(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135101
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】熱交換器および熱交換器の製造方法
(51)【国際特許分類】
F28F 3/00 20060101AFI20240927BHJP
F28F 19/06 20060101ALI20240927BHJP
F28F 21/08 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F28F3/00 311
F28F19/06 Z
F28F21/08 A
F28F21/08 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045622
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000183369
【氏名又は名称】住友精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】久野 正明
(72)【発明者】
【氏名】清水 昭之
(57)【要約】
【課題】異種の金属層を積層した積層構造の仕切板を採用した熱交換器において、金属層間での異種金属腐食の発生を抑制する。
【解決手段】この熱交換器100は、それぞれ流体を流通させる第1流路部10および第2流路部20と、第1流路部10と第2流路部20とにろう付けされ、第1流路部10と第2流路部20とを区画する仕切板30と、を備える。仕切板30は、第1金属層51と、第1金属層51よりも卑な金属からなり、第1金属層51の両面にそれぞれろう材層53a、53bを介して積層された一対の第2金属層52a、52bと、を含む積層板材である。仕切板30の外周端面31のうち他の部材と接合されていない非接合部NBにおいて、少なくとも第1金属層51の端面が露出せずに、第1金属層51と第2金属層52a、52bとの間のろう材層53a、53bと同一材料で、かつ、ろう材層53a、53bと連続した端面被覆層55により覆われている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ流体を流通させる第1流路部および第2流路部と、
前記第1流路部と前記第2流路部とにろう付けされ、前記第1流路部と前記第2流路部とを区画する仕切板と、を備え、
前記仕切板は、第1金属層と、前記第1金属層よりも卑な金属からなり、前記第1金属層の両面にそれぞれろう材層を介して積層された一対の第2金属層と、を含む積層板材であり、
前記仕切板の外周端面のうち他の部材と接合されていない非接合部において、少なくとも前記第1金属層の端面が露出せずに、前記第1金属層と前記第2金属層との間の前記ろう材層と同一材料で、かつ前記ろう材層と連続した端面被覆層により覆われている、熱交換器。
【請求項2】
前記端面被覆層は、前記第1金属層と前記第2金属層との間の前記ろう材層からはみ出した余剰ろう材により形成されている、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記仕切板の表面に沿った面内方向において、前記第1金属層の端面位置が、前記第2金属層の端面位置と面一となるか、または前記第2金属層の端面位置よりも前記仕切板の中央側に位置している、請求項1または2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記第1流路部および前記第2流路部は、それぞれ、流路の外周を区画するサイドバーと、前記流路内に配置されたフィン部材と、を含み、前記仕切板を介して前記第1流路部と前記第2流路部とが積層されることによりコアを構成しており、
前記仕切板の前記第1金属層の端面は、積層方向に隣接する前記第1流路部または前記第2流路部に含まれる前記サイドバーと、前記積層方向に重なる位置に配置されている、請求項3に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記第1流路部および前記第2流路部は、それぞれ、側端面の一部に、前記流体の出入口となる開口部を有し、
前記積層方向に並ぶ前記第1流路部、前記仕切板および前記第2流路部に跨がって、前記コアの側面を覆うように設けられ、前記第1流路部または前記第2流路部の前記開口部との間で前記流体を流通させるヘッダタンクをさらに備え、
前記仕切板の前記外周端面のうち前記端面被覆層により覆われた前記非接合部は、前記ヘッダタンクの内部に露出する端面部分を含んでいる、請求項4に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記端面被覆層は、前記非接合部において、前記第1金属層の端面のみならず、前記第2金属層のそれぞれの端面をさらに覆うように形成されている、請求項1または2に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記第1金属層の端面からの前記端面被覆層の被覆厚みが、0.1mm以上20mm以下である、請求項1または2に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記第1金属層は、チタンまたはチタン合金からなり、
前記第2金属層は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、
前記ろう材層は、前記第1金属層および前記第2金属層よりも低融点のアルミニウム合金からなる、請求項1または2に記載の熱交換器。
【請求項9】
第1金属層と、前記第1金属層よりも卑な金属からなり、前記第1金属層の両面にそれぞれ第1ろう材層を介して積層された一対の第2金属層と、を含む積層板材である仕切板を、第2ろう材層を介して第1流路部と第2流路部との間に配置する工程と、
前記第1流路部、前記仕切板の各層および前記第2流路部をろう付けする工程と、を備え、
前記ろう付けする工程において、前記第1ろう材層から溶融した余剰ろう材を前記仕切板の外周端面へはみ出させることにより、前記外周端面のうち他の部材と接合されない非接合部において、少なくとも前記第1金属層の端面を露出しないように覆う端面被覆層を形成する、熱交換器の製造方法。
【請求項10】
前記ろう付けする工程において、前記仕切板の積層方向における前記端面被覆層の高さが、ろう付け後の前記第1金属層と、前記第1金属層にそれぞれ接合した一対の前記第1ろう材層の厚みとの合計よりも大きくなるように、前記端面被覆層を形成する、請求項9に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項11】
前記ろう付けする工程において、前記第1金属層の端面および一対の前記第2金属層のそれぞれの端面を被覆するように、前記端面被覆層を形成する、請求項10に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項12】
前記仕切板は、積層方向に順番に、前記第2ろう材層、前記第2金属層、前記第1ろう材層、前記第1金属層、前記第1ろう材層、前記第2金属層、前記第2ろう材層、が積層されたクラッド材であり、
ろう付け前の前記第1ろう材層の面積Sと、ろう付け前の前記第1ろう材層の厚みtrと、前記第1ろう材層における余剰ろう材の割合Rと、前記端面被覆層の体積設計値Vが、
(2×S×tr×R)>V
という関係を満たすように、前記第1ろう材層の厚みtrを設定する、請求項9~11のいずれか1項に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項13】
第1金属層の両面に、前記第1金属層よりも卑な金属からなる一対の第2金属層を、それぞれ第1ろう材層を介して積層配置することにより、板状の積層体を組み立てる工程と、
前記積層体を仕切板として、第2ろう材層を介して第1流路部と第2流路部との間に配置する工程と、
前記第1流路部、前記仕切板の各層および前記第2流路部をろう付けする工程と、を備え、
前記積層体を組み立てる工程において、前記第1ろう材層の外周部が前記第1金属層の外周部よりも外側にはみ出るように、前記第1ろう材層を配置し、
前記ろう付けする工程において、前記第1ろう材層の外周部から溶融したろう材により、前記仕切板の外周端面のうち他の部材と接合されない非接合部において、少なくとも前記第1金属層の端面を露出しないように覆う端面被覆層を形成する、熱交換器の製造方法。
【請求項14】
前記積層体を組み立てる工程において、シート状の前記第1ろう材層によって前記第1金属層の端面を包囲する、請求項13に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項15】
前記仕切板の表面に沿った面内方向において、前記第1金属層の端面位置が、前記第2金属層の端面位置と面一となるか、または前記第2金属層の端面位置よりも前記仕切板の中央側に位置している、請求項9または13に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項16】
前記ろう付けする工程において、前記第1金属層の端面からの前記端面被覆層の被覆厚みが、0.1mm以上20mm以下となるように、前記端面被覆層を形成する、請求項9または13に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項17】
前記第1金属層は、チタンまたはチタン合金からなり、
前記第2金属層は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、
前記第1ろう材層は、前記第1金属層および前記第2金属層よりも低融点のアルミニウム合金からなる、請求項9または13に記載の熱交換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱交換器に関し、特に、異種の金属層を積層した積層構造の仕切板を備えた熱交換器およびそのような熱交換器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、異種の金属層を積層した積層構造の仕切板を備えた熱交換器が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、TiまたはTi合金材層を芯材とし、芯材の両主面をAlまたはAl合金材層でそれぞれ被覆したクラッド材を、チューブプレート(仕切板)として利用した熱交換器が開示されている。クラッド材の利用は、熱交換器のろう付け一体化が容易で、熱交換性能を損なうことなく、かつ耐食性を向上させることを実現するものである。
【0004】
そして、上記特許文献1では、クラッド材のチューブプレートを用いて熱交換器のろう付け一体化を行う場合に、クラッド材のろう付け端面においてTi芯材が露出する構成であると、ろう付け不良を生じることがあるという発見に基づいて、クラッド材の端面と他の部材との接合を、Al合金ろう材で行い、芯材の露出または芯材との接合がないようにすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、Al/Ti/Alクラッド材からなる仕切板のろう付け端面でのろう付け不良に着目し、他の部材との接合においてTi芯材を露出させずにAl合金ろう材を介在させる構成としているが、本願発明者らが鋭意検討したところ、上記のろう付け端面(接合部)とは別に、仕切板の非接合部において異種の金属層が露出している場合に、金属層の境界部分で腐食が促進されるという知見を得た。
【0007】
具体的には、仕切板の外周端面の露出箇所(つまり、他の部材と接合されていない非接合部)において、複数の異種の金属層が露出している場合、熱交換器の稼働中にそれらの異種の金属層に跨がって水など(つまり、電解液)が付着すると、異種金属腐食(ガルバニック腐食)が発生して相対的に卑な金属からなる金属層の腐食が促進されてしまう。
【0008】
そのため、異種の金属層を積層した積層構造の仕切板を採用した熱交換器において、金属層間での異種金属腐食の発生を抑制することが望まれる。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、異種の金属層を積層した積層構造の仕切板を採用した熱交換器において、金属層間での異種金属腐食の発生を抑制することが可能な熱交換器およびそのような熱交換器の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1の発明による熱交換器は、それぞれ流体を流通させる第1流路部および第2流路部と、第1流路部と第2流路部とにろう付けされ、第1流路部と第2流路部とを区画する仕切板と、を備え、仕切板は、第1金属層と、第1金属層よりも卑な金属からなり、第1金属層の両面にそれぞれろう材層を介して積層された一対の第2金属層と、を含む積層板材であり、仕切板の外周端面のうち他の部材と接合されていない非接合部において、少なくとも第1金属層の端面が露出せずに、第1金属層と第2金属層との間のろう材層と同一材料で、かつ、ろう材層と連続した端面被覆層により覆われている。なお、「卑な金属」とは、自然電位が対比対象(ここでは「第1金属層」)の自然電位よりも低い金属のことを意味する。
【0011】
第1の発明による熱交換器では、上記のように、仕切板の外周端面のうち他の部材と接合されていない非接合部において、少なくとも第1金属層の端面が露出せずに、第1金属層と第2金属層との間のろう材層と同一材料で、かつ、ろう材層と連続した端面被覆層により覆われている。これにより、仕切板の外周端面の非接合部において、第1金属層が露出することなく、ろう材と同一材料からなる端面被覆層により覆われるので、第1金属層と第2金属層との間で異種金属腐食が生じることを回避できる。なお、仕切板の外周端面のうち、他の部材との接合部は、当該他の部材との接合によって第1金属層および第2金属層が覆われるので、接合部において異種金属腐食の原因となる水などが第1金属層および第2金属層の両方に跨がって付着することはない。以上から、異種の金属層を積層した積層構造の仕切板を採用した熱交換器において、金属層間での異種金属腐食の発生を抑制することができる。
【0012】
上記第1の発明による熱交換器において、好ましくは、端面被覆層は、第1金属層と第2金属層との間のろう材層からはみ出した余剰ろう材により形成されている。このように構成すれば、ろう付けの際に、第1金属層と第2金属層との間のろう材層から余剰ろう材をはみ出させる(溶融させて流出させる)ことで第1金属層を被覆する端面被覆層を形成できる。そのため、第1金属層と第2金属層との間のろう材層とは別に、第1金属層の端面にろう材を設けて端面被覆層を形成する場合と比べて、端面被覆層を形成するための作業負荷(工数の増加)を抑制できる。
【0013】
上記第1の発明による熱交換器において、好ましくは、仕切板の表面に沿った面内方向において、第1金属層の端面位置が、第2金属層の端面位置と面一となるか、または第2金属層の端面位置よりも仕切板の中央側に位置している。このように構成すれば、第1金属層の端面位置が仕切板から外側へ突出しないので、より少ないろう材量で、より確実に、第1金属層を被覆できる。ここで、ろう材が、ろう付けに必要な量よりも過度に多くなると、第1又は第2金属層や、第1流路部または第2流路部の構成部材がろう材に浸食(金属の一部がろう材中に溶解すること)される可能性が生じるので、余剰ろう材の量を過度に多くならないように低減できることは、熱交換器の品質安定化に大きく寄与する。
【0014】
この場合において、好ましくは、第1流路部および第2流路部は、それぞれ、流路の外周を区画するサイドバーと、流路内に配置されたフィン部材と、を含み、仕切板を介して第1流路部と第2流路部とが積層されることによりコアを構成しており、仕切板の第1金属層の端面は、積層方向に隣接する第1流路部または第2流路部に含まれるサイドバーと、積層方向に重なる位置に配置されている。このように構成すれば、第1金属層の端面位置を第2金属層の端面位置よりも仕切板の中央側にする場合でも、第1金属層の端面がサイドバーと積層方向に重なる範囲内に配置される。ここで、仕切板、第1流路部および第2流路部がいわゆるプレートフィン構造のコアを構成する場合、仕切板は、サイドバーと重なる部分で上下の流路部から積層方向の荷重を受ける。そのため、このサイドバーと重なる部分に第1金属層が存在する構成にすることで、ろう付けの際に仕切板が積層方向の荷重によって座屈(変形)するのを防ぐことができる。
【0015】
上記仕切板を介して第1流路部と第2流路部とが積層されることによりコアを構成する場合において、好ましくは、第1流路部および第2流路部は、それぞれ、側端面の一部に、流体の出入口となる開口部を有し、積層方向に並ぶ第1流路部、仕切板および第2流路部に跨がって、コアの側面を覆うように設けられ、第1流路部または第2流路部の開口部との間で流体を流通させるヘッダタンクをさらに備え、仕切板の外周端面のうち端面被覆層により覆われた非接合部は、ヘッダタンクの内部に露出する端面部分を含んでいる。このように構成する場合、仕切板の外周端面のうちヘッダタンクの内部に露出する非接合部は、ヘッダタンク内に供給される流体と直接的に接触する。そのため、この流体が水など(電解液)を含む場合には、仕切板の外周端面が、異種金属腐食の原因となる液体に確実に曝されることになるが、その場合でも、端面被覆層を設けることによって、第1金属層と第2金属層との間での異種金属腐食が発生するのを効果的に抑制できる。
【0016】
上記第1の発明による熱交換器において、好ましくは、端面被覆層は、非接合部において、第1金属層の端面のみならず、第2金属層のそれぞれの端面をさらに覆うように形成されている。このように構成すれば、第1金属層および一対の第2金属層が端面被覆層により覆われるので、より確実に、異種金属腐食を抑制できる。
【0017】
上記第1の発明による熱交換器において、好ましくは、第1金属層の端面からの端面被覆層の被覆厚みが、0.1mm以上20mm以下である。このように構成すれば、端面被覆層の被覆厚みの局所的なばらつきを考慮しても、より確実に、第1金属層の端面を端面被覆層によって被覆できる。
【0018】
上記第1の発明による熱交換器において、好ましくは、第1金属層は、チタンまたはチタン合金からなり、第2金属層は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、ろう材層は、第1金属層および第2金属層よりも低融点のアルミニウム合金からなる。このように構成すれば、高耐食性を有する第1金属層によって、仕切板を厚み方向に貫通する腐食の発生を防ぎつつ、第1金属層の端面に端面被覆層を形成することで、異種金属腐食による第2金属層の腐食が仕切板の端面から層間の境界面に沿って進行するのを防ぐことができる。
【0019】
第2の発明による熱交換器の製造方法は、第1金属層と、第1金属層よりも卑な金属からなり、第1金属層の両面にそれぞれ第1ろう材層を介して積層された一対の第2金属層と、を含む積層板材である仕切板を、第2ろう材層を介して第1流路部と第2流路部との間に配置する工程と、第1流路部、仕切板の各層および第2流路部をろう付けする工程と、を備え、ろう付けする工程において、第1ろう材層から溶融した余剰ろう材を仕切板の外周端面へはみ出させることにより、外周端面のうち他の部材と接合されない非接合部において、少なくとも第1金属層の端面を露出しないように覆う端面被覆層を形成する。
【0020】
第2の発明による熱交換器の製造方法では、上記のように、ろう付けする工程において、第1ろう材層から溶融した余剰ろう材を仕切板の外周端面へはみ出させることにより、外周端面のうち他の部材と接合されない非接合部において、少なくとも第1金属層の端面を露出しないように覆う端面被覆層を形成する。これにより、仕切板の外周端面の非接合部において、第1金属層の端面を、第1ろう材層の余剰ろう材からなる端面被覆層により覆うことができる。これにより、第1金属層と第2金属層との間で異種金属腐食が生じることを回避できる。なお、仕切板の外周端面のうち、他の部材との接合部は、当該他の部材との接合によって第1金属層および第2金属層が覆われるので、接合部において異種金属腐食の原因となる水などが第1金属層および第2金属層の両方に跨がって付着することはない。以上から、異種の金属層を積層した積層構造の仕切板を採用した熱交換器において、金属層間での異種金属腐食の発生を抑制することができる。
【0021】
上記第2の発明による熱交換器の製造方法において、好ましくは、ろう付けする工程において、仕切板の積層方向における端面被覆層の高さが、ろう付け後の第1金属層と、第1金属層にそれぞれ接合した一対の第1ろう材層の厚みとの合計よりも大きくなるように、端面被覆層を形成する。このように構成すれば、より確実に、第1金属層の端面を端面被覆層によって被覆できる。
【0022】
この場合において、好ましくは、ろう付けする工程において、第1金属層の端面および一対の第2金属層のそれぞれの端面を被覆するように、端面被覆層を形成する。このように構成すれば、第1金属層および一対の第2金属層が端面被覆層により覆われるので、より確実に、異種金属腐食を抑制できる。
【0023】
上記第2の発明による熱交換器の製造方法において、好ましくは、仕切板は、積層方向に順番に、第2ろう材層、第2金属層、第1ろう材層、第1金属層、第1ろう材層、第2金属層、第2ろう材層、が積層されたクラッド材であり、ろう付け前の第1ろう材層の面積Sと、ろう付け前の第1ろう材層の厚みtrと、第1ろう材層における余剰ろう材の割合Rと、端面被覆層の体積設計値Vが、(2×S×tr×R)>Vという関係を満たすように、第1ろう材層の厚みtrを設定する。なお、第1ろう材層における余剰ろう材の割合Rとは、第1ろう材層の全体の体積に対する、余剰ろう材として第1ろう材層からはみ出すろう材の体積の割合を意味する。このように構成すれば、ろう付け前に第1金属層の端面に予めろう材を設けるなどの作業を伴わずに、クラッド材で構成した仕切板をろう付けするだけの場合でも、端面被覆層の形成に必要な余剰ろう材を第1ろう材層から確実に供給できる。
【0024】
第3の発明による熱交換器の製造方法は、第1金属層の両面に、第1金属層よりも卑な金属からなる一対の第2金属層を、それぞれ第1ろう材層を介して積層配置することにより、板状の積層体を組み立てる工程と、積層体を仕切板として、第2ろう材層を介して第1流路部と第2流路部との間に配置する工程と、第1流路部、仕切板の各層および第2流路部をろう付けする工程と、を備え、積層体を組み立てる工程において、第1ろう材層の外周部が第1金属層の外周部よりも外側にはみ出るように、第1ろう材層を配置し、ろう付けする工程において、第1ろう材層の外周部から溶融したろう材により、仕切板の外周端面のうち他の部材と接合されない非接合部において、少なくとも第1金属層の端面を露出しないように覆う端面被覆層を形成する。
【0025】
第3の発明による熱交換器の製造方法では、上記のように、積層体を組み立てる工程において、第1ろう材層の外周部が第1金属層の外周部よりも外側にはみ出るように、第1ろう材層を配置し、ろう付けする工程において、第1ろう材層の外周部から溶融したろう材により、仕切板の外周端面のうち他の部材と接合されない非接合部において、少なくとも第1金属層の端面を露出しないように覆う端面被覆層を形成する。これにより、仕切板の外周端面の非接合部において、第1金属層が露出することなく、第1ろう材層を構成するろう材からなる端面被覆層により覆われるので、第1金属層と第2金属層との間で異種金属腐食が生じることを回避できる。特に、第1ろう材層の外周部が第1金属層の外周部よりも外側にはみ出させるように積層体を組み立ててろう付けするので、はみ出た部分のろう材によって、第1金属層の端面を確実に被覆することができる。これにより、異種の金属層を積層した積層構造の仕切板を採用した熱交換器において、金属層間での異種金属腐食の発生を抑制することができる。
【0026】
上記第3の発明による熱交換器の製造方法において、好ましくは、積層体を組み立てる工程において、シート状の第1ろう材層によって第1金属層の端面を包囲する。このように構成すれば、第1金属層の端面をろう材で予め包囲した状態でろう付けできる。その結果、ろう付けする工程において、第1金属層の端面をろう材で確実に被覆することができる。
【0027】
上記第2または第3の発明による熱交換器の製造方法において、好ましくは、仕切板の表面に沿った面内方向において、第1金属層の端面位置が、第2金属層の端面位置と面一となるか、または第2金属層の端面位置よりも仕切板の中央側に位置している。このように構成すれば、第1金属層の端面位置が仕切板から外側へ突出しないので、より少ないろう材量で、より確実に、第1金属層を被覆できる。第1金属層の端面位置が仕切板から外側へ突出しない分、余剰ろう材の量を過度に多くならないように低減できるので、熱交換器の品質安定化に大きく寄与する。
【0028】
上記第2または第3の発明による熱交換器の製造方法において、好ましくは、ろう付けする工程において、第1金属層の端面からの端面被覆層の被覆厚みが、0.1mm以上20mm以下となるように、端面被覆層を形成する。このように構成すれば、端面被覆層の被覆厚みの局所的なばらつきを考慮しても、より確実に、第1金属層の端面を端面被覆層によって被覆できる。
【0029】
上記第2または第3の発明による熱交換器の製造方法において、好ましくは、第1金属層は、チタンまたはチタン合金からなり、第2金属層は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、第1ろう材層は、第1金属層および第2金属層よりも低融点のアルミニウム合金からなる。このように構成すれば、高耐食性を有する第1金属層によって、仕切板を厚み方向に貫通する腐食の発生を防ぎつつ、第1金属層の端面に端面被覆層を形成することで、異種金属腐食による第2金属層の腐食が仕切板の端面から層間の境界面に沿って進行するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、上記のように、異種の金属層を積層した積層構造の仕切板を採用した熱交換器において、金属層間での異種金属腐食の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】第1実施形態による熱交換器を示した斜視説明図である。
【
図2】第1流路部および第2流路部を説明するための分解斜視図である。
【
図3】仕切板の外周端面を示した模式的な拡大断面図である。
【
図4】仕切板の外周端面の非接合部を説明するための模式的な平面図である。
【
図5】ろう付け前の仕切板の構造を説明するための模式的な断面図である。
【
図6】ろう付け後の仕切板を示した模式的な拡大断面図である。
【
図7】仕切板の第1金属層の端面が外周側に突出しているケースを示した模式図である。
【
図8】仕切板の第1金属層の端面が中央側にあるケースを示した模式図である。
【
図9】第1実施形態の熱交換器の製造方法を説明するためのフロー図である。
【
図10】ろう付け時のろう材のはみ出しを説明するための模式的な拡大断面図である。
【
図11】仕切板における各部寸法を示した模式図である。
【
図12】実施例による仕切板の断面の電子顕微鏡画像である。
【
図13】
図12の断面に関するエネルギー分析型X線分光分析による、ろう材成分(Si)の分布を示した画像である。
【
図14】第2実施形態の熱交換器の製造方法を説明するためのフロー図である。
【
図15】仕切板となる積層体の組み立てを説明するための模式図である。
【
図16】ろう付け時のろう材の流動を説明するための模式的な拡大断面図である。
【
図17】第2実施形態の第1変形例を説明するための斜視説明図である。
【
図18】第2実施形態の第2変形例を説明するための斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0033】
[第1実施形態]
まず、
図1~
図8を参照して、第1実施形態による熱交換器100の全体構成について説明する。
【0034】
(全体構成)
図1に示すように、熱交換器100は、それぞれ流体を流通させる第1流路部10および第2流路部20と、第1流路部10と第2流路部20とを区画する仕切板30と、を備えている。第1流路部10と、第2流路部20と、仕切板30とは、それぞれ複数ずつ設けられ、所定方向(Z方向)に積層されることにより、熱交換器100のコア1を構成している。コア1は、熱交換器100において、複数の流体の間で熱交換が行われる部分である。熱交換器100は、さらに、ヘッダタンク2a~2dを備えている。なお、使用時における熱交換器100(コア1)の向きは特に限定されないが、説明の便宜のため、各部材の積層方向であるZ方向を上下方向とし、Z方向と直交する水平面内で互いに直交する2方向を、それぞれX方向、Y方向とする。
【0035】
コア1は、流体の流入口または流出口となる開口部を有し、流体を流通させて熱交換を行うように構成されている。コア1の構造は、特に限定されないが、第1実施形態では、コア1は、プレートフィン型の構造を有する。コア1は、側面1a~1dを含む直方体形状を有する。コア1の内部を流通する流体は、気体であっても液体であってもよい。コア1の内部を流通する流体の種類は、1種類であっても複数種類であってもよい。
【0036】
第1実施形態では、2種の流体間で熱交換を行う熱交換器100の例を示す。すなわち、第1流路部10内を第1流体が流通する。第2流路部20内を第1流体とは異なる第2流体が流通する。第1流体と第2流体とが仕切板30を介して熱交換する。第1流体および第2流体のうち、相対的に高温の流体側から、相対的に低温の流体側へ熱が移動する。第1流体および第2流体はたとえば液体である。第1流体および第2流体の少なくとも一方は、水(電解液)を含む。
【0037】
プレートフィン型のコア1を構成する第1流路部10および第2流路部20は、いずれも平板状(層状)の形状を有し、積層方向(Z方向)と交差する面方向(X方向およびY方向)に拡がっている。
【0038】
図2に示すように、第1流路部10および第2流路部20は、それぞれ、流路の外周を区画するサイドバー41と、流路内に配置されたフィン部材42と、を含む。フィン部材42は、波板状に形成された、いわゆるコルゲートフィンである。サイドバー41が、各流路部(第1流路部10、第2流路部20)の側壁を構成する。サイドバー41は、流路部の入口または出口となる開口部(11、21、
図1参照)の形成領域を除いて、流路部を囲むように設けられる。XY面内に配置されたサイドバー41とフィン部材42との上下に、それぞれ仕切板30が設けられる。仕切板30とサイドバー41とにより区画され、内部にフィン部材42が配置された各層によって、第1流路部10および第2流路部20の各々が構成されている。これらの第1流路部10、第2流路部20および仕切板30がろう付けによってそれぞれ接合されて一体化されることにより、コア1が構成されている。なお、積層方向(Z方向)におけるコア1の最外面には、エンドプレート43(
図1参照)が設けられる。このエンドプレート43もろう付けにより一体化される。仕切板30は、通常、層間、つまり積層方向の最外部を除いた第1流路部10と第2流路部20との間の境界部分に設けられる。
【0039】
第1流路部10と第2流路部20とは、Z方向に交互に積層されている。
図1の例では、コア1は、3層の第1流路部10と、3層の第2流路部20とを備えている。そのため、第1流路部10と第2流路部20との間を仕切る仕切板30は、5枚設けられている。流路部(第1流路部10、第2流路部20)を構成する各部材(サイドバー41およびフィン部材42)は、いずれも、アルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されている。
【0040】
上記のように、第1流路部10および第2流路部20は、それぞれ、側端面の一部に、流体の出入口となる開口部11、21を有している。コア1の4つの側面1a~1dのうち、互いに対向する一対の側面1aおよび1bに、それぞれ第1流路部10の開口部11が設けられている。第1流路部10は、側面1aと側面1bとの間でコア1をX方向に貫通する流路12(
図2参照)を有する。また、コア1の4つの側面1a~1dのうち、互いに対向する一対の側面1cおよび1dに、それぞれ第2流路部20の開口部21が設けられている。第2流路部20は、側面1cと側面1dとの間でコア1をY方向に貫通する流路22(
図2参照)を有する。
【0041】
図1に示すように、各ヘッダタンク2a~2dは、流体の流入口または流出口となる管部材3が設けられた中空構造を有する。各ヘッダタンク2a~2dは、積層方向に並ぶ第1流路部10、仕切板30および第2流路部20に跨がって、コア1のいずれかの側面を覆うように設けられ、第1流路部10または第2流路部20の開口部(11または12)との間で流体を流通させるように構成されている。各ヘッダタンク2a~2dは、コア1にろう付けまたは溶接により接合されている。
図1では便宜的に、ヘッダタンク2aおよび2cを、それぞれコア1の側面1aおよび1cから分離させて示している。
【0042】
ヘッダタンク2aは、コア1の側面1aにおいて、3つの第1流路部10の各開口部11を覆っている。ヘッダタンク2bは、コア1の側面1bにおいて、3つの第1流路部10の各開口部11を覆っている。側面1aおよび側面1bにおいて、第2流路部20はサイドバー41によって塞がれていて開口していない。これにより、ヘッダタンク2a、第1流路部10の側面1a側の開口部11、第1流路部10の流路12、第1流路部10の側面1b側の開口部11、ヘッダタンク2b、の順に各部材の内部が連通し、第1流体の流通経路が構成されている。
【0043】
また、ヘッダタンク2cは、コア1の側面1cにおいて、3つの第2流路部20の各開口部21を覆っている。ヘッダタンク2dは、コア1の側面1dにおいて、3つの第2流路部20の各開口部21を覆っている。側面1cおよび側面1dにおいて、第2流路部20はサイドバー41によって塞がれていて開口していない。これにより、ヘッダタンク2c、第2流路部20の側面1c側の開口部21、第2流路部20の流路22、第2流路部20の側面1d側の開口部21、ヘッダタンク2d、の順に各部材の内部が連通し、第2流体の流通経路が構成されている。
【0044】
このように、各ヘッダタンク2a~2dは、コア1のいずれかの側面において、第1流路部10または第2流路部20の開口部を覆うとともに、第1流路部10と第2流路部20との間を区画する仕切板30の外周端面31(
図2参照)を覆っている。言い換えると、
図3に示すように、仕切板30の外周端面31の一部は、流体(第1流体または第2流体)が流通するヘッダタンク(2a~2d)の内部空間内に露出している。このため、仕切板30の外周端面31は、熱交換器100の稼働中、流体がコア1内を流通する過程で、水(電解液)を含んだ流体に曝される。
【0045】
厳密には、
図4に示すように、コア1の側面1a~1dの各々の外周部付近は、対応するヘッダタンク2a~2dの接合端面と接合される。そのため、仕切板30の外周端面31のうち各ヘッダタンク2a~2dの接合端面と対向する部分は、露出せず流体とも接触しない接合部である。仕切板30の外周端面31のうち、仕切板30の外周端面31のうち他の部材(ヘッダタンク2a~2d)と接合されていない非接合部NBが、流体に曝される。
【0046】
(仕切板の構成)
次に、第1実施形態における仕切板30の構成について詳細に説明する。仕切板30は、上面視におけるコア1の外形形状に対応する矩形形状(
図2参照)に形成され、互いに異なる複数の金属層を積層した積層板材である。
【0047】
図5は、ろう付け前の仕切板30を示しており、これを仕切板P30とする。仕切板30は、第1金属層51と、第1金属層51の両面にそれぞれろう材層を介して積層された一対の第2金属層52a、52bと、を含む。より具体的には、仕切板30は、積層方向に順番に、第2ろう材層54a、第2金属層52a、第1ろう材層53a、第1金属層51、第1ろう材層53b、第2金属層52b、第2ろう材層54b、が積層された積層板材である。ここでいう積層方向は、仕切板30を構成する各層の積層方向であるが、コア1として組み立てられた状態(
図1参照)における第1流路部10、仕切板30および第2流路部20の積層方向(Z方向)と一致するため、どちらの積層方向も同じ方向と考えてよい。また、仕切板30の構成層の積層順序は、第1金属層51を中心として対照的であるため、Z方向の上側から考えても下側から考えてもよいが、原則としてZ方向の下側から(
図5の下側から)の順序とする。
【0048】
第1金属層51は、仕切板30において積層方向の中央に設けられ、金属を主成分とする層である。第1金属層51は、第2金属層52a、52bと比較して、腐食しにくい(耐食性が高い)貴な金属材料からなる。第1金属層51は、第1金属層51の積層方向の両主面に、第1ろう材層53a、53bが1つずつ設けられている。第1ろう材層53a、53bは、第1金属層51と第2金属層52a、52bとを接合するためのろう材層である。
【0049】
第2金属層52a、52bは、第1金属層51よりも卑な金属からなる。第2金属層52aは、第1ろう材層53aの外表面側(下面側)に設けられ、第2金属層52bは、第1ろう材層53bの外表面側(上面側)に設けられている。つまり、第2金属層52a、52bは、第1ろう材層53a、53bを介して、第1金属層51を挟み込むように一対設けられている。
【0050】
第2ろう材層54a、54bは、一対の第2金属層52a、52bのそれぞれの外表面側に設けられており、仕切板30の全体の外表面(上面および下面)を構成している。第2ろう材層54a、54bは、仕切板30と、第1流路部10または第2流路部20(つまり、サイドバー41やフィン部材42)とを接合するためのろう材層である。
【0051】
第1ろう材層53a、53b、および、第2ろう材層54a、54bは、第1金属層51および第2金属層52a、52bよりも低融点の合金からなる。第1ろう材層53a、53bを構成するろう材には、溶融、凝固によって、第1金属層51と第2金属層52a、52bとを接合させることが可能な合金が選定される。第2ろう材層54a、54bを構成するろう材には、溶融、凝固によって、第1流路部10、第2流路部20の構成要素と第2金属層52a、52bとを接合させることが可能な合金が選定される。第1ろう材層53a、53bおよび第2ろう材層54a、54bは、第2金属層52a、52bとの間で異種金属腐食を生じないか、または第1金属層51と第2金属層52a、52bとの組み合わせよりも異種金属腐食を生じさせる傾向が弱い材料(自然電位の差が小さい材料)からなる。
【0052】
具体例として、第1金属層51は、チタンまたはチタン合金(以下、両者をまとめてチタン材という)からなる。第2金属層52a、52bについて、チタン材よりも卑な金属材料としては、SUS(ステンレス鋼)、銅、マグネシウム、アルミニウムおよびこれらのいずれかを主成分とする合金などが例示される。具体例として、第2金属層52a、52bは、アルミニウムまたはアルミニウム合金(以下、両者をまとめてアルミ材という)からなる。第1ろう材層53a、53bおよび第2ろう材層54a、54bは、同一材料からなり、第1金属層51および第2金属層52a、52bよりも低融点のアルミニウム合金からなる。限定されないが、たとえば、第2金属層52a、52bがA3000系(一例として、A3003)のAl-Mn系合金であり、ろう材層(第1ろう材層53a、53bおよび第2ろう材層54a、54b)がA4000系(一例として、A4004)のAl-Si系合金である。
【0053】
図5の例では、仕切板30(仕切板P30)は、両面にろう材層が設けられた一対(2枚)のAlクラッド材56によって、チタン合金板である第1金属層51を挟み込んだ、7層のクラッド材である。クラッド材56は、(第1ろう材層/第2金属層/第2ろう材層)という3層構造を有する。
【0054】
仕切板30が第1流路部10および第2流路部20と組み合わされて、ろう付けされることにより、仕切板30は、
図6に示すように、Z方向の上面側および下面側のサイドバー41などの流路層の構成要素と接合されている。なお、
図6では、便宜上、仕切板30と直接接合されたサイドバー41のみを図示し、フィン部材42の図示を省略している。第1金属層51の厚みt1は、各第2金属層52a、52bの厚みt2a、t2bよりも小さい。各第1ろう材層53a、53bの厚みt3a、t3bは、厚みt1よりも小さく、厚みt2a、t2bよりも小さい。各第2ろう材層54a、54bの厚みt4a、t4bは、厚みt1よりも小さく、厚みt2a、t2bよりも小さい。なお、
図6の例では、厚みt2aは厚みt2bと等しい。厚みt3aは厚みt3bと等しい。厚みt4aは厚みt4bと等しい。
【0055】
図6に示すように、第1実施形態では、仕切板30の外周端面31には、第1金属層51と第2金属層52a、52bとの間のろう材層(第1ろう材層53a、53b)と同一材料で、かつ、ろう材層(第1ろう材層53a、53b)と連続した端面被覆層55が設けられている。
【0056】
第1実施形態では、端面被覆層55は、仕切板30の外周端面31のうち他の部材と接合されていない非接合部NB(
図4参照)に、少なくとも設けられる。そして、この非接合部NBにおいて、端面被覆層55は、少なくとも第1金属層51の端面が露出せずに覆われるように形成されている。
図6は、非接合部NBにおける仕切板30の断面の模式図である。
【0057】
第1実施形態では、端面被覆層55は、第1金属層51と第2金属層52a、52bとの間のろう材層(第1ろう材層53a、53b)からはみ出した余剰ろう材により形成されている。つまり、
図5に示したろう付け前のクラッド材である仕切板P30において、第1金属層51と第2金属層52a、52bとの間に設けられていた第1ろう材層53a、53bが、ろう付けの際に溶融し、第1ろう材層53a、53bの一部(余剰ろう材)が第1金属層51と第2金属層52a、52bとの層間から外周端面31へ溶け出し、外周端面31に付着したまま凝固した結果、端面被覆層55となる。
【0058】
端面被覆層55は、
図4に示すように、仕切板30の全周にわたって連続的に形成されている。したがって、仕切板30の外周端面31のうち端面被覆層55により覆われた非接合部NBは、各ヘッダタンク2a~2dの内部に露出する端面部分を含んでいる。
【0059】
図6に示すように、端面被覆層55は、Z方向の高さHe、水平方向の被覆厚みteを有する。端面被覆層55は、第1金属層51の端面から水平方向に突出するように形成されるため、この第1金属層51の端面から端面被覆層55の外周面までの距離(端面からの法線方向の厚み)を、被覆厚みteとする。第1金属層51の端面からの端面被覆層55の被覆厚みteは、0.1mm以上20mm以下である。好ましくは、被覆厚みteが、0.1mm以上2mm以下である。端面被覆層55の高さHeは、第1金属層51の厚みt1以上である。
【0060】
余剰ろう材の量により、形成される端面被覆層55の大きさを制御できる。
図6の例では、端面被覆層55は、非接合部NBにおいて、第1金属層51の端面のみならず、第2金属層52a、52bのそれぞれの端面をさらに覆うように形成されている。この例では、端面被覆層55は、第1金属層51の端面、一対の第2金属層52a、52bの各端面を覆い、第2ろう材層54a、54bの位置まで到達するように形成されている。
図6の例では、端面被覆層55は、第1金属層51の両側の一対の第1ろう材層53a、53bと、仕切板30の外表面に設けられた一対の第2ろう材層54a、54bと、の合計4層のろう材層と一体化して連続した金属組織を構成している。
【0061】
なお、厳密には、仕切板30を構成する各層には寸法公差があり、端面位置がずれる可能性がある。公差を考えると、外周端面31において、
図7に示す第1金属層51の端面が面方向(XY面内)の外側に突出するケース、
図6に示した第1金属層51の端面が第2金属層52a、52bの端面と面一となるケース、
図8に示す第1金属層51の端面が中央側に凹むケース、が考えられる。
【0062】
第1金属層51の端面が面方向の外側に突出するケース(
図7参照)の場合、第1金属層51の端面だけでなく端面近傍の上面および下面が仕切板30から露出し、被覆すべき面積が増大するため、端面被覆層55によって被覆しにくくなる。そのため、好ましくは、仕切板30の表面に沿った面内方向(XY方向)において、第1金属層51の端面位置Q1が、第2金属層52a、52bの端面位置と面一(
図6参照)となるか、または第2金属層52a、52bの端面位置Q2よりも仕切板30の中央側(
図8参照)に位置している。この構造を実現するためには、仕切板30の設計において、第1金属層51の端面位置Q1の公差範囲を、第2金属層52a、52bの端面位置Q2の公差範囲と比較して仕切板30の中央側に寄せる(いわゆるマイナス公差にする)ことができる。
【0063】
ただし、後述するように、ろう付けに伴う余剰ろう材の量を適切に設定することによって、
図7に示したように第1金属層51の端面位置Q1が外側に突出するケースであっても、第1金属層51の端面を十分に被覆できるように端面被覆層55の大きさを制御することが可能である。
【0064】
また、
図8に示すように、第1金属層51の端面位置Q1が端面位置Q2よりも仕切板30の中央側にあるケースでは、第1金属層51が露出しないように端面被覆層55を形成するのが容易化される。一方で、第1金属層51の端面位置Q1が過度に仕切板30の中央側に寄りすぎることも好ましくない。すなわち、
図6に示したように、仕切板30の外周部の上下には、サイドバー41が設けられるため、仕切板30の外周部は上側のサイドバー41から荷重を受けると共に、下側のサイドバー41によって支持される。そのため、サイドバー41と積層方向(Z方向)に重ならない位置まで第1金属層51の端面位置Q1が内側にずれていると、第1金属層51が存在しない部分で荷重を受けることになるため、仕切板30が座屈(変形)し易くなるおそれがある。そのため、仕切板30の第1金属層51の端面は、積層方向(Z方向)に隣接する第1流路部10または第2流路部20に含まれるサイドバー41と、積層方向(Z方向)に重なる範囲(面一の場合を含む)に配置されていることが好ましい。
【0065】
以上のような構成により、第1実施形態の熱交換器100のコア1におけるそれぞれ仕切板30には、外周端面31のうち他の部材と接合されていない非接合部NBにおいて、少なくとも第1金属層51の端面を覆う端面被覆層55が設けられている。そのため、第1金属層51と第2金属層52a、52bとが液体を介して接続されることが防止されるので、第1金属層51と第2金属層52a、52bとの間で異種金属腐食が発生することはない。
【0066】
なお、第1実施形態では、第2金属層52a、52bおよびろう材層(第1ろう材層53a、53bおよび第2ろう材層54a、54b)がいずれも同種材料(アルミ材)からなるため、第2金属層52a、52bとろう材層とに跨がって液体が付着しても、異種金属腐食が発生することはない。また、流路部(第1流路部10および第2流路部20)の構成部材(サイドバー41、フィン部材42)もアルミ材であるため、これらの構成部材と第2金属層52a、52bとの間で異種金属腐食が発生することはない。
【0067】
(熱交換器の製造方法)
次に、
図9を参照して、第1実施形態の熱交換器100の製造方法について説明する。
【0068】
第1実施形態の熱交換器100の製造方法は、仕切板30を、第2ろう材層54a、54bを介して第1流路部10と第2流路部20との間に配置する工程(工程S1)と、第1流路部10、仕切板30の各層および第2流路部20をろう付けする工程(工程S2)と、を備える。仕切板30は、上記の通り、第1金属層51と、第1金属層51よりも卑な金属からなり、第1金属層51の両面にそれぞれ第1ろう材層53a、53bを介して積層された一対の第2金属層52a、52bと、を含む積層板材である。仕切板30は、
図5に示した7層構造のクラッド材(ろう付け前の仕切板P30)として、予め準備されているものとする。
【0069】
まず、工程S1において、第1流路部10、仕切板30、第2流路部20を、積層配置することにより、コア1を仮組立する。すなわち、
図2に示したように、第1流路部10および第2流路部20を構成するサイドバー41およびフィン部材42を平面的に配置し、それらの間に仕切板30(P30)を介在させて積層することにより、
図1に示したコア1の積層構造を構築する。つまり、3層の第1流路部10の構成部材と3層の第2流路部20の構成部材とが1層ずつ交互に配置されるように、仕切板30(P30)を介して積層する。
【0070】
この結果、仕切板30(P30)が、第2ろう材層54a、54bを介して第1流路部10と第2流路部20との間に配置される。積層方向(Z方向)の両端部には、それぞれエンドプレート43を配置する。
【0071】
工程S2において、コア1の組立体を、ろう付けする。ろう付け方法は、特に限定しないが、第1実施形態では真空ろう付けである。真空排気により減圧された炉中で組立体が加熱されることにより、各仕切板30(P30)のろう材層(第1ろう材層53a、53bおよび第2ろう材層54a、54b)が溶融する。第1ろう材層53a、53bは、酸化皮膜が除去された第1金属層51および第2金属層52a、52bの表面にそれぞれ密着する。第2ろう材層54a、54bは、酸化皮膜が除去された第2金属層52a、52bとサイドバー41やフィン部材42などの流路層の構成部材とにそれぞれ密着する。
【0072】
第1実施形態では、ろう付けする工程S2において、
図10に示すように、第1ろう材層53a、53bから溶融した余剰ろう材(
図10の矢印で示す)を仕切板30の外周端面31へはみ出させる。外周端面31へはみ出した余剰ろう材は、少なくとも第1金属層51の端面を全周にわたって覆う。溶融に伴う余剰ろう材のはみ出しは、第1金属層51の上面側(第1ろう材層53b)および下面側(第1ろう材層53a)のそれぞれから生じ、はみ出した溶融状態の余剰ろう材は、表面張力の作用によって第1金属層51の端面を上下両側から覆うように拡がる。
【0073】
ろう付けの進行に伴って炉中温度が低下すると、層間の第1ろう材層53a、53bおよび第2ろう材層54a、54bが凝固して仕切板30と各流路部とが接合されるとともに、外周端面31の余剰ろう材が凝固して、余剰ろう材が端面被覆層55(
図10の二点鎖線部)となる。これにより、組立体がろう接合によって一体化したコア1が構成される。そして、仕切板30の外周端面31には、少なくとも第1金属層51の端面を露出しないように覆う端面被覆層55(
図6参照)が形成される。
【0074】
なお、工程S2で、余剰ろう材が外周端面31へはみ出した結果、第1ろう材層53a、53bの厚みは、ろう付け後に減少することになる。つまり、
図6に示したろう付け後の仕切板30における厚みt3a、t3bは、
図5に示したろう付け前の仕切板P30における第1ろう材層53a、53bの各厚みよりも、はみ出した余剰ろう材の分だけ減少する。余剰ろう材のはみ出しは、XY面内において等方的に生じると考えてよい。そのため、端面被覆層55は、
図4に示すように、仕切板30の全周にわたって連続的に形成される。
【0075】
好ましくは、ろう付けする工程S2において、仕切板30の積層方向における端面被覆層55の高さHe(
図6参照)が、ろう付け後の第1金属層51と、第1金属層51にそれぞれ接合した一対の第1ろう材層53a、53bの厚みとの合計よりも大きくなるように、端面被覆層55が形成される。第1実施形態では、さらに、ろう付けする工程S2において、第1金属層51の端面および一対の第2金属層52a、52bのそれぞれの端面を被覆するように、端面被覆層55が形成される。つまり、
図6に示した例では、端面被覆層55の高さHeが、ろう付け後の、第1金属層51の厚みt1と、一対の第1ろう材層53a、53bの厚みt3a、t3bと、一対の第2金属層52a、52bの各厚みt2a、t2bと、一対の第2ろう材層54a、54bの各厚みt4a、t4bと、の合計と略一致する。
【0076】
工程S2によりコア1がろう付けされた後、
図9の工程S3において、ヘッダタンク2a~2dが、それぞれコア1の対応する側面1a~1dに接合される。ヘッダタンク2a~2dの接合は、たとえば溶接である。ヘッダタンク2a~2dの各端面が、コア1の側面1a~1dの外周部に接合される。この結果、熱交換器100には、各ヘッダタンク2a~2dの内側に露出した仕切板30の非接合部NB(
図4参照)において、第1金属層51の端面を露出しないように覆う端面被覆層55を備えた構造が構築される。
【0077】
以上により、熱交換器100が製造される。
【0078】
(第1ろう材層の厚み)
次に、上記した端面被覆層55を形成するための、第1ろう材層53a、53bの厚みについて説明する。
【0079】
第1実施形態では、
図5に示した通り、仕切板30(P30)は、2枚のクラッド材56(第1ろう材層/第2金属層/第2ろう材層)によって第1金属層51を挟み込んだ、7層のクラッド材である。そして、本願発明者らは、以下の条件の下、端面被覆層55を形成するのに適したろう材量について検討した。
条件1.第1ろう材層53a、53bには均等に圧力が作用すると仮定する。
条件2.余剰ろう材は仕切板30の外周端面31に流れると仮定する。
条件3.余剰ろう材は第1金属層51の上下両側から端面に流れると仮定する。
条件4.端面被覆層55の被覆厚みteは、0.1mm以上必要とする。
【0080】
図11は、仕切板30のうち、第1金属層51の端面の被覆に関与する部分だけを抽出した模式図である。上記した条件1~条件4の下、下記の関係(1)を導出できる。すなわち、ろう付け前の第1ろう材層53a、53bの面積Sと、ろう付け前の第1ろう材層53a、53bの厚みtrと、第1ろう材層53a、53bにおける余剰ろう材の割合Rと、端面被覆層55の体積設計値Vが、下式(1)を満たすように、第1ろう材層53a、53bの厚みtrを設定することが好ましい。
(2×S×tr×R)>V ・・・(1)
ここで、面積Sは、第1ろう材層53a、53bの主表面の面積である。厚みtrは、第1ろう材層53aと53bとで同一である。
【0081】
余剰ろう材の割合Rは、ろう付け前の第1ろう材層の体積に対する、ろう付け時に第1ろう材層からはみ出る余剰ろう材の体積の割合である。式(1)の左辺で2(枚)を積算するのは、条件3に基づく。なお、厚みtrは、クラッド材56の総厚みtc(
図5参照)と、クラッド率(片面ろう材層の厚み割合)Pcとの積に等しい(tr=tc×Pc)。ろう付け前の第1ろう材層の厚みtrを求めることと、クラッド材56のクラッド率Pcを求めることとは、実質的に同義であると見なせる。
【0082】
具体的には、余剰ろう材が下式(2)を満たす。
[余剰ろう材の体積(最小値)Vr]
=[ろう付け前の第1ろう材層の合計体積V×余剰ろう材の割合R]
=2×S×tr×R・・・(2)
である。
【0083】
余剰ろう材の体積(最小値)Vrは、端面位置Q1の公差に関して、端面被覆層55による第1金属層51の端面の被覆が最も困難になる、第1金属層51の端面が突出しているケース(
図7参照)における、端面被覆層55の最小体積と仮定することで算出できる。
【0084】
すなわち、
図11を参照して、余剰ろう材の体積(最小値)Vr
=[外周端面における被覆領域の体積]-[第1金属層の突出部分の体積]
=[A×B×周長C]-[D×E×周長C]である。
Aは端面被覆層の外周端面からの最低限の厚み、Bは端面被覆層の最低限の高さ、Cは仕切板の周長(四辺の長さの和)、Dは第1金属層の突出量、Eは第1金属層の厚み(高さ)である。A=(D+被覆厚みte)である。
【0085】
上式(2)より、余剰ろう材の割合Rは、最低限必要となる余剰ろう材の体積(最小値)Vrとろう付け前の第1ろう材層の体積とから求められる。
【0086】
たとえば第1金属層の端面位置Q1の公差が1mmである場合、第1金属層51の突出量Dは最大で0.5mmと仮定できる。また、本願発明者らが行った実験では、端面被覆層55の表面に形成される凹凸のばらつきが0.05mmであった。そのため、被覆厚みteの必要量は、表面凹凸のばらつき範囲から0.1mmとし、A=(D+te)=0.6mmとなる。実験で用いたテストピースは、幅80mm、長さ200mmのサイズであり、第1金属層の厚みEが0.2mmであった。これらから得られた余剰ろう材の割合Rが8%弱であった。
【0087】
上式(1)の端面被覆層の体積設計値Vは、[A×B×周長C]-[D×E×周長C]で求めることができ、体積設計値Vの算出では、A~Eを最小量ではなく実際の設計上の値とすればよい。
【0088】
以上から、(1)式についてテストピースについて求めると、ろう付け前の第1ろう材層53a、53bの厚みtr>0.083mmであり、クラッド材(第1ろう材層/第2金属層/第2ろう材層)の総厚みtcがたとえば0.6mmの場合は、クラッド率Pc>14%である。
【0089】
(実施例)
図12は、仕切板30を用いてろう付けを行い、ろう付け後の仕切板30の外周端面31の付近を観察した電子顕微鏡画像である。
図12において、画像右端から中央にかけて延びる明部が、チタン材(Ti材)からなる第1金属層51である。第1金属層51の周囲を取り囲むように形成された中間明度の部分が、アルミ材(Al材)からなる部分(つまり、第2金属層52a、52b、第1ろう材層53a、53bおよび第2ろう材層54a、54b)である。
図12の黒色部分は、非画像の背景である。
図12から、Ti材の端面がAl材で覆われていることが分かる。
【0090】
次に、
図13は、エネルギー分散型X線分析(Energy dispersive X-ray spectroscopy、EDS)により得られた分析結果の画像であり、画像中の明部は、仕切板30において、ろう材層の主要成分であるSiの分布を示している。
図12と
図13とを対比して分かるように、Siは、まず、第1金属層51の上面および下面に薄い層状に分布しており、これが第1ろう材層53a、53bであることが分かる。そして、Si(明部)は、領域Kで示した部分(
図12のTi材の端面からAl材の先端部までの範囲に相当する部分)に、分布していることが分かる。このことから、第1金属層51の端面を覆うように、Siの共晶組織からなる端面被覆層55が形成されていることが分かる。これにより、第1実施形態の熱交換器の製造方法により、第1金属層51の端面を覆うように端面被覆層55を形成できることが確認された。
【0091】
[第1実施形態の効果]
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0092】
第1実施形態の熱交換器100では、上記のように、仕切板30の外周端面31のうち他の部材と接合されていない非接合部NBにおいて、少なくとも第1金属層51の端面が露出せずに、第1金属層51と第2金属層52a、52bとの間のろう材層(第1ろう材層53a、53b)と同一材料で、かつ、ろう材層と連続した端面被覆層55により覆われているので、第1金属層51と第2金属層52a、52bとの間で異種金属腐食が生じることを回避できる。なお、仕切板30の外周端面31のうち、他の部材(ヘッダタンク2a~2d)との接合部は、当該他の部材との接合によって第1金属層51および第2金属層52a、52bが覆われるので、接合部において異種金属腐食の原因となる水などが第1金属層51および第2金属層52a、52bの両方に跨がって付着することはない。以上から、異種の金属層を積層した積層構造の仕切板30を採用した熱交換器100において、金属層間での異種金属腐食の発生を抑制することができる。
【0093】
また、第1実施形態の熱交換器の製造方法では、上記のように、ろう付けする工程S2において、第1ろう材層53a、53bから溶融した余剰ろう材を仕切板30の外周端面31へはみ出させることにより、外周端面31のうち他の部材と接合されない非接合部NBにおいて、少なくとも第1金属層51の端面を露出しないように覆う端面被覆層55を形成するので、第1金属層51の端面を、第1ろう材層53a、53bの余剰ろう材からなる端面被覆層55により覆うことができる。これにより、第1金属層51と第2金属層52a、52bとの間で異種金属腐食が生じることを回避できる。そのため、異種の金属層を積層した積層構造の仕切板30を採用した熱交換器100において、金属層間での異種金属腐食の発生を抑制することができる。
【0094】
また、第1実施形態では、上記のように、端面被覆層55は、第1金属層51と第2金属層52a、52bとの間のろう材層(第1ろう材層53a、53b)からはみ出した余剰ろう材により形成されているので、ろう付けの際に、第1金属層51と第2金属層52a、52bとの間の第1ろう材層53a、53bから余剰ろう材をはみ出させる(溶融させて流出させる)ことで第1金属層51を被覆する端面被覆層55を形成できる。そのため、第1金属層51と第2金属層52a、52bとの間の第1ろう材層53a、53bとは別に、第1金属層51の端面にろう材を設けて端面被覆層55を形成する場合と比べて、端面被覆層55を形成するための作業負荷(工数の増加)を抑制できる。
【0095】
また、第1実施形態では、上記のように、仕切板30の表面に沿った面内方向(XY方向)において、第1金属層51の端面位置Q1が、第2金属層52a、52bの端面位置Q2と面一となる(
図6参照)か、または第2金属層52a、52bの端面位置Q2よりも仕切板30の中央側に位置している(
図8参照)ので、第1金属層51の端面位置Q1が仕切板30から外側へ突出しない。そのため、より少ないろう材量で、より確実に、第1金属層51を被覆できる。ここで、ろう材が、ろう付けに必要な量よりも過度に多くなると、第1金属層51又は第2金属層52a、52bや、第1流路部10または第2流路部20の構成部材がろう材に浸食(金属の一部がろう材中に溶解すること)される可能性が生じるので、余剰ろう材の量を過度に多くならないように低減できることは、熱交換器100の品質安定化に大きく寄与する。
【0096】
また、第1実施形態では、上記のように、仕切板30の第1金属層51の端面は、積層方向(Z方向)に隣接する第1流路部10または第2流路部20に含まれるサイドバー41と、積層方向に重なる位置に配置されているので、第1金属層51の端面位置Q1を第2金属層52a、52bの端面位置Q2よりも仕切板30の中央側にする場合(
図8参照)でも、第1金属層51の端面がサイドバー41と積層方向に重なる範囲内に配置される。ここで、仕切板30は、面内のサイドバー41と重なる部分で上下の流路12部から積層方向の荷重を受ける。そのため、このサイドバー41と重なる部分に第1金属層51が存在する構成にすることで、ろう付けの際に仕切板30が積層方向の荷重によって座屈(変形)するのを防ぐことができる。
【0097】
また、第1実施形態では、上記のように、仕切板30の外周端面31のうち端面被覆層55により覆われた非接合部NBは、ヘッダタンク2a~2dの内部に露出する端面部分を含んでいるので、仕切板30の外周端面31の非接合部NBは、ヘッダタンク2a~2d内に供給される流体と直接的に接触する。そのため、この流体が水など(電解液)を含む場合には、仕切板30の外周端面31が、異種金属腐食の原因となる液体に確実に曝されることになるが、その場合でも、端面被覆層55を設けることによって、第1金属層51と第2金属層52a、52bとの間での異種金属腐食が発生するのを効果的に抑制できる。
【0098】
また、第1実施形態では、上記のように、端面被覆層55は、非接合部NBにおいて、第1金属層51の端面のみならず、第2金属層52a、52bのそれぞれの端面をさらに覆うように形成されているので、第1金属層51および一対の第2金属層52a、52bが端面被覆層55により覆われることにより、より確実に、異種金属腐食を抑制できる。
【0099】
また、第1実施形態では、上記のように、第1金属層51の端面からの端面被覆層55の被覆厚みteが、0.1mm以上20mm以下であるので、端面被覆層55の被覆厚みteの局所的なばらつきを考慮しても、より確実に、第1金属層51の端面を端面被覆層55によって被覆できる。すなわち、本願発明者らが実験により確認した端面被覆層55の凹凸のばらつきの範囲(約0.05mm)と比較して十分な被覆厚みteが得られるので、第1金属層51の端面が露出することをより確実に防ぐことができる。
【0100】
また、第1実施形態では、上記のように、第1金属層51は、チタンまたはチタン合金からなり、第2金属層52a、52bは、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、ろう材層(第1ろう材層53a、53b)は、第1金属層51および第2金属層52a、52bよりも低融点のアルミニウム合金からなるので、高耐食性を有するチタン材の第1金属層51によって、仕切板30を厚み方向に貫通する腐食の発生を防ぎつつ、第1金属層51の端面に端面被覆層55を形成することで、異種金属腐食による第2金属層52a、52bの腐食が仕切板30の端面から層間の境界面に沿って進行することを防ぐことができる。
【0101】
また、第1実施形態では、上記のように、ろう付けする工程S2において、仕切板30の積層方向における端面被覆層55の高さHeが、ろう付け後の第1金属層51の厚みt1と、第1金属層51にそれぞれ接合した一対の第1ろう材層53a、53bの厚みt3a、t3bとの合計よりも大きくなるように、端面被覆層55を形成するので、より確実に、第1金属層51の端面を端面被覆層55によって被覆できる。
【0102】
また、第1実施形態では、上記のように、ろう付け前の第1ろう材層53a、53bの面積Sと、ろう付け前の第1ろう材層53a、53bの厚みtrと、第1ろう材層53a、53bにおける余剰ろう材の割合Rと、端面被覆層55の体積設計値Vが、(2×S×tr×R)>Vという関係を満たすように、第1ろう材層53a、53bの厚みtrを設定するので、ろう付け前に第1金属層51の端面に予めろう材を設けるなどの作業を伴わずに、クラッド材56で構成した仕切板30をろう付けするだけの場合でも、端面被覆層55の形成に必要な余剰ろう材を第1ろう材層53a、53bから確実に供給できる。
【0103】
[第2実施形態]
図14~
図16を参照して、第2実施形態による熱交換器の製造方法について説明する。第2実施形態では、2枚のAlクラッド材56で第1金属層51を挟み込んだ、7層のクラッド材である仕切板30(P30、
図5参照)を用いた上記第1実施形態とは異なり、仕切板30の各層を別々の板状部材から構成する例について説明する。なお、第2実施形態において、製造する熱交換器100の構造は上記第1実施形態と同様であり、同一の符号を付して説明を省略する。
【0104】
第2実施形態の熱交換器100の製造方法は、
図14に示すように、板状の積層体LBを組み立てる工程S11と、積層体LBを仕切板30(P30)として、第2ろう材層54a、54bを介して第1流路部10と第2流路部20との間に配置する工程S12と、第1流路部10、仕切板30(P30)の各層および第2流路部20をろう付けする工程S13と、を備える。
【0105】
まず、工程S11において、第1金属層51の両面に、第1金属層51よりも卑な金属からなる一対の第2金属層52a、52bを、それぞれ第1ろう材層53a、53bを介して積層配置することにより、板状の積層体LBが組み立てられる。
【0106】
具体的には、
図15に示すように、積層方向に順番に、第2ろう材層54a、第2金属層52a、第1ろう材層53a、第1金属層51、第1ろう材層53b、第2金属層52b、第2ろう材層54b、が積層される。これらの第2ろう材層54a、54b、第2金属層52a、52b、第1ろう材層53a、53b、第1金属層51は、互いに別々に作成された平板状(またはシート状)部材として予め準備されたものである。
図15では説明のために各層を分離して示しているが、これらの部材が積層されることにより、ろう付け前の仕切板P30に相当する積層体LB(
図16の仕切板P30参照)が組み立てられる。各層の部材は、位置ずれしないように互いに仮止めされる。仮止めの方法は、かしめ、スポット溶接、固定治具の使用、などである。
【0107】
ここで、第2実施形態では、積層体LBを組み立てる工程S11において、第1ろう材層53a、53bの外周部が第1金属層51の外周部よりも外側にはみ出るように、第1ろう材層53a、53bを配置する。すなわち、第1ろう材層53a、53bの外形寸法(X方向寸法およびY方向寸法の両方)が、第1金属層51の外形寸法よりも大きくなるように形成されている。そのため、各層の中心位置を合わせて積層した状態で、第1ろう材層53a、53bは、
図15に示すように、第1金属層51の外周部(端面)よりも外側に突出した突出部PRを有する。突出部PRは、積層体LBの全周にわたって設けられる。
【0108】
図15の例では、第2ろう材層54a、54bについても、突出部PRを形成している例を示しているが、第2ろう材層54a、54bには突出部PRを設けなくてもよい。
【0109】
図14の工程S12において、上記工程S11で組み立てられた板状の積層体LBを、第1流路部10と第2流路部20との間に配置する仕切板30として用いて、コア1(
図1参照)の積層構造の仮組み立てが行われる。これにより、仕切板30(P30)が、第2ろう材層54a、54bを介して第1流路部10と第2流路部20との間に配置される。
【0110】
工程S13において、コア1の組立体を、ろう付けする。ろう付け方法は、特に限定せず、たとえば溶融したフラックス中に組立体を浸漬する浸漬ろう付け、非腐食性フラックスを用いた炉中ろう付け、などでもよい。
【0111】
このろう付けする工程S13において、第2実施形態では、第1ろう材層53a、53bの外周部(突出部PR)から溶融したろう材により、仕切板30の外周端面31に、少なくとも第1金属層51の端面を露出しないように覆う端面被覆層55を形成する。すなわち、
図16の第1ろう材層53a、53bの突出部PRを構成するろう材が、加熱によって溶融し、表面張力の作用により少なくとも第1金属層51の端面を覆うように流動する(
図16の矢印参照)。突出部PRは第1ろう材層53a、53bの外周部の全周に存在するため、第1金属層51の端面の全周が、突出部PRから溶融したろう材により覆われる。
図16のように第2ろう材層54a、54bにも突出部PRを設けている場合、第2ろう材層54a、54bの突出部PRを構成するろう材が、第2金属層52a、52bの端面を覆い、第1ろう材層53a、53bと一体化する。
【0112】
ろう付けの進行に伴ってろう材の温度が低下すると、外周端面31に付着していたろう材が凝固して端面被覆層55(
図6参照)となる。これにより、外周端面31において、少なくとも第1金属層51の端面を露出しないように覆う端面被覆層55(
図6参照)が形成される。
【0113】
第2実施形態では、端面被覆層55を構成するろう材が、第1ろう材層53a、53bの外周の突出部PRから供給できる。そのため、ろう付け前の第1ろう材層53a、53bの厚みtr(
図11参照)を、端面被覆層55の体積を考慮せずに、第1金属層51と第2金属層52a、52bとの接合に必要な値に設定するだけでよい。その代わりに、第2実施形態では、第1ろう材層53a、53bの突出部PRの体積(つまり、突出量)を、端面被覆層55の体積に応じて設定すればよい。突出部PRの体積では不足する場合、上記第1実施形態と同様に余剰ろう材をさらに利用してもよい。
【0114】
なお、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、好ましくは、ろう付けする工程S13において、仕切板30の積層方向における端面被覆層55の高さHeが、ろう付け後の第1金属層51と、第1金属層51にそれぞれ接合した一対の第1ろう材層53a、53bの厚みとの合計よりも大きくなるように、端面被覆層55が形成される。より好ましくは、第1金属層51の端面および一対の第2金属層52a、52bのそれぞれの端面を被覆するように、端面被覆層55が形成される。端面被覆層55の寸法等については上記第1実施形態と同様である。
【0115】
工程S13によりコア1がろう付けされた後、工程S14において、ヘッダタンク2a~2dが、それぞれコア1の対応する側面1a~1dに接合される。この結果、熱交換器100には、各ヘッダタンク2a~2dの内側に露出した仕切板30の非接合部NB(
図4参照)において、第1金属層51の端面を露出しないように覆う端面被覆層55を備えた構造が構築される。
【0116】
以上により、熱交換器100が製造される。第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0117】
[第2実施形態の効果]
第2実施形態の熱交換器の製造方法では、上記のように、積層体LBを組み立てる工程S11において、第1ろう材層53a、53bの外周部が第1金属層51の外周部よりも外側にはみ出るように、第1ろう材層53a、53bを配置し、ろう付けする工程S13において、第1ろう材層53a、53bの外周部から溶融したろう材により、仕切板30の外周端面31のうち他の部材と接合されない非接合部NBにおいて、少なくとも第1金属層51の端面を露出しないように覆う端面被覆層55を形成するので、第1金属層51の端面を、第1ろう材層53a、53bを構成するろう材からなる端面被覆層55により覆うことができる。これにより、第1金属層51と第2金属層52a、52bとの間で異種金属腐食が生じることを回避できる。特に、ろう付けの際、第1ろう材層53a、53bの外周部(突出部PR)が第1金属層51の外周部よりも外側にはみ出させるように積層体LBを組み立てるので、はみ出た突出部PRのろう材によって、第1金属層51の端面を確実に被覆することができる。これにより、異種の金属層を積層した積層構造の仕切板30を採用した熱交換器において、金属層間での異種金属腐食の発生を抑制することができる。
【0118】
第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0119】
[第2実施形態の第1変形例]
上記第2実施形態(
図16参照)では、第1ろう材層53a、53bの外周部に平板状の突出部PRを設けた例を示したが、
図17に示す第1変形例では、第1金属層51を配置するための凹部61が第1ろう材層53aに形成されている。
【0120】
つまり、第1変形例では、第1ろう材層53aの外形寸法を第1金属層51の外形寸法よりも大きく形成するとともに、第1ろう材層53aの表面に、第1金属層51を収容可能な凹部61を形成する。その結果、凹部61の外周を取り囲むように環状の壁部62が形成される。
【0121】
これにより、
図14の工程S11において積層体LBを組み立てるとき、第1金属層51が第1ろう材層53aの凹部61内に収容され、第1金属層51の外周の端面を覆うように壁部62が配置される。環状の壁部62は、第1ろう材層53aのうちで、第1金属層51の外周部よりも外側にはみ出る部分(突出部PR)である。
【0122】
そして、
図14の工程S13において、第1ろう材層53a、53bが加熱されると、壁部62を構成するろう材が溶融して第1金属層51の端面を被覆し、このろう材が凝固することで端面被覆層55を形成する。
【0123】
第1ろう材層(53a、53b)は、第1金属層51の両面に設けられるため、一方の第1ろう材層53aのみに凹部61を設けて、他方の第1ろう材層53bを平板状に形成して、凹部61に蓋をするように第1ろう材層53bで第1金属層51の表面を覆ってもよい。この場合、第1ろう材層53aの壁部62の高さを第1金属層51の厚みと略同じに設定する。また、一方の第1ろう材層53aと他方の第1ろう材層53bとの両方に凹部61を設けて、上下両側の壁部62によって、第1金属層51の端面を厚みの半分ずつ覆うようにしてもよい。
【0124】
このように、第1変形例では、積層体LBを組み立てる工程S11において、第1ろう材層53a、53bの一方または両方に形成した凹部61内に第1金属層51を配置するので、第1金属層51の端面をろう材で予め包囲した状態でろう付けできる。その結果、ろう付けする工程S13において、第1金属層51の端面をろう材(端面被覆層55)で確実に被覆することができる。
【0125】
[第2実施形態の第2変形例]
図18は、第2変形例を示す。第2変形例では、第1ろう材層53a、53bの両方を折曲可能なシート状に形成する。そして、積層体LBを組み立てる工程S11(
図14参照)において、シート状の第1ろう材層53a、53bによって第1金属層51の端面を包囲する。つまり、工程S11において、単純に第1ろう材層53a、53bを第1金属層51の表面に積層するのではなく、第1金属層51の端面を覆うように第1ろう材層53a、53bで第1金属層51を包む。このため、第2変形例では、シート状の第1ろう材層53a、53bの外形寸法が、第1金属層51の外形寸法よりも大きく形成される。
【0126】
第1金属層51の包み方は特に限定しないが、
図18では、2枚のシート状の第1ろう材層53a、53bによって、第1金属層51を包む例を示している。
図18の例では、第1ろう材層53a、53bは、長辺が第1金属層51の辺よりも大きく、短辺が第1金属層51の辺と同程度の大きさの長方形に形成されている。
【0127】
まず、1枚目の第1ろう材層53aを、第1金属層51の一方表面(
図18では下面)側に配置した後、第1ろう材層53aの両端部をそれぞれ折り返して、第1金属層51の他方表面(
図18では上面)側に配置する。これにより、第1金属層51の4つの端面のうち、Y方向に対向する2つの端面が、1枚目の第1ろう材層53aによって覆われる。
【0128】
次に、2枚目の第1ろう材層53bを、第1金属層51の他方表面(
図18では上面)側に配置した後、第1ろう材層53bの両端部をそれぞれ折り返して、第1金属層51の一方表面(
図18では下面)側に配置する。これにより、第1金属層51の4つの端面のうち、X方向に対向する2つの端面が、2枚目の第1ろう材層53bによって覆われる。
【0129】
この結果、第1金属層51の一方表面および他方表面にそれぞれ第1ろう材層53a、53bを配置しつつ、第1金属層51の外周の端面が、第1ろう材層53a、53bのそれぞれの折り返し部分で覆われる。第1ろう材層53a、53bの折り返し部分が、第1ろう材層53a、53bのうちで、第1金属層51の外周部よりも外側にはみ出る部分(突出部PR)である。
【0130】
そして、ろう付けする工程S13(
図14参照)において、第1ろう材層53a、53bが加熱されると、第1金属層51の端面を包囲した折り返し部分のろう材が溶融して第1金属層51の端面を被覆し、このろう材が凝固することで端面被覆層55を形成する。
【0131】
このように、第2変形例では、積層体LBを組み立てる工程S11において、シート状の第1ろう材層53a、53bによって第1金属層51の端面を包囲するので、第1金属層51の端面をろう材で予め包囲できる。その結果、ろう付けする工程S13において、第1金属層51の端面をろう材(端面被覆層55)で確実に被覆することができる。
【0132】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0133】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、熱交換器100がプレートフィン型の熱交換器である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、熱交換器(コア1)の構造には、プレートフィン型以外の他のタイプ、たとえば、シェルアンドチューブ型、プレート型などの構造を採用してもよい。プレートフィン型以外の構造の場合、第1流路部10および第2流路部20は、サイドバー41とフィン部材42とを含まない構造でありうる。流路部の構成要素は、熱交換器の構造によって異なる。
【0134】
また、上記第1および第2実施形態では、仕切板30の外周端面31の非接合部NBが、ヘッダタンク2a~2dの各内部空間に露出する部分である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、仕切板30の外周端面31の非接合部NBは、他の部材と接合されない部分であれば、どのような部分であってもよい。非接合部NBが、水などの電解液が付着する可能性がある部分であれば、本発明による異種金属腐食の抑制効果が得られる。非接合部NBは、たとえば、コア1のうち外部に露出した側面部分であってもよい。
【0135】
なお、上記第1および第2実施形態では、異種金属腐食の要因となる水などの電解液が、コア1内を流通する流体(第1流体、第2流体)である例を示したが、水などの電解液は、熱交換器100の外部からの液体でありうる。たとえば熱交換器100が、自動車、二輪車、ボートなどの移動体に設けられる場合、移動体の外部の雨、水たまり、水面(ボートの場合)などから移動体の内部に進入した液体が、異種金属腐食の要因となりうる。また、水などの電解液は、空気中の水分が凝縮することでコア1の表面に付着した液滴でありうる。
【0136】
また、上記第1および第2実施形態では、第1流路部10と第2流路部20との2種類の流路部を設け、2種類の流体間で熱交換を行う構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、3種以上の流路部を設けてもよい。つまり、第3流体を流通させる第3流路部を設けて、第1流路部10を流通する第1流体および第2流路部20を流通する第2流体のうち少なくとも一方と第3流体とを熱交換させてもよい。第4流路部、第5流路部を設けてもよい。熱交換器100が扱う流体の種類は、何種類でもよい。
【0137】
また、上記第1および第2実施形態では、
図1に示したように、1つのヘッダタンクがコア1の1つの側面の全部を覆う例を示したが、本発明はこれに限られない。ヘッダタンクの形状および範囲は任意である。ヘッダタンクは、側面のうち一部のみを覆ってもよい。
【0138】
また、上記第1および第2実施形態では、第1金属層51の端面からの端面被覆層55の被覆厚みteが、0.1mm以上20mm以下である例をしめしたが、本発明はこれに限られない。端面被覆層55の被覆厚みteが、0.1mm未満でもよいし、20mmよりも大きくてもよい。
【0139】
また、上記第1および第2実施形態では、第1金属層51が、チタンまたはチタン合金からなる例を示したが、本発明はこれに限られない。第1金属層51は、第2金属層52a、52bの構成材料よりも貴な金属材料で構成されていればよく、たとえばSUS(ステンレス鋼材)、銅または銅合金などでもよい。
【0140】
また、上記第1および第2実施形態では、第2金属層52a、52bが、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる例を示したが、本発明はこれに限られない。第2金属層52a、52bは、第1金属層51の構成材料よりも卑な金属材料で構成されていればよく、たとえば、銅または銅合金、マグネシウムまたはマグネシウム合金、SUSなどでもよい。
【0141】
また、上記第1および第2実施形態では、ろう材層(第1ろう材層53a、53bおよび第2ろう材層54a、54b)が、アルミニウム合金である例を示したが、本発明はこれに限られない。ろう材層は、第1金属層51および第2金属層52a、52bの材料に応じて適切な材料を用いる。
【0142】
また、上記第1および第2実施形態では、第1金属層51の端面位置Q1が、第2金属層52a、52bの端面位置と面一(
図6参照)となるか、または第2金属層52a、52bの端面位置Q2よりも仕切板30の中央側(
図8参照)に位置している例を示したが、本発明はこれに限られない。
図7に示したように第1金属層51の端面位置Q1が第2金属層52a、52bの端面位置Q2よりも外側に突出してもよい。この場合、端面被覆層55による確実な被覆を実現するために、端面位置Q1の突出量は、0.5mm以内にするのが好ましい。
【0143】
また、上記第1および第2実施形態では、ろう付けによりコア1を製作した後に、ヘッダタンク2a~2dを溶接によりコア1に接合する工程S3(S14)を実施する例を示したが、本発明はこれに限られない。コア1とヘッダタンク2a~2dとの接合を、ろう付けによって行ってもよい。この場合、コア1の組立体とヘッダタンク2a~2dとを1回のろう付け工程でまとめて接合してもよい。この場合、1回のろう付けで、コア1の形成、およびヘッダタンク2a~2dとコア1との接合が実現されるので、
図9の工程S3、
図14の工程S14は不要になる。
【0144】
また、上記第1実施形態では、第1ろう材層53aの厚みt3aと、第1ろう材層53bの厚みt3bとが等しい例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1ろう材層53aの厚みt3aと、第1ろう材層53bの厚みt3bとを異ならせてもよい。ろう材の物性、特に溶融時の流動特性や仕切板30の外周端面31の表面仕上げの状態などによっては、第1金属層51の下側の第1ろう材層53aからはみ出した余剰ろう材が、重力の作用によって第1金属層51の端面に流れない場合がありうる。このようなケースでは、第1金属層51の上側の第1ろう材層53bからはみ出した余剰ろう材によって、端面被覆層55が形成されうる。そこで、ろう付け時における第1金属層51の下面側の第1ろう材層53aの厚みt3aよりも、ろう付け時における第1金属層51の上面側の第1ろう材層53bの厚みt3bを大きくしてもよい。
【0145】
この他、仕切板30を構成する各層(第1金属層51、第2金属層52a、52b、第1ろう材層53a、53b、第2ろう材層54a、54b)の厚み、端面被覆層55の高さHeおよび被覆厚みteなどの各寸法は、本明細書において具体的に示した数値、および図面において示した相対的な寸法の比率には限定されない。
【符号の説明】
【0146】
1 コア
1a~1d 側面
2a~2d ヘッダタンク
10 第1流路部
20 第2流路部
11、21 開口部
12、22 流路
30、P30 仕切板
31 外周端面
41 サイドバー
42 フィン部材
51 第1金属層
52a、52b 第2金属層
53a、53b 第1ろう材層
54a、54b 第2ろう材層
55 端面被覆層
100 熱交換器
He 端面被覆層の高さ
LB 積層体
NB 非接合部
Q1 第1金属層の端面位置
Q2 第2金属層の端面位置
te 端面被覆層の被覆厚み