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特開2024-135046プライマー組成物、機能性部材及び機能性部材の製造方法
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  • 特開-プライマー組成物、機能性部材及び機能性部材の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135046
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】プライマー組成物、機能性部材及び機能性部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 5/00 20060101AFI20240927BHJP
   C09D 183/02 20060101ALI20240927BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20240927BHJP
   C09D 201/10 20060101ALI20240927BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20240927BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C09D5/00 D
C09D183/02
C09D183/04
C09D201/10
C09D5/14
B32B27/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045542
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 陽一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智史
(72)【発明者】
【氏名】大室 傑
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 篤史
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AB12
4F100AB12A
4F100AK25
4F100AK25A
4F100AK52
4F100AK52A
4F100AK53
4F100AK53A
4F100AR00A
4F100AR00C
4F100AT00B
4F100BA03
4F100BA07
4F100EH46
4F100EJ65
4F100EJ65A
4F100GB07
4F100JK09
4F100JK14
4J038DL021
4J038DL031
4J038DL081
4J038JA17
4J038JC32
4J038JC34
4J038JC35
4J038KA04
4J038KA06
4J038MA09
4J038NA04
4J038NA11
4J038PA07
4J038PB05
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC04
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】機能性部材の機能層に耐久性を付与できるプライマー組成物、機能性部材及び機能性部材の製造方法を提供する。
【解決手段】特定の構造を有するアルコキシシラン(A)と、特定の構造を有するアミノアルキルアルコキシシラン(B)と、(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基からなる群から選ばれる1種以上の基を有するアルコキシシラン(C)と、有機溶媒(D)と、を含有するプライマー組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I-1)で表される化合物及び下記一般式(I-2)で表される化合物から選ばれる1種以上のアルコキシシラン(A)と、
下記一般式(II-1)で表される化合物及び下記一般式(II-2)で表される化合物から選ばれる1種以上のアミノアルキルアルコキシシラン(B)と、
(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基からなる群から選ばれる1種以上の基を有するアルコキシシラン(C)と、
有機溶媒(D)と、を含有するプライマー組成物。
【化1】
(式(I-1)中、Rは、それぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基を表す。式(I-2)中、Rは、それぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基を表す。mは、0以上1000以下である。)
【化2】
(式(II-1)中、Rは、それぞれ独立に炭素数1又は2のアルキル基を表す。xは、1~6の整数、yは、1~10の整数、nは、0~10の整数である。式(II-2)中、Rは、それぞれ独立に炭素数1又は2のアルキル基を表す。zは、1~10の整数、wは、1~10の整数である。)
【請求項2】
前記アルコキシシラン(C)が、下記一般式(III-1)で表される化合物(C1)、下記一般式(III-2)で表される化合物(C2)、及び下記一般式(III-3)又は下記一般式(III-4)で表される構造単位を含む化合物(C3)からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む、請求項1に記載のプライマー組成物。
【化3】
【化4】
【化5】
(式(III-1)中、Rは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基を表し、これらのうち少なくとも1つは置換基として(メタ)アクリロイル基又はエポキシ基を有する。式(III-2)中、Rは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基を表し、これらのうち少なくとも1つは置換基として(メタ)アクリロイル基又はエポキシ基を有する。sは、0~1000である。式(III-3)中、Rはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基を表し、これらのうち少なくとも1つは置換基として(メタ)アクリロイル基又はエポキシ基を有する。Rは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基を表す。Yは、それぞれ独立して、2価の連結基である。nは1~1000である。式(III-4)中、Rは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基を表し、これらのうち少なくとも1つは置換基として(メタ)アクリロイル基又はエポキシ基を有する。Rは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基を表す。Yは、それぞれ独立して、2価の連結基である。Rは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基を表す。p、q、及びrは、それぞれ独立して、0~1000であり、ただし、pが0のとき、q及びrは、それぞれ独立して、1~1000であり、pが1以上のとき、q及びrは、それぞれ独立して、0~1000である。)
【請求項3】
樹脂基材と、前記樹脂基材の一方の面に位置するプライマー層と、前記プライマー層の表面に位置する機能層と、を備える機能性部材であって、
前記プライマー層は、請求項1に記載のプライマー組成物の硬化物である、機能性部材。
【請求項4】
前記機能層が、親水性を備える親水層、撥水性を備える撥水層、又は抗菌性及び抗ウイルス性の何れか一方を備える抗菌・抗ウイルス層である、請求項3に記載の機能性部材。
【請求項5】
樹脂基材の一方の面に対して、請求項1に記載のプライマー組成物を塗布し、硬化させる、機能性部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プライマー組成物、機能性部材及び機能性部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建材の樹脂製品、塗装面表面に親水性、抗菌性、及び抗ウイルス性等の様々な機能性を付与するための表面改質処理が行われている。このような表面改質処理の一つの方法として、表面に機能性を付与する機能層を設ける処理がある。機能層の原料として、様々な機能性を有する官能基が導入されたシランカップリング剤が用いられる。機能層を設ける処理においては、樹脂製品、塗装表面と機能層との密着性を高めるために、樹脂製品、塗装表面と機能層との間にプライマー層を設ける処理が行われることがある。プライマー層は、プライマー組成物から形成される。
【0003】
例えば、特許文献1には、基材と、特定の構造を有するアルコキシシランを含有するプライマー組成物から形成される下塗層(プライマー層)と、親水性を有するシランカップリング剤から形成される上塗層(機能層)とをこの順で有する親水性部材が提案されている。特許文献1の親水性部材では、基材の表面にプライマー層が設けられることによって、基材と機能層との密着性が高められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-064474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の機能層は、化学物質等の化学的な影響及び磨耗等の物理的な影響に対する耐久性が充分ではなかった。
【0006】
本開示は、このような課題に鑑みてなされたものであって、機能層に耐久性を付与できるプライマー組成物、機能性部材及び機能性部材の製造方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示による一態様は、下記一般式(I-1)で表される化合物及び下記一般式(I-2)で表される化合物から選ばれる1種以上のアルコキシシラン(A)と、下記一般式(II-1)で表される化合物及び下記一般式(II-2)で表される化合物から選ばれる1種以上のアミノアルキルアルコキシシラン(B)と、(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基からなる群から選ばれる1種以上の基を有するアルコキシシラン(C)と、有機溶媒(D)と、を含有するプライマー組成物である。本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基のうち少なくとも一方を表す。
【0008】
【化1】
【0009】
式(I-1)中、Rは、それぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基を表す。式(I-2)中、Rは、それぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基を表す。mは、0~1000である。
【0010】
【化2】
【0011】
式(II-1)中、Rは、それぞれ独立に炭素数1又は2のアルキル基を表す。xは、1~6の整数、yは、1~10の整数、nは、0~10の整数である。式(II-2)中、Rは、それぞれ独立に炭素数1又は2のアルキル基を表す。zは、1~10の整数、wは、1~10の整数である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一実施形態に係る機能性部材の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の両端の数値を含む。
本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。
以下、本開示の一実施形態について、図1を参照して説明する。図1に示す機能性部材100は、機能性部材100は、樹脂基材・塗装基材10と、プライマー層20と、機能層30とをこの順で備える。
【0014】
機能性部材100の厚さT100は、特に限定されない。機能性部材100の厚さT100は、例えば、0.001mm以上500mm以下が好ましく、0.001mm以上300mm以下がより好ましく、0.001mm以上200mm以下がさらに好ましい。厚さT100が上記下限値以上であると、機能性部材100の強度を高めやすい。厚さT100が上記上限値以下であると、機能性部材100の軽量化を図ることができ、取り扱いやすい。機能性部材100の厚さT100は、例えば、ノギスを用いて測定できる。
【0015】
樹脂基材・塗装基材10としては、汎用プラスチック材料やエンジニアリングプラスチック材料、これらのプラスチック材料や金属に塗装を施した材料を用いることができる。汎用プラスチック材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、不飽和ポリエステル(UP)樹脂等が挙げられる。エンジニアリングプラスチック材料としては、ポリカーボネート(PC)、ナイロン樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)等が挙げられる。塗装の樹脂としてはアクリルウレタン、アクリルメラミン塗装が挙げられる。樹脂基材10としては、ガラス繊維、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、シリカ等の充填剤を配合した樹脂を用いてもよい。
【0016】
樹脂基材10の厚さT10は、特に限定されない。樹脂基材10の厚さT10は、例えば、0.001mm以上500mm以下が好ましく、0.001mm以上300mm以下がより好ましく、0.001mm以上200mm以下がさらに好ましい。厚さT10が上記下限値以上であると、機能性部材100の強度を高めやすい。厚さT10が上記上限値以下であると、機能性部材100の軽量化を図ることができ、取り扱いやすい。樹脂基材10の厚さT10は、例えば、ノギスを用いて測定できる。
【0017】
プライマー層20は、本開示に係るプライマー組成物又はその硬化物である。本明細書において、硬化物とは、加水分解性アルコキシシラン及びその加水分解縮重合物から選ばれる1種以上が熱、触媒等によって縮重合又は架橋して不溶不融となったものをいう。本開示に係るプライマー組成物は、アルコキシシラン(A)と、アミノアルキルアルコキシシラン(B)と、(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基からなる群から選ばれる1種以上の基を有するアルコキシシラン(C)と、有機溶媒(D)とを含有する。
【0018】
アルコキシシラン(A)は、下記一般式(I-1)で表される化合物及び下記一般式(I-2)で表される化合物から選ばれる1種以上である。
【0019】
【化3】
【0020】
式(I-1)中、Rは、それぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基を表す。式(I-2)中、Rは、それぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基を表す。mは、0~1000である。
【0021】
式(I-1)で表される化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシランが挙げられる。式(I-1)で表される化合物のうち、脱水縮合しやすい観点から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。
【0022】
式(I-2)で表される化合物としては、例えば、Rがメチル基でmが0~1000の化合物、Rがエチル基でmが0~1000の化合物、Rがブチル基でmが0~1000の化合物が挙げられる。
【0023】
式(I-2)で表される化合物のmは、重合度を表し、0以上1000以下であり、10以上80以下が好ましく、30以上50以下がより好ましい。重合度mが上記下限値以上であると、プライマー層20の表面において、より多くのシラノール基を形成しやすい。重合度mが上記上限値以下であると、有機溶媒(D)に溶解しやすい。式(I-2)で表される化合物は、2分子以上のテトラアルコキシシランが分子間で脱水縮合した重合体である。重合度mが0の場合、式(I-2)で表される化合物は、テトラアルコキシシラン2分子が脱水縮合したテトラアルコキシシランの2量体である。重合度mは、テトラアルコキシシランの濃度、脱水縮合するときの温度等によって制御できる。
【0024】
式(I-2)で表される化合物としては、式(I-1)で表されるテトラアルコキシシランを脱水縮合して重合してもよいし、市販のものを用いてもよい。式(I-2)で表される化合物の市販のものとしては、例えば、三菱ケミカル(株)製のメチルシリケートオリゴマーMS51、MS56等が挙げられる。
【0025】
アルコキシシラン(A)の含有量は、プライマー組成物の総質量に対して、0.01質量%以上2.0質量%以下が好ましく、0.02質量%以上1.5質量%以下がより好ましく、0.03質量%以上1.0質量%以下がさらに好ましい。アルコキシシラン(A)の含有量が上記下限値以上であると、機能層30に様々な種類の機能性付与化合物を導入しやすく、耐摩耗、耐光性等にも優れる。アルコキシシラン(A)の含有量が上記上限値以下であると、プライマー組成物を樹脂基材10に塗布した際における外観変化を抑制しやすい。アルコキシシラン(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
アクリロイル基及びエポキシ基からなる群から選ばれる1種以上の基を有するアルコキシシラン(C)は、下記一般式(III-1)で表される化合物(C1)、下記一般式(III-2)で表される化合物(C2)、及び下記一般式(III-3)又は下記一般式(III-4)で表される構造単位を含む化合物(C3)からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含むことが好ましい。
【0027】
【化4】
【0028】
【化5】
【0029】
【化6】
【0030】
式(III-1)中、Rは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基を表し、これらのうち少なくとも1つは置換基として(メタ)アクリロイル基又はエポキシ基を有する。式(III-2)中、Rは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基を表し、これらのうち少なくとも1つは置換基として(メタ)アクリロイル基又はエポキシ基を有する。sは、0~1000である。式(III-3)中、Rはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基を表し、これらのうち少なくとも1つは置換基として(メタ)アクリロイル基又はエポキシ基を有する。Rは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基を表す。Yは、それぞれ独立して、2価の連結基である。nは1~1000である。式(III-4)中、R、R及びYは、式(III-3)におけるR、R及びYと同じである。Rは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基を表す。p、q、及びrは、それぞれ独立して、0~1000であり、pが0のとき、q及びrは、それぞれ独立して、1~1000であり、ただし、pが1以上のとき、q及びrは、それぞれ独立して、0~1000である。
【0031】
式(III-1)で表される化合物(C1)としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリプロポキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリブトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン等の(メタ)アクリロイルオキシを有するアルコキシシラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリブトキシシラン等のエポキシ基を有するアルコキシシラン等が挙げられる。式(III-1)で表される化合物(C1)のうち、脱水縮合しやすい観点から、置換基として(メタ)アクリロイルオキシ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基を有するアルコキシシラン、置換基としてエポキシ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基を有するアルコキシシラン等が挙げられ、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0032】
式(III-2)で表される化合物(C2)としては、例えば、Rがメチル基でsが0~1000の化合物、Rがエチル基でsが0~1000の化合物、Rがブチル基でsが0~1000の化合物が挙げられる。
【0033】
式(III-2)で表される化合物(C2)のsは、重合度を表し、0以上1000以下であり、10以上80以下が好ましく、30以上50以下がより好ましい。重合度sが上記下限値以上であると、プライマー層20の表面において、より多くのシラノール基を形成しやすい。重合度sが上記上限値以下であると、有機溶媒(D)に溶解しやすい。式(III-2)で表される化合物(C2)は、置換基として(メタ)アクリロイル基又はエポキシ基を有する2分子以上のテトラアルコキシシランが分子間で脱水縮合した重合体である。重合度sが0の場合、式(III-2)で表される化合物(C2)は、置換基として(メタ)アクリロイル基又はエポキシ基を有するテトラアルコキシシラン2分子が脱水縮合したテトラアルコキシシランの2量体である。重合度sは、テトラアルコキシシランの濃度、脱水縮合するときの温度等によって制御できる。
【0034】
式(III-1)で表される化合物(C1)としては、市販のものを用いてもよい。式(III-1)で表される化合物(C1)の市販のものとしては、例えば、信越化学工業(株)製のKBM403、KBM503等が挙げられる。
【0035】
式(III-2)で表される化合物(C2)としては、市販のものを用いてもよい。式(III-2)で表される化合物(C2)の市販のものとしては、例えば、信越化学工業(株)製のKR516等が挙げられる。
【0036】
式(III-3)又は式(III-4)で表される化合物(C3)において、Yは2価連結基であり、2価の連結基としては、例えば、炭素数1~10の2価の炭化水素基、エーテル結合(-O-)、及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基からなる群から選ばれる1種以上の基とトリアルコキシシリル基とを有する化合物(C3)において、アルコキシ基としては、炭素数が1~4のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基がより好ましい。化合物(C3)としては、(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基からなる群から選ばれる1種以上の基とトリメトキシシリル基及びトリエトキシシリル基からなる群から選ばれる1種以上の基とを有する化合物が好ましく、アクリロイル基及びエポキシ基からなる群から選ばれる1種以上の基とトリメトキシシリル基及びトリエトキシシリル基からなる群から選ばれる1種以上の基とを有する化合物がより好ましい。化合物(C3)としては、市販のものを用いてもよい。化合物(C3)の市販のものとしては、例えば、信越化学工業(株)製の、X-12-984S、X-12-1048、X-12-1050等が挙げられる。
【0037】
アルコキシシラン(C)の含有量は、プライマー組成物の総質量に対して、0.01質量%以上3.0質量%以下が好ましく、0.02質量%以上2.0質量%以下がより好ましく、0.03質量%以上1.5質量%以下がさらに好ましい。アルコキシシラン(C)の含有量が上記下限値以上であると、機能層30に様々な種類の機能性付与化合物を導入しやすい。アルコキシシラン(C)の含有量が上記上限値以下であると、プライマー組成物を樹脂基材10に塗布した際における外観変化を抑制しやすい。
【0038】
アルコキシシラン(A)の含有量と、アルコキシシラン(C)の含有量との合計(以下、A+C量ともいう。)は、プライマー組成物の総質量に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.02質量%以上3質量%以下がより好ましく、0.04質量%以上2.0質量%以下がさらに好ましい。A+C量が上記下限値以上であると、機能層30に様々な種類の機能性付与化合物を導入しやすい。A+C量が上記上限値以下であると、プライマー組成物を樹脂基材10に塗布した際における外観変化を抑制しやすい。
【0039】
アミノアルキルアルコキシシラン(B)は、下記一般式(II-1)で表される化合物及び下記一般式(II-2)で表される化合物から選ばれる1種以上である。
【0040】
【化7】
【0041】
式(II-1)中、Rは、それぞれ独立に炭素数1又は2のアルキル基を表す。xは、1~6の整数、yは、1~10の整数、nは、0~10の整数である。式(II-2)中、Rは、それぞれ独立に炭素数1又は2のアルキル基を表す。zは、1~10の整数、wは、1~10の整数である。
【0042】
式(II-1)中、xは、1~6の整数であり、2~6が好ましい。xが上記数値範囲内であると、アルコキシシラン(A)の加水分解と加水分解に続く縮重合反応を促進しやすい。式(II-1)中、yは、1~10の整数であり、2~3が好ましい。yが上記数値範囲内であると、アルコキシシラン(A)の脱水縮合反応を促進しやすい。式(II-1)中、nは、0~10の整数であり、1~2が好ましい。nが上記数値範囲内であると、アルコキシシラン(A)の脱水縮合反応を促進しやすい。
【0043】
式(II-1)で表される化合物としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルトリエトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミン等が挙げられる。式(II-1)で表される化合物としては、シランカップリング剤との密着性がより発揮されやすい観点から、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0044】
式(II-2)中、zは、1~10の整数であり、2~4が好ましい。zが上記数値範囲内であると、アルコキシシラン(A)の脱水縮合反応を促進しやすい。式(II-2)中、wは、1~10の整数であり、2~4が好ましい。wが上記数値範囲内であると、アルコキシシラン(A)の脱水縮合反応を促進しやすい。
【0045】
式(II-2)で表される化合物としては、例えば、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)アミン、ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミン等が挙げられる。式(II-2)で表される化合物としては、加水分解しやすい観点から、ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミンが好ましい。
【0046】
アミノアルキルアルコキシシラン(B)の含有量は、アルコキシシラン(A)の含有量と、アルコキシシラン(C)の含有量に対して、1割から同量を添加するが、プライマー組成物の総質量に対して、0.001質量%以上1.5質量%以下が好ましく、0.005質量%以上1.0質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上0.8質量%以下がさらに好ましい。アミノアルキルアルコキシシラン(B)の含有量が上記下限値以上であると、機能層30に様々な種類の機能性付与化合物を導入しやすい。アミノアルキルアルコキシシラン(B)の含有量が上記上限値以下であると、プライマー組成物を樹脂基材10に塗布した際における外観変化を抑制しやすい。
【0047】
プライマー組成物中のアミノアルキルアルコキシシラン(B)の含有量と、アルコキシシラン(A)の含有量とアルコキシシラン(C)の含有量との合計、の比(以下、B/(A+C))比ともいう。)は、0.005以上1以下が好ましく、0.015以上0.7以下がより好ましく、0.05以上0.5以下がさらに好ましい。B/(A+C)比が上記下限値以上であると、機能層30に様々な種類の機能性付与化合物を導入しやすい。B/(A+C)比が上記上限値以下であると、プライマー組成物を樹脂基材10に塗布した際における外観変化を抑制しやすい。
【0048】
アルコキシシラン(A)の含有量と、アミノアルキルアルコキシシラン(B)の含有量アルコキシシラン(C)との合計(以下、A+B+C量ともいう。)は、プライマー組成物の総質量に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.03質量%以上3.5質量%以下がより好ましく、0.05質量%以上2.5質量%以下がさらに好ましい。A+B+C量が上記下限値以上であると、機能層30に様々な種類の機能性付与化合物を導入しやすい。A+B+C量が上記上限値以下であると、プライマー組成物を樹脂基材10に塗布した際における外観変化を抑制しやすい。
【0049】
有機溶媒(D)は、アルコキシシラン(A)と、アミノアルキルアルコキシシラン(B)と、アクリロイル基及びエポキシ基からなる群から選ばれる1種以上の基を有するアルコキシシラン(C)とを溶解又は分散し、プライマー組成物とするものであれば、特に限定されない。有機溶媒(D)としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(IPA)、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒、ジクロロメタン、トリクロロメタン等の塩素系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒の中でも、アルコキシシラン(A)及びアミノアルキルアルコキシシラン(B)を溶解しやすいアルコール系溶媒、ケトン系溶媒が好ましく、アルコール系溶媒がより好ましく、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノールがさらに好ましい。有機溶媒(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
有機溶媒(D)の含有量は、プライマー組成物の総質量に対して、95質量%以上99.99.9質量%以下が好ましく、96質量%以上99.9質量%以下がより好ましく、97質量%以上99.9質量%以下がさらに好ましい。有機溶媒(D)の含有量が上記下限値以上であると、プライマー組成物を樹脂基材10に塗布した際における外観変化を抑制しやすい。有機溶媒(D)の含有量が上記上限値以下であると、機能層30に様々な種類の機能性付与化合物を導入しやすい。
【0051】
本開示に係るプライマー組成物は、必要に応じて、アルコキシシラン(A)、アミノアルキルアルコキシシラン(B)、アルコキシシラン(C)及び有機溶媒(D)を除く任意成分を含有してもよい。任意成分としては、例えば、表面調整剤、水等が挙げられる。本開示に係るプライマー組成物が任意成分を含有する場合、任意成分の含有量は、プライマー組成物の総質量に対して、0.00001~1質量%が好ましい。
【0052】
プライマー層20の厚さT20は、特に限定されない。プライマー層20の厚さT20は、例えば、0.001μm以上2μm以下が好ましく、0.002μm以上0.6μm以下がより好ましく、0.005μm以上0.2μm以下がさらに好ましい。厚さT20が上記下限値以上であると、プライマー層20の表面に機能層30を均一に形成しやすい。厚さT20が上記上限値以下であると、樹脂基材10の一方の面と、プライマー層20との密着性を向上しやすい。プライマー層20の厚さT20は、X線電子分光装置等を用いて測定できる。
【0053】
機能層30は、樹脂基材10に様々な機能性を付与できる層である。機能層30としては、親水性を備える親水層、撥水性を備える撥水層、抗菌性及び抗ウイルス性の何れか一方を備える抗菌・抗ウイルス層等が挙げられる。
【0054】
機能層30は、シランカップリング剤を含有してもよい。本明細書において、シランカップリング剤とは、有機物とケイ素から構成される化合物で、分子中に2個以上の異なる反応基を有する化合物をいう。反応基のうちの一つは、無機質材料と化学結合する反応基で、もう一つは、有機質材料と化学結合する反応基である。シランカップリング剤を用いることで、通常では非常に結びつきにくい有機質材料と無機質材料とを結びつけることができる。
【0055】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、5-ヘキセニルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、4-ビニルフェニルトリメトキシシラン、3-(4-ビニルフェニル)プロピルトリメトキシシラン、4-ビニルフェニルメチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、及びこれらの部分加水分解物等が挙げられる。
また機能性を付与するシランカップリング剤として、撥水性付与化合物としては、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(KBM-7103、信越化学工業(株)製)等のパーフルオロアルキル基含有シランカップリング剤、フッ素樹脂(FG-5084F130-0.1、(株)フロロテクノロジー製)等が挙げられる。抗菌・抗ウイルス性付与化合物としては、ジメチルオクタデシル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド(KBM-9418-40、信越化学工業(株)製、AEM―5700、AEGIS ENVIRONMENTS社製)等の第四級アンモニウム塩含有シランカップリング剤が挙げられる。
シランカップリング剤としては、操作性、副生物の留去のしやすさから、メトキシシラン又はエトキシシランが好ましい。これらのシランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
機能層30は、シランカップリング剤以外の化合物であって、樹脂基材・塗装基材10に様々な機能性を付与できる化合物(以下、「機能性付与化合物」ともいう。)を含有してもよい。機能性付与化合物としては、プライマー層中のアルコキシシラン(A)、アミノアルキルアルコキシシラン(B)アルコキシシラン(C)、又は機能層に添加したシランカップリング剤と反応して化学結合を形成できる反応性基を有するものが好ましい。反応性基としては、例えば、アルコキシシリル基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、スルホン基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基等のラジカル重合性不飽和結合を有する基等が挙げられる。機能性付与化合物としては、親水性を付与できる化合物(以下、「親水性付与化合物」ともいう。)、撥水性を付与できる化合物(以下、「撥水性付与化合物」ともいう。)、抗菌・抗ウイルス性を付与できる化合物(以下、「抗菌・抗ウイルス性付与化合物」ともいう。)等が挙げられる。親水性付与化合物としては、特開2016-020461号公報に記載の親水性化合物が挙げられる。親水性化合物としては、例えば、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びその塩、N-t-ブチルアクリルアミドスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、2-ナトリウムスルホエチルメタクリレート、アリルスルホン酸ナトリウム、p-スチレンスルホン酸ナトリウム、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
この機能層30は、異なる成分を2回以上に分けて塗布しても良い。
【0057】
機能層30の厚さT30は、特に限定されない。機能層30の厚さT30は、例えば、0.0004μm以上1μm以下が好ましく、0.0008μm以上0.5μm以下がより好ましく、0.001μm以上0.3μm以下がさらに好ましい。厚さT30が上記下限値以上であると、樹脂基材10に充分な機能性を付与しやすい。厚さT30が上記上限値以下であると、プライマー層20との密着性を向上しやすい。機能層30の厚さT30は、X線電子分光装置等を用いて測定できる。
【0058】
シランカップリング剤の導入量は、プライマー層20のシラノール基の量に比例する。プライマー層20のシラノール基の量は、赤外分光法のシロキサン結合のピークによって確認できる。シロキサン結合のピークが大きいほど、プライマー層20のシラノール基の量が多い。赤外分光法のシロキサン結合のピークは、1050cm-1付近に見られる。プライマー層20のシラノール基の量は、赤外分光法のメチレン基のピークによっても確認できる。メチレン基のピークが小さいほど、プライマー層20に残存するアルコキシ基が少なく、その分シラノール基が多い。赤外分光法のメチレン基のピークは、2950cm-1付近に見られる。
【0059】
機能性部材100としては、水を使用する設備を有する水回り空間に用いる観点から、親水性を備える親水性部材が好ましい。機能性部材100が親水性部材である場合、機能性部材100の親水性を評価する指標として、機能性部材100の表面に水滴を滴下し、水の接触角を測定する方法が挙げられる。水の接触角を測定する装置は、例えば、接触角計(協和界面科学(株)製)が用いられる。滴下液は蒸留水、滴下量は1.0μLとし、接触角は、θ/2法(A half-angle Method)によって算出できる。水の接触角は0°から180°で規定され、角度が小さいほど親水性である。機能性部材100が親水性部材である場合、水の接触角は0°以上60°以下が好ましく、0°以上40°以下がより好ましく、0°以上30°以下がさらに好ましい。水の接触角が上記上限値以下であると、機能性部材100は親水性に優れる。水の接触角の下限値は小さいほど好ましい。水の接触角の下限値は、実質的には5°程度である。
【0060】
親水性部材が適用可能な用途としては、例えば、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、台所用品、窓、扉、床、机、車両のボディ、ソーラーパネル、壁、ディスプレイ、看板、タッチパネル等が挙げられる。
【0061】
機能性部材100が撥水性部材である場合、機能性部材100の撥水性を評価する指標としては、機能性部材100の親水性を評価する指標と同様、水の接触角を測定する方法が挙げられる。機能性部材100が撥水性部材である場合、水の接触角は60°以上180°以下が好ましく、70°以上180°以下がより好ましく、80°以上180°以下がさらに好ましい。水の接触角が上記下限値以上であると、機能性部材100は撥水性に優れる。水の接触角の上限値は大きいほど好ましい。水の接触角の上限値は、実質的には150°程度である。
【0062】
撥水性部材が適用可能な用途としては、例えば、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、台所用品、窓、扉、床、机、車両のボディ、ソーラーパネル、壁、ディスプレイ、看板、タッチパネル等が挙げられる。
【0063】
機能性部材100が抗菌・抗ウイルス性部材である場合、機能性部材100の抗菌性の評価は、JIS Z2801に記載された抗菌性試験方法に準じて行われる。機能性部材100の抗菌性は、JIS Z2801に規定する抗菌活性値に基づいて判断される。抗菌活性値が2.0以上であると、機能性部材100は、抗菌性に優れる。機能性部材100の抗ウイルス性の評価は、ISO 21702に規定する抗ウイルス性試験方法に準じて行われる。機能性部材100の抗ウイルス性は、ISO 21702に規定する抗ウイルス活性値に基づいて判断される。抗ウイルス活性値が2.0以上であると、機能性部材100は、抗ウイルス性に優れる。
【0064】
抗菌・抗ウイルス性部材が適用可能な用途としては、例えば、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、台所用品、窓、扉、床、机、壁、ハンドル、タッチパネル、玩具、医療機器等が挙げられる。
【0065】
機能性部材100の形状は特に限定されず、例えば、平面視矩形であってもよく、平面視楕円形であってもよい。
【0066】
本開示に係る機能性部材の製造方法は、プライマー層を形成する工程と、機能層を形成する工程とを含む。本開示に係る機能性部材の製造方法によって、基材の一方の面に位置するプライマー層と、前記プライマー層の表面に位置する機能層と、を備える機能性部材が得られる。プライマー層を形成する工程は、樹脂基材の一方の面に対して、本開示に係るプライマー組成物を塗布し、硬化させる工程である。
【0067】
本開示に係るプライマー組成物は、アルコキシシラン(A)及びアミノアルキルアルコキシシラン(B)と、アルコキシシラン(C)と、必要に応じて表面調整剤(任意成分)とを有機溶媒(D)に溶解後、攪拌することによって得られる。プライマー組成物を攪拌する方法は特に限定されず、常法によって攪拌することができる。プライマー組成物を樹脂基材10の一方の面に塗布する方法は特に限定されず、例えば、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、フィルムアプリケーター法、スクリーン印刷法、バーコーター法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法が適用できる。プライマー組成物の塗布量は特に限定されず、例えば、100cm×100cmの大きさの樹脂基材10に対し、1~50gが好ましく、5~20gがより好ましい。プライマー組成物の塗布量が上記数値範囲内であると、プライマー層20の厚さT20を0.001~2μmにしやすい。
【0068】
プライマー組成物を塗布する前において、樹脂基材・塗装基材10の一方の面をあらかじめ脱脂しておくことが好ましい。樹脂基材・塗装基材10の一方の面をあらかじめ脱脂しておくことによって、樹脂基材・塗装基材10とプライマー層20との密着性をより高めることができる。脱脂には、アセトン、エタノール、2-プロパノール等の有機溶媒を用いることができる。
【0069】
プライマー組成物を硬化させる方法は特に限定されず、任意の温度で加熱して硬化させる方法が挙げられる。プライマー組成物を硬化させる温度は、プライマー組成物の組成、塗布量、硬化時間を勘案して適宜決定できる。プライマー組成物を硬化させる温度は、例えば、10℃以上120℃以下が好ましく、20℃以上100℃以下がより好ましい。プライマー組成物を硬化させる温度が上記下限値以上であると、アルコキシシラン(A)、アミノアルキルアルコキシシラン(B)及びアルコキシシラン(C)の脱水縮合反応が進行しやすい。プライマー組成物を硬化させる温度が上記上限値以下であると、樹脂基材、塗装表面10の変質を抑制しやすい。
【0070】
機能層を形成する工程は、プライマー層の表面に機能性付与化合物を含む機能性組成物を塗布し、硬化させる工程である。機能性組成物をプライマー層20の表面に塗布する方法は特に限定されず、プライマー組成物を樹脂基材10の一方の面に塗布する方法と同様の方法が適用できる。機能性組成物の塗布量は、例えば、プライマー層20の面積100cm×100cmに対し、0.5~50gが好ましく、1~20gがより好ましい。機能性組成物の塗布量が上記数値範囲内であると、機能層30の厚さT30を0.0004~1μmにしやすい。
【0071】
機能性組成物を硬化させる方法は特に限定されず、任意の温度で加熱して硬化させる方法が挙げられる。機能性組成物を硬化させる温度は、機能性組成物の組成、塗布量、硬化時間を勘案して適宜決定できる。機能性組成物を硬化させる温度は、例えば、10℃以上120℃以下が好ましく、20℃以上100℃以下がより好ましい。機能性組成物を硬化させる温度が上記下限値以上であると、シランカップリング剤の脱水縮合反応が進行しやすい。機能性組成物を硬化させる温度が上記上限値以下であると、樹脂基材10の変質を抑制しやすい。また、重合性不飽和結合を有する場合には、電子線、紫外線、LED、等によっても硬化ができる。
【0072】
プライマー層を形成する工程によって、樹脂基材10の一方の面にプライマー層20が形成される。機能層を形成する工程によって、プライマー層20の表面に機能層30が形成された機能性部材100が得られる。
【0073】
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳細に説明した。しかし、本開示は上記の実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。上記の実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【0074】
上述の実施形態では、樹脂基材10の一方の面にプライマー層20が設けられている。しかしながら、本開示はこれに限定されず、樹脂基材10の両方の面にプライマー層20が設けられていてもよい。
【0075】
上述の実施形態では、樹脂基材10の一方の面に機能層30が設けられている。しかしながら、本開示はこれに限定されず、樹脂基材10の両方の面に機能層30が設けられていてもよい。
【実施例0076】
実施例によって本開示をさらに詳細に説明する。しかし、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
【0077】
本実施例において使用した基材、アルコキシシラン(A)、アミノアルキルアルコキシシラン(B)及びアルコキシシラン(C)は、下記の[使用原料]に示す通りである。
【0078】
[使用原料]
≪基材≫
アクリル樹脂上にウレタン塗膜を形成した基材:サンユーペイント株式会社(セラウッド)塗膜。
【0079】
アクリル樹脂からなる基材:三菱ケミカル株式会社(アクリライト)。
ポリプロピレン樹脂からなる基材:アズワン株式会社購入品。
【0080】
≪アルコキシシラン(A)≫
MS56:メチルシリケートオリゴマーMS56、式(I-2)におけるRがメチル基、mが0~98、三菱ケミカル(株)製。
【0081】
≪アミノアルキルアルコキシシラン(B)≫
KBM603:3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、式(II-1)におけるRがメチル基、xが2、yが3、nが1、信越化学工業(株)製。
【0082】
≪アルコキシシラン(C)≫
X-12-981S:エポキシ基とトリエトキシシリル基とを有する化合物、エポキシ基の数/トリエトキシシリル基の数=3、信越化学工業(株)製。
【0083】
KBM403:式(III-1)におけるRがメチル基又は3-グリドキシプロピル基、信越化学工業(株)製。
【0084】
KR516:式(III-2)におけるRがメチル基又はエチル基、sが1~1000、信越化学工業(株)製。
【0085】
KBM5103:式(III-1)におけるRがメチル基又は3-アクリロイルオキシプロピル基、信越化学工業(株)製。
【0086】
KBM503:式(III-1)におけるRがメチル基又は3-メタクリロイルオキシプロピル基、信越化学工業(株)製。
【0087】
≪抗菌・抗ウイルス成分≫
KBM-9418-40:ジメチルオクタデシル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド、信越化学工業(株)製。
【0088】
≪親水性成分≫
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸:富士フィルム和光純薬。
【0089】
≪撥水性成分≫
FG-5084F130-0.1:フッ素を含むオレフィンを重合して得られる合成樹脂を不活性有機溶剤に含有させて得られるフッ素樹脂0.1質量%溶液、(株)フロロテクノロジー製。
【0090】
≪その他の成分≫
D-20:チタン系硬化触媒、信越化学工業(株)製。
【0091】
[実施例1]
≪プライマー組成物の調液≫
アルコキシシラン(A)としてMS56を0.36g、アミノアルキルアルコキシシラン(B)としてKBM603を0.14g、アルコキシシラン(C)としてX-12-981Sを0.54g、1-ブタノールに混合し、5分攪拌して溶解させ、1-ブタノールを99.5質量%含有するプライマー組成物を得た。表1~4中、「-」は、該当する成分が添加されていないこと、又は評価試験を行っていないことを示す。「%」は「質量%」を示す。
【0092】
≪抗菌・抗ウイルス組成物(F1)の調液≫
抗菌・抗ウイルス成分としてKBM-9418-40を4.0g、硬化触媒としてD-20を0.04g、1-ブタノール34.92g、2-プロパノール55.04gに混合し、抗菌・抗ウイルス組成物(F1)とした。
【0093】
≪プライマー層及び機能層の形成≫
樹脂基材として大きさ5cm×5cmのアクリル樹脂上にウレタン塗膜を形成した基材(S1)を用い、基材(S1)の表面にプライマー組成物2mLを、キッチンペーパー(ライオン(株)製、「リードクッキングペーパー」)に染み込ませて塗布し、室温で1時間養生してプライマー層を形成した。その後、機能層用組成物として抗菌・抗ウイルス組成物(F1)2mLをリードクッキングペーパーに染み込ませて前記プライマー層上に塗布し、室温で2時間養生することで抗菌・抗ウイルス性能を有する機能性コーテイング部材を作製した。得られた機能性コーテイング部材を用いて、以下の方法によって表面自由エネルギー及び抗菌活性値を測定した。
【0094】
≪表面自由エネルギーの測定≫
(1)初期の表面自由エネルギーの測定
接触角の数値から北崎・畑の式によって算出した値を表面自由エネルギーとした。接触角計(協和界面科学(株)製)を用い、上記の方法によって得られた機能性コーテイング部材の表面に蒸留水、ジヨードメタン、ヘキサデカンを滴下し、各々の接触角を測定した。滴下量は2.0μLとし、接触角は、θ/2法によって算出した。この接触角の数値から北崎・畑の式によって算出した値を初期の表面自由エネルギーとした。
【0095】
(2)エタノールふき取り後の表面自由エネルギーの測定
上記の方法で得られた機能性コーテイング部材の表面をエタノールを用いて濡らした紙ワイパーにて1kg荷重で50回擦り、その後上記と同様の方法によって表面自由エネルギーを求め、得られた値をエタノールふき取り後の表面自由エネルギーとした。
【0096】
≪抗菌活性値の測定≫
(1)初期の抗菌活性値の測定
抗菌性の評価は、試験菌種を大腸菌のみ使用することを除き、JIS Z2801に記載の抗菌性試験方法に準じて抗菌活性値を測定し、得られた値を初期の抗菌活性値とした。
【0097】
(2)サンシャインウェザーメーターにて300時間照射後の抗菌活性値の測定
上記の方法によって得られた機能性コーテイング部材の表面に対して、JISB7753に記載の耐候性試験方法に準じて78.5W/mの照度の紫外線を300時間照射し、その後上記と同様の方法によって抗菌活性値を測定し、得られた値をサンシャインウェザーメーターにて300時間照射後の抗菌活性値とした。
【0098】
[実施例2~7、参考例1、比較例1]
表1に示すプライマー組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして機能性コーテイング部材を作製し、表面自由エネルギーを測定した。参考例1ではプライマー組成物及び抗菌・抗ウイルス組成物を用いなかった。
【0099】
[実施例8~11、参考例2、比較例2]
表2に示す基材、プライマー組成物及び抗菌・抗ウイルス組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして機能性コーテイング部材を作製し、表面自由エネルギーを測定した。参考例2ではプライマー組成物及び抗菌・抗ウイルス組成物を用いなかった。
【0100】
[実施例12]
≪プライマー組成物の調液≫
アルコキシシラン(A)としてMS56を0.07g、アミノアルキルアルコキシシラン(B)としてKBM603を0.05g、アルコキシシラン(C)としてX-12-981Sを0.07gを、1-ブタノールに混合し、5分攪拌して溶解させ、1-ブタノールを99.81質量%含有するプライマー組成物を得た。
【0101】
≪親水性組成物(F2)の調液≫
溶液(1)
KBM5103 0.13gを蒸留水 9.7gに溶解し、4%塩化水素水溶液 0.2gを混合して、親水性組成物(F2-1)を作製した。
溶液(2)
水酸化ナトリウム1.74gを蒸留水17.43gに溶解し、2-ブトキシエタノール69.74gを添加した。ここに2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸9.03g、尿素1.57gを添加し溶解した。その後、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン0.48gを添加し混合して親水性組成物(F2-2)とした。
【0102】
≪プライマー層及び機能層の形成≫
樹脂基材として大きさ5cm×5cmのアクリル樹脂上にウレタン塗膜を形成した基材(S1)を用い、基材(S1)の表面にプライマー組成物2mLを、リードクッキングペーパーに染み込ませて塗布し、室温で1時間養生してプライマー層を形成した。その後、機能層用組成物として、親水性組成物(F2-1)2mLをリードクッキングペーパーに染み込ませて前記プライマー層上に塗布し、室温で5分間養生後、親水性組成物(F2-2)2mLをリードクッキングペーパーに染み込ませて前記親水性組成物(F2-1)上に塗布、メタルハライドランプにより1cm当たり30mWの強度で10秒間、紫外線照射した後基材を水洗し、親水性を有する機能性コーテイング部材を作製した。得られた機能性コーテイング部材を用いて、実施例1と同様にして表面自由エネルギーを測定し、以下の方法によって親水性を測定した。
【0103】
≪親水性の測定≫
(1)初期の水接触角の測定
接触角計(協和界面科学(株)製)を用い、上記の方法によって得られた機能性コーテイング部材の表面に水滴を滴下し、その接触角を測定した。滴下液は蒸留水、滴下量は2.0μLとし、接触角は、θ/2法によって算出した。得られた値を初期の水接触角とした。
【0104】
(2)磨耗2000回後の水接触角の測定
新東科学製摩耗試験機を用い、上記の方法によって得られた機能性コーテイング部材の表面を蒸留水にて濡らした綿布帛にて1kg荷重で2000回擦り、その後上記と同様の方法によって水接触角を求め、得られた値を磨耗2000回後の水接触角とした。
【0105】
(3)磨耗4000回後の水接触角の測定
新東科学製摩耗試験機を用い、上記の方法によって得られた機能性コーテイング部材の表面を蒸留水にて濡らした綿布帛にて1kg荷重で4000回擦り、その後上記と同様の方法によって水接触角を求め、得られた値を磨耗4000回後の水接触角とした。
【0106】
[実施例14~20、参考例3~5、比較例3及び5~6]
表3及び4に示す基材、プライマー組成物を用いた以外は、実施例12と同様にして機能性コーテイング部材を作製し、表面自由エネルギー及び親水性を測定した。参考例3~5ではプライマー組成物及び親水性組成物を用いなかった。
【0107】
[実施例13]
≪プライマー層及び機能層の形成≫
抗菌・抗ウイルス組成物(F1)の代わりに撥水性組成物(F3)としてFG-5084F130-0.1をそのまま用いた以外は、実施例1と同様にして、撥水性を有する機能性コーテイング部材を作製した。得られた機能性コーテイング部材を用いて、実施例1と同様にして表面自由エネルギーを測定し、以下の方法によって撥水性を測定した。
【0108】
≪撥水性の測定≫
親水性の測定と同様にして、接触角計(協和界面科学(株)製)を用い、上記の方法によって得られた機能性コーテイング部材の表面に水滴を滴下し、その接触角を測定した。滴下液は蒸留水、滴下量は2.0μLとし、接触角は、θ/2法によって算出した。
【0109】
[参考例3~5、比較例4]
表3及び4に示す基材、プライマー組成物を用いた以外は、実施例13と同様にして機能性コーテイング部材を作製し、表面自由エネルギー及び撥水性を測定した。参考例3~5ではプライマー組成物及び撥水性組成物を用いなかった。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
【表3】
【0113】
【表4】
【0114】
表1~4に示すように、本開示を適用した実施例1~20は、エタノールを用いてふき取る前と後との表面自由エネルギーの差が小さいことから、プライマー層上の機能層が剥がれにくく化学的な影響に対する耐久性を付与できたことが判った。実施例1は、サンシャインウェザーメーターにて300時間照射前と後との抗菌活性値の差が小さいことから、プライマー層上の機能層の機能が維持されやすく物理的な影響に対する耐久性を付与できたことが判った。実施例12及び14~20は、親水性の機能層を形成した例であり、磨耗前と後との水接触角の差が小さいことから、プライマー層上の機能層の機能が維持されやすく物理的な影響に対する耐久性を付与できたことが判った。実施例13は、撥水性の機能層を形成した例であり、磨耗前と後との水接触角の差が小さいことから、プライマー層上の機能層の機能が維持されやすく物理的な影響に対する耐久性を付与できたことが判った。
【0115】
一方、アルコキシシラン(C)を含有しない比較例1~2は、アルコキシシラン(C)を含有する実施例1~11と比べてエタノールを用いてふき取る前と後との表面自由エネルギーの差が大きいことから、プライマー層上の機能層が剥がれやすく化学的な影響に対する耐久性を付与できていないことが判った。比較例1は、アルコキシシラン(C)を含有する実施例1と比べてサンシャインウェザーメーターにて300時間照射前と後との抗菌活性値の差が大きいことから、プライマー層上の機能層の機能を維持しにくく物理的な影響に対する耐久性を付与できていないことが判った。
【0116】
比較例3及び5~6は、親水性の機能層を形成した例であり、アルコキシシラン(C)を含有する実施例12及び14~20と比べてエタノールを用いてふき取る前と後との表面自由エネルギーの差が大きいことから、プライマー層上の機能層が剥がれやすく物理的な影響に対する耐久性を付与できていないことが判った。比較例3は、親水性の機能層を形成した例であり、実施例12及び14~20と比べて磨耗前と後との水接触角の差が大きいことから、プライマー層上の機能層の機能を維持しにくく物理的な影響に対する耐久性を付与できていないことが判った。
【0117】
比較例4は、撥水性の機能層を形成した例であり、アルコキシシラン(C)を含有する実施例13と比べてエタノールを用いてふき取る前と後との表面自由エネルギーの差が大きいことから、プライマー層上の機能層が剥がれやすく物理的な影響に対する耐久性を付与できていないことが判った。比較例4は、撥水性の機能層を形成した例であり、実施例13と比べて磨耗前と後との水接触角の差が大きいことから、プライマー層上の機能層の機能を維持しにくく物理的な影響に対する耐久性を付与できていないことが判った。
【符号の説明】
【0118】
10…樹脂基材、20…プライマー層、30…機能層、100…機能性部材
図1