(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135014
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】振動発生装置
(51)【国際特許分類】
B06B 1/06 20060101AFI20240927BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20240927BHJP
H10N 30/87 20230101ALI20240927BHJP
H10N 30/06 20230101ALI20240927BHJP
H10N 30/05 20230101ALI20240927BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20240927BHJP
H04R 17/00 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
B06B1/06 Z
H10N30/20
H10N30/87
H10N30/06
H10N30/05
G06F3/01 560
H04R17/00 332Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045501
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】石井 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】福島 岳行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 由香里
(72)【発明者】
【氏名】清水 寛之
(72)【発明者】
【氏名】濤川 雄一
【テーマコード(参考)】
5D019
5D107
5E555
【Fターム(参考)】
5D019AA21
5D019AA25
5D019EE01
5D107AA02
5D107AA13
5D107BB08
5D107CC04
5E555AA08
5E555BA16
5E555BA38
5E555BA88
5E555BA90
5E555BB16
5E555BB38
5E555BB40
5E555BC01
5E555DA23
5E555DA24
5E555DD06
5E555EA14
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】小型化かつ高出力化することが可能な振動発生装置を提供する。
【解決手段】振動発生装置は、圧電体層と、前記圧電体層を挟む第1電極および第2電極と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することで前記第1電極および前記第2電極が前記圧電体層を挟む方向に伸縮する複数の圧電素子10と、前記方向において、前記複数の圧電素子を並列に挟む第1部材および第2部材を備え、前記第1部材と前記第2部材とは前記複数の圧電素子を前記方向に押圧する筐体と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体層と、前記圧電体層を挟む第1電極および第2電極と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することで前記第1電極および前記第2電極が前記圧電体層を挟む方向に伸縮する複数の圧電素子と、
前記方向において、前記複数の圧電素子を並列に挟む第1部材および第2部材を備え、前記第1部材と前記第2部材とは前記複数の圧電素子を前記方向に押圧する筐体と、
を備える振動発生装置。
【請求項2】
前記第1部材から突出する突出部に設けられたねじ山と前記第2部材に設けられた穴に設けられたねじ山とを嵌め合わせることにより、前記第1部材と前記第2部材とは前記圧電素子を押圧する請求項1に記載の振動発生装置。
【請求項3】
前記複数の圧電素子は、前記突出部を囲むように配置される請求項2に記載の振動発生装置。
【請求項4】
前記複数の圧電素子は、前記突出部の平面形状における中心を中心に略回転対称に設けられている請求項3に記載の振動発生装置。
【請求項5】
前記第1部材と前記第2部材との間に設けられ、前記複数の圧電素子を収納し、前記方向に貫通する複数の開口を有する第3部材を備える請求項1から4のいずれか一項に記載の振動発生装置。
【請求項6】
前記複数の開口内の各々において、前記第1部材および前記第2部材の少なくとも一方と前記圧電素子との間に設けられ、少なくとも一部が前記開口から突出した第4部材を備える請求項5に記載の振動発生装置。
【請求項7】
前記第4部材のヤング率は、前記複数の圧電素子のヤング率より大きい請求項6に記載の振動発生装置。
【請求項8】
前記複数の開口内の各々において、前記圧電素子の一部は、開口から前記第1部材側および前記第2部材側に突出する請求項5に記載の振動発生装置。
【請求項9】
前記複数の開口の少なくとも1つは、開口の内面に設けられ、前記複数の圧電素子に電気的に接続するケーブルが収納される第1溝を有し、
前記第3部材は、前記第1部材側の面および前記第2部材側の面の少なくとも一方の面に設けられ、前記ケーブルが収納され、前記第1溝と連結された第2溝を有する請求項5に記載の振動発生装置。
【請求項10】
前記圧電体層、前記第1電極および前記第2電極は各々複数設けられ、前記複数の第1電極および前記第2電極は前記方向において互い違いに設けられ、前記複数の圧電体層の1つは、前記複数の第1電極のうち1つと前記複数の第2電極のうち1つに前記方向において挟まれる請求項1から4のいずれか一項に記載の振動発生装置。
【請求項11】
前記圧電素子に、前記電圧として、150Hz以上かつ1000Hz以下の周波数を有する搬送波を1Hz以上かつ100Hz以下の周波数を有する信号波により振幅変調させた変調波を供給する駆動装置を備える請求項1から4のいずれか一項に記載の振動発生装置。
【請求項12】
前記圧電素子に、前記電圧として、10kHz以上かつ100kHz以下の周波数を有する搬送波を50Hz以上かつ1000Hz以下の周波数を有する信号波により振幅変調させた変調波を供給する駆動装置を備える請求項1から4のいずれか一項に記載の振動発生装置。
【請求項13】
前記圧電素子に、前記電圧として、10kHz以上かつ100kHz以下の周波数を有する第1搬送波を、150Hz以上かつ1000Hz以下である周波数を有する第2搬送波を1Hz以上かつ100Hz以下である周波数を有する信号波で振幅変調された第1変調波で、振幅変調された第2変調波を供給する駆動装置を備える請求項1から4のいずれか一項に記載の振動発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発生装置に関し、圧電素子を有する振動発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気信号を音波に変換するトランスデューサのように振動発生装置に圧電素子を用いることが知られている。振動発生装置として振動板を有するランジュバン型振動子を用いることが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電磁駆動式の振動発生装置は、高周波駆動が難しい。また、高出力化が可能であるが大型化する。振動発生装置が振動板を有する場合、振動板を小さくすると出力が低下する。振動板を有さない構造では、小型化が可能となるが高出力化が難しい。このように、振動発生装置の小型化と高出力化を両立することが難しい。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、小型化かつ高出力化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、圧電体層と、前記圧電体層を挟む第1電極および第2電極と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することで前記第1電極および前記第2電極が前記圧電体層を挟む方向に伸縮する複数の圧電素子と、前記方向において、前記複数の圧電素子を並列に挟む第1部材および第2部材を備え、前記第1部材と前記第2部材とは前記複数の圧電素子を前記方向に押圧する筐体と、を備える振動発生装置である。
【0007】
上記構成において、前記第1部材から突出する突出部に設けられたねじ山と前記第2部材に設けられた穴に設けられたねじ山とを嵌め合わせることにより、前記第1部材と前記第2部材とは前記圧電素子を押圧する構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記複数の圧電素子は、前記突出部を囲むように配置される構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記複数の圧電素子は、前記突出部の平面形状における中心を中心に略回転対称に設けられている構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記第1部材と前記第2部材との間に設けられ、前記複数の圧電素子を収納し、前記方向に貫通する複数の開口を有する第3部材を備える構成とすることができる。
【0011】
前記複数の開口内の各々において、前記第1部材および前記第2部材の少なくとも一方と前記圧電素子との間に設けられ、少なくとも一部が前記開口から突出した第4部材を備える構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記第4部材のヤング率は、前記複数の圧電素子のヤング率より大きい構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記複数の開口内の各々において、前記圧電素子の一部は、開口から前記第1部材側および前記第2部材側に突出する構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記複数の開口の少なくとも1つは、開口の内面に設けられ、前記複数の圧電素子に電気的に接続するケーブルが収納される第1溝を有し、前記第3部材は、前記第1部材側の面および前記第2部材側の面の少なくとも一方の面に設けられ、前記ケーブルが収納され、前記第1溝と連結された第2溝を有する構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記圧電体層、前記第1電極および前記第2電極は各々複数設けられ、前記複数の第1電極および前記第2電極は前記方向において互い違いに設けられ、前記複数の圧電体層の1つは、前記複数の第1電極のうち1つと前記複数の第2電極のうち1つに前記方向において挟まれる構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記圧電素子に、前記電圧として、150Hz以上かつ1000Hz以下の周波数を有する搬送波を1Hz以上かつ100Hz以下の周波数を有する信号波により振幅変調させた変調波を供給する駆動装置を備える構成とすることができる。
【0017】
上記構成において、前記圧電素子に、前記電圧として、10kHz以上かつ100kHz以下の周波数を有する搬送波を50Hz以上かつ1000Hz以下の周波数を有する信号波により振幅変調させた変調波を供給する駆動装置を備える構成とすることができる。
【0018】
上記構成において、前記圧電素子に、前記電圧として、10kHz以上かつ100kHz以下の周波数を有する第1搬送波を、150Hz以上かつ1000Hz以下である周波数を有する第2搬送波を1Hz以上かつ100Hz以下である周波数を有する信号波で振幅変調された第1変調波で、振幅変調された第2変調波を供給する駆動装置を備える構成とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、小型化かつ高出力化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施例1に係る振動発生装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施例1に係る振動発生装置の断面図である。
【
図3】
図3は、実施例1に係る振動発生装置の解体断面図である。
【
図4】
図4(a)は、実施例1における第3部材の平面図、
図4(b)は、
図4(a)のA-A断面図である。
【
図5】
図5(a)は、実施例1における第3部材に圧電素子に接続されるケーブルを設けた平面図、
図5(b)は、
図5(a)のA-A断面図である。
【
図6】
図6は、実施例1における圧電素子の断面図である。
【
図7】
図7は、実施例2に係る振動発生装置の断面図である。
【
図8】
図8は、実施例2における第3部材の断面図である。
【
図9】
図9(a)および
図9(b)は、実施例1および2における第1部材の別の例を示す断面図である。
【
図10】
図10は、実施例4において、駆動装置が圧電素子に供給する信号を示す図である。
【
図11】
図11は、実施例4の変形例1において、駆動装置が圧電素子に供給する信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し実施例について説明する。
【実施例0022】
振動子の機械振動のQ値(Quality Factor)特性を向上させることにより、振動板を用いなくても振動発生装置の高出力化が可能となる。実施例1では、筐体の機械振動のQ値を向上させることが可能であり、かつ高出力化が可能な振動発生装置について説明する。
【0023】
図1は、実施例1に係る振動発生装置の斜視図である。
図2は、実施例1に係る振動発生装置の断面図である。
図3は、実施例1に係る振動発生装置の解体断面図である。第1部材20と第2部材25が第3部材30を挟む方向をZ方向、Z方向に直交する方向をX方向およびY方向とする。
図2および
図3のCは中心線である。
【0024】
図1から
図3に示すように、実施例1の振動発生装置100では、筐体15は、第1部材20、第2部材25および第3部材30を備えている。第1部材20と第3部材30との間には、平板部材23が設けられ、第2部材25と第3部材30との間には、平板部材28が設けられている。第1部材20の-Z側の面には、-Z方向に突出する棒状の突出部21が設けられている。第2部材25には、突出部21の先端が嵌合する穴26が設けられている。突出部21の先端には雄ねじとなるねじ山22が設けられ、穴26の内面には雌ねじとなるねじ山27が設けられている。ねじ山22と27とを嵌め合わせることにより第1部材20と第2部材25とは、接合される。
【0025】
第3部材30、平板部材23および28には、突出部21が貫通する開口31、24および29がそれぞれ設けられている。突出部21は、第3部材30、平板部材23および28とは接合しておらず、開口31、24および29内を自由に移動できる。第1部材20、第2部材25、第3部材30、平板部材23および28の平面形状は円形状である。第1部材20、第2部材25、第3部材30、平板部材23および28の平面形状の中心は略一致する。突出部21、穴26、開口24、29および31の平面形状は円形状である。第1部材20、第2部材25、第3部材30、平板部材23および28の平面形状の中心と、突出部21、穴26、開口24、29および31の平面形状の中心とは略一致する。
【0026】
図4(a)は、実施例1における第3部材の平面図、
図4(b)は、
図4(a)のA-A断面図である。
図4(b)では、第3部材30に加え、平板部材23および28を図示している。
図4(a)および
図4(b)に示すように、第3部材30および開口31の平面形状は円形状であり、第3部材30と開口31の円形状の中心は中心線Cと略一致している。第3部材30は、開口32を有している。開口32の平面形状は略四角形である。開口32は3個設けられている。開口32内には圧電素子10が設けられている。1つの開口32内には、圧電素子10として、2個の圧電素子10aおよび10bが設けられている。圧電素子10aおよび10bはZ方向に積層されている。圧電素子10aおよび10bは、開口32には接合されておらず、開口32内を自由に移動できる。開口32の内面にはZ方向に延伸する溝33および34が設けられている。第3部材30の+Z側の面には平面視において円周状の溝35、36、直線状の溝37および38が設けられている。
【0027】
圧電素子10aの+Z側の面は第3部材30の+Z側の面より+Zに突出し、圧電素子10bの-Z側の面は第3部材30の-Z側の面より-Zに突出する。圧電素子10aの+Z側の面は平板部材23に接し、圧電素子10bの-Z側の面は平板部材28に接する。
図2および
図3において、突出部21と穴26のねじを締めることで、第1部材20は平板部材23を介し圧電素子10aを矢印50aのように-Z方向に押圧する。第2部材25は平板部材28を介し圧電素子10bを矢印50bのように+Z方向に押圧する。1つの開口31において、圧電素子10aおよび10bを押圧する応力は、例えば5×10
6Pa以上である。
【0028】
図5(a)は、実施例1における第3部材に圧電素子に接続されるケーブルを設けた平面図、
図5(b)は、
図5(a)のA-A断面図である。
図5(a)に示すように、第3部材30の+Z側の面に設けられた円周状の溝35および36は、開口32に接している。溝35と36とを接続し、かつ第3部材30の外側まで延伸する直線状の溝37が設けられている。溝35と36とを接続し、かつ第3部材30の外側まで延伸する直線状の溝38が設けられている。
【0029】
図5(b)に示すように、開口32内の溝33aおよび33bは、Z方向に延伸している。圧電素子10aおよび10bの一端にケーブル12が並列に接続され、圧電素子10aおよび10bの他端にケーブル13が並列に接続されている。なお、圧電素子10aの一端と10bの一端とを接続するケーブル、銅箔またはメッシュ線等を設け、圧電素子10aの一端に1本のケーブル12を接合し、圧電素子10aの他端と10bの他端とを接続するケーブル、銅箔またはメッシュ線等を設け、圧電素子10aの他端に1本のケーブル13を接合してもよい。
【0030】
ケーブル12および13は、溝33aおよび33b内をそれぞれZ方向に延伸する。
図5(a)および
図5(b)のように、ケーブル12は溝33と36とが連結した箇所を介し溝33から溝35内を通過する。ケーブル13は溝33と35とが連結した箇所を介し溝33から溝36内を通過する。3個の開口32内の圧電素子10に接続される3本のケーブル12は、溝35から38を介し第3部材30の外側に導出される。3個の開口32内の圧電素子10に接続される3本のケーブル13は、溝36から37を介し第3部材30の外側に導出される。ケーブル12および13は駆動装置62に接続される。
【0031】
第1部材20、第2部材25、第3部材30、平板部材23および28の材料は、例えば金属または樹脂である。第1部材20、第2部材25、平板部材23および28は、硬い材料が好ましく、例えばステンレス鋼またはアルミニウムである。第3部材30は、圧電素子10の移動を制限するための部材のため、樹脂等の柔らかい材料でもよい。第1部材20、第2部材25、第3部材30、平板部材23および28の平面形状における直径は、例えば20mmである。突出部21、穴26の平面形状の直径は例えば5mmである。開口24、29および31の平面形状の直径は例えば5.5mmである。第1部材20、第2部材25、第3部材30、平板部材23および28のZ方向の高さは、例えばそれぞれ30mm、8mm、5.8mm、1mmおよび1mmである。第1部材20、第2部材25、第3部材30、平板部材23および28の材料、形状および寸法、並びに溝33~38の形状は適宜設計できる。
【0032】
図6は、実施例1における圧電素子の断面図である。
図6に示すように、圧電素子10aおよび10bは、複数の圧電体層41からなる圧電体40、複数の第1電極42および複数の第2電極44を備えている。複数の圧電体層41は、Z方向に積層されている。圧電体層41、第1電極42および第2電極44は、XY平面に広がる平板状である。複数の第1電極42および複数の第2電極44はZ方向において互い違いに設けられている。1つの圧電体層41は、Z方向において1つの第1電極42と1つの第2電極44とに挟まれている。圧電体40の-X側の側面に外部電極43が設けられ、圧電体40の+X側の側面に外部電極45が設けられている。複数の第1電極42は外部電極43に電気的に接続する。複数の第2電極44は外部電極45に電気的に接続する。外部電極43と45との間に電圧を印加することで、逆圧電効果により、圧電体40は、矢印52のようにZ方向に伸縮する。このように、第1電極42および第2電極44に電圧を印加することで、第1電極42および第2電極44の積層方向に伸縮する振動モードを縦変位型モードまたはd33モードという。
【0033】
圧電体40は、第1領域46、第2領域47および第3領域48を備えている。第1領域46および第2領域47は、Z方向に交互に設けられている。第3領域48は、Z方向において最も外側の第1領域46の外に設けられている。第1領域46は、Z方向において第1電極42と第2電極44とが一定間隔で交互に設けられた領域である。第1領域46における圧電体層41の積層数は一例として50層である。第2領域47および第3領域48は、第1電極42および第2電極44が設けられていない領域である。第2領域47は設けられていなくてもよい。第2領域47を設けることで信頼性が向上する場合もある。
【0034】
圧電体層41の材料としては、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O3)、チタン酸バリウム系材料(BaTiO3、BaはCaでもよく、TiはZrでもよい)、チタン酸ビスマス系材料(BiTiO3、Biの一部がNaでもよい)、ニオブ酸アルカリ系材料(NaNbO3、NaはLiまたはKでもよい)を用いることができる。第1電極42、第2電極44、外部電極43および45の材料としては、例えばAg、Pd、Pt、Cu、NiおよびAu等の金属を用いることができる。圧電素子10aおよび10bは、表面に第1電極42および第2電極44が形成された圧電体シートを積層し、焼結することにより形成される焼結体からなるチップである。圧電素子10aおよび10bは例えば直方体であり、圧電素子10aおよび10bのX方向およびY方向の幅は一例として3.5mm、Z方向の高さは一例として3mmである。
【0035】
圧電素子10aおよび10bにおける±Z側の表面におけるZ方向の変位量ΔZ、圧電体層41の積層数をN、第1電極42と第2電極44との間に印加される電圧をV、逆圧電定数に関連した定数をd33すると、ΔZ=d33×V×Nである。よって、圧電体層41の積層数Nを多くすることで変位量ΔZが大きくなる。しかし、製造上の制約などにより、1つの圧電素子10aまたは10bにおける積層数Nを多くすることができない場合がある。このような場合には、第3部材30の開口32内に圧電素子10aおよび10bをZ方向に積層することができる。これにより、圧電素子10aおよび10bの合計の変位量を大きくできる。Z方向に積層される圧電素子10aおよび10bの個数は1個でもよいし3個以上でもよい。
【0036】
第1部材20と第2部材25とが圧電素子10aおよび10bを押圧することで、筐体15が圧電素子10aおよび10bを押圧しない場合に比べ、Q値が向上する。このような現象は、圧電素子10aおよび10bとして、横変位型モードの圧電素子を用いた場合には得られない現象であり、発明者らがはじめて発見した現象である。なお、横変位型モードとは、第1電極42と第2電極44の積層方向に対し圧電素子10aおよび10bの振動方向が直交するモードである。
【0037】
実施例1によれば、
図6に示すように、Z方向において第1電極42と第2電極44とが圧電体層41を挟み、第1電極42と第2電極44との間に電圧を印加することでZ方向に伸縮する圧電素子10aおよび10bを用いる。
図1から
図4(b)のように、筐体15は、Z方向において複数の圧電素子10を並列に挟む第1部材20および第2部材25を備える。第1部材20と第2部材25とは複数の圧電素子10をZ方向に押圧する。このように、縦変位型の圧電素子10を筐体15が押圧することで、筐体15の機械振動のQ値が向上する。よって、振動板を有さない小型の振動発生装置においても高出力化が可能となる。さらに、第1部材20と第2部材25とは複数の圧電素子10を並列に押圧することで、より高出力化が可能となる。
【0038】
図2および
図3のように、第1部材20と第2部材25とは、第1部材20から突出する突出部21に設けられたねじ山22と第2部材25に設けられた穴26に設けられたねじ山27とを嵌め合わせることにより、圧電素子10を押圧する。これにより、大きい力で安定的に圧電素子10を押圧できる。また、複数の圧電素子10に加わる圧力のばらつきを抑制できる。よって、共振周波数のばらつき等を抑制できる。
【0039】
図4(a)のように、複数の圧電素子10は、突出部21を囲むように配置される。これにより、複数の圧電素子10に加わる圧力のばらつきを抑制できる。特に、複数の圧電素子10は、突出部21の平面形状における中心を中心に略回転対称に設けられている。これにより、複数の圧電素子10に加わる圧力のばらつきを抑制できる。並列に設けられる圧電素子10の個数は2個または4個以上でもよい。複数の圧電素子10に均等に応力を加えるためには、並列に設けられる圧電素子10の個数は3個が好ましい。なお、回転対称(略回転対称)とは、幾何学的な回転対称でなくてもよい。例えば、中心線Cと圧電素子10の中心との距離は、±10%の範囲でばらついていてもよい。また、圧電素子10の周方向の位置は、中心線Cと圧電素子10の中心との距離に対し10%程度ばらついていてもよい。
【0040】
図1から
図4(a)のように、第3部材30は、第1部材20と第2部材25との間に設けられている。第3部材30は、複数の圧電素子10を収納し、Z方向に貫通する複数の開口32を有する。これにより、圧電素子10がX方向およびY方向に移動することを抑制できる。第3部材30は設けられていなくてもよい。
【0041】
図4(b)のように、複数の開口32内において、開口32内に設けられた圧電素子10の一部は、開口32から第1部材20側および第2部材25側に突出する。これにより、第1部材20および第2部材25は複数の圧電素子10を均等に押圧することができる。平板部材23および28は設けられておらず、第1部材20および第2部材25は直接複数の圧電素子10を押圧してもよい。
【0042】
図5(a)および
図5(b)のように、第3部材30の開口32の内面に溝33aおよび33b(第1溝)が設けられている。第3部材30の第1部材20側の面および第2部材25側の面の少なくとも一方の面に溝35~38(第2溝)が設けられている。溝33aおよび33bと、溝35および36と、はそれぞれ連結されている。ケーブル12および13は圧電素子10aおよび10bに電気的に接続されている。ケーブル12は、溝33a、35および38に収納され、ケーブル13は、溝33b、36および37に収納されている。これにより、第1部材20と第2部材25とが圧電素子10を押圧するときに、ケーブル12および13が押圧されることを抑制できる。
【0043】
図6のように、圧電素子10aおよび10bにおいて、複数の第1電極42および複数の第2電極44はZ方向において互い違いに設けられ、複数の圧電体層41の1つは、複数の第1電極42のうち1つと複数の第2電極44のうち1つにZ方向において挟まれる。このような構造により、Z方向の変位量をより大きくでき、振動発生装置の特性をより向上できる。
実施例1では、1つの平板部材23が複数の圧電素子10を押圧し、1つの平板部材28が複数の圧電素子10を押圧する。圧電素子10の高さにばらつきがあると、複数の圧電素子10に加わる応力が均一でなくなる場合がある。
そこで、実施例2によれば、支持部材16a(第4部材)は、複数の開口32内において、第1部材20と圧電素子10との間に設けられ、少なくとも一部が開口32から突出する。支持部材16b(第4部材)は、複数の開口32内において、第2部材25と圧電素子10との間にそれぞれ設けられ、少なくとも一部が開口32から突出する。このように、複数の開口32内に支持部材16aおよび16bを各々設けることで、複数の圧電素子10に高さのばらつきがあっても、圧電素子10に加わる応力を均一化できる。支持部材16aおよび16bの少なくとも一方が設けられていればよい。平板部材28は設けられておらず、第1部材20および第2部材25は直接支持部材16aおよび16bを押圧してもよい。
支持部材16aおよび16bのヤング率は、圧電体40のヤング率より大きい。これにより、圧電素子10に加わる応力を均一化できる。圧電体40としてPZTを用いた場合、PZTのヤング率は約60GPaである。これに対し、支持部材16aおよび16bとしてステンレスを用いた場合、ステンレスのヤング率は約120GPaである。また、アルミニウムのヤング率は約70GPaである。支持部材16aおよび16bのヤング率は、圧電体40のヤング率の1.2倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましい。