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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135025
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】音響振動発生装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 23/02 20060101AFI20240927BHJP
   G10K 15/04 20060101ALI20240927BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20240927BHJP
   H04R 7/12 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61H23/02 340
G10K15/04 302M
H04R3/00 310
H04R7/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045516
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】509070485
【氏名又は名称】マナーズインターナショナル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】平田 さゆり
【テーマコード(参考)】
4C074
5D016
5D220
【Fターム(参考)】
4C074AA04
4C074CC03
4C074DD07
4C074GG01
4C074HH08
5D016BA03
5D220AA50
(57)【要約】
【課題】音波の歪みを大幅に改善し、人体の状態を正常化させる音響振動処置において望ましい効果が得られる音響振動発生装置を提供する。
【解決手段】この音響振動発生装置としてのスビーカ5は、複数の周波数を合成した合成波信号から生成される音波を人体に当てることにより、該人体の状態を正常化させる音響振動処置に用いられる音響振動発生装置である。また、スビーカ5は、前記合成波信号を入力して機械的な振動に変換する変換手段であるボイスコイル54、磁石55と、これらボイスコイル54、磁石55により変換された機械的な振動を前記音波として出力する振動板57と、を備え、振動板57は、半球状に形成されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周波数を合成した合成波信号から生成される音波を人体に当てることにより、該人体の状態を正常化させる音響振動を発生させる音響振動発生装置であって、
前記合成波信号を入力して機械的な振動に変換する変換手段と、
前記変換手段により変換された機械的な振動を前記音波として出力する振動板と、を備え、
前記振動板は、半球状に形成されていることを特徴とする音響振動発生装置。
【請求項2】
前記振動板が装着されるとともに、前記変換手段が設けられた装置本体を有し、該装置本体が半球状に形成され、該半球状に形成された前記装置本体と前記半球状に形成された前記振動板とで全体として略球体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の音響振動発生装置。
【請求項3】
前記振動板及び前記装置本体は、同一の曲率半径に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の音響振動発生装置。
【請求項4】
前記振動板の周囲に円筒状のフードが設けられ、該フードは、前記半球状の前記振動板の端縁部から前記振動板の突出する方向に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の音響振動発生装置。
【請求項5】
前記合成波信号は、前記複数の周波数の組合せからなる複数の正弦波を合成した信号であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の音響振動発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の周波数で構成される音波を人体に当てることにより人体の状態を正常化させる音響振動処置に用いられる音波を発生させる音響振動発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の周波数から構成される音波を人体に当て、その音波の振動を人体の部位に与えることにより、人体を正常な状態に回復させる処置が従来から行われている。人体に当てる音波を発生する装置として、従来、下記特許文献1に記載されている医療装置が知られている。この医療装置は、音波の周波数情報が記録されているCD(compact disc)、CDプレーヤ及び医療用振動装置(音響振動発生装置)で構成されており、そのCDをCDプレーヤで再生し、再生音を音響振動発生装置から出力し音波を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-15012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の音響振動発生装置であるスピーカーユニットは、振動板が円錐形状であるか、ドーム形状であることから、振動板内における異なる位置で音波の位相のずれが発生するため、音波の歪みが生じる不具合があった。その結果、上記スピーカーユニットを人体に当てることにより人体の状態を正常化させる音響振動処置に用いた場合、人体の状態を正常化させる音響振動を人体に対して望ましい音波で当てることができないという問題があった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、音波の歪みを大幅に改善し、人体の状態を正常化させる音響振動を人体に対して望ましい音波で当てることが可能な音響振動発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数の周波数を合成した合成波信号から生成される音波を人体に当てることにより、該人体の状態を正常化させる音響振動を発生させる音響振動発生装置であって、前記合成波信号を入力して機械的な振動に変換する変換手段と、前記変換手段により変換された機械的な振動を前記音波として出力する振動板と、を備え、前記振動板は、半球状に形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記振動板が装着されるとともに、前記変換手段が設けられた装置本体を有し、該装置本体が半球状に形成され、該半球状に形成された前記装置本体と前記半球状に形成された前記振動板とで全体として略球体に形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の構成に加えて、前記振動板及び前記装置本体は、同一の曲率半径に形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記振動板の周囲に円筒状のフードが設けられ、該フードは、前記半球状の前記振動板の端縁部から前記振動板の突出する方向に設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の構成に加えて、前記合成波信号は、前記複数の周波数の組合せからなる複数の正弦波を合成した信号であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、変換手段により変換された機械的な振動を音波として出力する振動板が半球状に形成されていることから、振動板からの音波を球面波として球体状に拡散して伝播することができる。その結果、音波の歪みが大幅に改善され、人体の状態を正常化させる音響振動を人体に対して望ましい音波で当てることが可能となる。
【0012】
請求項2の発明によれば、装置本体が半球状に形成され、この半球状に形成された装置本体と半球状に形成された振動板とで全体として略球体に形成されていることにより、振動板からの音波を球面波として装置本体の後方までに球体状に拡散して伝播することができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、振動板及び装置本体は、同一の曲率半径に形成されていることにより、振動板からの音波を球面波として拡散して確実に伝播させることができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、振動板の周囲に円筒状のフードが設けられ、このフードは、半球状の振動板の端縁部から振動板の突出する方向に設けられていることにより、円筒状のフードで振動板からの球面波の音波を集約して伝播させることができ、人体の状態を正常化させる音響振動を人体に対して一段と望ましい効果が得られるように当てることができる。
【0015】
請求項5の発明によれば、合成波信号は、複数の周波数の組合せからなる複数の正弦波を合成した信号であることにより、複数の周波数の組合せからなる音波を発生させるスタート時点においてそれぞれの正弦波の初期位相をずらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る音響振動発生装置を適用した音響振動発生システムを示す構成ブロック概略図である。
図2図1の音響振動発生システムの音波情報配信サーバを示す機能ブロック概略図である。
図3図1の音響振動発生システムにおいて、対象部位、符号、音波を構成する周波数(音波構成周波数)及び位相ゆらぎ成分の関係を示す説明図である。
図4図1の音響振動発生システムの音波生成端末を示す機能ブロック概略図である。
図5】本発明の実施の形態に係る音響振動発生装置を示す側面図である。
図6図5の背面図である。
図7図5のスピーカ及び装置本体を断面で示す部分断面側面図である。
図8】本発明の実施の形態に係る音響振動発生装置においてフードを取り外した状態の作用を示す説明図である。
図9】本発明の実施の形態に係る音響振動発生装置においてフードを取り付けた状態の作用を示す説明図である。
図10】本発明の実施の形態に係る音響振動発生装置の使用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[発明の実施の形態]
(音響振動発生システムの構成及び作用)
本発明の実施の形態に係る音響振動発生装置を適用した音響振動発生システムについて、図1図4を用いて説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る音響振動発生システム1の構成ブロック概略図である。この音響振動発生システム1は、可聴域の複数の周波数で構成される音波を人体に当てることによりその人体の状態を正常化させる音響振動処置に用いられる音波を発生させる。
【0019】
この音響振動発生システム1は、音波情報配信サーバ2、複数の音波生成端末3,3,・・・,3、及び、ユーザ情報サーバ7を含むように構成され、それぞれがインターネットなどの通信回線9で接続されている。また、音波生成端末3,3,・・・,3は、D/A(Digital-Analog)変換基板4,4,・・・,4、及び「音波発生器」としてのスピーカ5,5,・・・,5を有しており、音波生成端末3,3,・・・,3には、D/A変換基板4,4,・・・,4が接続され、D/A変換基板4,4,・・・,4にはスピーカ5,5,・・・,5が接続されている。
【0020】
音波生成端末3,3,・・・,3の中の1台の音波生成端末3が、音波を構成する正弦波の情報を音波情報配信サーバ2に要求すると、正弦波の情報が音波情報配信サーバ2から音波生成端末3に向けて送信される。その正弦波の情報を受信した音波生成端末3は、複数の正弦波から合成波を生成し、その合成波で構成される音波をスピーカ5から発生させる。ユーザ又は施術者は、スピーカ5から発生される音波をユーザの身体に当て、その音波による振動を身体に与えるように使用する。
【0021】
音響振動発生システム1において、合成波を構成する正弦波の数は5個である。すなわち、5個の周波数により構成される。また、この5個の周波数は、例えばすべて可聴域の周波数で構成されている。
【0022】
人体の各部位はそれぞれ固有の周波数で振動しており、器官や臓器ごとに健康なときに発している可聴域の音(周波数)がすでに解明されている。また、この健康なときに発している音は、各部位で異なっており、部位ごとに複数の周波数を有している。例えば、「胃」であれば、正常で健康な「胃」の可聴域の音が複数の周波数として発見されている。この健康な「胃」の音に対応する周波数により5個の周波数の組合せが構成される。健康な状態で発する音は、「胃」、「肝臓」、「腎臓」などでそれぞれ相違するため、これに伴い、5個の周波数の組合せも部位ごとにすべて異なっている。また、この5個の周波数の組合せは、人種、年齢、遺伝などの違いに依存せず、万人に適用できるように決められている。
【0023】
人体の各部位はそれぞれ固有の振動数を有しているため、各部位にその固有振動数の振動を与えるとその部位が共振・共鳴する。正常で健康な状態のときに発せられる5個の周波数の組合せから構成される音波の振動を、健康の状態にない部位に与えることにより、その部位を共振・共鳴させて健康な状態に回復させる。言い換えると、人体の部位が病気などで不調になりその振動の周波数が乱れていても、正常のときの周波数の振動をその部位に与えることで共振・共鳴を起こして元の正常な周波数に戻していく。
【0024】
以下の説明では、複数の音波生成端末3,3,・・・,3を代表して、音波生成端末3という符号を付して表し、その音波生成端末3に接続されているD/A変換基板4,4,・・・,4、スピーカ5,5,・・・,5を代表してそれぞれD/A変換基板4、スピーカ5という符号を付して表す。
【0025】
図2は、音波情報配信サーバ2の機能ブロック概略図である。この音波情報配信サーバ2は、制御部20、記憶部21、受付部22、位相ゆらぎ記憶部23、音波情報通知部24及び通信部29を含むように構成されており、サーバ装置やPC(Personal Computer)などを用いることができる。
【0026】
制御部20は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、不揮発性記憶装置である補助記憶装置、揮発性メモリのRAM(Random Access Memory)を含むように構成される。CPUは、プログラムの実行、演算処理、この音波情報配信サーバ2を構成する各要素の制御などを行う。補助記憶装置には、CPUが実行するプログラムや登録データなどが記憶され、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などが用いられる。RAMは、CPUによるプログラムの実行や演算処理のワークエリアとして使用される。
【0027】
記憶部21には、音波を構成する5個の周波数の組合せが複数組、あらかじめ記憶されている。
【0028】
図3は、対象部位200、符号202、音波を構成する周波数(音波構成周波数204)及び位相ゆらぎ成分206の関係を説明する図である。この図3に示す対象部位200、符号202及び音波構成周波数204のデータが図2に示す記憶部21に記憶される。また、位相ゆらぎ成分206のデータが位相ゆらぎ記憶部23に記憶される。
【0029】
図3の左端の列には人体の部位を示す対象部位200が表示され、左端から2番目の列には符号202、その右側には音波構成周波数204である5個の周波数が表示されている。対象部位200に対応する符号202は一意に割り当てられており、また、対象部位200に対応する5個の周波数の組合せも一対一に対応し、この5個の周波数は対象部位200ごとにすべて異なっている。5個の周波数のそれぞれは、対象部位200の正常な状態での固有の周波数であり、20Hz(ヘルツ)以上20kHz(キロヘルツ)以下の可聴域の周波数となっている。このように、対象部位200、符号202、音波構成周波数204である5個の周波数の組合せが、それぞれ一対一に対応付けられているため、符号202を指定すれば、対応する5個の周波数の組合せを取り出すことができる。
【0030】
なお、対象部位200としては、「胃」や「肝臓」などの人体の器官や臓器だけでなく、「自律神経を整える」、「デトックス」、「アンチエージング」などについても設定されており、それぞれ音波構成周波数204として5個の周波数の組合せが割り当てられている。図3に示す5個の周波数の組合せは、過去に先人により研究が積み重ねられ、実証的に求められたものである。
【0031】
図2に示す受付部22は、制御部20の制御に基づいて、5個の周波数の組合せと一対一に対応する符号情報を受け付ける。符号情報とは、図3に示した対象部位200や5個の周波数の組合せに対応する符号202の内容を示す情報である。符号情報を示す符号202の内容を検出することより、その符号202に対応する対象部位200や5個の周波数の組合せを記憶部21から読み出すことができる。
【0032】
図2に示す位相ゆらぎ記憶部23は、5個の周波数の組合せからなる5個の正弦波の位相角に位相ゆらぎを付加する位相ゆらぎ成分206があらかじめ記憶されている。位相ゆらぎ成分206は、正弦波の位相角のゆらぎ周波数であるfL、正弦波の位相角のゆらぎの大きさであるα、正弦波の位相角のゆらぎの初期位相であるゆらぎ初期位相ηにより構成される。ここで、ゆらぎ周波数fLは、1Hz以上20Hz未満の範囲の可聴域よりも低い周波数に設定される。また、正弦波の位相角のゆらぎの大きさαとゆらぎ初期位相ηを固定値として、ゆらぎ周波数fLのみで位相ゆらぎ成分を構成してもよいし、ゆらぎ初期位相ηを固定値として、ゆらぎ周波数fLとゆらぎの大きさαとにより位相ゆらぎ成分を構成してもよい。ゆらぎの大きさαの単位はラジアンであり、ゆらぎ周波数fLの単位はHz、ゆらぎ初期位相ηの単位はラジアンである。そして、時間をtとすると、正弦波の位相角の位相ゆらぎはα・sin(2π・fL・t+η)となり、この位相角の位相ゆらぎが、正弦波の位相角に加算される。
【0033】
図3に示す位相ゆらぎ成分206のように、音波構成周波数204である5個の周波数f1~f5のそれぞれについて、ゆらぎ周波数fL、ゆらぎの大きさα及びゆらぎ初期位相ηが設定される。すなわち、音波構成周波数204の周波数f1に対しては、ゆらぎ周波数fL1、ゆらぎの大きさα1及びゆらぎ初期位相η1が設定され、周波数f2に対しては、ゆらぎ周波数fL2、ゆらぎの大きさα2及びゆらぎ初期位相η2が設定される。また、位相ゆらぎ成分206は、対象部位200、符号202毎に、異なる数値が設定される。
【0034】
音波情報通知部24は、制御部20の制御に基づいて、受付部22で受け付けた符号情報に含まれる符号202に一対一に対応する5個の周波数の組合せ(音波構成周波数204)を記憶部21から読み出して、読み出した5個の周波数の組合せの情報を音波情報として、符号情報を送信してきた音波生成端末3に向けて通知する。また、読み出した5個の周波数の組合せに対応する位相ゆらぎ成分206を位相ゆらぎ記憶部23から読み出し、読み出したゆらぎ周波数fL、ゆらぎの大きさα及びゆらぎ初期位相ηの5個の組合せを音波情報に含めて通知する。
【0035】
ここで、音波情報とは、音波を構成する周波数(音波構成周波数204)である5個の周波数の組合せと、それら5個の周波数を示すそれぞれの正弦波の振幅と初期位相を含むように構成される。すなわち、音波を構成する5個の正弦波の周波数、振幅、初期位相の情報である。5個の正弦波の振幅は、音波情報配信サーバ2にあらかじめ登録されており、初期値として5個の振幅はそれぞれ同一の振幅に設定されている。また、5個の正弦波の初期位相も、音波情報配信サーバ2にあらかじめ登録されており、初期値としては5個の初期位相がゼロラジアン(0°)などそれぞれ同一の初期位相に設定されている。
【0036】
また、5個の正弦波の位相角に位相ゆらぎを生じさせる設定が「有効」の状態に設定されていると、音波情報には、位相ゆらぎ記憶部23から読み出される位相ゆらぎ成分206が含まれるように構成される。一方、位相ゆらぎを生じさせる設定が「無効」の状態に設定されている場合、位相ゆらぎ成分206がすべてゼロに設定される。この位相ゆらぎを生じさせる設定(「有効」又は「無効」)の情報は、符号情報を構成する一項目として符号情報の中に追加するように含めてもよい。
【0037】
通信部29は、通信回線9を介して外部の端末やサーバなどとデータの送受信を行う。
【0038】
以上のように、この音波情報配信サーバ2は、人体に当てる音波を構成する5個の周波数の組合せを記憶部21に記憶しており、音波生成端末3による要求に基づいて、記憶している5個の周波数の組合せを読み出して、音波生成端末3に通知するように構成されている。このように、5個の周波数の組合せが音波情報配信サーバ2に記憶されており、音波生成端末3には保持されていないため、システム管理者が音波情報配信サーバ2を重点的に管理することにより、ユーザや施術者による無断複製を防止できる。すなわち、音波を構成する5個の正弦波の情報からなる音波情報の複製を防止でき音波情報の管理を確実に行える。
【0039】
図4は、音波生成端末3の機能ブロック概略図である。この音波生成端末3には、音波を構成するデジタルデータをアナログ電気信号に変換するD/A変換基板4が接続されており、そのD/A変換基板4には、アナログ電気信号に基づいて音波を発生するスピーカ5が接続されている。D/A変換基板4は、量子化ビット数32ビットかつサンプリング周波数192kHzでサンプリングされたデジタルデータをアナログ電気信号に変換するとともにその電気信号を増幅する。また、スピーカ5はD/A変換基板4から入力されるアナログ電気信号を正確に音波として再生するように構成されている。なお、スピーカ5の具体的な構造については、後述する。
【0040】
音波生成端末3は、音波情報配信サーバ2に5個の周波数の組合せを要求し、音波情報配信サーバ2から取得した音波情報に基づいて5個の正弦波を合成して、音波生成端末3にD/A変換基板4を介して接続されているスピーカ5からその音波を発生させる。音波生成端末3によるこれら一連の動作は、この音波生成端末3にインストールされているアプリケーションソフトウェアにより実行される。
【0041】
図4に示すように音波生成端末3は、制御部30、要求部33、取得部34、合成部35、音波発生部36、表示部37、入力部48及び通信部49を含むように構成されており、PCやスマートフォンなどの情報通信端末を用いることができる。
【0042】
制御部30は、図示しないCPU、不揮発性記憶装置である補助記憶装置、揮発性メモリのRAMを含むように構成され、音波生成端末3を構成する各要素を制御して動作させる。補助記憶装置には、5個の正弦波を合成してスピーカ5から出力させるアプリケーションソフトウェアなどが記憶されている。
【0043】
図4に示す要求部33は、符号202の内容を含む符号情報を音波情報配信サーバ2に向けて通知して、その符号情報に対応する5個の周波数の組合せを要求する。取得部34は、符号情報に対応する5個の周波数の組合せと位相ゆらぎ成分206を含む音波情報を取得する。合成部35は、取得部34で取得した音波情報に基づいて合成波を生成する。すなわち、音波情報に含まれる5個の正弦波を合成して合成波を構成する。
【0044】
振幅をA、周波数をf、初期位相をφ、時間をtとすると、正弦波は次式のように表される。
【0045】
【数1】
また、5個の正弦波のそれぞれについて、振幅をA1、A2、A3、A4、A5、周波数をf1、f2、f3、f4、f5、初期位相をφ1、φ2、φ3、φ4、φ5として、この5個の正弦波を加算により合成すると、合成波は下記(式2)のようになる。なお、音波情報配信サーバ2にあらかじめ登録されている振幅A1、A2、A3、A4、A5の初期値はすべて一定の大きさとなっている。初期位相φ1、φ2、φ3、φ4、φ5も音波情報配信サーバ2に初期値が登録されている。
【0046】
【数2】
合成部35では、5個の正弦波であるA1・sin(2π・f1・t+φ1)、A2・sin(2π・f2・t+φ2)、A3・sin(2π・f3・t+φ3)、A4・sin(2π・f4・t+φ4)、及び、A5・sin(2π・f5・t+φ5)のそれぞれについて、量子化ビット数32ビット、かつ、サンプリング周波数192kHzでサンプリングして5個の正弦波デジタルデータを生成し、各サンプリング位置における5個の正弦波デジタルデータを加算する。その後、D/A変換基板4の入力レンジである32ビットの分解能になるように加算した正弦波デジタルデータを調整して、量子化ビット数32ビットの合成波としての合成波デジタルデータを生成する。
【0047】
なお、合成波デジタルデータの生成方法として、上記(式2)に示す合成波を量子化ビット数32ビット、かつ、サンプリング周波数192kHzでサンプリングして合成波デジタルデータを算出するようにしてもよい。

上記の(式1)と(式2)は、正弦波の位相角に位相ゆらぎが付加されていない場合を示しているが、ゆらぎ周波数fL、ゆらぎの大きさα及びゆらぎ初期位相ηとなる位相ゆらぎ成分206が位相角に付加される場合には、(式1)の正弦波は次式のように表される。
【0048】
【数3】
また、5個の周波数であるf1~f5に対する位相ゆらぎ成分206を、それぞれ、ゆらぎ周波数fL1~fL5、ゆらぎの大きさα1~α5、ゆらぎ初期位相η1~η5として、5個の正弦波を加算により合成すると、合成波は下記(式4)のようになる。
【0049】
【数4】
また、合成波として、5個の周波数であるf1~f5のそれぞれについて、位相角の位相ゆらぎを付加しない正弦波と位相ゆらぎを付加した正弦波を加算して次式のように算出してもよい。
【0050】
【数5】
上記の(式4)又は(式5)について、合成部35で合成波デジタルデータを生成するには、5個の周波数f1~f5からなる5個の正弦波のそれぞれについて、量子化ビット数32ビット、かつ、サンプリング周波数192kHzでサンプリングして5個の正弦波デジタルデータを生成し、各サンプリング位置における5個の正弦波デジタルデータを加算する。そして、D/A変換基板4の入力レンジである32ビットの分解能になるように加算した正弦波デジタルデータを調整して、量子化ビット数32ビットの合成波としての合成波デジタルデータを生成する。
【0051】
従来のように音源データをCDに記録する場合、再生音は音楽CDの規格である量子化ビット数16ビット、サンプリング周波数44.1kHzとなる。音響振動発生システム1では、量子化ビット数32ビット、サンプリング周波数192kHzでサンプリングすることにより高解像度の音波を発生できる。
【0052】
また、5個の正弦波の位相角に位相ゆらぎを付加するように構成されているため、位相角に位相ゆらぎが付加された5個の正弦波を合成した合成波からなる音波にもゆらぎが生じる。この音波のゆらぎにより施術効果の促進が期待されるとともに、ゆらぎのある音波を聞くことにより、ユーザはリラックスして施術を受けることができる。また、音波のゆらぎを聞くことにより、装置が正常に動作していることを確認することもできる。
【0053】
音波発生部36は、合成部35で構成された合成波デジタルデータをD/A変換基板4に入力し、D/A変換基板4にデジタル-アナログ変換と信号の増幅をさせて、アナログ電気信号である合成波アナログ信号を出力させる。そして、この合成波アナログ信号は、スピーカ5に入力されて、スピーカ5から合成波の音波が出力される。
【0054】
表示部37は、図示しない施術画面などを表示する。ユーザや施術者は、表示部37を介して施術の設定や経過状況などを確認する。
【0055】
入力部48は、ユーザや施術者が音波生成端末3にデータなどを入力するときの入力手段である。例えば、音波情報配信サーバ2において位相ゆらぎ記憶部23から位相ゆらぎ成分206を読み出して、その位相ゆらぎ成分206を音波情報に含めて通知させる設定である、正弦波の位相角に位相ゆらぎを生じさせる設定(「有効」又は「無効」)の入力を行う。
【0056】
なお、入力された正弦波の位相角に位相ゆらぎを生じさせる設定の情報は、符号情報を構成する一項目として符号情報に含められて、音波情報配信サーバ2に通知される。
【0057】
通信部49は、通信回線9を介して外部の端末やサーバなどとデータの送受信を行う。
【0058】
(音響振動発生装置の実施の形態)
次に、本発明の実施の形態に係る音響振動発生装置について、図5図8を用いて説明する。
【0059】
図5は、本発明の実施の形態に係る音響振動発生装置を示す側面図である。図6は、図5の背面図である。図7は、図5のスピーカ及び装置本体を断面で示す部分断面側面図である。図8は、本発明の実施の形態に係る音響振動発生装置の作用を示す説明図である。図9は、本発明の実施の形態に係る音響振動発生装置においてフードを取り付けた状態の作用を示す説明図である。図10は、本発明の実施の形態に係る音響振動発生装置の使用状態を示す説明図である。
【0060】
図5図7に示すように、「音響振動発生装置」としてのスピーカ5は、上記のように5個の周波数を合成した合成波信号から生成される音波を人体に当てることにより、人体の状態を正常化させる音響振動処置に用いられる。スピーカ5は、装置本体50が把持部51を有するハンディタイプ構造であり、小型・軽量化が図られている。把持部51は、ユーザや施術者が手で握持し易い大きさに形成されている。
【0061】
なお、本実施の形態のスピーカ5は、例えばD/A変換基板4を内蔵した構造であり、このD/A変換基板4と上記音波生成端末3との間を長いケーブル52で接続されている。これにより、スピーカ5の位置を自由に移動させることができる。この場合、D/A変換基板4は、スピーカ5に内蔵することなく、別に設けるようにしてもよい。
【0062】
スピーカ5の装置本体50は、内部が空洞であって、外観が半球形状に形成されている。装置本体50の内部には、図7に示すようにコイルボビン53と、このコイルボビン53に巻回されたボイスコイル54と、このボイスコイル54に磁力を作用する磁石55とを有している。これらボイスコイル54及び磁石55は、本実施の形態の変換手段を構成する。ボイスコイル54及び磁石55は、5個の周波数を合成した合成波信号を入力して機械的な振動に変換する。
【0063】
ボイスコイル54には、ステム56を介して振動板57が一体に設けられている。振動板57は、図5図7に示すように、装置本体50に装着され、この振動板57は、装置本体50と同様に内部が空洞であって、外観が音波を出力する方向に突出するように半球形状に形成されている。振動板57の曲率半径R1は、装置本体50の曲率半径R2と同一の曲率半径に形成されている。本実施の形態では、半球状に形成された装置本体50と半球状に形成された振動板57とで全体として略球体に形成されている。
【0064】
振動板57は、剛性を保持することのできる極めて薄い樹脂又は紙などから形成されており、その厚さが例えば50~200μmであり、望ましくは50~100μmである。振動板56は、その全体が囲まれるように振動板56の高さH1よりも高くなるような高さH2の円筒状のフード58で覆われている。このフード58は、振動板56と同様に剛性を保持することのできる材料から形成されている。
【0065】
次に、本実施の形態スピーカ5の作用について説明する。
【0066】
スピーカ5は、上記のように5個の周波数を合成した合成波信号をボイスコイル53に入力することにより、通常のスピーカと同様に磁石54の磁界による電磁変換の動作が行われ、コイルボビン53及びボイスコイル54が一体的に左右方向に振動し、ステム56を介して一体となっている振動板57が振動して空気の振動が発生し、音波が出力される。
【0067】
ここで、本実施の形態におけるスピーカ5の振動板57にフード58を取り付けない場合、図5図7に示すように装置本体50の内部が空洞であって、外観が半球形状に形成されており、この装置本体50に装着される振動板57の内部が空洞であって、外観が半球形状に形成されているので、出力される音波が自然界で発生する球面波となり、自然音となる。
【0068】
この球面波は、低音から高音までの全音域をカバーし、図8に示すように振動板57の周囲に音波Wが放射状に伝播するとともに、装置本体50の後方まで回り込んで、スピーカ5の周囲360度にわたって球体状に上記合成波信号を忠実に再現することが可能となる。
【0069】
また、本実施の形態におけるスピーカ5の振動板57にフード58を取り付けた場合には、図9に示すようにフード58によってフード58の外周に音波Wが拡散しないように方向性を付与することで、音波をユーザや施術者がユーザの身体の部位にスピーカ5のフード58の開口部を接近させ音波Wを集中的に当てることができる。
【0070】
さらに、本実施の形態における装置本体50を使用するには、図10に示すようにユーザ又は施術者は、装置本体50の把持部51を握持し、装置本体50をユーザ又は施術者の身体から若干離間した位置(例えば5cm程度)とする。そして、図示しない電源スイッチをオンにすると、スピーカ5から音波Wが発生し、その音波Wがユーザ又は施術者の身体の対象部位、例えば肝臓Lに当てられ、その音波Wによる振動を身体の対象部位である肝臓Lに与えるように使用する。すると、その肝臓Lを共振・共鳴させて健康な状態に回復させる。すなわち、人体の部位、例えば肝臓Lが病気などで不調になりその振動の周波数が乱れていても、正常のときの周波数の振動をその肝臓Lに与えることで、共振・共鳴を起こして元の正常な周波数に戻していく。なお、図10では、身体の対象部位として肝臓Lに当てる例について説明したが、これ以外に図3に示す対象部位などであってもよいことは勿論である。
【0071】
このように本実施の形態におけるスピーカ5によれば、ボイスコイル54及び磁石55により変換された機械的な振動を音波として出力する振動板57が半球状に形成されていることから、振動板57からの音波Wを球面波として球体状に拡散して伝播することができる。その結果、音波Wの歪みが大幅に改善され、人体の状態を正常化させる音響振動を人体に対して望ましい音波で当てることが可能となる。
【0072】
また、本実施の形態におけるスピーカ5によれば、装置本体50が半球状に形成され、この半球状に形成された装置本体50と半球状に形成された振動板57とで全体として略球体に形成されていることにより、振動板57からの音波Wを球面波として装置本体50の後方までに球体状に拡散して伝播することができる。
【0073】
また、本実施の形態におけるスピーカ5によれば、振動板57及び装置本体50は、同一の曲率半径R1,R2に形成されていることにより、振動板57からの音波Wを球面波として拡散して確実に伝播させることができる。
【0074】
また、本実施の形態におけるスピーカ5によれば、振動板57の周囲に円筒状のフード58が設けられ、このフード58は、半球状の振動板57の端縁部から振動板57の突出する方向に設けられていることにより、円筒状のフード58で振動板57からの球面波の音波Wを集約して伝播させることができ、人体の状態を正常化させる音響振動を人体に対して一段と望ましい効果が得られるように当てることができる。
【0075】
また、本実施の形態におけるスピーカ5によれば、上記合成波信号は、複数の周波数の組合せからなる複数の正弦波を合成した信号であることにより、複数の周波数の組合せからなる音波Wを発生させるスタート時点においてそれぞれの正弦波の初期位相をずらすことができる。
【0076】
なお、本実施の形態のスピーカ5では、D/A変換基板4を内蔵した構造であり、このD/A変換基板4と上記音波生成端末3との間を長いケーブル52で直接接続した例について説明したが、このような有線でなく、無線で電気的に接続するようにすれば、スピーカ5の操作性をさらに向上することが可能となる。
【0077】
[発明のその他の実施の形態]
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、適宜変更可能である。例えば、音波情報配信サーバ2とユーザ情報サーバ7を一台のサーバとして構成してもよい。また、音波情報配信サーバ2とユーザ情報サーバ7をそれぞれ複数設けてもよい。また、合成波を構成する周波数は、5個でなくてもよく、1個以上の周波数で構成するようにしてもよい。また、通信回線9は、インターネット以外の、専用回線、バーチャルプライベートネットワーク(VPN:Virtual Private Network)回線、ローカルエリアネットワーク(LAN:Local Area Network)、ワイドエリアネットワーク(WAN:Wide Area Network)などで構成してもよい。
【0078】
また、可聴域の下限である20Hz未満の低い周波数で合成波の振幅を変化させることにより、振幅のゆらぎを生じさせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…音響振動発生システム、2…音波情報配信サーバ、3,3,3,3,3…音波生成端末、4,4,4,4,4…D/A変換基板、5,5,5,5,5…スピーカ(音響振動発生装置)、6,6,6,6,6…心拍数・血中酸素飽和度センサ、7…ユーザ情報サーバ、9…通信回線、20…制御部、21…記憶部、22…受付部、23…位相シフト部、24…音波情報通知部、29…通信部、30…制御部、31…ユーザID通知部、32…ユーザ情報受付部、33…要求部、34…取得部、35…合成部、36…音波発生部、37…表示部、38…正弦波調整受付部、39…検出部、40…推定部、41…選択部、48…入力部、49…通信部、50…装置本体、51…把持部、52…ケーブル、53…コイルボビン、54…ボイスコイル(変換手段)、55…磁石(変換手段)、56…ステム、57…振動板、58…フード、70…制御部、71…生体情報記憶部、72…コース情報記憶部、73…ユーザID受付部、74…ユーザ情報通知部、79…通信部、300…施術画面、301…音波情報表示部、302…振幅調整部、304…位相調整部、306…音量調整部、308…コース内容表示部、L…肝臓、W…音波。
図1
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図10