IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アンデン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ブザーおよびその製造方法 図1
  • 特開-ブザーおよびその製造方法 図2
  • 特開-ブザーおよびその製造方法 図3
  • 特開-ブザーおよびその製造方法 図4
  • 特開-ブザーおよびその製造方法 図5
  • 特開-ブザーおよびその製造方法 図6
  • 特開-ブザーおよびその製造方法 図7
  • 特開-ブザーおよびその製造方法 図8
  • 特開-ブザーおよびその製造方法 図9
  • 特開-ブザーおよびその製造方法 図10
  • 特開-ブザーおよびその製造方法 図11
  • 特開-ブザーおよびその製造方法 図12
  • 特開-ブザーおよびその製造方法 図13
  • 特開-ブザーおよびその製造方法 図14
  • 特開-ブザーおよびその製造方法 図15
  • 特開-ブザーおよびその製造方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135037
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ブザーおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G10K 9/122 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G10K9/122 103
G10K9/122 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045529
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】株式会社デンソーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 佑紀彦
(57)【要約】
【課題】発生音の大きさのばらつきを抑制可能なブザーを提供すること。
【解決手段】
ブザーは、樹脂で成形されたケース20と、振動して音を発生する圧電振動板と、ケースに圧電振動板を貼り付ける接着剤と、を備える。ケースは、接着剤が塗布される貼付座面215aおよび貼付座面から突出して形成され、圧電振動板を支持する3つ以上の支持部70を有する。また、ブザーの製造方法は、圧電振動板を用意することと、接着剤を用意することと、貼付座面および3つ以上の支持部を有するケースを用意することと、ケースを固定する固定冶具80を用意することと、貼付座面に圧電振動板を貼り付ける貼付冶具90を用意することと、を含む。貼付冶具を用意することでは、貼付冶具として、ケースに向けて押圧する押圧面を含む押圧部と、押圧面が圧電振動板を押圧する方向を、ケースが固定冶具に固定された姿勢に従って傾かせる可動部とを有するものを用意する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブザーであって、
樹脂で成形されたケース(20)と、
前記ケース内に収容され、振動して音を発生する圧電振動板(30)と、
前記ケースに前記圧電振動板を貼り付ける接着剤(G)と、を備え、
前記ケースは、前記接着剤が塗布される貼付座面(215a)および前記貼付座面から突出して形成され、前記圧電振動板を支持する3つ以上の支持部(70)を有するブザー。
【請求項2】
前記ケースは、樹脂で構成され、
前記3つ以上の支持部は、前記貼付座面のうち、樹脂による変形量が他の部位に比較して小さい部位に設けられている請求項1に記載のブザー。
【請求項3】
前記圧電振動板は、前記3つ以上の支持部に支持される貼付面(30a)を有し、
前記接着剤は、前記貼付面と前記貼付座面との間に設けられており、
前記3つ以上の支持部は、前記貼付座面のうち、前記貼付面と前記貼付座面との間の前記接着剤の厚みに対応する該ブザーの発生音の音圧が予め定められる許容音圧範囲内となる部位に設けられている請求項2に記載のブザー。
【請求項4】
前記3つ以上の支持部それぞれの前記接着剤の厚み方向の大きさは、前記貼付面と前記貼付座面との間の前記接着剤の厚みが前記許容音圧範囲内に対応する厚さの範囲内となる大きさに調整されている請求項3に記載のブザー。
【請求項5】
前記貼付座面は、所定の軸心を中心とした円環形状であって、
前記3つ以上の支持部は、前記所定の軸心を中心とした周方向に沿って設けられており、前記貼付座面のうち、前記3つ以上の支持部それぞれの前記周方向における間隔の差が小さく位置に配置されている請求項1または2に記載のブザー。
【請求項6】
ブザーの製造方法であって、
振動して音を発生する圧電振動板(30)を用意することと、
前記圧電振動板を貼り付ける接着剤(G)を用意することと、
樹脂で成形され、前記接着剤が塗布される貼付座面(215a)および前記貼付座面から突出して形成され、前記圧電振動板を支持する3つ以上の支持部(70)を有するケース(20)を用意することと、
前記ケースを固定する固定冶具(80)を用意することと、
前記貼付座面に前記圧電振動板を貼り付ける貼付冶具(90)を用意することと、を含み、
前記貼付冶具を用意することでは、前記貼付冶具として、前記圧電振動板を前記固定冶具に固定された状態の前記ケースに向けて押圧する押圧面(911a)を含む押圧部(911)と、前記押圧面が前記圧電振動板を押圧する方向を、前記ケースが前記固定冶具に固定された姿勢に従って傾かせる可動部(913)とを有するものを用意するブザーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブザーおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂で成形されたケースと、ケースに貼り付けられた圧電振動板と、を有する圧電ブザーが知られている(例えば、特許文献1参照)。圧電振動板は、ケースにおける圧電振動板が貼り付けられる貼付座面に接着材によって貼り付けられている。この圧電ブザーは、圧電振動板に交流電圧を印加して、この圧電振動板を振動させることで音を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-237473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、圧電振動板を貼り付けるケースを、樹脂を成形して製造する場合、圧電振動板が貼り付けられる貼付座面は、成形時の熱収縮で完全な平面とならず、僅かな凹凸を有する場合がある。そして、貼付座面が凹凸を有する場合、貼付座面と圧電振動板との間に介在する接着剤の厚みにばらつきが出たり、貼付座面に対して圧電振動板が平行とならなかったりする。発明者らの鋭意検討によれば、接着剤の厚みのばらつきおよび貼付座面に対する圧電振動板の平行からのずれは、ブザーの発生音の音圧特性にばらつきを発生させて、この発生音の大きさにばらつきが出る要因となる。
【0005】
本開示は、発生音の大きさのばらつきを抑制可能なブザーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
ブザーであって、
樹脂で成形されたケース(20)と、
ケース内に収容され、振動して音を発生する圧電振動板(30)と、
ケースに圧電振動板を貼り付ける接着剤(G)と、を備え、
ケースは、接着剤が塗布される貼付座面(215a)および貼付座面から突出して形成され、圧電振動板を支持する3つ以上の支持部(70)を有する。
【0007】
また、請求項6に記載の発明は、ブザーの製造方法であって、
振動して音を発生する圧電振動板(30)を用意することと、
圧電振動板を貼り付ける接着剤(G)を用意することと、
樹脂で成形され、接着剤が塗布される貼付座面(215a)および貼付座面から突出して形成され、圧電振動板を支持する3つ以上の支持部(70)を有するケース(20)を用意することと、
ケースを固定する固定冶具(80)を用意することと、
貼付座面に圧電振動板を貼り付ける貼付冶具(90)を用意することと、を含み、
貼付冶具を用意することでは、貼付冶具として、圧電振動板を固定冶具に固定された状態のケースに向けて押圧する押圧面(911a)を含む押圧部(911)と、押圧面が圧電振動板を押圧する方向を、ケースが固定冶具に固定された姿勢に従って傾かせる可動部(913)とを有するものを用意する。
【0008】
これによれば、圧電振動板と貼付座面との間に介在する接着剤の膜厚を安定させることができる。このため、ブザーの発生音の大きさのばらつきを抑制することができる。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るブザーの正面図である。
図2】本実施形態に係るブザーの側面図である。
図3図2に示すIII-III断面図である。
図4図1に示すIV-IV断面図である。
図5図1に示すV-V断面図である。
図6】ブザーユニットを外ケースに嵌め込む前の状態を示した斜視図である。
図7】圧電振動板が配置される前のケース本体の正面図である。
図8図7に示すVIII-VIII断面図である。
図9】接着剤の膜厚とブザーの音圧の関係を示す図である。
図10】貼付座面のコンター図である。
図11】本実施形態のブザーの製造工程のうち、ケース本体および固定冶具の用意工程を示す図である。
図12図11に続く製造工程を示す図である。
図13図12に続く製造工程を示す図である。
図14図13に続く製造工程を示す図である。
図15】ケース本体と固定冶具との間に異物が混入した状態を示す図である。
図16】ケース本体と固定冶具との間に異物が混入した状態で貼付座面に圧電振動板を貼り付ける状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の一実施形態について図1図16に基づいて説明する。本開示では、ブザー1が車載に搭載された例について説明する。図1に示すブザー1は、ブザーユニット2および有底四角筒状の外ケース3を有しており、ブザーユニット2を外ケース3の開口側から嵌め込むことにより一体化することで構成されている。このブザー1は、例えば、ブザーユニット2が外ケース3に差し込まれる方向を天方向に向けられた状態で車両に搭載される。以下、図1などに示すように、ブザーユニット2が外ケース3に差し込まれる方向を高さ方向DR1とする。また、図2などに示すように、高さ方向DR1に直交する所定の方向を奥行方向DR2、高さ方向DR1および奥行方向DR2に直交する方向を幅方向DR3とする。
【0012】
ブザー1は、奥行方向DR2における一方側に、音を放出する後述の放音孔31aが形成されており、この放音孔31aから音を放出可能となっている。以下、奥行方向DR2における放音孔31aが形成される側(すなわち、音を放出する側)を正面側、奥行方向DR2における正面側とは反対側を裏側とする。
【0013】
ブザーユニット2は、図3図5に示すように、ケース本体20、圧電振動板30、ターミナル40、リードスプリング50、レジスタ60(すなわち、抵抗器)などを有する。ブザーユニット2は、ケース本体20に対して圧電振動板30、ターミナル40、リードスプリング50、レジスタ60などの電気部品が組み込まれて構成されている。
【0014】
ケース本体20は、成形型を用いた樹脂成形にて形成されている。ケース本体20は、図6に示すように、外ケース3に対して嵌め込まれる圧入部21と、圧入部21から突き出して外ケース3の外側に配置されるコネクタ部22と、圧入部21およびコネクタ部22の間に設けられるフランジ部23とにより構成されている。これら圧入部21、コネクタ部22およびフランジ部23は、例えば、一体成形によって形成されている。
【0015】
圧入部21は、外形形状が一面を開口部とする有底四角筒状とされている。圧入部21は、有底四角筒状における開口部側の先端部211と、底側の底部212と、底部212の周囲を囲む外壁213と、外壁213よりも内側に設けられる内壁214と、を有する。
【0016】
先端部211は、奥行方向DR2における正面側に配置されている。先端部211は、ケース本体20が外ケース3に嵌め込まれた際に、外ケース3の内壁面に接触するように形成されている。
【0017】
底部212は、圧入部21における電気部品が固定される部位である。底部212は、先端部211に対して奥行方向DR2における裏側に配置されており、平面状に形成されている。そして、底部212の裏側には、図4および図5に示すように、圧電振動板30が固定されるとともに、ターミナル40、リードスプリング50およびレジスタ60などの他の電気部品も固定されている。圧電振動板30、リードスプリング50およびレジスタ60それぞれは、ターミナル40を介して電気的に接続されている。
【0018】
圧入部21は、底部212を仕切壁として外ケース3内の空間を奥行方向DR2に2つに仕切っている。そして、圧入部21は、奥行方向DR2における裏側の空間に電気部品を配置し、奥行方向DR2における正面側の空間に後述する共鳴室Sを構成する。
【0019】
具体的には、圧入部21は、奥行方向DR2の寸法が図4および図5に示されるように、外ケース3の奥行方向DR2の寸法の約半分の大きさとされている。このため、外ケース3に圧入部21を嵌め込んだときに、外ケース3内の空間の略半分が中空とされる。そして、この中空の空間内における裏側に、圧電振動板30、ターミナル40、リードスプリング50およびレジスタ60などの電気部品が収容される。すなわち、圧入部21および外ケース3は、圧電振動板30、ターミナル40、リードスプリング50およびレジスタ60などの電気部品を収容する空間を形成する。換言すれば、ケース本体20は、内部に圧電振動板30を収容するケースとして機能する。
【0020】
また、底部212のうち圧電振動板30が配置される部位には、略円形状の貫通孔Hが形成されている。圧電振動板30は、この貫通孔Hからその一部が露出している。
【0021】
外壁213は、図6に示すように、底部212の周囲を囲むように形成されており、外ケース3の内壁面に沿った略四角形状とされている。内壁214は、外壁213よりも内側において、外壁213から離隔して設けられており、貫通孔Hの周囲を全周囲むように形成されている。そして、内壁214は、貫通孔Hを囲んで共鳴室Sを形成している。本実施形態では、内壁214の内壁面の断面が略円形状となっている。これにより、内壁214の内壁面が、貫通孔Hを延長した形状となっている。そして、圧電振動板30は、貫通孔Hを覆うように内壁214の奥行方向DR2における裏側に固定されている。圧電振動板30が固定される内壁214の裏側の詳細については後述する。
【0022】
そして、圧入部21を外ケース3に嵌め込んだときに、内壁214と圧電振動板30と外ケース3とによって共鳴室Sが形成される。換言すれば、共鳴室Sは、内壁214と圧電振動板30と外ケース3とに囲まれる空間によって形成されている。
【0023】
コネクタ部22は、圧入部21における外ケース3に差し込まれる方向とは反対側の端部から突き出すように備えられている。コネクタ部22には、圧入部21が外ケース3に差し込まれる方向とは反対側の端部に接続口221が形成されており、この接続口221からターミナル40の一部が露出している。これにより、ブザー1は、外部との電気的な接続が可能となっている。
【0024】
フランジ部23は、圧入部21とコネクタ部22との間に配置され、圧入部21が嵌め込まれた外ケース3の入口側への水の浸入を抑制しつつ、圧入部21内に水が浸入したときに、その水を外部に排出するためのものである。フランジ部23には、圧入部21が外ケース3に嵌め込まれた際、外ケース3の入口の略全域を塞ぐとともに、外ケース3の入口の一部から圧入部21内に浸入した水を排出させるための排水溝231が形成されている。
【0025】
外ケース3は、有底四角筒状であって、ケース本体20と同様、成形型を用いた樹脂成形にて形成されている。外ケース3は、図4図6に示すように、放音孔31aが形成される放出面部31と、放出面部31に隣接する側面部32と、外ケース3の内側に形成される段差部33および挟持部34とを有する。
【0026】
放音孔31aは、圧電振動板30が発生させる音を出力する孔であって、外ケース3の一側面である放出面部31に形成されている。放音孔31aは、外ケース3に圧入部21が嵌め込めこまれたときに、高さ方向DR1において、圧入部21の貫通孔Hの一部と重なる位置に形成されている。これより、外ケース3は、共鳴室Sでの共鳴現象によって共鳴増幅された音が放音孔31aを通じて出力される構造になっている。
【0027】
また、外ケース3のうち放音孔31aが形成された放出面部31と隣接する2つの側面部32の内壁面には、幅方向DR3の寸法を拡大する段差部33が設けられている。圧入部21は、放音孔31aが形成された放出面部31と隣接する2つの側面部32それぞれに形成された段差部33が形成されたスペースに挿入される。
【0028】
また、外ケース3のうち放出面部31の内壁面には、圧入部21の内壁214の幅方向DR3の位置決めを行うための2つの挟持部34が備えられている。2つの挟持部34それぞれは、放出面部31の内壁面から突出した構造とされ、その先端内側において突起部341が備えられている。2つの挟持部34に形成された突起部341は、挟持部34における幅方向DR3の内側にそれぞれ形成されている。突起部341は、圧入部21が外ケース3に差し込まれる方向と平行に形成された線状突起となっている。
【0029】
これにより、ブザーユニット2は、圧入部21が外ケース3に挿入された際に、2つの挟持部34それぞれの内側に形成された突起部341に対して内壁214が圧入される。すなわち、突起部341は、外ケース3内における内壁214の幅方向DR3の位置決めおよび固定を行う。
【0030】
また、圧入部21における奥行方向DR2の固定は、外ケース3のうち段差部33と、段差部33に対向する放出面部31の接触面31bに基づいて行われている。接触面31bは、放出面部31の内壁面である。ブザーユニット2は、圧入部21が外ケース3の段差部33および接触面31bに沿ってスライドするように挿入されることで、段差部33と接触面31bとの間に圧入される。すなわち、段差部33および接触面31bは、外ケース3内における圧入部21の内壁214の奥行方向DR2の位置決めおよび固定を行う。
【0031】
圧電振動板30は、外部から供給される電源によって振動することで、音を発生させるものである。圧電振動板30は、例えば、薄板の金属で構成された金属板と、表裏面に銀ペーストが焼成された薄板の圧電セラミック板とが積層されて形成される。圧電振動板30は、薄板円盤形状であって、内壁214および外ケース3と共に共鳴室Sを囲むことで、共鳴室Sを形成する。圧電振動板30は、共鳴室Sに対向しない外縁部分がケース本体20の底部212に固定される。圧電振動板30には、リードスプリング50に電気的に接続されており、リードスプリング50から供給される電源によって特定の共振周波数で振動するように底部212に固定される。
【0032】
ターミナル40は、コネクタ部22の接続口221に接続される外部からの電源供給源から電源を受給する部位である。ターミナル40は、リードスプリング50を介して圧電振動板30に接続されており、電源供給源から供給される電源を、リードスプリング50を介して圧電振動板30へ供給する。
【0033】
続いて、内壁214における圧電振動板30が固定される部位の詳細について、図7図10を参照して説明する。図7は、奥行方向DR2における裏側から視た際のケース本体20を簡易に示した図であって、圧電振動板30の図示を省略している。また、図7の断面図の一部を示す図8では、圧電振動板30を図示している。図7および図8に示すように、内壁214は、奥行方向DR2における裏側に圧電振動板30が貼り付けられる部位である貼付部215を有する。貼付部215は、ケース本体20の内壁214における奥行方向DR2の裏側の部位である。そして、圧電振動板30は、この貼付部215に接着剤Gによって貼り付けられて固定される。なお、図8では、接着剤Gをドット柄のハッチングで示している。
【0034】
具体的に、貼付部215は、図7に示すように、貫通孔Hを囲む円筒形状に形成されている。貼付部215は、奥行方向DR2における裏側に、圧電振動板30を貼り付けるための接着剤Gが塗布される貼付座面215aを有する。貼付座面215aは、所定の軸心Cを中心とした円環形状であって、所定の軸心Cを中心に周方向に拡がる略平面状に形成されている。貼付座面215aは、先端部211と略平行となっている。そして、貼付部215は、貼付座面215aから奥行方向DR2の裏側に向かって突出して形成される3つのリブ70を有する。
【0035】
これら3つのリブ70は、貼付部215に圧電振動板30を貼り付ける際に、貼付座面215aと圧電振動板30との間に所定の大きさの隙間を形成した状態で圧電振動板30を支持する支持部である。3つのリブ70は、貼付部215と一体成形によって形成されている。
【0036】
圧電振動板30は、奥行方向DR2における正面側に、接着剤Gによって貼付部215に貼り付けられる貼付面30aを有する。そして、圧電振動板30は、この貼付面30aがこれら3つのリブ70それぞれの奥行方向DR2における裏側の面に支持された状態で接着剤Gによって貼付部215に固定される。
【0037】
これにより、貼付座面215aと貼付面30aとの間には、リブ70によって接着剤Gが充填される空間が形成される。すなわち、貼付座面215aと貼付面30aとの間には、貼付座面215aに塗布された接着剤Gが介在する。
【0038】
貼付座面215aと貼付面30aとの間に介在する接着剤Gは、貼付座面215aに設けられた3つのリブ70によって遮られることなく、所定の軸心Cを中心として周方向の全周に亘って連なっている。このため、3つのリブ70は、所定の軸心Cを中心とした径方向における大きさが貼付座面215aの径方向の大きさより小さくなっている。例えば、3つのリブ70は、所定の軸心Cを中心とした径方向における貼付座面215aの最も外側の位置に設けられていてもよいし、最も内側の位置に設けられていてもよい。
【0039】
また、3つのリブ70は、円環形状の貼付座面215aにおいて、所定の軸心Cを中心とした周方向に沿って所定の間隔を空けて設けられている。ここで、図7に示すように、貼付座面215aを、所定の軸心Cを通過し、所定の軸心Cから径方向に延びる仮想線で第1領域R1と第2領域R2とに分割したとする。3つのリブ70は、例えば、いずれか2つのリブ70が第1領域R1に設けられ、いずれか1つのリブ70が第2領域R2に設けられるように配置される。換言すれば、3つのリブ70は、全てが第1領域R1および第2領域R2のうちのどちらか一方の領域のみに配置されないように設けられる。
【0040】
なお、3つのリブ70は、いずれか2つのリブ70が第2領域R2に設けられ、いずれか1つのリブ70が第1領域R1に設けられるように配置されていてもよい。
【0041】
また、3つのリブ70は、貼付座面215aのうち、所定の軸心Cを中心とした周方向における3つのリブ70それぞれの間隔の差が小さくなる位置に配置されている。すなわち、3つのリブ70は、貼付座面215aのうち、周方向における互いの距離を0に近づける位置に配置されている。本実施形態では、3つのリブ70は、所定の軸心Cを中心に、周方向に120°間隔で配置されており、所定の軸心Cを中心とした周方向における3つのリブ70それぞれの間隔が等しくなっている。
【0042】
このように3つのリブ70のうちのいずれか2つのリブ70を第1領域R1に設け、いずれか1つのリブ70を第2領域R2に設けることで、圧電振動板30が貼付座面215aに対して傾いた状態で貼付部215に貼り付けられることを回避し易くできる。すなわち、貼付部215に圧電振動板30を貼り付ける際に、貼付座面215aと貼付面30aとを平行にし易くできる。そして、貼付座面215aと貼付面30aとの間に充填される接着剤Gの奥行方向DR2における大きさを一定にし易くできる。換言すれば、貼付座面215aと貼付面30aとの間に介在する接着剤Gの厚みを一定にし易くできる。
【0043】
ところで、接着剤Gによって貼付部215に貼り付けられる圧電振動板30は、外部から供給される電源によって特定の共振周波数で振動するように構成されている。そして、圧電振動板30は、貼付座面215aと貼付面30aとの間に介在する接着剤Gの厚みによって、この共振周波数が変化する。これは、圧電振動板30を貼り付ける接着剤Gが弾性を有するためである。そして、圧電振動板30の共振周波数の変化は、ブザー1が発生させる発生音の音圧特性を変化させて圧電振動板30が発生させる音圧が変化する要因となる。すなわち、貼付座面215aと貼付面30aとの間に介在する接着剤Gの厚みに応じて、ブザー1の発生音の音圧は、当該接着剤Gの厚みに対応する大きさとなる。
【0044】
具体的には、図9に示すように、貼付座面215aと貼付面30aとの間に介在する接着剤Gの膜厚が大きくなるほど、ブザー1の発生音の音圧は大きくなる。これに対して、貼付座面215aと貼付面30aとの間に介在する接着剤Gの膜厚が小さくなるほど、ブザー1の発生音の音圧は小さくなる。
【0045】
このため、貼付座面215aと貼付面30aとの間に介在する接着剤Gは、ブザー1から所望の大きさの音圧の音を発生可能な所定の膜厚とされることが望まれる。そして、貼付座面215aと貼付面30aとの間に介在する接着剤Gの膜厚を所定の膜厚となるように安定させることで、ブザー1が発生させる音の音圧を安定させることができる。例えば、ブザー1が発生させる音の音圧を図9に示す予め定められる許容音圧範囲内とする場合、接着剤Gの膜厚は、当該許容音圧範囲に対応する所定の膜厚範囲内とされることが望ましい。
【0046】
このため、貼付座面215aと貼付面30aとの間に接着剤Gを介在させるための3つのリブ70を貼付座面215aに設けることで、貼付座面215aと貼付面30aとの間に介在する接着剤Gの膜厚を所定の膜厚にし易くできる。そしてこれにより、ブザー1が発生させる音の音圧を安定させ易くできる。
【0047】
ただし、上述したように、圧電振動板30が貼り付けられるケース本体20は、成形型を用いた樹脂成形にて形成されている。樹脂成形によって形成されるケース本体20は、例えば、ケース本体20を金属で形成する場合に比較してケース本体20の表面が荒くなり易い。このため、接着剤Gを塗布する貼付座面215aは、ケース本体20を金属等で形成する場合に比較して平面度を小さくすることが難しい。また、貼付座面215aの平面度が大きくなるほど、貼付座面215aを基準とした貼付面30aの平行度が大きくなる虞がある。
【0048】
ここで、例えば、ケース本体20は、加熱した樹脂を冷却して硬化させる熱可塑性樹脂で形成されているとする。この場合、ケース本体20における外壁213は、外壁213よりも内側に設けられる内壁214に比較して熱収縮し易い。また、外壁213によって周囲が囲まれるように形成される内壁214は、外壁213に近い部位ほど外壁213から遠い部位に比較して熱収縮し易い。これは、内壁214が熱収縮する際に、内壁214における外壁213に近い部位ほど、熱収縮するタイミングが他の部位より遅れて引っ張られて収縮するためである。
【0049】
このため、樹脂成形によって形成されるケース本体20のうち、内壁214の奥行方向DR2における裏側の部位である貼付座面215aは、貼付座面215aにおける外壁213に近い部位が外壁213から遠い部位に比較して熱収縮する。具体的には、図10に示すように、貼付座面215aは、貼付座面215aにおける外壁213に近い部位が外壁213から遠い部位に比較して窪んだ形状となる。換言すれば、貼付座面215aは、樹脂の成形による変形量のばらつきを有する形状であって、成形時の熱収縮の差に起因する凹んだ形状を有する。なお、図10は、貼付座面215aの平面度を示すコンター図であって、平面度が低いほど濃いハッチングで示している。そして、図10の破線で囲む部位は、図7の破線で囲む部位を示しており、貼付座面215aにおける他の部位に比較して外壁213に近く、熱収縮し易い部位を示している。
【0050】
これに対して、貼付座面215aは、貼付座面215aにおける外壁213から遠い部位ほど外壁213に近い部位に比較して熱収縮し難くなっている。すなわち、貼付座面215aは、貼付座面215aにおける外壁213から遠い部位が外壁213に近い部位に比較して平面度が高い平面形状となっている。
【0051】
このような樹脂の成形による変形量のばらつきを有する貼付座面215aに、奥行方向DR2の大きさが互いに等しい3つのリブ70を設けて圧電振動板30を支持する場合、貼付座面215aに対して貼付面30aが傾いて固定される虞がある。仮に、3つのリブ70のうちのいずれかが貼付座面215aにおける熱収縮によって凹んだ部位に設けられ、他のリブ70が熱収縮し難く平面度が高い部位に設けられると、貼付座面215aに対して貼付面30aが傾いて固定されることになる。
【0052】
この場合、貼付座面215aと貼付面30aとの間に介在する接着剤Gは、部位に応じて膜厚にばらつきが生じる。すると、貼付座面215aと貼付面30aとの間に介在する接着剤Gの膜厚が、ブザー1が発生させる音の音圧を許容音圧範囲内とするために必要な所定の膜厚範囲内から外れる可能性がある。
【0053】
これに対して、本実施形態のブザー1では、このような樹脂の成形による変形量のばらつきを有する貼付座面215aに対して3つのリブ70を設ける形状であっても、接着剤Gの膜厚を所定の膜厚範囲内で安定させることが可能な構造となっている。そして、接着剤Gの膜厚を所定の膜厚範囲内で安定させることで貼付座面215aを基準とした貼付面30aの平行度を小さくして貼付座面215aと貼付面30aとを平行に近付けることが可能な構造となっている。
【0054】
具体的に、3つのリブ70それぞれは、貼付座面215aのうち、樹脂の成形による変形量が他の部位に比較して小さい部位に設けられている。具体的な樹脂の成形による変形量が他の部位に比較して小さい部位は、リブ70を形成しないパターンのケース本体20を作成し、リブ70が形成されていない状態の貼付座面215aの平面度を測定する実験を予め行うことで検出することができる。
【0055】
または、上述のように、貼付座面215aは、外壁213から遠い部位ほど熱収縮し難くなっており、樹脂の成形による変形量が他の部位に比較して小さい。このため、3つのリブ70は、貼付座面215aのうち、比較的、他の部位に比較して外壁213から遠い部位に設けられていてもよい。
【0056】
そして、3つのリブ70が貼付座面215aにおける樹脂の成形による変形量が小さい部位に設けられることで、貼付座面215aと貼付面30aとの間に介在する接着剤Gの膜厚を、所定の膜厚範囲内とさせ易くなる。ここで、3つのリブ70は、奥行方向DR2における大きさが、接着剤Gの膜厚を所定の膜厚範囲内とさせることが可能な大きさとなっている。そして、3つのリブ70それぞれは、貼付座面215aのうち、貼付座面215aと貼付面30aとの間に介在する接着剤Gの膜厚が、許容音圧範囲内に対応する厚さの範囲内となる部位に設けられている。
【0057】
これにより、貼付座面215aと貼付面30aとの間に介在する接着剤Gの膜厚を、ブザー1が発生させる音の音圧を許容音圧範囲内とするために必要な所定の膜厚範囲内で安定させることができる。そして、ブザー1が発生させる音の音圧を許容音圧範囲内で安定させることができる。
【0058】
さらに、本実施形態のブザー1では、3つのリブ70が所定の軸心Cを中心に、周方向に120°間隔で配置されているところ、配置される部位に応じて貼付座面215aの平面度が異なっている。このため、3つのリブ70は、貼付座面215aと貼付面30aとの間に介在する接着剤Gの膜厚が所定の膜厚範囲内となるように、配置される部位に応じて奥行方向DR2における大きさ(すなわち、接着剤Gの厚み方向の大きさ)が調整されている。具体的に、3つのリブ70は、貼付座面215aにおける樹脂の成形による変形量のばらつきが大きい部位ほど、奥行方向DR2における大きさが大きく形成されている。すなわち、3つのリブ70は、窪んだ部位に配置されるリブ70が貼付座面215aにおける平面度が高い部位に配置されるリブ70に比較して奥行方向DR2における大きさが大きくなっている。
【0059】
これにより、貼付座面215aと貼付面30aとの間に介在する接着剤Gの膜厚をさらに所定の膜厚範囲内で安定させることができる。そして、ブザー1が発生させる音の音圧をさらに許容音圧範囲内で安定させることができる。また、このように3つのリブ70それぞれの高さを調整することにより、ブザー1が発生させる音の音圧を所望の値に調整することができる。
【0060】
以上が、本実施形態のブザー1の基本的な構成である。
【0061】
続いて、ブザー1の製造方法のうち、圧電振動板30を貼付部215に貼り付ける際の製造方法の詳細について、図11図16を参照して、説明する。
【0062】
圧電振動板30を貼付部215に貼り付けるにあたり、まず、例えば、図11に示すように、ケース本体20の位置を固定するための固定冶具80を用意する。ケース本体20は、上述したように、外ケース3に対して嵌め込まれる圧入部21と、外ケース3の外側に配置されるコネクタ部22と、圧入部21およびコネクタ部22の間に設けられるフランジ部23とにより構成されたものである。そして、当該圧入部21は、貼付部215に上述の3つのリブ70が設けられたものである。ただし、図11等では、フランジ部23およびリブ70を省略している。本実施形態の固定冶具80は、ケース本体20のうち、圧入部21の位置を固定する。
【0063】
固定冶具80は、例えば、有底四角形状であって、圧入部21を嵌め込むための嵌合部81を有する。当該嵌合部81は、圧入部21を嵌め込み可能に窪んで形成されている。具体的には、嵌合部81は、圧入部21を嵌め込む方向に直交する断面の形状が圧入部21の外壁213に対応した四角形状であって、圧入部21の外壁213を嵌め込み可能に外壁213の外殻に比較して大きく形成されている。また、嵌合部81は、底側に、圧入部21が正面側から嵌め込まれた際に圧入部21の先端部211が載せられる平面状の底面811を有する。
【0064】
固定冶具80は、図11等にしめすように、例えば、底面811が鉛直方向DR4(すなわち、天地方向)に直交するように配置される。そして、固定冶具80は、底面811が鉛直方向DR4における下方向となり、且つ、底面811が水平となるように配置される。以下、図11等に示すように、鉛直方向DR4の上方向を上側、鉛直方向DR4の下方向を下側とも呼ぶ。なお、固定冶具80は、設置方向が限定されるものでない。
【0065】
固定冶具80の底面811が下側となるように用意された後、ケース本体20の圧入部21を固定冶具80の嵌合部81に嵌めてケース本体20を固定する。ケース本体20は、圧入部21における正面側が下側に配置され、裏側が上側になるように嵌合部81に嵌め込まれる。すなわち、圧入部21は、貼付部215側が上側となるように嵌合部81に嵌め込まれる。そして、ケース本体20は、底面811上に先端部211が載せられる。これにより、貼付部215の貼付座面215aが上側に露出した状態となる。
【0066】
続いて、図12に示すように、貼付座面215aに接着剤Gが塗布される。接着剤Gは、貼付座面215aの周方向全体に亘って塗布される。
【0067】
続いて、図13に示すように、貼付座面215aの上側に、圧電振動板30および貼付座面215aに圧電振動板30を貼り付ける貼付冶具90を用意する。貼付冶具90は、図13に示すように、固定冶具80および圧電振動板30の上側に配置される。貼付冶具90は、不図示の移動機構を有し、当該移動機構によって鉛直方向DR4に沿って上側および下側に移動可能に構成されており、圧電振動板30を下側に押圧することで貼付座面215aに圧電振動板30を貼り付け可能に構成されている。
【0068】
貼付冶具90は、圧電振動板30を押圧する押圧部91と、押圧部91を支持する押圧支持部92を有する。押圧部91および押圧支持部92は、不図示の移動機構によって一体に鉛直方向DR4に沿って上側および下側に移動可能に構成されている。
【0069】
押圧部91は、円盤部911と、接続部912と、可動部913とを有する。これら円盤部911、接続部912および可動部913は、下側から上側に向かってこの順に並んでもうけられており、例えば、鉄などの金属によって一体に形成されている。なお、円盤部911、可動部913および接続部912の部材は鉄に限定されるものでなく、鉄以外の金属で構成されていてもよいし、金属とは異なる部材で構成されていてもよい。
【0070】
円盤部911は、圧電振動板30を押圧する部位であって、軸心を有する薄板円盤形状に形成されている。円盤部911は、圧電振動板30を、固定冶具80に固定されたケース本体20に向けて押圧する押圧面911aを有する。円盤部911は、圧電振動板30を押圧しない状態では、軸心が鉛直方向DR4に沿う方向に配置されることで、押圧面911aが鉛直方向DR4に直交するように配置される。また、円盤部911は、押圧面911aの外径が圧電振動板30の外形より小さくなっている。円盤部911は、接続部912を介して可動部913に接続されている。
【0071】
接続部912は、円盤部911と可動部913とを接続する部位であって、例えば、棒状に形成されている。接続部912は、上側に可動部913が接続されており、下側に円盤部911が接続されている。
【0072】
可動部913は、貼付冶具90が不図示の移動機構によって鉛直方向DR4に沿って移動する際の移動運動の一部を回転運動に変換可能とする運動変換部である。可動部913は、球状であって、押圧支持部92に回転可能に嵌め込まれている。これにより、押圧部91は、押圧支持部92に連結される。
【0073】
押圧支持部92は、押圧部91を回転可能に支持する部位であって、可動部913を嵌め込むための中空状の空洞部921を有する。空洞部921は、可動部913の外形より僅かに大きな球状に形成されており、可動部913が嵌め込まれた際に、可動部913を回転可能に支持している。そしてこれにより、押圧部91および押圧支持部92が連結される部位がボールジョイントとして構成される。
【0074】
このような構成される貼付冶具90によって、図14に示すように、圧電振動板30を貼付座面215aに貼り付ける。具体的に、貼付冶具90は、鉛直方向DR4に沿って上側から下側に向かって移動することで、圧電振動板30を鉛直方向DR4の上側から下側に向かって貼付座面215aに所定の押圧力で押圧することで、圧電振動板30を貼付座面215aに貼り付ける。
【0075】
ここで、上述したように、先端部211および貼付座面215aは、互いに略平行となっている。このため、底面811が水平となるように配置された固定冶具80にケース本体20が配置されると、基本的に、貼付座面215aの姿勢は、水平となる。この場合、貼付冶具90が圧電振動板30を鉛直方向DR4の上側から下側に向かって所定の圧力で押圧することで、圧電振動板30の姿勢を水平に保った状態のまま、鉛直方向DR4の下側に押圧することができる。これにより、貼付座面215aと貼付面30aとを平行に近付けることができる。そして、貼付座面215aと貼付面30aとの間に介在する接着剤Gの膜厚が安定して所定の膜厚範囲内となるように圧電振動板30を貼付座面215aに貼り付けることができ、ブザー1が発生させる音の音圧を許容音圧範囲内で安定させることができる。
【0076】
しかしながら、図15に示すように、固定冶具80にケース本体20を設置する際、底面811と先端部211との間に異物Fが混入する場合がある。この場合、ケース本体20は、鉛直方向DR4に対して傾いて配置される。例えば、図15に示すように、ケース本体20は、鉛直方向DR4に対してθα°傾いて配置されたとする。すると、先端部211に略平行である貼付座面215aも、鉛直方向DR4に対してθα°傾いて配置される。この場合、貼付冶具90が圧電振動板30を貼付座面215aに貼り付ける際に、図16に示すように、圧電振動板30が貼付座面215aの傾きに従って鉛直方向DR4に対してθα°傾いて配置される。
【0077】
ここで、本実施形態の固定冶具80は、可動部913が回転可能に支持されている。このため、圧電振動板30が鉛直方向DR4に対して傾いて配置された場合、押圧部91の押圧面911aが圧電振動板30を押圧する際、可動部913は、可動部913の中心を基準に水平に対して回転することができる。例えば、図16に示すように、圧電振動板30が貼付座面215aの傾きに従って鉛直方向DR4に対してθα°傾いて配置される場合、可動部913は、可動部913の中心を基準に圧電振動板30の傾きに従ってθα°だけ回転する。そして、円盤部911および接続部912が可動部913と一体に圧電振動板30の傾きに従ってθα°だけ回転する。
【0078】
これにより、押圧部91が鉛直方向DR4の上側から下側に向かって圧電振動板30を所定の圧力で押圧する際に、円盤部911が鉛直方向DR4に対してθα°傾いた方向に圧電振動板30を押圧する。すなわち、ケース本体20が固定冶具80に傾いて配置された場合であっても、押圧面911aが圧電振動板30を押圧する方向を、ケース本体20の姿勢に従って傾かせることができる。
【0079】
これによれば、ケース本体20が固定冶具80に傾いて配置された場合であっても、圧電振動板30を3つのリブ70それぞれに略同様の荷重で押し付けることができる。このため、貼付座面215aと貼付面30aとを平行に近付けて貼付座面215aと貼付面30aとの間に介在する接着剤Gの膜厚が安定して所定の膜厚範囲内となるように圧電振動板30を貼付座面215aに貼り付けることができる。そして、ブザー1が発生させる音の音圧を許容音圧範囲内で安定させることができる。
【0080】
以上の如く、本実施形態のブザー1は、樹脂で成形されたケース本体20と、ケース本体20内に収容され、振動して音を発生する圧電振動板30と、ケース本体20に圧電振動板30を貼り付ける接着剤Gと、を備える。ケース本体20は、接着剤Gが塗布される貼付座面215aおよび貼付座面215aから突出して形成され、圧電振動板30を支持する3つのリブ70を有する。
【0081】
これによれば、貼付座面215aと貼付面30aとの間に介在する接着剤Gの膜厚を安定させることができる。このため、ブザー1の発生音の大きさのばらつきを抑制することができる。
【0082】
また、本実施形態のブザー1の製造方法は、振動して音を発生する圧電振動板30を用意することと、圧電振動板30を貼り付ける接着剤Gを用意することと、樹脂で成形され、接着剤Gが塗布される貼付座面215aおよび貼付座面215aから突出して形成され、圧電振動板30を支持する3つのリブ70を有するケース本体20を用意することと、ケース本体20を固定する固定冶具80を用意することと、貼付座面215aに圧電振動板30を貼り付ける貼付冶具90を用意することと、を含む。貼付冶具90を用意することでは、貼付冶具90として、圧電振動板30を固定冶具80に固定された状態のケース本体20に向けて押圧する押圧面911aを含む押圧部91と、押圧面911aが圧電振動板30を押圧する方向を、ケース本体20が固定冶具80に固定された姿勢に従って傾かせる可動部913とを有するものを用意する。
【0083】
これによれば、ケース本体20が固定冶具80に傾いて配置された場合であっても、圧電振動板30を3つのリブ70にそれぞれに略同様の荷重で押し付けることができる。このため、貼付座面215aと貼付面30aとを平行に近付けて貼付座面215aと貼付面30aとの間に介在する接着剤Gの膜厚を安定させて圧電振動板30を貼付座面215aに貼り付けることができる。したがって、ブザー1の発生音の大きさのばらつきを抑制することができる。
【0084】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0085】
(1)上記実施形態では、ケース本体20は、樹脂で構成されている。3つのリブ70は、貼付座面215aのうち、樹脂による変形量が他の部位に比較して小さい部位に設けられている。
【0086】
これによれば、貼付座面215aと貼付面30aとの間に介在する接着剤Gの膜厚をさらに安定させることができる。このため、ブザー1の発生音の大きさのばらつきをさらに抑制することができる。
【0087】
(2)上記実施形態では、圧電振動板30は、3つのリブ70に支持される貼付面30aを有する。接着剤Gは、貼付面30aと貼付座面215aとの間に設けられている。3つリブ70は、貼付座面215aのうち、貼付面30aと貼付座面215aとの間の接着剤Gの厚みに対応するブザー1の発生音の音圧が予め定められる許容音圧範囲内となる部位に設けられている。
【0088】
これによれば、貼付座面215aと貼付面30aとの間に介在する接着剤Gの膜厚を、ブザー1が発生させる音の音圧を許容音圧範囲内とするために必要な所定の膜厚範囲内で安定させることができる。そして、ブザー1が発生させる音の音圧を許容音圧範囲内で安定させることができる。
【0089】
(3)上記実施形態では、3つリブ70それぞれの接着剤Gの厚み方向の大きさが、貼付面30aと貼付座面215aとの間の接着剤Gの厚みが許容音圧範囲に対応する厚さの範囲内となる大きさに調整されている。
【0090】
これによれば、貼付座面215aと貼付面30aとの間に介在する接着剤Gの膜厚を所定の膜厚範囲内でさらに安定させることができる。そして、ブザー1が発生させる音の音圧を許容音圧範囲内でさらに安定させることができる。
【0091】
(4)上記実施形態では、貼付座面215aは、所定の軸心Cを中心とした円環形状である。3つリブ70は、所定の軸心Cを中心とした周方向に沿って設けられており、貼付座面215aのうち、3つリブ70それぞれの周方向における間隔が等しくなる位置に配置されている。
【0092】
これによれば、貼付部215に圧電振動板30を貼り付ける際に、貼付座面215aと貼付面30aとを平行にし易くできる。そして、貼付座面215aと貼付面30aとの間に介在する接着剤Gの厚みを一定にし易くできる。このため、ブザー1が発生させる音の音圧を許容音圧範囲内でさらに安定させることができる。
【0093】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0094】
上述の実施形態では、3つのリブ70が、貼付座面215aのうち、樹脂による変形量が他の部位に比較して小さい部位に設けられている例について説明したが、これに限定されない。
【0095】
例えば、3つのリブ70が、貼付座面215aのうち、樹脂による変形量が他の部位に比較して大きい部位に設けられている構成であってもよい。この場合、3つのリブ70それぞれの高さを適宜調整することで、貼付座面215aと貼付面30aとの間に介在する接着剤Gの膜厚を安定させてもよい。
【0096】
上述の実施形態では、3つのリブ70それぞれの接着剤Gの厚み方向の大きさが、貼付面30aと貼付座面215aとの間の接着剤Gの厚みが許容音圧範囲に対応する厚さの範囲内となる大きさに調整されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、3つのリブ70それぞれの接着剤Gの厚み方向の大きさは、等しく形成されていてもよい。
【0097】
上述の実施形態では、3つのリブ70が、所定の軸心Cを中心に、周方向に120°間隔で配置されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、3つのリブ70が、所定の軸心Cを中心に、周方向に120°とは異なる角度の間隔で等間隔とはならない位置に配置されていてもよい。この場合、3つのリブ70は、第1領域R1および第2領域R2に分かれて設けられる構成であれば、樹脂による変形量が他の部位に比較して小さい部位に優先的に設けられていてもよい。
【0098】
上述の実施形態では、貼付座面215aにリブ70が3つ設けられている例について説明したが、これに限定されない。例えば、リブ70は、貼付座面215aに4つ以上設けられている構成であってもよい。
【0099】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0100】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0101】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【符号の説明】
【0102】
20 ケース
30 圧電振動板
70 支持部
215a 貼付座面
G 接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16