーを用いる。ここで、指向性スピーカーとは、特定のエリアに限定して音を出力するスピーカーを指す。そのため、特定の狭い範囲にいる人に選択的に音を出力することができる。制御部43は、スピーカー31の出力を、静止利用者には音又は音楽が聞こえるようにするとともに、移動利用者には聞こえないようにする制御を行う。例えば、静止利用者がステップ110上の左側にいて移動利用者が右側にいる場合、制御部43は、ステップ110上の左側ではスピーカー31の出力が行われるようにするとともに、右側ではスピーカー31が出力する音が聞こえない又は聞こえにくくなるように、スピーカー31が音又は音楽を出力する方向を切り替える制御を行う。
【0051】
なお、上記では、出力装置3がスピーカー31である場合について説明したが、他にも、例えば、出力装置3がプロジェクターであって、実施の形態1の
図1に示すエスカレータ100の横の内側板130にスクリーンが備えられていてもよいため、この場合についても説明する。例えば、プロジェクターがスクリーンに魚を投影している場合、制御部43は、静止利用者には魚が寄ってくる投影を行わせ、移動利用者の近くには魚の投影を止めさせる制御を行ってもよい。
【0052】
変形例において、制御装置4は、移動利用者がいる場合であって、ステップ110上に静止してエスカレータ100を利用している静止利用者がいる場合、静止利用者に対する娯楽性を有する音、光、音楽又は映像を出力装置3に出力させる。このため、変形例におけるエスカレータ100の静止利用誘導システム1は、移動利用者に対しては静止して利用するように誘導しつつ、静止利用者が出力装置3による出力を楽しめるように出力を継続させることができる。
【0053】
実施の形態2.
図9は、実施の形態2におけるエスカレータ100の静止利用誘導システム50の詳細を示した構成図である。制御装置70は、属性情報取得部73及び反応データ蓄積部75を備えることと、制御部74の機能及び動作が異なるほかは、実施の形態1におけるエスカレータ100の静止利用誘導システム1の構成と同様である。そのため、実施の形態1と同様の部分については、適宜説明を省略する。また、情報取得装置2としてカメラ61、出力装置3としてスピーカー81を用いた例について説明する点においても、実施の形態1と同様である。
【0054】
属性情報取得部73は、利用者200の性別又は年齢のうち少なくとも一つを含む属性情報を画像情報から取得する。ここで、属性情報取得部73が行う取得方法について説明する。属性情報取得部73が行う取得の方法としては、例えば、機械学習又はルールベース処理などによる分類などの手法が考えられる。具体的には、属性情報取得部73は、画像情報を用いた画像認識方法により、静止利用者の年齢又は性別のうち少なくとも一つを含む属性情報を取得する。機械学習を利用した画像認識方法では、属性情報取得部73は、深層学習、強化学習、ニューラルネットワークで作成した学習済みモデルに、静止利用者が含まれる画像情報を入力することにより、静止利用者の年齢又は性別のうち少なくとも一つを含む属性情報を取得する。学習済みモデルは、例えば、静止利用者が含まれる画像情報に、静止利用者の服装に対応する年齢又は性別のうち少なくとも一つを示すラベルを付与した学習データを用いて機械学習することによって作成される。具体的には、夜に黒や紺のスーツ姿を画像認識技術から認識した場合、帰宅するサラリーマンがいると考えられるので、属性情報取得部73は、静止利用者の属性を30から50代の大人であるとする属性情報を取得する。他にも、小柄な人物を検出した場合、属性情報取得部73は、静止利用者の属性を10歳前後の子供であるとする属性情報を取得する。
【0055】
制御部74は、属性情報取得部73が取得した属性情報を用いて出力データを選択する。ここで、制御部74が、属性情報を用いて出力データを選択するということについて説明する。例えば、静止利用者の属性情報が30から50代の大人である場合、制御部74は、ヒーリングミュージックを選択する。静止利用者の属性情報が、年齢が10歳前後である場合、制御部74は、10歳前後の子供に人気である番組のテーマソングを選択する。制御部74は、出力データを選択すると、出力データ保存部76から出力データを読み出す。制御部74は、スピーカー81の制御に必要な信号及び出力データ保存部76から読み出した出力データを出力部77に出力する。出力部77は、スピーカー81の制御に必要な信号及び出力データを制御信号に変換し、スピーカー81へ出力する。
【0056】
反応データ蓄積部75は、スピーカー81が出力する音又は音楽を聞いた静止利用者の反応を示す情報である反応データを蓄積する。反応データは、制御部74が選択した音又は音楽を示す情報と静止利用者の属性情報と関連付けられて蓄積される、静止利用者の反応を示す情報である。制御部74が選択した音又は音楽を示す情報とは、例えば、制御部74がどの出力データを選択したかを示す情報である。静止利用者の反応を示す情報とは、例えば、静止利用者が音又は音楽を静止利用した状態で聞いた時間を示す情報である。
【0057】
次に、実施の形態2における制御装置70のハードウェア構成について説明する。
図10は、実施の形態2における制御装置70のハードウェア構成図である。
図10において、制御装置70は、演算装置500、記憶装置600、入力デバイス700、補助記憶装置800及び出力デバイス900により構成される。また、演算装置500、記憶装置600、入力デバイス700、補助記憶装置800及び出力デバイス900は、信号路1000を介して接続されている。
【0058】
判断部72、制御部74及び属性情報取得部73は、例えば、演算装置500で実現可能である。演算装置500は、補助記憶装置800から必要なプログラムを読み出して処理を実行することによって、判断部72、制御部74及び属性情報取得部73の機能を実現する。演算装置500は、例えば、実施の形態1の演算装置5と同様である。
【0059】
補助記憶装置800は、制御装置4の補助記憶装置である。例えば、補助記憶装置800は、判断部72、制御部74及び属性情報取得部73の動作に必要な初期値データ、プログラム、エラーログ、出力データ及び反応データなどを記憶する。補助記憶装置800は、例えば、実施の形態1における補助記憶装置8と同様である。
【0060】
次に、実施の形態2におけるエスカレータ100の静止利用誘導システム50の動作について説明する。
図11は、実施の形態2におけるエスカレータ100の静止利用誘導システム50の動作を示すフローチャートである。実施の形態2における工程S26以降の処理が実施の形態1又はその変形例における処理と異なるため、工程S26以降の工程について説明する。なお、実施の形態1等と同様の処理については適宜説明を省略する。
【0061】
工程S26において、属性情報取得部73は、静止利用者の年齢又は性別のうち少なくとも一つを示す属性情報を取得し、処理は工程S27に進む。
【0062】
工程S27において、制御部74は、取得された属性情報を用いてスピーカー81に出力させる音又は音楽の出力データを出力データ保存部76から選択する。制御部74が、取得された属性情報を用いて出力データを選択すると、処理は工程S28に進む。
【0063】
工程S28において、出力部77は、制御部74が選択した出力データを制御信号へ変換し、スピーカー81に出力する。制御信号が入力されると、スピーカー81は、音又は音楽を出力する。スピーカー81が、制御部74が選択した出力データに基づいて音又は音楽を出力すると、処理は工程S29に進む。
【0064】
工程S29において、反応データ蓄積部75は、反応データを蓄積し、処理は工程S21に戻る。
【0065】
実施の形態2におけるエスカレータ100の静止利用誘導システム50は、エスカレータ100の静止利用誘導システム50を構成するカメラ61、スピーカー81及び制御装置70の電源が切られると処理を終了する。
【0066】
なお、本実施の形態において、制御部74は、属性情報取得部73によって取得された静止利用者の属性情報を用いて出力データを選択する例について説明したが、反応データを用いて出力データを選択してもよい。例えば、静止利用者の属性情報が30から50代の大人である場合、制御部74は、まず、ヒーリングミュージックAを選択する。次に、静止利用者の属性情報が再び30から50代の大人である場合、制御部74は、ヒーリングミュージックBを選択する。反応データ蓄積部75は、制御部74がヒーリングミュージックAを選択した場合とヒーリングミュージックBを選択した場合それぞれの反応データを蓄積する。ここでいう反応データには、例えば、静止利用者の属性情報が30から50代の大人であり、ヒーリングミュージックAを出力した場合、静止して聞いている時間がどれくらいだったかが含まれる。再度、静止利用者の属性情報が30から50代の大人である場合、制御部74は、ヒーリングミュージックA又はヒーリングミュージックBのうち、長く静止して聞いていた方を選択し、スピーカー81から出力させる制御を行う。
【0067】
なお、本実施の形態において、制御装置70は反応データ蓄積部75を備える構成について説明したが、これに限られない。例えば、反応データを無線又は有線で制御装置70の外部にある反応データ蓄積部75に送信し、蓄積しても良い。
【0068】
また、本実施の形態において、スピーカー81を用いて音又は音楽を出力する例について説明した。ほかにも、出力装置3が光を出力するLED照明又は映像を出力するプロジェクターとスクリーンである場合、反応データ蓄積部75が蓄積する反応データには、静止利用者の属性情報と注視していた時間とを含めても良い。
【0069】
なお、本実施の形態において、情報取得装置2としてカメラ61を用いた例について説明した。情報取得装置2として電磁波や超音波を使用したドップラー速度計などを用いた場合、属性情報取得部73が静止利用者の属性情報を取得するために必要な構成として、例えば、カメラを用いることが考えられる。この場合、カメラは、静止利用者が含まれる画像情報を取得し、入力部71に画像情報を入力する。入力された画像情報から属性情報を取得する方法は、属性情報取得部73を説明する段落に記載した方法と同様である。
【0070】
実施の形態2の構成によれば、属性情報又は反応データを用いて、制御部74は出力データを選択する。したがって、エスカレータ100の静止利用誘導システム50は、実施の形態1の場合よりも、ステップ110上を歩行又は走行する利用者200が煩わしさ又は不快感を感じてしまう場合を減らしつつ、静止して利用するように誘導することができる。
【0071】
また、本実施の形態において、例えば、利用者200に映像と音楽からなる広告を流す場合、広告制作者は、エスカレータ100の静止利用誘導システム50が取得した反応データを利用することにより、静止利用者が長く注視する可能性の高い映像又は音楽を採用し、広告を制作することができる。このため、エスカレータ100の静止利用誘導システム50は、広告を制作する際に、宣伝効果を高める属性情報又は反応データを取得することができる。
【0072】
また、本実施の形態において、属性情報又は反応データを用いて広告制作者が作成した広告を、出力装置3は、手すり又はスクリーンに表示するとしても良い。
【0073】
また、本実施の形態において、全国のエスカレータ100の静止利用誘導システム50が通信回線を介して接続されている場合、全国のエスカレータ100の静止利用誘導システム50から属性情報又は反応データを取得することができる。このため、1台のエスカレータ100のみにエスカレータ100の静止利用誘導システム50を適用した場合よりも、全国のエスカレータ100に適用した場合の方が、多量にデータを取得することができるので、属性情報又は反応データを収集する効率を向上させることができる。さらに、エスカレータ100の静止利用誘導システム50は、全国のエスカレータ100に一斉に広告を流させることによって、広告を見る人の人数を増やし、また、広告を見る回数を増やすことができるため、広告による宣伝効果を高めることができる。
【0074】
また、実施の形態1と実施の形態2を併せたエスカレータ100の静止利用誘導システム50を適用しても良い。この場合、属性情報又は反応データと、静止利用者がいる区画数とを用いて、制御部74は出力データを選択する。ここで、スピーカー81が音楽を出力する場合を例として説明する。まず、制御部74は、属性情報又は反応データを用いて、複数ある音楽のうち、どの音楽をスピーカー81に出力させるかを選択する。次に、判断部72が区画数を計測すると、制御部74は、例えば、区画数に応じたパートの数を選択する。したがって、実施の形態1と実施の形態2を併せたエスカレータ100の静止利用誘導システム50によれば、制御部74は、属性情報又は反応データと、静止利用者がいる区画数とに応じた出力データを選択する。したがって、実施の形態1と実施の形態2を併せたエスカレータ100の静止利用誘導システム50は、実施の形態1又は実施の形態2の場合よりも、ステップ110上を歩行又は走行する利用者200が煩わしさ又は不快感を感じてしまう場合を減らしつつ、静止して利用するように誘導することができる。
【符号の説明】
【0075】
1、50 エスカレータの静止利用誘導システム、2 情報取得装置、3 出力装置、4、70 制御装置、5、500 演算装置、6、600 記憶装置、7、700 入力デバイス、8、800 補助記憶装置、9、900 出力デバイス、10、1000 信号路、21、61 カメラ、31、81 スピーカー、41、71 入力部、42、72 判断部42、74 制御部、44、76 出力データ保存部、45、77 出力部、73 属性情報取得部、75 反応データ蓄積部、100 エスカレータ、110 ステップ、120 手すり、130 内側板、200 利用者