(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135017
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】レギュレータ
(51)【国際特許分類】
G05D 16/10 20060101AFI20240927BHJP
F16K 17/30 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G05D16/10 Z
F16K17/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045505
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000153122
【氏名又は名称】株式会社ニッキ
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末永 直也
(72)【発明者】
【氏名】會澤 修太郎
(72)【発明者】
【氏名】末松 幸倫
【テーマコード(参考)】
3H060
5H316
【Fターム(参考)】
3H060AA02
3H060BB03
3H060CC04
3H060DA04
3H060DB03
3H060DB19
3H060DB20
3H060DC05
3H060DD05
3H060DD17
3H060EE06
3H060HH07
5H316AA09
5H316BB05
5H316DD13
5H316DD17
5H316EE02
5H316EE10
5H316EE12
5H316GG01
5H316JJ01
5H316KK02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】厳しい寸法精度の管理や、神経質な組み立てを要することなくリーク不良を防止することが可能なレギュレータを提供する。
【解決手段】弾性材料により形成されており、中心に中心孔101を有する環状の弁座100と、軸方向に移動可能であり、前記弁座100の内周縁または外周縁のうち一方に接触・離隔する弁体51と、を備え、前記弁座100は、内周面または外周面のうち前記弁体51と接触する周縁が属する方の周面に環状溝106が形成されており、前記弁体51は、前記弁座100と接する面が前記軸方向に対して傾斜している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧の流体を減圧して所望の圧力に調整した流体を得るレギュレータであって、
弾性材料により形成されており、中心に中心孔を有する環状の弁座と、
軸方向に移動可能であり、前記弁座の内周縁または外周縁のうち一方に接触・離隔する弁体と、を備え、
前記弁座は、内周面または外周面のうち前記弁体と接触する周縁が属する方の周面に環状溝が形成されており、
前記弁体は、前記弁座と接する面が前記軸方向に対して傾斜している、
ことを特徴とするレギュレータ。
【請求項2】
前記弁体と接触する前記弁座の角部が丸みを帯びた形状であることを特徴とする請求項1記載のレギュレータ。
【請求項3】
前記環状溝の形状は、溝の両側面が平行かつ溝の底面が凹曲面である断面U字状のU字溝または溝の両側面が平行かつ溝の底面が平面である断面コ字状のコ字溝であることを特徴とする請求項1記載のレギュレータ。
【請求項4】
前記弁体は、先端側が小径なテーパー形状であることを特徴とする請求項1,2または3記載のレギュレータ。
【請求項5】
前記環状溝の溝径は、前記弁体のシール径以上であることを特徴とする請求項4記載のレギュレータ。
【請求項6】
前記弁体は、先端側が大径な逆テーパー形状であるとともに、内部を流体が通過可能な流体通路を有する筒状であることを特徴とする請求項1,2または3記載のレギュレータ。
【請求項7】
前記環状溝の溝径は、前記弁体のシール径以下であることを特徴とする請求項6記載のレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧の流体を所望の圧力に減圧する際に用いられるレギュレータに関し、より詳細には弁座の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高圧の流体を減圧し、所望の圧力に調整する装置であるレギュレータは広く知られており、例えば燃料タンクに貯留したCNG(圧縮天然ガス)などの高圧燃料をエンジンに供給する際の調圧装置として利用されているが、その方式はピストン式と、ダイヤフラム式の2種類に大別される。
【0003】
ピストン式のレギュレータは例えば特開2007-146875号公報(特許文献1)、特開2013-41375号公報(特許文献2)、および特開2019-67216号公報(特許文献3)などに提示されており、ピストンに加わる1次圧と、これに抗する2次圧のバランスを調整し、吐出される燃料の圧力を所望の圧力(2次圧)に設定するものである。
【0004】
図12はピストン式のレギュレータの一例を示すものであり、このレギュレータ4は、金属や硬質の合成樹脂などにより形成されるボディ10Aに貫通形成した筒状の通路20における一方の開口端を高圧の流体の入力側21、他方の開口端を調圧した流体の出力側22としており、前記入力側21および出力側22には流体を気密に導入するための導入口31を有する入口カバー30および流体を気密に取り出すための取出口41を有する出口カバー40がそれぞれ止めねじなどの固着具32,42により固着されている。
【0005】
前記通路20は、減圧室23,大気圧室24,調圧室25に区画され、前記導入口31から導入された高圧の流体は前記減圧室23において減圧された後、前記調圧室25において所定の圧力に調整されて前記取出口41から排出される。
【0006】
前記通路20の入力側21には環状保持片27を有する嵌合凹部26が形成されているとともに、前記入口カバー30における前記導入口31と反対側には筒状の嵌合凸部33が突出形成されており、前記嵌合凹部26と前記嵌合凸部33とから弁座保持部が構成され、前記嵌合凹部26と前記嵌合凸部33の間には樹脂やゴムなどの弾性材料により形成された環状の弁座100が嵌め込まれて軸線方向に押圧されつつ保持されている。
【0007】
前記通路20の出力側22には、前記弁座100に接触または離隔する弁体51を含み、前記通路20内を軸線方向に摺動可能に配置されるとともに前記減圧室23,前記大気圧室24,前記調圧室25を区画するピストン50と、前記ピストン50を前記出力側22に付勢する調圧ばね60とが設けられている。
【0008】
不良を起こさずに設計通りの性能を発揮するために、このようなレギュレータ4においては、部品精度や組付け精度がともに高く求められ、仮に弁体の軸ズレや傾きなどによって弁座と弁体との接触が不均一となった場合、リーク不良等による機能損失に発展するおそれがあった。
【0009】
また、
図13はピストン式のレギュレータの異なる一例を示すものであり、弁座を保持する弁座保持部およびピストンの構成が異なるものである。
【0010】
すなわち、このレギュレータ5において、弁座110は、前記入口カバー30とボディ10Bとの間に装着される円盤状の弁座保持部材70に保持されており、ピストン80は、前記弁座110に接触することで流体通路83の開閉を行う筒状の弁体81を含む構成である。
【0011】
不良を起こさずに設計通りの性能を発揮するために、このようなレギュレータ5においては、部品精度や組付け精度がともに高く求められ、仮に前記弁体のブレや傾きなどによって弁座と弁体との接触が不均一となった場合、リーク不良等による機能損失に発展するおそれがあった。
【0012】
ダイヤフラム式のレギュレータは例えば特開2012-7481号公報(特許文献4)や特開2014-169703号公報(特許文献5)などに開示されている。
【0013】
図14はダイヤフラム式のレギュレータの一例を示すものであり、このレギュレータ6は、中央に弁孔を貫通して形成したドーナツ状の弁座120と、先端側に傾斜面を有する弁体91と、前記弁体91を同軸的に有して調圧室内の圧力変動に応じて軸線方向に往復摺動する弁軸92とを備え、弁孔開口部に形成したシート面122に前記傾斜面を密着・離隔させて弁の開閉を行いながら前記調圧室の圧力を一定に維持する調圧機構を構成しており、導入した気体を減圧・調整して下流側に送出するレギュレータにおいて、前記弁座120は、スプリング131により所定の押圧力で付勢されたプレート132によって軸方向に押圧された状態で配置されているとともに、外周側に隙間を有して軸直方向に所定範囲で摺動可能とされており、前記弁体91が閉弁側に動作することにより、前記傾斜面が前記シート面122側に当接しながら前記弁体91の軸芯に前記弁座の軸芯が一致する方向に摺動・案内して閉弁状態で前記弁体91の軸芯と前記弁座120の軸芯とが一致する構造のものである。
【0014】
前記レギュレータ6によれば、単純な調圧機能に加えて、弁座が軸直方向に摺動することで組付けが容易かつ調芯作用を発揮するものであるが、軸方向の調整機能については特に触れられておらず、弁体の軸ズレや傾きなどへの対策が十分であるとは言えなかった。
【0015】
前記レギュレータ4、前記レギュレータ5および前記レギュレータ6において、部品構成を変更せずにリーク不良問題を回避しようとすると、各部品の寸法精度を厳しく管理するとともに、時間と手間をかけて組み立てなければならず、コスト増となる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2007-146875号公報
【特許文献2】特開2013-41375号公報
【特許文献3】特開2019-67216号公報
【特許文献4】特開2012-7481号公報
【特許文献5】特開2014-169703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は前記従来のレギュレータが有する問題点を解決するためになされたものであり、厳しい寸法精度の管理や、神経質な組み立てを要することなくリーク不良を防止することが可能なレギュレータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を解決するためになされた本発明は、高圧の流体を減圧して所望の圧力に調整した流体を得るレギュレータであって、弾性材料により形成されており、中心に中心孔を有する環状の弁座と、軸方向に移動可能であり、前記弁座の内周縁または外周縁のうち一方に接触・離隔する弁体と、を備え、前記弁座は、内周面または外周面のうち前記弁体と接触する周縁が属する方の周面に環状溝が形成されており、前記弁体は、前記弁座と接する面が前記軸方向に対して傾斜している、ことを特徴とする。
【0019】
上記発明によれば、弁体からの押圧力に応じて、環状溝を有する弁座が自ら変形することで、弁体と接触する内周縁または外周縁を弁体に密着させられるため、厳しい寸法精度の管理や、神経質な組み立てを要することなくリーク不良を防止することが可能となり、特に弁体の軸ズレや傾きに対して強く、優れたシール性を発揮することができる。
【0020】
本発明において、前記弁体と接触する前記弁座の角部が丸みを帯びた形状である場合、弁座と弁体との接触面積を増加させる効果や、案内する効果が期待でき、より確実にリーク不良の防止が可能であるため特に望ましい。
【0021】
本発明において、前記環状溝の形状は、溝の両側面が平行かつ溝の底面が凹曲面である断面U字状のU字溝または溝の両側面が平行かつ溝の底面が平面である断面コ字状のコ字溝である場合、成形や加工が容易であるとともに、変形を生じやすくして、より確実にリーク不良の防止が可能であるため特に望ましい。
【0022】
本発明において、前記弁体は、先端側が小径なテーパー形状であることが望ましい。加えて、前記環状溝の溝径は、前記弁体のシール径以上である場合、より変形を生じやすくなり、更に確実にリーク不良の防止が可能である。
【0023】
あるいは、本発明において、前記弁体は、先端側が大径な逆テーパー形状であるとともに、内部を流体が通過可能な流体通路を有する筒状であることが望ましい。加えて、前記環状溝の溝径は、前記弁体のシール径以下である場合、より変形を生じやすくなり、更に確実にリーク不良の防止が可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、弁座に形成された環状溝によって弁座を意図的に弾性変形させることでリーク不良を防止し、より優れたシール性を発揮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1の実施の形態の閉弁状態を示す断面図。
【
図2】
図1に示した実施の形態の開弁状態を示す断面図。
【
図3】
図1に示した実施の形態における弁座を示す(a)斜視図および(b)一部を切り欠いた斜視図。
【
図4】
図1に示した実施の形態における弁座の変形過程を示す、(a)弁体と弁座が接触した状態を示す図、(b)弁体が更に弁座方向に移動した状態を示す図。
【
図5】本発明の第2の実施の形態の閉弁状態を示す断面図。
【
図6】
図5に示した実施の形態の開弁状態を示す断面図。
【
図7】
図5に示した実施の形態における弁座を示す(a)斜視図および(b)一部を切り欠いた斜視図。
【
図8】
図5に示した実施の形態における弁座の変形過程を示す、(a)弁体と弁座が接触した状態を示す図、(b)弁体が更に弁座方向に移動した状態を示す図。
【
図9】本発明の第3の実施の形態の閉弁状態を示す断面図。
【
図10】
図9に示した実施の形態における弁座を示す(a)斜視図および(b)一部を切り欠いた斜視図。
【
図11】
図9に示した実施の形態における弁座の変形過程を示す、(a)弁体と弁座が接触した状態を示す図、(b)弁体が更に弁座方向に移動した状態を示す図。
【
図12】従来のピストン式のレギュレータの一例を示す断面図。
【
図13】従来のピストン式のレギュレータの異なる一例を示す断面図。
【
図14】従来のダイヤフラム式のレギュレータの一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0027】
図1乃至
図4は、本発明であるレギュレータの第1の実施の形態を示す図である。
【0028】
レギュレータ1は、金属や硬質の合成樹脂などにより形成されるボディ10Aに貫通形成した筒状の通路20における一方の開口端を高圧の流体の入力側21、他方の開口端を調圧した流体の出力側22としており、前記入力側21には流体を気密に導入するための導入口31を有する入口カバー30が固定部32により固着されており、出力側22には流体を気密に取り出すための取出口41が形成されている。
【0029】
前記通路20は、前記入力側21から前記出力側22へと順に減圧室23,大気圧室24,調圧室25に区画され、前記導入口31から導入された高圧の流体は前記減圧室23において減圧された後、前記調圧室25において所定の圧力に調整されて前記取出口41から排出される。なお、符号11は前記大気圧室24と前記ボディ10Aの外部空間とを連通して前記大気圧室24内の圧力を大気圧と等しくするための連通孔である。
【0030】
前記入口カバー30における前記導入口31と反対側には、弁座保持穴33と、内周に雌ねじが形成された弁座保持片装着部34と、筒状体35とが形成されている。
【0031】
前記弁座保持片装着部34には、外周に雄ねじが形成された環状の弁座保持片36が装着可能であり、環状の弁座100が前記弁座保持穴32に嵌め込まれた状態で前記弁座保持片36を前記弁座保持片装着部34に装着することで前記弁座100が脱落不能に保持されている。
【0032】
前記弁座100は、樹脂やゴムなどの弾性材料により形成されており、中心孔101が形成された環状を呈し、ピストン50の弁体51と接触するシート面102と、その反対側の裏面103を有する。前記弁体51と接触する前記中心孔101の内周縁104はR面取り形状である(
図3参照)。
【0033】
前記通路2の出力側22には、前記通路20内を軸線方向に摺動可能に配置されるとともに前記減圧室23,前記大気圧室24,前記調圧室25を区画するピストン50と、前記ピストン50を前記出力22側に付勢する調圧ばね60とが設けられている。
【0034】
前記ピストン50は、前記弁座100に接触・離隔する弁体51と、前記通路20内を前記減圧室23と前記大気圧室24に区画する入口側ピストン部52と、前記通路20内を前記大気圧室24と前記調圧室25に区画する出口側ピストン部53と、前記減圧室23と前記調圧室25を連通する流体通路54と、を一体に形成してなる。なお、前記弁体51は、前記弁座100と接する面が軸方向に対して傾斜している。
【0035】
なお、符号55は前記入口側ピストン部52に外嵌されたシール部材、符号56は前記出口側ピストン部53に外嵌されたシール部材、符号57は前記入口側ピストン部52に外嵌されたカラーである。前記カラー57は、滑り性の良い材料で、外径を前記筒状体34の内径と略一致させて形成されており、前記ピストン50が軸線方向に摺動する際にブレを生じさせずにスムーズに案内するための部品である。
【0036】
前記ピストン50は、その中心軸と一致させて貫通形成された、内径が前記弁体51のシール径SD1と同径の導通孔58を有し、ロッド59を前記導通孔58に気密かつ軸方向に移動可能に挿入することで、ピストン50に付加される燃料入口圧力による荷重を前記ロッド59で受けることで相殺することを可能とし、燃料入口圧力によって燃料出口の圧力を安定させた構造となっている。
【0037】
前記調圧ばね60は前記ピストン50が受ける圧力荷重と釣り合うような強さに設定されており、前記大気圧室24内に装着されて前記ピストン50の前記出口側ピストン部53と接触し、前記ボディ10Aと前記ピストン50を互いに離れる方向に付勢する。
【0038】
上記構成を有するレギュレータの動作を以下に説明する。
まず、前記導入口31から高圧の流体が導入されると、前記流体は前記弁座100に形成された中心孔101を通過して前記減圧室23に流入する。
【0039】
このとき、初期段階としては前記ピストン50が前記調圧ばね60に押され、前記弁座100と前記弁体51が離隔した開弁状態となっており、前記流体は前記流体通路54を介して前記調圧室25に流入する。
【0040】
その後、前記調圧室25側に流入した前記流体により前記調圧室25内の圧力が高まるにつれ、前記ピストン50が前記入口側21に向けて押されることとなり、前記調圧室25内の圧力が所定の圧力に達した時点で前記弁座100と前記弁体51が接触する閉弁状態となり、前記流体の流入が遮断される。
【0041】
そして、前記調圧室25内の前記流体が前記取出口41から排出されて前記調圧室25内の圧力が低下すると、前記ピストン50が前記調圧ばね60に押され、前記弁座100と前記弁体51が離隔した開弁状態に復帰する。
【0042】
以上の動作を繰り返し、前記弁座100と前記弁体51の隙間面積を変化させることで排出される流体の圧力を一定に保つものである。
【0043】
ここで、前記
図12に示した従来のレギュレータ4と異なる点は、樹脂やゴムなどの弾性材料で形成された前記弁座100において、前記弁体51と接触する内周縁104が属する方の周面である内周面105に、中心に向けて所定の深さと幅を有する環状溝106が形成されている点である。
【0044】
前記環状溝106が形成されていることによって、前記弁座100は変形しやすい構造であり、前記弁体51が前記弁座100に接触するとともに前記弁座100を軸線方向に押圧した際に、その押圧力によって前記弁座100は弾性変形し、前記弁体51と密着する閉弁状態となり、優れたシール性を発揮して、シール不良を防止することができる。
【0045】
このとき、前記環状溝106の溝径GD1が、前記弁体のシール径SD1以上であることによって、変形しやすさを向上させて柔軟に変形することができ、シール不良をより確実に防止することができる。
【0046】
また、前記環状溝106の形状について、本実施の形態では溝の両側面107,108が平行かつ溝の底面109が凹曲面である断面U字状のU字溝となっており、成形や加工が容易であるとともに、変形を生じさせやすい形状である。
【0047】
以下、弁座100の変形過程について
図4に基づいて説明する。
まず、
図4(a)は前記弁体が前記弁座100の内周縁に接触するまで移動した状態を示す図であり、ここから前記弁体51が更に前記弁座100方向に移動することで、前記弁体によって前記弁座100に押圧力が加えられる。
【0048】
図4(b)は前記弁体が更に前記弁座100方向に移動した状態を示す図であり、この図に示すように、前記弁座100の前記シート面102側が前記環状溝116の隙間を狭めるように、前記裏面103側に近づくように屈曲する弾性変形を生じることによって、確実に前記弁体と密着して閉弁することができる。
【0049】
その後、前記調圧室25内の前記流体が前記取出口41から排出されて前記調圧室25内の圧力が低下すると、前記ピストン50が前記調圧ばね60に押され、前記弁座100と前記弁体51が離隔した開弁状態に復帰する際に、前記弁座も、変形した状態から、
図4(a)に示した変形前の元の状態に復帰する。
【0050】
図5乃至
図8は、本発明であるレギュレータの第2の実施の形態を示す断面図であり、前記
図13に示した従来のレギュレータ5と同一構成部には同一符号を付して説明する。
【0051】
レギュレータ2は、金属や硬質の合成樹脂などにより形成されるボディ10Bに貫通形成した筒状の通路20における一方の開口端を高圧の流体の入力側21、他方の開口端を調圧した流体の出力側22としており、前記入力側21および出力側22には流体を気密に導入するための導入口31を有する入口カバー30および流体を気密に取り出すための取出口41を有する出口カバー40がそれぞれ止めねじなどの固着具37,42により固着されている。
【0052】
前記通路20は、減圧室23,大気圧室24,調圧室25に区画され、前記導入口31から導入された高圧の流体は前記減圧室23において減圧された後、前記調圧室24において所定の圧力に調整されて前記取出口41から排出される。なお、符号11は前記大気圧室24と前記ボディ10Bの外部空間とを連通して前記大気圧室24内の圧力を大気圧と等しくするための連通孔である。
【0053】
前記通路20の入力側21には、前記入口カバー30と前記ボディ10Bとの間に円盤状の弁座保持部材70が装着されており、弁座110は弁座保持部である前記弁座保持部材70に保持されている。
【0054】
前記弁座保持部70は、前記弁座110の外径と略一致する内径を有する弁座保持穴71と、前記弁座保持穴71と連続して形成されたねじ穴72と、前記弁座110の中心孔111の径よりも大径の頭部74が形成されており前記ねじ穴72に螺着される固定ねじ73と、流体が通過する通孔75と、を備える。
【0055】
前記弁座110の前記弁座保持部材70への取り付けについては、弁座保持穴71に前記弁座110を挿入し、前記弁座110の中心孔111の径よりも大径の頭部74を有する固定ねじ73をねじ穴72に螺着することで、前記弁座110が脱落不能に保持されている。
【0056】
前記弁座110は、中心孔111が形成された環状を呈し、弁体81と接触するシート面112と、その反対側の裏面113を有する。前記弁体81と接触する外周縁114はR面取り形状である(
図7参照)。
【0057】
前記通路2の出力側22には、前記通路20内を軸線方向に摺動可能に配置されるとともに前記減圧室23,前記大気圧室24,前記調圧室25を区画するピストン80と、前記ピストン80を前記出力側22方向に付勢する調圧ばね60とが設けられている。
【0058】
前記ピストン80は、前記弁座110に接触または離隔するとともに前記通路20内を前記減圧室23と前記大気圧室24に区画する弁体81と、前記通路20内を前記大気圧室24と前記調圧室25に区画するピストン部82と、前記弁体81に貫通形成されており前記減圧室23と前記調圧室25を連通する流体通路83と、からなる。なお、符号84は前記弁体81に外嵌されたシール部材、符号85は前記ピストン部82に外嵌されたシール部材である。また、前記弁体81は、前記弁座110と接する面が軸方向に対して傾斜している。
【0059】
前記調圧ばね60は前記ピストン80が受ける圧力荷重と釣り合うような強さに設定されており、前記大気圧室24内に装着されて前記ピストン80の前記ピストン部82と接触し、前記ボディ10Bと前記ピストン80を互いに離れる方向に付勢する。
【0060】
ここで、前記
図13に示した従来のレギュレータ5と異なる点は、樹脂やゴムなどの弾性材料で作られた前記弁座110において、前記弁体81と接触する外周縁114が属する方の周面である外周面115に、中心に向けて所定の深さと幅を有する環状溝116が形成されている点である。
【0061】
前記環状溝116が形成されていることによって、前記弁座110は変形しやすい構造であり、前記弁体33が前記弁座110に接触するとともに前記弁座110を軸線方向に押圧した際に、その押圧力によって前記弁座110は弾性変形し、前記弁体81と密着する閉弁状態となり、優れたシール性を発揮して、シール不良を防止することができる。
【0062】
このとき、前記環状溝116の溝径GD2が、前記弁体のシール径SD2以下であることによって、変形しやすさを向上させて柔軟に変形することができ、シール不良をより確実に防止することができる。
【0063】
また、前記環状溝116の形状について、本実施の形態では溝の両側面117,118が平行かつ溝の底面119が平面である断面コ字状のコ字溝となっており、成形や加工が容易であるとともに、変形を生じさせやすい形状である。
【0064】
以下、弁座110の変形過程について
図8に基づいて説明する。
まず、
図8(a)は前記弁体が前記弁座110の外周縁に接触するまで移動した状態を示す図であり、ここから前記弁体81が更に前記弁座110方向に移動することで、前記弁体81によって前記弁座110に押圧力が加えられる。
【0065】
図8(b)は前記弁体81が更に前記弁座110方向に移動した状態を示す図であり、この図に示すように、前記弁座110の前記シート面112側が前記環状溝116の隙間を狭めるように、前記裏面113側に近づくように屈曲する弾性変形を生じることによって、前記弁体81と密着しつつ押圧力を吸収することができる。
【0066】
その後、前記調圧室25内の前記流体が前記取出口41から排出されて前記調圧室25内の圧力が低下すると、前記ピストン50が前記調圧ばね60に押され、前記弁座110と前記弁体51が離隔した開弁状態に復帰する際に、前記弁座も、変形した状態から、
図8(a)に示した変形前の元の状態に復帰する。
【0067】
図9乃至
図11は、本発明の第3の実施の形態を示す断面図であり、前記
図14に示した従来のレギュレータ6と同一構成部には同一符号を付して説明する。なお、
図9は本発明に関係のない構造についての記載を一部省略している。
【0068】
レギュレータ3は、金属や硬質の合成樹脂などにより形成されて流体の導入口31と取出口41を有するボディ10Cの内部に、中央に中心孔121を貫通して形成したドーナツ状の弁座120と、先端側に傾斜面を有する弁体91と、前記弁体91を同軸的に有して軸線方向に往復摺動する弁軸92とを備え、前記弁座120に前記弁体91を密着・離隔させて弁の開閉を行うことで圧力を一定に維持する調圧機構を構成しており、導入した流体を減圧・調整して下流側に送出するレギュレータである。
【0069】
レギュレータ3は、高圧の流体が導入されて前記弁体91および前記弁座120を通過するまでの、破線で囲まれた高圧部Aと、前記高圧部Aを通過した減圧後の流体が調圧されて吐出されるまでの、破線で囲まれた低圧部Bとを備えている。なお、前記高圧部Aはシリンダ状に形成されたカートリッジ容器12内に気密的に挿入された状態で、ボディ10Cに対し着脱可能に装着されている。
【0070】
前記弁座120は、樹脂やゴムなどの弾性材料により形成されており、中心孔121が形成された環状を呈し、前記弁体91と接触するシート面122と、その反対側の裏面123を有する。前記弁体91と接触する前記中心孔121の内周縁124はR面取り形状である(
図10参照)。
【0071】
前記弁座120は、スプリング131により所定の押圧力で付勢されたプレート132によって軸方向に押圧された状態で配置されているとともに、外周側に隙間を有して軸直方向に所定範囲で摺動可能とされており、前記弁体91が閉弁側に動作することにより、前記弁体91が前記弁座120のシート面122側に接触しながら前記弁体91の軸芯に前記弁座120の軸芯が一致する方向に摺動・案内して閉弁状態で前記弁体91の軸芯と前記弁座120の軸芯とを一致させる構造である。
【0072】
上記構成を有するレギュレータ3は、流体入口から導入された高圧の流体の圧力により、前記弁体が前記弁座から離隔して開弁し、前記流体は減圧されつつ前記弁座の中心孔を通過する。その後、前記流体はダイヤフラム13によって大気圧室14と区画された調圧室15に導入され、調圧ばね60と釣り合う圧力となるように調圧されたのち、流体出口から吐出される。調圧時に、前記ダイヤフラム13の変位に応じて、前記弁軸92は軸方向にストロークする。なお、符号11は前記大気圧室14と前記ボディ10Cの外部空間とを連通して前記大気圧室15内の圧力を大気圧と等しくするための連通孔である。
【0073】
ここで、前記
図14に示した従来のレギュレータ6と異なる点は、樹脂やゴムなどの弾性材料で作られた前記弁座120において、前記弁体91と接触する内周縁124が属する方の周面である内周面125に、中心に向けて所定の深さと幅を有する環状溝126が形成されている点である。
【0074】
前記環状溝126が形成されていることによって、前記弁座120は変形しやすい構造であり、前記弁体91が前記弁座100に接触するとともに前記弁座120を軸線方向に押圧した際に、その押圧力によって前記弁座120は弾性変形し、前記弁体91と密着する閉弁状態となり、優れたシール性を発揮して、シール不良を防止することができる。
【0075】
このとき、前記環状溝126の溝径GD3が、前記弁体91のシール径SD3以上であることによって、変形しやすさを向上させて柔軟に変形することができ、シール不良をより確実に防止することができる。
【0076】
また、前記環状溝126の形状について、本実施の形態では溝の両側面127,128が平行かつ溝の底面129が平面である断面コ字状のコ字溝となっており、成形や加工が容易であるとともに、変形を生じさせやすい形状である。
【0077】
以下、弁座120の変形過程について
図11に基づいて説明する。
まず、
図11(a)は前記弁体91が前記弁座120の内周縁124に接触するまで移動した状態を示す図であり、ここから前記弁体91が更に前記弁座120方向に移動することで、前記弁体91によって前記弁座120に押圧力が加えられる。
【0078】
図11(b)は前記弁体91が更に前記弁座120方向に移動した状態を示す図であり、この図に示すように、前記弁座120の前記シート面122側が前記環状溝126の隙間を狭めるように、前記裏面123側に近づくように屈曲する弾性変形を生じることによって、確実に前記弁体91と密着して閉弁することができる。
【0079】
その後、前記調圧室17内の前記流体が排出されて前記調圧室15内の圧力が低下すると、前記ダイヤフラム13が前記調圧ばね60に押され、前記弁座120と前記弁体91が離隔した開弁状態に復帰する際に、前記弁座も、変形した状態から、
図11(a)に示した変形前の元の状態に復帰する。
【0080】
以上の通り、本発明によれば、弁座に形成された環状溝によって弁座を意図的に弾性変形させることでリーク不良を防止し、より優れたシール性を発揮することが可能となる。
【0081】
本発明であるレギュレータは、高圧の流体を所望の圧力に減圧する際に用いるものであり、特に、自動車において燃料タンクに貯留したCNG(圧縮天然ガス)などの高圧燃料をエンジンに供給する際のレギュレータとして好適である。
【符号の説明】
【0082】
1,2,3,4,5,6 レギュレータ、10A,10B,10C ボディ、11 連通孔、12 カートリッジ容器、13 ダイヤフラム、14 大気圧室、15 調圧室、20 通路、21 入力側、22 出力側、23 減圧室、24 大気圧室、25 調圧室、30 入口カバー、31 導入口、32 固定部、33 弁座保持穴、34 弁座保持片装着部、35 筒状体、36 弁座保持片、37 固着具、40 出口カバー、41 取出口、42 固着具、50 ピストン、51 弁体、52 入口側ピストン部、53 出口側ピストン部、54 流体通路、55 シール部材、56 シール部材、57 カラー、58 導通孔、59 ピン、60 調圧ばね、70 弁座保持部材、71 弁座保持穴、72 ねじ穴、73 固定ねじ、74 頭部、75 通孔、80 ピストン、81 弁体、82 ピストン部、83 流体通路、84 シール部材、85 シール部材、91 弁体、92 弁軸、100 弁座、101 中心孔、102 シート面、103 裏面、104 内周縁、105 内周面、106 環状溝、107 側面、108 側面、109 底面、110 弁座、111 中心孔、112 シート面、113 裏面、114 外周縁、115 外周面、116 環状溝、117 側面、118 側面、119 底面、120 弁座、121 中心孔、122 シート面、123 裏面、124 内周縁、125 内周面、126 環状溝、127 側面、128 側面、129 底面、131 スプリング、132 プレート、GD1,GD2,GD3 環状溝の径、SD1,SD2,SD3 弁体のシール径