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特開2024-135029品質不良診断装置および品質不良診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135029
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】品質不良診断装置および品質不良診断方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20240927BHJP
   G05B 19/418 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
G06Q50/04
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045520
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 宏征
(72)【発明者】
【氏名】平田 丈英
【テーマコード(参考)】
3C100
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3C100AA57
3C100AA58
3C100AA70
3C100BB13
3C100BB15
3C100BB27
3C100EE10
5L049CC04
5L050CC04
(57)【要約】
【課題】製品の品質不良を高精度に予測するとともに、当該品質不良の要因を推定することが可能な品質不良診断装置および品質不良診断方法を提供すること。
【解決手段】品質不良診断装置は、製品に発生する品質不良を診断する品質不良診断装置であって、操業データおよび品質データからなる診断対象の製品データを、所定のブロックごとに二次元状に分割するデータ分割部と、分割後のブロックにおける品質不良の発生傾向に基づいて予め定められた品質不良の分類ごとに操業データを抽出し、抽出した操業データを、ブロックごとおよびブロックを二以上含む領域ごとに集約するデータ集約部と、品質不良の分類ごとに作成され、かつ集約後の操業データと品質データとの関係が学習された複数の予測モデルを用いて、品質不良の発生の有無を判定する品質不良判定部と、品質不良の判定結果に基づいて、品質不良の要因を推定する要因推定部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品に発生する品質不良を診断する品質不良診断装置であって、
操業データおよび品質データからなる診断対象の製品データを、所定のブロックごとに二次元状に分割するデータ分割部と、
分割後のブロックにおける品質不良の発生傾向に基づいて予め定められた品質不良の分類ごとに前記操業データを抽出し、抽出した前記操業データを、前記ブロックごとおよび前記ブロックを二以上含む領域ごとに集約するデータ集約部と、
前記品質不良の分類ごとに作成され、かつ集約後の操業データと前記品質データとの関係が学習された複数の予測モデルを用いて、品質不良の発生の有無を判定する品質不良判定部と、
品質不良の判定結果に基づいて、品質不良の要因を推定する要因推定部と、
を備える品質不良診断装置。
【請求項2】
前記要因推定部は、診断対象の特定の製品に品質不良が発生すると判定された場合に、前記品質不良の発生を抑止するために必要な操業データを推定する請求項1に記載の品質不良診断装置。
【請求項3】
前記要因推定部は、特定の製品に品質不良が発生した場合に、前記品質不良の発生の要因となった操業データを推定する請求項1に記載の品質不良診断装置。
【請求項4】
前記要因推定部は、多数の製品に品質不良が発生した場合に、品質不良の発生の要因となった操業データを推定する請求項1に記載の品質不良診断装置。
【請求項5】
前記予測モデルは、
操業データおよび品質データからなる過去実績の製品データを、所定のブロックごとに二次元状に分割し、
分割後のブロックにおける前記品質不良の発生傾向に基づいて、前記品質データに含まれる品質不良を分類し、
前記品質不良の分類ごとに抽出した前記操業データを、前記ブロックごとおよび前記ブロックを二以上含む領域ごとに集約し、
前記品質不良の分類ごとに、集約後の操業データと前記品質データとの関係を機械学習によって学習して作成されたものである、
請求項1に記載の品質不良診断装置。
【請求項6】
前記品質不良の分類は、先端部、尾端部、中央部、幅エッジ部、単発ランダム、群発ランダムのいずれか二つ以上である請求項1に記載の品質不良診断装置。
【請求項7】
前記データ集約部は、ブロック単位または製品単位で、前記操業データの平均値、最大値、最小値、標準偏差、分散、最大値と最小値の差のいずれか一つ以上を算出することにより、前記操業データを集約する請求項1に記載の品質不良診断装置。
【請求項8】
前記品質データと、前記品質不良の発生傾向ごとに予め作成されたテンプレートとの相関を取り、前記相関の大きさに基づいて前記品質不良を分類する請求項3に記載の品質不良診断装置。
【請求項9】
製品に発生する品質不良を診断する品質不良診断方法であって、
コンピュータが備えるデータ分割手段が、操業データおよび品質データからなる診断対象の製品データを、所定のブロックごとに二次元状に分割するデータ分割ステップと、
前記コンピュータが備えるデータ集約手段が、分割後のブロックにおける品質不良の発生傾向に基づいて予め定められた品質不良の分類ごとに前記操業データを抽出し、抽出した前記操業データを、前記ブロックごとおよび前記ブロックを二以上含む領域ごとに集約するデータ集約ステップと、
前記コンピュータが備える品質不良判定手段が、前記品質不良の分類ごとに作成され、かつ集約後の操業データと前記品質データとの関係が学習された複数の予測モデルを用いて、品質不良の発生の有無を判定する品質不良判定ステップと、
前記コンピュータが備える要因推定手段が、品質不良の判定結果に基づいて、品質不良の要因を推定する要因推定ステップと、
を含む品質不良診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、品質不良診断装置および品質不良診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、製品の品質を予測して診断する方法として、製品製造時の操業条件データと最終工程における品質判定データとを、製品上の品質判定位置を考慮して紐付けて、当該データを学習した予測モデルを用いて品質を予測する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6953990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、製品の品質を予測する際に、品質データをその特徴によらず画一的に使用すると、異なるメカニズムにより発生する複数種類の品質不良に関する情報が欠落する。そのため、そのような品質データに基づいて予測モデルを作成したとしても、十分な予測性能に至らないという問題が生じ得る。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、製品の品質不良を高精度に予測するとともに、当該品質不良の要因を推定することが可能な品質不良診断装置および品質不良診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る品質不良診断装置は、製品に発生する品質不良を診断する品質不良診断装置であって、操業データおよび品質データからなる診断対象の製品データを、所定のブロックごとに二次元状に分割するデータ分割部と、分割後のブロックにおける品質不良の発生傾向に基づいて予め定められた品質不良の分類ごとに前記操業データを抽出し、抽出した前記操業データを、前記ブロックごとおよび前記ブロックを二以上含む領域ごとに集約するデータ集約部と、前記品質不良の分類ごとに作成され、かつ集約後の操業データと前記品質データとの関係が学習された複数の予測モデルを用いて、品質不良の発生の有無を判定する品質不良判定部と、品質不良の判定結果に基づいて、品質不良の要因を推定する要因推定部と、を備える。
【0007】
また、本発明に係る品質不良診断装置は、上記発明において、前記要因推定部が、診断対象の特定の製品に品質不良が発生すると判定された場合に、前記品質不良の発生を抑止するために必要な操業データを推定する。
【0008】
また、本発明に係る品質不良診断装置は、上記発明において、前記要因推定部が、特定の製品に品質不良が発生した場合に、前記品質不良の発生の要因となった操業データを推定する。
【0009】
また、本発明に係る品質不良診断装置は、上記発明において、前記要因推定部が、多数の製品に品質不良が発生した場合に、品質不良の発生の要因となった操業データを推定する。
【0010】
また、本発明に係る品質不良診断装置は、上記発明において、前記予測モデルが、操業データおよび品質データからなる過去実績の製品データを、所定のブロックごとに二次元状に分割し、分割後のブロックにおける前記品質不良の発生傾向に基づいて、前記品質データに含まれる品質不良を分類し、前記品質不良の分類ごとに抽出した前記操業データを、前記ブロックごとおよび前記ブロックを二以上含む領域ごとに集約し、前記品質不良の分類ごとに、集約後の操業データと前記品質データとの関係を機械学習によって学習して作成されたものである。
【0011】
また、本発明に係る品質不良診断装置は、上記発明において、前記品質不良分類部が、前記品質不良を、先端部、尾端部、中央部、幅エッジ部、単発ランダム、群発ランダムのいずれか二つ以上に分類する。
【0012】
また、本発明に係る品質不良診断装置は、上記発明において、前記データ集約部が、ブロック単位または製品単位で、前記操業データの平均値、最大値、最小値、標準偏差、分散、最大値と最小値の差のいずれか一つ以上を算出することにより、前記操業データを集約する。
【0013】
また、本発明に係る品質不良診断装置は、上記発明において、前記品質データと、前記品質不良の発生傾向ごとに予め作成されたテンプレートとの相関を取り、前記相関の大きさに基づいて前記品質不良を分類する。
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る品質不良診断方法は、製品に発生する品質不良を診断する品質不良診断方法であって、コンピュータが備えるデータ分割手段が、操業データおよび品質データからなる診断対象の製品データを、所定のブロックごとに二次元状に分割するデータ分割ステップと、前記コンピュータが備えるデータ集約手段が、分割後のブロックにおける品質不良の発生傾向に基づいて予め定められた品質不良の分類ごとに前記操業データを抽出し、抽出した前記操業データを、前記ブロックごとおよび前記ブロックを二以上含む領域ごとに集約するデータ集約ステップと、前記コンピュータが備える品質不良判定手段が、前記品質不良の分類ごとに作成され、かつ集約後の操業データと前記品質データとの関係が学習された複数の予測モデルを用いて、品質不良の発生の有無を判定する品質不良判定ステップと、前記コンピュータが備える要因推定手段が、品質不良の判定結果に基づいて、品質不良の要因を推定する要因推定ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る品質不良診断装置および品質不良診断方法によれば、品質不良の発生傾向に応じた分類ごとに、操業データと品質不良との関係を予測モデルとして作成して用いることにより、製品の品質不良を高精度に予測するとともに、当該品質不良の要因を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態に係る品質不良診断装置を実現する情報処理装置の概略的な構成を示す図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る品質不良診断装置のデータ分割部によって実施されるデータ分割ステップの詳細を説明するための図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る品質不良診断装置の品質不良分類部によって実施される品質不良分類ステップの詳細を説明するための図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る品質不良診断装置のデータ集約部によって実施されるデータ集約ステップにおいて、先端部の操業データの集約を説明するための図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る品質不良診断装置のデータ集約部によって実施されるデータ集約ステップにおいて、尾端部の操業データの集約を説明するための図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る品質不良診断装置のデータ集約部によって実施されるデータ集約ステップにおいて、中央部の操業データの集約を説明するための図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る品質不良診断装置のデータ集約部によって実施されるデータ集約ステップにおいて、幅エッジ部の操業データの集約を説明するための図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る品質不良診断装置のデータ集約部によって実施されるデータ集約ステップにおいて、単発ランダムおよび群発ランダムの操業データの集約を説明するための図である。
図9図9は、本発明の実施形態に係る品質不良診断方法で用いる予測モデルの作成方法の手順を示すフローチャートである。
図10図10は、本発明の実施形態に係る品質不良診断方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る品質不良診断装置および品質不良診断方法について、図面を参照しながら説明する。品質不良診断装置および品質不良診断方法は、製品に発生する品質不良を診断するためのものである。本実施形態における「製品」としては、複数の工程を経て製造される鉄鋼製品(例えばコイル)等が挙げられる。また、本実施形態における「品質不良」としては、例えば表面欠陥、内部欠陥、材料の特性値(例えば機械的特性の判定結果等)等が含まれる。
【0018】
〔情報処理装置〕
図1は、実施形態に係る品質不良診断装置を実現する情報処理装置1の構成を示している。情報処理装置1は、図1に示すように、入力部10と、記憶部20と、演算部30と、出力部40と、を備えている。
【0019】
実施形態に係る品質不良診断装置は、情報処理装置1のうち、演算部30の品質不良分類部32およびモデル作成部34を除いた構成要素によって実現可能である。また、実施形態に係る品質不良診断装置で用いる予測モデルの作成装置は、情報処理装置1のうち、演算部30の品質不良判定部35および要因推定部36を除いた構成要素によって実現可能である。以下、情報処理装置1の各構成要素について説明する。
【0020】
入力部10は、演算部30に対する入力手段であり、例えばキーボード、マウスポインタ、テンキー等の入力装置によって実現される。入力部10は、演算部30における各種処理に必要な情報を入力する。
【0021】
記憶部20は、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)およびリムーバブルメディア等の記録媒体から構成される。リムーバブルメディアとしては、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリ、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)のようなディスク記録媒体が挙げられる。記憶部20には、オペレーティングシステム(Operating System:OS)、各種プログラム、各種テーブル、各種データベース等が格納可能である。記憶部20には、製品DB(データベース)21が保存されている。
【0022】
製品DB21には、過去に製造された製品データが格納されている。この製品データには、操業データおよび品質データが含まれる。「操業データ」は、製品製造時の設備操業条件や製品状態を計測、または何らかの手段で推定したデータである。また、「品質データ」は、製品の品質を計測、または何らかの手段で推定した結果に基づく、品質の良否を表すデータである。なお、上記の製品データには、予測モデルを作成する際(図9参照)に用いる「過去実績」の製品データと、品質不良診断を行う際(図10参照)に用いる「診断対象」の製品データとが含まれる。
【0023】
記憶部20には、製品DB21の他に、例えばデータ分割部31により各ブロックに対応付けられた製品データ、品質不良分類部32による品質不良の分類に関する情報、データ集約部33によりブロック単位または製品単位で集約された操業データ等も保存される。また、記憶部20には、品質不良判定部35による品質不良の判定結果、要因推定部36による品質不良の要因推定結果等が保存されてもよい。
【0024】
演算部30は、例えばCPU(Central Processing Unit)等からなるプロセッサと、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等からなるメモリ(主記憶部)と、によって実現される。
【0025】
演算部30は、プログラムを主記憶部の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部等を制御することにより、所定の目的に合致した機能を実現する。演算部30は、前記したプログラムの実行を通じて、データ分割部31、品質不良分類部32、データ集約部33、モデル作成部34、品質不良判定部35および要因推定部36として機能する。なお、図1では、例えば一つのコンピュータ(演算部)によって各部の機能を実現する例を示しているが、各部の機能の実現手段は特に限定されず、例えば複数のコンピュータによって各部の機能をそれぞれ実現してもよい。
【0026】
データ分割部31は、製品データを所定のブロックごとに二次元状に分割する。データ分割部31は、例えば図2に示すように、製品データの製品長手方向の全長をp個のブロックに分割し、製品データの製品幅方向の全長をq個のブロックに分割する。同図では、製品長手方向における最も左側のブロックを1番目とし、最も右側のブロックをq番目としている。また、同図では、製品幅方向における最も上側のブロックを1番目とし、最も下側のブロックをp番目としている。データ分割部31は、操業データおよび品質データからなる製品データを、図2のように製品を分割した各ブロックに対応付けて記憶部20に保存する。
【0027】
データ分割部31は、予測モデルを作成する際(図9参照)に、過去実績の製品データの分割を行う。また、データ分割部31は、品質不良診断を行う際(図10参照)に、診断対象の製品データの分割を行う。また、予測モデルを作成する際と品質不良診断を行う際とで、データ分割の方法(分割数、各ブロックの面積等)は揃えることが望ましい。
【0028】
製品データの分割数(q,pの値)は特に限定されないが、少なくとも3分割以上(q,pの値>3)とすることが望ましい。また、分割後の各ブロックの面積は、製品データごとに揃えてもよく、あるいは異なっていてもよい。例えば後記する品質不良の分類(図3参照)において、幅エッジ部や中央部に分類されるブロックについては、製品データごとに異なる面積(領域)であってもよい。
【0029】
品質不良分類部32は、分割後のブロックにおける品質不良の発生傾向に基づいて、品質データに含まれる品質不良を二以上に分類する。ここで、「品質不良の発生傾向」とは、例えば分割後のブロック(図1参照)における品質不良の発生位置、発生分布等のことを示している。
【0030】
品質不良分類部32は、具体的には、品質データにおける品質不良を、製品長手方向の特定位置(例えば先端部、尾端部、中央部、幅エッジ部)に発生するもの、製品の全長全幅にわたって単発的または群発的に発生するものに分類する。品質不良分類部32は、例えば図2に示すように、品質データにおける品質不良を、先端部、尾端部、中央部、幅エッジ部、単発ランダム、群発ランダムのいずれか二つ以上に分類する。
【0031】
すなわち、品質不良分類部32は、製品長手方向のブロック分割に対して、製品長手方向の先頭から1番目のブロックに品質不良が発生している場合、当該品質不良を「先端部」と分類する。また、品質不良分類部32は、製品長手方向のブロック分割に対して、製品長手方向の先頭からp番目のブロックに品質不良が発生している場合、当該品質不良を「尾端部」と分類する。
【0032】
また、品質不良分類部32は、製品長手方向のブロック分割に対して、製品長手方向の先頭から2番目~p-1番目までのブロック、かつ製品幅方向の先頭から2番目~q-1番目までの間のブロックに品質不良が発生している場合、当該品質不良を「中央部」と分類する。また、品質不良分類部32は、製品幅方向のブロック分割に対して、1番目またはq番目のブロックに品質不良が発生している場合、当該品質不良を「幅エッジ部」と分類する。
【0033】
また、品質不良分類部32は、製品長手方向および製品幅方向のブロック分割に対して、一つのブロックの中に一つの品質不良のみが含まれる場合、当該品質不良を「単発ランダム」と分類する。また、品質不良分類部32は、製品長手方向および製品幅方向のブロック分割に対して、一つのブロックの中に二つ以上の品質不良が含まれる場合、当該品質不良を「群発ランダム」と分類する。
【0034】
なお、ここでpはp≧3、qはq≧3の整数であり、p,qの値は予め任意に定めるものとする。この場合、この方法の場合、各ブロックに対して分類される品質不良は、二種類以上が重複してもよいし、あるいは分類基準に優先順(例えば先端部、尾端部>幅エッジ部等)を付与して、単一の種類に限ってもよい。
【0035】
例えば、図3に示した品質不良の分類では、先端部、尾端部、中央部はそれぞれ重複せず、中央部と幅エッジ部も重複しない。一方、先端部と幅エッジ部、尾端部と幅エッジ部は重複しうる。また、単発ランダムと群発ランダムは互いに重複しないが、単発ランダムまたは群発ランダムと、その他の分類(先端部、尾端部、中央部、幅エッジ部)は重複しうる。品質不良分類部32は、図3に示すような品質不良の分類に関する情報を、記憶部20に保存する。
【0036】
品質不良分類部32は、予測モデルを作成する際(図9参照)に、過去実績の品質データの分類を行う。そして、品質不良診断を行う際(図10参照)は、この予測モデル作成時の品質不良の分類を利用して診断対象の操業データの集約を行う。
【0037】
ここで、品質不良分類部32は、品質データと、品質不良の発生傾向ごとに予め作成されたテンプレートとの相関を取り、この相関の大きさに基づいて品質不良を分類してもよい。この場合、予め品質不良の分類(先端部、尾端部、中央部、幅エッジ部、単発ランダム、群発ランダム)ごとのテンプレートを予め用意し、相関が最も高いテンプレートに紐付けられた品質不良の分類を採用する。
【0038】
テンプレートとしては、例えば過去の多数の製品の品質不良データにラベル付けを行って集計した品質不良の分類別の位置の分布が挙げられる。この場合、診断対象の製品において、品質不良箇所を含むブロックにおける発生割合が最も高いテンプレートの種類と同じ品質不良の種類と判定すればよい。このような方法を用いることにより、大量の製品データについて、品質不良の分類を迅速に行うことができる。
【0039】
データ集約部33は、ブロック単位または製品単位で操業データの集約を行う。データ集約部33は、まず品質不良の分類(図3参照)ごとに操業データを抽出する。ここで用いる品質不良の分類は、予測モデル作成時に品質不良分類部32によって分類された品質不良の分類である。続いて、データ集約部33は、抽出した操業データを、ブロックごとおよび当該ブロックを二以上含む領域ごとに集約する。データ集約部33は、例えば以下のように操業データを集約する。
【0040】
データ集約部33は、例えば図4に示すように、分類が「先端部」である品質不良に対しては、製品長手方向のp個のブロックのうち、先頭から1番目のブロックの操業データのみを抽出し、抽出した操業データをブロック単位で集約する。このように、先端部については、品質不良が特に発生しやすい部分であるため、操業データの集約をブロック単位で行う。
【0041】
また、データ集約部33は、例えば図5に示すように、分類が「尾端部」である品質不良に対しては、製品長手方向のp個のブロックのうち、先頭からp番目のブロックの操業データのみを抽出し、抽出した操業データをブロック単位で集約する。このように、尾端部については、先端部と同様に品質不良が特に発生しやすい部分であるため、操業データの集約をブロック単位で行う。
【0042】
また、データ集約部33は、例えば図6に示すように、分類が「中央部」である品質不良に対しては、製品長手方向の先頭から2番目~p-1番目、かつ製品幅方向の先頭から2番目~q-1番目までのブロックの操業データのみを抽出する。そして、データ集約部33は、抽出した操業データを製品単位で集約する。すなわち、同図において、太線で囲ったブロックを一つのデータとしてみなす。
【0043】
また、データ集約部33は、例えば図7に示すように、分類が「幅エッジ部」である品質不良に対しては、製品幅方向の1番目の長手方向全てのブロックの操業データと、製品幅方向のq番目の長手方向全てのブロックの操業データとを抽出する。そして、データ集約部33は、抽出した操業データを製品単位で集約する。すなわち、同図において、太線で囲ったブロックを一つのデータとしてみなす。
【0044】
また、データ集約部33は、例えば図8に示すように、分類が「単発ランダム」である品質不良に対しては、当該単発ランダムに該当するブロックの操業データと、品質不良が発生しなかったブロックの操業データとを抽出する。そして、抽出した操業データをブロック単位で集約する。
【0045】
また、データ集約部33は、例えば図8に示すように、分類が「群発ランダム」である品質不良に対しては、当該群発ランダムに該当するブロックの操業データと、品質不良が発生しなかったブロックの操業データとを抽出する。そして、抽出した操業データをブロック単位で集約する。
【0046】
データ集約部33における集約の方法としては、例えばブロック内または製品の各位置の値を代表する基礎統計量を採用することができる。具体的には、平均値、最大値、最小値、標準偏差、分散、最大値と最小値の差で表される範囲といった値である。このように、データ集約部33は、ブロック単位または製品単位で、操業データの平均値、最大値、最小値、標準偏差、分散、最大値と最小値の差のいずれか一つ以上を算出することにより、操業データを集約する。なお、操業データの集約にあたっては、少なくとも一種類の基礎統計量を採用するが、複数種類の基礎統計量を採用してもよい。データ集約部33は、ブロック単位または製品単位で集約された操業データを、記憶部20に保存する。
【0047】
データ集約部33は、予測モデルを作成する際(図9参照)に、過去実績の操業データの集約を行う。また、データ集約部33は、品質不良診断を行う際(図10参照)に、診断対象の操業データの集約を行う。
【0048】
モデル作成部34は、品質不良の分類に応じた複数の予測モデルを作成する。モデル作成部34は、品質不良の分類ごとに、集約後の操業データと品質データとの関係を機械学習によって学習することにより、品質不良の分類に応じた複数の予測モデルを作成する。
【0049】
すなわち、モデル作成部34は、品質不良の分類別に、ブロック単位または製品単位で集約した操業データと、該当ブロックまたは製品に発生した品質不良との関係を示す予測モデルを構築する。モデル作成部34は、例えば先端部、尾端部、中央部、幅エッジ部、単発ランダムおよび群発ランダムの品質不良をそれぞれ予測する6種類の予測モデルを作成する。これらの予測モデルの作成には、例えば深層ニューラルネットワーク、決定木、サポートベクターマシン等に代表される種々の機械学習アルゴリズムや、その他の統計学的なアルゴリズムを用いることができる。
【0050】
品質不良判定部35は、モデル作成部34によって作成された複数の予測モデルを用いて、品質不良の発生の有無を判定する。品質不良判定部35は、診断対象の操業データを各分類別の予測モデルにそれぞれ入力することにより、各分類別の品質不良の発生の有無を判定する。ここで、予測モデルに入力される操業データは、データ分割部31におけるデータ分割、データ集約部33におけるデータ集約を経て、ブロック単位または製品単位で集約されたデータである(図10参照)。
【0051】
品質不良判定部35による品質不良の判定は、例えば製品の製造前または製品の製造途中に実施される。製品の製造前に実施する場合は、予測したい製品の操業データとして、処理前の製造条件の設定値を予測モデルに入力して計算させることにより、製造後の製品の品質不良を予測する。また、製品の製造途中に実施する場合は、予測したい製品の操業データとして、処理済みの製造条件の実績値と処理前の製造条件の設定値を予測モデルに入力して計算させることにより、製造後の製品の品質不良を予測する。
【0052】
品質不良判定部35による品質不良の判定結果を出力部40に出力させる場合、例えば診断対象の製品に関する情報を閲覧できる画面上に、品質不良の分類別に製品単位またはブロック単位に分かれた製品平面図を表示する。そして、当該製品平面図上の該当箇所に、品質不良なしの予測結果の場合には○印を付与し、品質不良ありの予測結果の場合には×印を付与して表示してもよい。または、品質不良の有無の予測結果別に、異なる色で表示してもよい。あるいは、品質不良ありの予測結果の場合にのみ「診断対象の製品(または診断対象製品の特定のブロック)は品質不良の発生が予測される」等といった文言を出力部40から出力させてもよい。
【0053】
品質不良判定部35では、先端部、尾端部、中央部、幅エッジ部、単発ランダムおよび群発ランダムの予測モデルの全てに対して、診断対象の操業データを入力して判定を行うが、一部の予測モデルに対してのみ診断対象の操業データを入力してもよい。例えば、診断対象の操業データが「角部」、すなわち製品長手方向の先頭から1番目、かつ製品幅方向の先頭から1番目のブロックのデータである場合、発生する品質不良は先端部、幅エッジ部、単発ランダム、群発ランダムのいずれかに限定される。そのため、この場合は先端部、幅エッジ部、単発ランダム、群発ランダムの品質不良を予測する予測モデルに対してのみ、診断対象の操業データを入力すればよい。
【0054】
要因推定部36は、品質不良判定部35による品質不良の判定結果に基づいて、品質不良の要因を推定する。「品質不良の要因」とは、例えば製品の品質不良の重要な因子となる操業データのことを示している。
【0055】
要因推定部36は、例えば診断対象の特定の製品に品質不良が発生すると判定された場合に、当該品質不良の発生を抑止するために必要な操業データを推定することができる。すなわち、製造前または製造途中の製品に将来的に品質不良が発生することが予測される場合に、この品質不良の発生を防ぐために変更・調整が必要な操業データを推定する。これにより、品質不良の発生を抑止するための対処方法を検討することができる。
【0056】
また、要因推定部36は、特定の製品に品質不良が発生した場合に、当該品質不良の発生の要因となった操業データを推定することができる。すなわち、製造後の製品に品質不良がある場合、その品質不良の要因となった操業データを推定する。これにより、品質不良の発生要因を特定することができる。
【0057】
また、要因推定部36は、多数の製品に品質不良が発生した場合に、品質不良の発生の要因となった操業データを推定することができる。すなわち、製造後の多数の製品に品質不良がある場合、その品質不良の要因となった操業データを推定することができる。これにより、品質不良の発生要因を特定することができる。
【0058】
要因推定部36は、診断対象の特定の製品に品質不良が発生すると判定された場合であって、品質不良の発生を抑止するために必要な操業データを推定する場合、当該製品のデータに対して、上記判定における各因子の寄与度に相当する指標を演算する。そして、当該指標が大きい値を示す因子を、重要な因子として推定する。その際、例えば「SHAP(SHapley Additive exPlanations)」と呼ばれる方法に代表されるような、予測モデルの作成アルゴリズムに依存しない汎用的な予測重要因子算出方法を用いる。
【0059】
また、要因推定部36は、特定の製品に品質不良が発生した場合であって、品質不良の発生の要因となった操業データを推定する場合、当該製品のデータに対して、上記判定における各因子の寄与度に相当する指標を演算する。そして、当該指標が大きい値を示す因子を、重要な因子として推定する。その際、上記のSHAPのような、予測モデルの作成アルゴリズムに依存しない汎用的な予測重要因子算出方法を用いる。
【0060】
また、要因推定部36は、多数の製品に品質不良が発生した場合であって、品質不良の発生の要因となった操業データを推定する場合、予測モデル全体における各因子の影響度に相当する指標を演算する。そして、当該指標が大きい値を示す因子を重要な因子として推定する。
【0061】
また、要因推定部36は、例えば決定木系アルゴリズムにおけるジニ不純度に基づく重要度に代表されるような、予測モデルを作成したアルゴリズム特有の予測重要因子算出方法を用いてもよい。あるいは、「Permutation Importance」に代表されるような、予測モデルの作成アルゴリズムに依存しない汎用的な予測重要因子算出方法を用いてもよい。
【0062】
出力部40は、例えばLCDディスプレイ、CRTディスプレイ等の表示装置によって実現される。出力部40は、演算部30から入力される表示信号をもとに、例えば品質不良判定部35による品質不良の判定結果、要因推定部36による品質不良の要因推定結果等を、文字や図形等形式で表示する。
【0063】
〔予測モデルの作成方法〕
実施形態に係る品質不良診断方法で用いる予測モデルの作成方法について、図9を参照しながら説明する。予測モデルの作成方法では、ブロック分割ステップ(ステップS1)と、品質不良分類ステップ(ステップS2)と、データ集約ステップ(ステップS3)と、モデル作成ステップ(ステップS4)と、を行う。
【0064】
ブロック分割ステップでは、データ分割部31が、過去実績の製品データを、所定のブロックごとに二次元状に分割する(ステップS1)。続いて、品質不良分類ステップでは、品質不良分類部32が、分割後のブロックにおける品質不良の発生傾向に応じて、品質データに含まれる品質不良を分類する(ステップS2)。
【0065】
続いて、データ集約ステップでは、データ集約部33が、品質不良の分類ごとに抽出した操業データを、ブロックごとおよびブロックを二以上含む領域ごとに集約する(ステップS3)。続いて、モデル作成ステップでは、モデル作成部34が、品質不良の分類ごとに、集約後の操業データと品質データとの関係を機械学習によって学習することにより、予測モデルを作成する(ステップS4)。
【0066】
〔品質不良診断方法〕
実施形態に係る品質不良診断方法について、図10を参照しながら説明する。予測モデルの作成方法では、ブロック分割ステップ(ステップS11)と、データ集約ステップ(ステップS12)と、品質不良判定ステップ(ステップS13)と、要因推定ステップ(ステップS14)と、を行う。
【0067】
なお、以下の説明では、図9のステップS1~S4により、予め別のタイミングで作成しておいた予測モデルを用いる場合を想定しているが、品質不良の診断時に予測モデルを作成してもよい。すなわち、図9のステップS1~S4と図10のステップS11~S14とを別のタイミングで実施してもよく、あるいは図9のステップS1~S4に続けて図9のステップS11~S14を行ってもよい。
【0068】
ブロック分割ステップでは、データ分割部31が、診断対象の製品データを、所定のブロックごとに二次元状に分割する(ステップS11)。続いて、データ集約部33が、データ集約ステップでは、予め定められた品質不良の分類ごとに抽出した操業データを、ブロックごとおよびブロックを二以上含む領域ごとに集約する(ステップS12)。なお、ステップS12では、例えば図9のステップS2で作成された品質不良の分類に関する情報を用いて操業データの抽出を行う。
【0069】
続いて、品質不良判定ステップでは、品質不良判定部35が、複数の予測モデルを用いて、品質不良の発生の有無を判定する(ステップS13)。続いて、要因推定ステップでは、要因推定部36が、品質不良の判定結果に基づいて、品質不良の要因を推定する(ステップS14)。
【0070】
以上説明した実施形態に係る品質不良診断装置および品質不良診断方法では、品質不良が製品のどの部位に発生するのかを分類し、その分類結果を含めてモデリングした予測モデルを用いて品質不良の診断を行う。すなわち、実施形態に係る品質不良診断装置および品質不良診断方法では、品質不良の発生傾向に応じた分類ごとに、操業データと品質不良との関係を予測モデルとして作成して用いる。これにより、製品の品質不良を高精度に予測するとともに、当該品質不良の要因を推定することができる。
【0071】
以上、本発明に係る品質不良診断装置および品質不良診断方法について、発明を実施するための形態および実施例により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0072】
1 情報処理装置
10 入力部
20 記憶部
21 製品DB
30 演算部
31 データ分割部
32 品質不良分類部
33 データ集約部
34 モデル作成部
35 品質不良判定部
36 要因推定部
40 出力部
図1
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