(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135062
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】磁気記録再生装置
(51)【国際特許分類】
G11B 5/02 20060101AFI20240927BHJP
G11B 5/09 20060101ALI20240927BHJP
G11B 21/21 20060101ALI20240927BHJP
G11B 20/18 20060101ALI20240927BHJP
G11B 20/10 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G11B5/02 S
G11B5/09 301C
G11B21/21 E
G11B20/18 572B
G11B20/18 572F
G11B20/18 512Z
G11B20/10 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045569
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大竹 雅哉
(72)【発明者】
【氏名】木村 香里
【テーマコード(参考)】
5D044
【Fターム(参考)】
5D044BC01
5D044CC04
5D044DE68
5D044GK18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】装置内の酸素量の変化に伴うスライダー浮上量変化を抑制可能な磁気記録再生装置を提供する。
【解決手段】磁気記録再生装置1は、保護層を有する磁気記録媒体2と、熱アシスト素子を有する磁気ヘッド10と、酸素量を検知する酸素量検知部180と、を含み、磁気記録再生装置1内には、装置内雰囲気として、酸素及びヘリウムが封入されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護層を有する磁気記録媒体と、
熱アシスト素子を有する磁気ヘッドと、
酸素量を検知する検知部とを含み、
酸素及びヘリウムが封入された磁気記録再生装置。
【請求項2】
前記磁気ヘッドの浮上量を制御する浮上量制御部をさらに含む請求項1に記載の磁気記録再生装置。
【請求項3】
前記熱アシスト素子にアシストパワーを印加して熱アシスト記録を行うためのアシストパワー制御部をさらに含む請求項1に記載の磁気記録再生装置。
【請求項4】
前記酸素量検知部は、ビットエラーレートに基づいて前記酸素量を予測する酸素量予測部をさらに含む請求項1に記載の磁気記録再生装置。
【請求項5】
前記酸素量は、装置雰囲気の1~20容量%である請求項1に記載の磁気記録再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録再生装置として、例えば、磁気ディスク装置(HDD)がある。HDDの記録方式の1つとして、熱アシスト磁気記録方式(HAMR)がある。HAMRには、HDD内の例えば保護層、潤滑層などの材料が、熱や光により分解されて、装置内雰囲気に炭素を放出し、近接場光素子先端に収集されることにより故障するモードが存在する。これに対し、HDD内に酸素を入れて炭素を燃焼させることが提案されている。しかしながら、He等で密閉されたドライブ内で酸素を入れた場合、HAMR保護目的以外にも酸素が消費されるという課題がある。そのため、初期酸素濃度は、酸素消費に応じて、時間が経過しても一定量の酸素をドライブ内に残すように設定することが求められる。一方、時間経過で酸素が消費され、装置内が減圧すると、スライダーの浮上量が変化し、HDI(ヘッドディスクインターフェース)障害が発生するという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2021/0120121A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、装置内の酸素量の変化に伴うスライダー浮上量変化を抑制可能な磁気記録再生装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、保護層を有する磁気記録媒体と、
熱アシスト素子を有する磁気ヘッドと、
酸素量を検知する検知部とを含み、
酸素及びHeが封入された磁気記録再生装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る磁気記録再生装置の制御構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る磁気記録再生装置の制御構成の他の一例を表すブロック図である。
【
図3】時間経過に対するヘッドの浮上量の低下の例を表すグラフ図である。
【
図4】実施形態に係る磁気記録再生装置における酸素量モニターの動作例を表すフロー図である。
【
図5】実施形態に係る磁気記録再生装置の制御構成の他の一例を表すブロック図である。
【
図6】実施形態に係る磁気記録再生装置の一部の横断面図である。
【
図7】実施形態に係る磁気記録再生装置における酸素量モニターの動作例を表すフロー図である。
【
図10】実施形態に係る磁気記録再生装置の制御構成の他の一例を表すブロック図である。
【
図11】実施形態に係る磁気記録再生装置における酸素量モニターの動作例を表すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態にかかる磁気記録再生装置は、保護層を有する磁気記録媒体と、熱アシスト素子を有する磁気ヘッドと、酸素量を検知する検知部とを含み、酸素及びヘリウム(He)が封入されている。
【0008】
実施形態によれば、検知部により酸素量を検知することにより、装置内雰囲気の酸素量の変化に対応した磁気記録再生装置の調整が可能となる。
【0009】
保護層は、保護層上に設けられた潤滑剤からなる潤滑層を含むことができる。
また、酸素量検知部は、例えば酸素メーター、あるいはビットエラーレートに基づいて酸素量を予測する酸素量予測部を含むことができる。
さらに、酸素量は、装置雰囲気の1~20容量%にすることができる。1~20容量%の範囲内であると装置の長期信頼性例えば5年間の信頼性を確保できる傾向がある。上記の範囲外であると、長期信頼性の確保が困難となる傾向がある。
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更であって容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0011】
(実施例1)
まず、実施例1について説明する。
図1は、実施形態に係る第1磁気記録再生装置の制御構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、第1磁気記録再生装置1は、磁気記録媒体としての磁気ディスク2、回転駆動部としてのスピンドルモータ(SPM)3と、アクチュエータアッセンブリ4、ボイスコイルモータ(VCM)5と、磁気ヘッド10と、を備えている。磁気ディスク2には、記録されるデータを管理するための情報を記録する管理エリア2aが設けられている。また、第1磁気記録再生装置1内には、装置内雰囲気として、酸素及びHeが封入されている。
【0012】
さらに、第1磁気記録再生装置1は、ヘッドアンプIC110と、R/Wチャネル120と、ハードディスクコントローラ(HDC)130と、マイクロプロセッサ(MPU)140と、ドライバIC150と、メモリ160とを備えている。また、第1磁気記録再生装置1は、ホストコンピュータ(ホスト)170と接続可能である。なお、R/Wチャネル120、HDC130、及びMPU140は、1チップの集積回路に組み込まれていてもよい。
【0013】
磁気ヘッド10は、ライトヘッド10W、リードヘッド10R、アシスト素子を含むアシスト部100を備えている。ライトヘッド10Wは、磁気ディスク2にデータをライトする。リードヘッド10Rは、磁気ディスク2からデータをリードする。アシスト部100は、ライトヘッド10Wがデータを磁気ディスク2にライトする場合に、データのライトをアシストする。ヒーターHEは、ライトヘッド10W、又はリードヘッド10Rの磁気ディスク1のディスク面に対する浮上量を調整する。磁気ヘッド10は、単独または複数の磁気ヘッドを含むことができる。アシスト素子は、熱アシスト素子としての近接場光素子であり、近接場光素子に対しレーザー光を出力するレーザー光源をさらに含む。アシスト素子に与えられるアシストパワーとして、レーザーパワー例えばレーザー光源に印加する電流などがあげられる。
【0014】
スピンドルモータ3は、ドライバIC150から供給される駆動電流(または駆動電圧)により駆動される。磁気ディスク2は、磁気ヘッド10によってデータパターンが記録再生される。
ボイスコイルモータ5によってボイスコイルを動作させ、アクチュエータアッセンブリ4を図示省略のランプロード機構のアンロード位置から回動することで、磁気ヘッド10は、磁気ディスク2の所望のトラック上に移動され、磁気ディスク2上の所定位置に位置決めされる。ボイスコイルモータ5は、ドライバIC150から供給される駆動電流(または駆動電圧)によって駆動される。
【0015】
ヘッドアンプIC110は、R/Wチャネル120から供給されるライトデータに応じたライト信号(ライト電流)をライトヘッド10Wに供給する。また、熱アシスト部100から出力する光出力を制御する。また、ヘッドアンプIC110は、リードヘッド10Rから出力されたリード信号を増幅して、R/Wチャネル120に伝送する。さらに、ヘッドアンプIC110は、ヒーターHEに印加する電圧を調整することにより、ライトヘッド10W、又はリードヘッド10Rの磁気ディスク1のディスク面に対する浮上量を調整する。
【0016】
R/Wチャネル120は、読み出し(リード)/書き込み(ライト)に関連する信号を処理する信号処理回路である。R/Wチャネル120は、リードデータの信号処理を実行するリードチャネルと、ライトデータの信号処理を実行するライトチャネルとを含む。リードチャネルは、リード信号をデジタルデータに変換し、デジタルデータからリードデータを復調する。ライトチャネルは、HDC130から転送されるライトデータを符号化し、符号化されたライトデータをヘッドアンプIC110に転送する。
【0017】
HDC130は、磁気ヘッド10、ヘッドアンプIC110、R/Wチャネル120、及びMPU140を介した、磁気ディスク2へのデータの書き込みと、磁気ディスク2からのデータの読み出しとを制御する。HDC130は、第1磁気記録再生装置1とホスト170とのインタフェースを構成し、リードデータおよびライトデータの転送制御を実行する。すなわち、HDC130は、ホスト170から転送される信号を受信し、且つホスト170へ信号を転送するホストインタフェースコントローラとして機能する。また、HDC130は、ホスト170から転送されるコマンド(ライトコマンド、リードコマンド等)を受信し、受信したコマンドをMPU140に送信する。
【0018】
酸素検知部180は、装置内の任意の位置に設けることが可能であり、例えば酸素を測定する酸素メーター、あるいは酸素量を間接的に予測する機能などを含み、酸素量を確認するタイミングで、第1磁気記録再生装置1内の雰囲気中の酸素量を検知することができる。検知結果を、MPU140に送信する。
【0019】
MPU140は、第1磁気記録再生装置1のメインコントローラ(制御部)であり、リード/ライト動作の制御および磁気ヘッド10の位置決めに必要なサーボ制御等を実行する。酸素検知部180からの酸素量の検知結果に応じてヘッドアンプIC110を制御し、酸素量の変化に対応した第1磁気記録再生装置1の調整、例えば、磁気ヘッド10の浮上量あるいはアシストパワーなどの調整を行なうことができる。
【0020】
ドライバIC150は、MPU140の制御に従い、スピンドルモータ3と、ボイスコイルモータ5との駆動を制御する。ボイスコイルモータ5が駆動することによって、磁気ヘッド10は磁気ディスク2上の目標トラックへ位置付けられる。
メモリ160は、揮発性メモリおよび不揮発性メモリを含む。例えば、メモリ160は、DRAMからなるバッファメモリ、及びフラッシュメモリを含む。
実施形態に係る第1磁気記録再生装置には、酸素及びHeが封入されている。
【0021】
図2に、第1磁気記録再生装置における経過時間に対する酸素消費の例を表すグラフ図を示す。
101に、第1磁気記録再生装置の経過時間と酸素残量との関係を表すグラフを示す。図示するように、密閉された第1磁気記録再生装置内にHe等を封入してさらに酸素を入れた場合には、時間の経過に伴い酸素が消費される。熱アシスト素子表面に発生する炭素を燃焼する目的以外に装置内の物質の酸化反応などにも酸素が消費され得る。そのため、酸素を封入する際には、各第1磁気記録再生装置の酸素消費に応じて、時間が経過しても一定量の酸素をドライブ内に残すように、初期酸素濃度を調整することが望まれる。
【0022】
図3に、時間経過による気圧の低下に対するヘッドの浮上量の変化の一例を表すグラフ図を示す。
102に、気圧とヘッドの浮上量との関係を表すグラフを示す。図示するように、時間経過により装置内の酸素が消費され、装置内が減圧されるとき、ヘッドの浮上量が低下して、例えばヘッドクラッシュなどのHDI障害が発生する、あるいは熱アシスト素子と記録面との距離が近づいて媒体が熱アシスト素子により過度に加熱される傾向がある。このため、浮上量を上昇させるか、アシストパワーを低減することにより、第1磁気記録再生装置内の雰囲気中の酸素量に応じて第1磁気記録再生装置を調整することができる。一方、装置内が減圧されるとき、ヘッドの浮上量が上昇する場合もあり、この場合、ヘッドと記録面が離れてしまうので、十分な品質で磁気記録ができなくなる、あるいは媒体の熱アシスト素子による加熱が不十分となる傾向がある。浮上量が低下するか上昇するかは第1磁気記録再生装置の構成による。このため、浮上量を低下させるか、アシストパワーを増加することにより、第1磁気記録再生装置内の雰囲気中の酸素量に応じて第1磁気記録再生装置を調整することができる。
このように、実施形態によれば、酸素が封入された熱アシスト磁気記録再生装置において、酸素量検知部にて酸素量を検知することにより、酸素量に応じて浮上量を調整するか、あるいは熱アシスト素子に印加するアシストパワーを調整することができる。
【0023】
図4に、実施形態に係る第1磁気記録再生装置における酸素量モニターの動作例を表すフロー図を示す。
まず、酸素量を確認するタイミングであるか判定し(ST1)、Noの場合は、酸素量の検知を終了する。Yesの場合は、酸素量検知部180により、定期的な酸素量の検知を行なう(ST2)。酸素量をモニターするタイミングは、例えば1日毎等一定時間間隔や、ホスト170から命令を受けたタイミング等がある。
【0024】
次に、酸素量が変化したか判定し(ST3)、Noの場合には、酸素量の検知を終了し、Yesの場合は、酸素量に応じて変化する記録品質を一定に保つよう第1磁気記録再生装置の調整(ST4)例えばヘッド浮上量あるいはアシストパワーの調整を行うことができる。ここで、酸素変化量に応じて変更するヘッド浮上量あるいはアシストパワー量は、予め出荷時の検査で確認しておくことができる。或いは、複数台の第1磁気記録再生装置の平均値からテーブル化しておき、そのテーブルに従って調整をおこなうことができる。
【0025】
(実施例2)
次に実施例2について説明する。
図5に、実施形態に係る第2磁気記録再生装置の制御構成の一例を表すブロック図を示す。
第2磁気記録再生装置1-1は、MPU140の代わりにMPU140-1を用いること、及びメモリ160の代わりに、酸素変化量に応じたヘッド浮上量、アシストパワー量、またはそのテーブルなどを保存するための保存部161を含むメモリ160-1を用いること以外は、
図1の第1の磁気記録再生装置1と同様の制御構成を有することができる。
MPU140-1は、酸素量検知部180から受けた酸素量の検知結果に応じてヘッドアンプIC110を制御し、ヒーターHEに印加する電圧を変更してヘッド10の浮上量を調整することが可能な浮上量制御部145を含む。
実施形態に係る第2磁気記録再生装置には、酸素及びHeが封入されている。
【0026】
図6は、第1、及び第2磁気記録再生装置に係る実施例1の磁気記録再生装置の一部であるライトヘッド10Wと磁気ディスク2の横断面図である。
磁気ディスク2は、基板20と、基板20上に順に積層されたヒートシンク層21、結晶配向層22、垂直記録層23、及び保護層24を有する。垂直記録層23はディスク面に対して垂直方向に大きな異方性をもつ。結晶配向層22は、その垂直記録層23の配向性を向上させるために垂直記録層23の下に配置される。ヒートシンク層21は、加熱領域の広がりを抑制するために結晶配向層22の下に配置される。保護層24は垂直記録層23を保護するために垂直記録層23の上部に配置され、その表面に、潤滑剤が塗布された図示しない潤滑層を含む。
【0027】
磁気ヘッド10は、記録用ヘッド10Wと再生用ヘッド10Rが分離された分離型磁気ヘッドであり、記録ヘッド10Wはディスク面に対して垂直方向磁界を発生させる高透磁率材料からなる主磁極40と、その主磁極40に磁束を流す主磁極と磁気的に接合されたトレーリングヨーク50と、主磁極40のリーディング側に配置された主磁極直下の磁路を効率的に閉じるために設けられたリターンシールド磁極60と、主磁極40に磁束を流すためにトレーリングヨークおよびリターンシールド磁極を含む磁路に巻きつくように配置されたコイル70と、記録ヘッドの浮上量を制御するためのヒーターHEの一例としてのヒーター80と、主磁極40のリーディング側に、磁気記録媒体2の垂直記録層23を加熱する近接場光を発生させる近接場光素子30と、近接場光発生用の光を伝播させるための導波路31で構成される。光源はレーザーダイオード32がアクチュエータアッセンブリ4のスライダーにマウントする形で組み込まれている。近接場光素子30としては、例えばAu、Pd、Pt、Rh、またはIr、またはこれらのうちのいくつかの組合せからなる合金を用いることができる。主磁極40と近接場光素子30との間に設けられる図示しない絶縁層として、例えばSiO2、Al2O3等からなる酸化物を用いることができる。
保護層24及びその潤滑剤の材料は、熱や光により分解されて炭素を放出し、例えば近接場光素子30などに付着する傾向があるが、装置内に封入された酸素により燃焼させることができる。
【0028】
図7に、実施形態に係る第2磁気記録再生装置における酸素量モニターの動作例を表すフロー図を示す。
酸素量モニターの動作を行うために、まず、MPU140は、酸素量を検知するタイミングであるか判定し(ST11)、Noの場合は、酸素量の検知を終了する。Yesの場合は、酸素量検知部180により、定期的な酸素量の検知を行なう(ST12)。酸素量をモニターするタイミングは、例えば1日毎等一定時間間隔や、ホスト170から命令を受けたタイミング等がある。
【0029】
次に、MPU140は、酸素量検知部180から受けた酸素量の検知結果に応じて、酸素量が変化したか判定し(ST13)、Noの場合には、酸素量の検知を終了し、Yesの場合は、浮上量制御部145により、例えばヘッドアンプIC110を制御し、ヒーターHEに印加する電圧を変更して、磁気ヘッド10の浮上量の調整を行うことができる(ST14)。ここで、酸素変化量に応じたヒーターHEの印加電圧のデータは、予め出荷時の検査で確認して保存部161に保存しておくことができる。酸素変化量により、第2磁気記録再生装置1-1内の減圧及び磁気ヘッド10の浮上量の変化例えば浮上量の浮上量の低下を確認することが可能である。或いは、複数台の第2磁気記録再生装置の平均値からヒーターHEの印加電圧をテーブル化して保存部161に保存しておくことができる。酸素量が変化した場合には、保存部161から取得したデータあるいはテーブルに従って磁気ヘッド10の浮上量の調整をおこなうことができる。
【0030】
このように、実施形態に係る第2磁気記録再生装置1-1では、第1磁気記録再生装置1の構成に加えて、磁気ヘッド10の浮上量を制御する浮上量制御部145をさらに設けることができる。浮上量制御部145を用いると、装置内雰囲気の酸素量の変化により、磁気ヘッド10の浮上量が変化した場合に、磁気ヘッド10の浮上量を制御して、装置1-1内雰囲気の酸素量の変化に対応した第2磁気記録再生装置1-1の調整が可能となる。
また、酸素量検知部180は、酸素量を間接的に予測する機能を搭載することが可能である。
【0031】
ここで、実施例2の変形例について説明する。
図8に、
図5の変形例を表すブロック図を示す。
図示するように、第3磁気記録再生装置1-2は、酸素量検知部180の代わりに、酸素量を間接的に予測する酸素量予測部181と、酸素量検知部180-1、及び酸素量予測部181とMPU140-1に接続され、ビットエラーレート(BER)を測定するBER測定部190を含むこと以外は、
図5の第2磁気記録再生装置1-1と同様の制御構成を有することができる。
酸素量予測部181は、酸素量の変化量を検知する機能を有する。この機能では、予め与えられた媒体2上の領域に電気特性測定領域を設けておき、BERの電気特性をその領域で測定し、出荷時の初期値からのBER変化量に基づいて酸素変化量を予測することができる。
【0032】
図9に、予め出荷時の検査で調べた浮上変化量に対するBERの変化量を表すグラフ図を示す。
103は、浮上量とBETの関係を表すグラフを示す。
図9のようなグラフを保持しておき、定期的に酸素量を検知するタイミングで、BERを測定し、BERの変化量から浮上変化量、及び酸素変化量を予測することができる。酸素量の初期値との変化量からヒーターHEの印加電圧を変更することができる。ここで、BERの代わりにSNや信号出力等の特性を用いることができる。
【0033】
(実施例3)
次に、実施例3について説明する。
図10に、実施形態に係る第4磁気記録再生装置の制御構成の一例を表すブロック図を示す。
第4磁気記録再生装置1-3は、MPU140の代わりにMPU140-3を用いること、及びメモリ160の代わりに、酸素変化量に応じたヘッド浮上量、アシストパワー量、またはそのテーブルなどを保存するための保存部161を含むメモリ160-1を用いること以外は、
図1の第1の磁気記録再生装置1と同様の制御構成を有することができる。
MPU140-3は、熱アシスト素子にアシストパワーを印加して熱アシスト記録を行うためのアシストパワー制御部143を含む。アシストパワー制御部143は、酸素量検知部180から受けた酸素量の検知結果に応じて、ヘッドアンプIC110を制御し、熱アシスト素子に印加するアシストパワーを変更して熱アシスト記録を行うことが可能である。
実施形態に係る第4磁気記録再生装置には、酸素及びHeが封入されている。
【0034】
図11に、実施形態に係る第4磁気記録再生装置における酸素量モニターの動作例を表すフロー図を示す。
酸素量モニターの動作を行うために、まず、MPU140-3は、酸素量を確認するタイミングであるか判定し(ST21)、Noの場合は、酸素量の確認を終了する。Yesの場合は、酸素量検知部180により、定期的な酸素量の検知を行なう(ST22)。酸素量をモニターするタイミングは、例えば1日毎等一定時間間隔や、ホスト170から命令を受けたタイミング等がある。
【0035】
次に、MPU140-3は、酸素量検知部180から受けた酸素量の検知結果に応じて、酸素量が変化したか判定し(ST23)、Noの場合には、酸素量の検知を終了し、Yesの場合は、アシストバワー制御部143により、例えばヘッドアンプIC110を制御し、アシスト素子30に印加する電圧を変更して、アシストバワーの調整を行うことができる(ST24)。ここで、アシスト素子30は熱アシスト素子としての近接場光素子であり、近接場光素子に対しレーザー光を出力するレーザー光源32をさらに含み、アシストパワー制御部143は、レーザーパワー例えばレーザー光源32に印加する電流などを制御することができる。酸素変化量に応じたレーザーパワーのデータは、予め出荷時の検査で確認して保存部161に保存しておくことができる。或いは、複数台の第4磁気記録再生装置の平均値からレーザーパワーをテーブル化して保存部161に保存しておくことができる。酸素量が変化した場合には、保存部161から取得したデータあるいはテーブルに従ってレーザーパワーの調整をおこなうことができる。
【0036】
このように、実施形態に係る第4磁気記録再生装置では、第1磁気記録再生装置の構成に加えて、熱アシスト素子30に供給するアシストパワーを制御するアシストパワー制御部143をさらに設けることができる。アシストパワー制御部143を用いると、装置1-3内雰囲気の酸素量の変化により、磁気ヘッド10の浮上量が変化して、熱アシスト素子30による熱アシスト効果が変化した場合であっても、装置内雰囲気の酸素量の変化に対応した第4磁気記録再生装置1-3の調整が可能となる。
【0037】
また、酸素量検知部180は、酸素量を間接的に予測する機能を搭載することが可能である。例えば
図8に示す第3磁気記録再生装置1-2と同様に、酸素量検知部180の代わりに、酸素量を間接的に予測する酸素量予測部181を有する酸素量検知部180-1を設けることが可能であり、また、酸素量予測部181とMPU140-1に接続され、ビットエラーレート(BER)を測定するBER測定部190をさらに設けることが可能である。
【0038】
酸素量予測部181は、酸素量の変化量を検知する機能を有する。この機能では、予め与えられた媒体2上の領域に電気特性測定領域を設けておき、BERの電気特性をその領域で測定し、出荷時の初期値からのBER変化量に基づいて酸素変化量を予測することができる。例えば、定期的に酸素量を検知するタイミングで、BERを測定し、BERの変化量から浮上変化量、及び酸素変化量を予測することができる。酸素量の初期値との変化量からレーザーパワーを変更することができる。ここで、BERの代わりにSNや信号出力等の特性を用いることができる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1,1-1,1-2,1-3…磁気記録再生装置、2…磁気記録媒体、3…回転駆動部、10,10W,10R…磁気ヘッド、30,…近接場光素子、32…レーザー光源、140,140-1,140-3…MPU、143…アシストパワー制御部、145…浮上量制御部、161…保存部