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特開2024-135058ブラシ付きモータのブラシ、及びブラシ付きモータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135058
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ブラシ付きモータのブラシ、及びブラシ付きモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 13/00 20060101AFI20240927BHJP
   H01R 39/20 20060101ALI20240927BHJP
   H01R 39/26 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H02K13/00 N
H01R39/20
H01R39/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045565
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】日下部 徹
【テーマコード(参考)】
5H613
【Fターム(参考)】
5H613AA03
5H613BB04
5H613BB16
5H613GA10
5H613GA11
5H613GB01
5H613GB02
5H613GB08
5H613GB18
(57)【要約】
【課題】ブラシに対する整流子の摺接に伴う金属摩耗粉の発生を抑制できるブラシ付きモータのブラシ、及びブラシ付きモータを提供すること。
【解決手段】ブラシ付きモータ20のブラシ60は、整流子50が摺接する正極ブラシ部65及び負極ブラシ部66を備えている。正極ブラシ部65には、正極摺接面64aが形成されている。負極ブラシ部66には、負極摺接面64bが形成されている。正極摺接面64a及び負極摺接面64bの各々は導電性ゴムを用いて形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流子を備えるブラシ付きモータのブラシであって、
前記整流子が摺接する正極ブラシ部及び負極ブラシ部を備え、
前記正極ブラシ部には、前記整流子が摺接する正極摺接面が形成され、
前記負極ブラシ部には、前記整流子が摺接する負極摺接面が形成され、
前記正極摺接面及び前記負極摺接面は、導電性ゴムを用いて形成されていることを特徴とするブラシ付きモータのブラシ。
【請求項2】
前記ブラシ及び前記整流子は環状であり、
前記ブラシは、前記ブラシの周方向における前記正極ブラシ部と前記負極ブラシ部との間に介在して当該正極ブラシ部と前記負極ブラシ部とを絶縁する絶縁部を備えるとともに、前記絶縁部は絶縁性ゴムによって形成されており、
前記ブラシは、当該ブラシの周方向の全体に亘って前記整流子の外周面に押し付けられ、かつ前記正極摺接面及び前記負極摺接面を含む摺接面を備える請求項1に記載のブラシ付きモータのブラシ。
【請求項3】
前記ブラシ付きモータは電動圧縮機に搭載され、
前記電動圧縮機は、前記整流子の固定される回転軸と、当該回転軸の回転によって駆動して冷媒を圧縮する圧縮部と、前記ブラシ付きモータを収容するモータ収容室を画定するハウジングと、を備えるとともに、
前記圧縮部によって圧縮される前の冷媒は、前記ハウジングに形成された吸入口を経由して前記モータ収容室に吸入され、
前記ブラシは、前記ハウジングの内周面の周方向全体に亘って接触している取付部と、
前記取付部から前記回転軸の径方向に沿って前記整流子に向けて延出している環状の延出部と、
前記延出部から前記整流子に向けて延出し、かつ前記延出部から前記整流子に近付くに従い、前記圧縮部に近付くように傾斜している環状のリップ部と、を備え、
前記リップ部は前記摺接面を備える請求項2に記載のブラシ付きモータのブラシ。
【請求項4】
整流子と、前記整流子が摺接するブラシと、を備えるブラシ付きモータであって、
前記ブラシは、前記整流子が摺接する正極ブラシ部及び負極ブラシ部を備え、
前記正極ブラシ部の正極摺接面及び前記負極ブラシ部の負極摺接面の各々は導電性ゴムを用いて形成されていることを特徴とするブラシ付きモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシ付きモータのブラシ、及びブラシ付きモータに関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシ付きモータは、回転軸と一体に回転する整流子と、整流子が摺接するブラシと、を備える。ブラシから整流子への給電のために、ブラシ及び整流子は、金属製であるのが一般的である。このため、ブラシに対する整流子の摺接に伴い、ブラシ及び整流子から金属摩耗粉が発生してしまう。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されるように、整流子としてのコンミュテータは、コンミュテータセグメントの間に絶縁材を充填して形成されているとともに、コンミュテータセグメントの外周面と絶縁材の外周面とが同一の面に位置している。これにより、コンミュテータとブラシとの接触が円滑に行われるため、摩耗が減少するとともに、金属摩耗粉の発生が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6-13373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブラシ付きモータにおいては、ブラシに対するコンミュテータの摺接に伴う金属摩耗粉の発生の抑制が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するためのブラシ付きモータのブラシは、整流子を備えるブラシ付きモータのブラシであって、前記整流子が摺接する正極ブラシ部及び負極ブラシ部を備え、前記正極ブラシ部には、前記整流子が摺接する正極摺接面が形成され、前記負極ブラシ部には、前記整流子が摺接する負極摺接面が形成され、前記正極摺接面及び前記負極摺接面は、導電性ゴムを用いて形成されていることを要旨とする。
【0007】
これによれば、正極摺接面及び負極摺接面の導電性ゴムによって、正極ブラシ部及び負極ブラシ部と整流子との導通を確保できる。そして、正極摺接面及び負極摺接面を全て金属製とした場合と比べると、整流子が正極摺接面及び負極摺接面に摺接したときの金属摩耗粉の発生を抑制できる。
【0008】
ブラシ付きモータのブラシについて、前記ブラシ及び前記整流子は環状であり、前記ブラシは、前記ブラシの周方向における前記正極ブラシ部と前記負極ブラシ部との間に介在して当該正極ブラシ部と前記負極ブラシ部とを絶縁する絶縁部を備えるとともに、前記絶縁部は絶縁性ゴムによって形成されており、前記ブラシは、当該ブラシの周方向の全体に亘って前記整流子の外周面に押し付けられ、かつ前記正極摺接面及び前記負極摺接面を含む摺接面を備えていてもよい。
【0009】
これによれば、ブラシの摺接面を、周方向の全体に亘って整流子の外周面に押し付けることができる。これにより、ブラシの摺接面と整流子の外周面との間をシールできる。
ブラシ付きモータのブラシについて、前記ブラシ付きモータは電動圧縮機に搭載され、前記電動圧縮機は、前記整流子の固定される回転軸と、当該回転軸の回転によって駆動して冷媒を圧縮する圧縮部と、前記ブラシ付きモータを収容するモータ収容室を画定するハウジングと、を備えるとともに、前記圧縮部によって圧縮される前の冷媒は、前記ハウジングに形成された吸入口を経由して前記モータ収容室に吸入され、前記ブラシは、前記ハウジングの内周面の周方向全体に亘って接触している取付部と、前記取付部から前記回転軸の径方向に沿って前記整流子に向けて延出している環状の延出部と、前記延出部から前記整流子に向けて延出し、かつ前記延出部から前記整流子に近付くに従い、前記圧縮部に近付くように傾斜している環状のリップ部と、を備え、前記リップ部は前記摺接面を備えていてもよい。
【0010】
これによれば、モータ収容室に吸入された冷媒の圧力は、リップ部に作用する。リップ部の摺接面は、冷媒の圧力によって整流子の外周面に押し付けられる。したがって、冷媒の圧力により、ブラシの摺接面を整流子の外周面に押し付けることができる。
【0011】
上記問題点を解決するためのブラシ付きモータは、整流子と、前記整流子が摺接するブラシと、を備えるブラシ付きモータであって、前記ブラシは、前記整流子が摺接する正極ブラシ部及び負極ブラシ部を備え、前記正極ブラシ部の正極摺接面及び前記負極ブラシ部の負極摺接面の各々は導電性ゴムを用いて形成されていることを要旨とする。
【0012】
これによれば、正極摺接面及び負極摺接面の導電性ゴムによって、正極ブラシ部及び負極ブラシ部と整流子との導通を確保できる。そして、正極摺接面及び負極摺接面を全て金属製とした場合と比べると、整流子が正極摺接面及び負極摺接面に摺接したときの金属摩耗粉の発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、ブラシに対する整流子の摺接に伴う金属摩耗粉の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、電動圧縮機のブラシ付きモータを模式的に示す断面図である。
図2図2は、整流子及びブラシを模式的に示す図である。
図3図3は、ブラシを示す断面図である。
図4図4は、別例のブラシを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、ブラシ付きモータのブラシ、及びブラシ付きモータを、電動圧縮機が搭載するブラシ付きモータのブラシ、及びブラシ付きモータに具体化した一実施形態を図1図3にしたがって説明する。
【0016】
図1に示すように、電動圧縮機10は、車載用空調装置101に用いられている。
<車載用空調装置>
車載用空調装置101は、図示しない車両に搭載されている。車載用空調装置101は、電動圧縮機10と、外部冷媒回路102と、を備えている。外部冷媒回路102は、電動圧縮機10に流体としての冷媒を供給する。外部冷媒回路102は、例えば、熱交換器、及び膨張弁等を備える。車載用空調装置101は、車内の冷暖房を行う。車内の冷暖房は、電動圧縮機10によって冷媒が圧縮され、かつ、外部冷媒回路102によって冷媒の熱交換、及び膨張が行われることによって行われる。
【0017】
<電動圧縮機>
電動圧縮機10は、ハウジング11と、回転軸13と、圧縮部14と、直流式のブラシ付きモータ20と、を備えている。したがって、ブラシ付きモータ20は、電動圧縮機10に搭載されている。
【0018】
ハウジング11は、回転軸13、圧縮部14及びブラシ付きモータ20を収容している。回転軸13は、ブラシ付きモータ20の駆動によって回転する。圧縮部14は、回転軸13に連結されている。圧縮部14は、回転軸13が回転することによって、外部冷媒回路102から供給された冷媒を圧縮する。圧縮部14は、圧縮された冷媒を外部冷媒回路102に吐出する。圧縮部14は、スクロールタイプ、ピストンタイプ、ベーンタイプ等の構成により実現される。
【0019】
ハウジング11は、第1ハウジング構成体15と、第2ハウジング構成体16と、第3ハウジング構成体17と、を備えている。第1ハウジング構成体15、第2ハウジング構成体16、及び第3ハウジング構成体17の各々は金属製である。第1ハウジング構成体15、第2ハウジング構成体16及び第3ハウジング構成体17の各々は、例えばアルミニウム製である。
【0020】
第1ハウジング構成体15は、板状の底壁15aと、筒状の周壁15bと、を備えている。周壁15bは、底壁15aの外周部から底壁15aの厚さ方向に延びる。第2ハウジング構成体16は、第1ハウジング構成体15に連結されている。第2ハウジング構成体16は、第1ハウジング構成体15の周壁15bにおける底壁15aとは反対側から、第1ハウジング構成体15の内部空間を閉塞している。第1ハウジング構成体15及び第2ハウジング構成体16は、モータ収容室S1を画定している。モータ収容室S1には、ブラシ付きモータ20が収容されている。したがって、ハウジング11は、ブラシ付きモータ20を収容するモータ収容室S1を画定している。周壁15bには、吸入口15dが形成されている。吸入口15dは、外部冷媒回路102と接続されている。吸入口15dは、モータ収容室S1に連通している。
【0021】
底壁15aにおけるモータ収容室S1に臨む面には、円筒状のボス部15cが設けられている。ボス部15cの内側には軸受18が設けられている。ボス部15cは、底壁15aから第2ハウジング構成体16に向けて突出している。
【0022】
ボス部15cの中心軸線は、周壁15bの中心軸線と一致している。第2ハウジング構成体16におけるモータ収容室S1に臨む面には、円筒状のボス部16aが設けられている。ボス部16aの内側には、軸受19が設けられている。ボス部16aは、第2ハウジング構成体16から底壁15aに向けて突出している。ボス部16aの中心軸線は、周壁15bの中心軸線と一致している。よって、ボス部15cの中心軸線と、ボス部16aの中心軸線とは一致している。回転軸13は、ボス部15cの軸受18と、ボス部16aの軸受19に挿通されている。回転軸13は、軸受18,19を介してハウジング11に回転可能に支持されている。
【0023】
第2ハウジング構成体16には、連通路16bが形成されている。
第3ハウジング構成体17は、端壁17aと、筒状の周壁17bと、を備える。周壁17bは、端壁17aの外周部から端壁17aの厚さ方向に延びる。第3ハウジング構成体17は、第2ハウジング構成体16に連結されている。第2ハウジング構成体16及び第3ハウジング構成体17は、圧縮部収容室S2を画定している。圧縮部収容室S2には、圧縮部14が収容されている。端壁17aには、吐出口17cが形成されている。吐出口17cは、外部冷媒回路102と接続されている。吐出口17cは、圧縮部収容室S2と連通している。圧縮部収容室S2は、第2ハウジング構成体16に形成された連通路16bによってモータ収容室S1と連通している。
【0024】
回転軸13は、第2ハウジング構成体16を貫通して圧縮部収容室S2に延在している。回転軸13において、圧縮部収容室S2に延在した部分に圧縮部14が連結されている。
【0025】
圧縮部14によって圧縮された冷媒は、圧縮部収容室S2及び吐出口17cを経由して外部冷媒回路102に吐出される。外部冷媒回路102を流れた冷媒は、吸入口15dを経由してモータ収容室S1に吸入される。モータ収容室S1に吸入された冷媒は、連通路16bを経由して圧縮部収容室S2に吸入される。したがって、圧縮部14によって圧縮される前の冷媒は、ハウジング11に形成された吸入口15dを経由してモータ収容室S1に吸入される。
【0026】
<ブラシ付きモータ>
ブラシ付きモータ20は、電機子コア30と、マグネット40と、整流子50と、ブラシ60と、を備えている。
【0027】
電機子コア30は、回転軸13に固定されている。電機子コア30は、回転軸13と一体に回転する。図1には詳細に図示しないが、電機子コア30には、複数のコイル31が巻かれている。
【0028】
マグネット40は、複数のマグネット片41を組み合わせて形成されている。複数のマグネット片41は、第1ハウジング構成体15における周壁15bの内周面に固定されている。マグネット40は、マグネット片41の板厚方向の両面のうちの周壁15b側がN極、かつ電機子コア30側がS極に磁化されたマグネット片41と、周壁15b側がS極、かつ電機子コア30側がN極に磁化されたマグネット片41とが、周壁15bの周方向に交互に配置されている。
【0029】
なお、マグネット40は、複数のマグネット片41に分割されていない筒状であってもよい。筒状のマグネット40においては、複数の磁極が周方向に隣接配置されることになるが、それらの磁極の間には無着磁領域が設けられてもよい。
【0030】
整流子50は、回転軸13に固定されている。したがって、電動圧縮機10は、整流子50の固定される回転軸13を備えている。整流子50は、回転軸13と一体に回転する。整流子50は、回転軸13の軸方向において電機子コア30に隣接している。整流子50は、円筒状である。整流子50は、回転軸13の外周面に固定されている。
【0031】
図2に示すように、整流子50は、環状である。整流子50は、複数の整流子片51と複数の絶縁片52と、を備える。図2では、整流子50における整流子片51と絶縁片52の境界を図示するために、絶縁片52にハッチングを施している。複数の整流子片51の各々は、金属製である。複数の整流子片51と複数の絶縁片52とは、回転軸13の周方向に隣接して配置されている。整流子片51と絶縁片52とは、整流子50の周方向へ交互に配置されている。図示しないが、複数の整流子片51の各々には、コイル31の両端が電気的に接続されている。
【0032】
<ブラシ>
図2及び図3に示すように、ブラシ60は、整流子50の外周面50aに接触している。ブラシ60は、環状である。ブラシ60は、取付部61と、延出部62と、リップ部63と、を備えている。
【0033】
取付部61は、円筒状である。取付部61の中心軸線Lの延びる方向をブラシ60の軸方向とする。中心軸線Lは、回転軸13の中心軸線と一致する。取付部61は、第1ハウジング構成体15における周壁15bの内側に圧入されている。取付部61の外周面は、周壁15bの内周面の周方向全体に亘って接触している。この接触により、周壁15bの内周面とブラシ60の外周面との間がシールされている。第1ハウジング構成体15の周壁15bにおいて、取付部61よりも底壁15a側には、位置決めリング12が装着されている。位置決めリング12は、底壁15aに向けた取付部61の移動を規制する。
【0034】
延出部62は、取付部61の軸方向における底壁15a寄りの端部からブラシ60の径方向に沿って、回転軸13及び整流子50に向けて延出している。延出部62は、円盤状である。ブラシ60の径方向に沿った取付部61の寸法を取付部61の厚さとする。ブラシ60の軸方向に沿った延出部62の寸法を、延出部62の厚さとする。延出部62の厚さは、取付部61の厚さと同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0035】
リップ部63は、延出部62から整流子50に向けて延出している。リップ部63は、延出部62に対して屈曲している。リップ部63は、円錐筒状である。リップ部63は、延出部62から整流子50に近付くに従い、圧縮部14に近付くように傾斜している。リップ部63は、円錐筒における内周面にリップ部内周面63aを備えるとともに、円錐筒における外周面にリップ部外周面63bを備えている。ブラシ60の軸方向において、リップ部外周面63bは、リップ部内周面63aよりも圧縮部14に近い面である。
【0036】
リップ部外周面63bに直交する方向に沿った、リップ部外周面63bからリップ部内周面63aまでの寸法を、リップ部63の厚さとする。リップ部63の厚さは、延出部62からリップ部63の先端に向かうに従い徐々に薄くなっている。つまり、リップ部63の厚さは、延出部62から圧縮部14に近付くに従い薄くなっている。リップ部63の厚さは、延出部62から圧縮部14に近付くに従い、延出部62の厚さより徐々に薄くなっている。リップ部63は、延出部62よりも弾性変形しやすい。ブラシ60の内周面は、整流子50の外周面50aへの摺接面64である。摺接面64は、環状である。摺接面64は、リップ部63の先端面によって形成されている。ブラシ60は、当該ブラシ60の周方向の全体に亘って整流子50の外周面50aに押し付けられている摺接面64を備える。
【0037】
図2に示すように、ブラシ60は、正極ブラシ部65と、負極ブラシ部66と、2つの絶縁部67と、を備えている。正極ブラシ部65、負極ブラシ部66、及び絶縁部67は、リップ部63に設けられている。取付部61は、ブラシ60とハウジング11とを絶縁する。
【0038】
正極ブラシ部65と負極ブラシ部66とは、整流子50を挟んでブラシ60の径方向に対向している。正極ブラシ部65及び負極ブラシ部66には、整流子50が摺接する。2つの絶縁部67の各々は、正極ブラシ部65と負極ブラシ部66の間に配置されている。
【0039】
正極ブラシ部65は、電源70の正極に接続されている。負極ブラシ部66は、電源70の負極に接続されている。絶縁部67は、ブラシ60の周方向における正極ブラシ部65と負極ブラシ部66との間に介在して、正極ブラシ部65と負極ブラシ部66とを電気的に絶縁している。正極ブラシ部65と、負極ブラシ部66と、2つの絶縁部67は、正極ブラシ部65、絶縁部67、負極ブラシ部66、及び絶縁部67の順番で周方向に配置されている。
【0040】
摺接面64は、正極ブラシ部65によって形成された正極摺接面64aと、負極ブラシ部66によって形成された負極摺接面64bと、絶縁部67によって形成された絶縁摺接面64cと、を備えている。正極摺接面64a及び負極摺接面64bの各々の周方向への寸法は、各絶縁片52の周方向への寸法より長い。
【0041】
正極摺接面64a及び負極摺接面64bの各々の周方向への寸法は、整流子片51の周方向への寸法より短い。正極摺接面64a及び負極摺接面64bの各々は、整流子50の外周面50aのうち、整流子片51のいずれか一つの外周面と常に接触している。
【0042】
ブラシ60は、ゴム製である。ブラシ60の取付部61及び延出部62は、絶縁性ゴムによって形成されている。リップ部63における正極ブラシ部65及び負極ブラシ部66は、導電性ゴムによって形成されるとともに、リップ部63における絶縁部67は絶縁性ゴムによって形成されている。したがって、正極ブラシ部65に形成された正極摺接面64aの全面は、導電性ゴムを用いて形成されている。また、負極ブラシ部66に形成された負極摺接面64bの全面は、導電性ゴムを用いて形成されている。
【0043】
導電性ゴムは、任意のゴム材と導電性粒子と導電性繊維とが夫々所望量混ぜ合わされて形成されるものである。ゴム材料は、例えば、ニトリルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等である。導電性粒子は、例えば、カーボンブラックやグラファイト、インジウム/スズ酸化物、アンチモン/スズ酸化物等の導電性金属酸化物である。また、導電性粒子は、上記材料を適宜選択して用いてもよい。導電性繊維は、ステンレス繊維、カーボンファイバー、カーボンチューブ等の炭素繊維、チタン酸カリウムにメッキをしたもの等である。また、導電性繊維の太さ、長さは任意に選択可能である。導電性ゴムは、比較的低い電気抵抗を備えたものである。なお、導電性ゴムは、任意のゴム材と導電性粒子とから形成されていてもよいし、任意のゴム材と導電性繊維とから形成されていてもよい。絶縁性ゴムは、上記ゴム材料によって形成されている。
【0044】
ゴム製のブラシ60の全体は、弾性変形可能である。ブラシ60に所用の弾性を持たせるために、導電性ゴムにおけるゴム材の種類、配合量及び絶縁性ゴムの種類が調整される。
【0045】
正極ブラシ部65、負極ブラシ部66及び絶縁部67の各々は、整流子50の外周面50aに対して弾性変形した状態で接触している。つまり、リップ部63は、整流子50の外周面50aに対して弾性変形した状態で接触している。リップ部63は、弾性変形した状態から原形状への復帰力によって整流子50の外周面50aに向けて付勢されている。よって、リップ部63の摺接面64は、周方向の全体に亘って整流子50の外周面50aに押し付けられている。したがって、ブラシ60は、当該ブラシ60の周方向の全体に亘って整流子50の外周面50aに押し付けられている摺接面64を備えている。ゴム弾性による、整流子50の外周面50aに対する摺接面64の押し付けにより、正極ブラシ部65の正極摺接面64a及び負極ブラシ部66の負極摺接面64bと整流子50との導通が確保されている。
【0046】
摺接面64は、整流子50の外周面50aに向けたリップ部63の付勢力によって整流子50の外周面50aに押し付けられている。リップ部63の摺接面64は、回転軸13の径方向の外側から整流子50に向けて押し付けられている。
【0047】
ブラシ付きモータ20のブラシ60は、モータ収容室S1に収容されている。モータ収容室S1には、圧縮部14に供給される前の冷媒が供給されている。リップ部63には、冷媒の圧力が作用している。リップ部63の摺接面64は、冷媒の圧力によって整流子50の外周面50aに押し付けられている。整流子50の外周面50aに対する摺接面64の押し付けにより、正極ブラシ部65の正極摺接面64a及び負極ブラシ部66の負極摺接面64bと整流子50との導通が確保されている。
【0048】
<実施形態の作用>
ブラシ付きモータ20において、電源70から正極ブラシ部65及び負極ブラシ部66に電力が供給されると、正極ブラシ部65及び負極ブラシ部66と摺接する整流子片51を介して、正極ブラシ部65と負極ブラシ部66から電機子コア30のコイル31に電流が供給される。これにより、電機子コア30は回転する。すると、電機子コア30に一体の回転軸13が回転する。
【0049】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ブラシ60の正極ブラシ部65の正極摺接面64a及び負極ブラシ部66の負極摺接面64bの各々は、導電性ゴムを用いて形成されている。このため、ブラシ60と整流子50の接触は、金属と導電性ゴムとの接触である。よって、正極摺接面64a及び負極摺接面64bを全て金属製とした場合と比べると、整流子50が正極摺接面64a及び負極摺接面64bに摺接したときの金属摩耗粉の発生を抑制できる。
【0050】
(2)ブラシ60は、正極ブラシ部65及び負極ブラシ部66と、絶縁部67とから環状に形成されている。正極ブラシ部65及び負極ブラシ部66は、導電性ゴムによって形成されている。絶縁部67は、絶縁性ゴムによって形成されている。このため、ブラシ60の全体はゴムによって形成されている。そして、ブラシ60は、環状の摺接面64を備える。ブラシ60全体のゴム弾性により、摺接面64は、周方向の全体に亘って整流子50の外周面50aに押し付けられている。このため、電動圧縮機10において、モータ収容室S1におけるブラシ付きモータ20を収容した空間と、ブラシ60を挟んだブラシ付きモータ20と反対側の空間との間を摺接面64によってシールできる。例えば、ブラシと、シール部材とを別々に設ける場合と比べると、回転軸13の軸方向への電動圧縮機10の寸法を小型化できる。
【0051】
(3)ブラシ60は、リップ部63を備える。リップ部63は、モータ収容室S1に供給された冷媒の圧力によって整流子50の外周面50aに押し付けられている。よって、整流子50とブラシ60との導通を確保できる。
【0052】
(4)ブラシ60全体のゴム弾性により、摺接面64は、周方向の全体に亘って整流子50の外周面50aに押し付けられている。また、モータ収容室S1の冷媒によって、摺接面64は、周方向の全体に亘って整流子50の外周面50aに押し付けられている。したがって、ゴム弾性と冷媒とにより、正極ブラシ部65の正極摺接面64a及び負極ブラシ部66の負極摺接面64bを整流子片51に押し付けることができるため、正極ブラシ部65及び負極ブラシ部66と整流子50との導通を確保できる。
【0053】
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
図4に示すように、ブラシ60は、取付部61と延出部62とを備えるとともに、リップ部63を省略した形状であってもよい。この場合、延出部62の先端面に摺接面64が形成されている。
【0054】
○ ブラシ60の摺接面64は、環状面でなくてもよい。この場合、正極ブラシ部65の正極摺接面64aと、負極ブラシ部66の負極摺接面64bは、整流子50の外周面50aに摺接するが、絶縁部67は、整流子50の外周面50aから離間していてもよい。このように構成した場合、ブラシ60は、整流子50の外周面50aとの間をシールしなくてもよい。
【0055】
○ 電動圧縮機10において、モータ収容室S1に冷媒が吸入されなくてもよい。
○ ブラシ付きモータ20は、電動圧縮機10に搭載されていなくてもよい。例えば、ブラシ付きモータ20は、ファンを駆動するモータであったり、気液を圧送するポンプを駆動するモータであってもよい。
【0056】
○ ブラシ付きモータ20は、3相交流式のモータであってもよい。この場合、ブラシ付きモータ20は、3相に合わせて3つの整流子50及び3つのブラシ60を備える。
○ ブラシ60は、取付部61を省略して、延出部62とリップ部63とから構成されていてもよい。
【0057】
○ 正極ブラシ部65、負極ブラシ部66、及び絶縁部67は、リップ部63だけでなく、延出部62にも設けられていてもよい。
○ ブラシ60において、絶縁部67は、絶縁性ゴム以外の材料で形成されていてもよい。
【0058】
○ 正極ブラシ部65は、正極摺接面64aの全面が導電性ゴムを用いて形成されるとともに、正極摺接面64a以外は導電性ゴム以外の材料によって形成されていてもよい。また、負極ブラシ部66は、負極摺接面64bの全面が導電性ゴムを用いて形成されるとともに、負極摺接面64b以外は導電性ゴム以外の材料によって形成されていてもよい。
【0059】
○ 正極摺接面64aの全面のうちの一部が導電性ゴムを用いて形成されるとともに、その他の部分が導電性ゴム以外の材料を用いて形成されていてもよい。また、負極摺接面64bの全面のうちの一部が導電性ゴムを用いて形成されるとともに、その他の部分が導電性ゴム以外の材料を用いて形成されていてもよい。
【0060】
○ ハウジング11の内周面は、四角形状や三角形状であってもよい。この場合、ハウジング11の内周面の周方向の全体に亘って取付部61が接触するように、取付部61は四角筒状や三角筒状となる。
【0061】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記ブラシ及び前記整流子は環状であり、前記ブラシは、前記ブラシの周方向における前記正極ブラシ部と前記負極ブラシ部との間に介在して当該正極ブラシ部と前記負極ブラシ部とを絶縁する絶縁部を備えるとともに、前記絶縁部は絶縁性ゴムによって形成されており、前記ブラシは、当該ブラシの周方向の全体に亘って前記整流子の外周面に押し付けられ、かつ前記正極摺接面及び前記負極摺接面を含む摺接面を備えているブラシ付きモータ。
【0062】
(ロ)前記ブラシ付きモータは、電動圧縮機に搭載され、前記電動圧縮機は、前記整流子の固定される回転軸と、当該回転軸の回転によって冷媒を圧縮する圧縮部と、前記ブラシ付きモータを収容するモータ収容室を画定するハウジングと、を備えるとともに、前記圧縮部によって圧縮される前の冷媒は、前記ハウジングに形成された吸入口を経由して前記モータ収容室に吸入され、前記ブラシは、前記ハウジングの内周面の周方向全体に亘って接触している筒状の取付部と、前記取付部から前記回転軸の径方向に沿って前記整流子に向けて延出している環状の延出部と、前記延出部から前記整流子に向けて延出し、かつ前記延出部から前記整流子に近付くに従い前記圧縮部に近付くように傾斜している環状のリップ部と、を備え、前記リップ部は前記摺接面を備えているブラシ付きモータ。
【0063】
(ハ)回転軸と、前記回転軸の回転によって駆動する圧縮部と、前記回転軸を回転させるブラシ付きモータと、前記ブラシ付きモータを収容するハウジングを備える電動圧縮機であって、前記ブラシ付きモータは、前記回転軸と一体に回転する整流子を備えるとともに、前記整流子の外周面が摺接するブラシを備え、前記ブラシは、前記整流子が摺接する正極ブラシ部及び負極ブラシ部を備え、前記正極ブラシ部には、前記整流子が摺接する正極摺接面が形成され、前記負極ブラシ部には、前記整流子が摺接する負極摺接面が形成され、前記正極摺接面及び前記負極摺接面は、導電性ゴムを用いて形成されていることを特徴とする電動圧縮機。
【符号の説明】
【0064】
S1…モータ収容室、10…電動圧縮機、11…ハウジング、13…回転軸、14…圧縮部、15d…吸入口、20…ブラシ付きモータ、50…整流子、50a…外周面、60…ブラシ、61…取付部、62…延出部、63…リップ部、64…摺接面、64a…正極摺接面、64b…負極摺接面、65…正極ブラシ部、66…負極ブラシ部、67…絶縁部。
図1
図2
図3
図4