(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135019
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 41/34 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
F02D41/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045507
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森井 拓也
【テーマコード(参考)】
3G301
【Fターム(参考)】
3G301HA01
3G301JA02
3G301JA21
3G301KA26
3G301LB02
3G301MA11
3G301MA19
3G301MA24
3G301NA06
3G301NE21
3G301PA01Z
3G301PA10Z
3G301PB10Z
3G301PD09Z
3G301PE08Z
3G301PF03Z
(57)【要約】
【課題】燃料カットの実行中の未燃燃料の排出による排ガス性能の悪化を抑制でき、燃料カットの実行により燃費やドライバビリティを向上させることができる内燃機関の制御装置を提供すること。
【解決手段】ECUの制御部は、燃料カット実行条件が成立した場合に(ステップS1でYes)、燃料カットを実行するタイミングを遅延させ、燃料カットをステップS10で実行するまでの遅延期間中は、吸気行程において燃料噴射を行うようにインジェクタの燃料噴射タイミングを設定する(ステップS6)。また、制御部は、燃料カットの遅延期間中は、吸気ポート内に残留するポートウェット燃料のうち気筒5内に吸入される燃料の量にインジェクタにより噴射する燃料の量を加算した値が気筒5内での燃焼に必要な燃料の量となるようにインジェクタによる燃料噴射量を設定し(ステップS5)、この設定した燃料噴射量で燃料噴射を行う(ステップS7)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気ポートに燃料噴射を行うインジェクタを備える内燃機関において、
所定の燃料カット実行条件が成立した場合に燃料噴射を停止する燃料カットを実行する制御部を備える内燃機関の制御装置であって、
前記制御部は、
前記燃料カット実行条件が成立した場合に、前記燃料カットを実行するタイミングを遅延させ、
前記燃料カットの遅延期間中は、吸気行程において燃料噴射を行うように前記インジェクタの燃料噴射タイミングを設定し、前記吸気ポート内に残留するポートウェット燃料のうち気筒内に吸入される燃料の量に前記インジェクタにより噴射する燃料の量を加算した値が前記気筒内での燃焼に必要な燃料の量となるように、燃料噴射を行うことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記ポートウェット燃料のうち前記気筒内に吸入される燃料の量である吸入燃料量を推定する吸入燃料量推定部と、
前記気筒内での燃焼に必要な燃料の量である必要燃料量から前記吸入燃料量を減算した量を前記インジェクタによる燃料噴射量に設定する燃料噴射量設定部と、を備え、
前記制御部は、
前記燃料カットの遅延期間中は、前記燃料噴射量設定部で設定された燃料噴射量で燃料噴射を行い、燃料噴射後の前記ポートウェット燃料の残量が前記内燃機関の触媒にて浄化可能な量未満であると判定した場合、前記燃料カットの遅延期間を終了して前記燃料カットを実行することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記内燃機関は、吸気弁の開閉タイミングを変更する可変動弁機構を備え、
前記制御部は、前記燃料カットの遅延期間中は、前記吸気行程において前記吸気弁の開弁を開始するように、前記可変動弁機構を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記吸気ポートの温度を検出する吸気ポート温度検出部を備え、
前記制御部は、前記燃料カット実行条件が成立した場合に、前記吸気ポートの温度が所定温度未満であることを条件として、前記燃料カットを実行するタイミングを遅延させることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記触媒の劣化度合を検出する触媒劣化度合検出部と、を備え、
前記制御部は、前記燃料カット実行条件が成立した場合に、前記内燃機関の触媒の劣化度合が所定度合以上であることを条件として、前記燃料カットを実行するタイミングを遅延させることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射弁と気筒内に燃料を噴射する筒内噴射弁とを備えるデュアルインジェクションシステムにおいて、フューエルカットに伴って排気通路に排出される未燃燃料を少なくすることを目的として、フューエルカット実行条件の成立した後、先ず、ポート噴射を停止し、ポート噴射を停止した時点から所定期間が経過した後に筒内噴射を停止することにより、筒内噴射が停止されるまでの所定期間の間、吸気通路構成部材から離脱して気筒内に流入する付着流入燃料に加えて筒内噴射による燃料が筒内に供給されるようにした技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、ポート噴射の停止前に発生した付着流入燃料を、ポート噴射の停止後の筒内噴射による燃料と合わせて燃焼させるものであるため、筒内噴射を行わずポート噴射のみを行う内燃機関には適応できない。このため、ポート噴射を行う内燃機関においては、燃料カットの実行中の未燃燃料の排出による排ガス性能の悪化を抑制できないという問題があった。また、排ガス性能の悪化を回避するために燃料カットを禁止した場合、燃料カットによる燃費向上やドライバビリティの向上ができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、燃料カットの実行中の未燃燃料の排出による排ガス性能の悪化を抑制でき、燃料カットの実行により燃費やドライバビリティを向上させることができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内燃機関の吸気ポートに燃料噴射を行うインジェクタを備える内燃機関において、所定の燃料カット実行条件が成立した場合に燃料噴射を停止する燃料カットを実行する制御部を備える内燃機関の制御装置であって、前記制御部は、前記燃料カット実行条件が成立した場合に、前記燃料カットを実行するタイミングを遅延させ、前記燃料カットの遅延期間中は、吸気行程において燃料噴射を行うように前記インジェクタの燃料噴射タイミングを設定し、前記吸気ポート内に残留するポートウェット燃料のうち気筒内に吸入される燃料の量に前記インジェクタにより噴射する燃料の量を加算した値が前記気筒内での燃焼に必要な燃料の量となるように、燃料噴射を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このように上記の本発明によれば、燃料カットの実行中の未燃燃料の排出による排ガス性能の悪化を抑制でき、燃料カットの実行により燃費やドライバビリティを向上させることができる内燃機関の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施例に係る内燃機関の制御装置の構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施例に係る内燃機関の制御装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施例に係る内燃機関の制御装置の制御状態の推移を説明するタイミングチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施例に係る内燃機関の制御装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図5】
図5は、本発明の第3実施例に係る内燃機関の制御装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の第3実施例に係る内燃機関の制御装置による吸気弁の開閉タイミングの変更動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係る内燃機関の制御装置は、内燃機関の吸気ポートに燃料噴射を行うインジェクタを備える内燃機関において、所定の燃料カット実行条件が成立した場合に燃料噴射を停止する燃料カットを実行する制御部を備える内燃機関の制御装置であって、制御部は、燃料カット実行条件が成立した場合に、燃料カットを実行するタイミングを遅延させ、燃料カットの遅延期間中は、吸気行程において燃料噴射を行うようにインジェクタの燃料噴射タイミングを設定し、吸気ポート内に残留するポートウェット燃料のうち気筒内に吸入される燃料の量にインジェクタにより噴射する燃料の量を加算した値が気筒内での燃焼に必要な燃料の量となるように、燃料噴射を行うことを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る内燃機関の制御装置は、燃料カットの実行中の未燃燃料の排出による排ガス性能の悪化を抑制でき、燃料カットの実行により燃費やドライバビリティを向上させることができる。
【実施例0010】
(第1実施例)
【0011】
以下、本発明の第1実施例に係る内燃機関の制御装置について図面を用いて説明する。
図1から
図3は、本発明の第1実施例に係る内燃機関の制御装置を説明する図である。
【0012】
図1に示すように、本発明の第1実施例に係る内燃機関1は、例えば直列4気筒のガソリンエンジンで構成されている。なお、内燃機関1の気筒数は4気筒に限られない。また、内燃機関1は、ガソリンエンジンに限らず、ディーゼルエンジンであってもよい。
【0013】
内燃機関1は、シリンダブロック2と、シリンダブロック2の上部に締結されたシリンダヘッド3とを含んで構成されている。シリンダブロック2には、気筒5が形成されている。気筒5には、気筒5内を上下に往復動可能なピストン6が収納されている。また、気筒5の上部には燃焼室7が設けられている。
【0014】
内燃機関1は、気筒5内でピストン6が往復する間に、吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行う、いわゆる4サイクルのガソリンエンジンである。
【0015】
ピストン6は、コネクティングロッド8を介してクランクシャフト9に連結されている。コネクティングロッド8は、ピストン6の往復運動をクランクシャフト9の回転運動に変換する。
【0016】
シリンダヘッド3には、点火プラグ10と、吸気ポート11と、排気ポート12とが設けられている。点火プラグ10は、燃焼室7内に電極を突出させた状態でシリンダヘッド3に設けられ、図示しないイグナイタによってその点火時期が調整される。
【0017】
吸気ポート11は、燃焼室7と後述する吸気通路16aとを連通している。吸気ポート11には、吸気弁14が設けられている。排気ポート12は、燃焼室7と後述する排気通路26aとを連通している。排気ポート12には、排気弁24が設けられている。
【0018】
吸気弁14および排気弁24は、クランクシャフト9との間に巻き掛けられた図示しないタイミングチェーンまたはタイミングベルトによって開閉される。
【0019】
また、シリンダヘッド3の吸気ポート11側には、吸気管16が接続されている。吸気管16の内部には、吸気ポート11と連通する吸気通路16aが形成されている。吸気通路16aには、電子制御式のスロットルバルブ18が設けられている。
【0020】
スロットルバルブ18は、後述するECU50に電気的に接続されている。したがって、スロットルバルブ18は、ECU50からの指令信号に応じてスロットル開度が制御されることで、内燃機関1の吸入空気量を調整する。
【0021】
また、内燃機関1は、インジェクタ13を備えている。インジェクタ13は、ポート噴射式の燃料噴射弁であり、内燃機関1の吸気ポート11に燃料噴射を行う。インジェクタ13は、図示しない燃料タンクから燃料ポンプによって圧送された燃料を噴射する。
【0022】
このように構成された内燃機関1において、吸気通路16aを通過する空気は、スロットルバルブ18により流量が調整された後、吸気ポート11に導入される。そして、吸気ポート11に導入された空気は、インジェクタ13から噴射された燃料と混合され、燃焼室7に導入される。
【0023】
一方、シリンダヘッド3の排気ポート12側には、排気管26が接続されている。排気管26の内部には、排気ポート12と連通する排気通路26aが形成されている。排気通路26a上には、触媒27が設けられている。触媒27は、燃焼室7から排出された排気ガスを浄化する。触媒27は、排気ガス中に含まれる有害物質である炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)を同時に浄化する三元触媒からなり、理論空燃比において最大の排気ガス浄化性能を発揮する。
【0024】
内燃機関1は、水温センサ28、上流側排ガスセンサ29、下流側排ガスセンサ30、クランク角センサ32、吸気温センサ41、エアフローセンサ42およびアクセル開度センサ43を備えている。
【0025】
水温センサ28は、シリンダブロック2に形成されたウォータジャケット2a内を流通する冷却水の温度(冷却水温度)、すなわちエンジン水温を検出する。
【0026】
上流側排ガスセンサ29は、触媒27よりも排気方向上流側に設けられており、触媒27で浄化される前の排気ガスに基づいて混合気の空燃比を測定する。下流側排ガスセンサ30は、触媒27よりも排気方向上流側に設けられており、触媒27で浄化された後の排気ガスに基づいて混合気の空燃比を測定する。上流側排ガスセンサ29および下流側排ガスセンサ30は、理論空燃比を基準にしてリッチ側とリーン側とで出力が急変する出力特性を有する酸素センサである。なお、上流側排ガスセンサ29および下流側排ガスセンサ30として、酸素センサに代わって、空燃比に対してリニアな出力特性を有するA/Fセンサを用いてもよい。
【0027】
クランク角センサ32は、クランクシャフト9の回転角度(クランク角)を検出し、検出信号をECU50に出力する。したがって、クランク角センサ32はエンジン回転速度を検出する。
【0028】
吸気温センサ41は、吸気通路16aにおけるスロットルバルブ18の上流側を通過する空気の温度(吸気温度)を検出し、検出信号をECU50に出力する。
【0029】
エアフローセンサ42は、吸気通路16aにおけるスロットルバルブ18の下流側を通過する空気の量(吸入空気量)を検出し、検出信号をECU50に出力する。
【0030】
アクセル開度センサ43は、図示しないアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出し、検出信号をECU50に出力する。
【0031】
内燃機関1は、可変動弁機構3Aを備えている。可変動弁機構3Aは、吸気弁14用の図示しないカムシャフトに設けられており、吸気弁14の開閉タイミング(バルブタイミング)を変更する。詳しくは、可変動弁機構3Aは、吸気弁14の開閉タイミングを、基準タイミングに対して遅角側または進角側に変更する。なお、可変動弁機構3Aは、吸気弁14の開閉タイミング(バルブタイミング)を変更するだけでなく、吸気弁14の開閉量(リフト量)を変更するものであってもよい。
【0032】
上述のように構成された内燃機関1は、内燃機関の制御装置としてのECU(Engine Control Unit)50によってその運転状態が制御されるようになっている。ECU50は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えるマイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUは、RAMの一時記憶機能を利用するとともにROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うようになっている。ROMには、各種制御定数や各種マップ等が予め記憶されている。
【0033】
ECU50の入力側には、CAN等の規格の通信ラインを介して、水温センサ28、上流側排ガスセンサ29、下流側排ガスセンサ30、クランク角センサ32、吸気温センサ41、エアフローセンサ42、アクセル開度センサ43等の各種センサ類が接続されている。
【0034】
一方、ECU50の出力側には、CAN等の規格の通信ラインを介して、前述した点火プラグ10、インジェクタ13、スロットルバルブ18、可変動弁機構3A等の各種装置が接続されている。
【0035】
ECU50は、ドライバによる操作や内燃機関1の運転状態等に基づいて、点火プラグ10、インジェクタ13、スロットルバルブ18、可変動弁機構3Aを制御する。また、ECU50は、通信ラインを介して各種のセンサ、アクチュエータおよび他の制御ユニットと通信する通信機能を有する。ECU50は、インジェクタ13への通電時期および通電時間を制御することで、内燃機関1への燃料噴射時期および燃料噴射量を制御する。
【0036】
ECU50は、制御部51を備えており、この制御部51は、減速時やシフトチェンジ時等の内燃機関1への要求トルクが小さい状況において、所定の燃料カット実行条件が成立した場合、インジェクタ13による燃料噴射を停止する燃料カットを実行する。
【0037】
燃料カット実行条件には、アクセルペダルが踏み込まれていないこと、車速が所定車速以上であること、等が含まれる。燃料カットが実行されることで、燃料消費量を低減させ、燃費を向上させることができる。また、燃料カットが実行されることで、アクセルペダルが踏み込まれていない状態に対応する要求トルクやエンジン回転数に速やかに到達させることができ、ドライバビリティを向上させることができる。なお、本実施例では、燃料カット実行条件の成否の判断と燃料カットの実行とを、1つのECU50が受け持っているが、燃料カット実行条件の成否を判断して成立時に燃料カット要求を発生するコントローラと、この燃料カット要求を受け取って燃料カットを実行するコントローラとが別々に設けられていてもよい。
【0038】
吸気ポート11内に燃料を噴射するポート噴射式の内燃機関1においては、吸気ポート11に噴射された燃料の一部は、吸気ポート11の表面に付着してポートウェット燃料として一時的に残留し、次第に気化しながら吸気弁14の開弁時に気筒5内に吸入される。
【0039】
ポートウェット燃料の量は、吸気ポート11の温度(以下、吸気ポート温度ともいう)に依存する。吸気ポート温度が低いほど、吸気ポート11の表面から気化する燃料の量が少なくなり、ポートウェット燃料が多くなる。
【0040】
また、ポートウェット燃料の量は、燃料噴射のタイミングと吸気弁14の開閉タイミングとの関係に依存する。例えば、吸気弁14が閉じている期間に吸気ポート11への燃料噴射が開始される場合、インジェクタ13から噴射された燃料は、吸気弁14が開弁して気筒5内に吸入されるまで吸気ポート11内に一時的に溜まるため、ポートウェット燃料が多くなる。一方、吸気弁14が開いている期間に吸気ポート11への燃料噴射が開始される場合、インジェクタ13から噴射された燃料の多くが、吸気ポート11内に発生する気流に乗って速やかに気筒5内に吸入されるため、ポートウェット燃料は少なくなる。したがって、インジェクタ13から噴射された燃料が吸気ポート11内に留まる時間が長くなるように、燃料噴射のタイミングと吸気弁14の開閉タイミングとが設定されるほど、ポートウェット燃料が多くなる。
【0041】
ここで、燃料カットの実行中は、燃料カット前に吸気ポート11に発生したポートウェット燃料が、吸気ポート11の表面から徐々に気化し、吸気行程ごとに気筒5内に徐々に吸入される。つまり、燃料カットの開始後の1回の吸気行程において、燃料カットの開始前に発生したポートウェット燃料のうちの一部が気筒5内に吸入される。燃料カット後の1回の吸気行程で気筒5内に吸入されるポートウェット燃料の量は、可燃範囲の下限値(失火限界の空燃比に対応する燃料の量)よりも少ないため、混合気が希薄となって失火を引き起こす。したがって、何ら対策を講じない場合、吸気ポート11に発生したポートウェット燃料が燃料カットの実行中に未燃燃料となって排気通路26aに排出され、排ガス性能の悪化を引き起こしてしまう。
【0042】
そこで、本実施例において、ECU50の制御部51は、燃料カット実行条件が成立した場合に、燃料カットを実行するタイミングを遅延させる。そして、制御部51は、燃料カットの遅延期間中は、吸気行程において燃料噴射を行うようにインジェクタ13の燃料噴射タイミングを設定する。吸気行程とは、ピストン6が上死点から下死点に至る行程をいう。以下、吸気行程において燃料噴射を行うことを吸気行程噴射ともいう。なお、本実施例では、燃料カット実行条件の成立前は排気行程において燃料噴射を行うため、ECU50は、燃料カットの遅延期間中は、燃料噴射タイミングを排気行程から吸気行程噴射に変更する。燃料カット実行条件の成立前は吸気行程において燃料噴射を行っていた場合、ECU50は、燃料カットの遅延期間中は、吸気行程噴射を維持する。
【0043】
制御部51は、燃料カットの遅延期間中は、吸気ポート11内に残留するポートウェット燃料のうち気筒5内に吸入される燃料の量にインジェクタ13により噴射する燃料の量を加算した値が気筒5内での燃焼に必要な燃料の量となるように、燃料噴射を行う。ここで、気筒5内での燃焼に必要な燃料の量とは、混合気の希薄による失火を回避でき、可燃範囲となる燃料の量である。
【0044】
ECU50は、吸入燃料量推定部52を備えており、この吸入燃料量推定部52は、ポートウェット燃料のうち気筒5内に吸入される燃料の量である吸入燃料量を推定する。詳しくは、吸入燃料量推定部52は、まず、ポートウェット燃料の量(以下、ポートウェット燃料量ともいう)を推定し、次いで、気筒5内に吸入される吸入燃料量を推定する。
【0045】
ECU50は、燃料噴射量設定部53を備えており、この燃料噴射量設定部53は、気筒5内での燃焼に必要な燃料の量である必要燃料量から吸入燃料量を減算した量をインジェクタ13による燃料噴射量に設定する。
【0046】
制御部51は、燃料カットの遅延期間中は、燃料噴射量設定部53で設定された燃料噴射量で燃料噴射を行い、燃料噴射後のポートウェット燃料の残量が触媒27にて浄化可能な量(以下、所定値Fpwともいう)未満であると判定した場合、燃料カットの遅延期間を終了して燃料カットを実行する。つまり、ポートウェット燃料の残量が未燃燃料として排気通路26aに排出された場合でも触媒27にて浄化可能な状態となった場合に、制御部51は燃料噴射を停止する。
【0047】
ECU50は、吸気ポート温度検出部54を備えており、この吸気ポート温度検出部54は、吸気ポート11の温度を検出する。吸気ポート温度検出部54は、吸気温センサ41が検出する吸気温度と、水温センサ28が検出する冷却水温度と、エアフローセンサ42が検出する吸入空気量とに基づいて、吸気ポート11の温度を算出する。ECU50には、各センサの検出値と吸気ポート温度との相関を定めた図示しないマップが記憶されており、吸気ポート温度検出部54は、このマップを参照して吸気ポート温度(推測値)を算出する。なお、吸気ポート11に温度センサを設け、吸気ポート11の実際の温度を直接的に測定してもよい。
【0048】
制御部51は、燃料カット実行条件が成立した場合に、吸気ポート11の温度が所定温度未満であることを条件として、燃料カットを実行するタイミングを遅延させる。ここで、吸気ポート温度が所定温度未満であることは、ポートウェット燃料が発生しやすい低温状態であることを意味している。
【0049】
ECU50は、触媒劣化度合検出部55を備えており、この触媒劣化度合検出部55は、触媒27の劣化度合を検出する。
【0050】
次に、
図2のフローチャートを参照して、本実施例に係るECU50によって実行される動作について説明する。この動作は、所定の短い周期で繰り返し実行される。
【0051】
図2に示すように、ECU50は、燃料カット実行条件が成立しているか否かを判別する(ステップS1)。
【0052】
ECU50は、ステップS1で燃料カット実行条件が成立していないと判別した場合(ステップS1でNo)、今回の動作を終了し、燃料カット実行条件が成立していると判別した場合(ステップS1でYes)、吸気ポート温度が所定温度Tp未満か否かを判別する(ステップS2)。
【0053】
ECU50は、ステップS2で吸気ポート温度が所定温度Tp未満ではないと判別した場合(ステップS2でNo)、燃料カットを実行し(ステップS10)、吸気ポート温度が所定温度Tp未満であると判別した場合(ステップS2でYes)、ポートウェット燃料量を推定する(ステップS3)。なお、ECU50は、ポートウェット燃料量の推定値の演算を常時行っておいてステップS3の実行タイミングでその推定値を読み込んでもよいし、ステップS3の実行タイミングでポートウェット燃料量の推定値の演算を行ってもよい。
【0054】
次いで、ECU50は、ステップS3で推定したポートウェット燃料のうち気筒5内に吸入される燃料の量(吸入燃料量)を推定する(ステップS4)。
【0055】
次いで、ECU50は、ポートウェット燃料のうち気筒5内に吸入される燃料の量(吸入燃料量)に、インジェクタ13の燃料噴射量(図中、インジェクタ噴射量と記す)を加算した値が、燃焼に必要な燃料の量(必要燃料量)となるように、インジェクタ13の燃料噴射量を設定する(ステップS5)。つまり、ECU50は、燃焼に必要な燃料の量(必要燃料量)から、ポートウェット燃料のうち気筒5内に吸入される燃料の量(吸入燃料量)を減算した値を、インジェクタ13による燃料噴射量に設定する。言い換えれば、ECU50は、可燃範囲となる必要燃焼量を満たすため、必要燃料量に対してポートウェット燃料の吸入燃料量だけでは不足する量の燃料を、インジェクタ13から噴射する。
【0056】
次いで、ECU50は、燃料噴射タイミングを吸気行程噴射に変更する(ステップS6)。
【0057】
次いで、ECU50は、吸気行程において、ステップS5で設定した燃料噴射量で燃料噴射を実行する(ステップS7)。
【0058】
次いで、ECU50は、現在のポートウェット燃料の残量を算出する(ステップS8)。
【0059】
次いで、ECU50は、ステップS8で算出したポートウェット燃料量が所定値Fpw未満であるか否かを判別する(ステップS9)。
【0060】
ECU50は、ステップS9でポートウェット燃料量が所定値Fpw未満ではないと判別した場合(ステップS9でNo)、ステップS4に戻り、ポートウェット燃料量が所定値Fpw未満であると判別した場合(ステップS9でYes)、燃料カットを実行し(ステップS10)、今回の動作を終了する。
【0061】
次に、
図3のタイミングチャートを参照して、本実施例に係るECU50の制御状態の推移について説明する。
図3のタイミングチャートにおいて、横軸は時間の経過を表し、縦軸は、燃料噴射タイミングの変更の有無、燃料カット実行条件の成否、燃料カットの実行の有無を表している。なお、
図3において、本実施例に係る制御状態を実線で表し、比較例に係る制御状態を破線で表している。
【0062】
時刻t0の初期状態では、燃料カット実行条件が成立していないため、燃料カットは実行されていない。また、燃料噴射タイミングは変更されない。
【0063】
その後、時刻t1において、燃料カット実行条件が成立するが、燃料カットは実行されない。そして、燃料噴射タイミングが吸気行程噴射に変更される。つまり、時刻t1では、吸気行程において燃料噴射が継続される。その後、時刻t2において、燃料カットが実行される。
【0064】
このように、本実施例では、実線で示すように、時刻t1で燃料カット実行条件した場合、直ちに燃料カットは実行されず、燃料カットの実行タイミングが遅延される。そして、時刻t2で燃料カットが実行されるまでの燃料カットの遅延期間中は、吸気行程において燃料噴射が継続される。
【0065】
一方、比較例では、破線で示すように、時刻t1において、燃料カット実行条件が成立すると、直ちに燃料カットが実行される。また、燃料噴射タイミングは変更されない。
【0066】
以上のように、本実施例の内燃機関の制御装置において、制御部51は、燃料カット実行条件が成立した場合に、燃料カットを実行するタイミングを遅延させる。そして、制御部51は、燃料カットの遅延期間中は、吸気行程において燃料噴射を行うようにインジェクタ13の燃料噴射タイミングを設定し、吸気ポート11内に残留するポートウェット燃料のうち気筒5内に吸入される燃料の量にインジェクタ13により噴射する燃料の量を加算した値が気筒5内での燃焼に必要な燃料の量となるように、燃料噴射を行う。
【0067】
これにより、燃料カットの遅延期間中は、吸気ポート11内に残留するポートウェット燃料のうち気筒5内に吸入される燃料の量にインジェクタ13により噴射する燃料の量を加算した値が気筒5内での燃焼に必要な燃料の量となるように燃料噴射を行うことで、燃焼に必要な必要燃料量に対してポートウェット燃料の吸入燃料量だけでは不足する量の燃料がインジェクタ13から噴射される。このため、失火せずに燃焼可能な量の燃焼を気筒5内に供給でき、吸気ポート11のポートウェット燃料が未燃燃料となって気筒5から排出されることを防止できるので、排ガス性能の悪化を抑制することができる。
【0068】
また、燃料カットの遅延期間中は、燃料噴射タイミングを吸気行程噴射に変更して燃料噴射が継続されるので、噴射した燃料を吸気ポート11に発生する気流に乗せて気筒5内へ流入させることができ、吸気ポート11への新たな燃料の付着を抑制できる。
【0069】
また、未燃燃料の発生を回避するために燃料カットを禁止することはせず、遅延期間後に燃料カットが実行されるので、燃料カットの実行により燃費やドライバビリティを向上させることができる。
【0070】
この結果、燃料カットの実行中の未燃燃料の排出による排ガス性能の悪化を抑制でき、燃料カットの実行により燃費やドライバビリティを向上させることができる。
【0071】
また、本実施例の内燃機関の制御装置は、ポートウェット燃料のうち気筒5内に吸入される燃料の量である吸入燃料量を推定する吸入燃料量推定部52と、気筒5内での燃焼に必要な燃料の量である必要燃料量から吸入燃料量を減算した量をインジェクタ13による燃料噴射量に設定する燃料噴射量設定部53と、を備える。
【0072】
そして、制御部51は、燃料カットの遅延期間中は、燃料噴射量設定部53で設定された燃料噴射量で燃料噴射を行い、燃料噴射後のポートウェット燃料の残量が内燃機関1の触媒27にて浄化可能な量未満であると判定した場合、燃料カットの遅延期間を終了して燃料カットを実行する。
【0073】
これにより、燃焼に必要な必要燃料量に対してポートウェット燃料の吸入燃料量だけでは不足する量の燃料がインジェクタ13から噴射されるため、失火による未燃燃料の発生を防止でき、排ガス性能の悪化を抑制することができる。
【0074】
また、吸気行程中にインジェクタ13により燃料噴射するため、噴射燃料のほとんどが気筒5内へ流入される。このため、吸気ポート11への新たな燃料付着をなくすことができる。
【0075】
また、ポートウェット燃料の残量が触媒27にて浄化可能な量未満であると判定された場合は燃料カットを実行するため、排ガス性能を悪化させることなく、燃費やドライバビリティを向上させることができる。
【0076】
ここで、吸気ポート11の温度が所定温度未満の低温である場合には、ポートウェット燃料の量が多くなり、ポートウェット燃料のうち気筒5内に吸入される燃料の量も増える。
【0077】
そこで、本実施例の内燃機関の制御装置は、吸気ポート11の温度を検出する吸気ポート温度検出部54を備える。そして、制御部51は、燃料カット実行条件が成立した場合に、吸気ポート11の温度が所定温度未満であることを条件として、燃料カットを実行するタイミングを遅延させる。
【0078】
これにより、吸気ポート11の温度が所定温度未満の低温でありポートウェット燃料の量が多い状況において、燃料カットを実行するタイミングを遅延させて、遅延期間中にポートウェット燃料を気筒内で燃焼させることで、燃料カットの実行中の未燃燃料の排出による排ガス性能の悪化を効果的に抑制できる。
【0079】
(第2実施例)
【0080】
本実施例は、燃料カット実行条件が成立した場合に燃料カットを実行するタイミングを遅延させるか否かを、吸気ポート温度に代わって、触媒27の劣化度合に応じて判断するようにした点において、第1実施例と異なり、その他の点において第1実施例と共通する。
【0081】
本実施例において、制御部51は、燃料カット実行条件が成立した場合に、触媒27の劣化度合が所定度合以上であることを条件として、燃料カットを実行するタイミングを遅延させる。
【0082】
図4のフローチャートを参照して、本実施例に係るECU50によって実行される動作について説明する。この動作は、所定の短い周期で繰り返し実行される。
【0083】
図4に示すように、ECU50は、燃料カット実行条件が成立しているか否かを判別する(ステップS11)。
【0084】
ECU50は、ステップS11で燃料カット実行条件が成立していないと判別した場合(ステップS11でNo)、今回の動作を終了し、燃料カット実行条件が成立していると判別した場合(ステップS11でYes)、触媒27の劣化度合(図中、触媒劣化度と記す)が所定度合(図中、Caと記す)以上、または、触媒27の酸素吸蔵量が所定吸蔵量(図中、oscと記す)未満であるか否かを判別する(ステップS12)。
【0085】
ECU50は、ステップS12で触媒27の劣化度合が所定度合以上、または、触媒27の酸素吸蔵量が所定吸蔵量未満ではないと判断した場合(ステップS12でNo)、燃料カットを実行し(ステップS20)、触媒27の劣化度合が所定度合以上、または、触媒27の酸素吸蔵量が所定吸蔵量未満であると判別した場合(ステップS12でYes)、ポートウェット燃料量を推定する(ステップS13)。なお、ECU50は、ポートウェット燃料量の推定値の演算を常時行っておいてステップS13の実行タイミングでその推定値を読み込んでもよいし、ステップS13の実行タイミングでポートウェット燃料量の推定値の演算を行ってもよい。
【0086】
次いで、ECU50は、ステップS13で推定したポートウェット燃料のうち気筒5内に吸入される燃料の量(吸入燃料量)を推定する(ステップS14)。
【0087】
次いで、ECU50は、ポートウェット燃料のうち気筒5内に吸入される燃料の量(吸入燃料量)に、インジェクタ13の燃料噴射量(図中、インジェクタ噴射量と記す)を加算した値が、燃焼に必要な燃料の量(必要燃料量)となるように、インジェクタ13の燃料噴射量を設定する(ステップS15)。つまり、ECU50は、燃焼に必要な燃料の量(必要燃料量)から、ポートウェット燃料のうち気筒5内に吸入される燃料の量(吸入燃料量)を減算した値を、インジェクタ13による燃料噴射量に設定する。
【0088】
次いで、ECU50は、燃料噴射タイミングを吸気行程噴射に変更する(ステップS16)。
【0089】
次いで、ECU50は、吸気行程において、ステップS15で設定した燃料噴射量で燃料噴射を実行する(ステップS17)。
【0090】
次いで、ECU50は、現在のポートウェット燃料の残量を算出する(ステップS18)。
【0091】
次いで、ECU50は、ステップS18で算出したポートウェット燃料量が所定値Fpw未満であるか否かを判別する(ステップS19)。
【0092】
ECU50は、ステップS19でポートウェット燃料量が所定値Fpw未満ではないと判別した場合(ステップS19でNo)、ステップS14に戻り、ポートウェット燃料量が所定値Fpw未満であると判別した場合(ステップS19でYes)、燃料カットを実行し(ステップS20)、今回の動作を終了する。
【0093】
以上のように、本実施例の内燃機関の制御装置は、触媒27の劣化度合を検出する触媒劣化度合検出部55と、を備える。そして、制御部51は、燃料カット実行条件が成立した場合に、内燃機関1の触媒27の劣化度合が所定度合以上であることを条件として、燃料カットを実行するタイミングを遅延させる。
【0094】
これにより、触媒27の劣化度合が所定度合以上のために触媒27で浄化可能な未燃燃料の量が低下している状況の場合に、燃料カットの実行タイミングの遅延と必要燃焼量を満たすための燃料噴射が行われるので、触媒27の浄化能力を超える未燃燃料が触媒27へ流出することを回避でき、排ガス性能の悪化を抑制することができる。
【0095】
(第3実施例)
【0096】
本実施例は、燃料カットの遅延期間中の制御内容に、吸気弁14の開閉タイミングの制御を追加した点において第1実施例と異なり、その他の点において第1実施例と共通する。
【0097】
本実施例において、制御部51は、燃料カットの遅延期間中は、吸気行程において吸気弁14の開弁を開始するように、可変動弁機構3Aを制御する。
【0098】
図5のフローチャートを参照して、本実施例に係るECU50によって実行される動作について説明する。この動作は、所定の短い周期で繰り返し実行される。
【0099】
図5に示すように、ECU50は、燃料カット実行条件が成立しているか否かを判別する(ステップS21)。
【0100】
ECU50は、ステップS21で燃料カット実行条件が成立していないと判別した場合(ステップS21でNo)、今回の動作を終了し、燃料カット実行条件が成立していると判別した場合(ステップS21でYes)、吸気ポート温度が所定温度Tp未満か否かを判別する(ステップS22)。
【0101】
ECU50は、ステップS22で吸気ポート温度が所定温度Tp未満ではないと判別した場合(ステップS22でNo)、燃料カットを実行し(ステップS31)、吸気ポート温度が所定温度Tp未満であると判別した場合(ステップS22でYes)、ポートウェット燃料量を推定する(ステップS23)。なお、ECU50は、ポートウェット燃料量の推定値の演算を常時行っておいてステップS23の実行タイミングでその推定値を読み込んでもよいし、ステップS23の実行タイミングでポートウェット燃料量の推定値の演算を行ってもよい。
【0102】
次いで、ECU50は、ステップS23で推定したポートウェット燃料のうち気筒5内に吸入される燃料の量(吸入燃料量)を推定する(ステップS24)。
【0103】
次いで、ECU50は、ポートウェット燃料のうち気筒5内に吸入される燃料の量(吸入燃料量)に、インジェクタ13の燃料噴射量(図中、インジェクタ噴射量と記す)を加算した値が、燃焼に必要な燃料の量(必要燃料量)となるように、インジェクタ13の燃料噴射量を設定する(ステップS25)。つまり、ECU50は、燃焼に必要な燃料の量(必要燃料量)から、ポートウェット燃料のうち気筒5内に吸入される燃料の量(吸入燃料量)を減算した値を、インジェクタ13による燃料噴射量に設定する。
【0104】
次いで、ECU50は、燃料噴射タイミングを吸気行程噴射に変更する(ステップS26)。
【0105】
次いで、ECU50は、可変動弁機構3Aにより吸気弁14が開弁を開始する位置(図中、吸気VVTの開弁位置と記す)を吸気行程に変更する(ステップS27)。つまり、ECU50は、吸気行程において吸気弁14の開弁を開始するように、可変動弁機構3Aを制御する。
【0106】
次いで、ECU50は、吸気行程において、ステップS25で設定した燃料噴射量で燃料噴射を実行する(ステップS28)。
【0107】
次いで、ECU50は、現在のポートウェット燃料の残量を算出する(ステップS29)。
【0108】
次いで、ECU50は、ステップS8で算出したポートウェット燃料量が所定値Fpw未満であるか否かを判別する(ステップS30)。
【0109】
ECU50は、ステップS30でポートウェット燃料量が所定値Fpw未満ではないと判別した場合(ステップS30でNo)、ステップS24に戻り、ポートウェット燃料量が所定値Fpw未満であると判別した場合(ステップS30でYes)、燃料カットを実行し(ステップS31)、今回の動作を終了する。
【0110】
図6において、横軸はクランク角を表し、縦軸はバルブリフト量を表している。また、クランク角の0度は圧縮上死点を表している。
図6に示すように、ECU50は、吸気弁14の開閉タイミングを、破線で示す変更前の開閉タイミングから、実線で示す変更後の開閉タイミングに変更する。ECU50は、吸気弁14の開閉タイミングを、クランク角が0度より前の排気行程において開弁を開始するタイミングから、クランク角が0度から180度の範囲の吸気行程において開弁を開始するタイミングに変更する。
【0111】
以上のように、本実施例の内燃機関は、吸気弁14の開閉タイミングを変更する可変動弁機構3Aを備える。そして、本実施例の内燃機関の制御装置において、制御部51は、燃料カットの遅延期間中は、吸気行程において吸気弁14の開弁を開始するように、可変動弁機構3Aを制御する。
【0112】
これにより、燃料カットの遅延期間中は、吸気行程中に吸気弁14の開弁を開始することで、気筒5内が負圧の状態で吸気弁14が開弁し、吸気ポート11を流れる空気の流速が速くなるので、ポートウェット燃料の気化を促進することができ、燃料を速い流速の空気に載せて気筒5内に吸入させることができる。このため、遅延期間を短くすることができ、早期に燃料カットを実行できる。
【0113】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。