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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135071
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】防錆性能管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20240927BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045582
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】江▲崎▼ 達哉
(72)【発明者】
【氏名】浅田 照朗
(72)【発明者】
【氏名】重永 勉
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見 明秀
(72)【発明者】
【氏名】坂本 和夫
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC11
5L049CC15
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】金属製品の表面に設けられた塗膜の防錆性能を管理する防錆性能管理システムにおいて、防錆性能の評価や防錆性能に応じた施工などの透明性及び品質を確保する。
【解決手段】防錆性能管理システム100では、第1システム101としてのディーラーシステム20が、金属製品としての車両用鋼部材の塗膜に対する測定結果に基づき塗膜の防錆性能を評価し、この防錆性能に基づき塗膜の将来の劣化を予測した劣化予測情報を生成し、この劣化予測情報を送信する一方で、第2システム102としての施工方法提供システム30が、ディーラーシステム20から送信された劣化予測情報を受信し、この劣化予測情報に基づき、車両用鋼部材の塗膜の防錆性能を改善するための施工方法を含む施工方法情報を生成し、この施工方法情報に基づき施工が実施されるように当該施工方法情報を送信する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザにより使用される金属製品の表面に設けられた塗膜の防錆性能を管理する防錆性能管理システムであって、
前記防錆性能管理システムは、通信可能に接続された第1システム及び第2システムを有し、
前記第1システムは、
前記金属製品の塗膜に対する測定結果に基づき、前記塗膜の防錆性能を評価する防錆性能評価部と、
前記防錆性能評価部により評価された前記防錆性能に基づき、前記金属製品の前記塗膜の将来の劣化を予測した劣化予測情報を生成する劣化予測情報生成部と、
前記劣化予測情報生成部により生成された前記劣化予測情報を送信する送信部と、
を有し、
前記第2システムは、
前記第1システムの前記送信部により送信された前記劣化予測情報を受信する受信部と、
前記受信部により受信された前記劣化予測情報に基づき、前記金属製品の前記塗膜の防錆性能を改善するための施工方法を含む施工方法情報を生成する施工方法情報生成部と、
前記施工方法情報生成部により生成された前記施工方法情報に基づき施工が実施されるように、当該施工方法情報を送信する送信部と、
を有する、
ことを特徴とする防錆性能管理システム。
【請求項2】
前記第1システムは、
前記第2システムの前記送信部により送信された前記施工方法情報を受信する受信部と、
前記受信部により受信された前記施工方法情報に基づき、複数の施工案を作成する施工案作成部と、
前記施工案作成部により作成された前記複数の施工案をユーザに提示する提示部と、
を更に有する、
請求項1に記載の防錆性能管理システム。
【請求項3】
前記第2システムは、
前記施工方法情報に基づき施工が実施された後に評価された、前記金属製品の前記塗膜の防錆性能を、前記受信部により受信し、
前記受信部により受信された前記防錆性能を確認して、当該防錆性能を保証するための保証情報を生成する保証情報生成部を更に有し、
前記保証情報生成部により生成された前記保証情報を、前記送信部により送信し、
前記第1システムは、
前記第2システムの前記送信部により送信された前記保証情報を受信する受信部と、
前記金属製品を使用するユーザのユーザ情報を管理する管理部と、
を更に有し、
前記ユーザ情報は、前記金属製品に対して実施された施工の履歴を示す施工履歴を含み、前記第1システムの前記管理部は、前記保証情報が前記受信部により受信されると、前記ユーザ情報に含まれる前記施工履歴を更新する、
請求項1又は2に記載の防錆性能管理システム。
【請求項4】
前記施工方法情報は、当該施工方法情報に含まれる前記施工方法に基づき施工が実施された場合に得られる、前記塗膜の防錆性能を示す情報も含む、
請求項1又は2に記載の防錆性能管理システム。
【請求項5】
前記金属製品は、複数の部位を含み、これら複数の部位の各々において、設けられる塗膜の態様が異なっており、
前記第1システムにおいて、前記防錆性能評価部は、前記複数の部位の各々について前記防錆性能を評価し、前記劣化予測情報生成部は、前記複数の部位の各々について前記劣化予測情報を生成し、
前記第2システムにおいて、前記施工方法情報生成部は、前記複数の部位の各々について前記施工方法情報を生成する、
請求項1又は2に記載の防錆性能管理システム。
【請求項6】
前記第1システムの前記劣化予測情報生成部は、複数の地域ごとに規定された環境情報を参照して、前記劣化予測情報の生成対象となっている前記金属製品が使用された地域に対応する前記環境情報に基づき、当該金属製品の塗膜の前記劣化予測情報を生成し、
前記環境情報は、前記複数の地域ごとに、前記金属製品の防錆性能に影響を与える1つ以上の環境的な因子と、前記環境的な因子が防錆性能に与える影響度を示す情報と、が対応付けられた情報である、
請求項1又は2に記載の防錆性能管理システム。
【請求項7】
前記金属製品は、複数の部位を含み、これら複数の部位の各々において、設けられる塗膜の態様が異なっており、
前記複数の部位の各々について、前記環境情報が規定されている、
請求項6に記載の防錆性能管理システム。
【請求項8】
前記第1システムの前記劣化予測情報生成部は、前記環境情報に加えて、前記劣化予測情報の生成対象となっている前記金属製品の塗膜に関する初期情報に基づき、当該金属製品の塗膜の前記劣化予測情報を生成する、
請求項6に記載の防錆性能管理システム。
【請求項9】
前記金属製品は、車両用鋼部材である、
請求項1又は2に記載の防錆性能管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製品の表面に設けられた塗膜の防錆性能を管理する防錆性能管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属製品の表面に設けられた塗膜の防錆性能を評価する技術が知られている。例えば、特許文献1には、金属製品の塗膜(絶縁性の表面処理膜)に腐食因子を接触させた状態で電圧を表面に印加することで電流を検出し、この電流の経時的変化に基づき塗膜の防錆性能(欠陥発生状況)を評価する技術が記載されている。例えば、検出される電流の波形におけるピークの形状や、ピークの数や、ピークが生じる電圧値や、ピーク時の電流値などから、塗膜の防錆性能を評価することができる。
【0003】
他方で、上記のように評価された塗膜の防錆性能を、金属製品を使用するユーザに関連付けて管理したり、この防錆性能や防錆性能に関係する情報をユーザに提供したりすることが可能な防錆性能管理システムがあると良いと考えられる。そのようなシステムに関連する技術が、例えば特許文献2に記載されている。特許文献2には、各種機器の劣化診断を行う劣化診断システムとして、ユーザの操作するユーザクライアントと、診断サービス提供者の操作する複数の診断クライアントと、ユーザクライアント及び複数の診断クライアントとネットワークを介して接続される劣化診断仲介装置とを具備するシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許7088396号公報
【特許文献2】特許4184613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような防錆性能管理システムを利用するユーザは、金属製品の塗膜について評価された防錆性能が得られると、この後、塗膜の防錆性能を改善するための施工(メンテナンス)を行おうとすることが考えられる。したがって、塗膜の防錆性能を改善するための施工方法を防錆性能管理システムにより提供すれば、このシステムの利便性が更に向上すると言える。この場合、防錆性能管理システムにおいて、塗膜の防錆性能を評価するシステムや、施工方法を提供するシステムや、施工を実施するシステムなどを分けるように構成すると、これらの工程の透明性や品質を確保することができると考えられる。これは、例えば、1つのシステム(1つの例では金属製品の販売店で使用されるシステム)のみでこれらの工程を行うと、防錆性能の評価が甘くなったり、過剰又は不十分な施工方法が提供されたり、施工の品質が確保されなかったりする場合があり、また、システムが1つのみでは、このような問題が発生しても、それを的確に是正することが困難であるからである。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、金属製品の表面に設けられた塗膜の防錆性能を管理する防錆性能管理システムにおいて、防錆性能の評価や防錆性能に応じた施工などの透明性及び品質を確保することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、ユーザにより使用される金属製品の表面に設けられた塗膜の防錆性能を管理する防錆性能管理システムであって、防錆性能管理システムは、通信可能に接続された第1システム及び第2システムを有し、第1システムは、金属製品の塗膜に対する測定結果に基づき、塗膜の防錆性能を評価する防錆性能評価部と、防錆性能評価部により評価された防錆性能に基づき、金属製品の塗膜の将来の劣化を予測した劣化予測情報を生成する劣化予測情報生成部と、劣化予測情報生成部により生成された劣化予測情報を送信する送信部と、を有し、第2システムは、第1システムの送信部により送信された劣化予測情報を受信する受信部と、受信部により受信された劣化予測情報に基づき、金属製品の塗膜の防錆性能を改善するための施工方法を含む施工方法情報を生成する施工方法情報生成部と、施工方法情報生成部により生成された施工方法情報に基づき施工が実施されるように、当該施工方法情報を送信する送信部と、を有する、ことを特徴とする。
【0008】
このように構成された本発明に係る防錆性能管理システムでは、防錆性能評価及び劣化予測を行うシステム(第1システム)と、施工方法を提供するシステム(第2システム)とが分かれている。つまり、施工方法を提供する第2システムが、防錆性能評価及び劣化予測を行う第1システムから独立している。これにより、防錆性能評価、劣化予測、及び施工方法の提供のそれぞれの透明性を確保して、これらの品質を確保することができると共に、その後の施工の品質も確保することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、第1システムは、第2システムの送信部により送信された施工方法情報を受信する受信部と、受信部により受信された施工方法情報に基づき、複数の施工案を作成する施工案作成部と、施工案作成部により作成された複数の施工案をユーザに提示する提示部と、を更に有する。
このように構成された本発明によれば、第1システムは、施工方法情報を編集することで、ユーザに提示するための、内容が異なる複数の施工案を作成することができる。これにより、ユーザは、各施工案の内容に応じて、好みの施工案を選択できるようになる。
【0010】
本発明において、好ましくは、第2システムは、施工方法情報に基づき施工が実施された後に評価された、金属製品の塗膜の防錆性能を、受信部により受信し、受信部により受信された防錆性能を確認して、当該防錆性能を保証するための保証情報を生成する保証情報生成部を更に有し、保証情報生成部により生成された保証情報を、送信部により送信し、第1システムは、第2システムの送信部により送信された保証情報を受信する受信部と、金属製品を使用するユーザのユーザ情報を管理する管理部と、を更に有し、ユーザ情報は、金属製品に対して実施された施工の履歴を示す施工履歴を含み、第1システムの管理部は、保証情報が受信部により受信されると、ユーザ情報に含まれる施工履歴を更新する。
このように構成された本発明によれば、第1システムにおいて管理されるユーザ情報の施工履歴の信頼性を確保することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、施工方法情報は、当該施工方法情報に含まれる施工方法に基づき施工が実施された場合に得られる、塗膜の防錆性能を示す情報も含む。
このように構成された本発明によれば、施工後の防錆性能を施工方法情報に含めることで、この施工方法情報の利便性を向上させることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、金属製品は、複数の部位を含み、これら複数の部位の各々において、設けられる塗膜の態様が異なっており、第1システムにおいて、防錆性能評価部は、複数の部位の各々について防錆性能を評価し、劣化予測情報生成部は、複数の部位の各々について劣化予測情報を生成し、第2システムにおいて、施工方法情報生成部は、複数の部位の各々について施工方法情報を生成する。
このように構成された本発明によれば、複数の部位のそれぞれに応じた、防錆性能評価、劣化予測及び施工方法の提供を行うことができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、第1システムの劣化予測情報生成部は、複数の地域ごとに規定された環境情報を参照して、劣化予測情報の生成対象となっている金属製品が使用された地域に対応する環境情報に基づき、当該金属製品の塗膜の劣化予測情報を生成し、環境情報は、複数の地域ごとに、金属製品の防錆性能に影響を与える1つ以上の環境的な因子と、環境的な因子が防錆性能に与える影響度を示す情報と、が対応付けられた情報である。
このように構成された本発明によれば、地域ごとの環境により異なる劣化の進行程度を考慮することで、塗膜の劣化を精度良く予測することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、金属製品は、複数の部位を含み、これら複数の部位の各々において、設けられる塗膜の態様が異なっており、複数の部位の各々について、環境情報が規定されている。
このように構成された本発明によれば、複数の部位ごとに規定された環境情報を用いることで、各部位の塗膜の劣化を精度良く予測することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、第1システムの劣化予測情報生成部は、環境情報に加えて、劣化予測情報の生成対象となっている金属製品の塗膜に関する初期情報に基づき、当該金属製品の塗膜の劣化予測情報を生成する。
このように構成された本発明によれば、環境情報に加えて、金属製品の塗膜の初期情報を用いることで、塗膜の劣化をより精度良く予測することができる。つまり、初期の塗膜の状態と現在の塗膜の状態とを比較することで、塗膜の状態の劣化傾向が得られるので、この劣化傾向に基づき、塗膜の劣化予測の精度を向上させることができる。
【0016】
本発明において好適な例では、金属製品は、車両用鋼部材である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、金属製品の表面に設けられた塗膜の防錆性能を管理する防錆性能管理システムにおいて、防錆性能の評価や防錆性能に応じた施工などの透明性及び品質を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る防錆性能管理システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態に係る自動車メーカーシステムの記憶情報を概略的に示すブロック図である。
図3】本実施形態に係るディーラーシステムの機能部及び記憶情報を概略的に示すブロック図である。
図4】本実施形態に係る施工方法提供システムの機能部及び記憶情報を概略的に示すブロック図である。
図5】第1実施形態において、防錆性能管理システムにて行われる処理を示すフローチャートである。
図6】本実施形態において、地域ごとに規定された環境情報の一例を示す表である。
図7】本実施形態において、車両における複数の部位ごとに規定された環境情報の一例を示す表である。
図8】本実施形態による劣化予測情報の生成方法の一例を示す説明図である。
図9】本実施形態による劣化予測情報の生成方法の他の例を示す説明図である。
図10】第2実施形態において、防錆性能管理システムにて行われる処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による防錆性能管理システムについて説明する。なお、以下では、本発明に係る防錆性能管理システムを、金属製品としての車両(車両用鋼部材)に適用した実施形態について説明する。
【0020】
[システム構成]
まず、図1乃至図4を参照して、本実施形態に係る防錆性能管理システムの構成について説明する。図1は、本実施形態に係る防錆性能管理システムの概略構成を示すブロック図である。図2は、本実施形態に係る自動車メーカーシステムの記憶情報を概略的に示すブロック図である。図3は、本実施形態に係るディーラーシステムの機能部及び記憶情報を概略的に示すブロック図である。図4は、本実施形態に係る施工方法提供システムの機能部及び記憶情報を概略的に示すブロック図である。
【0021】
図1に示すように、防錆性能管理システム100は、車両メーカー(自動車メーカー)において用いられる車両メーカーシステム10と、車両を販売するディーラーにおいて用いられるディーラーシステム20と、車両の塗膜の防錆性能を改善するための施工方法(メンテナンス方法)を提供する機関において用いられる施工方法提供システム30と、車両の塗膜の防錆性能を改善するための施工業者において情報処理に用いられる施工業者システム40と、を有する。防錆性能管理システム100では、これらシステム10、20、30、40は、通信回線50を介して接続されている。
【0022】
本実施形態では、防錆性能管理システム100は、ユーザにより使用される金属製品としての車両、具体的には車両における複数の部位のそれぞれに用いられる車両用鋼部材について、その表面に設けられた塗膜(樹脂塗膜(電着塗膜)などの絶縁性の表面処理膜)の防錆性能に関する情報を管理するシステムである。この防錆性能管理システム100において、施工方法提供システム30は、最新の材料データ(図4参照)に基づいて、車両の塗膜の防錆性能を改善するための施工方法を提供する分析機関や研究機関などにおいて用いられるシステムである。このような専門的な機関によれば、高品質な施工方法を提供することができる。一方、施工業者システム40は、例えば防錆性能管理システム100と契約/加盟した施工業者(車両のメンテナンスを行う業者)において用いられるシステムである。なお、図1では、1つの施工業者システム40しか示していないが、実際には、複数の施工業者が存在するため、複数の施工業者システム40が存在する。
【0023】
具体的には、車両メーカーシステム10、ディーラーシステム20、施工方法提供システム30及び施工業者システム40は、それぞれ、情報処理装置11、21、31、41を有する。これら情報処理装置11、21、31、41のそれぞれは、種々の処理を実行するCPUなどのプロセッサ11a、21a、31a、41aと、プロセッサ11a、21a、31a、41aに実行させるプログラムや、このプログラムの実行に必要な種々のデータなどを記憶するメモリ11b、21b、31b、41b(ROMやRAMやハードディスクなど)と、通信回線50を介して通信するための通信装置11c、21c、31c、41cと、情報処理装置11、21、31、41に種々の情報を入力するためのマウスやキーボードやタッチパネルなどの入力装置11d、21d、31d、41dと、情報処理装置11、21、31、41から種々の情報を出力するためのディスプレイやスピーカやプリンタなどの出力装置11e、21e、31e、41eと、を主に有する。
【0024】
また、ディーラーシステム20及び施工業者システム40は、測定装置22、42を有する。測定装置22、42は、種々の公知の手法(例えば上記の特許文献1に記載の手法など)を用いて、車両用鋼部材に設けられた塗膜の防錆性能を測定するための装置である。例えば、測定装置22、42は、塗膜が設けられた車両用鋼部材の表面に電圧を印加することで電流を検出する。この場合、検出された電流波形(電流の経時的変化)におけるピークの形状や、ピークの数や、ピークが生じる電圧値や、ピーク時の電流値などから、塗膜の防錆性能を評価することができる。
なお、施工業者システム40に設けられた測定装置42は、上述したような施工業者による防錆性能管理システム100との契約時/加盟時に、施工業者に販売又は貸与される。また、測定装置22、42が電圧を印加することで電流を検出することに限定はされず、電流を印加することで電圧を検出してもよい(以下同様とする)。
【0025】
ここで、車両メーカーシステム10及びディーラーシステム20は、本発明における第1システム101を構成し、施工方法提供システム30は、本発明における第2システム102を構成する。なお、ディーラーシステム20のみが第1システム101を構成してもよい(本実施形態では基本的にはディーラーシステム20のみが第1システム101を構成する)。また、ディーラーシステム20において、通信装置21cは本発明における「送信部」及び「受信部」に相当し、出力装置21eは本発明における「提示部」に相当する。また、施工方法提供システム30において、通信装置31cは本発明における「送信部」及び「受信部」に相当する。
【0026】
次に、図2に示すように、車両メーカーシステム10は、防錆性能から塗膜の将来の劣化を予測するために用いられる環境情報及び新車時情報を、メモリ11bに記憶している。環境情報は、複数の地域ごとに、車両用鋼部材の防錆性能に影響を与える複数の環境的な因子(飛散塩分や凍結防止塩や土壌など)と、複数の環境的な因子のそれぞれが防錆性能に与える影響度を示す情報と、が対応付けられた情報である。また、この環境情報は、車両における複数の部位(シャーシやボディなどの大きな部位に加えて、これらを更に細かく分けた部位)のそれぞれごとに規定される。更に、新車時情報は、新車時における塗膜の膜厚、膜質、及び鋼部材の種類(鋼種)を含む情報であり、複数の部位ごとに規定される。なお、新車時情報は、本発明における「初期情報」に相当する。
【0027】
続いて、図3に示すように、ディーラーシステム20は、車両を使用するユーザに関するユーザ情報を、メモリ21bに記憶している。このユーザ情報は、ユーザに関連する地域の情報や、測定装置22の測定により防錆性能を評価した履歴などを含む。ユーザに関連する地域の情報としては、ユーザの住所や、車両の主たる使用場所(保管場所など)を用いることができ、また、ユーザの引っ越し履歴を含めてもよい。
【0028】
また、ディーラーシステム20において、プロセッサ21aは、防錆性能評価部、劣化予測情報生成部、施工案作成部、及び管理部として機能する。具体的には、防錆性能評価部は、車両における複数の部位ごとに、測定装置22による測定結果に基づき、塗膜の防錆性能を評価する。また、劣化予測情報生成部は、車両メーカーシステム10から環境情報及び新車時情報を取得し(ディーラーシステム20の通信装置21cが受信する)、これら情報に基づき、防錆性能評価部により評価された防錆性能から、車両における複数の部位ごとに塗膜の将来の劣化を予測した劣化予測情報を生成する。こうして生成された劣化予測情報は、施工方法提供システム30に送信される。また、管理部は、上記のユーザ情報を管理する処理(例えばユーザ情報を更新する処理など)を行う。なお、施工案作成部については後述する。
【0029】
続いて、図4に示すように、施工方法提供システム30において、メモリ31bは、塗膜用の最新の材料データを記憶し、プロセッサ31aは、施工方法情報生成部、及び保証情報生成部として機能する。施工方法情報生成部は、ディーラーシステム20から劣化予測情報を取得し(施工方法提供システム30の通信装置31cが受信する)、この劣化予測情報に基づき、車両における複数の部位ごとに塗膜の防錆性能を改善するための施工方法を含む施工方法情報を生成する。この施工方法情報は、当該施工方法情報に含まれる施工方法に基づき施工が実施された場合に得られる、複数の部位ごとの塗膜の防錆性能を示す情報も含む。こうして生成された施工方法情報は、外部に送信される。なお、保証情報生成部については後述する。
【0030】
続いて、ディーラーシステム20において、施工案作成部は、施工方法提供システム30から施工方法情報を取得すると(ディーラーシステム20の通信装置21cが受信する)、施工方法情報に基づき、複数の施工案を作成する。ディーラーシステム20では、複数の施工案を出力装置21eよりユーザに提示し、提示した複数の施工案の中からユーザにより選択された施工案を入力装置21dより取得する。そして、この施工案に基づいてディーラーにおいて施工が実施された場合、ディーラーシステム20では、施工後の複数の部位ごとに測定装置22により測定が行われる。この後、上記の防錆性能評価部が、この測定結果に基づき塗膜の防錆性能を評価する。こうして評価された防錆性能は、施工方法提供システム30に送信される。
【0031】
他方で、施工方法提供システム30において生成された施工方法情報は、施工業者システム40に直接提供される場合がある。基本的には、施工業者システム40の通信装置41cが、施工方法提供システム30から送信された施工方法情報を受信する。このような場合には、施工方法情報に基づいて施工業者において施工が実施されることとなる。こうして施工業者において施工が実施された後、施工業者システム40では、施工後の複数の部位ごとに測定装置42により測定が行われて、この測定結果に基づき塗膜の防錆性能が評価される。この評価された防錆性能は、施工方法提供システム30に送信される。
【0032】
そして、施工方法提供システム30において、上述したようにディーラーシステム20又は施工業者システム40から送信された塗膜の防錆性能を受信すると(施工方法提供システム30の通信装置31cが受信する)、保証情報生成部が、防錆性能を確認して、当該防錆性能を保証する保証情報を生成する。この後、生成された保証情報は、ディーラーシステム20に送信される。そして、ディーラーシステム20は、施工方法提供システム30から送信された保証情報を受信すると(ディーラーシステム20の通信装置21cが受信する)、管理部が、施工が実施された車両の施工履歴を更新し、この施工履歴を該当するユーザ情報に含めて管理するようにする。
【0033】
[システム処理]
次に、上記した防錆性能管理システム100において行われる処理の実施形態(第1及び第2実施形態)について説明する。
【0034】
(第1実施形態)
まず、図5を参照して、第1実施形態に係るシステム処理について説明する。図5は、第1実施形態において、防錆性能管理システム100にて行われる処理を示すフローチャートである。なお、図5のフローチャートを説明するに当たって、実際には、このフローチャートに含まれる処理は、ディーラーシステム20の情報処理装置21(代表的には情報処理装置21内のプロセッサ21a)、及び施工方法提供システム30の情報処理装置31(代表的には情報処理装置31内のプロセッサ31a)により実行されるが、便宜上の理由から、ディーラーシステム20及び施工方法提供システム30により実行されるものとして説明する。
【0035】
図5に示すフローチャートは、例えばユーザが車両の点検をディーラーに依頼した際に実施される。まず、ステップS101において、ディーラーシステム20は、処理の対象となっている車両のユーザのユーザ情報を、メモリ21bから読み出す。ユーザ情報は、ユーザに関連する地域の情報(ユーザの住所や、車両の主たる使用場所(保管場所など)や、ユーザの引っ越し履歴)や、防錆性能の評価履歴や、施工履歴などを含む。
【0036】
次いで、ステップS102において、ディーラーシステム20は、通信装置21cを介して、車両メーカーシステム10から新車時情報及び環境情報を受信する。新車時情報は、新車時における塗膜の膜厚、膜質、及び鋼部材の種類(鋼種)を含む情報であり、車両における複数の部位のそれぞれごとに規定される。例えば、このような新車時情報には、車両の開発プロセスで測定されたデータや、車両の3Dデータに対して所定のシミュレーション(被水シミュレーション)を行うことで得られたデータなどが適用される。環境情報は、複数の地域ごとに、車両用鋼部材の防錆性能に影響を与える複数の環境的な因子(飛散塩分や凍結防止塩や土壌など)と、複数の環境的な因子のそれぞれが防錆性能に与える影響度を示す情報と、が対応付けられた情報である。また、この環境情報は、車両における複数の部位のそれぞれごとに規定される。
【0037】
ここで、図6を参照して、環境情報の一例について説明する。図6は、地域ごとに規定された環境情報の一例を示す。図6に示す環境情報では、車両の主たる使用場所(保管場所など)の地域ごとに、飛散塩分量に応じた係数(防錆性能に与える影響度を示す1~3の値(以下同様とする))と、機関別凍結防止塩購入量又は凍結防止塩散布量に応じた係数と、土壌の付着し易さに応じた係数と、土壌のpHに応じた係数と、これら係数の総計と、が規定されている。このような環境情報は、地域ごとの飛散塩分量や、機関別の凍結防止塩の購入量や、地域ごとの凍結防止塩の散布量や、地域ごとの土壌成分やpHのデータなどの、公開された情報から事前に作成される。また、図6に示す環境情報では、係数の総計に応じた補正係数が更に規定されている。この補正係数は、環境情報を加味して劣化予測情報を生成するために使用される(詳細は後述する)。例えば、車両用鋼部材が錆び始めると予測される年数を補正するために使用される。なお、環境情報は、図6に示したような大まかな地域の情報を用いることに限定はされず、ユーザの住所や地図データなどに基づき、より詳細な地域の情報を用いてもよい。
【0038】
更に図7を参照して、環境情報の他の例について説明する。図7は、車両における複数の部位のそれぞれごとに規定された環境情報の一例を示す。図7に示すように、この環境情報では、シャーシにおける平面部、溶接部、エッジ、袋内部や、ボディにおける外板、準外板、フロア下面(アンダーカバー内及びアンダーカバー外)、袋内部、車室内(フロア)などの車両の複数の部位のそれぞれについて、融雪塩や、飛来海塩や、砕石や、泥や、降雨などの防錆性能に影響を与える複数の環境的な因子による影響が規定されている。図7に示す環境情報の例では、複数の部位のそれぞれが影響を受け得る環境的な因子を特定している(図中の「○」にて特定している)。このように環境情報を規定しているのは、環境的な因子が防錆性能に与える影響度が、車両の部位に応じて変わるからである。図7に示すような環境情報も、劣化予測情報を生成するために使用される(詳細は後述する)。例えば、環境的な因子の影響を受ける部位については、車両用鋼部材が錆び始めると予測される年数が補正されるようになっている。
【0039】
図5に戻ると、ステップS102の後のステップS103において、ディーラーシステム20は、車両における複数の部位ごとに、測定装置22による測定結果に基づき、塗膜の防錆性能を評価する。具体的には、ディーラーシステム20は、測定装置22において検出された電流の経時的変化(電流波形)に基づき、種々の公知の手法(例えば上記の特許文献1に記載の手法など)を用いて、塗膜の防錆性能を評価する。例えば、ディーラーシステム20は、検出された電流波形におけるピークの形状や、ピークの数や、ピークが生じる電圧値や、ピーク時の電流値などから、塗膜の防錆性能として、膜厚や膜質(欠陥の有無や、欠陥位置の有効膜厚や、単位面積当たりの欠陥数の欠陥発生状況など)を評価する。ディーラーシステム20は、このように防錆性能を評価した後に、該当する車両のユーザ情報に含まれる評価履歴を更新する。
【0040】
次いで、ステップS104において、ディーラーシステム20は、ステップS102で受信された環境情報及び新車時情報に基づき、ステップS103で評価された防錆性能から、車両における複数の部位ごとに塗膜の将来の劣化を予測した劣化予測情報を生成する。
【0041】
ここで、図8を参照して、劣化予測情報の生成方法の一例について説明する。図8は、劣化予測情報の生成方法の一例を示す説明図である。ここでは、塗膜の防錆性能として、測定装置22において検出された電流のピークが生じる電圧値を用いる例を挙げる。この電圧値は、塗装が絶縁破壊する時点の電圧値を意味しており、基本的には、当該電圧値が高いほど、塗膜の防錆性能が高くなる。図8では、横軸に車両の経過年数を示し、縦軸に防錆性能に相当する電圧値を示している。
【0042】
図8において、「V11」は、車両の或る部位についての新車時における電圧値であり(新車時情報に含まれている)、「V12」は、新車時から「Y11」年経過後に、当該部位についてディーラーシステム20において測定装置22により検出された電圧値である。これより、電圧値の変化率(低下率)として、「(V12-V11)/Y11」が得られ(直線L11の傾き)、この変化率は塗膜の劣化傾向と考えることができる。このような劣化傾向から、今後の塗膜の劣化を予測することができる。すなわち、直線L11と同一の傾きの直線L12(換言すると直線L11を延長した直線L12)を用いて、塗膜の劣化に相当する電圧値Vt(具体的には車両用鋼部材に錆が生じ始めるときの電圧値)に達する年数Y12を求めることができる。この年数Y12は、車両用鋼部材が錆び始めると予測される年数であり、劣化予測情報として用いられる。
【0043】
また、本実施形態では、上記のようにして求められた年数Y12が、環境情報に基づき補正される。具体的には、図6に示したような環境情報に含まれる補正係数により、年数Y12が補正される。この場合、劣化予測情報の生成対象となっている車両に対応する地域について規定された環境情報が用いられる。例えば、年数Y12が、環境情報に含まれる補正係数により除算される。この例では、補正係数が1より大きい場合には、図8中の矢印に示すように、直線L12の代わりに直線L13を用いて、年数Y12が年数Y13へと補正されることとなる(Y13<Y12)。更に、本実施形態では、図7に示したような車両の部位により規定された環境情報に基づいた補正も行われる。具体的には、環境的な因子の影響を受けると特定された部位(図7において「○」にて特定されている)については、年数Y12(年数Y12を補正した場合には年数Y13)が短くなるように補正される。
【0044】
なお、上記では、新車を購入したユーザの車両について劣化予測情報を生成する方法を述べたが、他の例では、中古車を購入したユーザの車両についても劣化予測情報を生成することができる。これについて、図9を参照して説明する。図9は、劣化予測情報の生成方法の他の例を示す説明図である。ここでは、図8において説明した劣化予測情報の生成方法と異なる点のみを説明する。中古車については、上記したような新車時における電圧値V11が存在しない場合があるので、この場合には、新車時における電圧値V11の代わりに、ディーラーシステム20において測定装置22により検出された電圧値V2を用いればよい。例えば、この電圧値V2は、ディーラーが他のユーザから中古車を購入したときに測定装置22により検出される。更に他の例では、中古車については、Y11年経過後にディーラーシステム20において測定装置22により検出された電圧値V12が存在しない場合があるので、この場合には、Y11年経過後の他車(同車種を用いるのがよい)について検出された電圧値を用いればよい。
【0045】
図5に戻ると、ステップS104において、ディーラーシステム20は、上述したように生成した劣化予測情報を、通信装置21cを介して、施工方法提供システム30に送信する。そして、ステップS201において、施工方法提供システム30は、通信装置31cを介して、ディーラーシステム20から劣化予測情報を受信する。
【0046】
次いで、ステップS202において、施工方法提供システム30は、メモリ31bに記憶された最新の材料データを参照して、ステップS201で受信された劣化予測情報に基づき、車両における複数の部位ごとに塗膜の防錆性能を改善するための施工方法を含む施工方法情報を生成する。具体的には、施工方法提供システム30は、複数の部位ごとに適用すべき、塗布材の種類(塗料、アンダーコート、ワックス)や、塗布材の品番や、膜厚などから成る施工方法情報を生成する。例えば、施工方法提供システム30は、車両の部位に応じた塗布材の種類、品番や、劣化予測情報に含まれる、車両用鋼部材が錆び始めると予測される年数に応じた膜厚(この年数が小さい場合には施工により付与する膜厚を大きくする)などを含む施工方法情報を生成する。また、施工方法提供システム30は、施工方法情報に含まれる施工方法に基づき施工が実施された場合に得られる、複数の部位ごとの塗膜の防錆性能を示す情報(部位ごとに測定装置22により検出されるであろう電圧値の大きさなど)も、施工方法情報に含める。そして、施工方法提供システム30は、このように生成した施工方法情報を、通信装置31cを介してディーラーシステム20に送信する。
【0047】
次いで、ステップS105において、ディーラーシステム20は、通信装置21cを介して、施工方法提供システム30から施工方法情報を受信する。そして、ステップS106において、ディーラーシステム20は、受信した施工方法情報に基づき、複数の施工案を作成する。具体的には、ディーラーシステム20は、上述したような施工方法情報に含まれる、部位ごとに適用すべき、塗布材の種類(塗料、アンダーコート、ワックス)や、塗布材の品番や、膜厚(付与する塗布量の程度に相当する)などに応じて、異なる複数の施工案を作成する。例えば、ディーラーシステム20は、施工後の塗膜の維持年数に応じて異なるコストとなるような複数の施工案を作成する(維持年数(塗布量に相当する)が短くなるほどコストが低くなる)。そして、ディーラーシステム20は、このような複数の施工案を、出力装置21eよりユーザに提示する(典型的には複数の施工案をディスプレイに表示するが、複数の施工案をプリントアウトしてもよい)。これにより、ユーザは、各施工案の内容及びコストに応じて、好みの施工案を選択することができる。そして、ステップS107において、ディーラーシステム20は、提示した複数の施工案の中からユーザにより選択された施工案を、入力装置21dより取得する。
【0048】
次いで、上記のように選択された施工案に基づきディーラーにおいて施工が実施された後、ステップS108において、ディーラーシステム20は、施工後の複数の部位ごとに測定装置22により測定を行い、この測定結果に基づき塗膜の防錆性能を評価する。防錆性能の評価方法は、ステップS103と同様である。また、ディーラーシステム20は、このように防錆性能を評価した後に、該当する車両のユーザ情報に含まれる評価履歴を更新する。そして、ステップS109において、ディーラーシステム20は、評価した防錆性能を、通信装置21cを介して施工方法提供システム30に送信する。
【0049】
次いで、ステップS203において、施工方法提供システム30は、通信装置31cを介して、ディーラーシステム20から防錆性能を受信する。そして、ステップS204において、施工方法提供システム30は、この防錆性能を確認して、当該防錆性能を保証する保証情報を生成し、この保証情報を、通信装置31cを介してディーラーシステム20に送信する。なお、施工方法提供システム30は、受信した防錆性能の情報に不備などがある場合には、保証情報の生成及び送信を行わない。
【0050】
次いで、ステップS110において、ディーラーシステム20は、通信装置21cを介して、施工方法提供システム30から保証情報を受信すると、施工が実施された車両のユーザ情報に含まれる施工履歴を更新する。つまり、ディーラーシステム20は、更新した施工履歴を、当該施工履歴を含むユーザ情報に反映させる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、図10を参照して、第2実施形態に係るシステム処理について説明する。図10は、第2実施形態において、防錆性能管理システム100にて行われる処理を示すフローチャートである。第2実施形態では、施工方法情報に応じた施工が、ディーラーの代わりに施工業者において実施される点で、第1実施形態と異なる。すなわち、第2実施形態では、ディーラーの代わりに施工業者において施工が実施されるので、第1実施形態で示した処理の一部が、ディーラーシステム20の代わりに施工業者システム40において行われる。なお、ここでは、第1実施形態と異なる構成のみを説明し、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する(つまり説明を省略した構成は第1実施形態と同様とする)。
【0052】
第2実施形態では、ステップS202において、施工方法提供システム30から施工方法情報が送信されると、ステップS301において、施工業者システム40が、通信装置41cを介して、施工方法提供システム30から施工方法情報を受信する。施工業者システム40は、原則的には、施工方法提供システム30から施工方法情報を受信するが、施工方法提供システム30からユーザのスマートフォンに施工方法情報が提供された場合、このスマートフォンを介して施工方法情報を受信する場合もある(更に他の例では施工業者がユーザのスマートフォンから施工方法情報を提示される場合もある)。
【0053】
次いで、上記のように受信された施工方法情報に基づき施工業者において施工が実施された後、ステップS302において、施工業者システム40は、施工後の複数の部位ごとに測定装置42により測定を行い、この測定結果に基づき塗膜の防錆性能を評価する。防錆性能の評価方法は、図5のステップS103で説明した通りである。そして、ステップS303において、施工業者システム40は、評価した防錆性能を、通信装置41cを介して施工方法提供システム30に送信する。
【0054】
[作用及び効果]
次に、上述した本実施形態に係る防錆性能管理システム100の作用及び効果について説明する。
【0055】
本実施形態に係る防錆性能管理システム100では、第1システム101としてのディーラーシステム20は、車両用鋼部材の塗膜に対する測定結果に基づき塗膜の防錆性能を評価し、この防錆性能に基づき塗膜の将来の劣化を予測した劣化予測情報を生成し、この劣化予測情報を送信する一方で、第2システム102としての施工方法提供システム30は、ディーラーシステム20から送信された劣化予測情報を受信し、この劣化予測情報に基づき、車両用鋼部材の塗膜の防錆性能を改善するための施工方法を含む施工方法情報を生成し、この施工方法情報に基づき施工が実施されるように当該施工方法情報を送信する。
【0056】
このような防錆性能管理システム100では、防錆性能評価及び劣化予測を行うシステムと、施工方法を提供するシステムとが分かれている。つまり、施工方法を提供するシステムが、防錆性能評価及び劣化予測を行うシステムから独立している。これにより、防錆性能評価、劣化予測、及び施工方法の提供のそれぞれの透明性を確保して、これらの品質を確保することができると共に、その後の施工の品質も確保することができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、ディーラーシステム20は、施工方法提供システム30より送信された施工方法情報を受信し、この施工方法情報に基づき複数の施工案を作成し、この複数の施工案をユーザに提示する。これにより、ユーザは、各施工案の内容やコストなどに応じて、好みの施工案を選択することができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、施工方法提供システム30は、施工方法情報に基づき施工が実施された後に評価された塗膜の防錆性能を受信し、この防錆性能を確認して当該防錆性能を保証するための保証情報を生成して送信し、ディーラーシステム20は、施工の履歴を示す施工履歴を含むユーザ情報を管理し、保証情報を受信したときにユーザ情報に含まれる施工履歴を更新する。これにより、ディーラーシステム20において管理されるユーザ情報に含まれる施工履歴の信頼性を確保することができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、施工方法情報は、当該施工方法情報に含まれる施工方法に基づき施工が実施された場合に得られる、塗膜の防錆性能を示す情報も含む。このように施工後の防錆性能を施工方法情報に含めることで、施工方法情報の利便性を向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、ディーラーシステム20は、車両の複数の部位の各々について防錆性能を評価すると共に劣化予測情報を生成し、施工方法提供システム30は、車両の複数の部位の各々について施工方法情報を生成する。これにより、複数の部位のそれぞれに応じた、防錆性能評価、劣化予測及び施工方法の提供を行うことができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、ディーラーシステム20は、複数の地域ごとに、車両用鋼部材の防錆性能に影響を与える1つ以上の環境的な因子と、環境的な因子が防錆性能に与える影響度を示す情報とが対応付けられた環境情報を参照して、劣化予測情報の生成対象となっている車両が使用された地域に対応する環境情報に基づき劣化予測情報を生成する。これにより、地域ごとの環境に応じて異なる劣化の進行程度を考慮することで、塗膜の劣化を精度良く予測することができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、環境情報は、車両の複数の部位の各々について規定されている。このような環境情報を用いることで、各部位の塗膜の劣化を精度良く予測することができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、ディーラーシステム20は、環境情報に加えて、劣化予測情報の生成対象となっている車両の新車時情報に基づき劣化予測情報を生成する。このように、環境情報に加えて新車時情報を用いることで、塗膜の劣化をより精度良く予測することができる。
【0064】
[変形例]
上記した実施形態では、ディーラーシステム20が劣化予測情報を生成していたが、変形例では、車両メーカーシステム10が劣化予測情報を生成してもよい。この変形例では、車両メーカーシステム10が、ディーラーシステム20により評価された防錆性能を受信して、この防錆性能から記憶している環境情報及び新車時情報に基づき、劣化予測情報を生成すればよい。そして、車両メーカーシステム10は、生成した劣化予測情報を、ディーラーシステム20又は施工方法提供システム30に送信すればよい。このような変形例では、車両メーカーシステム10及びディーラーシステム20が、本発明における「第1システム」に相当する。
【0065】
また、上記した実施形態では、本発明を車両(具体的には車両用鋼部材)に適用する例を示したが、本発明は、表面に塗膜が設けられる種々の金属製品(例えば建材や家電製品など)に適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 車両メーカーシステム
11、21、31、41 情報処理装置
20 ディーラーシステム
22、42 測定装置
30 施工方法提供システム
40 施工業者システム
100 防錆性能管理システム
101 第1システム
102 第2システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10