(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135060
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】フォイル軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 27/02 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
F16C27/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045567
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】篠田 史也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 文博
(72)【発明者】
【氏名】中根 健太
【テーマコード(参考)】
3J012
【Fターム(参考)】
3J012AB11
3J012BB01
3J012EB10
3J012EB11
(57)【要約】
【課題】トップフォイルの放熱を促進させる。
【解決手段】フォイル軸受17は、回転軸14が挿通される筒状の軸受ハウジング40と、回転軸14と軸受ハウジング40との間に設けられ、周方向Zに延びるトップフォイル50と、トップフォイル50と軸受ハウジング40との間に設けられ、トップフォイル50を弾性的に支持するバンプフォイル60と、を備える。フォイル軸受17は、トップフォイル50における周方向Zの両端部の間に設けられ、トップフォイル50における軸方向Xの少なくとも中央から軸受ハウジング40に向けて延び、軸受ハウジング40に接する延設部57を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸が挿通される筒状のハウジングと、
前記回転軸と前記ハウジングとの間に設けられ、前記回転軸の周方向に延びるトップフォイルと、
前記トップフォイルと前記ハウジングとの間に設けられ、前記トップフォイルを弾性的に支持するバンプフォイルと、を備え、
前記トップフォイルにおける前記周方向の両端部の間に設けられ、前記トップフォイルにおける前記回転軸の軸方向の少なくとも中央から前記ハウジングに向けて延び、前記ハウジングに接する延設部を有することを特徴とするフォイル軸受。
【請求項2】
前記トップフォイルは、前記回転軸と対向するとともにコーティングが施されているコーティング面を有し、
前記延設部は、前記トップフォイルと一体であって且つ前記トップフォイルに対して屈曲することにより形成され、前記コーティングが施されていない非コーティング面を有し、
前記延設部における前記非コーティング面は前記ハウジングに当接する、請求項1に記載のフォイル軸受。
【請求項3】
前記ハウジングには、前記ハウジングの内面に開口し、前記延設部が挿入される溝が形成され、
前記バンプフォイルは、前記ハウジングに向けて延びるとともに前記溝に挿入される突出部を有し、
前記延設部は、前記周方向において前記溝の側面に当接しており、前記回転軸の径方向において前記溝の底面から離れており、
前記突出部は、前記延設部を前記周方向において前記溝の側面に押し付ける押付部を有する、請求項1又は請求項2に記載のフォイル軸受。
【請求項4】
前記ハウジングには、前記ハウジングの内面に開口し、前記延設部が挿入される溝が形成され、
前記バンプフォイルは、前記ハウジングに向けて延びるとともに前記溝に挿入される突出部を有し、
前記延設部は、前記周方向において前記溝の側面に当接しており、前記回転軸の径方向において前記溝の底面から離れており、
前記延設部は、前記突出部を前記周方向において前記溝の側面に押し付ける押付部を有する、請求項1又は請求項2に記載のフォイル軸受。
【請求項5】
前記ハウジングには、前記ハウジングの内面に開口する複数の溝が形成され、
前記複数の溝は、前記周方向に互いに離れており、
前記トップフォイルは、前記周方向における前記トップフォイルの端部から前記ハウジングに向かって延びるとともに前記複数の溝のうちの1つに挿入される固定端を有し、
前記延設部は、前記複数の溝のうち、前記固定端が挿入されない前記溝に挿入され、
前記ハウジングには、前記複数の溝を覆うように前記ハウジングの端面に固定されることで前記固定端及び前記延設部の前記軸方向への変位を規制する規制部材が設けられる、請求項1又は請求項2に記載のフォイル軸受。
【請求項6】
前記溝は、前記ハウジングに少なくとも3つ形成され、
前記延設部は、前記トップフォイルに2つ設けられ、
前記固定端と2つの前記延設部のうちの一方との前記周方向における間隔、2つの前記延設部の前記周方向における間隔、及び2つの前記延設部のうちの他方と前記固定端との前記周方向の間隔は、等間隔である、請求項5に記載のフォイル軸受。
【請求項7】
前記ハウジングの内部には冷却水が流れる流路が設けられている、請求項1に記載のフォイル軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォイル軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のフォイル軸受は、筒状のハウジングと、トップフォイルと、バンプフォイルと、を備える。ハウジングには、回転軸が挿通される。トップフォイルは、回転軸とハウジングとの間に設けられるとともに、回転軸の周方向に延びる。バンプフォイルは、トップフォイルとハウジングとの間に設けられるとともに、トップフォイルを弾性的に支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フォイル軸受においては、回転軸の回転数が所定の回転数に到達すると、回転軸とトップフォイルとの間に生じる空気膜の動圧によって、トップフォイルに熱が生じる。トップフォイルに生じた熱は、バンプフォイルへと伝達されることによって放熱されるが、トップフォイルの放熱をさらに促進させることが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するフォイル軸受は、回転軸が挿通される筒状のハウジングと、前記回転軸と前記ハウジングとの間に設けられ、前記回転軸の周方向に延びるトップフォイルと、前記トップフォイルと前記ハウジングとの間に設けられ、前記トップフォイルを弾性的に支持するバンプフォイルと、を備え、前記トップフォイルにおける前記周方向の両端部の間に設けられ、前記トップフォイルにおける前記回転軸の軸方向の少なくとも中央から前記ハウジングに向けて延び、前記ハウジングに接する延設部を有することを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、フォイル軸受が延設部を有さない場合と比較して、トップフォイルの熱が伝熱される対象にハウジングが追加される分だけ、トップフォイルの放熱を促進させることができる。
【0007】
上記フォイル軸受において、前記トップフォイルは、前記回転軸と対向するとともにコーティングが施されているコーティング面を有し、前記延設部は、前記トップフォイルと一体であって且つ前記トップフォイルに対して屈曲することにより形成され、前記コーティングが施されていない非コーティング面を有し、前記延設部における前記非コーティング面は前記ハウジングに当接してもよい。
【0008】
上記構成によれば、延設部を介したトップフォイルからハウジングへの放熱を、コーティングを介さずに行わせることができる。したがって、延設部におけるコーティング面がハウジングに当接する場合と比較して、トップフォイルの放熱をより促進させることができる。
【0009】
上記フォイル軸受において、前記ハウジングには、前記ハウジングの内面に開口し、前記延設部が挿入される溝が形成され、前記バンプフォイルは、前記ハウジングに向けて延びるとともに前記溝に挿入される突出部を有し、前記延設部は、前記周方向において前記溝の側面に当接しており、前記回転軸の径方向において前記溝の底面から離れており、前記突出部は、前記延設部を前記周方向において前記溝の側面に押し付ける押付部を有してもよい。
【0010】
上記構成によれば、ハウジングに対する延設部の接触面積を大きくできるため、こうした接触面積が大きくなる分だけ、トップフォイルの放熱をより促進できる。
上記フォイル軸受において、前記ハウジングには、前記ハウジングの内面に開口し、前記延設部が挿入される溝が形成され、前記バンプフォイルは、前記ハウジングに向けて延びるとともに前記溝に挿入される突出部を有し、前記延設部は、前記周方向において前記溝の側面に当接しており、前記回転軸の径方向において前記溝の底面から離れており、前記延設部は、前記突出部を前記周方向において前記溝の側面に押し付ける押付部を有してもよい。
【0011】
上記構成によれば、ハウジングに対する延設部の接触面積を大きくできるため、こうした接触面積が大きくなる分だけ、トップフォイルの放熱をより促進できる。
上記フォイル軸受において、前記ハウジングには、前記ハウジングの内面に開口する複数の溝が形成され、前記複数の溝は、前記周方向に互いに離れており、前記トップフォイルは、前記周方向における前記トップフォイルの端部から前記ハウジングに向かって延びるとともに前記複数の溝のうちの1つに挿入される固定端を有し、前記延設部は、前記複数の溝のうち、前記固定端が挿入されない前記溝に挿入され、前記ハウジングには、前記複数の溝を覆うように前記ハウジングの端面に固定されることで前記固定端及び前記延設部の前記軸方向への変位を規制する規制部材が設けられてもよい。
【0012】
上記構成によれば、回転軸のフォイル軸受の内部への挿入時に、固定端の変位のみを規制することによってトップフォイルの変位を規制する場合よりも、多くの位置でトップフォイルの軸方向への変位を規制できる。したがって、ハウジングの内部でトップフォイルが傾くことを抑制できるため、回転時の回転軸が傾いた状態のトップフォイルと接することによるトップフォイルに偏摩耗の発生を抑制できる。
【0013】
上記フォイル軸受において、前記溝は、前記ハウジングに少なくとも3つ形成され、前記延設部は、前記トップフォイルに2つ設けられ、前記固定端と2つの前記延設部のうちの一方との前記周方向における間隔、2つの前記延設部の前記周方向における間隔、及び2つの前記延設部のうちの他方と前記固定端との前記周方向の間隔は、等間隔であってもよい。
【0014】
上記構成によれば、上記の間隔にばらつきがある場合よりも、回転軸のフォイル軸受の内部への挿入時に、ハウジングの内部でトップフォイルが傾くことをさらに抑制できる。したがって、回転時の回転軸が傾いた状態のトップフォイルと接することによるトップフォイルへの偏摩耗の発生をさらに抑制できる。
【0015】
上記フォイル軸受において、前記ハウジングの内部には冷却水が流れる流路が設けられていてもよい。
上記構成によれば、流路を流れる冷却水によってハウジングが冷却されることにより、トップフォイルとハウジングとの温度差を大きくできる。したがって、トップフォイルの放熱をより促進させることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、トップフォイルの放熱を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】実施形態におけるフォイル軸受を示す断面図である。
【
図3】実施形態におけるフォイル軸受を示す分解斜視図である。
【
図4】実施形態におけるトップフォイルを示す展開図である。
【
図5】実施形態におけるフォイル軸受を部分的に拡大して示す断面図である。
【
図7】変更例におけるフォイル軸受を部分的に拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、フォイル軸受を具体化した実施形態を図面にしたがって説明する。本実施形態のフォイル軸受は、遠心圧縮機に適用される。
<遠心圧縮機の構成>
図1に示すように、遠心圧縮機10は、ハウジング12と、モータ13と、回転軸14と、インペラ15と、タービンホイール16と、2つのフォイル軸受17と、を備えている。
【0019】
ハウジング12は、モータ13、回転軸14、インペラ15、及びタービンホイール16を収容している。ハウジング12は、金属製である。本実施形態におけるハウジング12は、アルミニウム製である。
【0020】
本実施形態におけるハウジング12は、筒状のモータハウジング21と、筒状のコンプレッサハウジング22と、筒状のタービンハウジング23と、円環状の第1プレート24と、円環状の第2プレート25と、介在プレート91と、を有している。モータハウジング21は、コンプレッサハウジング22とタービンハウジング23との間に配置されている。第1プレート24は、モータハウジング21とコンプレッサハウジング22との間に配置されている。第1プレート24は、内周縁からモータハウジング21側に突出する筒状の第1ボス26を有している。第2プレート25は、モータハウジング21とタービンハウジング23との間に配置されている。第2プレート25は、内周縁からモータハウジング21側に突出する筒状の第2ボス27を有している。介在プレート91は、第1プレート24とコンプレッサハウジング22との間に介在されている。
【0021】
モータ13は、モータハウジング21の内側に収容されている。モータ13は、ステータ31と、ロータ32とを有している。ステータ31は、ステータコア33とコイル34とを有している。ステータコア33は、円筒形状である。ステータコア33の外周面は、モータハウジング21の内周面に固定されている。コイル34は、ステータコア33に巻回されている。コイル34は、ステータコア33の軸方向の両端面から突出する一対のコイルエンド34aを有している。
【0022】
ロータ32は、ステータ31の内側に配置されている。本実施形態におけるロータ32は、筒部材35と、磁性体である永久磁石36と、を有している。筒部材35は、円筒状である。筒部材35は、例えば、金属製である。永久磁石36は、円柱状である。永久磁石36の軸方向の寸法は、筒部材35の軸方向の寸法よりも短い。永久磁石36は、筒部材35の内側に配置されている。永久磁石36の軸方向は、筒部材35の軸方向と一致している。筒部材35は、永久磁石36の軸方向の両端から突出している。コイル34に電力が供給されることによりステータ31に回転磁界が生じると、ロータ32は回転する。
【0023】
回転軸14は、第1軸部材14a及び第2軸部材14bを有している。第1軸部材14aの軸方向と第2軸部材14bの軸方向とは、互いに一致している。第1軸部材14aの軸方向及び第2軸部材14bの軸方向は、筒部材35の軸方向と一致している。第1軸部材14aの軸方向及び第2軸部材14bの軸方向を、以下では軸方向Xという。軸方向Xは、回転軸14の軸方向に相当する。第1軸部材14aの軸線と第2軸部材14bの軸線とは、互いに一致している。これら第1軸部材14aの軸線と第2軸部材14bの軸線と、を回転軸14の軸線Lという。回転軸14の軸線Lに直交する方向を、径方向Yという。
【0024】
第1軸部材14a及び第2軸部材14bは、例えば、金属製である。第1軸部材14aは軸方向Xにおける筒部材35の一端に挿入されるとともに、第2軸部材14bは軸方向Xにおける筒部材35の他端に挿入されている。第1軸部材14a及び第2軸部材14bは、軸方向Xにおける永久磁石36の両側に設けられている。回転軸14は、ロータ32に固定されている。回転軸14は、ロータ32と一体的に回転する。
【0025】
第1軸部材14aは、第1ボス26に挿通されるとともに第1プレート24及び介在プレート91を貫通している。第1軸部材14aは、コンプレッサハウジング22の内側に突出している。インペラ15は、コンプレッサハウジング22の内側において第1軸部材14aに連結されている。インペラ15は、コンプレッサハウジング22の内側に収容されている。回転軸14が回転すると、インペラ15は回転軸14と一体的に回転する。インペラ15が回転することによって、ハウジング12の外部からコンプレッサハウジング22の内側に空気が吸入される。コンプレッサハウジング22の内側に吸入された空気は、インペラ15の回転に伴って圧縮される。圧縮された空気は、例えば、図示しない燃料電池スタックに供給される。
【0026】
第2軸部材14bは、第2ボス27に挿通されるとともに第2プレート25を貫通している。第2軸部材14bは、タービンハウジング23の内側に突出している。タービンホイール16は、タービンハウジング23の内側において第2軸部材14bに連結されている。タービンホイール16は、タービンハウジング23の内側に収容されている。回転軸14が回転すると、タービンホイール16は回転軸14と一体的に回転する。また、燃料電池スタックの排気は、タービンハウジング23の内側に導入される。タービンホイール16は、タービンハウジング23の内側に導入された排気によっても回転する。
【0027】
ハウジング12の内部には冷却水が流れる流路70が設けられている。流路70は、冷却水流路W1、冷却水ジャケット72、第1接続流路W2、及び第2接続流路W3を含む。
【0028】
介在プレート91の軸方向Xにおける両端面のうち、第1プレート24側の端面であるプレート端面92には流路溝71が形成されている。流路溝71は、プレート端面92において、回転軸14の周方向へ延びている。プレート端面92における流路溝71の開口は、第1プレート24によって閉塞されている。冷却水流路W1は、第1プレート24と流路溝71とによって区画されている。なお、介在プレート91と第1プレート24との間には、例えば、冷却水流路W1を流れる冷却水の洩れを抑制するために、図示しないシール部材が設けられている。
【0029】
冷却水ジャケット72は、モータハウジング21に形成されている。冷却水ジャケット72は、モータハウジング21の周方向の全周に亘って延びている。
第1接続流路W2及び第2接続流路W3は、モータハウジング21及び第1プレート24に形成されている。冷却水流路W1の第1端は、第1接続流路W2を介して冷却水ジャケット72に接続されている。冷却水流路W1の第2端は、第2接続流路W3を介して冷却水ジャケット72に接続されている。
【0030】
冷却水ジャケット72には、図示しない外部流路の第1端と第2端とが接続されている。外部流路には、冷却水(LLC)が流れている。また、外部流路には、図示しないラジエータが設けられている。外部流路を流れる冷却水は、ラジエータを通過する際に、外気と熱交換されることで冷却される。よって、冷却水は、外部流路、冷却水ジャケット72、第1接続流路W2、冷却水流路W1、第2接続流路W3、及び冷却水ジャケット72、の順に流れることによって循環している。したがって、流路70が形成されたモータハウジング21、第1プレート24、及び介在プレート91は、流路70を流れる冷却水によって冷却される。流路70を流れる冷却水はハウジング12を冷却する。
【0031】
<フォイル軸受>
フォイル軸受17は、ラジアル方向としての径方向Yに回転軸14を支持している。ラジアル方向は、径方向Yのことである。遠心圧縮機10に設けられる2つのフォイル軸受17のうち、一方のフォイル軸受17は、第1軸部材14aを回転可能に支持するとともに、他方のフォイル軸受17は、第2軸部材14bを回転可能に支持している。
【0032】
本実施形態では、第1軸部材14aを支持するフォイル軸受17は、第1ボス26の内部に設けられている。第2軸部材14bを支持するフォイル軸受17は、第2ボス27の内部に設けられている。
【0033】
図2及び
図3に示すように、フォイル軸受17は、筒状の軸受ハウジング40と、トップフォイル50と、バンプフォイル60と、を備えている。軸受ハウジング40はハウジング12の一部を構成する。すなわち、フォイル軸受17は、ハウジング12を備える。軸受ハウジング40の内面40aは、円筒状に延びる湾曲面である。回転軸14は、軸受ハウジング40に挿通されている。軸受ハウジング40の軸方向は、軸方向Xと一致している。軸受ハウジング40は、例えば金属製である。
【0034】
ハウジング12としての軸受ハウジング40には、溝41が形成されている。溝41は、ハウジングとしての軸受ハウジング40の内面40aに開口する。溝41は、ハウジング12としての軸受ハウジング40の内面40aから凹んでいる。溝41は、軸受ハウジング40を軸方向Xに貫通している。これにより、溝41は、軸方向Xにおける軸受ハウジング40の一端である第1端部40bの端面と、他端である第2端部40cでの端面とに開口している。
【0035】
ハウジング12としての軸受ハウジング40には、複数の溝41が形成されている。回転軸14の周方向を以下では周方向Zという。複数の溝41は、周方向Zに互いに離れている。溝41は、ハウジング12としての軸受ハウジング40に少なくとも3つ形成されている。本実施形態における溝41は、軸受ハウジング40に4つ形成されている。以下では、4つの溝41を、第1溝41a、第2溝41b、第3溝41c、及び第4溝41dともいう。第1溝41a、第2溝41b、第3溝41c、及び第4溝41dは、この順で軸受ハウジング40の周方向に並んでいる。第1溝41aと第2溝41bとの周方向Zにおける間隔、第2溝41bと第3溝41cとの周方向Zにおける間隔、及び第3溝41cと第1溝41aとの周方向Zにおける間隔は、等間隔である。また、これらの間隔は、第4溝41dと第1溝41aとの回転軸14の周方向における間隔よりも大きい。
【0036】
トップフォイル50は、周方向Zに延びる。トップフォイル50は、軸方向Xに延びる円筒形状から周方向Zにおける一部が切り欠かれた形状をなしている。周方向Zにおけるトップフォイル50の両端のうち、一端を第1端50aといい、他端を第2端50bという。
【0037】
トップフォイル50は、固定端53を有する。固定端53は、周方向Zにおけるトップフォイル50の端部としての第1端50aから軸受ハウジング40に向かって延びる。固定端53は、複数の溝41のうちの1つである第1溝41aに挿入される。
【0038】
トップフォイル50は、自由端52を有する。自由端52は、周方向Zにおけるトップフォイル50の端部としての第2端50bから軸受ハウジング40に向かって延びる。自由端52は、複数の溝41のうちの1つである第4溝41dに挿入される。
【0039】
固定端53及び自由端52は、周方向Zに直交するように延びる矩形平板状である。固定端53及び自由端52の軸方向Xの寸法は、トップフォイル50の軸方向Xの寸法よりも小さい。固定端53及び自由端52は、トップフォイル50における軸方向Xの中央から軸受ハウジング40に向けて延びている。固定端53及び自由端52は、トップフォイル50における軸方向Xの両端部に設けられていない。
【0040】
図4に示すように、トップフォイル50は、可撓性を有する帯状の金属板材を湾曲させることによって形成されている。トップフォイル50は、帯状の金属板材の一部を筒状に湾曲させることによって形成されている。本実施形態では、トップフォイル50を形成する金属板材の長手方向は、周方向Zと一致している。トップフォイル50を形成する金属板材の短手方向は、軸方向Xと一致している。金属板材の長手方向の一端はトップフォイル50の第1端50aに相当する。金属板材の長手方向の他端はトップフォイル50の第2端50bに相当する。固定端53は、金属板材の長手方向の一端がトップフォイル50の外側に向けて折り曲げられることによって形成されている。自由端52は、金属板材の長手方向の他端がトップフォイル50の外側に向けて折り曲げられることによって形成されている。なお、
図4では、折り曲げ位置を破線で示している。
【0041】
図5に示すように、トップフォイル50は、回転軸14と軸受ハウジング40との間に設けられている。トップフォイル50の内周面は、回転軸14の外周面と対向している。トップフォイル50の内周面は、周方向Zに延在する軸受面である。
【0042】
図4及び
図5に示すように、トップフォイル50は、コーティングCが施されているコーティング面55を有する。トップフォイル50を形成する金属板材の両面のうち、一面である第1面55aにはコーティングCが施され、他面である第2面56aにはコーティングCが施されていない。そのため、トップフォイル50を形成する金属板材の第1面55aがコーティング面55に相当する。トップフォイル50を形成する金属板材の第2面56aは、コーティングCが施されていない非コーティング面56に相当する。
【0043】
図2及び
図5に示すように、コーティング面55は、トップフォイル50の内周面として機能する。そのため、コーティング面55は回転軸14と対向する。したがって、仮に回転軸14がトップフォイル50の内周面に接することがあっても、トップフォイル50のコーティング面55に回転軸14が接することになるため、回転軸14とトップフォイル50との間で生じる摩擦を抑えることができる。非コーティング面56は、トップフォイル50の外周面として機能する。固定端53及び自由端52の各々において、周方向Zにおける一面がコーティング面55であり、他面が非コーティング面56である。
【0044】
図2に示すように、自由端52及び固定端53は、トップフォイル50から軸受ハウジング40に向かって突出している。自由端52は、第4溝41dに挿入されている。固定端53は、複数の溝41のうちの1つである第1溝41aに挿入されている。トップフォイル50は、自由端52が第4溝41dに挿入されるとともに、固定端53が第1溝41aに挿入されることによって、軸受ハウジング40に対する周方向Zへの移動が規制されている。
【0045】
バンプフォイル60は、トップフォイル50と軸受ハウジング40との間に設けられている。バンプフォイル60は、複数のバンプフォイル部60aから構成されている。本実施形態におけるバンプフォイル60は、3つのバンプフォイル部60aから構成されている。3つのバンプフォイル部60aを、第1フォイル部61、第2フォイル部62、及び第3フォイル部63ともいう。
【0046】
第1フォイル部61、第2フォイル部62、及び第3フォイル部63は、この順で周方向Zに並んでいる。第1フォイル部61、第2フォイル部62、及び第3フォイル部63は、周方向Zにおいて互いに離れている。これにより、周方向Zにおける第1フォイル部61と第2フォイル部62との間と、第2フォイル部62と第3フォイル部63との間と、には貫通部60hが形成されることとなる。本実施形態における貫通部60hは、トップフォイル50から軸受ハウジング40に向かう方向である径方向Yにバンプフォイル60を貫通する隙間である。本実施形態における貫通部60hは、周方向Zに互いに離れた2カ所に形成されることとなる。
【0047】
複数のバンプフォイル部60aの各々は、複数の山部64と複数の谷部65と、を有している。山部64と谷部65とは、周方向Zにおいて交互に並んでいる。谷部65は、軸受ハウジング40の内面40aに当接している。山部64は、トップフォイル50の外周面に当接している。複数のバンプフォイル部60aの各々は、山部64が周方向Zに伸長するように弾性変形する。これにより、バンプフォイル60は、トップフォイル50を弾性的に支持する。
【0048】
バンプフォイル60は、ハウジング12としての軸受ハウジング40に向けて延びる突出部66を有する。突出部66は、バンプフォイル部60aから軸受ハウジング40に向けて延びている。突出部66は、周方向Zにおけるバンプフォイル部60aの一端に設けられている。突出部66は、複数のバンプフォイル部60aの各々に設けられている。
【0049】
複数のバンプフォイル部60aの各々は、可撓性を有する帯状の金属板材を湾曲させることにより形成されている。本実施形態では、バンプフォイル部60aを形成する金属板材の長手方向は、周方向Zと一致している。バンプフォイル部60aを形成する金属板材の短手方向は、軸方向Xと一致している。突出部66は、周方向Zにおける金属板材の一端を外側に折り曲げることによって形成されている。
【0050】
突出部66は、周方向Zに直交するように延びる矩形平板状である。突出部66の軸方向Xの寸法は、バンプフォイル60の軸方向Xの寸法よりも小さい。突出部66は、バンプフォイル60における軸方向Xの中央から軸受ハウジング40に向けて延びている。突出部66は、バンプフォイル60における軸方向Xの両端部に設けられていない。
【0051】
突出部66は、溝41に挿入されている。第1フォイル部61に設けられた突出部66は、固定端53と共に第1溝41aに挿入されている。第2フォイル部62に設けられた突出部66は、第2溝41bに挿入されている。第3フォイル部63に設けられた突出部66は、第3溝41cに挿入されている。複数のバンプフォイル部60aの各々に設けられた突出部66が溝41に挿入されることによって、バンプフォイル60は、軸受ハウジング40に対する周方向Zへの移動が規制されている。
【0052】
<押付部>
突出部66は、押付部67を有する。押付部67は、第2フォイル部62に設けられた突出部66と、第3フォイル部63に設けられた突出部66と、の各々に設けられている。
【0053】
押付部67は、溝41の内部に位置する。詳細には、第2フォイル部62の突出部66に設けられた押付部67は、第2フォイル部62の突出部66と共に第2溝41bに挿入されている。第3フォイル部63の突出部66に設けられた押付部67は、第3フォイル部63の突出部66と共に第3溝41cに挿入されている。
【0054】
溝41の内面41eのうち、周方向Zの一方と他方とに位置する部分を側面41fという。押付部67は、突出部66のバンプフォイル部60aとは反対側の端部にて屈曲するとともに、この突出部66の端部から周方向Zにおける溝41の内面41eに向けて延びている。押付部67は、溝41の内面41eのうち、周方向Zの一方に位置する側面41fに接することにより、溝41の内面41eのうち、周方向Zの他方に位置する側面41fに向けて突出部66を付勢している。
【0055】
<規制部材>
図3に示すように、ハウジング12としての軸受ハウジング40には、規制部材80が設けられる。規制部材80は、リング状である。本実施形態における規制部材80は、軸方向Xにおける軸受ハウジング40の第1端部40b及び第2端部40cに設けられている。規制部材80は、軸受ハウジング40の第1端部40bの端面である第1端面40dと、第2端部40cの端面である第2端面40eとに沿って延在している。規制部材80は、図示しないボルトなどの固定手段によって軸受ハウジング40に固定されている。
【0056】
図3及び
図6に示すように、規制部材80は、軸方向Xにおける軸受ハウジング40の両端である第1端部40b及び第2端部40cにおいて溝41を覆うように軸受ハウジング40に固定されている。詳細には、2つの規制部材80のうちの一方は、第1端部40bにおける第1溝41aの開口、第2溝41bの開口、第3溝41cの開口、及び第4溝41dの開口の一部を覆っている。2つの規制部材80のうちの他方は、第2端部40cにおける第1溝41aの開口、第2溝41bの開口、第3溝41cの開口、及び第4溝41dの開口の一部を覆っている。
【0057】
上記のように規制部材80が溝41を覆うことにより、規制部材80は、固定端53及び突出部66の軸方向Xへの変位を規制する。詳細には、第1溝41aに挿入された固定端53及び突出部66は、規制部材80のうちで第1溝41aを覆う部分によって軸方向Xへの変位が規制される。第2溝41bに挿入された突出部66は、規制部材80のうちで第2溝41bを覆う部分によって軸方向Xへの変位が規制される。第3溝41cに挿入された突出部66は、規制部材80のうちで第3溝41cを覆う部分によって軸方向Xへの変位が規制される。固定端53の軸方向Xの両端と突出部66の軸方向Xの両端とは、規制部材80に接していてもよい。なお、本実施形態においては、規制部材80のうちで第4溝41dを覆う部分によって、第4溝41dに挿入された自由端52の軸方向Xへの変位が規制される。
【0058】
<延設部>
フォイル軸受17は、延設部57を有する。延設部57は、トップフォイル50における周方向Zの両端部である第1端50aと第2端50bとの間に設けられている。延設部57は、トップフォイル50における軸方向Xの少なくとも中央から軸受ハウジング40に向けて延びている。詳細には、延設部57は、トップフォイル50における軸方向Xの中央から延びている一方で、トップフォイル50における軸方向Xの両端部に設けられていない。
【0059】
延設部57は、周方向Zに直交するように延びる矩形平板状である。延設部57の軸方向Xの寸法は、トップフォイル50の軸方向Xの寸法よりも小さい。延設部57の軸方向Xの寸法は、例えば固定端53及び自由端52の軸方向Xの寸法と同じ大きさである。軸方向Xに直交する仮想的な面を仮想面というとき、軸方向Xにおいて、延設部57の一端は固定端53及び自由端52の一端と同一の仮想面上に位置し、延設部57の他端は固定端53及び自由端52の他端と同一の仮想面上に位置する。
【0060】
図2に示すように、延設部57は、トップフォイル50に2つ設けられている。2つの延設部57のうち、一方を第1延設部57aともいい、他方を第2延設部57bともいう。第1延設部57a及び第2延設部57bは、周方向Zにおいて互いに離れている。第1延設部57aは、周方向Zにおいて、トップフォイル50の第1端50aと第2延設部57bとの間に位置する。第2延設部57bは、周方向Zにおいて、第1延設部57aとトップフォイル50の第2端50bとの間に位置する。
【0061】
固定端53と第1延設部57aとの周方向Zにおける間隔を第1間隔L1という。2つの延設部57である第1延設部57aと第2延設部57bとの周方向Zにおける間隔を第2間隔L2という。第2延設部57bと固定端53との周方向Zの間隔を第3間隔L3という。第1間隔L1、第2間隔L2、及び第3間隔L3は、等間隔である。
【0062】
図3及び
図4に示すように、延設部57は、トップフォイル50と一体であって且つトップフォイル50に対して屈曲することにより形成されている。詳細には、トップフォイル50を形成する金属板材の長手方向の一端としての第1端50aと他端としての第2端50bとの間であって、金属板材の互いに離れた2カ所に延設部57が形成される。
【0063】
図4及び
図5に示すように、延設部57の板厚方向における一面が金属板材の第1面55aの一部で構成され、他面が金属板材の第2面56aによって形成される。そのため、延設部57の板厚方向における一面はコーティング面55となっており、他面は非コーティング面56となっている。すなわち、延設部57はコーティングCが施されていない非コーティング面56を有する。
【0064】
延設部57の周りには切れ込み50hが形成されている。この切れ込み50hは、金属板材の短手方向に延びる直線状をなす第1切れ込みと、金属板材の短手方向に互いに離れるとともに金属板材の長手方向に延びる直線状をなす一対の第2切れ込みと、から構成されている。延設部57は、金属板材の長手方向における延設部57の一端がトップフォイル50の外側に向くように折り曲げられることで形成されている。
【0065】
図2及び
図5に示すように、延設部57は、周方向Zにおけるバンプフォイル部60a同士の間を通っている。すなわち、延設部57は、バンプフォイル60を貫通する貫通部60hを通っている。詳細には、第1延設部57aは、第1フォイル部61と第2フォイル部62との間の貫通部60hを通っている。第2延設部57bは、第2フォイル部62と第3フォイル部63との間の貫通部60hを通っている。
【0066】
延設部57は、複数の溝41のうち、固定端53が挿入されない溝41に挿入されている。詳細には、第1延設部57aは、第2溝41bに挿入されている。第2延設部57bは、第3溝41cに挿入されている。
【0067】
溝41には延設部57が挿入される。延設部57は、突出部66と共に溝41に挿入されている。詳細には、第1延設部57aは、第2フォイル部62に設けられた突出部66と共に第2溝41bに挿入されている。第2延設部57bは、第3フォイル部63に設けられた突出部66と共に第3溝41cに挿入されている。
【0068】
延設部57の板厚方向が周方向Zと一致する。非コーティング面56は、延設部57における周方向Zの一方に位置する。コーティング面55は、延設部57における周方向Zの他方に位置する。
【0069】
延設部57は、軸受ハウジング40に接する。延設部57のおける非コーティング面56は、軸受ハウジング40に当接している。延設部57は、周方向Zにおいて溝41の側面41fに当接している。溝41の内面41eのうち、径方向Yの外側に位置する部分を底面41gという。延設部57は、径方向Yにおいて溝41の底面41gから離れている。詳細には、第1延設部57aは、第2溝41bの内面41eのうち、周方向Zの一方に位置する側面41fに当接しているとともに、径方向Yにおいて第2溝41bの底面41gから離れている。第2延設部57bは、第3溝41cの内面41eのうち、周方向Zの一方に位置する側面41fに当接しているとともに、径方向Yにおいて第3溝41cの底面41gから離れている。
【0070】
バンプフォイル部60aに設けられた突出部66は、延設部57に接する。突出部66は、延設部57のうち、溝41の側面41fに接する側とは反対側から延設部57に接する。本実施形態においては、突出部66は、延設部57におけるコーティング面55に接する。第2フォイル部62に設けられた突出部66は、第1延設部57aに接している。第3フォイル部63に設けられた突出部66は、第2延設部57bに接している。
【0071】
突出部66に設けられた押付部67は、溝41の側面41fのうち、周方向Zにおいて延設部57が接する側とは反対側に接する。押付部67によって突出部66が付勢されることによって、この突出部66と接する延設部57が溝41の側面41fに押し付けられる。言い換えると、押付部67は、延設部57を周方向Zにおいて溝41の側面41fに押し付ける。
【0072】
図2及び
図6に示すように、規制部材80は、複数の溝41を覆うように軸受ハウジング40の端面としての第1端面40d及び第2端面40eに固定されることで固定端53及び延設部57の軸方向Xへの変位を規制する。本実施形態においては、第2溝41bに挿入された第1延設部57aは、規制部材80のうちで第2溝41bを覆う部分によって軸方向Xへの変位が規制される。第3溝41cに挿入された第2延設部57bは、規制部材80のうちで第3溝41cを覆う部分によって軸方向Xへの変位が規制される。延設部57の軸方向Xの両端は、規制部材80に接していてもよい。
【0073】
<回転軸の回転時のフォイル軸受の状態>
図2に示すように、遠心圧縮機10が駆動すると、回転軸14が回転する。回転軸14が回転する方向を回転方向Dとする。回転軸14が回転方向Dに回転しており、且つ回転軸14の回転数が所定の回転数に到達すると、回転軸14とトップフォイル50との間に空気膜が形成される。これにより、回転軸14がトップフォイル50から浮き上がる。こうして、フォイル軸受17は、空気膜によりトップフォイル50に対して非接触の状態で、回転軸14をラジアル方向である径方向Yに支持する。
【0074】
上記のように空気膜が形成されると、トップフォイル50は径方向Yにおける外側に向けて変位する。こうしたトップフォイル50の変位に伴って、トップフォイル50からバンプフォイル60の各山部64に荷重が入力される。トップフォイル50から各山部64に入力される荷重によって、バンプフォイル60は周方向Zに伸長するように弾性変形する。これにより、トップフォイル50は、バンプフォイル60によって弾性的に支持される。
【0075】
上記のトップフォイル50の変位に伴って、延設部57が径方向Yにおいて溝41の底面41gに近づくことがある。こうしたトップフォイル50の変位時に、径方向Yにおいて延設部57が溝41の底面41gに接しないように、径方向Yにおける延設部57と溝41の底面41gとの隙間の寸法が設定されている。
【0076】
延設部57は、回転軸14の回転数によらず、軸受ハウジング40に接している。詳細には、延設部57は、延設部57が挿入された溝41の側面41fに当接している。上記のように回転軸14の回転数が所定の回転数に到達したことによってトップフォイル50が変位する間も、延設部57が軸受ハウジング40に接した状態が維持される。
【0077】
[実施形態の作用]
本実施形態の作用を説明する。
フォイル軸受17においては、回転軸14の回転数が所定の回転数に到達すると、回転軸14とトップフォイル50との間に生じる空気膜の動圧によって、トップフォイル50に熱が生じる。トップフォイル50に生じた熱は、バンプフォイル60へと伝達される。
【0078】
本実施形態におけるフォイル軸受17は、延設部57を有する。延設部57は、トップフォイル50から軸受ハウジング40に向けて延びるとともに、軸受ハウジング40に接する。そのため、トップフォイル50に生じた熱は、バンプフォイル60へと伝達されるほか、延設部57を介して軸受ハウジング40に伝達される。
【0079】
[実施形態の効果]
本実施形態の効果を説明する。
(1)フォイル軸受17は延設部57を有する。延設部57は、トップフォイル50から軸受ハウジング40に向けて延びるとともに、軸受ハウジング40に接する。そのため、フォイル軸受17が延設部57を有さない場合と比較して、トップフォイル50の熱が伝熱される対象に軸受ハウジング40が追加される分だけ、トップフォイル50の放熱を促進させることができる。
【0080】
(2)トップフォイル50は、回転軸14と対向するとともにコーティングCが施されているコーティング面55を有する。延設部57は、トップフォイル50と一体であって且つトップフォイル50に対して屈曲することにより形成されている。延設部57は、コーティングCが施されていない非コーティング面56を有する。延設部57における非コーティング面56は軸受ハウジング40に当接する。そのため、延設部57を介したトップフォイル50から軸受ハウジング40への放熱を、コーティングCを介さずに行わせることができる。したがって、延設部57におけるコーティング面55が軸受ハウジング40に当接する場合と比較して、トップフォイル50の放熱をより促進させることができる。
【0081】
(3)バンプフォイル60は、軸受ハウジング40に向けて延びるとともに溝41に挿入される突出部66を有する。突出部66は押付部67を有する。押付部67は、延設部57を周方向Zにおいて溝41の側面41fに押し付ける。そのため、軸受ハウジング40に対する延設部57の接触面積を大きくできるため、こうした接触面積が大きくなる分だけ、トップフォイル50の放熱をより促進できる。
【0082】
(4)回転軸14をフォイル軸受17の内部に挿入する際、回転軸14がトップフォイル50の内周面と接触することがある。この接触に伴ってトップフォイル50が軸方向Xに変位することで軸受ハウジング40の内部でトップフォイル50が傾くと、回転時の回転軸14が傾いた状態のトップフォイル50と接することでトップフォイル50に偏摩耗が生じるおそれがある。実施形態によれば、規制部材80は、複数の溝41を覆うように軸受ハウジング40の第1端面40d及び第2端面40eに固定されることで、固定端53及び延設部57の軸方向Xへの変位を規制する。そのため、回転軸14のフォイル軸受17の内部への挿入時に、固定端53の変位のみを規制することによってトップフォイル50の変位を規制する場合よりも、多くの位置でトップフォイル50の軸方向Xへの変位を規制できる。したがって、軸受ハウジング40の内部でトップフォイル50が傾くことを抑制できるため、回転時の回転軸14が傾いた状態のトップフォイル50と接することによるトップフォイル50に偏摩耗の発生を抑制できる。
【0083】
(5)固定端53と第1延設部57aとの周方向Zにおける間隔、第1延設部57aと第2延設部57bとの周方向Zにおける間隔、及び第2延設部57bと固定端53との周方向Zの間隔は、等間隔である。そのため、これら間隔にばらつきがある場合よりも、回転軸14のフォイル軸受17の内部への挿入時に、軸受ハウジング40の内部でトップフォイル50が傾くことをさらに抑制できる。したがって、回転時の回転軸14が傾いた状態のトップフォイル50と接することによるトップフォイル50への偏摩耗の発生をさらに抑制できる。
【0084】
(6)ハウジング12の内部には冷却水が流れる流路70が設けられている。そのため、流路70を流れる冷却水によってハウジング12が冷却されることにより、トップフォイル50とハウジング12との温度差を大きくできる。したがって、トップフォイル50の放熱をより促進させることができる。
【0085】
(7)トップフォイル50の軸方向Xの中央は、トップフォイル50の軸方向Xの両端部と比較して、回転軸14とトップフォイル50との間に生じる空気膜から作用する動圧が高くなりやすいため、より高温になりやすい傾向にある。実施形態における延設部57は、トップフォイル50における軸方向Xの少なくとも中央から軸受ハウジング40に向けて延びている。そのため、トップフォイル50の軸方向Xの中央に生じた熱を、延設部57を介して軸受ハウジング40に伝達させることができるため、トップフォイル50の高温になりやすい部分の放熱を促進させることができる。
【0086】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0087】
○
図7に示すように、延設部57が押付部67を有してもよい。この場合の押付部67は、突出部66に接することによって突出部66を周方向Zにおいて溝41の側面41fに押し付ける。詳細には、この場合の押付部67は、例えば、第1延設部57a及び第2延設部57bに設けられている。押付部67は、溝41の内部に位置する。第1延設部57aに設けられた押付部67は、第1延設部57aと共に第2溝41bに挿入されている。第2延設部57bに設けられた押付部67は、第2延設部57bと共に第3溝41cに挿入されている。押付部67は、延設部57のトップフォイル50とは反対側の端部にて屈曲するとともに、この延設部57の端部から突出部66に向けて延びている。押付部67が突出部66に接することにより、延設部57は、周方向Zにおいて溝41の側面41fに当接している。また、この場合の延設部57も、実施形態と同様に、径方向Yにおいて溝41の底面41gから離れている。この変更例によっても、上記実施形態での(3)の効果と同様の効果を得ることができる。
【0088】
○ 押付部67は、突出部66及び延設部57のいずれにも設けられなくてもよい。この場合の押付部67は、例えば、突出部66及び延設部57とは別体のばね部材であってもよい。
【0089】
○ 押付部67は、延設部57と突出部66とが挿入される複数の溝41のうち、一部の溝41の内部に設けてもよい。フォイル軸受17から押付部67を省略してもよい。
○ 自由端52は、溝41に挿入されていなくてもよい。この場合の自由端52は、軸受ハウジング40に向かって延びる形状ではなく、周方向Zに延びる形状であってもよい。また、この場合、軸受ハウジング40から第4溝41dを省略してもよい。
【0090】
○ フォイル軸受17から規制部材80を省略してもよい。この場合は、固定端53の軸方向Xの変位を規制する部材と、延設部57の軸方向Xへの変位を規制する部材と、を別部材としてもよい。
【0091】
○ 軸受ハウジング40の各溝41は、軸受ハウジング40の軸方向の両端面のうち、少なくとも一方の端面において開口しない形状であってもよい。
○ バンプフォイル60は、2つのバンプフォイル部60aから構成されていてもよいし、4つ以上のバンプフォイル部60aから構成されてもよい。この場合、突出部66をバンプフォイル部60aの各々に設けることによって、フォイル軸受17が有する突出部66の数を変更してもよい。
【0092】
○ 少なくとも1つのバンプフォイル部60aから突出部66を省略してもよい。
○ バンプフォイル60は、全体で1つのバンプフォイル部60aからなるものであってもよい。この場合のバンプフォイル60においては、周方向Zにおける両端部の間に貫通孔を形成することが好ましい。この貫通孔を実施形態での貫通部60hとして機能させることによって、実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0093】
○ バンプフォイル60とは異なる1以上の介在部材を、トップフォイル50と軸受ハウジング40との間に介在させてもよい。この場合においても、介在部材のうち、周方向Zにおける両端部の間に貫通部60hを設けることにより、実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0094】
○ 固定端53が挿入される溝41以外の溝41のうち、少なくとも1つを軸受ハウジング40から省略してもよい。この場合も、延設部57を軸受ハウジング40の内面40aに接触させることによって、延設部57を軸受ハウジング40に接するものにできる。
【0095】
○ 第1間隔L1、第2間隔L2、及び第3間隔L3の少なくとも2つの間隔の大きさは異なっていてもよい。
○ トップフォイル50に設けられる延設部57の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0096】
○ 延設部57におけるコーティング面55と非コーティング面56の位置は上記実施形態とは異なる位置に設けられてもよい。例えば、延設部57の表面全体がコーティング面55であってもよいし、延設部57の表面全体が非コーティング面56であってもよい。
【0097】
○ 延設部57における非コーティング面56が軸受ハウジング40に接していてもよい。
○ トップフォイル50におけるコーティング面55と非コーティング面56の位置は上記実施形態とは異なる位置に設けられてもよい。例えば、トップフォイル50の表面全体がコーティング面55であってもよいし、トップフォイル50の表面全体が非コーティング面56であってもよい。
【0098】
○ 延設部57は、トップフォイル50と一体でなくてもよい。例えば、延設部57は、トップフォイル50とは別体の部材がトップフォイル50に取り付けられることによって、トップフォイル50に設けられていてもよい。
【0099】
○ 延設部57は、トップフォイル50における軸方向Xの両端部のうち、少なくとも一端部には設けられなくてもよい。要するに、延設部57は、トップフォイル50における軸方向Xの少なくとも中央から延びるものであればよい。
【0100】
○ ハウジング12における流路70の形成位置や形状は変更可能である。例えば、流路70が軸受ハウジング40まで延設されていてもよい。一方、ハウジング12の内部への流路70の形成は省略されてもよい。要するに、トップフォイル50とハウジング12との温度差が大きくできれば、ハウジング12における流路70は、形成位置、形状、及び形成の有無を変更可能である。
【0101】
○ フォイル軸受17の適用先は遠心圧縮機10に限定されない。
[付記]
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想を以下に記載する。
【0102】
[態様1]
回転軸が挿通される筒状のハウジングと、前記回転軸と前記ハウジングとの間に設けられ、前記回転軸の周方向に延びるトップフォイルと、前記トップフォイルと前記ハウジングとの間に設けられ、前記トップフォイルを弾性的に支持するバンプフォイルと、を備え、前記トップフォイルにおける前記周方向の両端部の間に設けられ、前記トップフォイルにおける前記回転軸の軸方向の少なくとも中央から前記ハウジングに向けて延び、前記ハウジングに接する延設部を有することを特徴とするフォイル軸受。
【0103】
[態様2]
前記トップフォイルは、前記回転軸と対向するとともにコーティングが施されているコーティング面を有し、前記延設部は、前記トップフォイルと一体であって且つ前記トップフォイルに対して屈曲することにより形成され、前記コーティングが施されていない非コーティング面を有し、前記延設部における前記非コーティング面は前記ハウジングに当接する、[態様1]に記載のフォイル軸受。
【0104】
[態様3]
前記ハウジングには、前記ハウジングの内面に開口し、前記延設部が挿入される溝が形成され、前記バンプフォイルは、前記ハウジングに向けて延びるとともに前記溝に挿入される突出部を有し、前記延設部は、前記周方向において前記溝の側面に当接しており、前記回転軸の径方向において前記溝の底面から離れており、前記突出部は、前記延設部を前記周方向において前記溝の側面に押し付ける押付部を有する、[態様1]又は[態様2]に記載のフォイル軸受。
【0105】
[態様4]
前記ハウジングには、前記ハウジングの内面に開口し、前記延設部が挿入される溝が形成され、前記バンプフォイルは、前記ハウジングに向けて延びるとともに前記溝に挿入される突出部を有し、前記延設部は、前記周方向において前記溝の側面に当接しており、前記回転軸の径方向において前記溝の底面から離れており、前記延設部は、前記突出部を前記周方向において前記溝の側面に押し付ける押付部を有する、[態様1]又は[態様2]に記載のフォイル軸受。
【0106】
[態様5]
前記ハウジングには、前記ハウジングの内面に開口する複数の溝が形成され、前記複数の溝は、前記周方向に互いに離れており、前記トップフォイルは、前記周方向における前記トップフォイルの端部から前記ハウジングに向かって延びるとともに前記複数の溝のうちの1つに挿入される固定端を有し、前記延設部は、前記複数の溝のうち、前記固定端が挿入されない前記溝に挿入され、前記ハウジングには、前記複数の溝を覆うように前記ハウジングの端面に固定されることで前記固定端及び前記延設部の前記軸方向への変位を規制する規制部材が設けられる、[態様1]~[態様4]のうちいずれか1つに記載のフォイル軸受。
【0107】
[態様6]
前記溝は、前記ハウジングに少なくとも3つ形成され、前記延設部は、前記トップフォイルに2つ設けられ、前記固定端と2つの前記延設部のうちの一方との前記周方向における間隔、2つの前記延設部の前記周方向における間隔、及び2つの前記延設部のうちの他方と前記固定端との前記周方向の間隔は、等間隔である、[態様5]に記載のフォイル軸受。
【0108】
[態様7]
前記ハウジングの内部には冷却水が流れる流路が設けられている、[態様1]~[態様6]のうちいずれか1つに記載のフォイル軸受。
【符号の説明】
【0109】
C…コーティング、X…軸方向、Y…径方向、Z…周方向、12…ハウジング、14…回転軸、17…フォイル軸受、40…軸受ハウジング、40a…(軸受ハウジングの)内面、40d…(端面としての)第1端面、40e…(端面としての)第2端面、41…溝、41e…(溝の)内面、41f…側面、41g…底面、50…トップフォイル、53…固定端、55…コーティング面、56…非コーティング面、57…延設部、60…バンプフォイル、66…突出部、67…押付部、70…流路、80…規制部材。