(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135091
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】超音波治療装置
(51)【国際特許分類】
A61N 7/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A61N7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045609
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】720007925
【氏名又は名称】ソニア・セラピューティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植山 剛
(72)【発明者】
【氏名】岡本 淳
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160JJ33
4C160JJ36
4C160JJ50
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、超音波治療装置の超音波プローブに与えられる力を、簡単な構成によって測定すること、あるいは、超音波治療装置の超音波プローブに与えられる力を測定するセンサが異常であるか否かを判定することである。
【解決手段】HIFU照射システム100は、振動子筐体16と、振動子筐体16に固定されたHIFU振動子ユニット12と、先端部を患者側に向けて振動子筐体16に取り付けられた超音波プローブ10と、超音波プローブ10が備える超音波振動子のインピーダンスを測定するインピーダンス測定器52と、振動子筐体16を搬送するロボットアーム18と、HIFU振動子ユニット12、超音波プローブ10、インピーダンス測定器52およびロボットアーム18を制御するシステム制御部22と、を備えている。システム制御部22は、上記インピーダンスに基づいて、超音波プローブ10に与えられる押し付け力を測定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、当該筐体に固定されたHIFU振動子ユニットと、
先端部を患者側に向けて前記筐体に取り付けられた超音波プローブと、
前記超音波プローブが備える超音波振動子のインピーダンスを測定するインピーダンス測定器と、
前記筐体を搬送する搬送機構と、
前記HIFU振動子ユニット、前記超音波プローブ、前記インピーダンス測定器および前記搬送機構を制御するシステム制御部と、を備え、
前記システム制御部は、
前記インピーダンスに基づいて、前記超音波プローブに与えられる押し付け力を測定することを特徴とする超音波治療装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波治療装置であって、
前記超音波プローブに与えられる押し付け力を検出する力センサを備え、
前記システム制御部は、
前記力センサによって検出された押し付け力と、前記インピーダンスとに基づいて、前記力センサが異常であるか否かを判定することを特徴とする超音波治療装置。
【請求項3】
筐体と、当該筐体に固定されたHIFU振動子ユニットと、
先端部を患者側に向けて前記筐体に取り付けられた超音波プローブと、
前記超音波プローブが備える超音波振動子のインピーダンスを測定するインピーダンス測定器と、
前記筐体を搬送する搬送機構と、
前記HIFU振動子ユニット、前記超音波プローブ、前記インピーダンス測定器および前記搬送機構を制御するシステム制御部と、
前記超音波プローブに与えられる押し付け力を検出する力センサと、を備え、
前記システム制御部は、
前記力センサによって検出された押し付け力と、前記インピーダンスとに基づいて、前記力センサが異常であるか否かを判定することを特徴とする超音波治療装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の超音波治療装置であって、
前記システム制御部は、
前記力センサによって測定された押し付け力が予め定められた閾値を超えるときは、前記搬送機構による前記筐体の搬送を停止することを特徴とする超音波治療装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超音波治療装置であって、
前記超音波プローブに送信信号を送信し、前記超音波プローブで受信された超音波に応じた受信信号を前記超音波プローブから取得する送受信回路と、
前記インピーダンスを測定するときに、前記インピーダンス測定器を前記超音波振動子に電気的に接続するスイッチ回路であって、前記送受信回路が前記送信信号を前記超音波振動子に出力するとき、および前記送受信回路が前記受信信号を前記超音波振動子から取得するときに、前記インピーダンス測定器を前記超音波振動子の少なくとも一端から電気的に切り離すスイッチ回路と、を備えることを特徴とする超音波治療装置。
【請求項6】
請求項4に記載の超音波治療装置であって、
前記超音波プローブに送信信号を送信し、前記超音波プローブで受信された超音波に応じた受信信号を前記超音波プローブから取得する送受信回路と、
前記インピーダンスを測定するときに、前記インピーダンス測定器を前記超音波振動子に電気的に接続するスイッチ回路であって、前記送受信回路が前記送信信号を前記超音波振動子に出力するとき、および前記送受信回路が前記受信信号を前記超音波振動子から取得するときに、前記インピーダンス測定器を前記超音波振動子の少なくとも一端から電気的に切り離すスイッチ回路と、を備えることを特徴とする超音波治療装置。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超音波治療装置であって、
前記筐体および前記超音波プローブを患者側から覆い、内部に液体を保持するカップリング袋を備えることを特徴とする超音波治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波治療装置に関し、特に、超音波プローブの状態の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
高密度焦点式超音波療法を用いた治療装置が広く用いられている。この治療装置は、HIFU照射装置あるいはHIFU照射システムと称され(High Intensity Focused Ultrasound)、治療部位に超音波を照射して組織を壊死させる。
【0003】
一般に、HIFU照射装置は、椀状の面に配置された複数の治療用超音波振動子(以下、治療用振動子という)を備えている。複数の治療用振動子は、それぞれから発せられた超音波が一点に照射され焦点を形成するように配置されている。治療の際には、焦点の位置が治療部位に合わせられ超音波が照射される。照射位置の確認には、超音波画像上に焦点を表す超音波診断装置が用いられる。
【0004】
以下の特許文献1には、Bモード画像(断層画像)を表示する超音波診断装置を用いて焦点の位置を観測する超音波治療装置が記載されている。この装置では、組織に影響のない弱いレベルの超音波が治療用振動子から発せられると共に、超音波プローブによる超音波の送受信によって断層画像が表示される。被検体の組織の音響特性は組織の温度変化に応じて変化するため、断層画像には焦点の位置が輝度の強弱によって示される。
【0005】
特許文献2には、ロボットアームによって治療ヘッドの位置および姿勢が制御される治療装置が記載されている。治療ヘッドは、治療用の超音波を治療対象に照射する照射部と、治療対象の画像を取得するための診断プローブとを備えている。この治療装置は、治療ヘッドに加わる力を検出する2つの力覚センサを備えており、各力覚センサの検出結果に基づき、2つの力覚センサのうち少なくとも一方が異常であるか否かを判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-71069号公報
【特許文献2】特開2020-39397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
HIFU照射装置では、必要以上に大きい力で超音波プローブが患者に押し付けられていないかが判定されることがある。そのため、HIFU照射装置には、特許文献2に示されているように、超音波プローブに加わる力を検出する圧力センサが用いられることがある。この圧力センサには、歪みセンサ等が用いられる。一般に、歪みセンサは高価であり、構造上、衝撃等によって異常が生じたり寿命が短縮されたりするという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、超音波治療装置の超音波プローブに与えられる力を簡単な構成によって測定すること、あるいは、超音波治療装置の超音波プローブに与えられる力を測定するセンサが異常であるか否かを判定することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、筐体と、当該筐体に固定されたHIFU振動子ユニットと、先端部を患者側に向けて前記筐体に取り付けられた超音波プローブと、前記超音波プローブが備える超音波振動子のインピーダンスを測定するインピーダンス測定器と、前記筐体を搬送する搬送機構と、前記HIFU振動子ユニット、前記超音波プローブ、前記インピーダンス測定器および前記搬送機構を制御するシステム制御部と、を備え、前記システム制御部は、前記インピーダンスに基づいて、前記超音波プローブに与えられる押し付け力を測定することを特徴とする。
【0010】
望ましくは、前記超音波プローブに与えられる押し付け力を検出する力センサを備え、前記システム制御部は、前記力センサによって検出された押し付け力と、前記インピーダンスとに基づいて、前記力センサが異常であるか否かを判定する。
【0011】
また、本発明は、筐体と、当該筐体に固定されたHIFU振動子ユニットと、先端部を患者側に向けて前記筐体に取り付けられた超音波プローブと、前記超音波プローブが備える超音波振動子のインピーダンスを測定するインピーダンス測定器と、前記筐体を搬送する搬送機構と、前記HIFU振動子ユニット、前記超音波プローブ、前記インピーダンス測定器および前記搬送機構を制御するシステム制御部と、前記超音波プローブに与えられる押し付け力を検出する力センサと、を備え、前記システム制御部は、前記力センサによって検出された押し付け力と、前記インピーダンスとに基づいて、前記力センサが異常であるか否かを判定することを特徴とする。
【0012】
望ましくは、前記システム制御部は、前記力センサによって測定された押し付け力が予め定められた閾値を超えるときは、前記搬送機構による前記筐体の搬送を停止する。
【0013】
望ましくは、前記超音波プローブに送信信号を送信し、前記超音波プローブで受信された超音波に応じた受信信号を前記超音波プローブから取得する送受信回路と、前記インピーダンスを測定するときに、前記インピーダンス測定器を前記超音波振動子に電気的に接続するスイッチ回路であって、前記送受信回路が前記送信信号を前記超音波振動子に出力するとき、および前記送受信回路が前記受信信号を前記超音波振動子から取得するときに、前記インピーダンス測定器を前記超音波振動子の少なくとも一端から電気的に切り離すスイッチ回路と、を備える。
【0014】
望ましくは、前記筐体および前記超音波プローブを患者側から覆い、内部に液体を保持するカップリング袋を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、超音波治療装置の超音波プローブに与えられる力を、簡単な構成によって測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】HIFU照射システムの構成を示す図である。
【
図3】HIFU照射システムで実行される第1処理のフローチャートである。
【
図4】HIFU照射システムで実行される第2処理のフローチャートである。
【
図5】コントローラが、超音波測定モードの処理と、インピーダンス測定モードの処理を時分割で実行する場合のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
各図を参照して本発明の実施形態について説明する。複数の図面に示された同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。また、本明細書における上下等の方向を示す用語は、図面における方向を示す。これらの方向を示す用語は説明の便宜上のものであり、各構成要素を配置する際の姿勢を限定するものではない。
【0018】
図1には、本発明の実施形態に係るHIFU照射システム100(超音波治療装置)の構成が示されている。HIFU照射システム100は、超音波プローブ10、HIFU振動子ユニット12、カップリング袋14、ロボットアーム18、力センサ34、システム制御部22および表示装置24を備えている。
【0019】
HIFU振動子ユニット12は、開口が下方に向けられた椀形状の振動子筐体16と、振動子筐体16に固定された複数の治療用振動子2を備えている。振動子筐体16の形状は錐体の側面と同様の形状であってもよい。ここで、錐体とは、空間内の1点から底面に延びる直線の集合によって形成される立体形状をいう。各治療用振動子2は、各治療用振動子2が超音波を発したときに、振動子筐体16の下方の治療基準点Pで、超音波の強度が強められるように振動子筐体16に固定されている。すなわち、各治療用振動子2は、治療基準点Pに焦点を形成するように振動子筐体16に固定されている。
【0020】
超音波プローブ10は、振動子筐体16の下方、かつ、治療基準点Pの上方の位置で超音波が送受信されるように、振動子筐体16に取り付けられている。本実施形態では、振動子筐体16の頂点部を超音波プローブ10が上下方向に貫通し、超音波を送受信するプローブ先端部32が下方、すなわち、患者30側に向けられている。超音波プローブ10には方向性があり、超音波プローブ10の構造に応じた方向に面する観測面で、超音波が送受信される。超音波プローブ10は、上下方向に移動自在であってもよい。また、超音波プローブ10は、長手方向の軸を中心に回転自在であってもよい。
【0021】
HIFU振動子ユニット12の下方には、各治療用振動子2と患者30との間、および超音波プローブ10と患者30との間の音響インピーダンスを整合させるカップリング袋14が設けられている。カップリング袋14は、水等の液体が充填された袋であってよい。カップリング袋14は、振動子筐体16および超音波プローブ10を患者30側から覆い、内部に液体を保持する。カップリング袋14は、超音波プローブ10と患者30との間に液体を保持する。カップリング袋14は、光を透過する材料で形成されており、透明または半透明である。カップリング袋14の外側からは、超音波プローブ10が見通せるようになっている。
【0022】
超音波プローブ10、HIFU振動子ユニット12、およびカップリング袋14は、搬送機構としてのロボットアーム18の先端部に取り付けられている。ロボットアーム18は、関節18bによって接続された複数のアーム18aから構成されており、関節18bを介してシステム制御部22の筐体に取り付けられている。各アーム18aが関節18bを回転軸として揺動することで、ロボットアーム18は、超音波プローブ10、HIFU振動子ユニット12およびカップリング袋14を含む可動体20を搬送する。
【0023】
ロボットアーム18の先端部と、超音波プローブ10との接触部には、力センサ34が設けられている。力センサ34は、ロボットアーム18から超音波プローブ10に与えられる押し付け力を検出する。力センサ34には、圧力が与えられることで、自らが出力する検出信号が変化する歪みセンサ等が用いられてよい。この検出信号は、例えば、歪みセンサの素子定数に応じて歪みセンサに流れる電流であってよい。この場合、圧力の変化に応じて歪みセンサの素子定数が変化し、検出信号としての電流が変化する。力センサ34は、システム制御部22に接続されており、検出信号をシステム制御部22に出力する。
【0024】
システム制御部22は、HIFU制御部26およびロボット制御部28を備えている。HIFU制御部26は、コンピュータ、超音波プローブ10を制御する電気回路、およびHIFU振動子ユニット12を制御する電気回路を備えている。HIFU制御部26が備えるコンピュータは、業務用コンピュータ、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ等であってよい。コンピュータはプログラムを実行することで、各画像を生成する処理や、各画像を表示する処理を実行する。HIFU制御部26には、ユーザがHIFU照射システム100を操作するための操作機器(図示せず)が接続されている。操作機器は、マウス、表示装置24と一体化されたタッチパネル、スイッチ、キーボード等を含んでよい。
【0025】
HIFU制御部26は、超音波プローブ10およびHIFU振動子ユニット12を動作させるための処理を実行する。例えば、HIFU制御部26は、超音波プローブ10に超音波を送受信させ、超音波プローブ10で受信された超音波に基づく受信信号に基づいて、Bモード画像データを生成し、表示装置24にBモード画像を表示させる。また、HIFU制御部26は、HIFU振動子ユニット12が備える各治療用振動子2に治療用の超音波を送信させる。
【0026】
HIFU制御部26は、さらに、力センサ34から出力される検出信号に基づいて、ロボットアーム18から超音波プローブ10に与えられる押し付け力を測定する。
【0027】
ロボット制御部28は、HIFU制御部26の制御に応じてロボットアーム18を制御し、ロボットアーム18に可動体20を搬送させてよい。また、ロボット制御部28は操作機器を備えてもよい。この場合、ロボット制御部28は、ユーザによる操作機器の操作に応じてロボットアーム18を制御してもよい。
【0028】
高密度焦点式超音波療法を用いた治療について説明する。治療用の超音波がHIFU振動子ユニット12から患者30に照射される前には、以下のような位置決め処理が実行されてよい。HIFU制御部26は、各治療用振動子2に、治療時よりも強度が小さい超音波を送信させる。超音波プローブ10の位置および姿勢は、超音波プローブ10の観測面が、患者30の観測対象面に一致する位置および姿勢に設定される。HIFU制御部26は、患者30の観測対象面で超音波プローブ10に超音波ビームを走査させBモード画像データを取得する。HIFU制御部26は、Bモード画像を表示装置24に表示させる。施術者としてのユーザは、表示装置24に表示されたBモード画像を参照して、HIFU振動子ユニット12から送信される超音波の焦点と患部の位置との相違を確認する。
【0029】
ユーザは、焦点の位置と患部の位置との相違が許容範囲内でないときは、ロボットアーム18を動作させて超音波プローブ10およびHIFU振動子ユニット12の位置または姿勢を変更する。ユーザは、焦点の位置と患部の位置とが一致していることを確認した後に、HIFU制御部26に対して治療のための操作を行う。HIFU制御部26は、ユーザによる操作に応じて、治療に必要な強度を有する治療用超音波を各治療用振動子2に送信させる。これによって、焦点において生体組織が焼灼され、治療が施される。
【0030】
本実施形態に係るHIFU照射システム100では、力センサ34の他、ロボットアーム18から超音波プローブ10に与えられる押し付け力が超音波プローブ10を用いて求められる。超音波プローブ10は、複数のイメージング用超音波振動子(以下、イメージング用振動子という)を備えている。Bモード画像データを生成する場合、HIFU制御部26は、各イメージング用振動子に送信信号を出力し、各イメージング振動子で受信された超音波に基づき、各イメージング用振動子から個別に出力された振動子受信信号を取得する。
【0031】
一方、押し付け力を測定する場合、HIFU制御部26は、各イメージング用振動子への送信信号の出力を停止し、複数のイメージング用振動子のうちいずれかのインピーダンスを測定する。HIFU制御部26は、測定されたインピーダンスに基づいて押し付け力を測定する。
【0032】
図2には、HIFU制御部26の構成例が超音波プローブ10と共に示されている。HIFU制御部26は、送受信回路54、インピーダンス測定器52、スイッチ回路56およびコントローラ50を備えている。スイッチ回路56は、コントローラ50の制御に応じて、超音波プローブ10をインピーダンス測定器52または送受信回路54のいずれか一方に接続する。
【0033】
HIFU制御部26は、超音波測定モードまたはインピーダンス測定モードのいずれかの動作モードで動作する。超音波測定モードは、高密度焦点式超音波療法を用いた治療においてBモード画像を取得するための動作モードである。超音波測定モードで動作する場合、コントローラ50は、スイッチ回路56を制御して、超音波プローブ10を送受信回路54に接続する。送受信回路54は、コントローラ50の制御に従って、送信信号を超音波プローブ10の各イメージング用振動子に出力する。超音波プローブ10で受信された超音波に基づき各イメージング用振動子からは、振動子受信信号が送受信回路54に出力される。送受信回路54は、各イメージング用振動子から出力された振動子受信信号に対して整相加算処理等の合成処理を施して受信信号を生成し、受信信号をコントローラ50に出力する。コントローラ50は、受信信号に基づいて、Bモード画像データを生成する。
【0034】
インピーダンス測定モードは、超音波プローブ10に含まれるイメージング用振動子のインピーダンスを測定するモードである。インピーダンス測定モードで動作する場合、コントローラ50は、スイッチ回路56を制御して、超音波プローブ10に含まれる複数のイメージング用振動子のうちの1つであるインピーダンス測定用振動子をインピーダンス測定器52に接続する。
【0035】
インピーダンス測定器52は、発振器58、電流計60および電圧計62を備えている。超音波プローブ10がインピーダンス測定器52に接続された状態では、発振器58の一対の出力端子のうちの一方は、インピーダンス測定用振動子の一端に接続される。発振器58の一対の出力端子のうちの他方は、電流計60を介してインピーダンス測定用振動子の他端に接続される。また、電圧計62はインピーダンス測定用振動子の両端に接続される。
【0036】
発振器58は、インピーダンス測定用振動子に交流電圧を印加する。電圧計62は、インピーダンス測定用振動子の両端の交流電圧を測定し、電圧測定値をコントローラ50に出力する。電流計60は、インピーダンス測定用振動子に流れる交流電流を測定し、電流測定値をコントローラ50に出力する。コントローラ50は、電圧測定値を電流測定値で除すことで、インピーダンス測定用振動子のインピーダンスを求める。
【0037】
コントローラ50は力測定器として動作する。すなわち、コントローラ50は、インピーダンス測定用振動子のインピーダンスと、押し付け力とを対応付けた対応テーブルを予め記憶している。コントローラ50は、電圧測定値および電流測定値に基づいて求めたインピーダンスと、対応テーブルに基づいて押し付け力を求める。
【0038】
この動作をスイッチ回路56の動作の観点から見ると、スイッチ回路56は、コントローラ50がインピーダンス測定モードで動作する場合には、インピーダンス測定器52をインピーダンス測定用振動子に電気的に接続する。すなわち、インピーダンス測定器52がインピーダンス測定用振動子(超音波振動子)のインピーダンスを測定するときには、スイッチ回路56は、インピーダンス測定器52をインピーダンス測定用振動子に電気的に接続する。
【0039】
スイッチ回路56は、コントローラ50が超音波測定モードで動作する場合には、インピーダンス測定器52をイメージング用振動子の少なくとも一端から電気的に切り離す。すなわち、送受信回路54が送信信号をイメージング用振動子(超音波振動子)に出力するとき、および送受信回路54が振動子受信信号(受信信号)をイメージング用振動子から取得するときには、スイッチ回路56は、インピーダンス測定器52をイメージング用振動子の少なくとも一端から電気的に切り離す。
【0040】
上記では、超音波プローブ10に含まれる複数のイメージング用振動子のうちの1つをインピーダンス測定用振動子として用いる処理について説明した。このような処理の他、超音波プローブ10に含まれる複数のイメージング用振動子のうちの複数のものをインピーダンス測定用振動子として用いる処理が実行されてもよい。この場合、スイッチ回路56は、複数のインピーダンス測定用振動子を直列に接続したものを発振器58に接続してもよいし、並列に接続したものを発振器58に接続してもよい。また、スイッチ回路56は、複数のインピーダンス測定用振動子のうち一部を直列接続し、その直列接続したものに残りを並列接続したものを発振器58に接続してもよい。
【0041】
図3には、HIFU照射システム100で実行される第1処理のフローチャートが示されている。最初にコントローラ50は、力センサ34から出力された検出信号に基づいて押し付け力F1を測定し(S101)、押し付け力F1が予め定められた第1閾値以下であるか否かを判定する(S102)。ここで、第1閾値は、押し付け力F1が第1閾値以下である場合に、超音波プローブ10に与えられる力、あるいは、超音波プローブ10が患者30を押し付ける力が正常であるという条件に従って定められてよい。
【0042】
コントローラ50は、押し付け力F1が第1閾値以下であるときは、可動体20が停止状態であるか否かを判定する(S103)。ここで、可動体20が停止状態であるとは、ロボットアーム18の動作が停止し、かつ、超音波プローブ10が振動子筐体16に対して動かない状態をいう。コントローラ50は、可動体20が停止状態であるときは、可動体20の停止状態を解除する(S104)。すなわち、コントローラ50は、ロボットアーム18が動作すること、または、超音波プローブ10が振動子筐体16に対して上下運動をすること、若しくは長手方向の回転軸を中心に回転運動することを可能とする。可動体20が停止状態でないときは、コントローラ50は、ステップS101の処理に戻る。
【0043】
一方、押し付け力F1が第1閾値を超えるときは、コントローラ50は、可動体20を停止状態とし(S105)、押し付け力F1についての異常表示をする(S106)。すなわち、コントローラ50は、超音波プローブ10に与えられる押し付け力が異常であることを示す情報を、表示装置24に表示させる。
【0044】
第1処理によれば、力センサ34の検出信号に基づいて測定された押し付け力F1が第1閾値以下であるときは、高密度焦点式超音波療法を用いた治療のためにロボットアーム18および超音波プローブ10が運動可能な状態となる。一方、押し付け力F1が第1閾値を超えるときは可動体20が停止状態となる。さらに、超音波プローブ10に与えられる押し付け力が異常であることを示す情報がユーザに示される。これによって、超音波プローブ10が不必要に強い力で患者30に押し付けられた状態でロボットアーム18や超音波プローブ10が駆動されることが回避される。
【0045】
図4には、HIFU照射システム100で実行される第2処理のフローチャートが示されている。第2処理は、第1処理と並行して行われる。最初にコントローラ50は、インピーダンス測定用振動子のインピーダンスを測定し(S201)、インピーダンスが予め定められた第2閾値以下であるか否かを判定する(S202)。ここで、第2閾値は、インピーダンスが第2閾値以下である場合に、超音波プローブ10に与えられる力、あるいは、超音波プローブ10が患者30を押し付ける力が正常であるという条件に従って定められてよい。
【0046】
コントローラ50は、インピーダンス測定用振動子のインピーダンスが第2閾値以下であるときは、インピーダンスの測定を停止する(S203)。所定の遅延時間が経過するまでの間、ユーザによってHIFU照射システム100に対する操作が行われる(S204)。インピーダンスの測定を停止してから所定の遅延時間が経過した後に(S204)、コントローラ50は、自らの動作モードが超音波測定モードに設定されているか、インピーダンス測定モードに設定されているかを判定する(S205)。
【0047】
コントローラ50は、自らの動作モードが超音波測定モードに設定されているときは、ステップS203に戻って、インピーダンスの測定が停止された状態を維持し、ステップS203以降の処理を実行する。
【0048】
コントローラ50は、自らの動作モードがインピーダンス測定モードに設定されているときは、ステップS201に戻り、再び、インピーダンス測定用振動子のインピーダンスを測定し、ステップS201以降の処理を実行する。
【0049】
一方、インピーダンス測定用振動子のインピーダンスが第2閾値以下であるときは、コントローラ50は、可動体20を停止状態とし(S207)、押し付け力についての異常表示をする(S208)。すなわち、コントローラ50は、超音波プローブ10に与えられる押し付け力が異常であることを示す情報を、表示装置24に表示させる。
【0050】
コントローラ50は、力センサ34から出力された検出信号に基づいて押し付け力F1を測定し(S209)、押し付け力F1が予め定められた第1閾値以下であるか否かを判定する(S210)。コントローラ50は、押し付け力F1が第1閾値以下であるときは、力センサ34が異常であると判定し、その情報を表示する(S211)。
【0051】
一方、コントローラ50は、押し付け力F1が第1閾値を超えるときは、ステップS201に戻り、再び、インピーダンス測定用振動子のインピーダンスを測定し、ステップS201以降の処理を実行する。
【0052】
このような第2処理によれば、インピーダンス測定用振動子のインピーダンスが第2閾値を超えるときは、可動体20が停止状態となる。インピーダンスが第2閾値を超える場合、超音波プローブ10に与えられる力が過大である可能性がある。したがって、超音波プローブ10が不必要に強い力で患者30に押し付けられた状態でロボットアーム18や超音波プローブ10が駆動されることが回避される。
【0053】
さらに、インピーダンス測定用振動子のインピーダンスが第2閾値を超える一方で、力センサ34による押し付け力F1が第1閾値以下であるときは、コントローラ50は、力センサ34が異常であると判定し、その情報を表示する。これによって、力センサ34の異常が検出されると共に、力センサ34に異常が生じたことがユーザに示される。
【0054】
HIFU照射システム100では、力センサ34を用いずにインピーダンス測定用振動子によって、押し付け力F2が随時測定されてもよい。この場合、Bモード画像データを生成する処理と、押し付け力F2を測定する処理とが時分割で行われてもよい。例えば、A時間帯およびB時間帯が時間軸上で交互に配列され、A時間帯において押し付け力F2が測定され、B時間帯においてBモード画像データが生成されてもよい。A時間帯は、Bモード画像の表示処理に影響を与えないように、B時間帯に比べて短くされる。コントローラ50は、例えば、自らが備えるクロック等によって、現時間帯が、A時間帯であるかB時間帯であるかを認識する。
【0055】
図5には、コントローラ50が、超音波測定モードの処理と、インピーダンス測定モードの処理を時分割で実行する場合のフローチャートが示されている。このフローチャートに基づく処理は、治療用の超音波がHIFU振動子ユニット12から患者30に照射される前の位置決め処理において実行されてよい。コントローラ50は、現時間帯がA時間帯であるかB時間帯であるかを判定する(S301)。コントローラ50は、現時間帯がB時間帯であるときは、超音波測定モードの制御を実行する(S302~S305)。
【0056】
スイッチ回路56は、コントローラ50の制御に従って、超音波プローブ10を送受信回路54に接続する(S302)。送受信回路54は、コントローラ50の制御に従って、超音波プローブ10によって超音波を送受信する(S303)。コントローラ50は、送受信回路54から出力された各振動子受信信号に基づいてBモード画像データを生成し(S304)、表示装置24にBモード画像を表示させる(S305)。
【0057】
コントローラ50は、現時間帯がA時間帯であるときは、インピーダンス測定モードの制御を実行する(S306~S310)。コントローラ50は、スイッチ回路56を制御して、インピーダンス測定用振動子を発振器58に接続する(S306)。コントローラ50は、電圧計62および電流計60から、それぞれ、電圧測定値および電流測定値を取得し(S307)、電圧測定値を電流測定値で除してインピーダンスを求める(S308)。コントローラ50は、インピーダンスに基づいて、押し付け力F2を測定し(S309)、押し付け力F2を表示装置24に表示させる(S310)。
【0058】
このような処理によれば、位置決め処理において、力センサ34を用いることなく、簡単な構成によって押し付け力F2が測定される。また、超音波測定モードの処理と、インピーダンス測定モードの処理とが時分割で実行される。そのため、位置決め処理において、Bモード画像と共に押し付け力F2がユーザによって確認される。これによって、超音波プローブ10を適切な力で患者30に押し付けながら、位置決め処理を実行することが容易となる。
【0059】
なお、HIFU制御部26が、超音波測定モードまたはインピーダンス測定モードのいずれの動作モードで動作するかは、ユーザによる操作によって決定されてもよい。例えば、位置決め処理では超音波測定モードの動作によって、表示装置24にBモード画像を表示させる動作が基本的な動作とされる。ユーザの操作に応じて動作モードが適宜、インピーダンス測定モードに設定されるような操作が行われる。動作モードがインピーダンス測定モードに設定されたときは、その直前に表示されていたBモード画像と共に押し付け力F2が表示装置24に表示されてもよい。
【0060】
[本発明の構成]
構成1:
筐体と、当該筐体に固定されたHIFU振動子ユニットと、
先端部を患者側に向けて前記筐体に取り付けられた超音波プローブと、
前記超音波プローブが備える超音波振動子のインピーダンスを測定するインピーダンス測定器と、
前記筐体を搬送する搬送機構と、
前記HIFU振動子ユニット、前記超音波プローブ、前記インピーダンス測定器および前記搬送機構を制御するシステム制御部と、を備え、
前記システム制御部は、
前記インピーダンスに基づいて、前記超音波プローブに与えられる押し付け力を測定することを特徴とする超音波治療装置。
構成2:
構成1に記載の超音波治療装置であって、
前記超音波プローブに与えられる押し付け力を検出する力センサを備え、
前記システム制御部は、
前記力センサによって検出された押し付け力と、前記インピーダンスとに基づいて、前記力センサが異常であるか否かを判定することを特徴とする超音波治療装置。
構成3:
筐体と、当該筐体に固定されたHIFU振動子ユニットと、
先端部を患者側に向けて前記筐体に取り付けられた超音波プローブと、
前記超音波プローブが備える超音波振動子のインピーダンスを測定するインピーダンス測定器と、
前記筐体を搬送する搬送機構と、
前記HIFU振動子ユニット、前記超音波プローブ、前記インピーダンス測定器および前記搬送機構を制御するシステム制御部と、
前記超音波プローブに与えられる押し付け力を検出する力センサと、を備え、
前記システム制御部は、
前記力センサによって検出された押し付け力と、前記インピーダンスとに基づいて、前記力センサが異常であるか否かを判定することを特徴とする超音波治療装置。
構成4:
構成2または構成3に記載の超音波治療装置であって、
前記システム制御部は、
前記力センサによって測定された押し付け力が予め定められた閾値を超えるときは、前記搬送機構による前記筐体の搬送を停止することを特徴とする超音波治療装置。
構成5:
構成1から構成4のいずれか1項に記載の超音波治療装置であって、
前記超音波プローブに送信信号を送信し、前記超音波プローブで受信された超音波に応じた受信信号を前記超音波プローブから取得する送受信回路と、
前記インピーダンスを測定するときに、前記インピーダンス測定器を前記超音波振動子に電気的に接続するスイッチ回路であって、前記送受信回路が前記送信信号を前記超音波振動子に出力するとき、および前記送受信回路が前記受信信号を前記超音波振動子から取得するときに、前記インピーダンス測定器を前記超音波振動子の少なくとも一端から電気的に切り離すスイッチ回路と、を備えることを特徴とする超音波治療装置。
構成6:
構成1から構成5のいずれか1項に記載の超音波治療装置であって、
前記筐体および前記超音波プローブを患者側から覆い、内部に液体を保持するカップリング袋を備えることを特徴とする超音波治療装置。
【符号の説明】
【0061】
2 治療用超音波振動子、10 超音波プローブ、12 HIFU振動子ユニット、14 カップリング袋、16 振動子筐体(筐体)、18 ロボットアーム(搬送機構)、18a アーム、18b 関節、20 可動体、22 システム制御部、24 表示装置、26 HIFU制御部、28 ロボット制御部、30 患者、32 プローブ先端部、34 力センサ、50 コントローラ、52 インピーダンス測定器、54 送受信回路、56 スイッチ回路、58 発振器、60 電圧計、62 電流計、100 HIFU照射システム。