(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135042
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ルーフダクト
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20240927BHJP
B62D 25/06 20060101ALI20240927BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B60H1/00 102S
B62D25/06 A
F24F13/02 F
F24F13/02 Z
F24F13/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045536
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宗春
【テーマコード(参考)】
3D203
3L080
3L211
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB59
3L080AA09
3L080AC01
3L080AE01
3L211DA14
3L211DA16
3L211DA96
(57)【要約】
【課題】結露による悪影響を抑える。
【解決手段】ルーフダクト30は、車体12におけるルーフパネル14の下側に配置されている。ルーフダクト30は、ルーフパネル14に対向する上壁部42と、この上壁部42とルーフパネル14との間を塞ぐシール部材44とを備えている。シール部材44は、ルーフパネル14に接する部位が、ルーフパネル14に設けられた貫通孔18の周囲に配置される。また、ルーフダクト30の上壁部42は、凹状部46を備えており、この凹状部46の外周にシール部材44が配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体におけるルーフパネルの下側に配置されるルーフダクトであって、
前記ルーフダクトは、
前記ルーフパネルに対向する壁部と、
前記壁部と前記ルーフパネルとの間を塞ぐシール部材と、を備え、
前記シール部材は、前記ルーフパネルに接する部位が前記ルーフパネルに設けられた貫通孔の周囲に配置される
ことを特徴とするルーフダクト。
【請求項2】
前記壁部は、前記貫通孔の下側に凹状部を備え、
前記シール部材が、前記凹状部の外周に配置される請求項1に記載のルーフダクト。
【請求項3】
前記壁部における前記凹状部の縁部には、前記貫通孔に向けて延びる配線を配置可能な溝状の配線配置部を備える請求項2に記載のルーフダクト。
【請求項4】
前記配線配置部は、前記凹状部から前記ルーフダクト外縁側に向かうにつれて上方傾斜している請求項3に記載のルーフダクト。
【請求項5】
前記シール部材は、前記配線配置部において、溝底に接して配置されている請求項4に記載のルーフダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ルーフダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の屋根を構成するルーフパネルと車室の天井を構成するルーフライナーとの間には、空調用のダクトとして、ルーフダクトと呼ばれるものが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冬期において、ルーフパネルが外気に冷却される一方で、ルーフパネルとルーフダクトとの間が外気よりも暖かいことから、ルーフパネルの下面に結露が生じることがある。結露が生じる部位によっては、結露によって周囲に悪影響がある。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記課題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、結露による悪影響を抑制できるルーフダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るルーフダクトの第1態様は、
車体におけるルーフパネルの下側に配置されるルーフダクトであって、
前記ルーフダクトは、
前記ルーフパネルに対向する壁部と、
前記壁部と前記ルーフパネルとの間を塞ぐシール部材と、を備え、
前記シール部材は、前記ルーフパネルに接する部位が前記ルーフパネルに設けられた貫通孔の周囲に配置されることを要旨とする。
【0007】
本発明に係るルーフダクトの第2態様は、前記第1態様において、
前記壁部は、前記貫通孔の下側に凹状部を備え、
前記シール部材が、前記凹状部の外周に配置されていてもよい。
【0008】
本発明に係るルーフダクトの第3態様は、前記第2態様において、
前記壁部における前記凹状部の縁部には、前記貫通孔に向けて延びる配線を配置可能な溝状の配線配置部を備えていてもよい。
【0009】
本発明に係るルーフダクトの第4態様は、前記第3態様において、
前記配線配置部は、前記凹状部から前記ルーフダクト外縁側に向かうにつれて上方傾斜していてもよい。
【0010】
本発明に係るルーフダクトの第5態様は、前記第4態様において、
前記シール部材は、前記配線配置部において、溝底に接して配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るルーフダクトによれば、結露による悪影響を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例に係るルーフダクトと車両との関係を説明する概略斜視図である。
【
図2】実施例のルーフダクトを貫通孔から外れた位置で車両前後方向に切断した端面図である。
【
図3】実施例のルーフダクトを貫通孔の位置で車両前後方向に切断した端面図である。
【
図4】実施例のルーフダクトを貫通孔の位置で車両左右方向に切断した端面図である。
【
図5】実施例のルーフダクトの要部を、前斜め上から見た概略斜視図である。
【
図6】実施例のルーフダクトの要部を、後斜め上から見た概略斜視図である。
【
図7】実施例のルーフダクトの要部を分解して示す概略斜視図である。
【
図8】変更例のルーフダクトの要部を示す概略斜視図である。
【
図9】変更例のルーフダクトを貫通孔から外れた位置で車両前後方向に切断した端面図である。
【
図10】変更例のルーフダクトを貫通孔の位置で車両前後方向に切断した端面図である。
【
図11】変更例のルーフダクトを貫通孔の位置で車両左右方向に切断した端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係るルーフダクトにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例0014】
図1に示すように、実施例に係る車両10は、車体12において屋根を構成するルーフパネル14の下側に、空調用のルーフダクト30が配置されている。ルーフパネル14の下側には、車室の天井を構成するルーフライナー15が、ルーフパネル14と間隔をあけて配置されており、ルーフダクト30が、ルーフパネル14とルーフライナー15との間に配置されている。また、車両10は、ルーフパネル14の上面に設置された車外構造物を備えている。車外構造物としては、アンテナ16などの受信機器や送信機器、回転灯や表示灯などの情報表示用機器などが例示される。車外構造物の下側には、ルーフパネル14を貫通する貫通孔18が設けられており、車外構造物の内蔵機器16bと車体12の内側に設置された機器類とが貫通孔18を介して電気的に接続されている。
【0015】
図1~
図4に示すように、実施例では、車外構造物として、いわゆるシャークフィンアンテナとも呼ばれるフィン形状のアンテナ16を例示している。アンテナ16は、ルーフパネル14の後縁部における左右方向中央部に設置されている。アンテナ16は、アンテナカバー16aと、アンテナカバー16aの内側に配置された内蔵機器16bとを備えている。内蔵機器16bの接続部が、アンテナカバー16aの内側に開口するルーフパネル14の貫通孔18に合わせて配置されている。そして、ルーフパネル14の下側を通る配線20が、内蔵機器16bの接続部に接続されて、アンテナ16の内蔵機器16bと車体12の内側の機器類とが配線20で繋がっている。
【0016】
図1に示すように、実施例のルーフダクト30は、ルーフパネル14の後縁部下側に配置された後ルーフダクト40と、後ルーフダクト40における左右の端部に接続されて、ルーフパネル14の側縁部下側に配置された左右の横ルーフダクト32,32とを備えている。後ルーフダクト40の右端部下側には、ピラーの内側に配置された縦ダクト34が接続されている。このように、実施例のルーフダクト30は、複数のダクト32,34,40を組み合わせて構成されている。ルーフダクト30において、図示しない空調ユニットから供給される調温空気が、縦ダクト34から後ルーフダクト40を通って左右の横ルーフダクト32,32に分配されて、横ルーフダクト32に繋がる通気口から車室に送り出される。
【0017】
図2~
図3及び
図5に示すように、実施例に係るルーフダクト30における後ルーフダクト40は、内部に空気流通路を有する筒状であり、車両前後方向の幅と比べて上下方向の幅が小さい扁平形状に形成されている。実施例の後ルーフダクト40は、後縁上部から車両前後方向後側へ突出する突状片40aを備えている。ルーフダクト30は、特に限定するものではないが、合成樹脂の成形品を用いることができる。実施例の後ルーフダクト40は、外方へ突出する取付片40bを有し(
図1参照)、取付片40bの通孔に通したボルト等の締結具によりルーフパネル14に取り付けられる。後ルーフダクト40は、ルーフパネル14に対向する上壁部(壁部)42を備えている。また、後ルーフダクト40は、上壁部42とルーフパネル14との間を塞ぐシール部材44を備えている。ここで、シール部材44は、ルーフパネル14に接する部位が、ルーフパネル14に設けられた貫通孔18の周囲に配置される。
【0018】
シール部材44としては、弾性変形する弾性体を用いるとよく、例えば、ポリウレタンフォーム等の発泡体、フェルトや不織布などの繊維体、ゴムなどのエラストマーなどを用いることができる。実施例のシール部材44は、発泡体であり、特にポリウレタンフォームが軽量で比較的安価であることから好ましい。
【0019】
図2~
図4に示すように、シール部材44は、ルーフパネル14に接する部位が、ルーフパネル14と干渉するように設定するとよい。シール部材44は、ルーフパネル14に接する部位が、後ルーフダクト40を車体12に設置する前において、ルーフパネル14と上壁部42との間隔よりも大きく設定される。このため、シール部材44は、ルーフパネル14に接する部位が、ルーフパネル14との接触により圧縮するように弾性変形した状態でルーフパネル14に押し付けられている。
図2~
図4においてシール部材44を示す二点鎖線は、ルーフパネル14に当たる前の状態を示している。
【0020】
図5~
図7に示すように、上壁部42は、凹状部46を備えている。
図3及び
図4に示すように、凹状部46は、ルーフパネル14の貫通孔18の下側に配置される。凹状部46は、上壁部42の一部を下方へ凹ませて形成されている。実施例の凹状部46は、車両前後方向前側から後側に向かうにつれて下方傾斜する底面と、底面の横側に立ち上がる側面と、底面の後側に立ち上がる後面とを有するすり鉢形状である。このように、実施例の凹状部46は、車両前後方向後側が最も低くなっている。また、凹状部46は、ルーフパネル14の後縁部左右方向中央部の貫通孔18に対応して、上壁部42の左右方向中央部に配置されている。凹状部46には、貫通孔18に向かう配線20が配置される。
【0021】
図5~
図7に示すように、上壁部42における凹状部46の縁部に、貫通孔18に向けて延びる配線20を配置可能な溝状の配線配置部50を備えている。実施例の配線配置部50は、凹状部46の後側に立つ壁から突状片40aにかけて凹んでおり、凹状部46の内側から後ルーフダクト40の後縁まで通じている。また、
図3に示すように、配線配置部50は、凹状部46から後ルーフダクト40の外縁(実施例では後縁)側に向かうにつれて上方傾斜している。このように、配線配置部50は、凹状部46側が低くなっている。配線配置部50の溝底は、凹状部46の底面よりも高い位置に配置され、配線配置部50に配置した配線20が、凹状部46の底面から離した状態で配線配置部50によって支持される。
【0022】
図5及び
図6に示すように、シール部材44は、凹状部46の外周に配置されている。実施例のシール部材44は、断面矩形状の棒状体である。シール部材44は、凹状部46の周囲に立ち上がる壁になり、凹状部46の周囲を枠状に囲んでいる。より具体的には、シール部材44は、上壁部42における凹状部46の前側に左右に直線状に延びるように配置され、上壁部42における凹状部46の左右両側に前後に直線状に延びるように配置される。また、シール部材44は、上壁部42における凹状部46の後側に左右に直線状に延びており、実施例ではシール部材44が突状片40aの上面に配置されている。また、シール部材44は、配線配置部50を横切るように配置されている。シール部材44は、配線配置部50において、溝底に接して配置されている(
図5及び
図6参照)。そして、配線配置部50を通る配線20が、配線配置部50に配置されたシール部材44の上に配置される(
図3参照)。これにより、配線20が、配線配置部50に配置したシール部材44に支持されて、ルーフパネル14の下面に近接配置される。シール部材44は、配置形状に合わせて予め枠状にしたり、配線配置部50などの上壁部42の凹凸形状に合わせて予め凹凸形状としたりするなどであってもよく、可撓性を有するシール部材44を配置形状や上壁部42の凹凸形状に合わせて曲げて配置してもよい。また、シール部材44は、両面テープや接着剤などにより上壁部42に固定される。
【0023】
上壁部42は、シール部材44の配置位置に目印を備えていてもよい。目印は、例えば、浅い凹みによる罫書き線や、小さい突起56(
図8~
図11参照)などが挙げられる。実施例では、凹状部46の周囲にシール部材44を配置するので、凹状部46が目印となる。
【0024】
図5~
図7に示すように、実施例の凹状部46には、シート材52が配置されている。シート材52としては、例えば、ポリウレタンフォーム等の発泡体、フェルトや不織布などの繊維体などの吸水性を有するものを用いることができる。実施例のシート材52は、発泡体であり、特にポリウレタンフォームが軽量で比較的安価であることから好ましい。なお、シート材52を省略してもよい。
【0025】
図5~
図7に示すように、実施例の後ルーフダクト40は、上壁部42に保護シート54が配置されている。実施例の保護シート54は、上壁部42とルーフパネル14との間隔よりも小さい板状である(
図4参照)。保護シート54は、シール部材44よりも薄く設定されており、ルーフパネル14に接触しない。保護シート54としては、例えば、ポリウレタンフォーム等の発泡体、フェルトや不織布などの繊維体などを用いることができる。実施例の保護シート54は、発泡体であり、特にポリウレタンフォームが軽量で比較的安価であることから好ましい。なお、保護シート54は、ルーフダクト30の断熱性を向上するなど、必要とされる機能に応じて設けられるものであり、保護シート54を省略してもよい。
【0026】
実施例の後ルーフダクト40は、上壁部42とルーフパネル14との間を塞ぐシール部材44を備え、このシール部材44におけるルーフパネル14に接する部位が、ルーフパネル14に設けられた貫通孔18の周囲に配置される構成である。このため、後ルーフダクト40の上壁部42とルーフパネル14との間の比較的暖かい空気が、シール部材44に阻まれて、貫通孔18の周囲に流入することが抑えられる。これにより、外気によってルーフパネル14における貫通孔18の周囲が冷やされたとしても、シール部材44により比較的暖かい空気が、ルーフパネル14における貫通孔18の周囲に接触し難くなることから、ルーフパネル14における貫通孔18の周囲において結露が生じ難くなる。このように後ルーフダクト40によれば、ルーフパネル14での結露の発生を抑えられることから、後ルーフダクト40の下に配置されたルーフライナー15に結露水が垂れて汚損するなど、結露による悪影響を抑制できる。特に、実施例では、貫通孔18の周囲でアンテナ16の内蔵機器16bと配線20とを接続しているので、シール部材44による結露対策によるメリットが大きい。
【0027】
後ルーフダクト40の上壁部42が、貫通孔18の下側に凹状部46を備えているので、凹状部46によって後ルーフダクト40とルーフパネル14との間隔が広くなり、貫通孔18に向けて配置される配線20が取り回し易くなり、また、後ルーフダクト40と配線20との干渉も防止できる。そして、シール部材44が、凹状部46の外周に配置されることで、シール部材44で囲まれた凹状部46に比較的暖かい空気が流入したり、貫通孔18から流入した比較的冷たい空気が凹状部46の外側に流出したりすることを抑えることができる。このように後ルーフダクト40によれば、ルーフパネル14での結露の発生を抑えられることから、結露による悪影響を抑制できる。また、貫通孔18近傍の配線20に結露が生じたとしても、結露水を凹状部46で受けて、後ルーフダクト40の外に流出することを防止できる。
【0028】
後ルーフダクト40は、上壁部42における凹状部46の後縁部に、貫通孔18に向けて延びる配線20を配置可能な溝状の配線配置部50を備えている。配線配置部50に配線20を配置することで、配線20を通すことに伴うシール部材44とルーフパネル14との間に形成される隙間を最小限に抑えることができ、ルーフパネル14における結露の発生を抑えて、結露による悪影響を抑制できる。また、配線配置部50によって、配線20を位置決めすることができる。
【0029】
配線配置部50は、凹状部46から後ルーフダクト40の後縁側に向かうにつれて上方傾斜している。これにより、仮に、貫通孔18近傍で配線20が結露した際に、配線配置部50が逆勾配になることから、配線20を伝わる結露水が後ルーフダクト40の外に流出することを防止できる。また、シール部材44は、配線配置部50において、溝底に接して配置されているので、凹状部46に溜まった水が配線配置部50を介して後ルーフダクト40の外に流出することを防止できる。
【0030】
(変更例)
前述した事項に限らず、例えば以下のようにしてもよい。なお、本発明は、実施例及び以下の変更例の具体的な記載のみに限定されるものではない。
(1)上壁部42は、凹状部46を設けなくてもよい。
(2)シール部材44は、実施例のような棒状体に限らず、例えば、
図8~
図11に示す変更例の後ルーフダクト60のように、シール部材44が板状のブロックをくりぬいた環状のものであってもよい。なお、貫通孔を囲う空間の形状は、平面視矩形や
図8の平面視円形に限らず、楕円形や、矩形以外の多角形であってもよい。
(3)凹状部46は、実施例のようにすり鉢形状であることに限らず、例えば、
図8~
図11に示す変更例の後ルーフダクト60のように、後ルーフダクト60の後縁側が開放した形状であってもよい。
(4)
図8~
図11に示す変更例の後ルーフダクト60のように、シール部材44に配線を埋め込むように配置してもよい。