(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135080
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ステータ、および、レゾルバ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/04 20060101AFI20240927BHJP
H02K 3/51 20060101ALI20240927BHJP
H02K 24/00 20060101ALI20240927BHJP
G01D 5/20 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H02K3/04 J
H02K3/51 A
H02K24/00
G01D5/20 110A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045593
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 紘明
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 拓
【テーマコード(参考)】
2F077
5H603
5H604
【Fターム(参考)】
2F077FF34
2F077PP26
2F077VV02
5H603AA01
5H603AA03
5H603CA05
5H603CB04
5H604CC01
5H604QB01
5H604QB12
(57)【要約】
【課題】角度検出精度をより向上できるステータを提供する。
【解決手段】ステータ1は、複数の磁極歯2A,2Bと、複数のガイド片6と、を含むステータコア3と、複数の巻線4A,4Bと、複数の渡り線5と、を含むステータコイルと、を備え、一対のガイド片6の間には、前記磁極歯2A,2Bから径方向外側に延びるスリット7が形成され、第一巻線4Aの電線の巻き始めの方向は、前記第一巻線4Aの始端に接続された前記渡り線5の進行方向と逆方向であり、前記第二巻線4Bの電線の巻き始めの方向は、前記第二巻線4Bの始端に接続された前記渡り線5の進行方向と同方向であり、前記第一磁極歯2Aに繋がる前記スリット7Aの周方向幅は、前記第二磁極歯2Bに繋がる前記スリット7Bの周方向幅よりも小さい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のヨークと、前記ヨークから径方向に突出する複数の磁極歯と、前記ヨークの軸方向端面から軸方向に突出する複数のガイド片と、を含むステータコアと、
前記磁極歯に巻回される複数の巻線と、前記複数の巻線を互いに接続する複数の渡り線と、を含むステータコイルと、
を備え、
前記複数のガイド片は、前記磁極歯から径方向外側に延びるスリットを形成するように、周方向に間隔を開けて並び、
前記複数の磁極歯は、1以上の第一磁極歯と、1以上の第二磁極歯と、を含み、
前記複数の巻線は、前記第一磁極歯に巻回された第一巻線と、前記第二磁極歯に巻回された第二巻線と、を含み、
前記第一巻線の電線の巻き始めの方向は、前記第一巻線の始端に接続された前記渡り線の進行方向と逆方向であり、
前記第二巻線の電線の巻き始めの方向は、前記第二巻線の始端に接続された前記渡り線の進行方向と同方向であり、
前記第一磁極歯に繋がる前記スリットの周方向幅は、前記第二磁極歯に繋がる前記スリットの周方向幅よりも小さい、
ことを特徴とするステータ。
【請求項2】
環状のヨークと、前記ヨークから径方向に突出する複数の磁極歯と、前記ヨークの軸方向端面から軸方向に突出する複数のガイド片と、を含むステータコアと、
前記磁極歯に巻回される複数の巻線と、前記複数の巻線を互いに接続する複数の渡り線と、を含むステータコイルと、
を備え、
前記複数のガイド片は、前記磁極歯から径方向外側に延びるスリットを形成するように、周方向に間隔を開けて並び、
前記複数の磁極歯は、1以上の第一磁極歯と、1以上の第二磁極歯と、を含み、
前記複数の巻線は、前記第一磁極歯に巻回された第一巻線と、前記第二磁極歯に巻回された第二巻線と、を含み、
前記第一巻線の電線の巻き始めの方向は、前記第一巻線の始端に接続された前記渡り線の進行方向と逆方向であり、
前記第二巻線の電線の巻き始めの方向は、前記第二巻線の始端に接続された前記渡り線の進行方向と同方向であり、
前記第一巻線の始端に繋がる前記渡り線、および、前記第一巻線の終端に繋がる前記渡り線の少なくとも一方は、前記スリット内において、周方向に折り返すように迂回した進路を進む、
ことを特徴とするステータ。
【請求項3】
請求項2に記載のステータであって、
前記ステータコアは、さらに、前記スリット内において、前記ヨークの軸方向端面から軸方向に突出するガイド突起を含み、
前記第一巻線の始端に繋がる前記渡り線、および、前記第一巻線の終端に繋がる前記渡り線の少なくとも一方は、前記スリット内を進む過程で、前記ガイド突起に掛けられる、
ことを特徴とするステータ。
【請求項4】
請求項2に記載のステータであって、
前記複数のガイド片の少なくとも一部は、前記第一磁極歯に繋がる前記スリットである第一スリットの周方向端面となる第一端面を有し、
前記第一端面は、軸方向視において、その径方向中央が、前記第一スリットの周方向中心に向かって膨らんでおり、
前記第一巻線の始端に繋がる前記渡り線、および、前記第一巻線の終端に繋がる前記渡り線の少なくとも一方は、前記第一スリットを進む過程で、前記第一端面に沿って進む、
ことを特徴とするステータ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のステータと、
前記ステータと同心に配された回転軸と、
前記回転軸に固定され、凹凸を有し、磁性体からなるロータと、
を備え、
前記ロータとステータの間のリラクタンスの変化を検出することによって、前記回転軸の回転位置を検出する、
ことを特徴とするレゾルバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、レゾルバ、および、レゾルバのステータを開示する。
【背景技術】
【0002】
回転角センサのレゾルバとして、リラクタンス型レゾルバが知られている。一般的なリラクタンス型レゾルバのステータは、ステータコアと、ステータコイルと、を含む。ステータコアは、複数の磁極歯を有し、ステータコイルは、磁極歯に巻回される巻線を有する。さらに、電線のうち、巻線同士を電気的に接続している部分は、「渡り線」と呼称される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した通り、ステータの巻線は、磁極歯に電線を巻回して構成される。また、ステータコアは、通常、複数の磁極歯を有している。渡り線の電線長が、磁極歯ごとに大きく異なる場合、外乱の影響度が、磁極歯ごとに異なる等の問題が生じる。その結果、従来、レゾルバの角度検出精度が低下するという課題があった。
【0004】
そこで、本明細書では、角度検出精度をより向上できるステータおよびレゾルバを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示するステータは、環状のヨークと、前記ヨークから径方向に突出する複数の磁極歯と、前記ヨークの軸方向端面から軸方向に突出する複数のガイド片と、を含むステータコアと、前記磁極歯に巻回される複数の巻線と、前記複数の巻線を互いに接続する複数の渡り線と、を含むステータコイルと、を備え、前記複数のガイド片は、前記磁極歯から径方向外側に延びるスリットを形成するように、周方向に間隔を開けて並び、前記複数の磁極歯は、1以上の第一磁極歯と、1以上の第二磁極歯と、を含み、前記複数の巻線は、前記第一磁極歯に巻回された第一巻線と、前記第二磁極歯に巻回された第二巻線と、を含み、前記第一巻線の電線の巻き始めの方向は、前記第一巻線の始端に接続された前記渡り線の進行方向と逆方向であり、前記第二巻線の電線の巻き始めの方向は、前記第二巻線の始端に接続された前記渡り線の進行方向と同方向であり、前記第一磁極歯に繋がる前記スリットの周方向幅は、前記第二磁極歯に繋がる前記スリットの周方向幅よりも小さい、ことを特徴とする。
【0006】
本明細書で開示する他のステータは、環状のヨークと、前記ヨークから径方向に突出する複数の磁極歯と、前記ヨークの軸方向端面から軸方向に突出する複数のガイド片と、を含むステータコアと、前記磁極歯に巻回される複数の巻線と、前記複数の巻線を互いに接続する複数の渡り線と、を含むステータコイルと、を備え、前記複数のガイド片は、前記磁極歯から径方向外側に延びるスリットを形成するように、周方向に間隔を開けて並び、前記複数の磁極歯は、1以上の第一磁極歯と、1以上の第二磁極歯と、を含み、前記複数の巻線は、前記第一磁極歯に巻回された第一巻線と、前記第二磁極歯に巻回された第二巻線と、を含み、前記第一巻線の電線の巻き始めの方向は、前記第一巻線の始端に接続された前記渡り線の進行方向と逆方向であり、前記第二巻線の電線の巻き始めの方向は、前記第二巻線の始端に接続された前記渡り線の進行方向と同方向であり、前記第一巻線の始端に繋がる前記渡り線、および、前記第一巻線の終端に繋がる前記渡り線の少なくとも一方は、前記スリット内において、周方向に折り返すように迂回した進路を進む、ことを特徴とする。
【0007】
この場合、前記ステータコアは、さらに、前記スリット内において、前記ヨークの軸方向端面から軸方向に突出するガイド突起を含み、前記第一巻線の始端に繋がる前記渡り線、および、前記第一巻線の終端に繋がる前記渡り線の少なくとも一方は、前記スリット内を進む過程で、前記ガイド突起に掛けられてもよい。
【0008】
また、前記複数のガイド片の少なくとも一部は、前記第一磁極歯に繋がる前記スリットである第一スリットの周方向端面となる第一端面を有し、前記第一端面は、軸方向視において、その径方向中央が、前記第一スリットの周方向中心に向かって膨らんでおり、前記第一巻線の始端に繋がる前記渡り線、および、前記第一巻線の終端に繋がる前記渡り線の少なくとも一方は、前記第一スリットを進む過程で、前記第一端面に沿って進んでもよい。
【0009】
本明細書で開示するレゾルバは、上述のステータと、前記ステータと同心に配された回転軸と、前記回転軸に固定され、凹凸を有し、磁性体からなるロータと、を備え、前記ロータとステータの間のリラクタンスの変化を検出することによって、前記回転軸の回転位置を検出する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本明細書で開示する技術によれば、渡り線の電線長のバラツキを小さくでき、レゾルバの角度検出精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1のステータの一部を拡大した平面図である。
【
図3】比較例のステータの一部を拡大した平面図である。
【
図4】
図2、
図3のステータにおける電線長の長さを説明する図である。
【
図5】他の例のステータの一部を拡大した斜視図である。
【
図6】
図5のステータの一部を拡大した平面図である。
【
図7】他の例のステータの一部を拡大した平面図である。
【
図9】他の例のステータの一部を拡大した斜視図である。
【
図10】
図9のステータの一部を拡大した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、リラクタンス型レゾルバについて図面を参照しながら説明する。
図11は、リラクタンス型レゾルバの模式図である。
図11に示すように、リラクタンス型レゾルバは、ステータ1と、回転軸30と、ロータ32と、を有する。回転軸30は、ステータ1と同心に配される。ロータ32は、回転軸30に固定され、回転軸30とともに回転する。ロータ32は、磁性体からなる。また、ロータ32の外周面には凹凸34が形成されている。このロータ32とステータ1との間のリラクタンスの変化を検出することによって、回転軸30の回転位置が検出される。
【0013】
図1は、リラクタンス型レゾルバのステータ1の一部を拡大した斜視図である。
図2は、ステータ1の一部の同平面図である。ステータ1は、ステータコア3と、ステータコイルと、を備える。ステータコア3は、環状のヨーク10と、ヨーク10から径方向に突出する複数の磁極歯2A,2B(一部のみ図示)と、を含む。なお、以下では、磁極歯2Aおよび磁極歯2Bを区別しない場合は、添え字アルファベットを省略して、「磁極歯2」と呼ぶ。以下、他部材でも同じとする。磁極歯2は、1以上の第一磁極歯2Aと、1以上の第二磁極歯2Bと、を含む。
【0014】
ステータコイルは、複数の巻線4A,4Bと、巻線4同士を接続する渡り線5と、を含む。第一磁極歯2Aには、第一巻線4Aが巻回されている。第二磁極歯2Bには、第二巻線4Bが巻回されている。第一巻線4Aの巻き始めの方向は、第一巻線4Aの始端に接続された渡り線5の進行方向と逆方向である。第二巻線4Bの巻き始めの方向は、第二巻線4Bの始端に接続された渡り線5の進行方向と同方向である。別の言い方をすると、第一巻線4Aの始端に接続された渡り線5は、後述するスリット7の入口から第一巻線4Aの始端に向かう過程で、スリット7を周方向に横断しない。また、第二巻線4Bの始端に接続された渡り線5は、スリット7の入口から第二巻線4Bの始端に向かう過程で、スリット7を周方向に斜めに横断する。
【0015】
巻線4を渡り線5によって複数接続することにより巻線群が形成される。渡り線5は、環状に配設されたガイド片6により案内される。ガイド片6は、ヨーク10の軸方向端面から軸方向に突出している。複数のガイド片6は、周方向に間隔を開けて形成されている。また、ガイド片6は、ステータコア3のスロットと、ほぼ同一位相範囲に形成されている。そして、周方向に隣接する二つのガイド片6の間には、磁極歯2から径方向外側に延び、磁極歯2へ電線を通すためのスリット7が形成される。ガイド片6の径方向内側端は、ヨーク10の径方向内側端と一致しており、ガイド片6の径方向外側端は、ヨーク10の径方向中間に位置している。渡り線5は、ガイド片6の外周面に沿って、延びる。
【0016】
スリット7は、第一磁極歯2Aに電線を通すための第一スリット7Aと、第二磁極歯2Bに電線を通すための第二スリット7Bと、に分けられる。第一スリット7Aのスリット幅W1は、第二スリット7Bのスリット幅W2よりも、狭くなっている。かかる構成とする理由について、
図3,
図4を参照して説明する。
【0017】
図3は、比較例のリラクタンス型レゾルバにおけるステータ1の一部を拡大した平面図である。また、
図4は、
図1,
図2に示すリラクタンス型レゾルバにおける電線長の長さを説明する図である。
【0018】
図3に示す通り、比較例のステータ1は、
図1,
図2と同様に、複数のガイド片6を有し、ステータコア3には、磁極歯2から径方向外側に延びるスリット7が形成されている。ただし、比較例の場合、複数のスリット7それぞれのスリット幅は、互いに同じである。すなわち、第一磁極歯2Aに繋がる第一スリット7Aのスリット幅は、第二磁極歯2Bに繋がる第二スリット7Bのスリット幅と同じである。
【0019】
ここで、複数の磁極歯2の配置角度間隔がθであったとする。このとき、一つの第一磁極歯2Aの周方向中心を挟んで、両側θ/2の範囲内を「第一基準区間S1」と呼ぶ。そして、この第一基準区間S1における、第一巻線4Aに繋がる渡り線5の電線長を「第一区間電線長」と呼ぶ。同様に、一つの第二磁極歯2Bの周方向中心を挟んで、両側θ/2の範囲内を「第二基準区間S2」と呼ぶ。そして、この第二基準区間S2における、第二巻線4Bに繋がる渡り線5の電線長を「第二区間電線長」と呼ぶ。
【0020】
図3に示す比較例の場合、第一区間電線長が、第二区間電線長と大きく異なってしまう。すなわち、第一磁極歯2Aに繋がる渡り線5は、第一スリット7Aを真っすぐ径方向に進む。一方、第二磁極歯2Bに繋がる渡り線5は、第二スリット7Bを斜めに横断する。そのため、第二スリット7Bを通る渡り線5の電線長(ひいては第二区間電線長)は、第一スリット7Aを通る渡り線5の電線長(ひいては第一区間電線長)よりも長くなる。つまり、
図3のステータ1の場合、渡り線5の電線長に差が生じている。かかるステータ1を使用したレゾルバは、外乱の影響度に差が生じる等の要因で角度検出精度が低下する。
【0021】
一方、
図1、
図2に示すステータ1の場合、第一スリット7Aのスリット幅W1を、第二スリット7Bのスリット幅W2よりも小さくしている。これにより、渡り線5の電線長のバラつきを低減でき、第一区間電線長と第二区間電線長との差を低減できる。これについて、
図4を参照して説明する。
【0022】
第二スリット7Bにおける渡り線5の線長をL1、第一スリット7Aにおける渡り線の線長をL2とする。この場合、スリット7Bに対するスリット7Aのスリットの狭め幅は、L3=(W2-W1)÷2と表すことができる。
【0023】
このスリットの狭め幅L3を調整することにより、渡り線5の電線長のバラつきを低減できる。例えば、狭め幅L3を、L2+L3≒L1を満たす値にすることで、第一区間電線長と第二区間電線長をほぼ同じにできる。
【0024】
つまり、
図3において第二区間電線長は、渡り線5が第二スリット7Bを斜めに横断することで、第一区間電線長よりも長くなっていた。しかし、
図1、
図2に示すように、第二スリット7Bのスリット幅W2に比べて、第一スリット7Aのスリット幅W1を狭くすることで、第一区間電線線長と第二区間電線長との差を小さくすることが可能となる。
【0025】
次に、他の例のステータ1について
図5、
図6を参照しながら説明する。
図5、
図6に示すように、ステータ1は、ステータコア3と、ステータコイルと、を有する。ステータコア3は、環状のヨーク10と、ヨーク10から径方向に突出する複数の磁極歯2(一部のみ図示)と、を含む。ステータコイルは、磁極歯2のそれぞれに巻回された複数の巻線4と、巻線4同士を接続する渡り線5と、を備えている。巻線4を渡り線5によって複数接続することにより巻線群が形成される。渡り線5は、環状に配設されたガイド片6により案内される。ガイド片6は、磁極歯2の近傍に、磁極歯2へ電線を通すためのスリット7をそれぞれ備える。
【0026】
ステータコア3は、さらに、ガイド突起8を有する。ガイド突起8は、スリット7内において、ヨーク10の軸方向端面から軸方向に突出する突起である。第一巻線4Aの始端に繋がる渡り線5、および、第一巻線4Aの終端に繋がる渡り線5の少なくとも一方は、第一スリット7A内を進む過程で、このガイド突起8に引っ掛けられたうえで、周方向に折り返される。換言すれば、第一巻線4Aに繋がる渡り線5は、第一スリット7A内において、軸方向視で、略V字状に迂回した進路を進む。
【0027】
図3に示す比較例のステータ1では、電線をたわませることなく巻回した場合に、第一巻線4Aに繋がる渡り線5は、第一スリット7Aを直進するため、第二巻線4Bに繋がる渡り線5の電線長よりも短くなっていた。一方、
図5、
図6に示すように、第一巻線4Aに繋がる渡り線5を、ガイド突起8に引っ掛けて、電線の進行方向を変化させた場合、比較例に比べて、第一区間電線長と第二区間電線長との差が小さくなる。
【0028】
また、
図7に示すように、第一巻線4Aの始端に繋がる渡り線5、および、第一巻線4Aの終端に繋がる渡り線5の一方のみを、ガイド突起8に引っかけてもよい。この場合のガイド突起8の位置の決定方法について
図8を参照して説明する。
【0029】
図8に示すように、スリット7Aの幅がL
Aであり、ガイド片6の径方向寸法がL
Bであるとする。また、大きさを無視できるガイド突起8が、左側のガイド片6から右側に距離L
Cだけ離れ、ガイド片6の外周面から径方向にL
B/2だけ径方向内側に進んだ位置に設けられた場合を考える。この場合、値L
A,L
B,L
cが、以下の式1を満たすと、第一区間電線長が第二区間電線長と等しくなる。式1を解くと、式2となる。L
Cは、0より大きく、L
Aより小さい値であるため、第一スリット7Aにガイド突起8を設けることが可能である。
【数1】
【0030】
なお、説明を簡単にするために、ガイド突起8の大きさが無視できる場合を例に挙げて説明した。しかし、ガイド突起8の大きさ、位置、数を適宜設計することで、第一区間電線長と第二区間電線長とを同一にすることが可能である。
【0031】
磁極歯2ごとの巻線の巻回方向が事前に決まっていない場合には、
図6に示すように、全てのスリット7A,7Bに同一のガイド突起8を設けておくとよい。こうしておけば、いずれの磁極歯2が第一磁極歯2Aになる場合であったとしても、第一巻線4Aの始端および終端の少なくとも一方に繋がる渡り線5をガイド突起8に引っかけることが可能である。
【0032】
ガイド突起8の形状は、スリット7内部において渡り線5が引っ掛けられて、渡り線5を迂回させることができるのであれば、適宜、変更されてもよい。例えば、ガイド突起8は、ガイド片6からL字状に突き出した形状などでもよい。また、スリット7の底面などに窪みを設け相対的に突き出した部位が形成される場合も、同様に電線を引っかけることができるのでガイド突起8とみなすことができる。
【0033】
次に、他の例のステータ1について
図9、
図10を参照しながら説明する。
図9は、リラクタンス型レゾルバにおけるステータ1の一部を拡大した斜視図である。
図10は、
図9のステータ1の同平面図である。
【0034】
ステータ1は、ステータコア3とステータコイルとを含む。ステータコア3は、環状のヨーク10と、ヨーク10から径方向に突出する複数の磁極歯2(一部のみ図示)と、を有する。ステータコイルは、複数の磁極歯2に巻回された複数の巻線4と、巻線4同士を接続する渡り線5と、を備えている。巻線4を渡り線5によって複数接続することにより巻線群が形成される。渡り線5は、環状に配設されたガイド片6により案内される。ガイド片6は、磁極歯2の近傍に、磁極歯2から径方向に延びるスリット7を構成する。
【0035】
ここで、第一磁極歯2Aに繋がる第一スリット7Aは、当該第一スリット7Aを挟んで周方向に並ぶ二つのガイド片6によって形成される。この二つのガイド片6は、いずれも、第一スリット7Aの周方向端面となる第一端面12Aを有する。この第一端面12Aは、軸方向視において、その径方向中央が、第一スリット7Aの周方向中心に向かって膨らんでいる。
【0036】
第一巻線4Aの始端に繋がる渡り線5、および、第一巻線4Aの終端に繋がる渡り線5の少なくとも一方は、第一スリット7Aを進む過程で、第一端面12Aに沿って進む。結果として、第一巻線4Aに繋がる渡り線5は、第一スリット7A内において、周方向に略V字状に折り返すように迂回する進路を進む。このように渡り線5の進行方向を変化させることで、
図3に示す比較例に比べて第一区間電線長と第二区間電線長との差が小さくなる。
【0037】
なお、磁極歯2ごとの巻線の巻回方向が事前に決まっていない場合には、全てのスリット7A,7Bの周方向端面を同一形状としておく。こうしておけば、いずれの磁極歯2が第一磁極歯2Aになる場合であったとしても、第一巻線4Aの巻き始め、および、または巻き終わりの少なくとも一方において、周方向に膨らんだ第一端面12Aに沿うように渡り線5を渡すことが可能である。
【0038】
このように、
図9、
図10に示すステータ1によれば、ガイド片6の形状に従って、渡り線5をたわませることなく渡すだけで、第一区間電線長と第二区間電線長との差が小さくなる効果が得られる。
【0039】
また、ステータ1は、請求項1または請求項2の構成を具備するのであれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。例えば、第一磁極歯2Aに繋がる第一スリット7Aの周方向幅が、第二磁極歯2Bに繋がる第二スリット7Bの周方向幅よりも小さいのであれば、ガイド片6の形状は、適宜、変更されてもよい。また、第一磁極歯2Aに繋がる第一スリット7Aの内部において、第一巻線4Aに繋がる渡り線5が、周方向に折り返すように迂回するのであれば、ガイド片6およびガイド突起8の形状は、適宜、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 ステータ、2 磁極歯、2A 第一磁極歯、2B 第二磁極歯、3 ステータコア、4 巻線、4A 第一巻線、4B 第二巻線、5 渡り線、6 ガイド片、7 スリット、7A 第一スリット、7B 第二スリット、8 ガイド突起、10 ヨーク、12 端面、12A 第一端面、30 回転軸、32 ロータ、34 凹凸。