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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134997
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】締結具及び締結方法
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/02 20060101AFI20240927BHJP
   F16B 35/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F16B5/02 U
F16B35/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045477
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山崎 幸司
(72)【発明者】
【氏名】岡 裕一
(72)【発明者】
【氏名】信田 大輔
【テーマコード(参考)】
3J001
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA07
3J001JA10
3J001KA19
3J001KB09
(57)【要約】
【課題】本発明は、第1の部材と第2の部材とを容易に締結することができる締結具及び締結方法を提供することを課題とする。
【解決手段】第1ボルトと第2ボルトとナットとを備え、前記第1ボルトは、第1頭部と、前記第1頭部から延びる第1軸部とを有し、前記第2ボルトは、第2頭部と、前記第2頭部から延びる第2軸部とを有し、前記第1頭部は、前記第2軸部を受け入れ可能な螺子穴を有し、前記第1ボルトは、前記第1軸部が前記ナットと螺合可能で且つ前記螺子穴が前記第2軸部と螺合可能であり、前記第1ボルトと前記ナットとが前記第1の部材を介して螺合されて前記第1の部材に固定されるとともに、前記第1ボルトと前記第2ボルトとが前記第2の部材を介して螺合されて、前記第1の部材に前記第2の部材を締結する、締結具。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材に第2の部材を締結するために用いられ、
第1ボルトと第2ボルトとナットとを備え、
前記第1ボルトは、第1頭部と、前記第1頭部から延びる第1軸部とを有し、
前記第2ボルトは、第2頭部と、前記第2頭部から延びる第2軸部とを有し、
前記第1ボルトは、前記第1頭部から前記第2軸部を受け入れる螺子穴を有し、
前記第1ボルトは、前記第1軸部が前記ナットと螺合可能で且つ前記螺子穴が前記第2軸部と螺合可能であり、
前記第1ボルトと前記ナットとが前記第1の部材を介して螺合されて前記第1の部材に固定されるとともに、前記第1ボルトと前記第2ボルトとが前記第2の部材を介して螺合されて、前記第1の部材に前記第2の部材を締結する、締結具。
【請求項2】
締結具を用いて第1の部材に第2の部材を締結することを備え、
前記締結具は、第1ボルトと第2ボルトとナットとを備え、
前記第1ボルトは、第1頭部と、前記第1頭部から延びる第1軸部とを有し、
前記第2ボルトは、第2頭部と、前記第2頭部から延びる第2軸部とを有し、
前記第1ボルトは、前記第1頭部から前記第2軸部を受け入れる螺子穴を有し、
前記第1ボルトは、前記第1軸部が前記ナットと螺合可能で且つ前記螺子穴が前記第2軸部と螺合可能であり、
前記第1ボルトと前記ナットとを前記第1の部材を介して螺合して前記第1の部材に固定し、前記第1ボルトと前記第2ボルトとを前記第2の部材を介して螺合し、前記第1の部材に前記第2の部材を締結する、締結方法。
【請求項3】
前記締結具を用いて前記第1の部材に前記第2の部材とともに第3の部材を締結することを備え、
前記第1の部材に固定された前記第1ボルトと前記第2ボルトとを前記第2の部材及び前記第3の部材を介して螺合し、前記第1の部材に前記第2の部材とともに前記第3の部材を締結する、請求項2に記載の締結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結具及び締結具を用いた締結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1の部材に第2の部材を固定する方法として、ボルトとナットとで構成される締結具を用いる方法が知られている。かかる締結具を用いる一般的な締結方法としては、特許文献1や特許文献2にも記載されているように、第1の部材及び第2の部材のそれぞれに形成された貫通孔にボルトを挿通した状態で、該ボルトとナットとを螺合し、第1の部材に第2の部材を締結する方法が挙げられる。
【0003】
かかる締結具を利用する設備として、冷却塔を例示することができる。冷却塔は、ビルなどの空調設備から排出される温水を冷却して循環使用するために使用されており、温水を冷却する熱交換部と、該熱交換部に温水を供給する温水槽とを備えている。そして、この温水槽に上記のような締結具が利用されている。図4に例示する温水槽5では、第1の部材たるコ字状の架台50に第2の部材たる温水槽5が固定されている。架台50は、温水槽5を載置する上板部503を有する。一方、温水槽5は、複数の散水孔511hが形成された底壁部511と、底壁部511の外縁部から立ち上がる側壁部512と、側壁部512の上端から水平方向に延びる鍔部513とを有する。そして、従来の方法では、架台50の上板部503及び温水槽5の鍔部513のそれぞれに形成されたボルト孔にボルトbを挿通した状態で、ボルトbとナットnとを螺合することによって、架台50に温水槽5を締結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-047810号公報
【特許文献2】特開2020-193825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の締結具を用いる方法は、第1の部材に第2の部材を固定する際に、ナットを手指などで把持した状態でボルトとナットとを締結する必要があるため作業性が悪いという問題点を有する。例えば、図4に示すように、冷却塔における架台50に温水槽5を締結する場合には、温水槽5の側壁部512に施工用孔hを形成し、施工用孔hに手指などを通してナットnを把持しつつ、ナットnにボルトbを進行させる必要がある。
【0006】
上記問題点に鑑み、本発明は、第1の部材と第2の部材とを容易に締結することができる締結具及び締結方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る締結具は、
第1の部材に第2の部材を締結するために用いられ、
第1ボルトと第2ボルトとナットとを備え、
前記第1ボルトは、第1頭部と、前記第1頭部から延びる第1軸部とを有し、
前記第2ボルトは、第2頭部と、前記第2頭部から延びる第2軸部とを有し、
前記第1ボルトは、前記第1頭部から前記第2軸部を受け入れる螺子穴を有し、
前記第1ボルトは、前記第1軸部が前記ナットと螺合可能で且つ前記螺子穴が前記第2軸部と螺合可能であり、
前記第1ボルトと前記ナットとが前記第1の部材を介して螺合されて前記第1の部材に固定されるとともに、前記第1ボルトと前記第2ボルトとが前記第2の部材を介して螺合されて、前記第1の部材に前記第2の部材を締結する。
【0008】
本発明の一態様に係る締結方法は、
締結具を用いて第1の部材に第2の部材を締結することを備え、
前記締結具は、第1ボルトと第2ボルトとナットとを備え、
前記第1ボルトは、第1頭部と、前記第1頭部から延びる第1軸部とを有し、
前記第2ボルトは、第2頭部と、前記第2頭部から延びる第2軸部とを有し、
前記第1ボルトは、前記第1頭部から前記第2軸部を受け入れる螺子穴を有し、
前記第1ボルトは、前記第1軸部が前記ナットと螺合可能で且つ前記螺子穴が前記第2軸部と螺合可能であり、
前記第1ボルトと前記ナットとを前記第1の部材を介して螺合して前記第1の部材に固定し、前記第1ボルトと前記第2ボルトとを前記第2の部材を介して螺合し、前記第1の部材に前記第2の部材を締結する。
【0009】
かかる構成によれば、第1ボルトとナットとが第1の部材に固定された状態となるため、第1の部材と第2の部材とを締結する際などには、第1ボルトの螺子穴に第2ボルトの第2軸部を進行させるだけで、第2ボルトと第1ボルトとを螺合することができる。よって、第1の部材と第2の部材との締結が容易になる。
【発明の効果】
【0010】
以上の通り、本発明によれば、第1の部材と第2の部材とを容易に締結することができる締結具及び締結方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る締結具を備える冷却塔の概略断面図である。
図2図1の締結具を備える締結構造の概略断面図である。
図3】別の実施形態に係る締結具を上方から見た図である。
図4】従来技術の締結具を備える締結構造の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る締結具について、冷却塔の温水槽に適用された場合を例示しながら説明することとする。
【0013】
図1に示すように、冷却塔100は、熱交換部1を収容する四角柱状の塔本体100aと、塔本体100aの内部に気流Wを発生させるファン2と、塔本体100aの気流Wの排気路を形成する円筒状のファンスタック3と、熱交換部1に温水を供給する温水供給部4と、温水供給部4から熱交換部1へ供給される温水を中継する温水槽5と、熱交換部1で冷却された温水を冷水として貯留する冷水槽6とを備えている。なお、以下では、図1の冷却塔100において、水平面と平行な第1方向を左右方向(D1)と称し、左右方向D1に直交し且つ水平面と平行な第2方向を前後方向(D2)と称し、左右方向D1及び前後方向D2の両方に直交する第3方向を上下方向(D3)と称することがある。
【0014】
塔本体100aは、その中央部に上下方向D3に延びる四角柱状の空洞Vを有する。また、塔本体100aは、ファンスタック3などを載置するための上面部を有する。該上面部は、水平面に沿うように形成されており、空洞Vとファンスタック3の前記排気路とを連通させるように上方に開口している。
【0015】
熱交換部1は、空洞Vの周りに配置されている。熱交換部1は、温水を外気と接触させて冷却する複数の冷却部11を有する。各冷却部11は、上下方向D3に積み上げられたブロック状の充填材を複数有する。各充填材は、複数枚の充填材用シートで構成されている。充填材用シートは、平面視において平行四辺形をなしており、一面側に複数の突起が設けられている。各充填材は、縦置きにされた複数の充填材用シートが前後方向D2に配列されることによってブロック状をなしている。また、各充填材は、一つの充填材用シートが突起の先端部を隣り合う他の充填材用シートに当接させることによって、それぞれの充填材用シートの間に気流Wの通路となり得る隙間を形成している。
【0016】
各冷却部11は、ブロック状の充填材が上下方向D3に複数段積み上げられることによって四角柱状をなしている。本実施形態では、空洞Vを介して左右方向D1の両側に一対の冷却部11が設置されている。各冷却部11は、充填材の前記隙間が空洞Vに連通するように配置されている。そして、ファン2による空洞V内の空気の吸い出しに伴い、充填材の前記隙間に外気が誘引されることとなる。熱交換部1で外気との接触によって冷却された温水は、冷水となって熱交換部1の下方に設置された冷水槽6に貯留されることとなる。
【0017】
ファン2は、空洞Vの上方に配置されている。ファン2は、駆動時にファンスタック3の前記排気路を上方に向かって移動する気流Wを発生させ得るように構成されている。ファン2は、上下方向D3に延びる回転軸21と、回転軸21から水平方向に延びる複数の回転翼22とを有する。ファンスタック3は、その内部に収容したファン2の回転軸21の延びる方向に沿って延びている。
【0018】
温水供給部4は、温水槽5の上方に設置されている。温水供給部4は、温水槽5に温水を排出する温水排出部41を有する。
【0019】
温水槽5は、熱交換部1の上方に設置されている。より詳しくは、温水槽5は、各冷却部11の上方に1つずつ設置されている。図2に示すように、本実施形態の温水槽5は、熱交換部1における冷却部11に温水を散水する散水槽51と、散水槽51の上方に設置された緩衝槽52とで構成されている。本実施形態の温水槽5は、形材で構成された架台50に載置されている。
【0020】
架台50は、U字状の断面を有する一対の形材で構成されている。一対の形材は、前後方向D2に沿って且つそれぞれが内向きに開口するように設置されている。これによって、架台50は、塔本体100aの上面部に接地された部分であり前後方向D2に延びる下板部501と、下板部501の外側の端縁部から立ち上がる側板部502と、下板部501に上下方向D3において対向するように側板部502の先端部から水平に延びる上板部503とを有する。架台50には、メンテナンス等の各種作業を作業者が容易に行えるようにするための手すり等の把持部が設けられる場合がある。よって、架台50は、該把持部を設け易くするために、内向きに開口するように設置されている。より具体的には、前記把持部は、側板部502の外表面に設けられることが好ましい。一方、かかる把持部が側板部502の内表面に設けられた架台は、構造がより複雑化し好ましいものではない。
【0021】
散水槽51は、冷却部11の上面に対向する矩形状の底壁部511と、底壁部511の外縁部から立ち上がる環状の側壁部512と、側壁部512の上端部から外側に向かって延びる鍔部513とを有する。底壁部511には、温水を散水するための円形状の複数の散水孔511hが形成されている。散水孔511hに到達した温水は、重力の作用によって散水孔511hを介して冷却部11に落下する。これによって、散水槽51は、複数の散水孔511hを介して熱交換部1の複数の箇所に温水を散水可能となっている。鍔部513(以下、下側鍔部513)は、架台50の上板部503に載置される部分であり、水平面に沿うように形成されている。
【0022】
緩衝槽52は、温水排出部41から落下する温水の勢いを緩衝するように機能する。緩衝槽52は、長方体状の箱型に形成されている。緩衝槽52は、温水排出部41と散水槽51の底壁部511との間に配されて落下する温水の勢いを緩衝する底面部たる緩衝面部521と、緩衝面部521の外縁部から立ち上がる側面部522と、側面部522の上端部を閉塞する上面部523とを有する。上面部523には、温水排出部41から落下する温水を緩衝槽内に受け入れるための開口523hが形成されている。また、緩衝面部521は、格子状に形成されており、言い換えれば、受けた温水を散水槽51の底壁部511に向けて排出する細長の複数の排出孔を有する。また、上面部523は、側面部522の上端部から外側に向かって延びる鍔部524(以下、上側鍔部524)を有する。上側鍔部524は、散水槽51の下側鍔部513に載置される部分であり、水平面に沿うように形成されている。
【0023】
散水槽51及び緩衝槽52は、供給される流体たる温水に含まれる異物によって汚染が生じ得るため、定期的な保守又は保全が必要となる槽である。例えば、散水槽51の散水孔511h及び緩衝槽52の前記排出孔は、温水に含まれる異物によって閉塞し得るため、異物の除去が必要となる。よって、散水槽51及び緩衝槽52は、架台50から着脱可能に構成されることが好ましく、これによって、保守又は保全の作業性を向上させることができる。
【0024】
詳しくは、温水槽5は、本発明の一実施形態に係る締結具7によって、第1の部材たる架台50に第2の部材たる散水槽51及び第3の部材たる緩衝槽52が固定された締結構造を備えている。締結具7は、係脱可能なボルトとナットとで構成されている。一方、かかる締結具7での固定を可能とするために、各部材にはボルトが挿通される貫通孔たるボルト孔が形成されている。すなわち、架台50の上板部503に第1ボルト孔531が形成され、散水槽51の下側鍔部513に第2ボルト孔532が形成され、且つ、緩衝槽52の上側鍔部524に第3ボルト孔533が形成されている。本実施形態では、第2ボルト孔532及び第3ボルト孔533のそれぞれの孔径は同じであり、第1ボルト孔531の孔径は第2ボルト孔532及び第3ボルト孔533の孔径よりも大きい。各ボルト孔は、中心軸が同一直線上に並ぶように配されている。なお、各ボルト孔を画定する内壁は、雌螺子のない曲面を有する円筒状であってもよい。また、該内壁は、前記ボルトに螺合する雌螺子を有していてもよく、部分的又は全体的に前記ボルトに螺合する雌螺子を有していてもよい。
【0025】
前記締結構造は、架台50の下板部501、側板部502、及び上板部503、並びに、散水槽51の側壁部512によって囲まれた空間Sを有する。空間Sは、第1ボルト孔531に直接つながっている。これによって、空間Sには締結具7のボルト先端部と該ボルトに螺合するナットとが配されている。架台50の下板部501と散水槽51の側壁部512との水平方向における間隔は10mm以下である。よって、該間隔に手指や工具を通して該ナットを把持することは困難である。
【0026】
本実施形態の締結具7は、第1ボルト孔531に挿通された第1ボルト71と、第1ボルト71と螺合するナット73とを備えている。さらに、本実施形態の締結具7は、第2ボルト72を備えている。第1ボルト71は、頭部711(以下第1頭部711)と、頭部711から延びる軸部712(以下、第1軸部712)とを有する。また、第2ボルト72は、頭部721(以下第2頭部721)と、頭部721から延びる軸部722(以下、第1軸部722)とを有する。本実施形態の第1軸部712及び第2軸部722のそれぞれは、外周面に螺子山を有する。
【0027】
本実施形態の締結具7としては、以下に限定されないが、第1ボルト71の第1頭部711は、第1ボルト71の第1軸部712よりも径大であり、第2ボルト72の第2頭部721は、第2ボルト72の第2軸部722よりも径大である。また、第1ボルト71の方が第2ボルト72よりも太く、第2ボルト72の方が第1ボルト71よりも長い。より具体的には、第1軸部712が第2軸部722よりも径大である。また、第2軸部722は、第1ボルト71の全長以上の長さを有する。ナット73は、第1ボルト71の第1軸部712と螺合可能であり、第1軸部712に対応した径の螺子穴を有する。
【0028】
本実施形態の第1ボルト71は、多角形状で且つ板状(より具体的には六角板状)の第1頭部711と、第1頭部711から延びる第1軸部712とを有する。本実施形態の第1頭部711は、厚さ方向(図2における上下方向D3)に比べ平面方向(図2における左右方向D1)の寸法が大きい。第1頭部711は、厚さ方向での両端面の内の一方の面である第1面(図2における下面)と、該第1面とは反対の面となる第2面(図2における上面)とを有する。第1軸部712は、第1頭部711の前記第1面の中央部から第1頭部711の厚さ方向に円筒状となって延びている。第1軸部712は、ナット73と螺合するための雄螺子部を有する。第1ボルト71は、上方から見て右回りの回転によってナット73に進行し、左回りの回転によってナット73から退行するように構成されている。そして、前記締結構造は、第1ボルト71と前記第1の部材たる架台50とナット73とで構成された第1の締結部を有する。前記第1の締結部は、架台50の上板部503を上方から押圧する第1頭部711と、上板部503を下方から押圧するナット73とで上板部503に圧縮力を作用させて各部分を締結している。また、かかる圧縮力に対する軸力(引張力)によって、前記第1の締結部は、第1ボルト71とナット73との緩みを抑制している。これによって、前記第1の締結部は、架台50の上板部503に固定された第1ボルト71及びナット73を有する。
【0029】
さらに、本実施形態の第1ボルト71は、第1頭部711の前記第2面の中央部に開口した螺子穴713を有する。螺子穴713は、第1頭部711を厚さ方向に通過して第1軸部712にまで延びている。螺子穴713は、さらに延びて第1軸部712を貫通し、第1軸部712の先端面において開口している。このように、第1ボルト71を全長に亘って貫通するように螺子穴713が設けられて第1軸部712が円筒状となっている。螺子穴713は、第2軸部722に対応した径を有している。すなわち、第1ボルト71は、第1軸部712がナット73と螺合可能で第1頭部711が第2ボルト72と螺合可能となっている。なお、螺子穴713は、内面における長さ方向の全体にわたって雌螺子部が形成されていてもよい。また、螺子穴713は、内面における長さ方向に部分的に雌螺子部が形成されていてもよく、言い換えれば、螺子が切られた雄螺子部と、曲面状の内面を有する円筒部とで構成されていてもよい。
【0030】
螺子穴713は、第1軸部712と中心軸を一致させるように設けても、中心軸を一致させないようにして設けてもよい。本実施形態での螺子穴713の中心軸は、第1軸部712の中心軸と一致し、第1軸部712の中心軸と同一直線上に存在している。
【0031】
また、図2に示すように、本実施形態では、第1頭部711の前記第2面(上面)と第2頭部721の前記第3面(下面)とが互いに平行となる平面状である。散水槽51や緩衝槽52の架台50に対する不用意な位置ずれを防止することなどを目的としてこれらに圧縮力を作用させる場合、上記のような平面状である方が、ドーム状のような曲面状のものと比較して、下側鍔部513や上側鍔部524に接する面積をより多く確保することができる。
【0032】
本実施形態の第2ボルト72は、多角形状で且つ板状(より具体的には六角板状)の第2頭部721と、第2頭部721から延びる第2軸部722とを有する。第2頭部721は、厚さ方向(図2における上下方向D3)に比べ平面方向(図2における左右方向D1)での寸法が大きい。第2頭部721は、厚さ方向における一方の面である第3面(図2における下面)と、該第3面とは反対の面となる第4面(図2における上面)とを有する。第2軸部722は、第2頭部721の第3面の中央部から第2頭部721の厚さ方向に円柱状となって延びている。第2軸部722は、第1頭部711の螺子穴713と螺合する雄螺子部を有する。第2ボルト72は、上方から見て右回りの回転によって螺子穴713に進行し、左回りの回転によって螺子穴713から退行するように構成されている。すなわち、第2ボルト72の螺子穴713に対する進行と、第1ボルト71のナット73に対する進行とは、同じ回転方向(右回り)によってなされる。そして、前記締結構造は、第2ボルト72と前記第2の部材たる散水槽51と前記第3の部材たる緩衝槽52と第1ボルト71の螺子穴713とで構成された第2の締結部を有する。前記第2の締結部は、緩衝槽52の上側鍔部524を上方から押圧する第2頭部721と、散水槽51の下側鍔部513を下方から押圧する第1頭部711とで上側鍔部524及び下側鍔部513に圧縮力を作用させて各部分を締結している。
【0033】
そして、本実施形態の締結具7によれば、第1ボルト71とナット73とが予め架台50に固定されるため、手指や工具などでナット73を把持せずとも、第2ボルト72を軸周りに回転させるだけで、第1ボルト71の螺子穴713に第2ボルト72を容易に着脱させることができる。
【0034】
また、前記締結構造は、締結具7を採用することによって、従来技術において必要であった施工用孔を散水槽51の側壁部512に設けて手指や工具などでナット73を把持せずとも、散水槽51及び緩衝槽52を架台50から容易に着脱してメンテナンスすることができる。また、前記施工用孔に起因する温水の漏れをなくすことができる。
【0035】
また、前記締結構造では、第1ボルト71の第1頭部711が架台50の上板部503と散水槽51の下側鍔部513とに挟まれた状態となっている。よって、第1ボルト71に対してナット73が不用意に緩んだとしても、第1ボルト71の架台50に対する固定状態が維持され得る。
【0036】
次に、本発明の一実施形態に係る締結方法について説明する。
【0037】
本実施形態の締結方法は、上記実施形態の締結具7を用い、前記第1の部材たる架台50に前記第2の部材たる散水槽51及び前記第3の部材たる緩衝槽52を締結することを備える。より具体的には、本実施形態の締結方法は、架台50に第1ボルト71及びナット73を固定して前記第1の締結部を形成する第1の締結ステップと、第1ボルト71及び第2ボルト72の間に散水槽51の下側鍔部513及び緩衝槽52の上側鍔部524を配した状態(重ね合わせた状態)で第1ボルト71と第2ボルト72の螺子穴713とを螺合して前記第2の締結部を形成する第2の締結ステップとを備える。
【0038】
前記第1の締結ステップでは、架台50の上板部503に形成された貫通孔たる第1ボルト孔531に第1ボルト71を挿通し、第1ボルト71とナット73とを螺合して上板部503に第1ボルト71とナット73とを固定し、前記第1の締結部を形成する。
【0039】
前記第2の締結ステップでは、まず、第1ボルト71の螺子穴713と下側鍔部513の第2ボルト孔532及び上側鍔部524の第3ボルト孔533とを位置合わせする。そして、第2ボルト孔532及び第3ボルト孔533に第2ボルト72を挿通し、第2ボルト72と第1ボルト71の螺子穴713とを螺合して上板部503と下側鍔部513及び上側鍔部524とを締結し、前記第2の締結部を形成する。
【0040】
本実施形態の締結方法によれば、前記第1の締結部において第1ボルト71とナット73とが架台50の上板部503に固定されているため、第1ボルト71又はナット73を手指などで把持することなく、第2ボルト72を右回りに回転させるだけで、第2ボルト72を第1ボルト71の螺子穴713に螺合することができる。よって、架台50と各槽との締結が容易なものとなる。また、架台50から各槽を取り外そうとする場合にも、第1ボルト71又はナット73を手指などで把持することなく、第2ボルト72を左回りに回転させるだけで、第1ボルト71の螺子穴713から第2ボルト72を退行させることができる。よって、保守又は保全における着脱が容易になる。
【0041】
なお、本発明に係る締結具及び締結方法は、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る締結具及び締結方法は、上記の作用効果によって限定されるものではない。本発明に係る締結具及び締結方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0042】
例えば、前記締結構造では、第1頭部711の前記第2面(上面)と第2頭部721の前記第3面(下面)との間の距離を、これらの間に挟んで架台50に固定する部材の厚さ(具体的には下側鍔部513と上側鍔部524との合計厚さ)よりも僅かに大きくして遊びを設けてもよい。すなわち、前記締結構造では、第1頭部711と第2頭部721との間に挟んで架台50に固定する部材に圧縮力を作用させないようにしてもよい。
【0043】
一方で、圧縮力を作用させる場合、下側鍔部513や上側鍔部524に対して作用させる圧縮力は、必ずしも第1頭部711の前記第2面(上面)と第2頭部721の前記第1面(下面)との間でなくてもよく、この他、第2頭部721と上板部503との間であってもよい。例えば、図3に示すように、第2ボルト孔532の形状を第1頭部711よりも大きくし且つ第1頭部711の厚さを下側鍔部513の厚さ以下として第2ボルト孔532に第1頭部711を位置させるようにすれば、第2ボルト72の締め付け力を第1頭部711に加えることなく下側鍔部513や上側鍔部524に圧縮力として作用させることができる。また、第1頭部711を下側鍔部513の厚さ以下とすることが難しい場合、第3ボルト孔533も第1頭部711よりも大きくし、第2頭部712を当該第3ボルト孔533よりも大きくしたり、第2頭部712と上側鍔部524との間に平ワッシャーなどを介挿させたりすることができる。前記平ワッシャーとしては、第2軸部722よりも大きく且つ第2頭部721よりも小さな内径を有し、第3ボルト孔533よりも大きい外径を有するものを用いることができる。第1頭部711の上に下側鍔部513を載せるようにすると、散水槽51や緩衝槽52の荷重が第1ボルト71に集中して加わることになるが、第2ボルト孔532の形状を第1頭部711よりも大きくして下側鍔部513を第1頭部711を介さずに架台50の上板部503に当接させることで、散水槽51や緩衝槽52における荷重を支持するための面積をより広く確保することができる。
【0044】
第1頭部711に圧縮力や散水槽51や緩衝槽52の荷重を作用させないようにした場合、上側鍔部524に上方から圧力を加えている状態の第2ボルト72を緩める操作を行った際に第1ボルト71が供回りしてナット73との間の締め付けが緩んでしまうことにもなりかねない。そして、かかる不用意な緩みは、場合によっては、ナット73の抜け落ちを招くことにもなりかねない。そのようなことを防止するために、ナット73の厚さを第1軸部712の長さ未満とし、第1軸部712がナット73を貫通し、ナット73に第1軸部712を進入させる側とは反対側にナット73から第1軸部712の先端部を突出させるようにし、この突出した部分に別のナット(第2ナット)を装着してダブルナット構造を構成させるようにしてもよい。このように、第1軸部712の長さをナット73の厚さよりも大きくしてナット73から突出可能な領域を第1軸部712の先端部に設ける場合、ダブルナットに代えて、又は、ダブルナットに加えて第1軸部712の先端部に樹脂キャップを装着したり、ロックタイト(商品名)のような緩み防止のための接着剤でナットと第1軸部712とを接着したりしてもよい。
【0045】
あるいは、第1軸部712の先端側に螺子穴713の径が第2軸部722よりも僅かに細径となる部分(細径部)を設けるとともに第1軸部712の先端から基端に向けた切込を第1軸部712の先端部に設け、且つ、該切込を周方向の複数箇所に設けるようにして、第2軸部722が前記細径部よりも先端側に進入した時に第1軸部712の先端部が外側に開いて拡径されるようにしてナット73の抜け落ち防止を図るようにしてもよい。
【0046】
さらには、第2ボルト孔532の形状は、第1頭部711が軸周りに回転しようとしたときに干渉して第2ボルト72を緩める際の第1ボルト71の供回りを規制するようにされてもよい。例えば、第1頭部711を六角板状とする場合、第2ボルト孔532の形状を、六角形の対向する辺の間の距離以上で六角形の対角線の長さ未満となる幅を備えた長穴形状とすることで、第2ボルト孔532に位置する第1頭部711の自由な回転を阻止することができ、第1ボルト71が第2ボルト72と供回りすることを防止することができる。
【0047】
また、前記第1頭部は、前記第2ボルト孔及び前記第3ボルト孔に嵌合するように構成されてもよい。すなわちは、前記第1頭部は、前記第1軸部とは反対側(上方)に延びて前記第2ボルト孔及び前記第3ボルト孔に嵌合する嵌合部を有し、前記螺子穴が前記嵌合部において上方に開口し前記嵌合部から下方に延びていてもよい。嵌合による仮留めによって、前記架台に前記散水槽及び前記緩衝槽をさらに容易に締結することができる。
【符号の説明】
【0048】
100:冷却塔、100a:塔本体、V:空洞、1:熱交換部、11:冷却部、2:ファン、21:回転軸、22:回転翼、W:気流、3:ファンスタック、4:温水供給部、41:温水排出部、5:温水槽、50:架台、501:下板部、502:側板部、503:上板部、51:散水槽、511:底壁部、511h:散水孔、512:側壁部、513:下側鍔部、52:緩衝槽、521:緩衝面部、522:側面部、523:上面部、523h:開口、524:上側鍔部、531:第1ボルト孔、532:第2ボルト孔、533:第3ボルト孔、6:冷水槽、7:締結具、71:第1ボルト、711:第1頭部、712:第1軸部、713:螺子穴、72:第2ボルト、721:第2頭部、722:第2軸部、73:ナット、S:空間、D1:左右方向、D2:前後方向、D3:上下方向
図1
図2
図3
図4