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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135009
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】水中油型日焼け止め化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/89 20060101AFI20240927BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240927BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61K8/89
A61K8/73
A61K8/81
A61K8/06
A61Q17/04
A61K8/27
A61K8/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045492
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】591230619
【氏名又は名称】株式会社ナリス化粧品
(72)【発明者】
【氏名】梅原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】吉川 真由
(72)【発明者】
【氏名】河内 佑介
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AB172
4C083AB212
4C083AB242
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC342
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC472
4C083AC492
4C083AC541
4C083AC542
4C083AC642
4C083AC662
4C083AC902
4C083AD022
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD222
4C083AD242
4C083AD262
4C083AD281
4C083AD282
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD572
4C083AD632
4C083AD642
4C083BB46
4C083CC19
4C083DD22
4C083DD31
4C083DD33
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、きしみ感のないみずみずしい使用感触を有し、安定性のよい水中油型日焼け止め化粧料を提供することを課題とする。
【解決手段】(A)カルボキシデシルジメチコン、(B)ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル、(C)カルボマー、2-アクリルアミド-2-メチルスルホン酸及び/又はその塩を構成成分として有するポリマー、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー、ポリアクリルアミドから選ばれる1種または2種以上、(D)疎水化処理紫外線散乱剤、(E)紫外線散乱剤、並びに(F)塩基性化合物を含有し、成分(D)を油相に分散、成分(E)を水相に分散することで、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(F)
(A):カルボキシデシルジメチコン
(B):ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル
(C):カルボマー、2-アクリルアミド-2-メチルスルホン酸及び/又はその塩を構成成分として有するポリマー、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー、ポリアクリルアミドから選ばれる1種または2種以上
(D):疎水化処理紫外線散乱剤
(E):紫外線散乱剤
(F):塩基性化合物
を含み、成分(D)は油相に分散し、成分(E)は水相に分散していることを特徴とする水中油型日焼け止め化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線散乱剤を水相・油相の両相に安定に分散配合し、塗布した際に、きしみ感のないみずみずしい使用感触を有し、安定性の水中油型日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
水中油型乳化化粧料は、油中水型に比較してみずみずしく、さっぱりした使用感触を与える基剤として広く用いられている。特に、日焼け止め化粧料は主な使用環境が夏場であることから、さっぱり感やきしみ感のないみずみずしい使用感が求められる。
【0003】
日焼け止め効果を有する化粧料には、紫外線から肌を防御する手段として紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が配合されている。紫外線吸収剤は紫外線防御効果が高いが高配合することで肌への刺激やべたつき感などが生じるといった課題がある。そのため、近年、環境への配慮や肌への負担を軽くする観点からも、物理的に紫外線を反射、散乱する紫外線散乱剤の応用が期待されている。
【0004】
紫外線散乱剤は紫外線吸収剤に比べて紫外線防御効果が低い特徴がある。そのため紫外線散乱剤を配合して優れた紫外線防御効果を有する日焼け止め化粧料を実現するには、紫外線散乱剤を多く配合する必要がある。
【0005】
一般的に紫外線散乱剤はきしみ感や安定性の観点から油相に配合することが多いが、油相に紫外線散乱剤を多量に配合すると、油相の量が増え、水中油型化粧料のみずみずしい使用感触が損なわれるという課題があった。
【0006】
そこで日焼け止め化粧料においてみずみずしい使用感を得るために、紫外線散乱剤を水相に分散させるという技術がある。例えば、疎水性粉体がカルボン酸変性シリコーンにより水相中に良好に分散されており、使用時にはさっぱりとした使用感を与え、且つ、耐水性に優れた化粧膜を皮膚上に形成可能な化粧料が報告されている(特許文献1)。しかし、特許文献1では紫外線散乱剤が水相にしか配合されておらず、優れた紫外線防御効果を備えるには紫外線散乱剤の量が不十分である。
【0007】
このように、水相に紫外線散乱剤を安定に分散する方法が報告されているが、水相、油相の両相に紫外線散乱剤を分散させた場合の安定性については述べられていない。さらには、感触についてさっぱりとした使用感になると報告されているが、さっぱりした使用感と、本願課題の紫外線散乱剤由来のきしみ感は感触として異なるものであり、特許文献1の技術ではきしみ感が改善されているわけではない。
【0008】
紫外線散乱剤を水相と油相の両方に安定的に配合した日焼け止め化粧料は、みずみずしい使用感触を有しつつ、優れた紫外線防御効果を得る観点からも開発は急務である。しかし、水相と油相の両方に紫外線散乱剤を配合することは、安定性や使用感触の観点から非常に難易度が高い。
【0009】
とくに、紫外線散乱剤は皮膚刺激が少ない反面、塗布時の白さや特有のきしみ感が問題になることがあった。水中油型乳化化粧料では、油中水型乳化化粧料に比べて油の配合量が少ない事から、紫外線散乱剤によるきしみ感を感じやすく、特に大きな課題がある。さらに、紫外線散乱剤を外水相に分散させると、製剤の塗布時に油膜に覆われていない紫外線散乱剤が肌に直接触れてしまい、油相に配合した時に比べて粉体由来のきしみ感を強く感じてしまう。両相に紫外線散乱剤を分散させる場合、水相と油相の両相のきしみを消す必要があるため、より一層使用感の改善が困難となる。
【0010】
紫外線散乱剤による使用感の悪化を改善する方法として、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテルを乳化剤として配合することが提案されている(特許文献2)。しかし、この方法では油相中に配合された紫外線散乱剤の感触は改善できるが、水相、油相の両相に分散された紫外線散乱剤の使用感を改善することは難しい。また、油相由来のべたつきを軽減し、使用感触を改善することについては述べられているが、紫外線散乱剤由来のきしみ感の改善については触れられていない。
【0011】
また、水相に分散した紫外線散乱剤の安定性及び塗布時のきしみ感を改善する方法として、水膨潤性粘土鉱物、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ステロール類及び脂肪酸を含有する水中油型乳化化粧料に、親水性の紫外線散乱剤を含有させるという手法が報告されている(特許文献3)。しかし、この方法は界面活性剤が限定されており、さらには乳化方法が限定されるほか、水膨潤性粘土鉱物特有のべたつきが出てしまうという課題がある。また、両相に紫外線散乱剤を分散した例については評価されていない。
【0012】
さらに、紫外線散乱剤を疎水化処理することできしみ感を軽減するという検討も行われている(特許文献4)。この報告では両相に紫外線散乱剤を分散させた場合にもきしみ感が軽減することが述べられているが、検討した結果、きしみ感が完全に改善されているわけではなく、満足いく使用感触ではなかった。なお、この報告において、きしみ感の軽減は疎水化処理紫外線散乱剤を使用したことによるものであり、HLBが9.5以下であるポリグリセリン脂肪酸エステル及びポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の界面活性剤、並びに、少なくとも1種の水溶性高分子及び/又は水膨潤性高分子からなる水系増粘剤は関与していない。つまり、疎水化紫外線散乱剤のきしみ感を軽減する技術ではなく、疎水化されていない紫外線散乱剤に比べて、きしみ感が低減されるという技術であるため、本願課題のきしみ感改善とは異なる技術である。
【0013】
特許文献5では、カルボン酸変性シリコーンと紫外線散乱剤の組み合わせによって、高い安定性とさっぱりした使用感を付与する技術が報告されているが、特許文献5にあるカルボン酸変性シリコーンは紫外線散乱剤の分散に利用されているわけではなく、乳化剤として利用されているため、本願の技術とは異なる利用方法である。乳化剤として利用されている根拠としては、カルボン酸変性シリコーンを分散剤として用いる場合に塩基化合物による中和が必要であるにもかかわらず、塩基性化合物が使用されていないことが挙げられる。加えて、さっぱりした使用感を付与するとあるが、本願課題のきしみ感はさっぱりした使用感とは異なる使用感触であり、本願課題のきしみ感が改善することを特許文献5から想定することはできない。
また、疎水変性アルキルセルロースとカルボマーの組み合わせが明記されている(引用文献6)。しかし、特許文献6は油相中にしか紫外線散乱剤を配合しておらず、その配合量も少ない。加えて、きしみ改善についても言及されていないことから、油相・水相の両相に紫外線散乱剤を配合した時のきしみ感を改善する技術が想定できるものではない。
【0014】
以上のことから、紫外線散乱剤を水相・油相の両相に分散配合し、塗布時にきしみ感のないみずみずしい使用感の水中油型日焼け止め化粧料の開発は従来の手法では困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2015-203026号公報
【特許文献2】特開2017-155048号公報
【特許文献3】特開2018-070477号公報
【特許文献4】特開2016-074660号公報
【特許文献5】特開2020-029453号公報
【特許文献6】特開2015-120682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、きしみ感のないみずみずしい使用感触を有し、安定性の高い水中油型日焼け止め化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明者が、鋭意研究した結果、カルボキシデシルジメチコンを分散剤として含み、水溶性の多糖類としてヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル、その他の高分子としてカルボマー、2-アクリルアミド-2-メチルスルホン酸及び/又はその塩を構成成分として有するポリマー、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー、ポリアクリルアミドのうちのいずれか1種以上、油相に疎水化処理紫外線散乱剤、及び、水相に紫外線散乱剤、塩基性化合物を含有することで、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち本発明は、
次の成分(A)~(F)を含み、成分(D)は油相に分散し、成分(E)は水相に分散していることを特徴とする水中油型日焼け止め化粧料である。
(A):カルボキシデシルジメチコン
(B):ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル
(C):カルボマー、2-アクリルアミド-2-メチルスルホン酸及び/又はその塩を構成成分として有するポリマー、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー、ポリアクリルアミドから選ばれる1種または2種以上
(D):疎水化処理紫外線散乱剤
(E):紫外線散乱剤
(F):塩基性化合物
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、きしみ感のないみずみずしい使用感触を有し、安定性のよい水中油型日焼け止め化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明について更に詳しく説明する。なお、特段注釈のない限り、以下で成分の配合量を「%」で表示する場合は質量%を意味する。
【0021】
本発明で用いられる成分(A)カルボキシデシルジメチコン(以下、単に「成分(A)」とのみ称する場合がある)は、ジメチコン主鎖に疎水基としてカルボキシデシル基(基-(CH10-COOH)が付与されたシリコーン系分散剤である。
【0022】
本発明における成分(A)の配合量は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に制限されないが、0.3%~5質量%の範囲で含むことが好ましく、より好ましくは0.5%~4質量%である。0.3質量%以上では紫外線散乱剤の分散が非常に良好で、きしみ感のなさや分散性安定性、経時の安定性の点で好ましい。5質量%以下で経時の安定性やきしみ感のなさが良好である。
【0023】
本発明で用いられる成分(B)ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル(以下、単に「成分(B)」とのみ称する場合がある)は、下記一般式(I)で表される。
【化1】
[式中、Rは、同一でも異なってもよく、水素原子、メチル基又はヒドロキシプロピル基(基-CHCH(OH)CH)、基-CHCH(OH)CHOR’から選ばれる1種以上の基であるが、基-CHCH(OH)CHOR’を必ず含むものとする。また、R’は炭素数18のステアリル基(-C1837)である。さらに、Aはメチレン基であり、nは、100~10000、好適には500~5000の整数である。]
【0024】
本発明における成分(B)の重量平均分子量は、100,000~1000,000が好ましく、より好ましくは300,000~800,000、さらに好ましくは550,000~750,000である。
【0025】
本発明における成分(B)の配合量は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に制限されないが、0.01~1質量%、好ましくは0.03~0.5質量%である。0.01質量%未満では十分なきしみ改善効果が得られず、1質量%を超えて配合しても効果の更なる増大は得られ難い。
【0026】
本発明で用いられる成分(C)は、カルボマー、2-アクリルアミド-2-メチルスルホン酸及び/又はその塩を構成成分として有するポリマー、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー、ポリアクリルアミドの中から選ばれる1種の水溶性高分子である。ここで、カルボマーとは重合性ビニル基と、カルボキシル基を有する重合性モノマーを、少なくとも一つの構成単位として含む重合体の総称である。また、2-アクリルアミド-2-メチルスルホン酸及び/又はその塩を構成成分として有するポリマーは、ホモポリマーであってもコポリマーであっても構わない。具体的には、(HEA/アクリロイルジメチルタウリンNa/メタクリル酸ステアレス-20)コポリマー、(アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa/アクリル酸)コポリマー、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリン)コポリマー、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリン/ジメチルアクリルアミド)クロスポリマー、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa/アクリルアミド)コポリマー、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリン)コポリマーNa、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンNa/VP)クロスポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンNa/ジアクリル酸PEG-8)クロスポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンNa/メタクリルアミドラウリン酸)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/アクリル酸カルボキシエチルアンモニウム)クロスポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ステアレス-25)クロスポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ステアレス-8)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ラウレス-7)コポリマー、(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)クロスポリマー、ポリアクリロイルジメチルタウリンNa等が挙げられる。特に(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマーが、みずみずしくきしみ感のない使用感を与えることができる。また、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーとは、下記一般式(II)で表される会合性増粘剤である。
【化2】
[式中、R1、R2、R4がそれぞれエチレン基、R3=ヘキサメチレン基、R5=2-ドデシルドデシル基、h=1、m=2、k=120、n=20である。]
市販品としては、アデカノールGT-700(ADEKA社製等が挙げられる。会合性増粘剤とは、親水基部を骨格とし、末端に疎水性部分をもつコポリマーであり、水性媒体中でコポリマーの疎水性部分同士が会合し、親水部がループ状又はブリッジ状をなすことにより増粘作用を示す増粘剤であると考えられている。ポリアクリルアミドとは、アクリル酸アミドの重合体かつアクリル酸系水溶性高分子である。具体的には、SEPIGEL 305(SEPPIC社製)等が挙げられる。成分(C)は、これらのうち1種を単独で用いても、またはこれらを混合して用いても差支えない。成分(C)中で最も好ましい成分としてはカルボマーが挙げられる。
【0027】
本発明における成分(C)の配合量は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に制限されないが、本発明化粧料中、0.1~3質量%が好ましく、より好ましくは0.2~2.5質量%である。この範囲であれば、水相中に分散させた紫外線散乱剤の安定性を保ち、きしみ感の軽減にも寄与することができる。0.1%未満では安定性を保つことができず、3%を超えて配合しても効果の向上は見られない。
【0028】
本発明で用いられる成分(D)疎水化処理紫外線散乱剤(以下、単に「成分(D)」とのみ称する場合がある)は反射もしくは散乱により紫外線を物理的に遮断する粉体であり、表面が疎水化処理された粉体である。成分(D)は、特に制限はなく、通常化粧料に用いられるものを使用することができる。具体的には、金属酸化物、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、酸化タングステン等を挙げることができる。本発明においては、酸化チタン、酸化亜鉛が好ましい。1種類又は2種類以上の粉体を配合することが好ましい。本発明における紫外線散乱剤の疎水化処理剤としては、化粧料等に配合される紫外線散乱剤の疎水化表面処理に使用可能な種々の化合物、例えば、脂肪酸、シリコーン化合物、フッ素化合物、シランカップリング剤、油剤、第4級アンモニウム塩化合物等が挙げられる。また、成分(D)は油相中に分散しているものとする。
【0029】
成分(D)は所望の紫外線防御効果を得る目的で適宜選択し、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば、UVAからUVBに渡る広い波長領域で優れた紫外線防御効果を発揮させたい場合には、UVA領域の散乱効果が高い金属酸化物、UVB領域の散乱に優れた金属酸化物を各々少なくとも1種ずつ組み合わせて配合することが好ましい。また紫外線散乱剤に加えて紫外線吸収剤を併用することも可能である。
【0030】
本発明における成分(D)の配合量は本発明の効果が得られる範囲であれば特に制限されないが、
本発明化粧料中、3~30質量%が好ましく、より好ましくは5~25質量%である。この範囲であれば良好な紫外線防止効果を発揮しつつ、きしみのないみずみずしい使用感を実現できる。
【0031】
本発明で用いられる成分(E)紫外線散乱剤(以下、単に「成分(E)」とのみ称する場合がある)は反射もしくは散乱により紫外線を物理的に遮断する粉体である。成分(E)は、特に制限はなく、通常化粧料に用いられるものを使用することができる。具体的には、金属酸化物、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、酸化タングステン等を挙げることができる。本発明においては、酸化チタン、酸化亜鉛が好ましい。1種類又は2種類以上の粉体を配合することが好ましい。また、紫外線散乱剤の表面処理方法も特に制限されるものではないが、例えば、シリカ、水酸化アルミニウム、脂肪酸、トリエトキシカプリリルシラン、ジメチコン・ハイドロゲンジメチコン、グリセリンなどによる処理が例として挙げられる。また、成分(E)は製剤の製造時に水相中へ分散させる。
【0032】
本発明で使用される、成分(E)は所望の紫外線防御効果を得る目的で適宜選択し、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。成分(E)の配合量は本発明の効果が得られる範囲であれば特に制限されないが、例えば、本発明化粧料中に3~20質量%が好ましく、より好ましくは5~15質量%である。この範囲であれば良好な紫外線防止効果を発揮しつつ、水相中に安定的に分散しきしみのないみずみずしい使用感を実現できる。
【0033】
本発明で用いられる成分(F)塩基性化合物は、水中に溶解した際に塩基性を示す化合物であれば特に限定されるものではなく、各種の無機化合物及び有機化合物を使用することができる。1種類又は2種類以上の塩基性化合物を配合してもよい。
【0034】
有機化合物としては、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、アミノメチルプロパノール、アルギニン、グアニジン等が挙げられる。これらのうち、アミノメチルプロパノールを特に好適に用いることができる。
【0035】
無機化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、アンモニア等が挙げられる。
【0036】
本発明における成分(F)の配合量は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に制限されないが、別途脂肪酸のケン化や増粘剤の中和に用いられる分を除き、配合されるカルボキシデシルジメチコンに含まれるカルボン酸基1モルに対し1価の塩基の場合はカルボン酸基/1価の塩基(モル比)が1/0.5~1/1.5が好ましい。
【0037】
本発明の水中油型日焼け止め化粧料には、上記の必須成分のほかに、必要に応じ一般的に化粧料などに用いられる成分を配合することも可能である。例えば、パール剤、保湿剤、成分(B)以外の増粘剤、成分(C)以外の水溶性高分子、乳化剤、香料、殺菌剤、防腐剤、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、紫外線吸収剤、抗炎症剤、抗酸化剤、清涼剤、生薬抽出物やビタミン類、の添加物を適時配合することができる。これら成分を含有させる場合の配合割合は、その種類や目的に応じて適宜選択することができ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。
【実施例0038】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に説明する。なお、これら実施例は本発明を何ら限定するものではない。また、以下の実施例等における配合量は特に断らない限り質量%を示す。下記表1、表2及び表3に掲げた組成を有する水中油型乳化化粧料を常法により調製し、以下の測定並びに評価を行った。
【0039】
[塗布時のきしみ感]
<きしみ感のない使用感の評価>
きしみ感のない使用感の評価試験は、評価試料を顔面に塗布した時の感触について、10名の専門判定員が以下の評価基準に従って評価点をつけ、その平均点に従って、4.0以上を◎、3.0以上4.0未満を○、2.0以上3.0未満を△、2.0未満を×とした。
<評価基準>
5:きしみ感をまったく感じない
4:きしみ感をほとんど感じない
3:どちらともいえない
2:ややきしみ感を感じる
1:強いきしみ感を感じる
【0040】
<みずみずしい使用感の評価>
みずみずしい使用感の評価試験は、評価試料を顔面に塗布した時の感触について、10名の専門判定員が以下の評価基準に従って評価点をつけ、その平均点に従って、4.0以上を◎、3.0以上4.0未満を○、2.0以上3.0未満を△、2.0未満を×とした。
<評価基準>
5:非常にみずみずしいと感じる
4:みずみずしいと感じる
3:どちらともいえない
2:みずみずしいと感じない
1:全くみずみずしさを感じず、乾燥を感じる
【0041】
[調製直後状態の分散性]
製剤は透明PET容器(30ml)に30g充填し、熟練した技術者が目視により状態を評価した。
<評価基準>
〇:均一に分散している
△:分散されていない部分がわずかに見られる
×:分散されていない部分が見られる
【0042】
[経時安定性]
<評価方法>
製剤は透明PET容器(30ml)に30g充填し、40℃で1か月静置させ、熟練した技術者が目視により状態を評価した。
<評価基準>
◎:状態変化なし
○:凝集は生じておらず、外観上薄く白いもやが観察されるが品質上問題ない程度である
△:凝集は生じていないが、白いもやが頻出し、品質不良と判断する程度である
×:粉体の凝集が見られる
【0043】
【表1】
※1:DOWSIL ES-5800 Formulation Aid(ダウ・東レ(株)製)
※2:サンジェロース 60L(大同化成工業(株)製)
※3:アデカノールGT-700(ADEKA社製)
※4:SEPIGEL 305(SEPPIC社製)
※5:酸化亜鉛 96%、トリエトキシカプリリルシラン 4%
※6:酸化チタン 66.7%、水酸化アルミニウム 13.3%、ステアリン酸 20%
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
表1の実施例1~実施例5を参照すると、特に成分(C)をカルボマーとした場合に、きしみ感がなく使用感が良いという傾向が強く表れている。いずれの実施例においても紫外線散乱剤を安定的に分散させ、きしみ感を改善できているのは、カルボキシデシルジメチコンとヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテルの組み合わせによるものが大きい。また、その他の高分子を配合した場合にもきしみ感は十分に消すことができているが、これは特異な性質を持つカルボキシデシルジメチコンと成分(C)の相性が良く、崩れることなく粉体を安定的に両相に分散できているためである。
【0047】
表2の比較例1から、分散剤がない場合には水相中に酸化チタンを分散させることができず、それによりきしみ感も強く出てしまうことが分かる。また、比較例2~4を参照すると、カルボキシデシルジメチコン以外の分散剤を用いて水相中に紫外線散乱剤を分散させても、分散性が悪く、使用感及び経時の安定性の向上は見られなかった。表2の比較例5~13より、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテルを配合しない場合には、きしみ感の改善が見られないことが分かる。例えば、疎水化処理していない類似の物質であるヒドロキシプロピルメチルセルロースやヒドロキシエチルセルロースを用いても両相に分散された紫外線散乱剤のきしみ感を消すことはできなかった。また、カルボキシデシルジメチコンは独特な挙動を示す成分であるため、他の成分との相性の良し悪しがあり、比較例11のように混合した時点で減粘してしまうものや、比較例13のように経時で分散させた紫外線散乱剤が凝集してしまうものがあり、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテルのような適切な成分を使用しないと安定性や使用感が悪くなってしまう。
【0048】
表3の比較例14~18に示すように、成分(C)に指定した以外の高分子はきしみ感の改善、分散性、安定性のいずれの観点においても適切でない。これは前項で記述した通り、カルボキシデシルジメチコンには相性の悪い高分子が存在し、減粘もしくは凝固してしまうことにより安定的に紫外線散乱剤を水相中に分散することができないためである。また、比較例17のようにカルボキシデシルジメチコンとの相性が悪くない成分においても、きしみ感の改善には至らなかった。そのため、きしみ感の改善や経時の安定性を保つには、成分(C)に記載の高分子を使用する必要がある。
【0049】
常法にて、各処方の化粧料を作製した。いずれの処方においても本発明の効果を奏することが確認された。
【0050】
(1) O/W型日焼け止めジェル
配合成分 配合量(%)
トリエトキシカプリリルシラン処理酸化亜鉛(油相分散) 13.5
セチルジグリセリルトリス(トリメチルシロキシ)シリルエチルジメチコン 1.0
水添ポリイソブテン 3.5
ジメチコン 2.5
カプリリルメチコン 5.0
グリセリン 3.0
1,3-ブチレングリコール 8.0
キサンタンガム 0.1
ステアリン酸スクロース 1.25
水添レシチン 1.0
シリカ 2.0
イソステアリン酸ポリグリセリルー2 0.5
AMP 0.5
カルボマー 0.2
ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル 0.05
ステアリン酸処理酸化チタン(水相分散) 6.0
カルボキシデシルジメチコン 1.0
防腐剤 適量
水 残余
合計 100
【0051】
(2) O/W型日焼け止めクリーム
配合成分 配合量(%)
ステアリン酸処理酸化亜鉛(油相分散) 13.5
ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 3.0
ジメチコン 1.5
カプリリルメチコン 8.0
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 3.0
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 0.5
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 0.5
ポリグリセリル-3ジシロキサンジメチコン 1.0
1,3-ブチレングリコール 8.0
キサンタンガム 0.1
ステアリン酸ポリグリセリル-10 2.0
テトラオレイン酸ソルベス-60 1.0
シリカ 2.0
イソステアリン酸ポリグリセリルー2 0.5
AMP 0.5
カルボマー 0.2
ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル 0.05
ニコチン酸アミド 3.0
セチルリン酸K 0.1
ポリアクリルアミド 0.5
水添ナタネ油アルコール 1.5
セラミド3 0.05
ユビキノン 0.001
コンフリー葉エキス 0.01
アスコルビルグルコシド 0.1
シリカ処理酸化チタン(水相分散) 6.0
カルボキシデシルジメチコン 1.0
セルロースナノファイバー 0.1
30%ジラウロイルグルタミン酸リシンNa水溶液 0.1
防腐剤 適量
水 残余
合計 100
【0052】
(3) O/W型日焼け止め乳液
配合成分 配合量(%)
イソステアリン酸処理酸化亜鉛(油相分散) 13.5
セチルジグリセリルトリス(トリメチルシロキシ)シリルエチルジメチコン 1.0
水添ポリイソブテン 2.5
ジメチコン 2.5
カプリリルメチコン 5.0
グリセリン 3.0
1,3-ブチレングリコール 9.0
キサンタンガム 0.1
PEG-100水添ヒマシ油 1.5
グリコシルトレハロース 0.5
加水分解水添デンプン 0.3
シリカ 2.0
AMP 0.25
(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー 0.3
ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル 0.05
(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー 0.2
ハイドロゲンジメチコン処理酸化チタン(水相分散) 6.0
カルボキシデシルジメチコン 1.0
タベブイアインペチギノサ樹皮エキス 0.01
ヒアルロン酸Na 0.1
防腐剤 適量
水 残余
合計 100