(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135090
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】廃棄物のガス化処理方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
C10J 3/00 20060101AFI20240927BHJP
C10J 3/72 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C10J3/00 H
C10J3/72 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045608
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】弁理士法人MTS国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川畑 秀駿
(72)【発明者】
【氏名】中山 剛
(72)【発明者】
【氏名】土居 真
(57)【要約】
【課題】ガス化処理システムにおいて、設備を複雑化せず、排ガス全体の温度を上げることなく、少ないエネルギーで、燃焼せずに残ったチャー、タール、スート等の未燃炭素分を分解して、合成ガスの回収量を増大させる。
【解決手段】廃棄物を熱分解してガス化する際に、熱分解ガス中に残留する未燃炭素分にマイクロ波を照射して、未燃炭素分を選択的に加熱し分解する。この際、未燃炭素分をフィルターの表面に堆積させてマイクロ波を照射するか、及び/又は、熱分解ガスに乗ってダクトの途中を流れている未燃炭素分に向けてマイクロ波を照射することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を熱分解してガス化する際に、
熱分解ガス中に残留する未燃炭素分にマイクロ波を照射して、未燃炭素分を選択的に加熱し分解することを特徴とする廃棄物のガス化処理方法。
【請求項2】
未燃炭素分をフィルターの表面に堆積させてマイクロ波を照射することを特徴とする請求項1に記載の廃棄物のガス化処理方法。
【請求項3】
熱分解ガスに乗ってダクトの途中を流れている未燃炭素分に向けてマイクロ波を照射することを特徴とする請求項1に記載の廃棄物のガス化処理方法。
【請求項4】
熱分解ガスに乗ってダクトの途中を流れている未燃炭素分、及び、フィルターの表面に堆積させた未燃炭素分の両方に向けてマイクロ波を照射することを特徴とする請求項1に記載の廃棄物のガス化処理方法。
【請求項5】
廃棄物を熱分解及びガス化させて熱分解ガスを発生させるガス化炉と、
前記熱分解ガスを酸素及び水蒸気により改質する改質炉と、
該改質炉から排出される熱分解ガスの熱を回収して蒸気を発生させるボイラ設備とを有する廃棄物のガス化処理システムにおいて、
前記ボイラ設備の出側に設けたフィルター設備と、
該フィルター設備内に設けられたフィルターの表面に堆積する未燃炭素分に向けてマイクロ波を照射するマイクロ波発振装置と、
を備えたことを特徴とする廃棄物のガス化処理システム。
【請求項6】
廃棄物を熱分解及びガス化させて熱分解ガスを発生させるガス化炉と、
前記熱分解ガスを酸素及び水蒸気により改質する改質炉と、
該改質炉から排出される熱分解ガスの熱を回収して蒸気を発生させるボイラ設備とを有する廃棄物のガス化処理システムにおいて、
前記改質炉から前記ボイラ設備に至るダクト中を流れている熱分解ガスに向けてマイクロ波を照射するマイクロ波発振装置を備えたことを特徴とする廃棄物のガス化処理システム。
【請求項7】
前記熱分解ガス中のCO濃度を測定するCO濃度計と、
該CO濃度計の出力に基づいて前記マイクロ波発振装置を動かすコントローラを更に備えたことを特徴とする請求項5又は6のいずれかに記載の廃棄物のガス化処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス資源や廃棄物のガス化処理方法及びシステムに係り、特に、廃プラスチックを熱分解して合成ガスを得るガス化処理システムに用いるのに好適な、廃棄物のガス化処理方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バイオマス資源や廃プラスチックなどの廃棄物を熱分解・ガス化処理して化学品に利用可能な合成ガスを生じさせるガス化処理システムが知られている。このようなガス化処理システムでは、バイオマス資源の熱分解・ガス化処理によりガス成分である熱分解ガスと共に、タール、チャー、スート等の含炭素非ガス成分が生成する。ここで生じた熱分解ガスは、含炭素非ガス成分を含んだ状態で改質炉に移される。なお、熱分解ガスは、バイオマス資源の熱分解・ガス化処理により生じたガス成分を意味するが、便宜上、含炭素非ガス成分を同伴したものを意味する場合もあるものとする。改質炉では、全体として1000~1200℃に加熱され、熱分解ガス中に存在するタール、チャー、スート等の含炭素非ガス成分は、H2、CO等のガス成分に転換される。
【0003】
このようなガス化処理システムにおいて、バイオマスや廃棄物(廃プラスチックを含む)をガス化炉の流動槽などによって熱分解・ガス化した際、ガス温度を1200℃程度以上の高温にしない場合、チャーやタール、スートといった未燃の炭素分が残ってしまう。未燃炭素が残った場合、(1)炉の後段で付着等のトラブルを起こす、(2)排出炭素の処理が必要になる、(3)未燃炭素分の持つエネルギーを回収できない、といった問題がある。
【0004】
一方で、ガス化ガスの部分酸化により燃焼温度を上げる場合、その分、ガス化ガスのエネルギーの一部を消費してしまうこととなる。
【0005】
このような問題点を解決するべく、特許文献1には、バイオマスをガス化した際、過酸化水素を吹き込むことにより、吹き込まない場合に比べ、低温でも残存タールを低減する技術が記載されている。
【0006】
又、特許文献2には、バイオマスをガス化した際に生成し、燃焼せずに残ったタールを分解する触媒を用いて、ガス化ガス中のタール分を分解除去する技術が記載されている。
【0007】
又、特許文献3には、酸化鉄を添加した集塵灰をマイクロ波で加熱して、ダイオキシン類が発生するなどの問題点のない集塵灰に無害化処理する廃棄物の集塵灰の処理技術が記載されている。
【0008】
又、特許文献4には、炉中のマイクロ波を吸収する性質を有する、粒状、板状又は塊状の材料からなる充填層にマイクロ波を照射することにより、高温に保持されている炉に、可燃性排ガスあるいは有害成分含有排ガスを通し、可燃性成分あるいは有害成分を酸化あるいは分解する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015-196698号公報
【特許文献2】特開2011-245426号公報
【特許文献3】特開2002-86104号公報
【特許文献4】特開昭61-153310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら従来は、過酸化水素を吹き込んだり、特殊な触媒を用いたり、酸化鉄を添付したり、マイクロ波を吸収する性質を有する材料からなる充填層を設ける必要があり、設備が複雑化するという問題点を有していた。
【0011】
本発明は前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、設備を複雑化せず、排ガス全体の温度を上げることなく、少ないエネルギーで未燃炭素分の分解を可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、廃棄物を熱分解してガス化する際に、熱分解ガス中に残留する未燃炭素分にマイクロ波を照射して、未燃炭素分を選択的に加熱し分解することにより前記課題を解決するものである。
【0013】
ここで、未燃炭素分をフィルターの表面に堆積させてマイクロ波を照射することができる。
【0014】
又、熱分解ガスに乗ってダクトの途中を流れている未燃炭素分に向けてマイクロ波を照射することができる。
【0015】
又、熱分解ガスに乗ってダクトの途中を流れている未燃炭素分、及び、フィルターの表面に堆積させた未燃炭素分の両方に向けてマイクロ波を照射することができる。
【0016】
本発明は、又、廃棄物を熱分解及びガス化させて熱分解ガスを発生させるガス化炉と、前記熱分解ガスを酸素および水蒸気により改質する改質炉と、該改質炉から排出される熱分解ガスの熱を回収して蒸気を発生させるボイラ設備とを有する廃棄物のガス化処理システムにおいて、前記ボイラ設備の出側に設けたフィルター設備と、該フィルター設備内に設けられたフィルターの表面に堆積する未燃炭素分に向けてマイクロ波を照射するマイクロ波発振装置と、を備えたことを特徴とする廃棄物のガス化処理システムを提供するものである。
【0017】
本発明は、又、廃棄物を熱分解及びガス化させて熱分解ガスを発生させるガス化炉と、前記熱分解ガスを酸素および水蒸気により改質する改質炉と、該改質炉から排出される熱分解ガスの熱を回収して蒸気を発生させるボイラ設備とを有する廃棄物のガス化処理システムにおいて、前記改質炉から前記ボイラ設備に至るダクト中を流れている熱分解ガスに向けてマイクロ波を照射するマイクロ波発振装置を備えたことを特徴とする廃棄物のガス化処理システムを提供するものである。
【0018】
ここで、前記熱分解ガス中のCO濃度を測定するCO濃度計と、該CO濃度計の出力に基づいて前記マイクロ波発振装置を動かすコントローラを更に備えることができる。
【発明の効果】
【0019】
チャーやタール、スートといった未燃炭素分は、マイクロ波を吸収しやすく、選択的に加熱される。従って、本発明により、設備を複雑化せず、排ガス全体の温度を上げることなく、少ないエネルギーで未燃炭素分を分解して、合成ガスの回収量を増大させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態の全体構成を模式的に示す構成図
【
図2】第1実施形態でマイクロ波をセラミックフィルターに照射している状態を示す平面図
【
図3】本発明の第2実施形態の全体構成を模式的に示す構成図
【
図4】本発明の第3実施形態の全体構成を模式的に示す構成図
【
図5】本発明の第4実施形態の全体構成を模式的に示す構成図
【
図6】本発明の第5実施形態の全体構成を模式的に示す構成図
【
図7】第5実施形態におけるダクトとマイクロ波発振装置の配置を示す管路図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に記載した内容により限定されるものではない。また、以下に記載した実施形態における構成要件には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。更に、以下に記載した実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせてもよいし、適宜選択して用いてもよい。
【0022】
本発明の第1実施形態に係るガス化処理システムは、
図1に示す如く、破砕機(図示省略)により所定のサイズに破砕処理された後、一般廃棄物やバイオマス資源が投入される流動床、例えばバブリング流動槽などを有するガス化炉10を備えている。このガス化炉10は、導入される空気又は酸素O
2によるバイオマス資源の部分燃焼により、例えば500~600℃の加熱状態とされ、又、バイオマス資源を部分的に排出するための水蒸気又は水H
2Oが投入される。これにより、投入されたバイオマス資源は、熱分解・ガス化する。ガス化炉10における熱分解・ガス化により生じた熱分解ガスは、タール、チャー、スート等の含炭素非ガス成分を同伴している。
【0023】
この熱分解ガスは引き続いて改質炉20に投入される。改質炉20には、熱分解ガス中に存在する含炭素非ガス成分及び炭化水素ガスを排出するための水蒸気又は水H2Oが供給されると共に、改質炉の温度を1000℃程度に上昇させ維持するための部分酸化を行うための空気又は酸素O2が供給される。
【0024】
改質炉20では、タール、チャー、スート等の含炭素非ガス成分及び熱分解ガスの部分燃焼により、1000~1200℃の加熱状態となり、タール、チャー、スート等の含炭素非ガス成分及び高分子量の炭化水素は、導入された水又は水蒸気H2Oと、以下に示すように反応し、これにより一酸化炭素CO及び水素H2が生じる(水蒸気改質反応)。
CmHn+nH2O→nCO+(m/2+n)H2 …(1)
【0025】
さらに、上記により生じた一酸化炭素COは、次式に従って、水又は水蒸気H2Oと反応して炭素ガスCO2及び水素ガスH2が生じる(水性ガスシフト反応)。
CO+H2O→CO2+H2 …(2)
【0026】
また、各成分濃度および温度によっては、(2)の逆反応も進行しうる(逆水性ガスシフト反応)。
【0027】
改質炉20において熱分解ガス等が改質反応した改質ガスは、次の熱回収装置30又は減温塔に供給される。
【0028】
熱回収装置30には、改質ガスを冷却するための循環水が供給され、この循環水は、改質ガスと熱交換することにより、蒸気とされる。
【0029】
熱回収装置30により熱回収された改質ガスは、例えばセラミックフィルター42を備えたフィルター設備40に供給され、このフィルター設備40中のセラミックフィルター42を通過する際に、改質ガス中に存在する不純物が取り除かれる。
【0030】
不純物が取り除かれた合成ガスは、図示しないスクラバー等でさらに洗浄されたのち、図示しない合成設備等により化学品に転用される。その他の利用方法としては、ガスエンジン等に供給され、ガスエンジン等では、供給された合成ガスを燃料として駆動し発電が行われる。
【0031】
本実施形態では、フィルター設備40のセラミックフィルター42の表面に未燃炭素分を堆積させ、マイクロ波発振装置50で発振したマイクロ波を、パージエアーが供給される導波管54を介してセラミックフィルター42の表面に照射して、セラミックフィルター42の表面に堆積している未燃炭素分を選択的に加熱し、熱分解する。これにより、チャー、タール、スートといった未燃炭素分が減少する。
【0032】
本実施形態では、
図2に示す如く、マイクロ波発振装置50のマイクロ波発振器を51、52の2つ設け、マイクロ波をセラミックフィルター42に局所的に照射することができるようにしている。
【0033】
これにより、未燃炭素が集まりやすいセラミックフィルター42に効率的にマイクロ波を照射することができる。
【0034】
なお、マイクロ波発振器は1つであってもよい。また、3つ以上でも良い。
【0035】
本発明の第1実施形態においては、セラミックフィルター42が使用可能な温度までガス温度を下げる必要があるが、未燃炭素分を狭い範囲に集め、長時間マイクロ波を照射することができる。
【0036】
次に、本発明の第2実施形態を
図3に示す。この第2実施形態は、第1実施形態と同様のガス化処理システムにおいて、フィルター設備40の出側の合成ガス中の一酸化炭素CO濃度を測定するCO濃度計60を設け、CO濃度が高く、未燃分が多くなっていると想定される時にのみコントローラ62によりマイクロ波発振装置50からマイクロ波を発振するようにしている。
【0037】
本実施形態によれば、マイクロ波発振に必要なエネルギーを削減することができる。なお、CO濃度計60を設けることなく、コントローラ62によりマイクロ波を定期的(間欠的)に照射することで、必要なエネルギーを削減することもできる。
【0038】
次に本発明の第3実施形態を
図4に示す。この第3実施形態は、第1実施形態と同様のガス化処理システムにおいて、フィルター設備40から廃棄される飛灰の一部をフィルター設備40の入側に循環するようにしたものである。
【0039】
本実施形態によれば、フィルター設備40から廃棄される未燃分の一部を循環させ、再度処理することによって、未燃炭素分を確実に減らすことができる。
【0040】
次に本発明の第4実施形態を
図5に示す。この第4実施形態は、第1実施形態と同様のガス化処理システムにおいて、フィルター設備40の入側に珪藻土を吹込むようにしたものである。
【0041】
本実施形態によれば、珪藻土を吹込むことにより、フィルター設備40に入るガスの温度を下げることができ、高温によるセラミックフィルター42への溶融固着を防止することができる。
【0042】
次に本発明の第5実施形態を
図6に示す。本実施形態は、第1実施形態と同様のガス化処理システムにおいて、改質炉20から熱回収装置30に至るダクト(煙道とも称する)22の途中に、
図7に詳細に示す如く、マイクロ波発振装置70から、パージエアーが供給される導波管74を介してマイクロ波を照射したものである。
【0043】
ここでは、マイクロ波の進行方向にダクト22を長く取ると共に、マイクロ波がダクト22のマイクロ波発振装置70の対面(図の底面)の壁に当たって反射するようにしている。
【0044】
マイクロ波発振装置70は、流れている未燃炭素にマイクロ波を照射するため、マイクロ波発振装置50に比べて、それぞれの未燃炭素に対して短時間しかマイクロ波を照射できないため、より強いマイクロ波発振器を用いることが望ましい。
【0045】
なお、マイクロ波発振装置70の配置位置は、改質炉20と熱回収装置30の間に限定されず、例えば熱回収装置30とフィルター設備40の間に配設してもよい。
【0046】
本実施形態においては、第1実施形態のマイクロ波発振装置50と、本実施形態のマイクロ波発振装置70を併用しているので、未燃炭素分を確実に分解することができる。
【0047】
なお、第5実施形態でマイクロ波発振装置50を省略して、設備費増を抑えることも可能である。
【0048】
本発明の適用対象は
図1に例示するような構成のガス化処理システムに限定されず、他の構成のガス化処理システムにも同様に適用可能である。
【0049】
フィルターの種類もセラミックフィルターに限定されない。
【符号の説明】
【0050】
10…ガス化炉
20…改質炉
22…ダクト
30…熱回収装置
40…フィルター設備
42…セラミックフィルター
50、70…マイクロ波発振装置
51、52…マイクロ波発振器
54、74…導波管
60…CO濃度計
62…コントローラ