(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135050
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】高周波パッケージ
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H01L23/12 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045547
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】海野 雄丈
(57)【要約】
【課題】バイアス回路を含めた回路全体の小型化を可能とする高周波パッケージを得ること。
【解決手段】高周波パッケージ1は、回路パターンが形成された導体32a,32bを有する多層基板30と、多層基板30に実装されている高周波デバイス10と、ボンディングワイヤ20を介して高周波デバイス10に電気的に接続され、かつ多層基板30の導体32a,32bに接合されている薄膜集積回路基板40と、を備える。薄膜集積回路基板40は、誘電体基板41と、誘電体基板41のうち、多層基板30の方へ向けられる第1面と、第1面とは逆側の第2面と、第1面と第2面との間の面の1つである第3面とにわたって設けられている第1の導体と、誘電体基板の第1面に設けられている第2の導体と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路パターンが形成された導体を有する多層基板と、
前記多層基板に実装されている高周波デバイスと、
ボンディングワイヤを介して前記高周波デバイスに電気的に接続され、かつ前記多層基板の前記導体に接合されている薄膜集積回路基板と、を備え、
前記薄膜集積回路基板は、
誘電体基板と、
前記誘電体基板のうち、前記多層基板の方へ向けられる第1面と、前記第1面とは逆側の第2面と、前記第1面と前記第2面との間の面の1つである第3面とにわたって設けられている第1の導体と、
前記誘電体基板の前記第1面に設けられている第2の導体と、を有することを特徴とする高周波パッケージ。
【請求項2】
前記第1の導体のうち前記第1面に設けられている部分は、前記多層基板の前記導体に接合されており、
前記第1の導体のうち前記第2面に設けられている部分には、前記ボンディングワイヤが接合されていることを特徴とする請求項1に記載の高周波パッケージ。
【請求項3】
前記第1の導体のうち前記第2面に設けられている部分の一部が、前記誘電体基板を挟んで前記第2の導体と向かい合わせられていることを特徴とする請求項1または2に記載の高周波パッケージ。
【請求項4】
前記薄膜集積回路基板は、
前記第2面に設けられており、前記誘電体基板を挟んで前記第2の導体と向かい合わせられている第3の導体と、
前記第2面のうち前記第1の導体と前記第3の導体との間の部分に設けられており、前記第1の導体と前記第3の導体とに電気的に接続されている抵抗体と、をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の高周波パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高周波デバイスを備える高周波パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多層基板に形成されたキャビティ内に高周波デバイスが設けられている高周波パッケージが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている高周波パッケージでは、回路が平面的に実装されていることから、高周波デバイスの動作安定化のためのバイアス回路といった搭載部品が増えるほど必要な実装面積が増えることとなり、回路全体が大きくなるという課題があった。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、バイアス回路を含めた回路全体の小型化を可能とする高周波パッケージを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる高周波パッケージは、回路パターンが形成された導体を有する多層基板と、多層基板に実装されている高周波デバイスと、ボンディングワイヤを介して高周波デバイスに電気的に接続され、かつ多層基板の導体に接合されている薄膜集積回路基板と、を備える。薄膜集積回路基板は、誘電体基板と、誘電体基板のうち、多層基板の方へ向けられる第1面と、第1面とは逆側の第2面と、第1面と第2面との間の面の1つである第3面とにわたって設けられている第1の導体と、誘電体基板の第1面に設けられている第2の導体と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示にかかる高周波パッケージは、バイアス回路を含めた回路全体の小型化が可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1にかかる高周波パッケージの断面図
【
図2】実施の形態1にかかる高周波パッケージに備えられる薄膜集積回路基板の構成を示す図
【
図3】実施の形態1にかかる高周波パッケージに備えられる薄膜集積回路基板の等価回路を示す図
【
図4】実施の形態1の変形例にかかる薄膜集積回路基板の構成を示す図
【
図5】実施の形態1の変形例にかかる薄膜集積回路基板の等価回路を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施の形態にかかる高周波パッケージを図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる高周波パッケージ1の断面図である。高周波パッケージ1は、多層基板30と、多層基板30に実装された高周波デバイス10と、ボンディングワイヤ20と、薄膜集積回路基板40と、を有する。高周波デバイス10は、多層基板30のうち凹ませた部分であるキャビティの内部に設けられている。薄膜集積回路基板40は、多層基板30に実装されており、ボンディングワイヤ20を介して高周波デバイス10に電気的に接続されている。
【0011】
多層基板30は、複数の絶縁層31a,31bと、回路パターンが形成された導体32a,32bと、グランドパターンが形成された導体32cと、を有する。多層基板30は、絶縁層31b、導体32c、絶縁層31a、および、導体32a,32bの順に各層が積層された積層体である。各絶縁層31a,31bは、例えば、誘電体であるセラミックである。多層基板30は、例えば、誘電体であるセラミックが積層された低温焼成セラミック多層基板(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramic)である。
【0012】
多層基板30は、絶縁層31aを貫通しており導体32bと導体32cとを導通させるビアホール33を有する。導体32bは、ビアホール33を介してグランドに接続されている。導体32a,32bは、多層基板30の信号パッドを構成する。
【0013】
薄膜集積回路基板40は、多層基板30の導体32a,32bに接合されている。
図1に示すように、薄膜集積回路基板40は、多層基板30の導体32a,32b上に直接実装されている。薄膜集積回路基板40は、誘電体基板41と、第1の導体である導体42aと、第2の導体である導体42bと、を有する。薄膜集積回路基板40は、高周波デバイス10のバイアス回路として機能する。
【0014】
図2は、実施の形態1にかかる高周波パッケージ1に備えられる薄膜集積回路基板40の構成を示す図である。
図3は、実施の形態1にかかる高周波パッケージ1に備えられる薄膜集積回路基板40の等価回路を示す図である。
【0015】
ここで、誘電体基板41のうち、多層基板30の方へ向けられる面を第1面とする。誘電体基板41のうち、第1面とは逆側の面を第2面とする。誘電体基板41のうち、第1面と第2面との間の4つの側面のうちの1つを第3面とする。当該4つの側面のうち、第3面とは逆側の面であって高周波デバイス10の方へ向けられる面を第4面とする。当該4つの側面のうち、第3面および第4面以外の2つの面の一方を第5面とする。第5面は、
図1に示す誘電体基板41のうち、
図1に示す断面よりも手前側の面とする。
【0016】
図2の(a)は、誘電体基板41の第1面側における薄膜集積回路基板40の平面構成を示す。
図2の(b)は、誘電体基板41の第3面側における薄膜集積回路基板40の平面構成を示す。
図2の(c)は、誘電体基板41の第2面側における薄膜集積回路基板40の平面構成を示す。
図2の(d)は、誘電体基板41の第4面側における薄膜集積回路基板40の平面構成を示す。
図2の(e)は、誘電体基板41の第5面側における薄膜集積回路基板40の平面構成を示す。
【0017】
導体42aは、第1面と第2面と第3面とにわたって設けられている。導体42aは、誘電体基板41の裏面である第1面に設けられた裏面導体と、誘電体基板41の表面である第2面に設けられた表面導体と、誘電体基板41のうち表面と裏面との間の側面の1つである第3面に設けられた側面導体とが、互いに一体とされたものといえる。導体42bは、第1面に設けられている。導体42aのうち第1面に設けられている部分と導体42bは、第1面において互いに離されて配置されている。
【0018】
図1に示すように、導体42aのうち誘電体基板41の第1面に設けられている部分は、導体32aに接合されている。導体42bは、導体32bに接合されている。ボンディングワイヤ20の一方の端部は、導体42aのうち第2面に設けられている部分に接合されている。ボンディングワイヤ20の他方の端部は、高周波デバイス10に接合されている。導体42aは、誘電体基板41の第1面側と誘電体基板41の第2面側との間を、誘電体基板41の第3面側を通じて導通させることにより、導体32aとボンディングワイヤ20の一方の端部とを電気的につなぐ。
【0019】
導体42aのうち第2面に設けられている部分のうちの一部は、誘電体基板41を挟んで導体42bと向かい合わせられている。薄膜集積回路基板40のうち、導体42aの当該一部と導体42bとが誘電体基板41を挟んで互いに向かい合わせられている領域は、キャパシタを構成する。
図3に示すキャパシタの記号は、薄膜集積回路基板40におけるキャパシタを表す。薄膜集積回路基板40におけるキャパシタは、高周波デバイス10に並列に接続された並列キャパシタである。
【0020】
図2に示す薄膜集積回路基板40が、
図1に示すように高周波パッケージ1に実装されることにより、高周波デバイス10は、薄膜集積回路基板40に形成された並列キャパシタと、ボンディングワイヤ20を介して接続されているとみなせる。高周波デバイス10に接続された当該並列キャパシタは、高周波デバイス10の動作安定化に寄与する。
【0021】
薄膜集積回路基板40のバイアス回路構成は、多層基板30に合わせたインターフェースを備えるものであれば良く、適宜変形が可能である。次に、薄膜集積回路基板40の変形例について説明する。
【0022】
図4は、実施の形態1の変形例にかかる薄膜集積回路基板40Aの構成を示す図である。
図4に示す薄膜集積回路基板40Aは、
図2に示す薄膜集積回路基板40の変形例である。
図5は、実施の形態1の変形例にかかる薄膜集積回路基板40Aの等価回路を示す図である。
図4の(a)から(e)では、
図2の(a)から(e)と同じ要領で、薄膜集積回路基板40Aの平面構成を示す。
【0023】
薄膜集積回路基板40Aは、誘電体基板41と、第1の導体である導体42aと、第2の導体である導体42bと、第3の導体である導体42cと、抵抗体である抵抗膜43と、を有する。薄膜集積回路基板40Aは、高周波デバイス10のバイアス回路として機能する。
【0024】
薄膜集積回路基板40Aの導体42bは、薄膜集積回路基板40の導体42bと同様に第1面に設けられている。導体42cは、第2面に設けられている。導体42cは、誘電体基板41を挟んで導体42bと向かい合わせられている。導体42aは、第1面と第2面と第3面とにわたって設けられている。薄膜集積回路基板40Aの導体42aのうち第2面に設けられている部分は、導体42cから離されている。抵抗膜43は、第2面のうち導体42aと導体42cとの間の部分に設けられている。抵抗膜43は、導体42aと導体42cとに電気的に接続されている。
【0025】
導体42aのうち誘電体基板41の第1面に設けられている部分は、
図1に示す導体32aに接合される。導体42aは、
図1に示す導体32bに接合されている。薄膜集積回路基板40Aは、
図1に示す薄膜集積回路基板40と同様に、多層基板30の導体32a,32bに接合されている。
【0026】
薄膜集積回路基板40Aのうち、導体42cと導体42bとが誘電体基板41を挟んで互いに向かい合わせられている領域は、キャパシタを構成する。
図5に示すキャパシタの記号は、薄膜集積回路基板40Aにおけるキャパシタを表す。薄膜集積回路基板40Aにおけるキャパシタは、高周波デバイス10に並列に接続された並列キャパシタである。
図5に示す抵抗の記号は、抵抗膜43を表す。薄膜集積回路基板40Aにおける抵抗膜43は、高周波デバイス10に直列に接続された直列抵抗である。
【0027】
図4に示す薄膜集積回路基板40Aが高周波パッケージ1に実装されることにより、高周波デバイス10は、薄膜集積回路基板40Aに形成された並列キャパシタおよび薄膜集積回路基板40Aに形成された直列抵抗と、ボンディングワイヤ20を介して接続されているとみなせる。高周波デバイス10に接続された当該並列キャパシタ、および、高周波デバイス10に接続された当該直列抵抗は、高周波デバイス10の動作安定化に寄与する。
【0028】
ここまで、バイアス回路構成が並列キャパシタである例と、バイアス回路構成が並列キャパシタおよび直列抵抗である例とについて説明したが、実施の形態1におけるバイアス回路構成は、これらに限られないものとする。バイアス回路構成は、高周波デバイス10の動作安定化に寄与する構成であれば良く、例えば、直列キャパシタおよび直列抵抗などであっても良い。直列キャパシタは、高周波デバイス10に直列に接続されたキャパシタである。
【0029】
従来の構成では、多層基板の内部に形成されたキャビティ内に高周波デバイスとバイアス回路とが実装されることがある。この場合、多層基板の信号パッドとバイアス回路とがボンディングワイヤを介して接続され、さらに、バイアス回路と高周波デバイスとがボンディングワイヤを介して接続される。この場合、ボンディングワイヤを介した信号パッドとキャパシタとの接続部分と、ボンディングワイヤを介したキャパシタと高周波デバイスとの接続部分とが平面の方向において並べられる分の実装面積がキャビティ内において必要となるため、高周波パッケージの小型化が困難となる。
【0030】
一方、実施の形態1にかかる高周波パッケージ1は、多層基板30の導体32a,32bに薄膜集積回路基板40が接合されることによって、キャビティ内に高周波デバイスとバイアス回路とが実装される場合に比べて、実装面積を縮小できる。よって、高周波パッケージ1が有するパッケージ構造の小型化を実現できる。以上により、実施の形態1にかかる高周波パッケージ1は、バイアス回路を含めた回路全体の小型化が可能となるという効果を奏する。
【0031】
以上の実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものである。実施の形態の構成は、別の公知の技術と組み合わせることが可能である。本開示の要旨を逸脱しない範囲で、実施の形態の構成の一部を省略または変更することが可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 高周波パッケージ、10 高周波デバイス、20 ボンディングワイヤ、30 多層基板、31a,31b 絶縁層、32a,32b,32c,42a,42b,42c 導体、33 ビアホール、40,40A 薄膜集積回路基板、41 誘電体基板、43 抵抗膜。