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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135053
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】コネクタおよびワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H01R13/42 F
H01R13/42 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045552
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】森永 陽介
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE07
5E087FF06
5E087FF13
5E087FF23
5E087GG24
5E087GG25
5E087GG31
5E087LL04
5E087LL12
5E087QQ04
5E087RR25
(57)【要約】
【課題】組立作業性を向上できるコネクタおよびワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】コネクタ30は、電線20の端部に接続される端子31と、端子31が第1方向X1に沿って内部に収容される収容部50Xと、第1方向X1と交差する第2方向Y1に開口するとともに収容部50Xと連通する筒部60とを有するハウジング40とを備える。コネクタ30は、筒部60の外周に取り付けられたシール部材70と、ハウジング40からのシール部材70の抜けを防止するリテーナ80とを備える。リテーナ80は、第1方向X1の反対方向である第1反対方向X2への端子31の移動を規制する端子位置保証部86を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端部に接続される端子と、
前記端子が第1方向に沿って内部に収容される収容部と、前記第1方向と交差する第2方向に開口するとともに前記収容部と連通する筒部とを有するハウジングと、
前記筒部の外周に取り付けられたシール部材と、
前記ハウジングからの前記シール部材の抜けを防止するリテーナと、を備え、
前記リテーナは、前記第1方向の反対方向である第1反対方向への前記端子の移動を規制する端子位置保証部を有する、コネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記筒部の前記第2方向の端面から前記第2方向に向かって突出する複数の凸部を有し、
前記リテーナは、前記複数の凸部が嵌合する複数の嵌合孔を有する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記筒部の外周縁は、前記第2方向から見た平面形状が四角形に形成されており、
前記複数の凸部は、少なくとも前記四角形の4つの角に設けられている、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記リテーナは、
前記筒部の前記第2方向の端面を被覆するとともに枠状に形成された本体部と、
前記本体部から前記第2方向の反対方向である第2反対方向に向かって突出する前記端子位置保証部と、
前記本体部から前記本体部の径方向外方に向かって突出する抜け止め部と、を有し、
前記抜け止め部は、前記シール部材と前記第2方向において係合可能に設けられている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記リテーナは、前記本体部から前記第2反対方向に向かって突出するガイド凸部を有し、
前記ハウジングは、前記ガイド凸部が嵌合されるガイド凹部を有し、
前記本体部からの前記ガイド凸部の突出量は、前記本体部からの前記端子位置保証部の突出量よりも大きい、請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記リテーナは、前記端子位置保証部と連続して一体に形成されるとともに、前記端子位置保証部を補強する補強部を有し、
前記補強部は、前記本体部から前記第2反対方向に向かって突出しており、
前記本体部からの前記補強部の突出量は、前記本体部からの前記端子位置保証部の突出量よりも小さい、請求項4に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記リテーナは、
前記端子位置保証部が前記収容部に挿入されていない状態で前記リテーナを前記筒部に仮固定するための第1係合部と、
前記端子位置保証部が前記収容部に挿入するとともに前記端子の前記第1反対方向への移動を規制した状態で前記リテーナを前記筒部に固定するための第2係合部と、を有する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記ハウジングは、
前記端子を内部に収容する筒状のインナーハウジングと、
前記インナーハウジングを内部に収容する前記収容部を有するアウターハウジングと、を備え、
前記インナーハウジングは、前記端子位置保証部と前記第1方向において係合可能に形成された係合面を有し、
前記端子位置保証部は、前記インナーハウジングの前記第1反対方向への移動を規制する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記筒部は、前記第2方向の反対方向である第2反対方向に沿って前記端子位置保証部が挿入される貫通孔を有し、
前記貫通孔は、前記筒部を前記第2方向に貫通するとともに、前記収容部と連通している、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のコネクタと、
前記コネクタに接続された前記電線と、を備える、ワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタおよびワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるコネクタとしては、ハウジングと、ハウジングに保持された端子とを備えるものが知られている。端子には、電線の端部が電気的に接続される。コネクタに接続される相手コネクタは、コネクタに挿入されることにより端子と電気的に接続される相手端子を備えている。
【0003】
このようなコネクタには、ハウジングに対して端子および電線が挿入される方向と交差する方向に沿って相手端子が挿入されるものがある(例えば、特許文献1参照)。この種のコネクタは、ハウジングに組み付けられる端子位置保証部材(TPA部材)を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0173220号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記コネクタにおいては、組立作業性の向上が望まれている。
本開示の目的は、組立作業性を向上できるコネクタおよびワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、電線の端部に接続される端子と、前記端子が第1方向に沿って内部に収容される収容部と、前記第1方向と交差する第2方向に開口するとともに前記収容部と連通する筒部とを有するハウジングと、前記筒部の外周に取り付けられたシール部材と、前記ハウジングからの前記シール部材の抜けを防止するリテーナと、を備え、前記リテーナは、前記第1方向の反対方向である第1反対方向への前記端子の移動を規制する端子位置保証部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示のコネクタおよびワイヤハーネスによれば、組立作業性を向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略斜視図である。
図2図2は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略分解斜視図である。
図3図3は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略平面図である。
図4図4は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略断面図(図3における4-4線断面図)である。
図5図5は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略断面図(図3における5-5線断面図)である。
図6図6は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略分解斜視図である。
図7図7は、一実施形態のリテーナを示す概略斜視図である。
図8図8は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略断面斜視図である。
図9図9は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
図10図10は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列挙して説明する。
[1]本開示のコネクタは、電線の端部に接続される端子と、前記端子が第1方向に沿って内部に収容される収容部と、前記第1方向と交差する第2方向に開口するとともに前記収容部と連通する筒部とを有するハウジングと、前記筒部の外周に取り付けられたシール部材と、前記ハウジングからの前記シール部材の抜けを防止するリテーナと、を備え、前記リテーナは、前記第1方向の反対方向である第1反対方向への前記端子の移動を規制する端子位置保証部を有する。
【0010】
この構成によれば、シール部材の抜け止めを行うリテーナに、端子の第1反対方向への移動を規制する端子位置保証部が設けられる。これにより、1つの部品、つまりリテーナに、シール部材の抜け止めを行う機能と、端子の第1反対方向への移動を規制して端子の位置を保証する機能とを持たせることができる。したがって、シール部材の抜け止め機能と端子位置保証機能とをそれぞれ別の部材に持たせる場合に比べて、コネクタの部品点数を削減することができる。この結果、コネクタの組み立て工数を低減できるため、コネクタの組立作業性を向上できる。
【0011】
[2]上記[1]において、前記ハウジングは、前記筒部の前記第2方向の端面から前記第2方向に向かって突出する複数の凸部を有し、前記リテーナは、前記複数の凸部が嵌合する複数の嵌合孔を有してもよい。
【0012】
この構成によれば、筒部の第2方向の端面に凸部が設けられる。このため、凸部が設けられていない場合に比べて、シール部材がハウジングから外れるまでの距離を凸部の分だけ長くすることができる。これにより、ハウジングにリテーナが取り付けられる前の状態において、シール部材がハウジングから抜けることを好適に抑制できる。
【0013】
[3]上記[2]において、前記筒部の外周縁は、前記第2方向から見た平面形状が四角形に形成されており、前記複数の凸部は、少なくとも前記四角形の4つの角に設けられていてもよい。
【0014】
この構成によれば、四角形をなす筒部の外周縁のうち少なくとも4つの角に凸部が設けられる。このため、シール部材が第2方向において複数の凸部まで移動した場合であっても、シール部材の形状を、筒部の外周に装着されている場合と同じ形状、つまり四角筒状に好適に維持することができる。
【0015】
[4]上記[1]から[3]のいずれかにおいて、前記リテーナは、前記筒部の前記第2方向の端面を被覆するとともに枠状に形成された本体部と、前記本体部から前記第2方向の反対方向である第2反対方向に向かって突出する前記端子位置保証部と、前記本体部から前記本体部の径方向外方に向かって突出する抜け止め部と、を有し、前記抜け止め部は、前記シール部材と前記第2方向において係合可能に設けられていてもよい。
【0016】
この構成によれば、枠状をなす本体部から径方向外方に向かって突出する抜け止め部が、シール部材と第2方向において係合可能に設けられる。このため、抜け止め部によって、シール部材の第2方向への移動が規制される。これにより、ハウジングからのシール部材の抜けを好適に抑制できる。
【0017】
[5]上記[4]において、前記リテーナは、前記本体部から前記第2反対方向に向かって突出するガイド凸部を有し、前記ハウジングは、前記ガイド凸部が嵌合されるガイド凹部を有し、前記本体部からの前記ガイド凸部の突出量は、前記本体部からの前記端子位置保証部の突出量よりも大きくてもよい。
【0018】
この構成によれば、端子位置保証部よりも突出量の大きいガイド凸部がリテーナに設けられ、ガイド凸部が嵌合されるガイド凹部がハウジングに設けられる。このため、ハウジングに対してリテーナを取り付ける際に、ガイド凹部にガイド凸部を嵌合させた状態で、端子位置保証部をハウジングの収容部に挿入することができる。これにより、ハウジングに対するリテーナの姿勢を所望の姿勢に好適に維持した状態で、端子位置保証部を収容部に挿入することができる。
【0019】
[6]上記[4]または[5]において、前記リテーナは、前記端子位置保証部と連続して一体に形成されるとともに、前記端子位置保証部を補強する補強部を有し、前記補強部は、前記本体部から前記第2反対方向に向かって突出しており、前記本体部からの前記補強部の突出量は、前記本体部からの前記端子位置保証部の突出量よりも小さくてもよい。
【0020】
この構成によれば、リテーナに、端子位置保証部を補強する補強部が設けられる。これにより、端子位置保証部の強度を向上することができる。
[7]上記[1]から[6]のいずれかにおいて、前記リテーナは、前記端子位置保証部が前記収容部に挿入されていない状態で前記リテーナを前記筒部に仮固定するための第1係合部と、前記端子位置保証部が前記収容部に挿入するとともに前記端子の前記第1反対方向への移動を規制した状態で前記リテーナを前記筒部に固定するための第2係合部と、を有してもよい。
【0021】
この構成によれば、リテーナを筒部に仮固定するための第1係合部がリテーナに設けられる。仮固定状態では、端子位置保証部が収容部に挿入されていないため、端子位置保証部が第1方向において端子と係合されない。このため、リテーナを筒部に仮固定した後に、ハウジングの収容部に対して端子を挿入することができる。
【0022】
[8]上記[1]から[7]のいずれかにおいて、前記ハウジングは、前記端子を内部に収容する筒状のインナーハウジングと、前記インナーハウジングを内部に収容する前記収容部を有するアウターハウジングと、を備え、前記インナーハウジングは、前記端子位置保証部と前記第1方向において係合可能に形成された係合面を有し、前記端子位置保証部は、前記インナーハウジングの前記第1反対方向への移動を規制してもよい。
【0023】
この構成によれば、インナーハウジングの係合面とリテーナの端子位置保証部とが係合されることにより、インナーハウジングの第1反対方向への移動が規制される。これにより、インナーハウジングの内部に収容された端子の第1反対方向への移動を好適に規制することができる。
【0024】
[9]上記[1]から[8]のいずれかにおいて、前記筒部は、前記第2方向の反対方向である第2反対方向に沿って前記端子位置保証部が挿入される貫通孔を有し、前記貫通孔は、前記筒部を前記第2方向に貫通するとともに、前記収容部と連通していてもよい。
【0025】
この構成によれば、筒部に、収容部と連通する貫通孔が設けられる。このため、筒部の貫通孔を通じて収容部に端子位置保証部を好適に挿入することができる。
[10]本開示のワイヤハーネスは、上記[1]から[9]のいずれかに記載のコネクタと、前記コネクタに接続された前記電線と、を備える。
【0026】
この構成によれば、上記[1]のコネクタと同様の効果を得ることができる。
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のコネクタおよびワイヤハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。本明細書における「平行」や「直交」は、厳密に平行や直交の場合のみでなく、本実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね平行や直交の場合も含まれる。本明細書の説明で使用される「筒状」は、周方向全周にわたって連続して周壁が形成されたものだけではなく、複数の部品を組み合わせて筒状をなすものや、C字状のように周方向の一部に切り欠きなどを有するものも含む。なお、「筒状」の形状には、円形、楕円形、および尖ったまたは丸い角を有する多角形が含まれるが、これらに限定されない。本明細書における「対向」とは、面同士または部材同士が互いに正面の位置にあることを指し、互いが完全に正面の位置にある場合だけでなく、互いが部分的に正面の位置にある場合を含む。また、本明細書における「対向」とは、2つの部分の間に、2つの部分とは別の部材が介在している場合と、2つの部分の間に何も介在していない場合の両方を含む。また、本明細書における「第1」「第2」「第3」等の用語は、単に対象物を区別するために用いられており、対象物を順位づけするものではない。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0027】
(ワイヤハーネス10の全体構成)
図1に示すように、ワイヤハーネス10は、1本または複数本(本実施形態では、2本)の電線20と、電線20の端部に取り付けられたコネクタ30とを有している。ワイヤハーネス10は、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に設けられる。ワイヤハーネス10は、例えば、高圧バッテリ、インバータや車輪駆動用のモータなどの車両用の電気機器同士を電気的に接続するものである。コネクタ30は、例えば、1つの電気機器に接続される。図示は省略するが、コネクタ30は、電気機器に設けられた相手コネクタと電気的に接続される。相手コネクタは、例えば、2つの相手端子と、2つの相手端子を保持する相手ハウジングとを備えている。なお、各図面における上下方向および左右方向は、必ずしもコネクタ30およびワイヤハーネス10の使用時の姿勢を表すものではない。
【0028】
(コネクタ30の全体構成)
図2に示すように、コネクタ30は、複数の電線20の端部にそれぞれ接続された複数の端子31と、複数の端子31を内部に収容するハウジング40とを備えている。ハウジング40は、端子31を内部に収容するインナーハウジング41と、インナーハウジング41を内部に収容する収容部50Xを有するアウターハウジング50とを備えている。アウターハウジング50の収容部50Xには、第1方向X1に沿って端子31が挿入される。アウターハウジング50は、第1方向X1と交差する第2方向Y1に開口するとともに収容部50Xと連通する筒部60を有している。本実施形態の第2方向Y1は、第1方向X1と直交する方向である。コネクタ30は、筒部60の外周に取り付けられたシール部材70と、ハウジング40からのシール部材70の抜けを防止するリテーナ80とを備えている。コネクタ30は、例えば、電線20の外周に装着された1つまたは複数(本実施形態では、2つ)のシール部材100と、シール部材100の抜けを防止するバックリテーナ110とを備えている。
【0029】
以下では、ワイヤハーネス10の各構成要素の関係を説明する際には、第1方向X1の反対方向を第1反対方向X2と称し、第2方向Y1の反対方向を第2反対方向Y2と称する。また、第1方向X1および第2方向Y1の双方と直交する方向のうち図2において左方に向かう方向を第3方向Z1と称し、第3方向Z1の反対方向を第3反対方向Z2と称する。以上説明した各方向は、特に説明の無い限り、電線20の端部にコネクタ30が組み付けられた状態における方向である。
【0030】
コネクタ30は、例えば、第2方向Y1に沿って相手コネクタと接続される。例えば、相手コネクタの相手端子が第2反対方向Y2に沿って筒部60の内部に挿入されるとともに、相手コネクタの相手ハウジングが第2反対方向Y2に沿って筒部60の外側に嵌合される。
【0031】
(電線20の構成)
各電線20は、導電性を有する芯線21と、芯線21の外周を囲うとともに絶縁性を有する絶縁被覆22とを有している。各電線20は、例えば、自身に電磁シールド構造を有するシールド電線であってもよいし、自身に電磁シールド構造を有しないノンシールド電線であってもよい。本実施形態の各電線20は、ノンシールド電線である。
【0032】
芯線21としては、例えば、複数の金属素線を撚り合わせてなる撚線や単一の導体からなる単芯線を用いることができる。単芯線としては、例えば、内部が中実構造をなす柱状の1本の金属棒からなる柱状導体や、内部が中空構造をなす筒状導体を用いることができる。また、芯線21としては、撚線、柱状導体や筒状導体を組み合わせて用いてもよい。芯線21の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系の金属材料を用いることができる。
【0033】
絶縁被覆22は、例えば、芯線21の外周面を周方向全周にわたって被覆している。絶縁被覆22は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料により構成されている。
電線20の長さ方向と直交する平面によって電線20を切断した断面形状、つまり電線20の横断面形状は、任意の形状に形成することができる。電線20の横断面形状は、例えば、円形状、半円状、多角形状、扁平形状に形成することができる。本実施形態の電線20の横断面形状は、円形状に形成されている。
【0034】
各電線20は、第1方向X1に沿って延びている。換言すると、各電線20の軸方向は、第1方向X1と平行に延びている。複数の電線20は、例えば、第3方向Z1に沿って並んでいる。
【0035】
芯線21の軸方向(ここでは、第1方向X1)の端部は、絶縁被覆22から露出している。絶縁被覆22から露出した芯線21の端部には、端子31が接続されている。
(端子31の構成)
2つの端子31は、2つの電線20のそれぞれに電気的に接続されている。各端子31は、例えば、電線20の端部と接続される電線接続部32と、図示しない相手端子と接続される端子接続部33とを有している。各端子31は、例えば、電線接続部32と端子接続部33とが第1方向X1に連なって形成されている。各端子31は、例えば、金属製である。各端子31の材料としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼などの金属材料を用いることができる。
【0036】
電線接続部32は、絶縁被覆22から露出された芯線21の端部に接続されている。電線接続部32は、例えば、圧着や超音波溶接などによって芯線21に接続されている。これにより、電線接続部32と芯線21とが電気的および機械的に接続されている。
【0037】
端子接続部33は、例えば、全体として筒状に形成されている。筒状をなす端子接続部33は、例えば、第2方向Y1に開口している。筒状をなす端子接続部33の内部には、例えば、第2反対方向Y2に沿って、図示しない相手端子が挿入される。端子接続部33は、図示しない相手端子と電気的および機械的に接続される。
【0038】
(インナーハウジング41の構成)
ハウジング40は、2本の電線20に対応してそれぞれ設けられた2つのインナーハウジング41を有している。インナーハウジング41は、例えば、合成樹脂製である。インナーハウジング41は、例えば、アウターハウジング50とは別部品である。
【0039】
各インナーハウジング41は、全体として筒状に形成されている。各インナーハウジング41は、例えば、端子31の端子接続部33を収容する端子収容部42と、端子31の電線接続部32と電線20の芯線21との接続部分を収容する電線収容部43とを有している。各インナーハウジング41は、例えば、第1反対方向X2に開口している。各インナーハウジング41は、例えば、第2方向Y1に開口する挿入孔44を有している。挿入孔44は、図示しない相手端子が挿入可能に形成されている。挿入孔44は、インナーハウジング41の内外を連通するように形成されている。各インナーハウジング41は、リテーナ80が有する端子位置保証部86と第1方向X1において係合可能に形成された係合面45を有している。係合面45は、例えば、端子収容部42と電線収容部43との接続部分に設けられている。
【0040】
各インナーハウジング41は、例えば、複数(本実施形態では、2つ)の分割体、つまり第1分割体46および第2分割体47により構成されている。各インナーハウジング41は、第1分割体46と第2分割体47とが組み合わされて端子31の外周を包囲する筒状に形成されている。
【0041】
第1分割体46は、例えば、第2分割体47よりも第2方向Y1に設けられている。第1分割体46は、例えば、第1反対方向X2に開口するとともに、第2反対方向Y2に開口している。第1分割体46のうち端子収容部42を構成する部分は、挿入孔44を有している。第1分割体46のうち端子収容部42を構成する部分は、例えば、係合面45を有している。第1分割体46のうち電線収容部43を構成する部分は、係合部48を有している。係合部48は、例えば、第1分割体46の外面からインナーハウジング41の径方向外方(ここでは、第3方向Z1または第3反対方向Z2)に向かって突出する突起である。
【0042】
第2分割体47は、例えば、第1分割体46よりも第2反対方向Y2に設けられている。第2分割体47は、例えば、第1分割体46の第2反対方向Y2の開口を塞ぐように設けられている。第2分割体47のうち電線収容部43を構成する部分は、係合部49を有している。係合部49は、例えば、第2分割体47の外面から係合部48に向かって突出するとともに、インナーハウジング41の径方向に弾性変形可能に形成された弾性片である。係合部49は、例えば、矩形の枠体に形成されており、その枠体の中央に係合部48と係合可能な係合孔を有している。係合部48と係合部49とは、例えば、係合部49の弾性変形を利用したスナップフィット方式により互いに係合される。係合部48と係合部49との係合により、第1分割体46と第2分割体47とが合体した状態が維持される。
【0043】
(アウターハウジング50の構成)
図3および図4に示すように、アウターハウジング50は、インナーハウジング41の外周を包囲している。アウターハウジング50は、例えば、合成樹脂製である。アウターハウジング50は、例えば、全体として箱状に形成されている。
【0044】
図4に示すように、アウターハウジング50は、インナーハウジング41を内部に収容する収容部50Xを有している。収容部50Xは、例えば、インナーハウジング41から引き出された電線20を収容している。収容部50Xは、例えば、第1反対方向X2に開口している。収容部50Xの第1方向X1の開口は、周壁51により閉塞されている。
【0045】
図2に示すように、アウターハウジング50は、第1方向X1に設けられた周壁51と、第2方向Y1に設けられた周壁52と、第2反対方向Y2に設けられた周壁53とを有している。アウターハウジング50は、第3方向Z1に設けられた周壁54と、第3反対方向Z2に設けられた周壁55とを有している。
【0046】
アウターハウジング50は、周壁52のうち第1方向X1の端部における外面に設けられた筒部60を有している。筒部60は、図示しない相手コネクタの相手ハウジングが嵌合される嵌合筒部である。筒部60は、周壁52の外面からアウターハウジング50の径方向外方(ここでは、第2方向Y1)に向かって突出している。
【0047】
図5に示すように、筒部60は、例えば、周壁52の外周縁における外面を露出するように形成されている。換言すると、筒部60は、周壁52の外周縁よりも内側の外面から第2方向Y1に向かって突出するように形成されている。これにより、筒部60の外周面と、周壁52の外周縁における外面とによって段差が形成されている。
【0048】
図6に示すように、筒部60は、例えば、筒部60の周方向全周にわたって周壁が連続した筒状、つまり始端と終端とが一致する無端状の構造に形成されている。換言すると、筒部60には、周方向の一部にスリット等の筒部60の内外を連通する孔が形成されていない。筒部60は、例えば、四角筒状に形成されている。筒部60の外縁形状は、例えば、第2方向Y1から見た平面形状が四角形に形成されている。本実施形態の筒部60の外縁形状は、例えば、第2方向Y1から見た平面形状が角丸四角形に形成されている。
【0049】
筒部60は、1つまたは複数の挿入孔61を有している。本実施形態の筒部60は、2つの挿入孔61を有している。筒部60は、挿入孔61を有することにより筒状に形成されている。筒部60は、例えば、2つの挿入孔61を仕切る仕切壁62を有している。2つの挿入孔61は、例えば、2つのインナーハウジング41の挿入孔44をそれぞれ露出するように形成されている。2つの挿入孔61は、第3方向Z1に沿って間隔を空けて設けられている。
【0050】
各挿入孔61は、アウターハウジング50の内外を連通するように形成されている。各挿入孔61は、例えば、第2方向Y1に開口するとともに、第2反対方向Y2に開口している。各挿入孔61は、例えば、筒部60を第2方向Y1に貫通するとともに、周壁52を第2方向Y1に貫通している。
【0051】
仕切壁62は、第3方向Z1において、2つの挿入孔61の間に設けられている。仕切壁62は、例えば、リテーナ80が有する第1係合部91および第2係合部92が挿入可能に形成された係合孔63を有している。係合孔63は、アウターハウジング50の内外を連通するように形成されている。係合孔63は、例えば、仕切壁62を第2方向Y1に貫通するとともに、周壁52を第2方向Y1に貫通している。係合孔63は、例えば、第2方向Y1から見た平面視において、仕切壁62の中央に設けられている。
【0052】
図4および図5に示すように、筒部60は、リテーナ80の端子位置保証部86が貫通する貫通孔64を有している。貫通孔64は、アウターハウジング50の内外を連通するように形成されている。貫通孔64は、例えば、筒部60を第2方向Y1に貫通するとともに、周壁52を第2方向Y1に貫通している。図6に示すように、貫通孔64は、例えば、2つの挿入孔61よりも第1反対方向X2に設けられている。貫通孔64は、例えば、第3方向Z1に沿って延びている。貫通孔64は、例えば、第1方向X1において、各挿入孔61と部分的に重なるように設けられている。図5に示すように、貫通孔64は、例えば、第2方向Y1において、各インナーハウジング41と部分的に重なるように設けられている。
【0053】
図6に示すように、筒部60は、例えば、貫通孔64と連通する凹部65を有している。凹部65は、例えば、第1方向X1において、貫通孔64と隣り合って設けられている。凹部65は、例えば、筒部60の第2方向Y1の端面から第2反対方向Y2に向かって凹むように形成されている。図4に示すように、凹部65は、例えば、筒部60を貫通していない。凹部65は、例えば、筒部60の第2方向Y1の端面から周壁52の外面まで凹むように形成されている。換言すると、周壁52の一部が、凹部65の第2反対方向Y2の開口を塞ぐ底壁として機能している。
【0054】
筒部60は、例えば、ガイド凹部66を有している。ガイド凹部66は、例えば、筒部60の第2方向Y1の端面から第2反対方向Y2に向かって凹むように形成されている。ガイド凹部66は、例えば、係合孔63(図6参照)よりも第1方向X1に設けられている。ガイド凹部66は、第1ガイド凹部67と、第1ガイド凹部67よりも浅く形成された第2ガイド凹部68とを有している。第1ガイド凹部67は、例えば、第2ガイド凹部68よりも第1方向X1に設けられている。第1ガイド凹部67は、例えば、第1方向X1において、第2ガイド凹部68と隣り合って設けられている。第1ガイド凹部67は、例えば、第2ガイド凹部68と連通している。第1ガイド凹部67は、例えば、周壁52の外面よりも第2反対方向Y2に凹むように形成されている。第2ガイド凹部68は、例えば、筒部60の第2方向Y1の端面から周壁52の外面まで凹むように形成されている。換言すると、周壁52の一部が、第2ガイド凹部68の第2反対方向Y2の開口を塞ぐ底壁として機能している。
【0055】
図6に示すように、アウターハウジング50は、例えば、筒部60の第2方向Y1の端面から第2方向Y1に向かって突出する複数の凸部69を有している。複数の凸部69は、筒部60の外周縁に設けられている。複数の凸部69は、筒部60の周方向に沿って間隔を空けて設けられている。ここで、筒部60の外周縁は、第2方向Y1から見た平面形状が四角形に形成されている。複数の凸部69は、四角形をなす筒部60の外周縁のうち少なくとも4つの角に設けられている。複数の凸部69は、例えば、四角形をなす筒部60の外周縁のうち4つの辺の各々に2つずつ設けられている。各凸部69は、筒部60の周方向に沿って延びている。
【0056】
アウターハウジング50は、例えば、筒部60の外周を包囲する筒状のフード部56を有している。フード部56は、例えば、筒部60の外周を周方向全周にわたって包囲している。図5に示すように、フード部56の内周面は、筒部60の外周面と離れて設けられている。すなわち、フード部56の内周面は、筒部60の外周面との間に隙間57を設けた状態で、筒部60の外周面を包囲している。隙間57は、例えば、フード部56の周方向全周にわたって連続して形成されている。例えば、コネクタ30に図示しない相手コネクタが接続された状態では、隙間57に相手コネクタの相手ハウジングが挿入される。なお、各凸部69は、例えば、フード部56の第2方向Y1の端面よりも第2方向Y1に突出している。
【0057】
(シール部材70の構成)
シール部材70は、筒部60の外周に取り付けられている。シール部材70は、隙間57に設けられている。シール部材70は、例えば、第2方向Y1において、筒部60から露出された周壁52の外周縁における外面とリテーナ80との間に設けられている。シール部材70は、周壁52の外面と第2方向Y1において係合可能に設けられている。シール部材70は、リテーナ80と第2方向Y1において係合可能に設けられている。シール部材70は、コネクタ30に図示しない相手コネクタを嵌合させた際に、筒部60の外周面と相手コネクタの相手ハウジングの内周面との間をシールする。シール部材70は、弾性変形可能に構成されている。シール部材70は、例えば、ゴム製である。
【0058】
図2に示すように、シール部材70は、例えば、筒部60の周方向全周にわたって周壁が連続した筒状に形成されている。シール部材70の内周形状は、例えば、筒部60の外周面に沿った形状に形成されている。シール部材70の外周形状は、例えば、図示しない相手ハウジングの内周面に沿った形状に形成されている。本実施形態のシール部材70は、その内周形状および外周形状が四角形状をなす四角筒状に形成されている。
【0059】
(リテーナ80の構成)
図6に示すように、リテーナ80は、本体部81と、シール部材70の抜け止めを行う抜け止め部85と、端子31(図2参照)の第1反対方向X2への移動を規制する端子位置保証部86とを有している。リテーナ80は、例えば、補強部87と、ガイド凸部88と、第1係合部91と、第2係合部92とを有している。リテーナ80は、例えば、本体部81と抜け止め部85と端子位置保証部86と補強部87とガイド凸部88と第1係合部91と第2係合部92とが連続して一体に形成された単一部品である。リテーナ80は、例えば、合成樹脂製である。
【0060】
本体部81は、例えば、全体として枠状に形成されている。本体部81の外周縁は、例えば、第2方向Y1から見た平面形状が四角形に形成されている。本実施形態の本体部81の外周縁は、第2方向Y1から見た平面形状が角丸四角形状に形成されている。本体部81は、例えば、筒部60の第2方向Y1の端面を被覆するように形成されている。本体部81は、例えば、筒部60の外周縁における第2方向Y1の端面を被覆するとともに、仕切壁62の第2方向Y1の端面を被覆している。
【0061】
本体部81は、1つまたは複数の挿入孔82を有している。本実施形態の本体部81は、2つの挿入孔82を有している。本体部81は、例えば、2つの挿入孔82を仕切る仕切部83を有している。2つの挿入孔82は、例えば、筒部60の2つの挿入孔61とそれぞれ連通するように形成されている。2つの挿入孔82は、例えば、2つのインナーハウジング41の挿入孔44をそれぞれ露出するように形成されている。2つの挿入孔82は、第3方向Z1に沿って間隔を空けて設けられている。各挿入孔82は、例えば、本体部81を第2方向Y1に貫通している。
【0062】
仕切部83は、第3方向Z1において、2つの挿入孔82の間に設けられている。仕切部83は、仕切壁62の第2方向Y1の端面を被覆するように設けられている。
本体部81は、例えば、複数の嵌合孔84を有している。複数の嵌合孔84は、例えば、本体部81の外周縁に設けられている。複数の嵌合孔84は、例えば、複数の凸部69にそれぞれ対向して設けられている。複数の嵌合孔84は、複数の凸部69とそれぞれ凹凸嵌合可能に設けられている。各嵌合孔84は、例えば、本体部81を第2方向Y1に貫通している。本体部81のうち第3方向Z1および第3反対方向Z2の外周縁に設けられた嵌合孔84、ここでは4つの嵌合孔84は、挿入孔82と直接連通するように形成されている。
【0063】
抜け止め部85は、ハウジング40からのシール部材70の脱落を防止する。抜け止め部85は、本体部81から本体部81の径方向外方に向かって突出している。抜け止め部85は、例えば、嵌合孔84よりも本体部81の径方向外方に向かって突出している。抜け止め部85は、例えば、本体部81の周方向全周にわたって連続して形成されている。図5に示すように、抜け止め部85は、筒部60の外周面よりも筒部60の径方向外方に向かって突出している。抜け止め部85は、シール部材70の第2方向Y1の端面に接触可能に設けられている。抜け止め部85は、シール部材70と第2方向Y1において係合可能に設けられている。抜け止め部85は、例えば、第2方向Y1において、筒部60から露出する周壁52の外面との間でシール部材70を挟むように設けられている。換言すると、シール部材70は、第2方向Y1において、抜け止め部85と周壁52の外面との間に設けられている。
【0064】
図7に示すように、端子位置保証部86は、本体部81の第2反対方向Y2の端面から第2反対方向Y2に向かって突出している。端子位置保証部86は、例えば、板状に形成されている。端子位置保証部86は、例えば、第1方向X1に所定の厚みを有し、第2方向Y1および第3方向Z1に広がる平板状に形成されている。
【0065】
図4および図5に示すように、端子位置保証部86は、筒部60の貫通孔64に挿入可能に形成されている。端子位置保証部86は、貫通孔64を貫通している。端子位置保証部86の先端は、周壁52の内面よりもアウターハウジング50の径方向内方に向かって突出している。すなわち、端子位置保証部86の先端は、アウターハウジング50の収容部50Xに挿入されている。図4に示すように、端子位置保証部86の先端は、例えば、インナーハウジング41の係合面45と第1方向X1において係合可能に設けられている。端子位置保証部86は、インナーハウジング41の第1反対方向X2への移動を規制している。端子位置保証部86は、インナーハウジング41の内部に収容された端子31の第1反対方向X2への移動を規制している。
【0066】
図7に示すように、補強部87は、端子位置保証部86を補強するように設けられている。補強部87は、端子位置保証部86と連続して一体に形成されている。補強部87は、例えば、本体部81の第2反対方向Y2の端面から第2反対方向Y2に向かって突出している。補強部87は、例えば、端子位置保証部86の第1反対方向X2の端面から第1反対方向X2に向かって突出している。補強部87は、例えば、第2方向Y1から見た平面形状がT字状に形成されている。本体部81の第2反対方向Y2の端面からの補強部87の突出量は、例えば、本体部81の第2反対方向Y2の端面からの端子位置保証部86の突出量よりも小さい。すなわち、第2方向Y1に沿う補強部87の長さ寸法は、第2方向Y1に沿う端子位置保証部86の長さ寸法よりも小さい。
【0067】
図4に示すように、補強部87は、筒部60の凹部65に嵌合可能に形成されている。補強部87の先端は、例えば、凹部65の底面に接触可能に形成されている。
ガイド凸部88は、本体部81の第2反対方向Y2の端面から第2反対方向Y2に向かって突出している。ガイド凸部88は、筒部60のガイド凹部66に嵌合可能に形成されている。ガイド凸部88は、例えば、端子位置保証部86よりも第1方向X1に設けられている。
【0068】
図7に示すように、ガイド凸部88は、例えば、第1ガイド凸部89と、第1ガイド凸部89と連続して一体に形成された第2ガイド凸部90とを有している。
第1ガイド凸部89は、例えば、本体部81の第2反対方向Y2の端面から第2反対方向Y2に向かって突出している。第1ガイド凸部89は、例えば、板状に形成されている。第1ガイド凸部89は、例えば、第1方向X1に所定の厚みを有し、第2方向Y1および第3方向Z1に広がる平板状に形成されている。本体部81の第2反対方向Y2の端面からの第1ガイド凸部89の突出量は、例えば、本体部81の第2反対方向Y2の端面からの端子位置保証部86の突出量よりも大きい。すなわち、第2方向Y1に沿う第1ガイド凸部89の長さ寸法は、第2方向Y1に沿う端子位置保証部86の長さ寸法よりも大きい。第1ガイド凸部89の厚み、つまり第1方向X1に沿う第1ガイド凸部89の長さ寸法は、例えば、端子位置保証部86の厚み、つまり第1方向X1に沿う端子位置保証部86の長さ寸法よりも大きい。
【0069】
図4に示すように、第1ガイド凸部89は、筒部60の第1ガイド凹部67に嵌合可能に形成されている。第1ガイド凸部89の先端は、周壁52の内面よりもアウターハウジング50の径方向内方に向かって突出している。第1ガイド凸部89は、第1ガイド凹部67に挿入されることにより、リテーナ80をアウターハウジング50に取り付ける際のガイド部材として機能する。
【0070】
図7に示すように、第2ガイド凸部90は、第1ガイド凸部89を補強するように設けられている。第2ガイド凸部90は、例えば、本体部81の第2反対方向Y2の端面から第2反対方向Y2に向かって突出している。第2ガイド凸部90は、例えば、第1ガイド凸部89の第1反対方向X2の端面から第1反対方向X2に向かって突出している。第2ガイド凸部90は、例えば、枠状に形成されている。本体部81の第2反対方向Y2の端面からの第2ガイド凸部90の突出量は、例えば、本体部81の第2反対方向Y2の端面からの第1ガイド凸部89の突出量よりも小さい。すなわち、第2方向Y1に沿う第2ガイド凸部90の長さ寸法は、第2方向Y1に沿う第1ガイド凸部89の長さ寸法よりも小さい。
【0071】
図4に示すように、第2ガイド凸部90は、筒部60の第2ガイド凹部68に嵌合可能に形成されている。第2ガイド凸部90の先端は、例えば、第2ガイド凹部68の底面に接触可能に形成されている。
【0072】
図7に示すように、本実施形態のリテーナ80は、2つの第1係合部91と、2つの第2係合部92とを有している。2つの第1係合部91と2つの第2係合部92とは、例えば、仕切部83の第2反対方向Y2の端面に設けられている。2つの第1係合部91と2つの第2係合部92とは、例えば、第1方向X1に沿って間隔を空けて設けられている。2つの第2係合部92は、例えば、第1方向X1において、2つの第1係合部91の間に設けられている。2つの第1係合部91と2つの第2係合部92とは、例えば、筒部60の係合孔63(図6参照)に挿入される。
【0073】
各第1係合部91は、仕切部83の第2反対方向Y2の端面から第2反対方向Y2に向かって突出する弾性変形可能な第1弾性片91Aと、第1弾性片91Aの突出先端に設けられた第1係合突起91Bとを有している。第1弾性片91Aは、例えば、仕切部83に接続された基端を固定端とし、基端とは反対側の先端を自由端とする片持ち状に形成されている。第1弾性片91Aは、例えば、弾性変形による第3方向Z1への撓みが可能に構成されている。第1係合突起91Bは、例えば、第1弾性片91Aの先端から第1弾性片91Aの長さ方向と直交する方向(ここでは、第3方向Z1または第3反対方向Z2)に向かって突出している。
【0074】
図7に示すように、各第2係合部92は、仕切部83の第2反対方向Y2の端面から第2反対方向Y2に向かって突出する弾性変形可能な第2弾性片92Aと、第2弾性片92Aの突出先端に設けられた第2係合突起92Bとを有している。第2弾性片92Aは、例えば、仕切部83に接続された基端を固定端とし、基端とは反対側の先端を自由端とする片持ち状に形成されている。第2弾性片92Aは、例えば、弾性変形による第3方向Z1への撓みが可能に構成されている。第2係合突起92Bは、例えば、第2弾性片92Aの先端から第2弾性片92Aの長さ方向と直交する方向(ここでは、第3方向Z1または第3反対方向Z2)に向かって突出している。第2方向Y1に沿う第2係合部92の長さ寸法は、第2方向Y1に沿う第1係合部91の長さ寸法よりも小さい。仕切部83の第2反対方向Y2の端面から第2係合突起92Bまでの最短距離は、仕切部83の第2反対方向Y2の端面から第1係合突起91Bまでの最短距離よりも短い。
【0075】
図8に示すように、第1係合突起91Bは、仕切壁62の第2反対方向Y2の端面に係合可能に形成されている。例えば、アウターハウジング50に対してリテーナ80を取り付ける際に、第1係合突起91Bは、第2係合突起92Bよりも先に仕切壁62の第2反対方向Y2の端面に係合可能に設けられている。各第1係合部91と仕切壁62とは、例えば、第1弾性片91Aの弾性変形を利用したスナップフィット方式により互いに係合される。各第1係合部91と仕切壁62との係合により、アウターハウジング50に対してリテーナ80が仮固定される。この仮固定状態では、リテーナ80の本体部81が筒部60から浮いた状態、つまり本体部81が筒部60の第2方向Y1の端面から離れた状態で、リテーナ80がアウターハウジング50に固定される。仮固定状態では、第2係合部92の第2係合突起92Bは、仕切壁62の第2反対方向Y2の端面に係合されていない。
【0076】
図9に示すように、仮固定状態では、端子位置保証部86の先端は、アウターハウジング50の収容部50Xに挿入されていない。仮固定状態では、端子位置保証部86の先端は、インナーハウジング41の係合面45と第1方向X1において係合不能な位置に設けられている。すなわち、仮固定状態における端子位置保証部86の先端は、周壁52の内面、つまり周壁52の第2反対方向Y2の端面よりも第2反対方向Y2に突出しないように設けられている。仮固定状態では、端子31および端子31を収容したインナーハウジング41を、第1方向X1に沿ってアウターハウジング50の内部に挿入可能である。
【0077】
図10に示すように、第2係合突起92Bは、筒部60の仕切壁62の第2反対方向Y2の端面に係合可能に形成されている。第2係合突起92Bは、例えば、仮固定状態から更にリテーナ80を第2反対方向Y2に向かって押し込んだ際に、仕切壁62の第2反対方向Y2の端面に係合可能に設けられている。各第2係合部92と仕切壁62とは、例えば、第2弾性片92Aの弾性変形を利用したスナップフィット方式により互いに係合される。各第2係合部92と仕切壁62との係合により、リテーナ80がアウターハウジング50に固定される。この固定状態では、例えば、リテーナ80の本体部81が筒部60の第2方向Y1の端面に接触した状態で、リテーナ80がアウターハウジング50に固定される。固定状態では、第1係合突起91Bが仕切壁62の第2反対方向Y2の端面から離れた位置に設けられ、第1係合部91と仕切壁62との係合が解除されている。
【0078】
図4に示すように、固定状態では、端子位置保証部86の先端は、アウターハウジング50の収容部50Xに挿入されるとともに、インナーハウジング41の係合面45と第1方向X1において係合可能な位置に設けられる。すなわち、固定状態における端子位置保証部86は、端子31およびインナーハウジング41の第1反対方向X2への移動を規制している。
【0079】
(シール部材100の構成)
図2に示すように、2つのシール部材100は、2本の電線20のそれぞれに取り付けられている。各シール部材100は、各電線20の絶縁被覆22の外周面に取り付けられている。各シール部材100は、各電線20の外周を周方向全周にわたって連続して囲む筒状に形成されている。各シール部材100は、電線20の外周面とアウターハウジング50の内周面との間をシールする。各シール部材100は、例えば、ゴム製である。
【0080】
(バックリテーナ110の構成)
バックリテーナ110は、例えば、アウターハウジング50の第1反対方向X2の端部に取り付けられている。バックリテーナ110は、アウターハウジング50からのシール部材100の脱落を防止する。バックリテーナ110は、例えば、アウターハウジング50の第1反対方向X2の開口を塞ぐように設けられている。図8に示すように、バックリテーナ110は、各電線20が貫通する電線貫通孔111を有している。各電線20は、シール部材100およびバックリテーナ110を第1反対方向X2に貫通してアウターハウジング50の外部に引き出されている。
【0081】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
(1)コネクタ30は、電線20の端部に接続される端子31と、端子31が第1方向X1に沿って内部に収容される収容部50Xと、第1方向X1と交差する第2方向Y1に開口するとともに収容部50Xと連通する筒部60とを有するハウジング40とを備える。コネクタ30は、筒部60の外周に取り付けられたシール部材70と、ハウジング40からのシール部材70の抜けを防止するリテーナ80とを備える。リテーナ80は、第1反対方向X2への端子31の移動を規制する端子位置保証部86を有する。
【0082】
この構成によれば、シール部材70の抜け止めを行うリテーナ80に、端子31の第1反対方向X2への移動を規制する端子位置保証部86が設けられる。これにより、1つの部品、つまりリテーナ80に、シール部材70の抜け止めを行う機能と、端子31の第1反対方向X2への移動を規制して端子31の位置を保証する機能とを持たせることができる。したがって、シール部材70の抜け止め機能と端子位置保証機能とをそれぞれ別の部材に持たせる場合に比べて、コネクタ30の部品点数を削減することができる。この結果、コネクタ30の組み立て工数を低減できるため、コネクタ30の組立作業性を向上できる。
【0083】
(2)筒部60の第2方向Y1の端面に、その端面から第2方向Y1に向かって突出する複数の凸部69が設けられる。このため、凸部69が設けられていない場合に比べて、シール部材70がハウジング40から外れるまでの距離を凸部69の分だけ長くすることができる。これにより、ハウジング40にリテーナ80が取り付けられる前の状態において、シール部材70がハウジング40から抜けることを好適に抑制できる。
【0084】
(3)四角形をなす筒部60の外周縁のうち少なくとも4つの角に凸部69が設けられる。このため、シール部材70が第2方向Y1において複数の凸部69まで移動した場合であっても、シール部材70の形状を、筒部60の外周に装着されている場合と同じ形状、つまり四角筒状に好適に維持することができる。換言すると、シール部材70が複数の凸部69まで移動した場合であっても、シール部材70が筒部60の内側に入り込むように変形することを好適に抑制できる。
【0085】
(4)リテーナ80では、枠状をなす本体部81から径方向外方に向かって突出する抜け止め部85が、シール部材70と第2方向Y1において係合可能に設けられる。このため、抜け止め部85によって、シール部材70の第2方向Y1への移動が規制される。これにより、ハウジング40からのシール部材70の抜けを好適に抑制できる。
【0086】
(5)端子位置保証部86よりも突出量の大きい第1ガイド凸部89がリテーナ80に設けられ、第1ガイド凸部89が嵌合される第1ガイド凹部67がハウジング40に設けられる。このため、ハウジング40に対してリテーナ80を取り付ける際に、第1ガイド凹部67に第1ガイド凸部89を嵌合させた状態で、端子位置保証部86をハウジング40の収容部50Xに挿入することができる。これにより、ハウジング40に対するリテーナ80の姿勢を所望の姿勢に好適に維持した状態で、端子位置保証部86を収容部50Xに挿入することができる。
【0087】
(6)リテーナ80に、端子位置保証部86を補強する補強部87が設けられる。これにより、端子位置保証部86の強度を向上することができる。
(7)リテーナ80は、端子位置保証部86が収容部50Xに挿入されていない状態でリテーナ80を筒部60に仮固定するための第1係合部91を有する。仮固定状態では、端子位置保証部86が収容部50Xに挿入されていないため、端子位置保証部86が第1方向X1において端子31と係合されない。このため、リテーナ80を筒部60に仮固定した後に、ハウジング40の収容部50Xに対して端子31を挿入することができる。
【0088】
(8)インナーハウジング41の係合面45とリテーナ80の端子位置保証部86とが係合されることにより、インナーハウジング41の第1反対方向X2への移動が規制される。これにより、インナーハウジング41の内部に収容された端子31の第1反対方向X2への移動を好適に規制することができる。
【0089】
(9)筒部60に、ハウジング40の収容部50Xと連通する貫通孔64が設けられる。このため、筒部60の貫通孔64を通じて収容部50Xに端子位置保証部86を好適に挿入することができる。
【0090】
(他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0091】
・上記実施形態のリテーナ80における第1係合部91の構造は適宜変更することができる。第1係合部91は、例えば、ハウジング40と係合可能な構造を有していれば、その他の構造は適宜変更することができる。
【0092】
・上記実施形態のリテーナ80における第1係合部91を省略してもよい。
・上記実施形態のリテーナ80における第2係合部92の構造は適宜変更することができる。第2係合部92は、例えば、ハウジング40と係合可能な構造を有していれば、その他の構造は適宜変更することができる。
【0093】
・上記実施形態のリテーナ80における補強部87の構造は適宜変更することができる。例えば、第2方向Y1から見た補強部87の平面形状を適宜変更することができる。
・上記実施形態のリテーナ80における補強部87を省略してもよい。この場合には、筒部60の凹部65も省略される。
【0094】
・上記実施形態のリテーナ80におけるガイド凸部88の構造は適宜変更することができる。例えば、第1ガイド凸部89の長さを適宜変更してもよい。例えば、第2方向Y1に沿う第1ガイド凸部89の長さ寸法を、第2方向Y1に沿う端子位置保証部86の長さ寸法以下に設定してもよい。例えば、第2ガイド凸部90を省略してもよい。この場合には、筒部60の第2ガイド凹部68も省略される。
【0095】
・上記実施形態のリテーナ80におけるガイド凸部88を省略してもよい。この場合には、筒部60のガイド凹部66も省略される。
・上記実施形態のハウジング40では、インナーハウジング41とアウターハウジング50とを別部品で構成したが、これに限定されない。例えば、インナーハウジング41とアウターハウジング50とを一体に形成してもよい。
【0096】
・上記実施形態のインナーハウジング41の構造は適宜変更することができる。インナーハウジング41は、例えば、端子31を収容可能な構造を有し、係合面45を有していれば、その他の構造は適宜変更することができる。
【0097】
・上記実施形態では、インナーハウジング41を2つの分割体、つまり第1分割体46と第2分割体47とにより構成したが、これに限定されない。例えば、インナーハウジング41を3つ以上の分割体により構成してもよい。例えば、インナーハウジング41を単一部品で構成してもよい。
【0098】
・上記実施形態では、複数の端子31の各々に対して個別にインナーハウジング41を設けるようにしたが、これに限定されない。1つのインナーハウジング41に対して複数の端子31を一括して収容するようにしてもよい。
【0099】
・上記実施形態におけるインナーハウジング41を省略してもよい。この場合には、例えば、端子31がアウターハウジング50の収容部50Xに直接収容される。この場合には、例えば、端子位置保証部86を、端子31と第1方向X1において直接係合されるように設けてもよい。
【0100】
・上記実施形態のアウターハウジング50の構造は適宜変更することができる。アウターハウジング50は、例えば、シール部材70が装着される筒部60を有し、リテーナ80を取り付け可能な構造を有していれば、その他の構造は適宜変更することができる。例えば、凸部69の個数および形成位置は適宜変更することができる。例えば、凸部69を省略してもよい。この場合には、リテーナ80における嵌合孔84も省略される。例えば、アウターハウジング50におけるフード部56を省略してもよい。
【0101】
・上記実施形態では、シール部材70,100をゴム製のゴムリングに具体化したが、これに限定されない。例えば、シール部材70,100として、ゴム以外の弾性体からなるリング部材を採用するようにしてもよい。
【0102】
・上記実施形態のコネクタ30は、2つの端子31を有する構成としたが、1つや3つ以上の端子31を有する構成としてもよい。
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0103】
10 ワイヤハーネス
20 電線
21 芯線
22 絶縁被覆
30 コネクタ
31 端子
32 電線接続部
33 端子接続部
40 ハウジング
41 インナーハウジング
42 端子収容部
43 電線収容部
44 挿入孔
45 係合面
46 第1分割体
47 第2分割体
48,49 係合部
50 アウターハウジング
50X 収容部
51,52,53,54,55 周壁
56 フード部
57 隙間
60 筒部
61 挿入孔
62 仕切壁
63 係合孔
64 貫通孔
65 凹部
66 ガイド凹部
67 第1ガイド凹部
68 第2ガイド凹部
69 凸部
70 シール部材
80 リテーナ
81 本体部
82 挿入孔
83 仕切部
84 嵌合孔
85 抜け止め部
86 端子位置保証部
87 補強部
88 ガイド凸部
89 第1ガイド凸部
90 第2ガイド凸部
91 第1係合部
91A 第1弾性片
91B 第1係合突起
92 第2係合部
92A 第2弾性片
92B 第2係合突起
100 シール部材
110 バックリテーナ
111 電線貫通孔
X1 第1方向
X2 第1反対方向
Y1 第2方向
Y2 第2反対方向
Z1 第3方向
Z2 第3反対方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10