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特開2024-135085改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法、改質されたポリ乳酸樹脂、および、ポリ乳酸樹脂発泡シート
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  • 特開-改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法、改質されたポリ乳酸樹脂、および、ポリ乳酸樹脂発泡シート 図1
  • 特開-改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法、改質されたポリ乳酸樹脂、および、ポリ乳酸樹脂発泡シート 図2
  • 特開-改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法、改質されたポリ乳酸樹脂、および、ポリ乳酸樹脂発泡シート 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135085
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法、改質されたポリ乳酸樹脂、および、ポリ乳酸樹脂発泡シート
(51)【国際特許分類】
   B29B 7/48 20060101AFI20240927BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20240927BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20240927BHJP
   B29B 7/88 20060101ALI20240927BHJP
   B29B 9/06 20060101ALI20240927BHJP
   B29C 48/10 20190101ALI20240927BHJP
   B29C 48/32 20190101ALI20240927BHJP
   B29C 48/395 20190101ALI20240927BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20240927BHJP
   C08G 63/91 20060101ALI20240927BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
B29B7/48
C08J3/24 Z CFD
C08J9/04 101
B29B7/88
B29B9/06
B29C48/10
B29C48/32
B29C48/395
B29C44/00 E
C08G63/91
B29K67:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045600
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】福山 英司
【テーマコード(参考)】
4F070
4F074
4F201
4F207
4F214
4J029
【Fターム(参考)】
4F070AA47
4F070AB01
4F070AB09
4F070AC56
4F070AE08
4F070GA05
4F070GB08
4F070GC02
4F070GC07
4F074AA68
4F074AD08
4F074BA37
4F074BA38
4F074BA95
4F074BB02
4F074CA22
4F074CC04X
4F074CC05Y
4F074CC06X
4F074CC22X
4F074CC32X
4F074CC32Y
4F074CD08
4F074DA02
4F074DA04
4F074DA12
4F074DA33
4F201AA24
4F201AB01
4F201AB19
4F201AH81
4F201AJ08
4F201AR04
4F201AR06
4F201AR17
4F201AR20
4F201BA01
4F201BA02
4F201BA03
4F201BC01
4F201BC13
4F201BC17
4F201BD05
4F201BK02
4F201BK13
4F201BK26
4F201BK40
4F201BL08
4F207AA24
4F207AB02
4F207AC08
4F207AG01
4F207AG20
4F207AH81
4F207KA01
4F207KA11
4F207KA19
4F207KK01
4F207KL88
4F214AA24
4F214AB02
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4F214AH81
4F214UA11
4F214UB02
4F214UG22
4F214UH02
4F214UH03
4F214UN01
4F214UP88
4J029AA02
4J029AB04
4J029AB07
4J029AC01
4J029AC05
4J029AD01
4J029AD10
4J029AE03
4J029EA05
4J029HA01
4J029HB01
4J029JB223
4J029KH01
4J029KJ08
4J029LB05
4J029LB07
(57)【要約】
【課題】得られる改質されたポリ乳酸樹脂の溶融張力の低下を抑制できる、改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法を提供する。また、そのような製造方法で得られる、溶融張力の高い改質されたポリ乳酸樹脂を提供する。さらに、そのような改質されたポリ乳酸樹脂から得られる、発泡特性に優れたポリ乳酸樹脂発泡シートを提供する。
【解決手段】本発明の実施形態による改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法は、押出機中でポリ乳酸樹脂を改質する改質工程を含み、該押出機は、上流側から下流側に向かって順に、該ポリ乳酸樹脂が供給されるフィード部と、該ポリ乳酸樹脂が改質される反応部と、該反応部で得られた樹脂組成物を混錬する混練部と、を含み、該混練部の設定温度が250℃未満であり、得られる改質されたポリ乳酸樹脂の温度190℃における溶融張力が20cN以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法であって、
押出機中でポリ乳酸樹脂を改質する改質工程を含み、
該押出機は、上流側から下流側に向かって順に、該ポリ乳酸樹脂が供給されるフィード部と、該ポリ乳酸樹脂が改質される反応部と、該反応部で得られた樹脂組成物を混錬する混練部と、を含み、
該混練部の設定温度が250℃未満であり、
得られる改質されたポリ乳酸樹脂の温度190℃における溶融張力が20cN以上である、
改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記フィード部に改質剤が供給される、請求項1に記載の改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記押出機から押出された混練物をペレット化するペレット化工程を含む、請求項1に記載の改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれかに記載の製造方法で得られる、温度190℃における溶融張力が20cN以上である、改質されたポリ乳酸樹脂。
【請求項5】
JIS K 7210:1999の規格のB法に準拠して測定した、温度190℃、試験荷重21.18NにおけるMFRが、5.0g/10min以下である、請求項4に記載の改質されたポリ乳酸樹脂。
【請求項6】
ゲル分率が10質量%未満である、請求項4に記載の改質されたポリ乳酸樹脂。
【請求項7】
請求項4に記載の改質されたポリ乳酸樹脂を主成分として含むポリ乳酸樹脂(P)を押出機中で発泡剤と溶融混練し、押出発泡して得られる、ポリ乳酸樹脂発泡シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法、改質されたポリ乳酸樹脂、および、ポリ乳酸樹脂発泡シートに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂発泡シートは、軽量で緩衝性に優れており、多様な形状に成形加工することが容易であるため、包装材などをはじめとして各種成形品の原材料として利用されている。
【0003】
近年、樹脂発泡シートは、大量に使用された後に大量に廃棄されるため、環境に大きな負荷を与え、地球温暖化問題、資源枯渇問題、廃棄物処理問題など、様々な社会問題の要因となっている。そこで、生分解性を示し、環境負荷が小さく、比較的安価に製造できるポリ乳酸樹脂を用いた、ポリ乳酸樹脂発泡シートが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
発泡特性に優れたポリ乳酸樹脂発泡シートを製造する方法として、改質されたポリ乳酸樹脂を用いて押出発泡シートを製造する方法が報告されている(特許文献2)。
【0005】
このような改質されたポリ乳酸樹脂を用いたポリ乳酸樹脂発泡シートについて、さらなる改良を検討したところ、改質されたポリ乳酸樹脂の溶融張力が、得られるポリ乳酸樹脂発泡シートの発泡特性に大きな影響を与えていることが判明した。そして、改質されたポリ乳酸樹脂の溶融張力が小さくなると、得られるポリ乳酸樹脂発泡シートの発泡特性が劣ってしまうことが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6971947号公報
【特許文献2】特許第6968118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、得られる改質されたポリ乳酸樹脂の溶融張力の低下を抑制できる、改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法を提供することにある。また、そのような製造方法で得られる、溶融張力の高い改質されたポリ乳酸樹脂を提供することにある。さらに、そのような改質されたポリ乳酸樹脂から得られる、発泡特性に優れたポリ乳酸樹脂発泡シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明の実施形態による改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法は、押出機中でポリ乳酸樹脂を改質する改質工程を含み、該押出機は、上流側から下流側に向かって順に、該ポリ乳酸樹脂が供給されるフィード部と、該ポリ乳酸樹脂が改質される反応部と、該反応部で得られた樹脂組成物を混錬する混練部と、を含み、該混練部の設定温度が250℃未満であり、得られる改質されたポリ乳酸樹脂の温度190℃における溶融張力が20cN以上である。
[2]上記[1]に記載の改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法は、上記フィード部に改質剤が供給されるものであってもよい。
[3]上記[1]または[2]に記載の改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法は、上記押出機から押出された混練物をペレット化するペレット化工程を含んでもよい。
[4]本発明の実施形態による改質されたポリ乳酸樹脂は、上記[1]から[3]までのいずれかに記載の製造方法で得られる、温度190℃における溶融張力が20cN以上である、改質されたポリ乳酸樹脂である。
[5]上記[4]に記載の改質されたポリ乳酸樹脂は、JIS K 7210:1999の規格のB法に準拠して測定した、温度190℃、試験荷重21.18NにおけるMFRが、5.0g/10min以下であってもよい。
[6]上記[4]または[5]に記載の改質されたポリ乳酸樹脂は、ゲル分率が10質量%未満であってもよい。
[7]本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートは、上記[4]から[6]までのいずれかに記載の改質されたポリ乳酸樹脂を主成分として含むポリ乳酸樹脂(P)を押出機中で発泡剤と溶融混練し、押出発泡して得られる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、得られる改質されたポリ乳酸樹脂の溶融張力の低下を抑制できる、改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法を提供することができる。また、そのような製造方法で得られる、溶融張力の高い改質されたポリ乳酸樹脂を提供することができる。さらに、そのような改質されたポリ乳酸樹脂から得られる、発泡特性に優れたポリ乳酸樹脂発泡シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態による改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法において用いる押出機の一つの好ましい構成を示す概略図である。
図2】本発明の実施形態による改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法における製造装置の一つの好ましい構成を示す概略図である。
図3】本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートを製造するための製造装置の一つの好ましい構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0012】
本明細書において、ポリ乳酸樹脂は、「ポリ乳酸樹脂(P)」、「改質されたポリ乳酸樹脂」、「未改質のポリ乳酸樹脂」と特記されておらず単に「ポリ乳酸樹脂」と記載されている場合は、未改質のポリ乳酸樹脂を意味するものとする。ここで、「未改質のポリ乳酸樹脂」とは、改質処理がなされていないポリ乳酸樹脂であり、代表的には、一般に入手可能なポリ乳酸樹脂であって、本発明の実施形態による改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法によって得られる改質されたポリ乳酸樹脂ではない。
【0013】
本明細書において、「主成分として含む」とは、その含有割合が、好ましくは50質量%を超え、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上であり、最も好ましくは実質的に100質量%である。
【0014】
本明細書において、「実質的に100質量%」とは、意図しないで混入した微量(例えば、1質量%未満)の不純物の存在は無視してもよいことを意味する表現である。
【0015】
≪≪改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法≫≫
本発明の実施形態による改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法は、押出機中でポリ乳酸樹脂を改質する改質工程を含み、該押出機は、上流側から下流側に向かって順に、該ポリ乳酸樹脂が供給されるフィード部と、該ポリ乳酸樹脂が改質される反応部と、該反応部で得られた樹脂組成物を混錬する混練部と、を含み、該混練部の設定温度が250℃未満であり、得られる改質されたポリ乳酸樹脂の温度190℃における溶融張力が20cN以上である。
【0016】
本発明の実施形態による製造方法で得られる改質されたポリ乳酸樹脂は、その溶融張力が、好ましくは20cN以上であり、より好ましくは20cN~100cNであり、さらに好ましくは30cN~80cNであり、特に好ましくは40cN~70cNであり、最も好ましくは40cNを超えて60cN以下である。本発明の実施形態による製造方法で得られる改質されたポリ乳酸樹脂の溶融張力が上記範囲内にあることにより、発泡特性に優れたポリ乳酸樹脂発泡シートを提供するために有用な改質されたポリ乳酸樹脂となり得る。溶融張力の測定方法については後述する。
【0017】
本発明の実施形態による製造方法で得られる改質されたポリ乳酸樹脂は、そのMFR(メルトマスフローレイト)が、好ましくは5.0g/10min以下であり、より好ましくは0.2g/10min~5.0g/10minであり、さらに好ましくは0.5g/10min~4.5g/10minであり、特に好ましくは1.0g/10min~4.0g/10minであり、最も好ましくは1.0g/10min~3.5g/10minである。本発明の実施形態による製造方法で得られる改質されたポリ乳酸樹脂のMFR(メルトマスフローレイト)が上記範囲内にあることにより、熱溶融時に適度な流動性を発現でき、発泡特性に優れたポリ乳酸樹脂発泡シートを提供するために有用な改質されたポリ乳酸樹脂となり得る。MFR(メルトマスフローレイト)の測定方法は後述する。
【0018】
本発明の実施形態による製造方法で得られる改質されたポリ乳酸樹脂は、そのゲル分率が、好ましくは10質量%未満であり、より好ましくは8質量%未満であり、さらに好ましくは6質量%未満であり、特に好ましくは4質量%未満であり、最も好ましくは2質量%未満である。本発明の実施形態による製造方法で得られる改質されたポリ乳酸樹脂のゲル分率が上記範囲内にあれば、該改質されたポリ乳酸樹脂を用いて、外観に優れたポリ乳酸樹脂発泡シートを提供することができる。
【0019】
≪改質工程≫
改質工程においては、押出機中でポリ乳酸樹脂を改質する。ここにいう改質工程の原料としてのポリ乳酸樹脂は、好ましくは未改質のポリ乳酸樹脂を意味する。改質工程の原料としてのポリ乳酸樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0020】
押出機としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な押出機を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、押出機としては、好ましくは二軸押出機が挙げられる。
【0021】
図1は、本発明の実施形態による改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法において用いる押出機の一つの好ましい構成を示す概略図である。図1に示すように、押出機30は、上流側から下流側に向かって順に、ポリ乳酸樹脂が供給されるフィード部31と、ポリ乳酸樹脂が改質される反応部32と、該反応部で得られた樹脂組成物を混錬する混練部33と、を含む。
【0022】
押出機30は、上流側から下流側に向かって順に、ポリ乳酸樹脂が供給されるフィード部31と、ポリ乳酸樹脂が改質される反応部32と、該反応部で得られた樹脂組成物を混錬する混練部33と、を含んでいれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他のエリアを有していてもよい。
【0023】
フィード部31は、代表的には、原料としてのポリ乳酸樹脂が供給される供給口31aを有する。供給口31aからは、例えば、ホッパーを用いて、原料が供給される。
【0024】
押出機30は、その下流側の先端に、代表的には、ダイ3を備える。ダイとしては、例えば、ストランドダイやTダイが挙げられ、好ましくは、ストランドダイである。
【0025】
フィード部31の長さL1と反応部32の長さL2と混練部33の長さL3の合計の長さは、押出機30の全長Lに対して、好ましくは50%~100%であり、より好ましくは70%~100%であり、さらに好ましくは90%~100%であり、特に好ましくは95%~100%であり、最も好ましくは100%である。
【0026】
フィード部31の長さL1は、押出機30の全長Lに対して、好ましくは5%~30%であり、より好ましくは10%~30%であり、さらに好ましくは10%~25%である。フィード部31の長さL1が上記範囲を外れて短すぎると、改質剤の分散が不均一になり、ゲル分率が増加するおそれがある。フィード部31の長さL1が上記範囲を外れて長すぎると、押出機の負荷が上昇して、押出が困難になるおそれがある。
【0027】
反応部32の長さL2は、押出機30の全長Lに対して、好ましくは20%~50%であり、より好ましくは25%~50%であり、さらに好ましくは25%~45%である。反応部32の長さL2が上記範囲を外れて短すぎると、反応が不均一となり、溶融張力が低下したり、ゲル分率が増加したりするおそれがある。反応部32の長さL2が上記範囲を外れて長すぎると、樹脂劣化を起こして溶融張力が低下するおそれがある。
【0028】
混練部33の長さL3は、押出機30の全長Lに対して、好ましくは30%~60%であり、より好ましくは35%~60%であり、さらに好ましくは35%~55%である。混練部33の長さL3が上記範囲を外れて短すぎると、均質に改質されたポリ乳酸樹脂が得られず、品質のばらつきが生じるおそれがある。混練部33の長さL3が上記範囲を外れて長すぎると、樹脂劣化を起こして溶融張力が低下するおそれがある。
【0029】
本発明の実施形態による改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法においては、混練部の設定温度が250℃未満であり、好ましくは240℃以下であり、より好ましくは230℃以下であり、さらに好ましくは220℃以下であり、特に好ましくは200℃以下である。混練部の設定温度の下限値は、好ましくは160℃以上であり、より好ましくは170℃以上である。混練部の設定温度を上記範囲内にすることによって、混練物の樹脂劣化を抑制でき、得られる改質されたポリ乳酸樹脂の分子量の低下や溶融張力の低下を抑制でき、また、そのようにして得られた改質されたポリ乳酸樹脂から得られるポリ乳酸樹脂発泡シートの発泡特性を向上させることができる。混練部の設定温度が上記範囲を外れて高すぎると、混練物の樹脂劣化が起こるおそれがあり、得られる改質されたポリ乳酸樹脂の分子量の低下や溶融張力の低下が起こるおそれがあり、また、そのようにして得られた改質されたポリ乳酸樹脂から得られるポリ乳酸樹脂発泡シートの発泡特性が低下するおそれがある。混練部の設定温度が上記範囲を外れて低すぎると、押出機の負荷が上昇して押出が困難になるおそれがある。
【0030】
混練部は、1つのゾーンから構成されるものであってもよいし、複数のゾーンから構成されるものであってもよい。複数のゾーンから構成される場合、各ゾーンにおける設定温度が、上記混練部の設定温度の範囲内に調整されていればよい。
【0031】
なお、混練部の設定温度は、押出機における混練部の温度の設定手段によって設定する温度であるが、押出機における混練部の温度の設定手段が備えられていない場合には、混練部内に存在する混合物(代表的には、ポリ乳酸樹脂と改質剤の反応混合物)の温度を、混練部の設定温度と読み替えるものとする。
【0032】
本発明の実施形態による改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法においては、フィード部の設定温度は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な設定温度を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、このような設定温度としては、好ましくは180℃以下であり、より好ましくは170℃以下であり、さらに好ましくは160℃以下であり、特に好ましくは155℃以下であり、最も好ましくは150℃以下である。フィード部の設定温度の下限値は、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは110℃以上であり、さらに好ましくは120℃以上であり、特に好ましくは130℃以上である。フィード部の設定温度を上記範囲内にすることによって、得られる改質されたポリ乳酸樹脂のゲル分率の増加を効果的に抑制できる。フィード部の設定温度が上記範囲を外れて高すぎると、得られる改質されたポリ乳酸樹脂のゲル分率が増加するおそれがあり、ひいては、そのようにして得られた改質されたポリ乳酸樹脂から、外観に優れたポリ乳酸樹脂発泡シートを提供することができる。フィード部の設定温度が上記範囲を外れて低すぎると、樹脂が軟化せず、押出機の負荷が上昇して押出が困難になるおそれがある。
【0033】
フィード部は、1つのゾーンから構成されるものであってもよいし、複数のゾーンから構成されるものであってもよい。複数のゾーンから構成される場合、各ゾーンにおける設定温度が、上記フィード部の設定温度の範囲内に調整されていればよい。
【0034】
なお、フィード部の設定温度は、押出機におけるフィード部の温度の設定手段によって設定する温度であるが、押出機におけるフィード部の温度の設定手段が備えられていない場合には、フィード部内に存在する混合物(代表的には、ポリ乳酸樹脂と改質剤の混合物)の温度を、フィード部の設定温度と読み替えるものとする。
【0035】
本発明の実施形態による改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法においては、反応部の設定温度は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な設定温度を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、このような設定温度としては、好ましくは280℃以下であり、より好ましくは260℃以下であり、さらに好ましくは250℃以下であり、特に好ましくは240℃以下である。反応部の設定温度の下限値は、好ましくは160℃以上であり、より好ましくは170℃以上であり、さらに好ましくは180℃以上であり、特に好ましくは190℃以上である。反応部の設定温度を上記範囲内にすることによって、改質反応を均質かつ十分に進行させることができる。反応部の設定温度が上記範囲を外れて高すぎると、急激に反応が進行してゲル分率が増加するおそれがある。反応部の設定温度が上記範囲を外れて低すぎると、十分な反応が進行せず、溶融張力が低下するおそれがある。
【0036】
反応部は、1つのゾーンから構成されるものであってもよいし、複数のゾーンから構成されるものであってもよい。複数のゾーンから構成される場合、各ゾーンにおける設定温度が、上記反応部の設定温度の範囲内に調整されていればよい。
【0037】
なお、反応部の設定温度は、押出機における反応部の温度の設定手段によって設定する温度であるが、押出機における反応部の温度の設定手段が備えられていない場合には、反応部内に存在する混合物(代表的には、ポリ乳酸樹脂と改質剤の反応混合物)の温度を、反応部の設定温度と読み替えるものとする。
【0038】
押出機の回転数は、押出の大きさや吐出量などによって変動し得るので、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な条件を採用し得る。このような回転数としては、例えば、好ましくは20rpm~800rpmである。
【0039】
改質工程の原料としてのポリ乳酸樹脂は、その水分率が、好ましくは0.30質量%以下に調整されたものであり、より好ましくは0.25質量%以下に調整されたものであり、より好ましくは0.20質量%以下に調整されたものであり、さらに好ましくは0.17質量%以下に調整されたものであり、特に好ましくは0.15質量%以下に調整されたものである。この水分率の下限値は、少なければ少ないほどよく、理想的には0質量%である。
【0040】
ポリ乳酸樹脂は、乳酸の単独重合体であっても乳酸と他のモノマーとの共重合体であってもよい。他のモノマーとしては、例えば、乳酸以外の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族多価アルコール、脂肪族多価カルボン酸、多官能多糖類が挙げられる。
【0041】
ポリ乳酸樹脂を構成する乳酸は、L-体とD-体とのいずれか一方であってもよいし、L-体とD-体との両方であってもよい。すなわち、乳酸の単独重合体であるポリ乳酸樹脂は、ポリ(L-乳酸)樹脂、ポリ(D-乳酸)樹脂、および、ポリ(DL-乳酸)樹脂のいずれであってもよい。
【0042】
乳酸以外のヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ吉草酸、5-ヒドロキシ吉草酸、6-ヒドロキシカプロン酸が挙げられる。
【0043】
脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。
【0044】
脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸が挙げられる。また、脂肪族多価カルボン酸は、酸無水物であってもよい。
【0045】
多官能多糖類としては、例えば、セルロース、硝酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロイド、ビスコースレーヨン、再生セルロース、セロハン、キュプラ、銅アンモニアレーヨン、キュプロファン、ベンベルグ、ヘミセルロール、デンプン、アクロペクチン、デキストリン、デキストラン、グリコーゲン、ペクチン、キチン、キトサン、アラビアガム、グァーガム、ローカストビーンガム、アカシアガムが挙げられる。
【0046】
ポリ乳酸樹脂における、分子中の乳酸(L-体及びD-体)に由来する構造部分の含有割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上であり、最も好ましくは90質量%以上である。
【0047】
原料としてのポリ乳酸樹脂は、その少なくとも一部をリサイクル品としてもよい。
【0048】
改質工程においては、改質剤を用いて、ポリ乳酸樹脂を高分子量化させたり、ポリ乳酸樹脂の分子構造中に架橋構造や長鎖分岐構造を持たせたりすることによって、ポリ乳酸樹脂を改質する。
【0049】
改質剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0050】
ポリ乳酸樹脂の高分子量化には、改質剤として、カルボジイミドなどの鎖伸長剤を採用し得る。鎖伸長剤による改質においては、アクリル系有機化合物、エポキシ系有機化合物、イソシアネート系有機化合物など、ポリ乳酸樹脂の分子構造中に存在する水酸基やカルボキシル基と縮合反応させることが可能な官能基を1個以上有する化合物を用い得る。すなわち、ポリ乳酸樹脂の高分子量化は、カルボジイミドなどの鎖伸長剤を用い、アクリル系有機化合物、エポキシ系有機化合物、イソシアネート系有機化合物などをポリ乳酸樹脂に結合させることによって行い得る。
【0051】
ポリ乳酸樹脂の分子構造中に架橋構造や長鎖分岐構造を持たせるためには、例えば、改質剤として、ラジカル開始剤を採用し得る。この場合、ラジカル開始剤によってポリ乳酸樹脂どうしを反応させる。適度な反応性を有するラジカル開始剤を使ってポリ乳酸樹脂どうしを反応させると、例えば、押出機内でのポリ乳酸樹脂の分解起点が、ラジカル開始剤によって発生させたフリーラジカルによってアタックされ、その箇所が架橋点(分岐点)となって安定化され得る。このような改質がなされることで、ポリ乳酸樹脂は、熱安定性が増し、押出機を通過する際に低分子量化され難くなる。
【0052】
ラジカル開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物、ハロゲン分子が挙げられ、有機過酸化物が好ましい。
【0053】
有機過酸化物としては、例えば、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイドが挙げられる。
【0054】
パーオキシエステルとしては、例えば、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシアセテート、2,5-ジメチル2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートが挙げられる。
【0055】
ハイドロパーオキサイドとしては、例えば、パーメタンハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、及び、t-ブチルハイドロパーオキサイドが挙げられる。
【0056】
ジアルキルパーオキサイドとしては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキシン-3が挙げられる。
【0057】
ジアシルパーオキサイドとしては、例えば、ジベンゾイルパーキサイド、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、及び、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイドが挙げられる。
【0058】
パーオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートが挙げられる。
【0059】
パーオキシケタールとしては、例えば、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ブタン、n-ブチル4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンが挙げられる。
【0060】
ケトンパーオキシドとしては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイドが挙げられる。
【0061】
有機過酸化物による改質では、改質後のポリ乳酸樹脂に熱溶融時にゲルとなるような分子量が過大な成分を混在させたり、有機過酸化物の分解残渣による臭気の問題を発生させたりするおそれがある。このような問題の発生を抑制でき、ポリ乳酸樹脂を発泡に適した状態に改質することが容易である点において、有機過酸化物は、パーオキシエステルであることが好ましい。また、パーオキシエステルの中でも、パーオキシモノカーボネートやパーオキシジカーボネートなどのパーオキシカーボネート系有機過酸化物が好ましい。さらに、パーオキシカーボネート系有機過酸化物の中でも、パーオキシモノカーボネート系有機過酸化物が好ましく、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートがより好ましい。
【0062】
有機過酸化物の使用量は、その分子量などにもよるが、本発明の効果をより発現させ得る点で、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上であり、より好ましくは0.2質量部以上であり、さらに好ましくは0.3質量部以上である。有機過酸化物の使用量の上限値は、好ましくは2.0質量部以下であり、より好ましくは1.5質量部以下であり、さらに好ましくは1.0質量部以下である。
【0063】
改質工程において用いる原料としては、ポリ乳酸樹脂と改質剤以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含んでいてもよい。改質工程において用いる原料中の、ポリ乳酸樹脂と改質剤の合計量の含有割合は、好ましくは50質量%~100質量%であり、より好ましくは70質量%~100質量%であり、さらに好ましくは90質量%~100質量%であり、特に好ましくは95質量%~100質量%である。
【0064】
改質工程においては、フィード部に原料としてのポリ乳酸樹脂が供給され、好ましくは、原料としてのポリ乳酸樹脂と改質剤が供給される。原料としてのポリ乳酸樹脂と、改質剤と、必要に応じて他の成分とを、あらかじめ混合してから、フィード部に供給してもよい。このような混合の方法としては、例えば、タンブラー、リボンブレンダー、Vブレンダー、ヘンシェルミキサー、レディゲーミキサー等の混合機を用いた混合方法が挙げられる。
【0065】
≪任意の他の工程≫
本発明の実施形態による改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法は、本発明の効果を損なわない範囲で、改質工程以外の、任意の適切な他の工程を含んでいてもよい。このような工程は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。このような工程としては、例えば、改質工程で得られる混練物をペレット化するペレット化工程、改質工程で得られる混練物を冷却する冷却工程、ペレット化工程で得られるペレットを乾燥させる乾燥工程が挙げられる。
【0066】
本発明の実施形態による改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法の一つの実施形態においては、得られる改質されたポリ乳酸樹脂は、ペレットとして得られる。この場合、本発明の実施形態による改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法の一つの好ましい実施形態においては、図2に示すように、ホッパー11に投入された原料としてのポリ乳酸樹脂が押出機30中で改質され、ダイ3から押し出されたストランド状の混練物が、冷却装置6で冷却され、その後、ペレタイザー4によってペレット化されたのち、乾燥装置5で乾燥され、改質されたポリ乳酸樹脂のペレットが得られる。
【0067】
<冷却工程>
本発明の実施形態による改質されたポリ乳酸樹脂の一つの好ましい実施形態においては、改質工程の後、押出機から押出された混練物を冷却する冷却工程を含んでいてもよい。
【0068】
冷却工程における冷却の方法は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な方法を採用し得る。このような方法としては、例えば、冷却装置を用いて行う方法が挙げられ、代表的には、ストランドダイから吐き出されるストランドを水冷する方法が挙げられ、具体的には、ストランドダイから吐き出されるストランドを水槽中に導入することにより水冷する方法が挙げられる。
【0069】
冷却の温度は、好ましくは70℃以下であり、より好ましくは60℃以下であり、さらに好ましくは50℃以下であり、特に好ましくは40℃以下であり、最も好ましくは35℃以下である。上記冷却の温度の下限値は、特に限定されないが、冷却にかかるコスト等を勘案すると、現実的には、好ましくは5℃以上であり、より好ましくは10℃以上である。
【0070】
<ペレット化工程>
本発明の実施形態による改質されたポリ乳酸樹脂の一つの好ましい実施形態においては、改質工程の後、押出機から押出された混練物をペレット化するペレット化工程を含んでいてもよい。
【0071】
ペレット化工程におけるペレット化方法は、改質工程における押出機から押出された混練物をペレット化できれば、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な方法を採用し得る。このようなペレット化方法としては、代表的には、改質工程における押出機から押出されたストランド状やシート状の混練物を、ペレタイザーでカットしてペレットを作製する。ペレット化工程を効率的に進行させるために、改質工程の後、ペレット化工程の前に、前述の冷却工程を含んでいてもよい。
【0072】
ペレタイザーとしては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切なペレタイザーを採用し得る。
【0073】
なお、改質工程における押出機は、造粒ダイ(ホットカットダイ)が装着されていてもよい。この場合、混練物は、押出された直後にペレット化されるので、この造粒ダイにおけるペレット化が、ペレット化工程となり得る。
【0074】
<乾燥工程>
本発明の実施形態による改質されたポリ乳酸樹脂の一つの好ましい実施形態においては、ペレット化工程で得られたペレットを乾燥する乾燥工程を含んでいてもよい。
【0075】
乾燥工程においてペレットを乾燥する方法としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な方法を採用し得る。このような方法としては、例えば、ペレットを、除湿乾燥機、真空乾燥機、熱風乾燥機などの乾燥機を用いて乾燥させる方法が挙げられる。なお、上記のような乾燥機などで十分に乾燥させたペレットは、直接(水分を含む環境に曝されることなく)、次の工程に導入することは好ましい実施形態である。また、上記のような乾燥機などで十分に乾燥させたペレットを、乾燥後にすぐに一度アルミ袋などに密封して、それを投入直前に開封して、次の工程に導入することも好ましい実施形態である。
【0076】
≪≪改質されたポリ乳酸樹脂≫≫
本発明の実施形態による改質されたポリ乳酸樹脂は、本発明の実施形態による改質されたポリ乳酸樹脂の製造方法によって得られる。
【0077】
≪ポリ乳酸樹脂発泡シート≫≫
本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートは、本発明の実施形態による製造方法で得られる改質されたポリ乳酸樹脂を主成分として含むポリ乳酸樹脂(P)を押出機中で発泡剤と溶融混練し、押出発泡して得られる。
【0078】
ポリ乳酸樹脂(P)は、本発明の実施形態による製造方法で得られる改質されたポリ乳酸樹脂を主成分として含む。以下、便宜上、ポリ乳酸樹脂(P)中の改質されたポリ乳酸樹脂の含有割合が実質的に100質量%であるとして説明する。
【0079】
発泡剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0080】
発泡剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な発泡剤を用いることができる。発泡剤としては、常温(23℃)、常圧(1気圧)において気体となる揮発性発泡剤、熱分解によって気体を発生させる分解型発泡剤が挙げられ、好ましくは、揮発性発泡剤である。
【0081】
揮発性発泡剤としては、好ましくは、沸点がポリ乳酸樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状または液状の有機化合物である。具体例としては、例えば、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタン(n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン)、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロペンタジエン等の脂環式炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物;トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン含有炭化水素;が挙げられる。揮発性発泡剤として、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガスを用いてもよい。これらの中でも、本発明の効果をより発現させ得る点で、揮発性発泡剤としては、好ましくは、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、およびシクロペンタジエンから選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、およびイソペンタンから選ばれる少なくとも1種である。
【0082】
分解型発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、重炭素ナトリウムまたはクエン酸のような有機酸もしくはその塩と重炭酸塩との混合物が挙げられる。
【0083】
発泡剤の使用量は、目的に応じて適切に設定され得る。発泡剤の使用量は、ポリ乳酸樹脂(P)の量を100質量部としたときに、好ましくは0.1質量部~10.0質量部であり、より好ましくは0.3質量部~7.0質量部であり、さらに好ましくは0.5質量部~5.0質量部であり、特に好ましくは0.8質量部~3.0質量部である。
【0084】
押出機中には、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリ乳酸樹脂(P)と発泡剤以外の任意の適切な他の成分が含まれていてもよい。押出機中に供給する材料の全量中の、ポリ乳酸樹脂(P)と発泡剤の合計の含有割合は、好ましくは50質量%~100質量%であり、より好ましくは70質量%~100質量%であり、さらに好ましくは90質量%~100質量%であり、特に好ましくは95質量%~100質量%である。
【0085】
押出機中には、他の成分として発泡助剤が含まれていてもよい。発泡助剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。発泡助剤としては、例えば、アジピン酸ジイソブチル、トルエン、シクロヘキサン、エチルベンゼン、流動パラフィン、ヤシ油が挙げられる。
【0086】
押出機中には、他の成分として気泡調整剤が含まれていてもよい。気泡調整剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。気泡調整剤としては、例えば、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸とアルコールの部分エステル、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、クエン酸、重炭酸ナトリウム、ポリテトラフルオロエチレン、水酸化アルミニウム、シリカが挙げられる。高級脂肪酸アミドとしては、例えば、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド等の脂肪酸モノアミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の脂肪酸ビスアミド;が挙げられる。高級脂肪酸とアルコールの部分エステルにおける高級脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘニン酸等の炭素数15以上の脂肪酸が挙げられる。高級脂肪酸とアルコールの部分エステルとしては、例えば、ステアリン酸モノグセライド、ステアリン酸ジグリセライドが挙げられる。
【0087】
上記以外の他の成分としては、例えば、他の樹脂、顔料、輻射伝熱抑制成分、架橋剤、可塑剤、安定剤、充填剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、展着剤、耐候剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、防曇剤、香料、抗菌剤が挙げられる。
【0088】
ポリ乳酸樹脂発泡シートを製造するにあたっては、ポリ乳酸樹脂(P)と気泡調整剤と必要に応じて他の成分をあらかじめ混合していてもよい。このような混合の方法としては、例えば、タンブラー、リボンブレンダー、Vブレンダー、ヘンシェルミキサー、レディゲーミキサー等の混合機を用いた混合方法が挙げられる。
【0089】
押出機としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な押出機を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、押出機としては、好ましくは、タンデム押出機が採用される。
【0090】
タンデム押出機の先端部には、最終的にポリ乳酸樹脂発泡シートが得られるように、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切なダイが備えられ、好ましくは、さらに、冷却マンドレル、ポリ乳酸樹脂発泡シートを原反ロールとして巻き取るための巻取りローラなどが備えられていてもよい。
【0091】
本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートを製造するにあたっては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な製造装置を用いて実施することができる。本発明の効果をより発現させ得る点で、本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートは、例えば、図3に示すような製造装置を用いて実施することができる。
【0092】
図3に示す製造装置は、タンデム押出機10と、タンデム押出機10において溶融混練されたポリ乳酸樹脂組成物を筒状に吐出するサーキュラーダイCDとが備えられている。さらに、この製造装置には、サーキュラーダイCDから筒状に吐出された発泡シートを空冷する冷却装置CLと、この筒状の発泡シートを拡径して所定の大きさの筒状にするためのマンドレルMDと、このマンドレルMD通過後の発泡シートをスリットして2枚のシートに分割するスリット装置と、スリットされた発泡シート1を複数のローラ21を通過させた後に巻き取るための巻き取りローラ22が備えられている。タンデム押出機10の上流側の押出機(以下「第1押出機10a」ともいう)には、発泡シートの原材料となる改質されたポリ乳酸樹脂を投入するためのホッパー11と、発泡剤をシリンダー内に供給するためのガス導入部12が設けられている。第1側押出機10aの下流側には、改質されたポリ乳酸樹脂と発泡剤を含んだポリ乳酸樹脂組成物を溶融混練するための押出機(以下「第2押出機10b」ともいう)が備えられている。
【0093】
溶融混練の温度条件は、押出の大きさや吐出量などによって変動し得るので、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な条件を採用し得る。例えば、上流側押出機10aの原料フィード部の温度を、好ましくは100℃~200℃、より好ましくは140℃~200℃に設定し、上流側押出機10aのそれ以降の温度を、好ましくは120℃~300℃、より好ましくは140℃~270℃に設定し、下流側押出機10bの温度を、好ましくは100℃~250℃、より好ましくは120℃~220℃に設定する。
【0094】
押出機の回転数は、押出の大きさや吐出量などによって変動し得るので、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な条件を採用し得る。このような回転数としては、例えば、上流側押出機10aについて、好ましくは10rpm~300rpmであり、下流側押出機10bについて、好ましくは5rpm~200rpmである。
【0095】
本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートの製造方法で得られるポリ乳酸樹脂発泡シートの厚みは、目的に応じて適宜設定し得る。本発明の実施形態による製造方法で得られるポリ乳酸樹脂発泡シートの厚みは、代表的には、好ましくは0.2mm~10mmであり、より好ましくは0.3mm~8.0mmであり、さらに好ましくは0.4mm~5.0mmであり、特に好ましくは0.5mm~3.0mmである。
【0096】
本発明の実施形態によるポリ乳酸樹脂発泡シートの製造方法で得られるポリ乳酸樹脂発泡シートの連続気泡率は、好ましくは60%以下であり、より好ましくは40%以下であり、さらに好ましくは30%以下であり、特に好ましくは20%以下であり、最も好ましくは16%未満である。上記連続気泡率の下限値は、好ましくは0%以上である。本発明の実施形態による製造方法で得られるポリ乳酸樹脂発泡シートの連続気泡率が上記範囲内にあれば、該ポリ乳酸樹脂発泡シートは、収縮し難く、発泡特性に優れ得る。連続気泡率の測定方法については後述する。
【実施例0097】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法および評価方法は以下の通りである。
【0098】
<ゲル分率の測定>
ゲル分率(質量%)は、以下の方法で測定した。
約0.5gの試料を用意し、この試料の初期質量(m0(g))を精秤した。また、この試料を溶解させた溶解液をろ過するための200メッシュ金網(線径0.05mm)を用意した。この金網の初期の質量(M0(g))も精秤した。ビーカー(100mL)に秤量した測定試料を入れた。そのビーカーに溶媒としてクロロホルム50mLとスターラーバーを入れ、アルミ箔で蓋をした。スターラーで2時間攪拌を行い、常温にて溶解させた。2時間後、アルミ箔を外し、ビーカー内の溶解物を前記金網でろ過した。ろ過後、金網をドラフトにて12時間以上自然乾燥を行った。自然乾燥後、さらにこの金網を恒温乾燥機で120℃2時間乾燥した。乾燥後の金網を、デシケーターにて冷却した。冷却後、樹脂不溶物が付着した金網の秤量を行ない、下記の式にてゲル分率を算出した。
ゲル分率(質量%)=(m1/m0)×100
m0:試料の初期質量
m1:樹脂不溶物の質量(M1-M0)
M0:金網の初期の質量
M1:樹脂不溶物と金網との合計質量
【0099】
<MFR(メルトマスフローレイト)の測定>
MFRは、JIS K 7210:1999の規格に準拠して測定した。具体的には、同規格のB法記載の「b)ピストンが所定の距離を移動する時間を測定する方法」により測定した。MFRはメルトフローインデックステスター(自動)120-SAS(株式会社安田精機製作所製)を用いて測定した。試料は、70℃で5時間真空乾燥後、測定直前まで密封してデシケーター内で保存したものを用いた。測定回数は3回とし、その平均をMFR(g/10min)の値とした。
測定条件は次の通りとした。
試料:3g~8g
予熱(1):200秒
予熱(2):30秒
試験温度:190℃
試験荷重:21.18N
ピストン移動距離(インターバル):25mm
【0100】
<溶融張力(MT)の測定>
溶融張力は、測定装置として、キャピログラフ1D(株式会社東洋精機製作所製)およびレオテンス(Rheotens71.97)(Gottfert社製)を用いて測定した。測定試料は、事前に、70℃×5時間真空乾燥した。まず、試験温度190℃に加熱された径9.55mmのバレルに測定試料を充填後、5分間予熱した後、溶融樹脂を上記測定装置のキャピラリーダイ(口径2.095mm、長さ8mm、流入角度90度(コニカル))からピストン降下速度(20mm/min)を一定に保持して紐状に押出しながら、この紐状物を上記キャピラリーダイの出口から測定部までが80mmとなるよう設置したホイール(ホイール間:上0.6mm~0.8mm、下1.0mm)に通過させて、その引き取り速度を初速6.92mm/s、加速度10mm/s2で徐々に増加させつつ通過させていき、紐状物が切断した点の直前の張力の極大値と極小値の平均を測定試料の溶融張力(MT)とした。なお、そのままでは干渉してしまって80mmまでレオテンスを接近させることができない場合は、干渉を回避する策を講じて所定の場所にレオテンスをセットすることとした。なお、張力チャートに極大点が1個しかない場合はその極大値を溶融張力、紐状物が細くなり、引き取りが空回り状態になった場合は、その時点を破断点と捉えて、直前の張力の極大値と極小値の平均を測定試料の溶融張力とした。
〔「キャピログラフ1D」の測定条件〕
ダイ:直径2.095mm、長さ8mm、流入角度90度(コニカル)
バレル径:9.55mm
ピストンスピード:20mm/min
測定温度:190℃
〔「Rheotens71.97」の測定条件〕
ホイール間:上0.6mm~0.8mm、下1.0mm
加速度:10mm/s2
引取スピード:初速6.92mm/s
【0101】
<連続気泡率の測定>
ポリ乳酸樹脂発泡シートから、縦25mm、横25mmのシート状サンプルを複数枚切り出し、切り出したサンプルを隙間があかないようにして重ね合わせて厚み25mmの測定用試料とし、この測定用試料の外寸を株式会社ミツトヨ製の「デジマチックキャリパ」を使用して1/100mmまで測定し、見掛けの体積(cm3)を求めた。
次に、空気比較式比重計1000型(東京サイエンス株式会社製)を使用して、1-1/2-1気圧法により、測定用試料の体積(cm3)を求めた。
これらの求めた値と下記式により、連続気泡率(%)を計算し、試験数5個の平均値を求めた。
なお、測定は、測定用試料をJIS K7100-1999 記号23/50、2級の環境下で16時間状態調節した後、JIS K7100-1999 記号23/50、2級の環境下で行った。
また、空気比較式比重計は、標準球(大28.9cc、小8.5cc)にて補正を行った。
連続気泡率(%)=[(見掛け体積-空気比較式比重計での測定体積)/見掛け体積]×100(%)
【0102】
<発泡倍率の測定>
ポリ乳酸樹脂発泡シートの発泡倍率は、ポリ乳酸樹脂発泡シートの見掛け密度(ρ1)を求め、ポリ乳酸樹脂発泡シートを構成しているポリ乳酸樹脂組成物の密度(真密度:ρ0)を求め、真密度(ρ0)を見掛け密度(ρ1)で除して求めることができる。
発泡倍率=真密度(ρ0)/見掛け密度(ρ1)
発泡シートの密度は、JIS-K7222:1999「発泡プラスチックおよびゴム-見掛け密度の測定」に記載される方法によって求めることができ、具体的には下記のような方法で求めた。
(密度測定方法)
ポリ乳酸樹脂発泡シートから、100cm3以上の試料を元のセル構造を変えないように切断し、この試料をJIS K7100:1999の記号23/50、2級環境下で16時間状態調節した後、その寸法、質量を測定して、密度を下記式により算出した。
見掛け密度(kg/m3)=試料の質量(kg)/試料の体積(m3
なお、試料の寸法測定には、株式会社ミツトヨ製「DIGIMATIC」CD-15タイプを用いた。
ポリ乳酸樹脂発泡シートを構成しているポリ乳酸樹脂組成物の密度は、ポリ乳酸樹脂発泡シートを熱プレスするなどして非発泡体化した試料に対してアルキメデス法(JIS-K8807:2012「固体の密度及び比重の測定方法」の液中ひょう量法)に基づく測定を実施して求めた。
【0103】
<ポリ乳酸樹脂発泡シートの外観>
ポリ乳酸樹脂発泡シートの外観は、下記の基準で評価した。
○:発泡が均一で外観美麗。
△:発泡は均一だがシート表面に一部ブツが見られる。
×:シート表面に多数のブツが見られる。
【0104】
[実施例1]
(1)改質されたポリ乳酸樹脂の作製
ポリ乳酸樹脂(Nature Works社製、「Biopolymer Ingeo 4032D」、MFR=4.4g/10min、密度=1240kg/m3、水分率:0.02質量%)100質量部と、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(化薬ヌーリオン社製、「トリゴノックスBPIC-75」、1分間半減期温度T1=158.8℃)0.5質量部とを、リボンブレンダーにて攪拌混合して、混合物を得た。
得られた混合物を、口径が57mmの二軸押出機(L/D=31.5)の供給口から供給した。
二軸押出機は、上流側から下流側に向かって順に、上記混合物が供給されるフィード部と、ポリ乳酸樹脂が改質される反応部と、該反応部で得られた樹脂組成物を混錬する混練部とを有し、押出機の全長100%に対して、フィード部の長さは20%、反応部の長さは40%、混練部の長さは40%であった。
フィード部は1つのゾーン(C1)から構成され、反応部は4つのゾーン(C2~C5)から構成され、混練部は4つのゾーン(C6~C9)から構成されていた。
フィード部のC1の設定温度を140℃、反応部のC2~C5の設定温度を200℃、混練部のC6~C9の設定温度を185℃に設定し、回転数150rpmの条件にて二軸押出機中で、上記混合物を溶融混練させ、二軸押出機の先端に取り付けた口径3mm、孔数18個のダイから、30kg/hの吐出量で、混練物をストランド状に押し出した。
次いで、押し出されたストランド状の混練物を、30℃の水を収容した長さ2mの冷却水槽中を通過させて、冷却した。
冷却されたストランドを、ペレタイザーでカットして、改質されたポリ乳酸樹脂のペレット(1)を得た。
(2)ポリ乳酸樹脂発泡シートの作製
得られた改質されたポリ乳酸樹脂(1)100質量部と、気泡調整剤(松村産業(株)製「クラウンタルク」)1.0質量部とをドライブレンドして、混合物を作製した。
口径φ50mmの第1押出機(上流側)および口径φ65mmの第2押出機(下流側)を備えたタンデム押出機において、口径φ50mmの第1の押出機に、得られた混合物をホッパーを通じて供給し、220℃で加熱溶融させた。
その後、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=70質量%/30質量%)を第1押出機に圧入し、前記混合物とともに溶融混合させた。
次いで、この溶融混合物を口径65mmの第2の押出機に移送して170℃に均一に冷却した後、口径φ70mmのサーキュラーダイから吐出量30kg/hで押出発泡させて、円筒状発泡体を得た。
得られた円筒状発泡体を内部が約20℃の水で冷却されているφ206mmのマンドレル上を沿わせ、またその外面をその径よりも大きいエアリングによりエアーを吹き付けることにより冷却成形し、円周上の1点でカッターにより切開して、帯状のポリ乳酸樹脂発泡シート(1)を得た。
結果を表1に示した。
【0105】
[実施例2]
反応部のC2~C5の設定温度を230℃、混練部のC6~C9の設定温度を200℃とした以外は、実施例1と同様の方法で行い、改質されたポリ乳酸樹脂のペレット(2)、ポリ乳酸樹脂発泡シート(2)を得た。
結果を表1に示した。
【0106】
[実施例3]
ポリ乳酸樹脂として、Nature Works社製の「Biopolymer Ingeo 6202D」(MFR=10.1g/10min、密度=1240kg/m3、水分率:0.05質量%)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で行い、改質されたポリ乳酸樹脂のペレット(3)、ポリ乳酸樹脂発泡シート(3)を得た。
結果を表1に示した。
【0107】
[比較例1]
混練部のC6~C9の設定温度を250℃とした以外は、実施例1と同様の方法で行い、改質されたポリ乳酸樹脂のペレット(C1)、ポリ乳酸樹脂発泡シート(C1)を得た。
結果を表1に示した。
【0108】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の製造方法で得られるポリ乳酸樹脂発泡シートは、発泡特性に優れており、多様な形状に成形加工することが容易であるため、包装材などをはじめとして各種成形品の原材料として利用されている。
【符号の説明】
【0110】
1 発泡シート
3 ダイ
4 ペレタイザー
5 乾燥装置
6 冷却装置
10 タンデム押出機
10a 第1押出機
10b 第2押出機
11 ホッパー
12 ガス導入部
21 ローラ
22 巻き取りローラ
30 押出機
31 フィード部
31a 供給口
32 反応部
33 混練部
図1
図2
図3