(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135038
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】樹脂組成物、半導体装置、ヒートシンク付回路基板
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20240927BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240927BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240927BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240927BHJP
C08K 3/28 20060101ALI20240927BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20240927BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240927BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240927BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20240927BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20240927BHJP
H01L 23/373 20060101ALI20240927BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/013
C08K3/36
C08K3/22
C08K3/28
C08G59/40
H05K1/03 610R
H05K1/03 610L
H05K1/02 F
H05K3/00 W
H05K3/28 G
H05K3/00 J
H01L23/36 M
H01L23/36 D
H01L23/36 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045530
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】牧原 康二
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
5E314
5E338
5F136
【Fターム(参考)】
4J002CD04W
4J002CD04X
4J002CD07W
4J002CD07X
4J002DE146
4J002DF006
4J002DJ016
4J002FD016
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4J002FD130
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4J002FD160
4J002GQ00
4J002GQ05
4J002HA09
4J036AA02
4J036AA05
4J036AC01
4J036AC02
4J036AE05
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4J036DA01
4J036DB06
4J036FB07
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4J036HA12
4J036JA07
4J036JA08
4J036KA05
5E314AA32
5E314AA41
5E314BB02
5E314BB11
5E314CC17
5E314DD07
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5E314GG24
5E338AA01
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5E338EE32
5F136BC05
5F136DA08
5F136FA02
5F136FA03
(57)【要約】
【課題】研磨性を向上できるプリモールド成形用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】プリモールド成形用樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤(B)、および無機充填材(C)を含み、前記無機充填材(C)の含有量が、当該樹脂組成物全量に対して50質量%以上、75質量%以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、および無機充填材(C)を含む、樹脂組成物であって、
前記無機充填材(C)の含有量が、当該樹脂組成物全量に対して50質量%以上、75質量%以下である、プリモールド成形用樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂組成物であって、
前記無機充填材(C)のレーザー回折散乱法による体積基準の積算分率における累積90%に相当する粒径をD90としたとき、D90が5.0~80μmである、樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂組成物であって、
前記無機充填材(C)が、溶融シリカ、球状シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素および窒化アルミの中から選ばれる1種または2種以上である、樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の樹脂組成物であって、
以下の手順で測定される曲げ弾性率が、12000MPa以下である、樹脂組成物。
手順;前記樹脂組成物を、175℃、9.8MPaで硬化させて得られた試験片についてJIS K-6911に準じて25℃での曲げ強度を測定する。
【請求項5】
請求項1または2に記載の樹脂組成物であって、
前記硬化剤(B)の活性水酸基当量に対する前記エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量の比である当量比が、1.4以上2.0以下である、樹脂組成物。
【請求項6】
ヒートシンクの一方の面上に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられた回路パターンと、
前記回路パターン間に埋設された第1封止体と、
を備える、ヒートシンク付回路基板であって、
前記第1封止体は、請求項1または2に記載の樹脂組成物を用いてプリモールド成形されたものである、ヒートシンク付回路基板。
【請求項7】
請求項6に記載のヒートシンク付回路基板において、
前記回路パターンの上面と、前記第1封止体の上面とは略面一である、ヒートシンク付回路基板。
【請求項8】
請求項6に記載のヒートシンク付回路基板において、
前記第1封止体の上面の表面粗さRaが0.7μm以下である、ヒートシンク付回路基板。
【請求項9】
請求項6に記載のヒートシンク付回路基板と、
前記ヒートシンク付回路基板上に載置された半導体チップと、
前記半導体チップを覆う第2封止体と、
を備え、
前記第1封止体と前記第2封止体との間に界面がある、半導体装置。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置であって、
前記第1封止体と、前記第2封止体とは、異なる樹脂材料により形成されている、半導体装置。
【請求項11】
ヒートシンクの一方の面上に絶縁層を積層する工程と、
前記絶縁層上に、独立した複数の回路パターンを備えるリードフレームを配置する工程と、
請求項1または2に記載の樹脂組成物を、前記回路パターン間に埋設する工程と、
前記樹脂組成物の一部および前記凸状ブリッジを削除して前記回路パターンの上面を露出させる工程と、
を含む、ヒートシンク付回路基板の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載のヒートシンク付回路基板の製造方法であって、
前記回路パターンの上面を露出させる前記工程ののち、
露出した前記回路パターンに対して酸化防止剤を塗布する工程をさらに有する、ヒートシンク付回路基板の製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載のヒートシンク付回路基板の製造方法であって、
前記リードフレームは、隣接する前記回路パターン間を跨ぐように設けられた凸状ブリッジを有する、ヒートシンク付回路基板の製造方法。
【請求項14】
請求項11に記載のヒートシンク付回路基板の製造方法であって、
前記回路パターンの上面を露出させる前記工程は、研磨または切削により行われる、ヒートシンク付回路基板の製造方法。
【請求項15】
請求項11に記載のヒートシンク付回路基板の製造方法によって得られたヒートシンク付回路基板を用いた半導体装置の製造方法であって、
露出している前記回路パターンの上面に半導体チップを実装する工程と、
前記半導体チップを第2の樹脂組成物により封止する工程と、
を含む、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、半導体装置、ヒートシンク付回路基板に関する。より詳細には、樹脂組成物、半導体装置およびその製造方法、ヒートシンク付回路基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体素子を金属回路基板に設けたパワーモジュールの市場がますます拡大している。かかるパワーモジュールの電気配線として、高密度化に対応すべく独立した複数のパターンを有するリードフレームを用いることが知られている。
【0003】
特許文献1には、互いに独立した複数のパターンと、隣接するパターン間の間隙部に充填され該隣接するパターン相互を接続する樹脂接合材とを備えるリードフレームが開示されている。特許文献1には、樹脂接合材を充填し硬化させた後、リードフレームの上面に樹脂接合材が残存した場合は、パフ研磨などの公知の手段で除去することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、特許文献1に開示されるようなプリモールド用樹脂を用いた場合において、プリモールド用樹脂を充填・硬化した後、不要な樹脂を研磨除去する際に、研磨性が低下したり、研磨器具の破損等が生じるといった課題に着目した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、かかる課題を解決する点から鋭意検討を行った結果、プリモールド成形に用いられる樹脂組成物に用いられる樹脂成分および無機充填材の配合を制御することが有効であることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明によれば、以下のプリモールド成形用樹脂組成物、半導体装置およびその製造方法、ヒートシンク付回路基板およびその製造方法が提供される。
【0008】
[1] エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、および無機充填材(C)を含む、樹脂組成物であって、
前記無機充填材(C)の含有量が、当該樹脂組成物全量に対して50質量%以上、75質量%以下である、プリモールド成形用樹脂組成物。
[2] [1]に記載の樹脂組成物であって、
前記無機充填材(C)のレーザー回折散乱法による体積基準の積算分率における累積90%に相当する粒径をD90としたとき、D90が5.0~80μmである、樹脂組成物。
[3] [1]または[2]に記載の樹脂組成物であって、
前記無機充填材(C)が、溶融シリカ、球状シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素および窒化アルミの中から選ばれる1種または2種以上である、樹脂組成物。
[4] [1]乃至[3]いずれか一つに記載の樹脂組成物であって、
以下の手順で測定される曲げ弾性率が、12000MPa以下である、樹脂組成物。
手順;前記樹脂組成物を、175℃、9.8MPaで硬化させて得られた試験片についてJIS K-6911に準じて25℃での曲げ強度を測定する。
[5] [1]乃至[4]いずれか一つに記載の樹脂組成物であって、
前記硬化剤(B)の活性水酸基当量に対する前記エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量の比である当量比が、1.4以上2.0以下である、樹脂組成物。
[6] ヒートシンクの一方の面上に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられた回路パターンと、
前記回路パターン間に埋設された第1封止体と、
を備える、ヒートシンク付回路基板であって、
前記第1封止体は、[1]乃至[5]いずれか一つに記載の樹脂組成物を用いてプリモールド成形されたものである、ヒートシンク付回路基板。
[7] [6]に記載のヒートシンク付回路基板において、
前記回路パターンの上面と、前記第1封止体の上面とは略面一である、ヒートシンク付回路基板。
[8] [6]または[7]に記載のヒートシンク付回路基板において、
前記第1封止体の上面の表面粗さRaが0.7μm以下である、ヒートシンク付回路基板。
[9] [6]乃至[8]いずれか一つに記載のヒートシンク付回路基板と、
前記ヒートシンク付回路基板上に載置された半導体チップと、
前記半導体チップを覆う第2封止体と、
を備え、
前記第1封止体と前記第2封止体との間に界面がある、半導体装置。
[10] [9]に記載の半導体装置であって、
前記第1封止体と、前記第2封止体とは、異なる樹脂材料により形成されている、半導体装置。
[11] ヒートシンクの一方の面上に絶縁層を積層する工程と、
前記絶縁層上に、独立した複数の回路パターンを備えるリードフレームを配置する工程と、
[1]乃至[5]いずれか一つに記載の樹脂組成物を、前記回路パターン間に埋設する工程と、
前記樹脂組成物の一部および前記凸状ブリッジを削除して前記回路パターンの上面を露出させる工程と、
を含む、ヒートシンク付回路基板の製造方法。
[12] [11]に記載のヒートシンク付回路基板の製造方法であって、
前記回路パターンの上面を露出させる前記工程ののち、
露出した前記回路パターンに対して酸化防止剤を塗布する工程をさらに有する、ヒートシンク付回路基板の製造方法。
[13] [11]または[12]に記載のヒートシンク付回路基板の製造方法であって、
前記リードフレームは、隣接する前記回路パターン間を跨ぐように設けられた凸状ブリッジを有する、ヒートシンク付回路基板の製造方法。
[14] [11]乃至[13]いずれか一つに記載のヒートシンク付回路基板の製造方法であって、
前記回路パターンの上面を露出させる前記工程は、研磨または切削により行われる、ヒートシンク付回路基板の製造方法。
[15] [11]乃至[14]いずれか一つに記載のヒートシンク付回路基板の製造方法によって得られたヒートシンク付回路基板を用いた半導体装置の製造方法であって、
露出している前記回路パターンの上面に半導体チップを実装する工程と、
前記半導体チップを第2の樹脂組成物により封止する工程と、
を含む、半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、研磨性を向上できるプリモールド成形用樹脂組成物、およびこれを用いた半導体装置およびその製造方法、ヒートシンク付回路基板およびその製造方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係るヒートシンク付回路基板の製造方法の一過程を模式的に示した断面図である。
【
図2】実施の形態に係るヒートシンク付回路基板に用いられるリードフレームを模式的に示した断面図である。
【
図3】実施の形態に係るヒートシンク付回路基板を用いた半導体装置を模式的に示した断面図である。
【
図4】実施の形態に係るヒートシンク付回路基板の変形例を模式的に示した断面図である。
【
図5】実施の形態に係るヒートシンク付回路基板を用いた半導体装置の変形例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。なお、図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応するものではない。
【0012】
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0013】
<プリモールド成形用樹脂組成物>
本実施形態のプリモールド成形用樹脂組成物(以下「樹脂組成物(P1)」とも表記する)エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、および無機充填材(C)を含み、当該無機充填材(C)の含有量が、樹脂組成物(P1)全量に対して50質量%以上、75質量%以下である。
これにより、本実施形態の樹脂組成物(P1)を用いて充填・硬化した後の研磨を良好に行うことができる。すなわち、プリモールド用樹脂を充填・硬化した後、不要な樹脂を研磨除去する際に、研磨力が低下したり、研磨器具の破損等が生じることを低減できる。また、研磨面の凹凸を低減しより平坦化できることで、オーバーモールド成形時に、プリモールド成型面との界面に隙間が生じることを抑制でき、密着性、充填性を良好にできる。
【0014】
[用途]
プリモールド成形用とは、本実施形態の樹脂組成物(P1)を用いて封止成形物を得たあと、さらに他の樹脂組成物を用いてさらに封止成形(オーバーモールド)されることで最終品を得るための用途に供されることを意図する。プリモールド成形体の研磨性を向上することで、最終品の生産性を向上できるととともに、プリモールド成形体とオーバーモールド成形体との密着性を向上できる。
例えば、半導体装置を得るために、リードフレームの回路間を樹脂組成物(P1)により充填し、当該リードフレームを他の樹脂組成物を用いてさらに封止形成することで半導体装置を得る等が挙げられる。本実施形態の樹脂組成物(P1)は、後述するように、ヒートシンク付回路基板、およびこれを用いた半導体装置を得るためのプリモールド成形用に供することが好適である。
【0015】
[曲げ弾性率]
樹脂組成物(P1)は、以下の手順で測定される曲げ弾性率が、12000MPa以下であることが好ましく、10000MPa以下であることがより好ましい。当該曲げ弾性率を、上記上限値以下とすることにより、研磨性を向上し、平坦性を良好にしやすくなる。
【0016】
手順;前記樹脂組成物(P1)を、175℃、9.8MPaで硬化させて得られた試験片についてJIS K-6911に準じて25℃での曲げ強度を測定する。
【0017】
一方、曲げ弾性率の下限値は特に限定されないが、良好な成形性を保持する点から、500MPa以上とすることが好ましい。
【0018】
[損失正接(tanδ)]
また、樹脂組成物(P1)を175℃、9.8MPaで硬化させて得られた試験片について、昇温速度5℃/min、周波数10Hz、荷重800gの条件で、30~350℃の範囲での動的粘弾性測定により求められる、損失正接(tanδ)の極大値が、好ましくは0.30以上であり、より好ましくは、0.40以上であり、さらに好ましくは0.50以上である。
すなわち、樹脂組成物(P1)の硬化物は、力学的エネルギーの多くを熱エネルギーに変換できエネルギーを多く吸収できるため、研磨時の負荷に対して適度な硬さとなり、研磨性を向上し、平坦性を良好にしやすくなる。
【0019】
以下、本実施形態の樹脂組成物(P1)を構成する成分について説明する。
【0020】
[エポキシ樹脂(A)]
エポキシ樹脂(A)としては、封止用のエポキシ樹脂組成物に使用される公知のエポキシ樹脂を用いることができる。
【0021】
エポキシ樹脂(A)としては、具体的には、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格含有ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、アルコキシナフタレン骨格含有フェノールアラルキルエポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の3官能型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、テルペン変性フェノール型エポキシ樹脂等の変性フェノール型エポキシ樹脂;トリアジン核含有エポキシ樹脂等の複素環含有エポキシ樹脂が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
エポキシ樹脂(A)の含有量は、樹脂組成物(P1)全量に対し、良好な流動性、充填性、密着性を得る点から、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、ことさらに好ましくは15質量%以上である。
一方、エポキシ樹脂(A)の含有量は、樹脂組成物(P1)全量に対し、高温信頼性や耐リフロー性を向上させる観点から、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0023】
全エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量量は、好ましくは100g/eq以上であり、より好ましくは180g/eq以上であり、さらに好ましくは200g/eq以上である。
一方、全エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量量は、好ましくは500g/eq以下であり、より好ましくは480g/eq以下であり、さらに好ましくは450g/eq以下である。
【0024】
[硬化剤(B)]
硬化剤(B)としては、封止用のエポキシ樹脂組成物に使用される公知の硬化剤を用いることができる。
硬化剤(B)としては、具体的には、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤(アミノ基を有する硬化剤)などを挙げることができる。
【0025】
上記のフェノール系硬化剤としては、例えばフェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類と、ホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;トリフェニルメタン型フェノール樹脂やビフェニレン骨格含有多官能フェノール樹脂等の多官能フェノール樹脂;フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるビフェニレン骨格含有多官能フェノール樹脂等のフェノールアラルキル型フェノール樹脂;ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂が挙げられる。
【0026】
上記のアミン系硬化剤としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の炭素数2~20の直鎖脂肪族ジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、パラキシレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジシクロヘキサン、ビス(4-アミノフェニル)フェニルメタン、1,5-ジアミノナフタレン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、ジシアノジアミド等を挙げることができる。
【0027】
その他の硬化剤(B)としては、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物等;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類等を挙げることができる。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
中でも、良好な研磨性を保持しつつ、密着性および高温信頼性を得る点から、多官能型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂のうち1種または2種を含むことが好ましく、トリフェニルメタン型フェノール樹脂またはビフェニレン骨格含有多官能フェノール樹脂を含むことがさらに好ましい。
【0029】
硬化剤(B)の含有量は、樹脂組成物(P1)全量に対し、良好な研磨性を保持しつつ、適度な流動性、充填性、密着性を得る点から、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上である。
一方、硬化剤(B)の含有量は、樹脂組成物(P1)全量に対し、高温信頼性や耐リフロー性を向上させる観点から、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0030】
硬化剤(B)の活性水酸基当量に対するエポキシ樹脂(A)のエポキシ当量の比である当量比は、好ましくは0.8~2.0であり、より好ましくは0.9~1.8であり、さらに好ましくは1.0~1.5である。
【0031】
[無機充填材(C)]
無機充填材(C)は、樹脂組成物(P1)の硬化に伴う強度の低下を低減したり、研磨性を制御するために用いられる。
【0032】
無機充填材(C)としては、たとえば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラスなどのケイ酸塩;酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、シリカなどの酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素などの窒化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムなどのチタン酸塩などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
なかでも、無機充填材(C)は溶融シリカ、球状シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素および窒化アルミの中から選ばれる1種または2種以上であることが好ましく、溶融シリカ、および球状シリカであることがより好ましい。
【0034】
(無機充填材(C)の粒径)
無機充填材(C)のレーザー回折散乱法による体積基準の積算分率の累積90%に相当する粒径をD90としたとき、D90が5.0~80μmであることが好ましく、10~70μmであることがより好ましく、30~60μmであることがさらに好ましい。
無機充填材(C)の粒度分布の中でも当該D90を制御することで、無機充填材(C)なかでも粒径の大きいものによる研磨性低下への影響を効果的に抑制できる。
【0035】
また、無機充填材(C)のレーザー回折散乱法による体積基準の積算分率における累積50%に相当する粒径をD50としたとき、D50が0.8~40μmであることが好ましく、5.0~35μmであることがより好ましく、10~30μmであることがさらに好ましい。
【0036】
また、無機充填材(C)のレーザー回折散乱法による体積基準の粒度分布において、2以上のピークを有していてもよい。言い換えると、異なる粒径の無機充填材(C)を2種以上含むことが好ましい。これにより、粒径が大きい粒子の間に、粒径が小さい粒子が入り込み、充填性を向上しやすくなる。
【0037】
無機充填材(C)の含有量は、樹脂組成物(P1)全量に対し、50質量%以上であり、好ましくは55質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは65質量%以上である。無機充填材(C)の含有量を上記下限値以上とすることにより、研磨時に樹脂組成物(P1)部分が周囲(例えば銅層)よりも低くなってしまうことを抑制することで、後のオーバーモールド成形時にプリモールド成形面との界面に隙間が生じることを抑制し、密着性を良好にできる。
一方、無機充填材(C)の含有量は、樹脂組成物(P1)全量に対し、75質量%以下であり、好ましくは74質量%以下であり、より好ましくは73質量%以下であり、さらに好ましくは72質量%以下である。無機充填材(C)の含有量を上記上限値以下とすることにより、いわゆるバイトダメージを低減し、研磨性を向上しやすくなる。
【0038】
本発明の樹脂組成物(P1)は、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)および無機充填材(C)に加え、硬化促進剤、カップリング剤等を含んでもよい。
【0039】
[硬化促進剤]
硬化促進剤は、エポキシ樹脂(A)のエポキシ基と硬化剤(B)の反応基との反応を促進するために用いられる。
【0040】
上記の硬化促進剤としては、たとえば、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、または、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、イミダゾール等のアミジン系化合物;ベンジルジメチルアミン等の3級アミン、アミジニウム塩、またはアンモニウム塩等の窒素原子含有化合物;フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノール、2,3-ジヒドロキシナフタレン等のフェノール化合物等が挙げられる。また、上記有機ホスフィンとしては、トリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・4,4’-スルフォニルジフェノラート、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン、1,2-ビス-(ジフェニルホスフィノ)エタン等が挙げられる。
【0041】
硬化促進剤を用いる場合、その含有量は、樹脂組成物(P1)全量に対して、0.01~2質量%であることが好ましく、0.1~1.0質量%であることがより好ましい。
【0042】
[カップリング剤]
カップリング剤は、エポキシ樹脂(A)と無機充填材(C)との密着性を向上させる等の点から用いられる。
【0043】
上記のカップリング剤としては、たとえばエポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、およびビニルシラン等の各種シラン系化合物;チタン系化合物;アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤を用いることができる。
【0044】
上記のアミノシランとしては、特に限定されないが、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニルγ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-6-(アミノヘキシル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(3-(トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ベンゼンジメタナミン等が挙げられる。
【0045】
カップリング剤の含有量は、無機充填材(C)100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.05~5質量部であることがより好ましい。
【0046】
[その他]
さらに、本実施形態の樹脂組成物(P1)は、上記成分の他に、たとえば、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、およびポリウレタン等熱硬化性樹脂(ただし、エポキシ樹脂(A)は除く);カーボンブラック等の着色剤;天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸もしくはその金属塩類、パラフィン、酸化ポリエチレン等の離型剤;ハイドロタルサイト等のイオン捕捉剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力剤;水酸化アルミニウム等の難燃剤;酸化防止剤等の各種添加剤を含むことができる。
【0047】
[樹脂組成物(P1)の形状]
本実施形態の樹脂組成物(P1)の形状は、樹脂組成物(P1)の成形方法等に応じて選択することができ、たとえばタブレット状、粉末状、顆粒状等の粒子状;シート状が挙げられる。
【0048】
[樹脂組成物(P1)の製造方法]
本実施形態の樹脂組成物(P1)は、公知の方法により得られるものであり、例えば、上述した成分を、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、または自転公転式分散方式などの各種混合機を用いて溶剤中に溶解、混合、撹拌することによりワニス状の組成物として調製することができる。
【0049】
以下、本実施形態の樹脂組成物(P1)をヒートシンク付き回路基板に用いた例を挙げて説明するが、本実施形態の樹脂組成物(P1)の用途はこれに限られない。
【0050】
<ヒートシンク付回路基板>
本実施形態に係るヒートシンク付回路基板50は、
図1(c)に示されるように、ヒートシンク10の一方の面上に設けられた絶縁層20と、絶縁層20上に設けられた回路パターン30と、回路パターン30間に埋設された第1の封止体40と、を備える。また回路パターン30の上面と第1の封止体40の上面が略面一である。
本実施形態のヒートシンク付回路基板50は、その後、後述の半導体装置100に用いることができる。
【0051】
以下、ヒートシンク付回路基板50の各構成の詳細を説明する。
【0052】
[第1の封止体]
第1の封止体40は、回路パターン30を構成する回路間を充填するために用いられる。
第1の封止体40としては、上述のプリモールド成形用樹脂組成物(P1)から形成される。換言すると、第1の封止体40は、回路パターン30の回路間に上述の樹脂組成物(P1)を充填したのち、回路パターン30の上面と第1の封止体40の上面が略面一となるように、不要な樹脂組成物(P1)を研磨除去されて得られたものである。回路パターン30の上面と第1の封止体40の上面を略面一とすることで、のちのオーバーモールドの際、第1の封止体40の上面に隙間、ボイドが生じることを抑制しやすくなる。
【0053】
第1の封止体40は、Bステージ状態、Cステージ状態のいずれであってもよく、トランスファー、コンプレッション等の成形後は半硬化であることが好ましい。
【0054】
第1封止体40の上面の表面粗さRaは、好ましくは0.7μm以下であり、より好ましくは0.5μm以下であり、さらに好ましくは0.3μm以下である。これにより、オーバーモールド樹脂と界面に隙間が生じることを抑制できる。
一方、第1封止体40の上面の表面粗さRaの下限値は特に限定されないが、良好な生産性を保持する点から、例えば、0.0001μm以上としてもよい。
【0055】
第1の封止体40の表面には、後述の素子搭載部の上面と回路の上面が露出している。
【0056】
[回路パターン]
回路パターン30は、後述するリードフレーム35の一部をエッチング等して形成された回路であり、半導体チップを載置する素子搭載部を含む。
回路パターン30は、絶縁層20を介してヒートシンク10上に形成される。本実施形態において、ヒートシンク付回路基板50はそれぞれ独立した複数の回路パターン30を備える。
【0057】
また、平面視における回路パターン30の配置は適宜設定されるが、回路パターン30の最外周端縁に囲まれる領域は、絶縁層20に覆われる領域に内包されていることが好ましい。すなわち、すべての回路パターン30は、絶縁層20の領域内、すなわち絶縁層20上に配置されることが好ましい。これにより、回路パターン30と絶縁層20とをより確実に密着できる。
【0058】
[絶縁層]
絶縁層20は、回路パターン30とヒートシンク10との間に配置されることにより、回路パターン30に通電される電気がヒートシンク10側に漏れないよう絶縁するために用いられる。また絶縁層20は、良好な熱伝導性を有し、放熱性に優れる。
【0059】
絶縁層20の厚み方向の熱伝導率(25℃)は、本実施形態の樹脂組成物(P1)の硬化体の熱伝導率(25℃)よりも高いことが好ましく、具体的には、7.5W/m・K以上であることが好ましい。
【0060】
また、絶縁層20は、第1の封止体40とは異なる工程により形成されるものである。すなわち、絶縁層20と第1の封止体40との間に界面が存在する。
【0061】
また、絶縁層20の外周端部は第1の封止体40により覆われている。これにより、ヒートシンク付回路基板50の信頼性を向上しやすくなる。
【0062】
絶縁層20の厚みは、50μm以上500μm以下とすることが好ましい。絶縁層20の厚みを上記下限値以上とすることにより、良好な絶縁性が保持できる。一方、絶縁層20の厚みを上記上限値以下とすることにより、ヒートシンク付回路基板50の全体の厚みが高くなりすぎることを抑制できる。
【0063】
本実施形態において、Bステージ状態のシート状の絶縁層20の比重は1.0~2.0であることが好ましい。これにより、ヒートシンク付回路基板50の製造過程において、より適切に加圧でき、ヒートシンク10および回路パターン30との密着性を高めやすくなる。
【0064】
(樹脂組成物(p))
絶縁層20は、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物(p)から形成される。当該樹脂組成物(p)は、第1の封止体40を形成する樹脂組成物(P1)とは異なる材料である。
【0065】
具体的には、樹脂組成物(p)は、熱硬化性樹脂と、窒化ホウ素粒子とを含むことが好ましい。これにより、良好な熱伝導性、および絶縁性が得られる。また、絶縁層20は、ヒートシンク付回路基板50の製造過程において圧力がかかることによって、窒化ホウ素粒子が分散し熱伝導性を効率的に向上することができるとともに、密着性を高めることができる。
【0066】
上記の熱硬化性樹脂としては、上記エポキシ樹脂(A)と同じエポキシ樹脂、およびシアネート樹脂が挙げられる。
なかでも、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、メトキシナフタレンアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、およびシアネート樹脂から選択される一種または二種以上が好ましい。これにより、窒化ホウ素粒子の分散性を向上させやすくなる。
【0067】
上記のシアネート樹脂としては、シアネートエステル樹脂を用いることができる。
シアネートエステル樹脂としては、具体的には、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアネートフェニル)エーテルなどの2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ジシクロペンタジエン構造含有フェノール樹脂などから誘導される多官能シアネート樹脂;上記例示したシアネートエステル樹脂の一部がトリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。
【0068】
シアネートエステル樹脂の市販品としては、例えば、ロンザジャパン社製のPT30、BA230、DT-4000、DT-7000などを用いることができる。
【0069】
熱硬化性樹脂の含有量は、樹脂組成物(p)(固形分)全量に対して、1~30質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。
【0070】
上記の窒化ホウ素粒子は、一次粒子が凝集した凝集粒子であることが好ましい。
窒化ホウ素粒子の一次粒子は、板状、鱗片状、または球状であり得、好ましくは鱗片状である。なかでも、鱗片状窒化ホウ素の凝集粒子であることが好ましい。これにより、窒化ホウ素粒子が配列し、熱伝導性を向上しやすくなる。
【0071】
鱗片状(または板状)の窒化ホウ素の一次粒子は、長手方向長さ(鱗片の厚み方向に対する直交方向における最大長さ)の平均が、例えば、1~100μm、好ましくは、3~90μmである。また、窒化ホウ素粒子の長手方向長さの平均は、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上、とりわけ好ましくは30μm以上、とりわけ一層好ましくは、40μm以上であり、一方、好ましくは100μm以下、より好ましくは90μm以下である。
【0072】
また、鱗片状窒化ホウ素の一次粒子の厚み(鱗片の厚み方向長さ、つまり、粒子の短手方向長さ)の平均は、例えば、0.01~20μm、好ましくは0.1~15μmである。
【0073】
また、鱗片状窒化ホウ素の一次粒子のアスペクト比(長手方向長さ/厚み)は、例えば、2~10000、好ましくは10~5000である。
【0074】
なお、光散乱法によって測定される平均1次粒子径は、動的光散乱式粒度分布測定装置にて測定される体積平均粒子径である。窒化ホウ素粒子の光散乱法によって測定される平均1次粒子径が上記範囲に満たないと、絶縁層20が脆くなり、取扱性が低下する場合がある。
【0075】
窒化ホウ素粒子の市販品として、具体的には、例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製の「PT」シリーズ(例えば、「PT-110」など)、昭和電工社製の「ショービーエヌUHP」シリーズ(例えば、「ショービーエヌUHP-1」など)などが挙げられる。
【0076】
窒化ホウ素粒子の含有量は、樹脂組成物(p)(固形分)全量に対して、60~80質量%であり、より好ましくは65~75質量%である。
また、窒化ホウ素粒子の体積基準の含有割合は、樹脂組成物(p)(固形分)の全体積に対して、50~70体積%であることが好ましく、55~65体積%であることがより好ましい。
【0077】
樹脂組成物(p)は、上記の熱硬化性樹脂、窒化ホウ素粒子以外の成分をさらに含んでもよい。
例えば、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、硬化剤を用いることが好ましい。硬化剤としては、上記の硬化剤(B)、好ましくはフェノール系硬化剤、および硬化触媒を用いることができる。
【0078】
硬化触媒としては、たとえばナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩;トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の3級アミン類;2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2,4-ジエチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン、1,2-ビス-(ジフェニルホスフィノ)エタン等の有機リン化合物;フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノール等のフェノール化合物;酢酸、安息香酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸;等、またはこの混合物が挙げられる。
【0079】
硬化触媒を用いる場合、その含有量は、樹脂組成物(p)(固形分)全量に対し、0.001質量部以上1質量部以下が好ましい。
【0080】
硬化剤の含有量は、樹脂組成物(p)(固形分)全量に対し、0.1質量%以上30質量%以下が好ましく、0.3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0081】
絶縁層20を構成する材料は、さらに、レベリング剤、カップリング剤、酸化防止剤等を含んでもよい。
【0082】
レベリング剤としては、アクリル系共重合物等が挙げられる。レベリング剤は、樹脂組成物(p)(固形分)全量に対し、2質量%以下の量で使用することが好ましく、0.01質量%以上1.0質量%以下の量で使用することがより好ましい。
【0083】
カップリング剤としては、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤等が使用できる。
カップリング剤の配合量は、窒化ホウ素粒子100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、特に0.5質量部以上7質量部以下が好ましい。
【0084】
(樹脂組成物(p)の製造方法)
本実施形態の絶縁層20を構成する樹脂組成物(p)(固形分)は、上述した熱硬化性樹脂、窒化ホウ素粒子、その他の成分、および溶媒を上述の割合で配合し、公知の方法により撹拌混合することにより調製できる。
【0085】
溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトンなどケトン、酢酸エチルなどのエステル、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミドなどの有機溶媒が挙げられる。また、溶媒として、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコールなどの水系溶媒も挙げられる。
【0086】
本実施形態の絶縁層20は、Bステージ状態のシート状に成形して作製することができる。すなわち、絶縁層20は、ヒートシンク付回路基板50の製造過程において、ヒートシンク10および回路パターン30と加熱加圧一体化される際に、完全硬化する。
たとえば、基材上にワニス状の上記材料を塗布した後、これを熱処理して乾燥することによりシート状にすることができる。基材としては、たとえば放熱部材やリードフレーム、剥離可能なキャリア材等を構成する金属箔が挙げられるが、ヒートシンク10上に直接塗布してもよい。
また、塗布膜を乾燥するための熱処理は、たとえば80~150℃、5分~1時間の条件において行われる。
【0087】
[ヒートシンク]
ヒートシンク10は、回路パターン30等において発生した熱を外部に放出する機能を有する。
ヒートシンク10の厚みは、用途に応じて適宜設定できるが、例えば、0.2~5mmであることが好ましい。
【0088】
ヒートシンク10は、銅、アルミニウムの中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、熱伝導性・加工性等を向上する観点からは銅であることがより好ましい。
【0089】
<ヒートシンク付回路基板の製造方法>
次に、
図1を用いて、本実施形態のヒートシンク付回路基板50の製造方法について説明する。
本実施形態のヒートシンク付回路基板50の製造方法は、以下の工程を含む。
[工程1]ヒートシンク10の一方の面上に絶縁層20を積層する工程。
[工程2]絶縁層20上に、独立した複数の回路パターン30と、隣接する回路パターン30間を跨ぐように設けられた凸状ブリッジ31と、を備えるリードフレーム35を配置する工程。
[工程3]回路パターン30間に第1の封止体40を埋設する工程。
[工程4]第1の封止体40の一部および凸状ブリッジ31を削除して回路パターン30の上面を露出させる工程。
【0090】
以下、各工程の詳細を説明する。
【0091】
[工程1]
ヒートシンク10としては、上述したものを用いることができる。次に、ヒートシンク10の一方の面上に公知の方法で絶縁層20を積層する。
【0092】
[工程2]
まず、
図1(a)に示されるような、独立した複数の回路パターン30と、隣接する回路パターン30間を跨ぐように設けられた凸状ブリッジ31と、を備えるリードフレーム35を準備する。ここで、リードフレーム35について詳述する。
【0093】
(リードフレーム)
図2は、リードフレームの一例を示す斜視図である。
図2に示されるように、リードフレーム35は複数の回路パターンを形成する面(のちの回路パターン30)と、これらを繋ぐ凸状ブリッジ31とを有している。
リードフレーム35は、電気伝導性及び熱伝導性の良好な金属板を用いて形成されるが、例えば、アルミニウム板、銅板などを用いることが好ましく、低熱抵抗化の点から銅板であることがより好ましい。リードフレーム35は、銅などの酸化防止の点から表面処理が施されていてもよく、例えば、ニッケルめっきやはんだめっき処理がされていてもよい。
また、リードフレーム35の厚さは、適宜調整されるが、例えば0.3~1.0mmであることが好適である。
【0094】
凸状ブリッジ31は、回路パターン30と同一材料であっても、異なる材料であってもよいが、生産性の点から、同一材料であることが好ましい。また、凸状ブリッジ31は、回路パターン30と一体成形されていることが好ましい。
凸状ブリッジ31が複数であって、互いに跨ぐ方向が平行である。すなわち、凸状ブリッジは互いに同じ方向になっている。
【0095】
本実施形態の凸状ブリッジ31は、次のようにして形成される。
まず、リードフレーム35の材料となる金属板に対し、凸状ブリッジ31となる部分に曲げ加工を行う。この時、湾曲の程度は金属板の厚みと同じ程度とする。その後、プレスし、打ち抜き加工を施すことによって、独立した複数の回路パターン30を形成することで、
図2に示すようなリードフレーム35が得られる。
本実施形態において、連結部を回路パターン30上に突出させることで、工程4において、第1の封止体40の一部とともに凸状ブリッジ31を削除することができ、生産効率を高めることができる。
【0096】
本実施形態の連結部は、その後凸状ブリッジ31となる。連結部は、公知のものとすることができるが、例えば、長さ0.5~2mm、幅0.5~2mmとすることが好ましい。また、一括成形、一括加工できるよう、連結部は互いに平行な方向に設けられることが好ましい。
【0097】
次に、リードフレーム35を凸状ブリッジ31が上側となるようにして絶縁層20上に公知の方法で配置する。
【0098】
[工程3]
次に、
図1(b)に示されるように、回路パターン30を構成する回路間に第1の封止体40を埋設する。たとえば、第1の封止体40用の樹脂組成物(P1)を用い、トランスファーモールド成形法、コンプレッションモールド成形法及びインジェクション成形法など選択される方法を用いて、回路間に樹脂組成物(P1)を充填し、第1の封止体40を埋設する。
このとき、第1の封止体40は、凸状ブリッジ31と絶縁層20及び回路パターン30全体を覆うようにして、埋設されてもよい。
【0099】
[工程4]
第1の封止体40の一部および凸状ブリッジ31を削除して、回路パターン30の高さに合わせることで、回路パターン30の上面を露出させる(
図1(c))。すなわち、回路パターン30の上面が露出した時点で、削除を止める。これにより、凸状ブリッジ31を削除しつつ、第1の封止体40の上面と回路パターン30の上面を面一にすることができ、生産性を高めることができる。
【0100】
削除する方法は、公知の方法を用いることができるが、たとえば、研磨または切削であることが好ましい。具体的には、機械的研磨(ダイヤモンドバイト、砥石、バフ、研磨ロール等)や、化学的機械研磨(CMP)を用いることができるが、研磨性向上効果を顕著に得る点から、機械的研磨であることが好ましい。
【0101】
回路面を露出したのち、回路パターン30の上面に酸化防止剤を塗布することが好ましい。これにより、回路が酸化してしまうことを抑制できる。
【0102】
<半導体装置>
図3(b)に示すように、本実施形態の半導体装置100は、ヒートシンク10と、ヒートシンク10の一方の面上に積層された絶縁層20と、絶縁層20上に配置された回路パターン30と、回路パターン30を構成する回路間に埋設され、上面が回路パターン30の上面と略面一となるように構成された第1封止体41(樹脂組成物(P1)の硬化物)と、第1の封止体40の上面に露出する回路パターン30上に搭載された半導体チップ81と、半導体チップ81を覆う第2封止体42(樹脂組成物(P2)の硬化物)と、を備え、第1封止体41と第2封止体42との間に界面がある。
また、半導体チップ81は、リードフレーム35とワイヤ83を介して接続されている。
【0103】
第1封止体41と第2封止体42との間の界面とは、第1封止体41と第2封止体42とが異なる工程によって得られたのちに接合されることで生じる境界である。界面は、目視できるものであってもよく、目視できるものに限られない。本実施形態において当該界面は略水平面である。
第2封止体42は、公知の封止樹脂材料(「樹脂組成物(P2)」ともいう)を用いて得ることができる。第1封止体41と、第2封止体42とは、異なる樹脂材料により形成されていてもよく、同じ材料で形成されたものであってもよいが、異なる樹脂材料により形成されていることが好ましい。
【0104】
本実施形態において第1封止体41(樹脂組成物(P1)の硬化物:175℃3分)の40℃~80℃における線膨張係数をα1(ppm/℃)とし、第2封止体42(樹脂組成物(P2)の硬化物:175℃3分)の40℃~80℃における線膨張係数をα2(ppm/℃)としたとき、(α1/α2)が0.7~1.5であることが好ましく、0.8~1.2であることがより好ましい。すなわち、α1とα2の差が小さくなるほど、第1封止体41と第2封止体42との線膨張係数の差によって生じる界面剥離や、反りによる回路パターン30との剥離等を効果的に抑制できる。
【0105】
本実施形態において、α1、α2は、半導体モジュールの構造や封止樹脂部分の厚みによって適宜調整されるが、それぞれ8~20ppm/℃であることが好ましく、12~18ppm/℃であることがより好ましい。これにより、半導体装置100内での反りや剥離を抑制し、信頼性を向上できる。
【0106】
<半導体装置の製造方法>
図3は、本実施形態の半導体装置100の製造方法を模式的に示す断面図である。
半導体装置100の製造方法は、ヒートシンク付回路基板50を用い、ヒートシンク付回路基板50に露出する回路パターン30上に、半導体チップ81を実装する工程と、半導体チップ81を第2の封止樹脂(樹脂組成物(P2))により封止し、第2の封止体42を形成する工程と、を含む。
半導体チップ81を実装する工程および第2の封止体42を形成する工程はいずれも公知の方法を用いることができる。
【0107】
本実施形態の半導体装置100は、ヒートシンク付回路基板50を用いるものであるため、加工性、製造安定性、位置精度等が向上し、信頼性、耐久性などに優れることができる。
【0108】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0109】
<変形例>
例えば、
図4、5に示すように、ヒートシンク付回路基板51、半導体装置101のヒートシンク10はフィン12を有するものであってもよい。以下、詳細を説明する。
【0110】
ヒートシンク10は、平板状のベース板11と、ベース板11の絶縁層20側とは反対側の面から突出する複数のフィン12とを備えてもよい。平板状のベース板11と、フィン12とは公知の方法で接合されたものであってもよく、一体成形されたものであってもよい。
【0111】
ベース板11の厚みは、用途に応じて適宜設定できるが、例えば、0.2~1.5mmであることが好ましい。また、ベース板11の厚みを、回路パターン30の厚みの0.5~1.5倍とすることで、ヒートシンク付回路基板51全体の反りを抑制し、密着性を向上しやすくなる。
【0112】
本実施形態において、ヒートシンク10は、ベース板11の一方の面から立設する複数のフィン12を備えることにより、ヒートシンク10の表面積を高め、放熱効率を高めることができる。また複数のフィン12は面一となっている。複数のフィン12の高さが均一であり、また、フィン12の上面は平坦であることで面を構成できるため、ヒートシンク付回路基板51の安定的に製造できるようになる。
【0113】
フィン12の形状は特に限定されないが、例えば、四角、六角などの多角柱状、円柱状であってもよい。また、上記の四角柱状には、断面における断面形状が正方形を呈する柱状、長方形を呈する柱状、ひし形を呈する柱状、平行四辺形を呈する柱状等であってよい。上記の円柱状には、断面における断面形状が円形、楕円形及び長円形等であってもよい。
【0114】
複数のフィン12の数は特に限定されず、用途、機械的強度等の観点から、適宜設定される。複数のフィン12の形状は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよく、一部のみ異なるものであってもよい。
【0115】
また、複数のフィン12の配置は、特に限定されないが、フィン12の外側端を結ぶ外郭線に囲まれる領域は、ベース板11の絶縁層20に覆われた領域に内包されていることが好ましい。また、ベース板11の外周端部にフィン12を有さないことが好ましい。
こうすることにより、ヒートシンク付回路基板51の製造過程における加圧に対して、機械的強度を保持しつつ、密着性を向上できる。
【0116】
複数のフィン12同士の間隔は、特に限定されないが、0.5~2.0mmであることが好ましい。フィン12同士の間隔を0.5mm以上とすることにより、フィン12の切削加工を効率的に行うことができ、またヒートシンク付回路基板50の製造過程における押圧に対して、機械的強度を保持できるようになる。また、フィン12同士の間隔を2.0mm以下とすることにより、ヒートシンク10の放熱性能をより向上させることができる。
【実施例0117】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0118】
(1)プリモールド成形用樹脂組成物(P1)の調製
以下の原料を用いて、表1に示す含有量(質量部)となるようにミキサーにより混合した。次いで、得られた混合物を、ロール混練した後、冷却、粉砕して粉粒体である樹脂組成物(P1)を得た。
【0119】
[原料]
(エポキシ樹脂(A))
・エポキシ樹脂(A1):ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、日本化薬社製「NC3000H」、エポキシ当量286
・エポキシ樹脂(A2):トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、三菱化学社製「1032H60」、エポキシ当量171
・エポキシ樹脂(A3):ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、日本化薬社製「NC3000」、エポキシ当量277
【0120】
(硬化剤(B))
・硬化剤(B1):ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型樹脂、明和化成社製「MEH-7851H」、活性水酸基当量199
・硬化剤(B2):トリフェノールメタン型フェノール樹脂、明和化成社製「MEH-7500」、活性水酸基当量97
【0121】
(無機充填材(C))
・無機充填材(C1):溶融球状シリカ、粒径(D50):28μm
【0122】
(硬化促進剤)
・硬化促進剤:テトラフェニルホスホニウム・4,4’-スルフォニルジフェノラート
【0123】
(カップリング剤)
・カップリング剤:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、東レ・ダウコーニング社製「CF4083」
【0124】
(その他)
・難燃剤:水酸化アルミニウム、住友化学社製「CL303」粒径:4μm
・低応力剤:エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、東レ・ダウコーニング社製「FZ-3730」
・着色剤:カーボンブラック、三菱ケミカル社製「カーボン#5」
【0125】
(2)ヒートシンク付回路基板の製造
金属基材(厚さ500μmの銅箔)を打ち抜き加工して、回路パターンおよび凸状ブリッジを有するリードフレームを作製した。
得られたリードフレームを、低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力10.0MPa、硬化時間2分の条件で、得られた樹脂組成物(P1)を充填し、硬化した。
続けて、ダイヤモンドバイトにより封止体の一部と凸状ブリッジの凸部を研磨して、回路パターンの上面を露出させ、ヒートシンク付回路基板をえた。
【0126】
(3)測定
樹脂組成物(P1)について以下の測定を行った。
【0127】
(ゲルタイム)
低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製、「KTS-15」)を用いて、ANSI/ASTM D 3123-72に準じたスパイラルフロー測定用金型に、175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒の条件で、各実施例および各比較例の樹脂組成物(P1)を注入した。注入開始から樹脂組成物(P1)が硬化し流動しなくなるまでの時間を測定し、ゲルタイムとした。
【0128】
[試験片の作成]
低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製、KTS-30)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒の条件で、樹脂組成物(P1)を注入成形し、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの成形物を得たのち、当該成形物をさらに200℃で4時間加熱処理し後硬化を行い、試験片とした。
【0129】
(ガラス転移温度(Tg)、線膨張係数(CTE))
当該試験片を用いて、熱機械分析装置(セイコーインスツルメンツ社製、TMA/SS6000)により、測定温度範囲0℃~320℃、5℃/分の昇温速度で測定を行った。この測定結果から、ガラス転移温度Tg(℃)、ガラス転移温度以下における線膨張係数(α1)、ガラス転移温度以上における線膨張係数(α2)を算出した。α1は、40℃~80℃における線膨張係数、α2は、190℃~230℃における線膨張係数とした。
【0130】
(曲げ弾性率、曲げ強さ)
当該試験片を用いて、曲げ弾性率および曲げ強さをJIS K 6911に準じて25℃の雰囲気温度下で測定した。
【0131】
(貯蔵弾性率、損失弾性率、tanδ)
当該試験片を用いて、動的粘弾性測定器(エーアンドディ社製、「DDV-25GP」)により貯蔵弾性率、損失弾性率、およびtanδを測定した(昇温速度:5℃/分、周波数:10Hz、荷重:800g、温度範囲30~350℃)。
【0132】
(吸水率)
当該試験片を煮沸環境下で24時間加湿処理し、加湿処理前後の重量を測定し、重量変化の割合を吸水率(%)として算出した。
【0133】
(4)評価
[研磨性;バイトダメージ]
樹脂組成物(P1)を低圧トランスファー成形装置(コータキ精機株式会社製「KTS-30」)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒間で注入成形し、直径50mmΦ×厚さ3mmの成形品を得た。次いで、得られた成形品を175℃、4時間で後硬化して試験片を作製した。
得られた試験片の上面を、セミオート切削平坦化加工装置(DAS8930、DISCO社製)を用いて研磨試験(加工深さ10μm)を行った。加工中の研磨速度や研磨後の研磨治具を目視で確認し、以下の評価を行った。
・基準
〇:加工中の研磨力の低下なし、及び、研磨治具へのダメージが少ない
△:加工中の研磨力の低下、及び、研磨治具へのダメージのいずれか一方は少ないが、他方が多い
×:加工中の研磨力の低下ある、又は、研磨治具へのダメージが多い
【0134】
[平坦性]
第1封止体の上面(露出された面、研磨面)について、JIS B 0601に準拠して、表面粗さRaを測定し、以下の基準に従い評価した。なお、測定には、レーザー顕微鏡(オリンパス社製、OLS3000)を用いた。
・基準(研磨後の粗さ)
〇:Ra0.5μm未満
△:Ra0.5以上、1.0μm未満
×:Ra1.0μm以上
【0135】