(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135035
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】田植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A01C11/02 313C
A01C11/02 313B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045526
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】大西 健太
【テーマコード(参考)】
2B062
【Fターム(参考)】
2B062AA05
2B062AA08
2B062AA09
2B062AB01
2B062BA04
2B062BA28
2B062CA05
2B062CA25
2B062CB06
(57)【要約】
【課題】モータのみによって不等速回転運動を生じさせる苗植付作業機において、ガタ又はねじれ等の解消が容易になる。
【解決手段】田植機1は、エンジン22により駆動する走行機体10と、苗植付作業機14とを備える。苗植付作業機14は、植付ユニット34と、回転力を発生させるモータ140を制御するモータ制御部52と、動力伝達部38とを有する。動力伝達部38は、モータ140の回転力を調整してPTO軸24に伝達する第1ギアボックス141と、PTO軸24の回転力を調整して植付駆動軸143に伝達する第2ギアボックス142とを含む。モータ制御部52は、第1ギアボックス141に含まれる第1ギアG17の回転数を検出する第1センサ151の検出結果及び第2ギアボックス142に含まれる第2ギアG23の回転数を検出する第2センサ152の検出結果に基づいて、モータ140の回転数を設定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにより駆動する走行機体と、
前記走行機体に配置された苗植付作業機と
を備え、
前記苗植付作業機は、
回転することにより苗を植え付ける苗植付ユニットと、
回転力を発生させるモータと、
前記モータを制御するモータ制御部と、
前記モータによって発生した前記回転力を前記苗植付ユニットに伝達する動力伝達部と
を有し、
前記動力伝達部は、
前記モータの前記回転力を調整して第1シャフトに伝達する第1ギアボックスと、
前記第1シャフトの回転力を調整して前記苗植付ユニットに伝達する第2ギアボックスと
を含み、
前記第1ギアボックスは、前記第1ギアボックスに含まれる第1ギアの回転数を検出する第1センサを含み、
前記第2ギアボックスは、前記第2ギアボックスに含まれる第2ギアの回転数を検出する第2センサを含み、
前記モータ制御部は、前記第1センサの検出結果及び前記第2センサの検出結果に基づいて、前記モータの回転数を設定する、田植機。
【請求項2】
前記走行機体は、前記走行機体の走行速度を制御する走行制御部を有し、
前記走行制御部は、前記モータ制御部によって設定された前記モータの前記回転数に応じて前記走行速度を制御する、請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
前記苗植付作業機は、複数の前記苗植付ユニットを有し、
前記第2ギアボックスは、前記複数の苗植付ユニット同士を連結する第2シャフトを含み、
前記第2ギアは、前記第2シャフトに設けられる、請求項1又は請求項2に記載の田植機。
【請求項4】
前記第1ギアボックスは、
前記第1シャフトを不等速回転させる等速ギアと、
前記第1シャフトを不等速回転させる不等速ギアと
を含み、
前記等速ギア及び前記不等速ギアは、切り替え可能である、請求項1に記載の田植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の田植機では、ミッションケースによって変速されたエンジンの動力に応じた走行機体の走行速度に対して、苗植付装置の移植機構の動作速度が変速され株間が変更される株間変速装置と、移植機構に不等速回転動力を伝達する不等速部材とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の田植機では、株間変速装置から移植機構に不等速回転を伝達する不等速部材において、ギヤ同士やギヤと軸の部品間には隙間があり、等速回転の間は一方向に片方の部品が噛み合う他方の部品を押す動きをする一方、加減速を伴う不等速回転では、減速する位相で片方の部品が他方の部品を押す力がなくなり、他方の部品は慣性力で動くことになる。具体的には、他方の部品は、最大で部品間の隙間の大きさだけ動き、片方の部品の歯に当たるまで動く。このような状態を、ガタと呼ぶ。その結果、部品間の隙間があるため他方の部品は片方の部品との動きと一致しなくなる。動力伝達機構には、ギヤ及び他の部品が複数存在するため、隙間ごとにガタが大きくなる。つまり、動力伝達機構の始点側である株間変速装置と、終点側である移植機構とでは、回転の位相が、大きい場合には、15°~20°程度異なる(ねじれ)ことが発生する。このように、特許文献1の田植機では、等速回転運動を行おうとする動力伝達機構をむりやり不等速回転させようとするので、等速回転を伝達するときと比較して動力伝達機構を構成するギヤ又は回転軸等で発生する振動が顕著になり、ガタ又はねじれ等が発生し得る。ガタ又はねじれ等が発生した場合、走行機体の走行速度を減速させると、移植機構の動作速度が減速され、ガタ又はねじれ等が解消される。
【0005】
しかしながら、移植機構の不等速回転をモータのみによって発生させる場合には、エンジンの制御とモータの制御とが別系統であるため、走行速度の減速と移植機構の動作速度とにタイムラグが生じ、ガタ又はねじれ等の解消が遅れてしまうことがある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、モータのみによって不等速回転運動を生じさせる苗植付作業機において、ガタ又はねじれ等の早急な解消が容易な田植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る田植機は、走行機体と、苗植付作業機とを備える。前記走行機体は、エンジンにより駆動する。前記苗植付作業機は、前記走行機体に配置される。前記苗植付作業機は、苗植付ユニットと、モータと、モータ制御部と、動力伝達部とを有する。前記苗植付ユニットは、回転することにより苗を植え付ける。前記モータは、回転力を発生させる。前記モータ制御部は、前記モータを制御する。前記動力伝達部は、前記モータによって発生した前記回転力を前記苗植付ユニットに伝達する。前記動力伝達部は、第1ギアボックスと、第2ギアボックスとを含む。前記第1ギアボックスは、前記モータの前記回転力を調整して前記第1シャフトに伝達する。前記第2ギアボックスは、前記第1シャフトの回転力を調整して前記第2シャフトに伝達する。前記第1ギアボックスは、前記第1ギアボックスに含まれる第1ギアの回転数を検出する第1センサを含む。前記第2ギアボックスは、前記第2ギアボックス含まれる第2ギアの回転数を検出する第2センサを含む。前記モータ制御部は、前記第1センサの検出結果及び前記第2センサの検出結果に基づいて、前記モータの回転数を設定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、モータのみによって不等速回転運動を生じさせる苗植付作業機において、ガタ又はねじれ等の早急な解消が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本実施形態における田植機の内部構造を模式的に示す図である。
【
図3】本実施形態における田植機のブロック図である。
【
図4】本実施形態における田植機の第1ギアボックスの内部構造を模式的に示す図である。
【
図5】本実施形態における田植機の第1ギアボックスの内部構造を模式的に示す図である。
【
図6】単位面積あたりの植え付け可能な苗の株数と、選択されるギアとの対応関係を示す図である。
【
図7】本実施形態における田植機の第2ギアボックスの内部構造を模式的に示す図である。
【
図8】本実施形態における田植機の第2ギアボックスの変形例における内部構造を模式的に示す図である。
【
図9】本実施形態における田植機による植付制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0011】
図1~
図3を参照して、本実施形態に係る田植機1について説明する。
図1は、本実施形態における田植機1の側面図である。
図2は、本実施形態における田植機1の内部構造を模式的に示す図である。
図2は、田植機1を上方から見た状態を示す。
図3は、本実施形態における田植機1のブロック図である。
【0012】
図1に示されるように、田植機1は、走行機体10と苗植付作業機14とを備えている。走行機体10は、車体部11と、前輪12と、後輪13とを備えている。前輪12は、車体部11に対して左右一対設けられている。同様に、後輪13も、車体部11に対して左右一対設けられている。
【0013】
車体部11は、ボンネット21を備えている。ボンネット21は、車体部11の前部に設けられている。ボンネット21の内部には、エンジン22が設けられている。
【0014】
エンジン22が発生させた動力は、ミッションケース23を介して前輪12及び後輪13に伝達される。
【0015】
車体部11は、運転座席25と、複数の操作部材と制御部50とを更に備えている。運転座席25には、作業者が座ることができる。運転座席25は、車体部11の前後方向において前輪12と後輪13との間に配置されている。複数の操作部材は、操舵ハンドル26と、変速操作ペダル27と、主変速レバー28とを含む。
【0016】
操舵ハンドル26は、作業者が田植機1を操舵するためのハンドルである。変速操作ペダル27は、作業者が田植機1の走行速度を調節するためのペダルである。主変速レバー28は、例えば、「前進」「後進」「停止」等を作業者が選択可能に構成されたレバーである。主変速レバー28が「前進」位置に操作されると、田植機1を前進させる方向に前輪12及び後輪13が回転するように動力が伝達される。一方、主変速レバー28が「後進」位置に操作されると、田植機1を後進させる方向に前輪12及び後輪13が回転するように動力が駆動される。主変速レバー28が「停止」位置に操作されると、前輪12及び後輪13に対する動力の伝達が遮断される。なお、「前進」は、圃場内を走行するための「低速」と、圃場外を走行するための「高速」とに分かれていてもよい。
【0017】
制御部50は、田植機1を制御する。具体的には、
図3に示されるように、制御部50は、走行機体10を制御する走行制御部51を含む。
【0018】
制御部50は、一例として、ECU(Electronic Control Unit)であり、演算装置及び入出力部等、並びに記憶部55を備えている。演算装置は、プロセッサ又はマイクロプロセッサ等である。記憶部55は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)のような主記憶装置である。記憶部55は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)のような補助記憶装置を更に含んでもよい。記憶部55には、各種のプログラム及びデータ等が記憶されている。演算装置は、各種のプログラムを記憶部55から読み出して実行する。上記のハードウェアとソフトウェアとの協働により、制御部50は、走行制御部51として機能することができる。制御部50は、1つのハードウェアであってもよいし、互いに通信可能な複数のハードウェアであってもよい。
【0019】
制御部50には、操舵ハンドル26、変速操作ペダル27及び主変速レバー28の操作に応じた信号が入力される。また、制御部50には、例えば、図示しない車速センサが接続され、車速センサの検出結果を示す信号が入力される。
【0020】
制御部50は、入力された各種信号に基づいて、走行機体10の走行速度及び走行方向を制御する。
【0021】
図1及び
図2に示されるように、苗植付作業機14は、例えば、車体部11の後方に配置されている。苗植付作業機は、昇降リンク機構31を介して車体部11に連結されている。昇降リンク機構31は、トップリンク31a及びロワーリンク31bを含む平行リンクにより構成されている。
【0022】
昇降リンク機構31において、ロワーリンク31bには、昇降装置の昇降シリンダ32が連結されている。昇降装置は、昇降シリンダ32を伸縮させることによって、苗植付作業機14を車体部11に対して上下に昇降させることができる。なお、昇降シリンダ32は、本実施形態においては油圧シリンダであるが、電動シリンダであってもよい。また、昇降装置は、シリンダ以外のアクチュエータにより苗植付作業機14を昇降させるものであってもよい。
【0023】
図1~
図3に示されるように、苗植付作業機14は、モータ140と、植付入力ケース部33と、3つの植付ユニット34と、苗載台35と、複数のフロート36と、動力伝達部38とを備えている。苗植付作業機14は、各植付ユニット34に対して苗を苗載台35から順次供給し、苗の植付けを連続的に行う。なお、苗植付作業機14に設けられる植付ユニット34の数は、2つ以下でもよいし、4つ以上でもよい。
【0024】
複数の植付ユニット34は、モータ140により駆動する。具体的には、複数の植付ユニット34には、動力伝達部38によって、モータ140が発生させた回転力が伝達される。
【0025】
動力伝達部38は、パワーテイクオフ軸(以下、「PTO軸24」と記載する)と、第1ギアボックス141と、第2ギアボックス142と、植付駆動軸143とを含む。PTO軸24は、第1シャフトの一例である。植付駆動軸143は、第2シャフトの一例である。植付駆動軸143は、植付ユニット34に連結する。本実施形態において、植付駆動軸143は、3つの植付ユニット34を連結する。
【0026】
第1ギアボックス141は、モータ140によって発生した回転力を調整してPTO軸24に伝達する。第1ギアボックス141については、
図4及び
図5を参照して後で説明する。
【0027】
第2ギアボックス142は、PTO軸24の回転力を調整して植付駆動軸143に伝達する。第2ギアボックス142については、
図7を参照して後で説明する。
【0028】
各植付ユニット34は、植付伝動ケース部41と回転ケース部42とを有している。植付伝動ケース部41には、動力伝達部38及び植付入力ケース部33を介して動力が伝達される。
【0029】
回転ケース部42は、植付伝動ケース部41に回転可能に取り付けられている。回転ケース部42は、植付伝動ケース部41の車幅方向の両側に配置されている。各回転ケース部42の車幅方向の一方側には、2つの植付爪43が取り付けられている。
【0030】
2つの植付爪43は、田植機1の進行方向に並べられている。2つの植付爪43は、回転ケース部42の回転に伴い変位する。2つの植付爪43が変位することにより、1条分の苗の植付が行われる。
【0031】
苗載台35は、複数の植付ユニット34の前上方に配置されている。苗載台35は、苗マットを載置可能である。苗載台35は、苗載台35に載置された苗マットの苗を各植付ユニット34に対して供給できるように構成されている。具体的には、苗載台35は、車幅方向に往復するように横送り移動可能に(即ち横方向にスライド可能に)構成されている。また、苗載台35は、苗載台35の往復移動端で苗マットを間欠的に下方に縦送り搬送可能に構成されている。
【0032】
フロート36は、苗植付作業機14の下部に揺動可能に設けられている。フロート36の下面が圃場表面に接触することにより、苗植付作業機14の植付姿勢が圃場表面に対して安定する。
【0033】
田植機1において、予備苗載台37は、車体部11の前方に、車体部11に対して左右一対設けられている。予備苗載台37は、ボンネット21の車幅方向外側に配置されている。予備苗載台37は、予備の苗マットを収容した苗箱を搭載可能である。作業者は、苗載台35の苗マットがなくなると、予備苗載台37の苗マットを苗載台35に移す。
【0034】
図3~
図7を参照して、動力伝達部38によるモータ140から複数の植付ユニット34への動力の伝達について説明する。
図4及び
図5は、本実施形態における田植機1の第1ギアボックス141の内部構造を模式的に示す図である。
【0035】
本実施形態において、モータ140は、制御部50によって制御される。具体的には、制御部50の演算装置が各種のプログラムを記憶部55から読み出して実行すると、制御部50のハードウェアとソフトウェアとの協働により、制御部50は、モータ制御部52として機能することができる。モータ制御部52は、田植機1に対して入力された操作に応じた信号に基づいて、モータ140を制御する。一例として、モータ制御部52は、主変速レバー28が「前進」位置に操作されると、モータ140を所定の回転数で回転させるように制御し、主変速レバー28が「停止」位置に操作されると、モータ140の回転を停止させるように制御する。
【0036】
図4に示すように、モータ140は、モータシャフトSHT1を有する。モータ140が駆動すると、モータシャフトSHT1は中心を軸に回転する。
【0037】
例えば、第1ギアボックス141は、複数のギアG11、G12、G13、G14、G15、G16を含む。ギアG11は、モータシャフトSHT1に設けられる。ギアG12は、ギアG11と噛み合うように設けられる。ギアG12には、例えば、シャフトSHT2が取り付けられる。シャフトSHT2には、ギアG12以外に、ギアG13と、ギアG15とが取り付けられる。シャフトSHT2において、ギアG12、ギアG13及びギアG15は、それぞれ互いに離れて配置される。
【0038】
また、第1ギアボックス141は、シャフトSHT2と別のシャフトSHT3を含む。シャフトSHT3の一方の端部を含むシャフトSHT3の一部は、第1ギアボックス141の内部に位置する。シャフトSHT3は、第1ギアボックス141の内部から外部に向かって延びる。シャフトSHT3の他方の端部は、第1ギアボックス141の外部においてユニバーサルジョイントJ1を介してPTO軸24に接続する。第1ギアボックス141の内部において、シャフトSHT3には、シャフトSHT3を保持したままシャフトSHT3の軸方向に沿って移動可能なスライダーSLDが取り付けられる。スライダーSLDには、ギアG14が設けられる。ギアG14は、ギアG13と噛み合うギアである。また、第1ギアボックス141には、ギアG16が設けられる。ギアG16は、ギアG15と噛み合うギアであり、ギアG15と噛み合う位置に配置される。ギアG16は、中央部に空洞(貫通孔)を有する。シャフトSHT3は、ギアG16の空洞(貫通孔)の内側を通るように配置される。
図4の例では、ギアG13及びギアG14は、等速ギアであり、ギアG15及びギアG16は、不等速ギアである。
【0039】
本実施形態において、等速ギアと不等速ギアとは切り替え可能である。
図4及び
図5を参照して、第1ギアボックス141における等速ギアと不等速ギアとの切り替えを説明する。
【0040】
例えば、スライダーSLD及びギアG16には、クラッチCLTが設けられている。クラッチCLTは、一例として、電磁クラッチであり、制御部50によって制御される。クラッチCLTは、制御部50の制御により、連結状態と、離隔状態とが切り替わる。
【0041】
例えば、作業者が車体部11の植付クラッチレバー29(
図3)の操作位置を切り替えると、制御部50には、植付クラッチレバー29の操作位置に応じた信号が入力される。制御部50は、入力された操作位置に応じた信号に基づいて、クラッチCLTの連結状態又は離隔状態を切り替える制御を行う。
【0042】
図4は、クラッチCLTが離隔状態である場合の第1ギアボックス141を示す。クラッチCLTが離隔状態である場合、スライダーSLDは、ポジションP1に位置する。ポジションP1は、ギアG13及びギアG14が噛み合う位置を示す。また、クラッチCLTが離隔状態であることから、ギアG16の回転は、スライダーSLDに伝達されない。したがって、スライダーSLDは、ギアG14の回転に伴って回転(等速回転)する。その結果、スライダーSLDによって保持されたシャフトSHT3、及びシャフトSHT3にユニバーサルジョイントJ1を介して接続されたPTO軸24は、等速回転する。
【0043】
一方、
図5は、クラッチCLTが連結状態である場合の第1ギアボックス141を示す。クラッチCLTが連結状態である場合、スライダーSLDは、ポジションP2に位置する。スライダーSLDがポジションP2に位置するとき、ギアG13及びギアG14は噛み合わない。また、クラッチCLTが連結状態であることから、ギアG16の回転は、スライダーSLDに伝達される。したがって、スライダーSLDは、ギアG16の回転に伴って回転(不等速回転)する。その結果、スライダーSLDによって保持されたシャフトSHT3、及びシャフトSHT3にユニバーサルジョイントJ1を介して接続されたPTO軸24は、不等速回転する。
【0044】
次に、
図6を参照して、等速ギア又は不等速ギアの選択と、単位面積あたりの植え付け可能な株数との関係を説明する。
図6は、単位面積あたりの植え付け可能な苗の株数と、選択されるギアとの対応関係を示す図である。一般的に、田植機1の走行に従って、苗を等間隔に植えるためには、単位面積あたりの株数が多い場合、等速ギアが選択され、一方、単位面積あたりの株数が少ない場合、不等速ギアが選択される。単位面積あたりの株数が少ない場合に等速ギアを選択すると、苗の移植軌跡が原因で、苗の移植姿勢が適切ではなくなり、苗の倒伏などが生じる。したがって、等速ギアと不等速ギアとが切り替え可能にすることで、PTO軸24の等速回転又はPTO軸24の不等速回転を、単位面積あたりの株数に応じて選択できる。
【0045】
なお、モータ140、第1ギアボックス141及びPTO軸24の位置関係は、
図4及び
図5の配置に限定されない。例えば、PTO軸24がモータシャフトSHT1の延長線上に配置されなくてもよいし、PTO軸24、モータシャフトSHT1及びシャフトSHT2が互いに平行に配置されなくてもよい。また、第1ギアボックス141における各ギアの位置及び方向も、
図4及び
図5の配置に限定されない。
【0046】
次に、
図7を参照して、第2ギアボックス142を説明する。
図7は、本実施形態における田植機1の第2ギアボックス142の内部構造を模式的に示す図である。第2ギアボックス142は、複数のギアG21、G22、G24、G25、G26、G27と、シャフトSHT4、SHT5と、選択機構145と、植付駆動軸143の一部とを含む。シャフトSHT4の一方の端部を含むシャフトSHT4の一部は、第2ギアボックス142の内部に位置する。シャフトSHT4は、第2ギアボックス142の内部から外部に向かって延びる。シャフトSHT4の他方の端部は、第2ギアボックス142の外部においてユニバーサルジョイントJ2を介してPTO軸24に接続する。選択機構145は、苗載台35を縦送り及び横送りさせるための駆動軸144に回転を伝えるギア対を複数のギア対のうちから選択する機構である。
【0047】
ギアG21は、シャフトSHT4に設けられる。ギアG21は、PTO軸24及びユニバーサルジョイントJ2を介してPTO軸24に接続されたシャフトSHT4の回転に伴って回転する。ギアG22は、植付駆動軸143に設けられる。ギアG21及びギアG22は、ギアG24~G27及びシャフトSHT5を介して、互いに連動するように配置される。
【0048】
具体的には、ギアG24は、ギアG21と噛み合うように配置される。ギアG24には、ギアG24を貫通するシャフトSHT5が取り付けられる。シャフトSHT5には、ギアG24以外に、ギアG25が取り付けられる。また、シャフトSHT5は、選択機構145の複数のギア対の各々の一方のギアに設けられた貫通孔を貫通する。複数のギア対の各々の一方のギアのうち、図示しないシフタによって選択されたギアは、シャフトSHT5に連結する。選択機構145の複数のギア対の各々の他方のギアは、駆動軸144に取り付けられる。ギアG26は、ギアG25と噛み合うように配置される。ギアG26には、駆動軸144が内側を通る貫通孔が設けられる。ギアG27は、ギアG26及びギアG22と噛み合うように配置される。ギアG27は、例えば、シャフト146によって第2ギアボックス142に支持される。ギアG22は、植付駆動軸143に取り付けられる。このように、植付駆動軸143は、ギアG21、G22、G24~ギアG27、シャフトSHT4、シャフトSHT5及びユニバーサルジョイントJ2を介してPTO軸24に接続される。その結果、植付駆動軸143は、PTO軸24、シャフトSHT4、シャフトSHT5、及びギアG21~ギアG27の回転に伴って回転する。したがって、植付駆動軸143によって連結された3つの植付ユニット34の植付伝動ケース部41を回転ケース部42は、植付駆動軸143の回転に伴って回転する。したがって、3つの植付ユニット34を1つのモータ140及び1つのPTO軸24によって駆動させることができる。
【0049】
なお、モータ140、第2ギアボックス142及びPTO軸24の位置関係は、
図7の配置に限定されない。例えば、PTO軸24と植付駆動軸143との間に、更に多くのギアが介在してもよい。
【0050】
ここで、スライダーSLDがポジションP2に位置するとき、すなわち、動力伝達部38を不等速回転させるとき、動力伝達部38を構成する部品に起因するガタ又はねじれ等が発生し得る。ガタ又はねじれ等が発生すると苗の移植軌跡が乱れ正常な移植ができなくなる。
【0051】
そこで、本実施形態の田植機1は、ねじれ又はガタの発生を抑制するとともに、ねじれ又はガタが発生したときねじれ又はガタを抑える機能を搭載する。
【0052】
具体的には、
図3~
図5に示すように、第1ギアボックス141は、ギアG17と、第1センサ151とを更に含む。ギアG17は、例えば、第1ギアボックス141内のシャフトSHT3に設けられる。ギアG17は、他にいずれのギアとも噛み合わず、単独で用いられる。つまり、ギアG17は、シャフトSHT3の回転数を計測するためのギアである。ギアG17は、第1ギアの一例である。
【0053】
第1センサ151は、ギアG17の回転数を検出する。言い換えると、第1センサ151は、第1ギアボックス141におけるシャフトSHT3の回転数を検出する。具体的には、第1センサ151は、一例として、ギアG17をパルス計測する。つまり、第1センサ151は、電磁ピックアップ等によりパルス信号を発生させて、制御部50に出力する。制御部50は、第1センサ151から出力されたパルス信号を受け、パルス信号における単位時間あたりのパルスの数を数えることで、ギアG17の回転数を算出する。つまり、第1センサ151から出力されたパルス信号は、第1センサ151の検出結果を示す。なお、第1センサ151は、近接センサ、渦電流変位センサ、光電センサ又はレーザセンサ等であってもよい。
【0054】
また、ギアG17は、シャフトSHT3以外に、シャフトSHT2に設けられてもよい。この場合、制御部50は、パルス信号における単位時間あたりのパルスの数と、関係するギアのギア比とに基づいて、ギアG17の回転数を算出する。また、ギアG12~G16のうちのいずれかが、ギアG17として機能してもよい。
【0055】
一方、
図7に示すように、第2ギアボックス142は、ギアG23と、第2センサ152とを更に含む。ギアG23は、例えば、第2ギアボックス142内のシャフトSHT4に設けられる。第2センサ152は、ギアG23の回転数を検出する。言い換えると、第2センサ152は、第2ギアボックス142においてシャフトSHT4の回転数を検出する。ギアG23及び第2センサ152の動作は、第1ギアボックス141におけるギアG17及び第1センサ151の動作と同様であるので、説明を省略する。
【0056】
動力伝達部38にねじれ又はガタが発生しているか、又は、ねじれ又はガタが発生しやすい状況である場合、第1センサ151によって計測されるシャフトSHT3の回転数と、第2センサ152によって計測されるシャフトSHT4の回転数とが大きく異なる。言い換えると、シャフトSHT3と、シャフトSHT4とで、回転の位相差が大きくなる。したがって、制御部50(モータ制御部52)は、第1センサ151の検出結果を示す出力信号に基づいて算出したシャフトSHT3の回転数と、第2センサ152の検出結果を示す出力信号に基づいて算出したシャフトSHT4の回転数との差分Mを算出する。制御部50は、例えば、算出した差分Mが閾値αより大きい場合、ねじれ又はガタが発生しやすい状況であると判定する。
【0057】
ねじれ又はガタが発生を抑えるためには、PTO軸24を含む動力伝達部38の回転数の低下が有効である。よって、モータ制御部52は、算出した差分Mが閾値αより大きい場合、モータ140に流す電流を小さくする等、モータ140の回転数を低下させるように制御する。
【0058】
以上のように、シャフトSHT3の回転数と、シャフトSHT4の回転数とを比較してPTO軸24の回転状態を判定し、回転状態に応じてモータ140の回転数を制御することで、モータで駆動する苗植付作業機14において、ねじれ又はガタが発生を抑制することが可能になる。つまり、第1センサ151及び第2センサ152を用いることで、作業者がねじれ又はガタに起因する振動を感知して振動を抑えるように操作するより、振動が少ない段階での対応が可能になる。
【0059】
[変形例]
次に、
図8を参照して、第2ギアボックス142の変形例について説明する。
図8は、第2ギアボックス142の変形例における内部構造を模式的に示す図である。第2ギアボックス142の変形例は、ギアG23及び第2センサ152の位置が異なる以外、
図7に示す第2ギアボックス142と同じである。
【0060】
具体的には、第2ギアボックス142の変形例におけるギアG23は、植付駆動軸143に設けられる。つまり、第2センサ152は、第2ギアボックス142において植付駆動軸143の回転数を検出する。この場合、制御部50(モータ制御部52)は、第1センサ151の検出結果を示す出力信号に基づいて算出したシャフトSHT3の回転数と、第2センサ152の検出結果を示す出力信号に基づいて算出した植付駆動軸143の回転数との差分M2を算出する。典型的には、差分Mより差分M2の方が大きくなりやすいため、ギアG23を植付駆動軸143に設けると、ねじれ又はガタの発生を検知しやすい。
【0061】
以上のように、ねじれ又はガタが発生を抑制することが可能になる一方で、モータ140の回転数の低下により回転ケース部42の回転速度が低下した場合において、走行機体10の走行速度が回転ケース部42の回転速度の低下前と同じであると、植え付けられる苗の間隔がモータ140の回転数の低下前と低下後とで異なる。これを防ぐため、制御部50(走行制御部51)は、モータ制御部52の設定したモータ140の回転数に応じて、走行機体10の走行速度を制御する。
【0062】
一例として、記憶部55には、走行機体10の走行速度と、モータ140の回転数との対応関係を示す情報が記憶されている。走行制御部51は、記憶部55を参照してモータ制御部52によって設定されたモータ140の回転数に対応する走行速度を特定する。例えば、走行制御部51は、車速センサの検出結果と特定した走行速度に基づいて、走行機体10の走行速度が特定した走行速度になるように、エンジン22を制御する。このとき、例えば、作業者が変速操作ペダル27を操作したとしても、走行制御部51は、変速操作ペダル27からの入力信号に応じて走行速度を調整しない。なお、走行制御部51は、車速センサの検出結果以外に、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)を用いることによって現在の走行速度を検出してもよい。
【0063】
このように、モータ140の回転数に応じて走行速度を調整することで、植え付けられる苗の間隔を一定に保つことができる。また、動力伝達部38の回転がエンジンに連動する構成の場合、動力伝達部38の回転速度をねじれ又はガタが発生を抑制できる回転速度にエンジンを制御すると、エンジンと動力伝達部38とが連動しているため、走行速度が非常に遅くなり作業効率が低下していた。対して、本実施形態のように、モータ140のみによって動力伝達部38の回転を制御する場合、動力伝達部38の回転速度とエンジンの回転数とは連動しないため、車速を制御するエンジンの回転数が下がるタイムラグを待たずに植付回転速度を制御することが可能になる。更に、動力伝達部38の回転がエンジンに連動する構成と比べて、ガタ又はねじれ等が解消されるまで走行速度を極端に減速させることなく、ガタ又はねじれ等が発生しない限度まで走行速度を保ちながら植付回転速度を制御できるため、走行速度の低下の程度を抑えることができ、作業効率の低下を防ぐことができる。
【0064】
次に、
図9を参照して、本実施形態における田植機1による植付制御方法について説明する。
図9は、本実施形態における田植機1による植付制御方法を示すフローチャートである。
【0065】
まず、制御部50は、第1センサ151の検出結果と第2センサ152の検出結果とを取得する(ステップS11)。
【0066】
制御部50は、取得した第1センサ151の計測結果と第2センサ152の計測結果との差分Mを算出する(ステップS12)。
【0067】
制御部50は、算出した差分Mと閾値αを比較する(ステップS13)。制御部50は、算出した差分Mが閾値α以下である場合(ステップS13でNo)、第1センサ151の検出結果と第2センサ152の検出結果との取得を継続する(ステップS11)。
【0068】
一方、制御部50は、算出した差分Mが閾値αより大きい場合(ステップS13でYes)、回転数を低下させるようにモータ140を制御する(ステップS14)。
【0069】
制御部50は、走行機体10の走行速度を、制御したモータ140の回転数に応じた速度に制御する(ステップS15)。制御部50は、第1センサ151の検出結果と第2センサ152の検出結果との取得を継続する(ステップS11)。
【0070】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素は適宜改変可能である。例えば、ある実施形態に示される全構成要素のうちのある構成要素を別の実施形態の構成要素に追加してもよく、又は、ある実施形態に示される全構成要素のうちのいくつかの構成要素を実施形態から削除してもよい。
【0071】
また、図面は、発明の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、農作業機械の分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 :田植機
10 :走行機体
14 :苗植付作業機
22 :エンジン
24 :PTO軸
34 :植付ユニット
38 :動力伝達部
51 :走行制御部
52 :モータ制御部
140 :モータ
141 :第1ギアボックス
142 :第2ギアボックス
143 :植付駆動軸
151 :第1センサ
152 :第2センサ
G13、G14 :等速ギア
G15、G16 :不等速ギア
G17 :第1ギア
G23 :第2ギア